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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109193
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】染色用試験装置
(51)【国際特許分類】
   D06B 19/00 20060101AFI20240806BHJP
   D06P 5/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
D06B19/00 Z
D06P5/00 123
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013854
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】322000270
【氏名又は名称】サステナテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003203
【氏名又は名称】弁理士法人大手門国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 照夫
【テーマコード(参考)】
3B154
4H157
【Fターム(参考)】
3B154AB19
3B154AB31
3B154BA07
3B154BB02
3B154BB06
3B154BC01
3B154BD01
3B154BD02
3B154DA13
4H157AA03
4H157FA03
4H157FA16
4H157FA23
4H157HA01
4H157HA02
4H157JB02
(57)【要約】
【課題】本発明は、超臨界流体による染色処理において再現性の良好な染色を行うことができる染色用試験装置を提供することを目的とする。
【解決手段】染色用試験装置の染色容器10は、染色媒体を流通させる連通口が側面に形成されて上側が開口した容器本体11と、容器本体11内に配置された染料を収容する収容体18と、容器本体11の内周面との間に所定間隔を空けて着脱可能に配置された筒状の支持体14と、染色用布片を周囲に保持する通液性の内筒体15とを備え、支持体14の下側に外筒体16及び内筒体15を所定間隔を空けて取り付け、撹拌体31を支持体14の内側において内筒体15の上側に対向するように配置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
染料及び染色用布片を収容する染色部と、前記染色部内に染色媒体を供給する供給部と、前記染色部内に充填された前記染色媒体の温度及び圧力を調整する調整部と、前記調整部を制御して前記染色部内の前記染色媒体を所定の温度及び所定の圧力に設定して超臨界流体の状態で染色処理を行う制御部とを備えている染色用試験装置において、
前記染色部は、前記供給部と管路を介して接続して内部に前記染色媒体を流通させる連通口が側面に形成されて上側が開口した容器本体と、前記容器本体内に配置された前記染料を収容する収容体と、前記容器本体の開口を着脱可能に密閉する封止体と、前記容器本体の内周面との間に所定間隔を空けて着脱可能に配置された筒状の支持体と、前記容器本体の内周面との間に所定間隔を空けて前記支持体の下側に着脱可能に取り付けられた外筒体と、前記外筒体の内側に所定間隔を空けて前記支持体の下側に着脱可能に取り付けられるとともに前記布片を周囲に保持する通液性の内筒体と、前記封止体の下側に取付けられるとともに前記支持体の内側において前記内筒体の上側に対向配置された撹拌体とを備えている染色用試験装置。
【請求項2】
前記内筒体は、メッシュ状の筒状体からなり、下端部に前記容器本体の底部に配置される台座部材が着脱可能に取り付けられている請求項1に記載の染色用試験装置。
【請求項3】
前記支持体は、外周面に複数の突起部が設けられており、前記突起部が前記容器本体の内周面に当接することで、前記容器本体の内周面との間に所定間隔を空けて配置されている請求項1又は2に記載の染色用試験装置。
【請求項4】
前記封止体は、前記撹拌体の回転軸を軸支しており、前記封止体の上側には、前記撹拌体を回転駆動する駆動機構が設けられている請求項1又は2に記載の染色用試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界流体を染色媒体として用いる布帛等の染色用試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超臨界流体を染色媒体として用いる染色技術は、水を全く使用しない染色技術であり、超臨界流体を状態変化させることで循環・再利用することができ、きわめて環境負荷の少ない技術として注目されている。
【0003】
例えば、二酸化炭素(CO2)の場合には、超臨界又は亜超臨界の状態に設定された超臨界流体で染料を溶解し、染色槽内に配置した布帛に対して超臨界流体を通過させて染色を行い、染色完了後に超臨界流体を開放することで乾いた状態で布帛を取り出し、気体に戻ったCO2は加圧・圧縮することで液体として回収して再利用することができる。
【0004】
こうした超臨界流体を再利用して染色を行う処理装置としては、例えば、特許文献1には、染色用オートクレープ対して、ポンプ、熱交換器、飽和器を通して超臨界流体を供給し、染色用オートクレープから、放圧弁、凝縮器、液溜、ポンプを通して超臨界流体を回収して循環させる装置が記載されている。
【0005】
染色加工を行う場合、事前に染色試験を行った後試験結果に基づいて染色加工することが行われている。例えば、特許文献2では、恒温空気浴槽内に染色槽を配置し、染色槽内に撹拌子、サンプルの布帛、フィルタ間に挟んだ染料を入れて密封し、染色槽内の空気を二酸化炭素で置き換えた後、恒温空気浴槽内の温度を所定の温度に加熱して染色槽内に液体の二酸化炭素を供給して加圧し、所定の温度及び所定の圧力に制御することで染色槽内を超臨界状態に設定して染色試験を行う点が記載されている。
【0006】
また、特許文献3では、複数のサンプルを同時に染色試験するために、異なる容量の複数の染色カップにサンプル及び染料を投入して媒体ガス源から染色媒体を充填し、媒体ガス源と切り離した状態で加熱制御しながら回転させて同時に染色試験を行う点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3954103号公報
【特許文献2】国際公開2018/123811号明細書
【特許文献3】特許第6807086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
超臨界流体を染色媒体として用いた染色処理では、特許文献1に記載されているように、染色媒体を循環して使用することが可能となるが、閉鎖したシステムで処理することが必要となるため、染色試験を行う場合には、特許文献2に記載されているように、1つのサンプルを1つの試験条件で行うことになり、従来の水系染色に比べて効率的ではない。
【0009】
そのため、特許文献3に記載されているように、複数のサンプルを同時に染色試験を行うことが提案されているが、量産する染色加工装置と同じ条件で試験を行うことが難しく、染色の再現性が低いといった課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、超臨界流体による染色処理において再現性の良好な染色を行うことができる染色用試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る染色用試験装置は、染料及び染色用布片を収容する染色部と、前記染色部内に染色媒体を供給する供給部と、前記染色部内に充填された前記染色媒体の温度及び圧力を調整する調整部と、前記調整部を制御して前記染色部内の前記染色媒体を所定の温度及び所定の圧力に設定して超臨界流体の状態で染色処理を行う制御部とを備えている染色用試験装置において、前記染色部は、前記供給部と管路を介して接続して内部に前記染色媒体を流通させる連通口が側面に形成されて上側が開口した容器本体と、前記容器本体内に配置された前記染料を収容する収容体と、前記容器本体の開口を着脱可能に密閉する封止体と、前記容器本体の内周面との間に所定間隔を空けて着脱可能に配置された筒状の支持体と、前記容器本体の内周面との間に所定間隔を空けて前記支持体の下側に着脱可能に取り付けられた外筒体と、前記外筒体の内側に所定間隔を空けて前記支持体の下側に着脱可能に取り付けられるとともに前記布片を周囲に保持する通液性の内筒体と、前記封止体の下側に取付けられるとともに前記支持体の内側において前記内筒体の上側に対向配置された撹拌体とを備えている。さらに、前記内筒体は、メッシュ状の筒状体からなり、下端部に前記容器本体の底部に配置される台座部材が着脱可能に取り付けられている。さらに、前記支持体は、外周面に複数の突起部が設けられており、前記突起部が前記容器本体の内周面に当接することで、前記容器本体の内周面との間に所定間隔を空けて配置されている。さらに、前記封止体は、前記撹拌体の回転軸を軸支しており、前記封止体の上側には、前記撹拌体を回転駆動する駆動機構が設けられている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、上記のような構成を備えることで、容器本体内に密封された超臨界流体からなる染色媒体を撹拌体により撹拌し、容器本体内に収容された染料を溶解させながら容器本体内に均一に拡散させて流動させることができる。
【0013】
すなわち、撹拌体の撹拌動作により超臨界流体に溶解した染料は染液となって下側に取り付けられた内筒体内に流入し、内筒体を通過して外筒体との間に放散していき、内筒体の周囲に保持された染色用布片全体に染液が満遍なく接触して内側から外側に向かって通過するようになる。
【0014】
また、外筒体との間に放散した染液は、撹拌動作により生じる流れにより外筒体の下側から容器本体との間に上昇するように流動するようになり、容器本体の中心(内筒体の内側)と周辺(外筒体の外側)との間に対流のような流れが発生して容器本体内に染液が均一に拡散するようになる。
【0015】
また、撹拌体の逆方向の撹拌動作により染液を内筒体内から流出する方向に流動させることもでき、こうした流れにより染色用布片に対して外側から内側に向かって染液を通過させて、染色用布片の両面に対して染液を満遍なく接触させることができる。
【0016】
そのため、密封状態で均一に拡散した染液を流動させて染色用布片全体に満遍なく接触させることが可能となり、再現性の良好な染色処理を行うことができる。そして、容器本体内に密封した染液を撹拌して均一に拡散させて流動させることができるので、複数の染色部を供給部に接続して個別に染色処理を行うことができ、複数のサンプルを異なる条件で同時に試験することで効率性を高めることが可能となる。
【0017】
また、容器本体に着脱可能に封止体を取り付けることで、内部に着脱可能に支持している支持体を取り出すことができ、支持体に着脱可能に外筒体及び内筒体を取り付けているので、外筒体及び内筒体を取り外して容易に分解可能であり、染料及び染色用布片のセットが容易で容器内を簡単に洗浄することができ、作業の利便性を大幅に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る実施形態に関する概略構成図である。
図2】染色容器の内部構造を示す概略断面図である。
図3】撹拌体の回動により染色媒体が流動する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて詳しく説明する。図1は、本発明に係る染色用試験装置に関する概略構成図である。
【0020】
染色用試験装置1は、染料及び染色用布片を収容する染色容器10と、染色容器10内に染色媒体を供給する供給ポンプ50とを備えており、供給ポンプ50に接続された共通供給管51及び共通排出管52の間において、配管された管路を通して染色容器10が接続されている。そのため、共通供給管51及び共通排出管52の間に複数の染色容器10を取り付けることで、異なる条件での染色処理を同時に行うことができるようになっている。
【0021】
試験に使用する布片としては、織編物、不織布、繊維束、糸といった染色可能な素材を試験用の形状に切断したものが挙げられるが、超臨界流体による素材の機能向上のための加工試験を行う場合には、他の素材を用いることもできる。
【0022】
共通供給管51と染色容器10との間の導入管路には、導入バルブ20が接続されており、染色容器10と共通排出管52との間の排出管路には、排出調整バルブ21及び排出バルブ22が直列して接続されている。また、導入管路には、導入バルブ20の染色容器10側において分岐した管路に、圧力センサ23及び安全弁24が直列して接続されており、安全弁24の排出側は共通排出管52に接続されている。
【0023】
染色容器10の周囲には、ヒータ25が取り付けられて容器全体を保温材(点線で表示)で被覆しており、排出調整バルブ21及び排出バルブ22が直列して接続した部分の周囲にはヒータ26が取り付けられて染色容器10の排出側の管路からヒータ26の取付箇所までの部分全体を保温材(点線で表示)で被覆している。
【0024】
染色容器10の上方には、容器内部に充填される染色媒体を撹拌する撹拌装置30が設けられており、撹拌装置30は、染色容器10に内蔵された撹拌体31及び撹拌体31を動作させる駆動機構32を備えている。
【0025】
染色容器10は、上側が開口した容器本体11と、容器本体11の開口を密封する封止体12と、封止体12を覆うように形成された蓋体13とを備えており、蓋体13を容器本体11の開口の周囲に螺着することで、封止体12が開口に圧着して密封されるようになっている。
【0026】
封止体12の中心部には、撹拌体31の回転軸が軸支されており、蓋体13を容器本体11から取り外して封止体12を開口から外した状態で撹拌装置30とともに上方に移動させることで、容器本体11の開口を露出させるようになっている。
【0027】
染色容器10内に充填される染色媒体の圧力は、供給パンプ50から供給される高圧の染色媒体を、導入バルブ20,排出調整バルブ21及び排出バルブ22を動作させて、所定の圧力に調整する。この例では、染色容器10の排出側に接続された排出調整バルブ21を調整することで、染色容器10内に充填された染色媒体の圧力を調整できるため、複数の染色容器を共通の供給ポンプに接続した場合でも個別に圧力を調整することが可能となる。
【0028】
また、染色容器10内の染色媒体の温度は、周囲に設けられたヒータ25を加熱させて所定の温度に調整する。この例では、染色部内に充填された染色媒体の温度及び圧力を調整する調整部は、こうした圧力及び温度の調整に関連する機器により実現されるようになっている。
【0029】
また、制御部100は、染色容器10内の染色媒体の圧力に対応して管路内の圧力を検出する圧力センサ23、染色容器10内の温度を検出する温度センサ(図示せず)、ヒータ25及び26の加熱温度を検出する温度センサ(図示せず)等の各種センサからの検出信号に基づいて、染色容器10内の染色媒体の圧力及び温度を制御して、染色部10内の染色媒体を超臨界流体の状態で染色処理を行うようになっている。
【0030】
供給部より高圧の二酸化炭素液体を染色容器10内に供給する場合には、二酸化炭素は、サイホン式液化二酸化炭素ボンベから冷却器(チラー)を通して送液ポンプで供給し、制御部で設定した圧力まで加圧する。加圧動作中に液化二酸化炭素は臨界点(304℃、7.4MPa)を越え、亜臨界から超臨界状態となって染色容器10内に超臨界流体が生成される。予め染色容器10に繊維と染料を設置しておくことで、染色処理を行うことができる。
【0031】
図2は、染色容器の内部構造を示す概略断面図である。染色容器10は、高耐圧で金属材料からなる容器本体11を備えており、容器本体11は、上部側面に染色媒体を導入する導入口部11a及び染色媒体を排出する排出口部11bが対向配置されて設けられている。導入口部11aは、染色媒体の導入管路に接続されて連通し、排出口部11bは、排出管路に接続されて連通しており、染色媒体を流通させる連通口を形成している。
【0032】
容器本体11の下側側面には、洗浄液を導入するための導入口部11c及び洗浄液を排出ための排出口部11dが対向配置されて設けられており、容器本体11の内部と連通して染色処理後の洗浄処理の際に洗浄機構(図示せず)に接続されるようになっている。
【0033】
容器本体11は、筒状に形成されており、内部には、容器本体11の内周面との間に所定間隔を空けて筒状の支持体14が着脱可能に配置されている。支持体14の外周面には、複数の突起14aが取付固定されており、突起14aが容器本体11の内周面に当接することで、所定間隔を空けて保持されるようになっている。
【0034】
支持体14の下側には、内筒体15及び外筒体16が略同心円状に配置されて着脱可能に支持されている。内筒体15は、メッシュ状の素材から筒状に形成されて通液性を有しており、外筒体16との間に所定間隔を空けて支持体14の下側に取り付けられている。なお、内筒体15は、通液性を有する素材であればメッシュ状の素材以外のものでも用いることができ、例えば、多数の小孔が形成された薄板材でもよい。
【0035】
内筒体15の上下の端部には、フランジ状の取付部材15a及び15bがそれぞれ固定されており、取付部材15aは、支持体14の内側に突設された嵌合部14bに嵌め込まれて着脱可能に取り付けられる。取付部材15bは、容器本体11の底面に配置される台座部材17の内側に突設された嵌合部17bに嵌め込まれて着脱可能に取り付けられる。
【0036】
台座部材17の外周面には、複数の突起17aが固定されており、突起17aが容器本体11の底面側の外周面に当接することで、台座部材17が取り付けられた内筒体15を容器本体11内に安定して保持されるようになる。
【0037】
外筒体16は、支持体14の下端部とほぼ同一の厚さの形状で形成されており、上端部を支持体14の下端部の段差部に嵌め込まれて着脱可能に取り付けられている。そして、外筒体16は、支持体14の下端部から段差のない面一となる形状で延設され、下端部と台座部材17との間に所定間隔を空けて取り付けられている。
【0038】
支持体14の内側には、内筒体15の上端に当接して染料を収容する収容体18が着脱可能に取り付けられている。この例では、収容体18は、支持体14の内側に嵌め込まれた上下2枚のメッシュ材からなり、メッシュ材の間に染料Dが収容されている。収容体18は、容器本体11内に配置されていればよく、例えば、染料を収容した袋体を内筒体15及び外筒体16の間に吊り下げるように配置することもでき特に限定されない。
【0039】
支持体14の内側には、収容体18の上側に羽根車状の撹拌体31が内筒体15の上側に対向して配置されている。撹拌体31の上側には回転軸33が取り付けられており、回転軸33の回転により撹拌体31が回動して染色媒体を上下方向に流動させるようになっている。支持体14の撹拌体31よりも上側の上端部では、周方向に複数個所を切り欠いて封止体12との間に空隙が形成されており、撹拌体31の回動により流動する染色媒体が支持体14の内側及び外側の間を流出入するようになっている。
【0040】
容器本体11の内部に配置した各部材を取り出す場合には、蓋体13を取り外して封止体12とともに撹拌体31を上方に移動させることで、容器本体11の開口を露出させる。そして、支持体14を上方に引き上げて、台座部材17が下端部に取り付けられた内筒体15及び外筒体16を取り出す。そして、内筒体15及び外筒体16を支持体14の下側から取り外し、内筒体15の下端部から台座部材17を取り外す。こうして、各部材を容易に取り出して分解することができる。
【0041】
分解した各部材を容器本体11に収容する場合には、内筒体15の外周面に染色する布片を巻き付ける。布片は内筒体15の全長とほぼ同じ幅に形成して、内筒体15の外周面の全面をだぶつかないように被覆して巻き付けるとよい。
【0042】
布片を巻き付けた内筒体15の上側の取付部材を支持体14の下側に嵌め込んで取り付けた後、外筒体16を内筒体15の外側に装着して支持体14の下側に嵌め込んで取り付ける。次に、内筒体15の下側の取付部材に台座部材17を嵌め込んで取り付け、台座部材17を下側にして支持体14を容器本体11内に挿入して収容する。収容した支持体14の上側から染料を収容した収容体18を嵌め込んで配置した後、上方より撹拌体31を封止体12とともに下降させて撹拌体31を支持体14の内側に配置して封止体12により容器本体11の開口を密閉する。密閉した封止体12の上側から蓋体13を容器本体11に螺着して固定する。こうして、染料及び染色用布片を容易に取り付けて各部材を収容することができる。
【0043】
図3は、撹拌体の回動により染色媒体が流動する様子を示す説明図である。撹拌体31の回動により支持体14の上側では、下向き又は上向きに染色媒体が流動するようになる。染色媒体が下向きに流動する場合、染色媒体が収容体18を通過して内筒体15内に流入し、内筒体15を通過して外筒体16内に流入するように流動する。
【0044】
収容体18を通過する染色媒体には染料が溶解するようになり、染料が溶解した染液は内筒体15内に流入する。そして、内筒体15の底部は台座部材17により閉鎖されているため、内部に流入した染液は、内筒体15の外周面から放射状に流出して巻き付けられた布片全体に対して満遍なく接触するようになり、均一な染色処理が行われるようになる。
【0045】
外筒体16内に流入した染液は、外筒体16の下端と台座部材17との間から流出して容器本体11の内周面との間の隙間を上昇するように流動し、上昇した染液は、内周面に沿って上昇して支持体14の上端から支持体14の内側に流入するようになる。支持体14及び外筒体16を外周面が面一に形成されているため、上昇流はほとんど乱れることなく流動する。
【0046】
この場合、容器本体11の中心(内筒体15の内側)で下降流が発生して、周辺(外筒体16の外側)で上昇流が発生するようになり、対流のような流れが発生し、染色媒体が対流しながら収容体18を繰り返し通過して容器本体内に染液が均一に拡散するようになる。
【0047】
また、撹拌体31の回動により染色媒体が上向きに流動する場合、下向きに流動する場合と反対方向に流動するようになり、周辺(外筒体16の外側)で下降流が発生して、中心(内筒体15の内側)で上昇流が発生するようになる。内筒体15は、底部が台座部材17に接続されているため、染液は、内筒体15の周囲から内筒体15内に収束するように流入して周面全体を通過するようになる。そのため、内筒体15の周囲に巻き付けられた布片全体に対して染液が外側から内側に通過して満遍なく接触し、均一な染色処理が行われる。
【0048】
したがって、撹拌体31の回動方向を制御して、下向きの流動動作及び上向きの流動動作を適宜組み合わせることで、布片全体に対して内側から外側への流動又は外側から内側への流動が繰り返し行われて、染液を全体に満遍なく接触させて均一な染色処理を行うことが可能となる。
【実施例0049】
図1に示す染色用試験装置において、共通供給管51と共通排出管52との間に染色容器10並びに接続する管路及び部品のセットを3セット接続して試験装置を構成した。染色容器10は金属製で、内部にセットする染色治具である支持体14、外筒体16及び台座部材17は金属材料を成形加工したものを用いた。内筒体15及び収容体18は、金属製メッシュ材を切断加工したものを用いた。供給ポンプ50は、ISCO社製ポンプ(SFX-2-10)を用いた。
【0050】
制御部100では、ヒータ25及び26の加熱制御のための容器内温度等の設定を行い、容器内圧力を設定する。また、撹拌装置の回動方向及び回動時間を設定する。こうした温度等の設定は、染色容器毎に設定する。
【0051】
蓋体13を取り外して、染色容器10内の染色治具を取り出し、内筒体15の周囲に染色用の布片(例えば、市販のPET製布帛を縦10cm×横30cmに切断;重さ6g)を巻き付けて、染料(紀和化学工業株式会社製の黄色系及び赤色系染料;濃度0.1%、2%に対応する9/13量)を収容体18に収容した後、染色容器10内に挿入した。支持体14内に撹拌体31を挿入するとともに封止体12で染色容器10の開口を密閉した後蓋体13を螺着した。
【0052】
次に、ヒータを加熱制御して容器内温度が設定温度(例;120℃)に到達した後、導入バルブ20を開放して、染色容器10内に染色媒体である二酸化炭素の液体を導入するとともに撹拌装置を動作開始した。
【0053】
圧力センサ23の圧力値が設定値(例;25MPa)に到達した後、設定温度で容器内圧力が設定圧力で安定した状態となってから導入バルブ20を閉鎖した。設定圧力を維持するため、設定圧力よりも高くなった場合には、排出バルブ22を開放して排出調整バルブ21により排出量を調整し、設定圧力よりも低くなった場合には、導入バルブ20を短時間開放して二酸化炭素を導入して圧力調整を行った。設定温度及び設定圧力で所定時間(例;60分)染色処理を行った。
【0054】
染色処理後、ヒータの加熱及び撹拌装置の駆動を停止し、供給ポンプ50の駆動を停止した後、排出バルブ22を開放して排出調整バルブ21により徐々に減圧した。常圧に戻ったことを確認した後、導入バルブ20を開放し、容器内温度が常温になったことを確認した後、蓋体13を取り外して染色容器10内から染色処理された布片を取り出した。その後、洗浄機構により染色容器10内に洗浄液を導入して洗浄処理を行った。
【0055】
取り出した布片は、表面上の染料を除去して乾燥させた後、色相を評価した。濃度が0.1%及び2%のいずれの場合でも、各染料に関して濃度に応じた色むらのない均一な色に染色されており、良好な再現性を確認した。また、染色堅牢度(JIS L0801)に関する評価についても、洗濯、ドライ、水、汗、昇華、耐光、摩擦といった諸条件において、各染料による処理はいずれも4級以上の評価が得られ、実際の染色処理と同程度の処理が行われたことを確認した。
【符号の説明】
【0056】
1・・・染色用試験装置、10・・・染色容器、11・・・容器本体、12・・・封止体、13・・・蓋体、14・・・支持体、15・・・内筒体、16・・・外筒体、17・・・台座部材、18・・・収容体、20・・・導入バルブ、21・・・排出調整バルブ、22・・・排出バルブ、23・・・圧力センサ、24・・・安全弁、25,26・・・ヒータ、30・・・撹拌装置、31・・・撹拌体、32・・・駆動機構、50・・・供給ポンプ、51・・・共通供給管、52・・・共通排出管
図1
図2
図3