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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109201
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】流体圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F03B 13/24 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
F03B13/24
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013868
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】518102436
【氏名又は名称】合同会社小林知財研鑽処
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一
【テーマコード(参考)】
3H074
【Fターム(参考)】
3H074AA04
3H074AA15
3H074BB01
3H074BB10
3H074CC03
3H074CC35
(57)【要約】
【課題】海水圧で上下動する海中ピストンによって流体を圧縮可能な流体圧縮機を提供する。
【解決手段】圧縮ユニットと、摺動ユニットと、から成り、圧縮ユニットは、圧縮管と、該圧縮管を上下に摺動する圧縮ヘッドと、流体を導入可能な供給管と、流体を後段へ送出可能な送出管と、から構成され、摺動ユニットは、摺動管と、該摺動管内を上下に摺動する摺動ヘッドと、該摺動ヘッドの上面に備えられる摺動ロッドと、海水を導入可能な摺動注水口と、海水を外部へ排出する摺動排水口と、から構成され、海水圧によって作動する摺動ユニット内のピストン機構により、圧縮ユニット内の圧縮ヘッドが摺動される手段を採る。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ユニットと、摺動ユニットと、から成り、
圧縮ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面が閉塞され底面が開口された圧縮管と、該圧縮管の底面を閉塞すると共に圧縮管内を上下に摺動する圧縮ヘッドと、圧縮管天面と圧縮ヘッドとの間の中空部へ圧縮させる流体を導入可能な供給管と、圧縮ヘッドの摺動により圧縮された流体を後段へ送出可能な送出管と、から構成され、
摺動ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面及び底面が閉塞された摺動管と、該摺動管内を上下に摺動する摺動ヘッドと、該摺動ヘッドの上面に備えられ上方に延伸し圧縮ヘッドの底面と接続される摺動ロッドと、摺動管外部の海水を摺動管底面と摺動ヘッド底面との間の中空部へ導入可能な摺動注水口と、摺動管内に流入した海水を外部へ排出する摺動排水口と、
から構成され、
海水圧によって作動する摺動ユニット内のピストン機構により、圧縮ユニット内の圧縮ヘッドが摺動されることを特徴とする流体圧縮機。
【請求項2】
前記摺動ユニットの下方に押上板が備えられると共に、該押上板の下方に一乃至複数の押上ユニットが配設されて成り、
該押上ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面及び底面が閉塞された押上管と、該押上管内を上下に摺動する押上ヘッドと、該押上ヘッドの上面に備えられ上方に延伸し押上板の底面部所定箇所と接続される押上ロッドと、押上管外部の海水を押上管底面と押上ヘッド底面との間の中空部へ導入可能な押上注水口と、押上管内に流入した海水を外部へ排出する押上排水口と、から構成され、
該押上ユニットにより押上板が押し上げられることで摺動ユニットが上昇することを特徴とする請求項1に記載の流体圧縮機。
【請求項3】
前記押上ユニットの後段に、
前記摺動ユニット及び該押上ユニットから排水される海水が排水管を介して貯留される排水タンクと、海中に備えられ該排水タンク内に滞留し海水流入と共に排出される空気を貯留するエアタンクと、該エアタンクにて貯留された空気を利用して発電を行う発電ユニットと、が配設されて成ることを特徴とする請求項2に記載の流体圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を圧縮するための装置に関し、詳しくは、海水圧を利用して流体を圧縮可能な流体圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や地熱を利用した発電や、水素を利用した燃料電池等、地球環境に配慮し化石燃料を使用しないクリーンな動力が注目されている。その中でも、海水を利用した動力は、波力や水圧等が利用可能であり、様々な方法が考えられている。
しかし、自然エネルギーを利用した動力は、周囲の環境、例えば、天候や地形、昼夜等の様々な条件によって常時変化するため、安定した出力を発揮させ続けることが困難であった。
そこで、周囲の環境に影響されにくい海水を利用し、安定した動力を発揮し続けさせることが可能な動力構造が求められていた。
【0003】
上記問題を解決すべく、特開2013-164059号公報(特許文献1)に記載の技術提案がなされている。すなわち、特許文献1では、波エネルギーを利用し上下動する浮子に接続されたピストンの上下動により、圧縮空気を生み出す技術提案となっている。
しかし、天候の変化等により大きく変化する波エネルギーを使用しているため、浮子により生成される圧縮空気量にムラができてしまい、常時安定した出力の提供が困難であって、上記問題の解決には至っていない。
【0004】
そこで、本出願人は、海水を使用した流体の圧縮機構を作ることはできないものか、との着想のもと、海水圧を使用して上下動が可能なピストンに着目し、かかる海水圧によって上下動する複数の海中ピストンを連動使用することで、流体を圧縮可能な流体圧縮機を開発し、本発明にかかる「流体圧縮機」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-164059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、海水圧で上下動する海中ピストンによって流体を圧縮可能な流体圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明にかかる流体圧縮機は、圧縮ユニットと、摺動ユニットと、から成り、圧縮ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面が閉塞され底面が開口された圧縮管と、該圧縮管の底面を閉塞すると共に圧縮管内を上下に摺動する圧縮ヘッドと、圧縮管天面と圧縮ヘッドとの間の中空部へ圧縮させる流体を導入可能な供給管と、圧縮ヘッドの摺動により圧縮された流体を後段へ送出可能な送出管と、から構成され、摺動ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面及び底面が閉塞された摺動管と、該摺動管内を上下に摺動する摺動ヘッドと、該摺動ヘッドの上面に備えられ上方に延伸し圧縮ヘッドの底面と接続される摺動ロッドと、摺動管外部の海水を摺動管底面と摺動ヘッド底面との間の中空部へ導入可能な摺動注水口と、摺動管内に流入した海水を外部へ排出する摺動排水口と、から構成され、海水圧によって作動する摺動ユニット内のピストン機構により、圧縮ユニット内の圧縮ヘッドが摺動される手段を採る。
【0008】
また、本発明は、前記摺動ユニットの下方に押上板が備えられると共に、該押上板の下方に一乃至複数の押上ユニットが配設されて成り、該押上ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面及び底面が閉塞された押上管と、該押上管内を上下に摺動する押上ヘッドと、該押上ヘッドの上面に備えられ上方に延伸し押上板の底面部所定箇所と接続される押上ロッドと、押上管外部の海水を押上管底面と押上ヘッド底面との間の中空部へ導入可能な押上注水口と、押上管内に流入した海水を外部へ排出する押上排水口と、から構成され、該押上ユニットにより押上板が押し上げられることで摺動ユニットが上昇する手段を採る。
【0009】
さらに、本発明は、前記押上ユニットの後段に、前記摺動ユニット及び該押上ユニットから排水される海水が排水管を介して貯留される排水タンクと、海中に備えられ該排水タンク内に滞留し海水流入と共に排出される空気を貯留するエアタンクと、該エアタンクにて貯留された空気を利用して発電を行う発電ユニットと、が配設されて成る手段を採る。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる流体圧縮機によれば、摺動管中空部への海水流入によって増加する水圧にて摺動ユニットのピストンを上摺動させ、ピストンに接続された圧縮管内の圧縮ヘッドを上動させることで、圧縮管内の中空部に貯留された流体の圧縮に必要なエネルギーを、海水圧という安定した自然エネルギーによって賄うことが可能であり、作業全体の省エネルギー化並びに出力の安定化に資する、といった従来にない優れた効果を奏する。
【0011】
また、本発明にかかる流体圧縮機によれば、摺動ユニットの下方に押上板及び押上ユニットが配設されることで、押上ユニットの作動により摺動ユニット自体を押し上げることができるため、圧縮管内の流体をより強力に圧縮させることが可能になる、といった優れた効果を奏する。
【0012】
さらに、本発明にかかる流体圧縮機によれば、押上ユニットの後段に排水タンクとエアタンクと発電ユニットが夫々配設されていることにより、流体圧縮のために流入した海水を利用して発電を行うことも可能であって、流体圧縮機に使用される排水ポンプ等の動力源として使用するなど、電力の省エネルギー化にも資する、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明にかかる流体圧縮機の実施形態を示す説明図である。
図2】本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図である。
図3】本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図である。
図4】本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明にかかる流体圧縮機は、海水圧で上下動するピストン機構により、圧縮管内に貯留した流体を海水圧で圧縮させることを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかる流体圧縮機の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0015】
尚、本発明にかかる流体圧縮機は、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができる。
【0016】
図面に沿って、本発明にかかる流体圧縮機1を説明する。
図1は、本発明にかかる流体圧縮機の実施形態を示す説明図であり、(a)は圧縮ユニットへ流体を流入させた状態、(b)は摺動ユニットの作動による流体の圧縮状態を示している。また、図2は、本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、圧縮ユニット、摺動ユニット、押上板、押上ユニットの設置態様を示している。さらに、図3は、本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、圧縮ユニット、摺動ユニット、押上板、押上ユニットを夫々簡略化した動作態様であって、(a)は圧縮ユニットに流体が充填された状態を示し、(b)は摺動ユニットによる流体の圧縮が行われた状態を示し、(c)は押上ユニット及び押上板による摺動ユニットの上昇及び流体への更なる圧縮が行われている状態を示している。そしてまた、図4は、本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、押上ユニットの後段に配設された排水タンクと、エアタンクと、発電ユニットの設置態様を示している。
本発明にかかる流体圧縮機1は、基本的形態として、主に圧縮ユニット2と、摺動ユニット3で構成されている。
【0017】
圧縮ユニット2は、流体の貯留後に圧縮し後段へ送気させるユニットであり、圧縮ユニット2の下方に配設され流体の圧縮手段である摺動ユニット3が上下に摺動することで、流体の圧縮が行われるものである。
圧縮ユニット2は、海上施設に設置されるが、該圧縮ユニット2の下方である海中に摺動ユニット3を配設し、該摺動ユニット3の上摺動によって流体の圧縮を行うため、摺動ユニット3が配設可能な所定深さを有する箇所への設置が必要となる。また、圧縮ユニット2によって圧縮させる流体については特に限定はないが、例えば、大気や二酸化炭素、LPガス等を圧縮し、圧縮空気やドライアイス、液化ガス等にして後段へ送出する態様が考え得る。
圧縮ユニット2は、供給口13及び送出口15が備えられた圧縮管10と、圧縮管10に内設され底面が摺動ユニット3と接続された圧縮ヘッド11によって構成されている。
【0018】
圧縮管10は、圧縮ユニット2を構成する管状体であり、中空部に圧縮ヘッド11が内設されるものである。
圧縮管10は、中空部を有した管状体であり、該圧縮管10の天面部は、摺動ユニット3の上摺動によって圧縮ヘッド11が上方に摺動しつつ中空部に貯留されている流体を圧縮するため全部が閉塞している。また、圧縮管10の底面部は、上下摺動する圧縮ヘッド11の動作に支障が無いよう一部又は全部が開口されている。そして、圧縮管10の形状及び長さについては、圧縮ヘッド11が摺動可能な内径(中空部に備えられる圧縮ヘッド11の外径より僅かに大径)を備えて略円筒形状に形成され、且つ、圧縮ヘッド11に接続された摺動ユニット3による上下摺動距離と同程度以上の全長を有して形成されている。
圧縮管10の上方所定箇所には、圧縮させる流体を中空部へ流入可能な供給口13と、圧縮ヘッド11の上方摺動によって圧縮された流体を後段の施設へ送出可能な送出口15が夫々備えられ、自動的に、もしくは、手動にて流体の流入・圧縮・送出が行われることとなる。
また、圧縮管10は、海面に対して略垂直状に延伸した状態で設置されることで、摺動ユニット3に備えられたピストン機構からの圧力が直接圧縮ヘッド11へ伝わり、流体の圧縮をスムーズに行うことが可能となる。
【0019】
供給口13は、圧縮管10の中空部へ流体を流入させるためのものであり、詳しくは、圧縮管10の閉塞された天面部と中空部に備えられる圧縮ヘッド11の天面部との間に流体を流入させるためのものである。
供給口13から中空部へ流体を流入させた後、該供給口13を弁構造等の手段により閉塞させることで中空部は密閉状態となる。かかる状態において、圧縮ヘッド11を上方へ摺動させることで中空部が圧迫され、該中空部に貯留している流体も同時に圧縮されることとなる。
供給口13の位置については、特に限定はしないが、例えば、圧縮管10と圧縮ヘッド11により閉塞された中空部内へ大気よりも重い二酸化炭素を流入させる場合、圧縮管10の天面部又は側面上方部に備えることで、圧縮管10の上方から圧縮ヘッド11天面部に向けての流入が可能となり、流入させた二酸化炭素の逆流を防止することが可能となる。また、供給口13には、供給管12が当然に接続されており、流体は供給管12から供給口13を介して圧縮管10の中空部へ流入することとなる。
【0020】
送出口15は、圧縮管10の中空部にて圧縮された流体を後段の施設へ送気させるものであり、詳しくは、圧縮管10の中空部に貯留された流体が圧縮ヘッド11の上方摺動により圧縮された圧縮流体を後段へ送気するためのものである。摺動ユニット3及び圧縮ヘッド11による中空部への圧縮動作時には、前記供給口13と同様に、弁構造等の手段により閉塞させることで中空部が密閉状態となる。そして、圧縮動作の終了と共に送出口15を開放することで、高い圧力を有した流体が後段の施設へ送出されることとなる。
送出口15の位置については、前記供給口13と同様に、特に限定はしないが、圧縮ヘッド11の上摺動により圧縮された流体を送出するため、該圧縮ヘッド11の上昇限界位置よりも上方、望ましくは天面部略中央箇所等に設けることで、中空部に存する圧縮流体の送出がバランスよく行われることとなる。また、送出口15には、送出管14が当然に接続されており、圧縮流体は中空部から送出口15を介して送出管14へ送出され後段の施設に提供されることとなる。
【0021】
圧縮ヘッド11は、圧縮管10の中空部に備わるピストン部材であり、該圧縮ヘッド11の底面が摺動ユニット3と接続されることにより中空部内を垂直方向へ上下に摺動するものである。
圧縮ヘッド11の形状は略円柱状であって、上下の長さ(全高)について特に限定はないが、圧縮管10の中空部を摺動可能な程度に該圧縮管10の内径よりやや縮径された外形を有してなる。この時、圧縮ヘッド11の上方に貯留する流体が圧縮ヘッド11と圧縮管10との僅かな間隙を通過して圧縮ヘッド11の下方に漏出することの無いよう、圧縮ヘッド11の上方外周壁に一乃至複数のピストンリングを摺接する等の漏水防止手段を施すことで水密性を担保する態様が好適である。また、略円柱状を成す圧縮ヘッド11の内部を中空状として重量を軽減させることで、圧縮動作時にかかる摺動ユニット3に設けられたピストン機構への圧力負担を軽減させることが可能となる。
【0022】
摺動ユニット3は、摺動ピストン機構25を内設する管状体であり、底面部から海水を給排水することで摺動ピストン機構25を上下摺動させるものである。
摺動ユニット3は、図1に図示したような、該摺動ユニット3全体を海中に沈下させた状態や、図示してはいないが、摺動ユニット3の上部が海面上に出るよう海中に沈下させた状態で配設される。配設手段について特に限定はなく、例えば、海底から所要高さの土台を設置して該土台の上に摺動ユニット3を固定的に載置する態様や、圧縮ユニット2が設置された海上施設と摺動ユニット3の側壁とを固定的に連結する態様等が考え得る。また、設置数に関しても特に限定はしないが、圧縮ユニット2にて圧縮させる流体への必要圧力をもとに決定される。
摺動ユニット3は、摺動管20と、該摺動管20の中空部に備えられた摺動ピストン機構25と、底面部に備えられた摺動注水口23と摺動排水口24から構成されている。
【0023】
摺動管20は、摺動ユニット3を構成する管状体であり、中空部に摺動ピストン機構25が内設されるものである。
摺動管20は、中空部を有した管状体であり、該摺動管20の天面部は、摺動ピストン機構25が上下動すべく一部又は全部が開口されており、また、摺動管20の底面部は、流入した海水を貯留すべく閉塞されている。また、摺動管20の形状及び長さについては、摺動ヘッド21が摺動可能な内径(後述の摺動ヘッド21の外径より僅かに大径)を備えて略円筒形状に形成され、且つ、圧縮ユニット2に貯留された流体への必要圧力を発揮可能な上動可能距離よりも長い全長を有して形成されている。
底面部所定箇所には、海水を中空部へ流入可能な摺動注水口23と、中空部へ流入した海水を外部へ流出させる摺動排水口24が夫々備えられ、自動的に、もしくは、手動にて海水を給排水することで、中空部に内設された摺動ピストン機構25を上下摺動させることとなる。
そして、摺動管20は、海面に対して略垂直状に延伸した状態で設置されることで、摺動注水口23の開口により、中空部に内設された摺動ピストン機構25を押し上げつつ、海面近傍まで自動的に海水が流入されることとなる。
【0024】
摺動注水口23は、摺動管20の中空部へ海水を流入させるための孔であり、詳しくは、摺動管20の閉塞された底面と中空部内に備えられる摺動ピストン機構25との間に海水を流入させるための孔である。
摺動注水口23から中空部へ海水を流入させることで、その海水圧によって摺動ピストン機構25を上方に押し上げる。尚、中空部に流入した海水の水位は、摺動管20の水頭圧(摺動ピストン機構25に掛かる荷重)によって前後するものではあるが、最大で摺動管20外部の海水面近傍、もしくは、摺動管20天面部近傍まで上昇し得ることとなる。また、摺動注水口23は、図1に図示したような、開放と閉塞を切り替え可能な摺動給水弁26を採用し、海水の流入と停止を切り替え可能な態様も好適である。
摺動注水口23の位置については、特に限定はしないが、摺動管20の閉塞された底面と摺動ピストン機構25との間に海水を流入させて該摺動ピストン機構25を下方から押し上げるべく作用させることから、少なくとも摺動管20の下方域に備えられることを要し、具体的には、摺動管20の底面若しくは側壁における下端近傍に備えられる。また、摺動注水口23の大きさや数についても限定はないが、自動または手動にて海水流入量の調整が行えるよう、大きさを絞ったり開放したりする孔の数を限定することが可能な態様を採用し得る。かかる態様を採用することにより、摺動ピストン機構25の上動時にかかる速さを調整することが可能となる。
【0025】
摺動排水口24は、摺動管20の中空部に貯留された海水を外部に流出させる孔であり、摺動管20の所定箇所に備えられるものである。
摺動管20から外部へ海水を流出させることで、中空部内の水位を下げて摺動ピストン機構25を下降させる。尚、摺動排水口24には摺動排水ポンプ27が接続され、摺動ピストン機構25の下降に際し、強制的に中空部内の海水を外部へ排出させることとなる。
摺動排水口24の位置については特に限定はしないが、摺動管20の閉塞された底面と摺動ピストン機構25との間の海水を流出させて摺動ピストン機構25が下降するよう作用させることから、少なくとも摺動管20の下方域に備えられることを要し、具体的には、摺動管20の底面若しくは側壁における下端近傍に備えられる。また、摺動排水口24の大きさや数についても限定はなく、摺動排水ポンプ27による経時的流出量を調整することで、摺動ピストン機構25の下降速度を調整することが可能となる。
【0026】
摺動ユニット3に備えられる摺動ピストン機構25は、摺動管20に内設される摺動ヘッド21及び摺動ロッド22であり、海水圧を利用して上摺動を行うことで摺動ロッド22の上端部に接続された圧縮ヘッド11を介して流体を圧縮させるものである。
摺動ピストン機構25は、摺動管20の中空部内に備えられており、摺動ヘッド21及び摺動ロッド22によって構成されているが、摺動管20が複数設置されている態様であれば、当然に、該摺動管20の中空部内に夫々内設される。
また、摺動ピストン機構25の上下摺動制御については、摺動注水口23及び摺動排水口24の開閉動作を手動、もしくは自動で行うものとなるが、制御方法について特に限定はなく、例えば、圧縮ユニット2の中空部へ水位センサを備えると共に、必要圧力を基にした上摺動距離をプログラムとして設定することで、所定量の流体が圧縮ユニット2の中空部内へ貯留された後、該プログラムに沿った上摺動動作が自動的に行われる、といった態様が考え得る。
【0027】
摺動ヘッド21は、摺動管20の中空部に備わるピストン部材であり、該摺動ヘッド21の底面と摺動管20の底面との間の中空部に貯留される海水の増減により、中空部内を垂直方向へ上下に摺動するものである。
摺動ヘッド21の形状は略円柱状であって、上下の長さ(全高)について特に限定はないが、摺動管20の中空部内を摺動可能な程度に摺動管20の内径よりやや縮径された外径を有して成る。この時、摺動ヘッド21の下方に存する海水が摺動ヘッド21と摺動管20との僅かな間隙を通過して摺動ヘッド21の上方へ漏出することのないよう、摺動ヘッド21の外周壁に一乃至複数のピストンリングを周設するなど漏水防止手段を施すことで水密性を担保する態様が好適である。また、略円柱状を成す摺動ヘッド21の内部を中空状として空気を充満させることで、摺動ヘッド21自体の重量を軽減させると共に、浮力を増幅させる態様も採用し得る。摺動ヘッド21の上面には、上方へ延伸する摺動ロッド22の下端が固定されている。
【0028】
摺動ロッド22の摺動やピストンリングの不具合等により、摺動管20の天面部と該摺動ロッド22との接触箇所から外部の海水が流入してしまう場合も考え得る。そのため、流入した海水が貯留してしまう摺動ヘッド21には、天面部から底部までを貫通し海水を摺動管20底部へ排水可能な排水経路を予め設けておく態様が好適である。かかる態様を採ることで、摺動ヘッド21の天面部に貯留した海水による摺動ヘッド21の質量増加を防ぐことが可能となる。また、排水経路には、摺動注水口23からの海水流入による圧縮動作中に排水経路を閉塞する逆流防止弁が当然に備わっている。
上記排水経路は、同様の構造を有する押上ユニット4にも採用することで、同様の効果を発揮することが可能となり、流体圧縮機1全体の省エネルギー化に資することとなる。
【0029】
摺動ロッド22は、長尺の棒状体であって、摺動ヘッド21の上下動をそのまま圧縮ユニット2に内設された圧縮ヘッド11に伝達するものである。よって、摺動ロッド22の上端は圧縮ヘッド11の下面所定箇所に接続されると共に、摺動ロッド22の下端は摺動ヘッド21の天面所定箇所に固定的に接続されている。これにより、圧縮ヘッド11を摺動ヘッド21の上下動に連動して昇降させることが可能となる。
摺動ロッド22下端部の設置位置や本数については特に限定はなく、摺動ヘッド21の上下摺動によって発生する力を効率的に圧縮ヘッド11へ伝達可能な位置及び本数であれば良い。例えば、摺動ロッド22が一本であれば、摺動ヘッド21の天面部略中央箇所に固定する態様となる。同様に、摺動ロッド22上端部の設置位置や本数についても特に限定はなく、摺動ヘッド21の上下摺動によって発生する力を効率的に圧縮ヘッド11へ伝達可能な位置及び本数であれば良い。また、摺動ロッド22の形状については、特に限定するものではないが、長さは少なくとも摺動管20の中空部における最下位置に摺動ロッド22が降下した際に、圧縮ヘッド11の下面が圧縮管10の底面に接触しない程度の長さを有し、太さについては圧縮ユニット2にて流体を圧縮させる際にかかる抵抗に耐え得る荷重強度を有していることを要する。
【0030】
以上の構成要素から成る流体圧縮機1について、図1に沿ってその動作態様を説明する。
図1(a)は、圧縮ユニット2に対し、供給口13から流体が流入した状態である。圧縮ヘッド11は、下がっており、圧縮管10の大部分は流体で占められている。
まず、摺動ユニット3の摺動注水口23から海水が注水され、摺動ヘッド21よりも下の領域に海水が注水されることになる。
そして、海水が注水されるに従い、海水の圧力によって摺動ヘッド21が上方に押し上げられる。それに伴い、摺動ロッド22、圧縮ヘッド11が押し上げられる。
以上の動作により、流体は図1(b)のように圧縮される。また、圧縮された流体は、送出口15を介して送出管14に送出されることとなる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、流体の圧縮に必要なエネルギーとして海水圧を利用することで、流体圧縮工程における省エネルギー化に資することとなる。
【0032】
他の実施形態について、図2及び図3に沿って説明する。上述の実施形態では、圧縮ユニット2と摺動ユニット3による例を説明したが、押上ユニット4を用いることで、さらに効果的動作とすることができる。
図2に図示したように、押上ユニット4は摺動ユニット3の下側に位置し、該摺動ユニット3自体を押上ユニット4にて上方へ押し上げることにより、摺動ユニット3と接続されている圧縮ヘッド11を上摺動させ、流体をさらに圧縮させるものである。
押上ユニット4は、押上管30と、押上ピストン機構35と、からなる。
【0033】
図2及び図3に図示したように、押上板5を摺動ユニット3の底部に配設すると共に、押上ユニット4における押上ピストン機構35上端部を接続し、摺動ユニット3を押し上げる際の押し上げ補助とする態様も好適である。
かかる態様に使用される押上板5は、摺動管20の底面部に備えられる板状体であり、該押上板5の底面に接続された押上ユニット4の上下摺動によって押上板5及び摺動ユニット3の昇降が行われると共に、圧縮ヘッド11も上下摺動させるものである。
押上板5の形状については特に限定はしないが、例えば、摺動管20との接続部分を中心とした略直方形の板状体が考え得る。また、押上板5の大きさについても特に限定しないが、該押上板5の表面積に比例して水圧が増加し押上板5の上昇に必要な力が大きくなるため、押上板5の底面に接続される押上ユニット4の設置数及び設置箇所を考慮しつつ表面積を狭くする態様が望ましい。さらに、押上板5と摺動管20及び、押上板5と押上ユニット4との接続方法についても限定はなく、ネジ等を使った螺合や溶着等の手段により固定されることとなる。
【0034】
押上ユニット4は、夫々に押上ピストン機構35を内設する一乃至複数の管状体であり、底面部から海水を給排水することで押上ピストン機構35を上下摺動させ、押上板5の底面を上方へ押し上げるものである。
押上ユニット4は、押上管30と、該押上管30に内設される押上ヘッド31及び押上ロッド32と、押上管30の底面部に備えられた押上注水口33と押上排水口34から構成されている。
押上ユニット4に使用される押上管30の形状等には特に限定はないが、前記摺動ユニット3に使用されている摺動管20と同様のものを使用する態様が考え得る。また、かかる態様を採る場合、押上管30に内設される押上ピストン機構35も前記摺動ピストン機構25と同様のものを使用する態様が好適である。さらに、設置数に関しても特に限定はしないが、押上板5の大きさや、該押上板5の上下動に必要な動力等をもとに決定されることとなる。例えば、図2に図示したように、一の摺動ユニット3底部に備えられた押上板5に、複数の押上ユニット4が接続される態様等が考え得る。
押上ユニット4は、押上板5の下方に配設され、押上ピストン機構35のロッド部材である押上ロッド32の上端部と押上板5の所定箇所が接続される。配設手段について特に限定はないが、海底から所要高さの土台を設置して該土台の上に押上ユニット4を固定的に載置する態様が望ましい。かかる態様を採り底面部分が固定されることで、押上ピストン機構35の上下摺動によって発生させた力が押上板5との接続部分のみにかかることとなり、押上板5の効率的な上昇に資する。
【0035】
押上管30は、押上ユニット4を構成する管状体であり、中空部に押上ピストン機構35が内設されるものである。
押上管30は、中空部を有した管状体であり、該押上管30の天面部は、押上ピストン機構35が上下動すべく一部又は全部が開口されており、また、押上管30の底面部は、流入した海水を貯留すべく閉塞されている。
押上管30の形状及び長さについては、該押上管30に内設される押上ピストン機構35が摺動可能な内径(中空部に備えられる後述の押上ヘッド31の外径より僅かに大径)を備えて略円筒形状に形成され、且つ、押上板5と接続された摺動ユニット3を押し上げ、圧縮ユニット2をさらに圧縮させるために必要な距離と同程度以上の全長を有して形成されている。
底面部所定箇所には、海水を中空部へ流入可能な押上注水口33と、中空部へ流入した海水を外部へ流出させる押上排水口34が夫々備えられ、自動的に、もしくは、手動にて海水を給排水することで、中空部に内設された押上ピストン機構35を上下摺動させることとなる。また、押上管30は、海面に対して略垂直状に延伸した状態且つ上段に配設される押上板5の底面に対し略垂直方向に設置されることで、押上ユニット4に備えられた押上ピストン機構35による上方へ向けた圧力が直接押上板5へ伝わり、該押上板5の押し上げをスムーズに行うことが可能となる。
【0036】
押上注水口33は、押上管30の中空部へ海水を流入させるための孔であり、詳しくは、押上管30の閉塞された底面と中空部内に備えられる押上ピストン機構35との間に海水を流入させるための孔である。
押上注水口33から中空部へ海水を流入させることで、その海水圧によって押上ピストン機構35を上方に押し上げる。尚、中空部に流入した海水の水位は、押上管30の水頭圧(押上ピストン機構35に掛かる荷重)によって前後するものではあるが、最大で押上管30天面部近傍まで上昇し得ることとなる。また、押上注水口33は、図1に図示したような、開放と閉塞を切り替え可能な押上給水弁36を採用し、海水の流入と停止を切り替え可能な態様も好適である。
押上注水口33の位置については、特に限定はしないが、押上管30の閉塞された底面と押上ピストン機構35との間に海水を流入させて該押上ピストン機構35を下方から押し上げるべく作用させることから、少なくとも押上管30の下方域に備えられることを要し、具体的には、押上管30の底面若しくは側壁における下端近傍に備えられる。また、押上注水口33の大きさや数についても限定はないが、自動または手動にて海水流入量の調整が行えるよう、大きさを絞ったり開放したりする孔の数を限定することが可能な態様を採用し得る。かかる態様を採用することにより、押上ピストン機構35の上動時にかかる速さを調整することが可能となる。
【0037】
押上排水口34は、押上管30の中空部に貯留された海水を外部に流出させる孔であり、押上管30の所定箇所に備えられるものである。
押上管30から外部へ海水を流出させることで、中空部内の水位を下げて押上ピストン機構35を下降させる。尚、押上排水口34には当然に押上排水ポンプ37が接続され、押上ピストン機構35の下降に際し、強制的に中空部内の海水を外部へ排出させることとなる。
押上排水口34の位置については特に限定はしないが、押上管30の閉塞された底面と押上ピストン機構35との間の海水を流出させて該押上ピストン機構35が下降するよう作用させることから、少なくとも押上管30の下方域に備えられることを要し、具体的には、押上管30の底面若しくは側壁における下端近傍に備えられる。また、押上排水口34の大きさや数についても限定はなく、押上排水ポンプ37による経時的流出量を調整することで、押上ピストン機構35の下降速度を調整することが可能となる。
【0038】
押上ユニット4に備えられる押上ピストン機構35は、押上管30に内設される押上ヘッド31及び押上ロッド32であり、海水圧を利用して上摺動を行うことで押上ロッド32の上端部に接続された押上板5を介して摺動ユニット3を押し上げるものである。
押上ピストン機構35は、押上管30の中空部内に備えられており、押上ヘッド31及び押上ロッド32によって構成されているが、押上管30が複数設置されている態様であれば、当然に、該押上管30の中空部内に夫々内設される。
また、押上ピストン機構35の上下摺動制御については、押上注水口33及び押上排水口34の開閉動作を手動、もしくは自動で行うものとなるが、制御方法について特に限定はなく、例えば、摺動ユニット3として備えられた摺動管20の中空部へ水位センサを備えると共に、押上板5の押し上げに必要な圧力を基にした上摺動距離をプログラムとして設定することで、摺動管20への海水流入による圧縮ユニット2への圧縮動作が完了した後、該プログラムに沿った上摺動動作が自動的に行われる、といった態様が考え得る。
【0039】
押上ヘッド31は、押上管30の中空部に備わるピストン部材であり、該押上ヘッド31の底面と押上管30の底面との間の中空部に貯留される海水の増減により、中空部内を垂直方向へ上下に摺動するものである。
押上ヘッド31の形状は略円柱状であって、上下の長さ(全高)について特に限定はないが、押上管30の中空部内を摺動可能な程度に押上管30の内径よりやや縮径された外径を有して成る。この時、押上ヘッド31の下方に存する海水が押上ヘッド31と押上管30との僅かな間隙を通過して押上ヘッド31の上方へ漏出することのないよう、押上ヘッド31の外周壁に一乃至複数のピストンリングを周設するなど漏水防止手段を施すことで水密性を担保する態様が好適である。また、略円柱状を成す押上ヘッド31の内部を中空状として空気を充満させることで、押上ヘッド31自体の重量を軽減させると共に、浮力を増幅させる態様も採用し得る。押上ヘッド31の上面には、上方へ延伸する押上ロッド32の下端が固定されている。
【0040】
押上ロッド32は、長尺の棒状体であって、押上ヘッド31の上下動をそのまま押上板5に伝達するものである。よって、押上ロッド32の上端は押上板5の底面所定箇所に接続されると共に、押上ロッド32の下端は押上ヘッド31の天面所定箇所に固定的に接続されている。これにより、押上板5と接続された摺動ユニット3を押上ヘッド31の上下動に連動して昇降させることが可能となる。
押上ロッド32下端部の設置位置や本数については特に限定はなく、押上ヘッド31の上下摺動によって発生する力を効率的に押上板5へ伝達可能な位置及び本数であれば良い。例えば、押上ロッド32が一本であれば、押上ヘッド31の天面部略中央箇所に固定する態様となる。同様に、押上ロッド32上端部の設置位置や本数についても特に限定はなく、押上ヘッド31の上下摺動によって発生する力を効率的に押上板5へ伝達可能な位置及び本数であれば良い。また、押上ロッド32の形状については、特に限定するものではないが、長さは少なくとも押上板5への押し上げに伴って上昇する摺動ユニット3によって行われる流体への圧縮に必要な長さを有し、太さについては押上板5への押し上げにかかる水圧に耐え得る荷重強度を有していることを要する。
【0041】
以上の構成要素から成る流体圧縮機1を、図2に沿って動作を説明する。なお、図1にて説明した圧縮ユニット2の動作については省略する。
図2(a)は、圧縮ユニット2に対し、供給口13から流体が流入した状態である。圧縮ヘッド11は、下がっており、圧縮管10の大部分は流体で占められている。
図2(b)は、摺動ユニット3へ海水が注水されることで摺動ピストン機構25が上昇し、圧縮ヘッド11が押し上げられることで圧縮管10の流体が圧縮された状態である。
摺動ユニット3中空部には海水が充填され、摺動ピストン機構25は摺動ユニット3の天面部近傍まで上昇している。
押上ユニット4の押上注水口33から海水が注水される。押上ヘッド31よりも下の領域に海水が注水されることになる。
海水が注水されるに従って、海水の水圧により押上ヘッド31が上方に押し上げられる。それに伴い、押上ロッド32、押上板5、摺動ユニット3、が押し上げられることで、圧縮ヘッド11が更に押し上げられる。
流体は、この力によって、図2(c)のように図2(b)よりも更に圧縮されることとなる。
以上の動作により、流体は図2(c)のように圧縮される。また、圧縮された流体は、送出口15を介して送出管14に送出されることとなる。
【0042】
このように、本実施形態によれば、摺動ユニット3によって圧縮された流体を、押上ユニット4による持ち上げ動作によって更に圧縮可能となり、強い圧力が必要な流体への圧縮が可能となると共に、流体圧縮工程を二段に分割することで摺動ユニット3及び押上ユニット4にかかる負担を分散させる、といった優れた効果を奏する。
【0043】
また、図3のように、一の摺動ユニット3に対して複数の押上ユニット4を配設し、流体の圧縮を行う態様も考え得る。
摺動ユニット3による流体の圧縮が行われた後、押上板5に接続された複数の押上ユニット4にて海水の注水が行われ、夫々の押上ピストン機構35が上昇し押上板5が持ち上げられる。この時、夫々の押上ユニット4において、海水の流入量や押上ピストン機構35の上昇幅を均一にすることで、押上板5にかかる上昇力が摺動ユニット3へスムーズに伝達され、圧縮ヘッド11による流体への圧縮が効率良く行われることとなる。
【0044】
このように、本実施形態によれば、摺動ユニット3によって圧縮された流体を、複数の押上ユニット4による持ち上げ動作によって更に圧縮可能となり、図2に図示した実施形態と比べ、押上ユニット4への負担を軽減させることが可能となる、といった優れた効果を奏する。
【0045】
他の実施形態について、図4に沿って説明する。上述の実施形態では、流体を圧縮する構造のみであったが、流体の圧縮と同時に摺動ユニット3及び押上ユニット4の中空部より空気と海水の流入及び排出が行われている。本実施形態では、その排出される空気と海水を利用し、発電ユニット8にて風力発電を行うことで、効果的なエネルギーの循環を図ろうとするものである。
図4に図示したように、流体圧縮機1の後段に、排水タンク6及びエアタンク7並びに発電ユニット8を配設し、エアタンク7に貯留した空気が排出される際の圧力を利用し、風力発電を行うものである。
【0046】
図示したように、摺動管20及び押上管30の天面部について、ピストン機構の上下動に必要な開口部以外が閉塞されている態様であった場合、中空部へ貯留されている海水を排出する際に、海水の排出量と同量の大気を流入可能な給気口として、摺動給気口28や押上給気口38(以下、単に「給気口」という場合がある。)が備えられている。同様に、中空部へ海水を流入させる際に、海水の流入量と同量の空気を外部へ放出可能な排気口として、摺動排気口29や押上排気口39(以下、単に「排気口」という場合がある。)も備えられている。
【0047】
給気口には、海上の大気を吸引し摺動管20及び押上管30へ向け給気可能な給気管が接続されると共に、滞留している空気が給気口へ侵入しないよう、逆流防止弁を備えた給気調整弁50が設けられる。また、摺動管20及び押上管30における給気口の位置について特に限定はしないが、大気をスムーズに給気させるため、少なくとも上方域に備えられることが好適であり、具体的には、摺動管20及び押上管30の天面若しくは側壁における上端近傍が好ましい。さらに、給気口の大きさや数についても限定はないが、摺動排水口24及び押上排水口34と同径以上とすることで、中空部より排出される海水量と給気口から給気される空気量が同一となり、スムーズな海水の排出及び空気の流入に資することとなる。
【0048】
排気口には、摺動管20及び押上管30の中空部内に貯留している空気を外部へ排出可能な排気管が接続されると共に、排出した空気が中空部へ逆流しないよう逆流防止弁を備えた排気調整弁51が設けられる。また、摺動管20及び押上管30における排気口の位置については特に限定はしないが、中空部内の空気をスムーズに排気させるため、少なくとも上方域に備えられることが好適であり、具体的には、摺動管20及び押上管30の天面若しくは側壁における上端近傍が好ましい。さらに、排気口の大きさや数についても限定はないが、摺動注水口23及び押上注水口33と同径以上とすることで、中空部へ流入される海水量と排気口から排気される空気量が同一となり、スムーズな海水の流入及び空気の排気に資することとなる。
摺動管20及び押上管30から排気口及び排気管を介して排出された空気は、後述のエアタンク7中空部へ送気され、風力発電に使用される空気として貯留されることとなる。
【0049】
排水タンク6は、摺動管20及び押上管30の中空部から送出された海水を貯留することで、該排水タンク6内の空気を後段のエアタンク7へ送気し、さらに排水タンク6内に貯留した海水を外部へ排出することで、大気から給気を行うタンクである。
排水タンク6は、海水を貯留可能な中空部を有し、天面および底面が閉塞されたタンクであり、該排水タンク6の所定箇所には、摺動管20及び押上管30から送出された海水を排水タンク6内へ流入させる海水流入口41と、排水タンク6内の海水を外部へ排出させる海水排出口42及び海水排水ポンプ40と、大気を排水タンク6内へ給気させる空気吸入口43と、排水タンク6内の空気を後段のエアタンク7へ送気させる空気送出口44が夫々備えられる。排水タンク6の形状や長さについては、摺動管20及び押上管30から流入される海水が貯留可能な容量を有していれば良く、具体的には、該排水タンク6に接続される摺動管20及び押上管30の中空部内に流入する総海水量を最大貯留量とした容量を有する排水タンク6が好適である。
【0050】
海水流入口41は、摺動管20及び押上管30から送出された海水を排水タンク6内へ流入し貯留させるための孔であり、詳しくは、摺動排水口24及び押上排水口34から送出された海水を閉塞された排水タンク6内に貯留させて、該排水タンク6内に滞留している空気を下方から押し上げるべく作用させる孔である。
海水流入口41の設置箇所について特に限定はないが、海水流入口41の天面が押上ユニット4の底面よりも下方位置に配設されているため、重力に従って垂下する海水が流入可能な設置箇所、例えば、図4に図示したように、排水タンク6の側壁上方部に備える態様や、天面部所定箇所に備える態様が好適である。また、海水流入口41の大きさについては、摺動排水口24及び押上排水口34と同径以上とすることで、海水の流入がスムーズに行われることとなる。
海水が海水流入口41を介して排水タンク6内へ流入されることにより、該排水タンク6内に貯留する海水の総体積が増加すると共に、排水タンク6内に滞留する空気が圧縮され、排水タンク6上部に設けられた空気送出口44から後段のエアタンク7へ向けて送気される。この作用は、摺動排水口24及び押上排水口34からの海水流入が停止されるか、あるいは海水排出口42から海水が外部へ排出されるまで連続して行われることとなる。
【0051】
海水排出口42は、排水タンク6内に貯留している海水を外部に排出させるための孔であり、詳しくは、排水タンク6内に貯留した海水を外部へ排出させると同時に、大気を該排水タンク6内へ給気し滞留させるべく作用させる孔である。
尚、水頭圧の関係から、排水タンク6に貯留された海水が外部へ自然に排出されることはないため、海水排水ポンプ40を利用して海水を外部へ排出させることとなる。該海水排水ポンプ40の具体的構造・仕様については、従来公知の構造・仕様のものを採用すれば足り、特に限定するものではない。
海水排出口42の位置について特に限定はしないが、排水タンク6内の海水を外部へ排出させることで、該排水タンク6内に貯留している海水の体積が減容するよう作用させることから、少なくとも排水タンク6の下方域に備えられることを要し、具体的には、排水タンク6の底面若しくは側壁における下端近傍に備えられる。また、海水排出口42の大きさや数についても限定はないが、摺動ユニット3及び押上ユニット4に備えられたピストン機構の上下摺動と連動し、自動的に海水排出量の調整が行えるような排水調整機構を海水排水ポンプ40に備える態様が好適である。かかる態様を採用することにより、ピストン機構の上摺動時には海水排水ポンプ40による海水排出を行い、下摺動時には海水排水ポンプ40を停止して海水を貯留させる、といった調整を行うことが可能となる。
海水排出口42の開放及び海水排水ポンプ40の作動に伴い、排水タンク6内の海水が外部へ流出されることにより、排水タンク6内に貯留されている海水の総体積が減少すると共に、該排水タンク6上部に設けられた空気吸入口43から大気が流入される。この作用は、海水排出口42が閉塞され海水の排出が停止されるか、あるいは摺動排水口24及び押上排水口34からの海水流入が開始されるまで連続して行われることとなる。
【0052】
空気吸入口43は、外部から大気を取り込み、排水タンク6内へ給気させるための孔であり、詳しくは、排水タンク6内に貯留した海水が外部へ排出されると同時に、海水排出量と同量の大気を該排水タンク6内へ給気し滞留させる孔である。
空気吸入口43には、海上の大気を吸引して排水タンク6へ向け給気可能な給気管が接続されると共に、該排水タンク6内に滞留している空気が給気管へ侵入しないよう、逆流防止弁を備えた給気調整弁50が設けられる。また、空気吸入口43の位置について特に限定はしないが、排水タンク6内へ大気をスムーズに給気させるため、少なくとも排水タンク6の上方域に備えられることが好適であり、具体的には、排水タンク6の天面若しくは側壁における上端近傍が好ましい。また、空気吸入口43の大きさや数についても限定はないが、海水排出口42と同径以上とすることで、該海水排出口42から排出される海水量と空気吸入口43から給気される空気量が同一となり、スムーズな海水の流入及び空気の送気に資することとなる。
【0053】
空気送出口44は、排水タンク6内に滞留している空気を後段のエアタンク7へ送気させるための孔であり、詳しくは、海水流入口41から排水タンク6内への海水流入に伴い、滞留している空気を該排水タンク6内から後段に配設されるエアタンク7へ送気させるための孔である。
空気送出口44には、開放と閉塞を自動もしくは手動で切り替え可能な排気調整弁51を備える態様が望ましい。この態様を採ることで、後段のエアタンク7へ送気する際に、開放のタイミングを遅らせることで空気に圧力を加えることが可能となり、該エアタンク7が排水タンク6より下方に配設された場合でも、加えられた圧力によって正常に空気を送気させることが可能となる。また、空気送出口44の位置について特に限定はしないが、排水タンク6内の空気を後段へ送気させることから、少なくとも排水タンク6の上方域に備えられることを要し、具体的には、排水タンク6の天面若しくは側壁における上端近傍に備えられる。また、空気送出口44の大きさや数についても限定はないが、海水流入口41と同径以上とすることで、該海水流入口41から流入する海水量と空気送出口44から送気される空気量が同一となり、スムーズな海水の流入及び空気の送気に資することとなる。
空気送出口44には、エアタンク7中空部へ延伸する送気管が当然に接続されており、空気は送気管を介して排水タンク6からエアタンク7に送気されることとなる。
【0054】
エアタンク7は、中空部を有する筒状管であり、該エアタンク7の天面部は、流入した海水及び空気を貯留すべく閉塞され、エアタンク7の底面部は、摺動排気口29及び押上排気口39並びに空気送出口44から夫々延伸した送気管に接続された空気流入口45を覆うように、一部又は全部が開口されている。エアタンク7の形状について、空気流入口45から流入する空気を該エアタンク7の上部近傍にて貯留可能な形状であればよく、特に限定はないが、例えば、略円筒形状や多角柱形状等が考え得る。エアタンク7の長さについても特に限定はなく、空気流入口45から流入する空気を貯留可能な容量を有する長さであれば良い。エアタンク7の設置場所については、該エアタンク7上部近傍にて水圧により圧縮された状態で貯留している空気を排出し、その圧力を利用して風力発電を行う態様のため、少なくとも海中に設置されるものであり、例えば、水深10m程度に設置する態様であれば、貯留された空気は大気と比較して1/2程度にまで圧縮されることとなるため、排出される際の流速を確保することが可能となる。
エアタンク7の開放された底面から海水が流入することで、該エアタンク7の中空部が海水で充填されることとなる。そして、エアタンク7の中空部に備えられた空気流入口45より空気が流入することで、中空部上部に空気が貯留されることとなり、貯留された空気の体積と同量の海水は、エアタンク7の開放された底部から自動的に外部へ排出されることとなる。
【0055】
空気流入口45は、摺動管20及び押上管30並びに排水タンク6から送気された空気を、送気管を介してエアタンク7中空部内へ流入させる孔である。
空気流入口45は、エアタンク7中空部まで配設された送気管毎に設置される孔であるが、図4に図示したように、複数の送気管を一の送気管に合流させた後にエアタンク7中空部へ配設させる態様も好適である。
空気流入口45の設置箇所については、エアタンク7へ流入させる空気が該エアタンク7外に漏出しない箇所であれば特に限定はないが、例えば、図示したようなエアタンク7中空部の略中央箇所等に備える態様が考え得る。また、空気流入口45の大きさや数についても特に限定はないが、エアタンク7内に配設される送気管と同径以上とすることで、排気口や空気送出口44から空気流入口45へ向けて空気が送出される際に、不要な圧力がかかることなく送気される、といった効果が期待できる。
空気流入口45からエアタンク7へ流入された空気は、該エアタンク7中空部内に充填されている海水中を浮上した後、エアタンク7上部にて滞留することとなる。
【0056】
発電送気口46は、エアタンク7中空部に滞留した空気を、排気管を介して発電ユニット8へ送気させる孔である。
発電送気口46の設置箇所について特に限定はないが、エアタンク7に貯留した空気を発電ユニット8へ向けて排出させるため、少なくともエアタンク7の上方域に備えられることを要し、具体的には、エアタンク7の天面略中央箇所に備えられる態様が望ましい。また、図示していないが、エアタンク7の天面に発電送気口46へ向けた傾斜を形成し、流入した空気が自然に発電送気口46へ向けて滞留していく、といった態様を採用することで、効率の良い空気の排出が可能となる。
また、発電送気口46に接続される排気管には、図示したような排気調整弁51を設け、任意の空気量を自動または手動にて排出させるといった態様も好適である。この態様を採ることで、一定の圧力を有した空気を定量で排出することが可能となり、排気管の後段に備えられる発電ユニット8において安定した風力発電が可能になる、といった優れた効果を奏するものである。さらに、発電送気口46及び排気管の径を空気流入口45よりも小径とすることで、エアタンク7への貯留量を増加させると共に、排気管内における空気の流速を高めることが可能となる。
【0057】
発電ユニット8は、エアタンク7の後段に備えられ、該エアタンク7から排気管を介して送出される空気の圧力を使用する発電設備である。
発電ユニット8は、エアタンク7から送気される圧力を伴った空気を利用して発電を行う設備であればよく、例えば、排気管の内部に複数枚のブレードを設け、該ブレードの回転力によりタービン発電機を回転させて電力を発生させる、といった態様も好適である。
発電ユニット8の構造について特に限定はなく、例えば、ブレードであればプロペラ型やサボニウス型等の形状の中から設置箇所の構造により適宜選択されることとなる。また、タービン発電機についても限定はなく、従来公知の機器が種々適用できる。さらに、発電ユニット8の設置箇所や設置数についても特に限定はないが、例えば、発電送気口46から送気される空気圧を効率よく使用するため、エアタンク7から排出される空気圧が一番高い排気調整弁51の出口付近に第一の発電ユニット8を設けると共に、該発電ユニット8の下流側にオリフィスを備えることで空気圧を高め、第二の発電ユニット8をその後段に設ける、といった態様も考え得る。
発電ユニット8を経由することで発電を行った空気は、発電ユニット8に接続される排気管を介し、大気へ排出されることとなる。
【0058】
発電ユニット8にて発電された電力の使用用途について特に限定はなく、例えば、バッテリ等の外部電源に充電する態様や、摺動ユニット3や押上ユニット4、排水タンク6に備わっている排水ポンプ用の電源として使用する態様等が考え得る。
また、発電ユニット8にて発電された電力の配電方法として、海上に配電施設を設け、該配電施設から電力使用箇所まで電力線を張架する、といった態様等も考え得る。
【0059】
以上の構成要素を備えた流体圧縮機1の動作を、図4に沿って説明する。尚、図示していない摺動ユニット3における発電作用は、図示した押上ユニット4における発電作用と同様の機構で動作するため、説明を省略する。
押上ヘッド31の上下摺動により圧縮動作を行う押上ユニット4において、押上ヘッド31の下摺動時には、押上排水口34から押上管30中空部に貯留された海水が排水タンク6へ向けて排出されると同時に、押上給気口38を介した押上管30中空部への大気流入が行われる。
押上排水口34から排水タンク6へ流入する海水によって、該排水タンク6に貯留されていた空気は圧縮され、排気調整弁51の開放に伴い海中に配設されたエアタンク7へ送気される。そして、エアタンク7に送気された空気が該エアタンク7中空部に貯留された後、発電送気口46が開放され、海中から海上方向へ向け上昇する風力を用いた発電が発電ユニット8にて行われる。発電に使用された空気は上昇を続け、大気へ排出されることとなる。
また、押上ヘッド31の上摺動時には、押上注水口33から押上管30中空部へ海水が流入すると同時に、押上排気口39から押上管30中空部に貯留された空気がエアタンク7へ向けて送出され、前述同様に発電ユニット8による発電に利用されることとなる。
【0060】
このように、本実施形態によれば、流体圧縮時に排出される空気を風力発電に使用することが可能であると共に、流体圧縮後に排出される海水を利用した大気の流入・流出作用により、風力発電に使用可能な空気を送出することも可能になる、といった優れた効果を奏する。また、生成した電力を、海水排出に使用するポンプ等にも使用可能であり、流体圧縮機1全体の省エネルギー化に資することとなる。
【0061】
以上の各構成要素により、本発明にかかる流体圧縮機1は構成されている。
すなわち、本発明にかかる流体圧縮機1は、圧縮ユニット2と、摺動ユニット3と、で構成され、圧縮ユニット2の中空部にて圧縮させる流体に必要な圧力に応じて摺動ユニット3の底部に押上板5を設けると共に、該押上板5の底部を持ち上げ可能な押上ユニット4が夫々備えられて成り、摺動ユニット3及び押上ユニット4が設置可能な海上であれば、あらゆる場所に設置することが可能であって、例えば、海底資源採掘現場や沖合等に配設され、主に圧縮ユニット2へ流入された流体の圧縮を行うこととなる。
【0062】
以上、本発明にかかる流体圧縮機1の基本的構成態様、並びに、動作・作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、圧縮ユニット2にて高温高圧となった圧縮気体を、熱交換器を経由することで常温に低下させた後に複数のプロペラが内設された配管を通過させることで発電タービンにて発電を行いつつ、圧力の低下した圧縮気体をエアタンク7へ送気することで再度発電ユニット8にて発電を行い、発電効率を高めると共に、複数の発電設備を経由させることにより安定した電力供給を行う態様も可能である。
【0063】
以上の通り、本発明にかかる流体圧縮機1によれば、摺動ユニット3における中空部への海水の流入によって増加する水位・水圧により摺動ヘッド21を上摺動させることで、摺動ロッド22を介して圧縮ヘッド11を上動させ、それにより圧縮ユニット2に充填された流体を圧縮させることが可能であって、流体の圧縮に必要なエネルギーを海水圧によって補うことが可能である、
【0064】
尚、空気は、圧縮されることにより温度が高くなる性質がある。そこで、本発明における圧縮対象の流体として空気を採用した場合、圧縮による空気の高温化を利用して、他の流体(例えば水)との熱交換を行う態様も考え得る。具体的には、例えば圧縮空気を利用して、水との熱交換により湯を沸かす態様なども可能であって、発生エネルギーの有効利用に資する。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、圧縮ユニット2の上動の幅や押上ユニット4の設置、もしくは、圧縮ユニット2及び摺動ユニット3の増設を行うことにより、様々な流体の圧縮が可能であるため、特に海上における天然ガス等の資源採掘現場や、高圧空気を使用する海上施設・海岸施設等において使用するのに好適である。したがって、本発明にかかる「流体圧縮機」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0066】
1 流体圧縮機
2 圧縮ユニット
3 摺動ユニット
4 押上ユニット
5 押上板
6 排水タンク
7 エアタンク
8 発電ユニット
10 圧縮管
11 圧縮ヘッド
12 供給管
13 供給口
14 送出管
15 送出口
20 摺動管
21 摺動ヘッド
22 摺動ロッド
23 摺動注水口
24 摺動排出口
25 摺動ピストン機構
26 摺動給水弁
27 摺動排水ポンプ
28 摺動給気口
29 摺動排気口
30 押上管
31 押上ヘッド
32 押上ロッド
33 押上注水口
34 押上排水口
35 押上ピストン機構
36 押上給水弁
37 押上排水ポンプ
38 押上給気口
39 押上排気口
41 海水流入口
42 海水排出口
43 空気吸入口
44 空気送出口
45 空気流入口
46 発電送気口
50 給気調整弁
51 排気調整弁

図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-02-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮ユニットと、摺動ユニットと、から成り、
圧縮ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面が閉塞され底面が開口された圧縮管と、該圧縮管の底面を閉塞すると共に圧縮管内を上下に摺動する圧縮ヘッドと、圧縮管天面と圧縮ヘッドとの間の中空部へ圧縮させる流体を導入可能な供給管と、圧縮ヘッドの摺動により圧縮された流体を後段へ送出可能な送出管と、から構成され、
摺動ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面及び底面が閉塞された摺動管と、該摺動管内を上下に摺動する摺動ヘッドと、該摺動ヘッドの上面に備えられ上方に延伸し圧縮ヘッドの底面と接続される摺動ロッドと、摺動管外部の海水を摺動管底面と摺動ヘッド底面との間の中空部へ導入可能な摺動注水口と、摺動管内に流入した海水を外部へ排出する摺動排水口と、
から構成され、
該摺動ユニットの下方に押上板が備えられると共に、該押上板の下方に一乃至複数の押上ユニットが配設されて成り、
該押上ユニットは、中空部を有し海面に対して略垂直状に延伸し天面及び底面が閉塞された押上管と、該押上管内を上下に摺動する押上ヘッドと、該押上ヘッドの上面に備えられ上方に延伸し押上板の底面部所定箇所と接続される押上ロッドと、押上管外部の海水を押上管底面と押上ヘッド底面との間の中空部へ導入可能な押上注水口と、押上管内に流入した海水を外部へ排出する押上排水口と、から構成され、
海水圧によって作動する摺動ユニット内のピストン機構により、圧縮ユニット内の圧縮ヘッドが摺動されると共に、押上ユニットにより押上板が押し上げられることで摺動ユニットが上昇することを特徴とする流体圧縮機。
【請求項2】
前記押上ユニットの後段に、
前記摺動ユニット及び該押上ユニットから排水される海水が排水管を介して貯留される排水タンクと、海中に備えられ該排水タンク内に滞留し海水流入と共に排出される空気を貯留するエアタンクと、該エアタンクにて貯留された空気を利用して発電を行う発電ユニットと、が配設されて成ることを特徴とする請求項に記載の流体圧縮機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
図1】本発明にかかる流体圧縮機の実施形態を示す説明図である。
図2】本発明にかかる流体圧縮機の実施形態を示す説明図である。
図3】本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図である。
図4】本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
図面に沿って、本発明にかかる流体圧縮機1を説明する。
図1は、本発明にかかる流体圧縮機の実施形態を示す説明図であり、(a)は圧縮ユニットへ流体を流入させた状態、(b)は摺動ユニットの作動による流体の圧縮状態を示している。また、図2は、本発明にかかる流体圧縮機の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、圧縮ユニット、摺動ユニット、押上板、押上ユニットの設置態様を示している。さらに、図3は、本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、圧縮ユニット、摺動ユニット、押上板、押上ユニットを夫々簡略化した動作態様であって、(a)は圧縮ユニットに流体が充填された状態を示し、(b)は摺動ユニットによる流体の圧縮が行われた状態を示し、(c)は押上ユニット及び押上板による摺動ユニットの上昇及び流体への更なる圧縮が行われている状態を示している。そしてまた、図4は、本発明にかかる流体圧縮機の他の実施形態を示す説明図であり、詳しくは、押上ユニットの後段に配設された排水タンクと、エアタンクと、発電ユニットの設置態様を示している。
本発明にかかる流体圧縮機1は、基本的形態として、主に圧縮ユニット2と、摺動ユニット3で構成されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
本発明の実施形態について、図2及び図3に沿って説明する。上述の実施形態では、圧縮ユニット2と摺動ユニット3の構成部分のみ説明したが、押上ユニット4を用いることで、さらに効果的動作とすることができる。
図2に図示したように、押上ユニット4は摺動ユニット3の下側に位置し、該摺動ユニット3自体を押上ユニット4にて上方へ押し上げることにより、摺動ユニット3と接続されている圧縮ヘッド11を上摺動させ、流体をさらに圧縮させるものである。
押上ユニット4は、押上管30と、押上ピストン機構35と、からなる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0033】
図2及び図3に図示したように、押上板5を摺動ユニット3の底部に配設すると共に、押上ユニット4における押上ピストン機構35上端部を接続し、摺動ユニット3を押し上げる際の押し上げ補助とする態様好適である。
かかる態様に使用される押上板5は、摺動管20の底面部に備えられる板状体であり、該押上板5の底面に接続された押上ユニット4の上下摺動によって押上板5及び摺動ユニット3の昇降が行われると共に、圧縮ヘッド11も上下摺動させるものである。
押上板5の形状については特に限定はしないが、例えば、摺動管20との接続部分を中心とした略直方形の板状体が考え得る。また、押上板5の大きさについても特に限定しないが、該押上板5の表面積に比例して水圧が増加し押上板5の上昇に必要な力が大きくなるため、押上板5の底面に接続される押上ユニット4の設置数及び設置箇所を考慮しつつ表面積を狭くする態様が望ましい。さらに、押上板5と摺動管20及び、押上板5と押上ユニット4との接続方法についても限定はなく、ネジ等を使った螺合や溶着等の手段により固定されることとなる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
さらに、本発明にかかる流体圧縮機によれば、押上ユニットの後段に排水タンクとエアタンクと発電ユニットが夫々配設されていることにより、流体圧縮のために流入した海水を利用して発電を行うことも可能であって、流体圧縮機に使用される排水ポンプ等の動力源の一部として使用するなど、電力の省エネルギー化にも資する、といった優れた効果を奏する。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
発電ユニット8にて発電された電力の使用用途について特に限定はなく、例えば、バッテリ等の外部電源に充電する態様や、摺動ユニット3や押上ユニット4、排水タンク6に備わっている排水ポンプ用の動力源の一部として使用する態様等が考え得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
このように、本実施形態によれば、流体圧縮時に排出される空気を風力発電に使用することが可能であると共に、流体圧縮後に排出される海水を利用した大気の流入・流出作用により、風力発電に使用可能な空気を送出することも可能になる、といった優れた効果を奏する。また、生成した電力を、海水排出に使用するポンプ等の動力源の一部としても使用可能であり、流体圧縮機1全体の省エネルギー化に資することとなる。