(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109205
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】冷凍方法及びその冷凍回路
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20240806BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F25B1/00 331Z
F25B1/00 396U
F25B43/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013876
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】501188720
【氏名又は名称】株式会社マック
(74)【代理人】
【識別番号】100081570
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰芳
(72)【発明者】
【氏名】松下 紘晃
(57)【要約】
【課題】 現状では、非共沸混合冷媒を使用して、常温下でも凝縮を可能とし、低温でも蒸発可能とする冷凍方法及び冷凍回路は存在していないという点である。
【解決手段】 圧縮機より吐出させた非共沸混合冷媒を、凝縮器を通過させ、その凝縮器を通過した前記冷媒を、一枚の伝熱プレートで一次側と二次側に仕切られ、その一次側と二次側の伝熱面積と容量を同一に構成した第一の熱交換器の一次側を通過させ、この一次側を通過した冷媒を気液分離器に導入させ、この気液分離器で分離された未凝縮冷媒ガスは前記第一の熱交換器と同様の構造をした第二の熱交換器の一次側へ導入させ、凝縮された液状ガスは、この第二の熱交換器の二次側へ導入させ、第二の熱交換器の一次側を通過したガスは前記第一の熱交換器の二次側へ導入させて圧縮機へ戻し、第二の熱交換器の一次側を通過した冷媒は蒸発器を通過させて第二の熱交換器の二次側に導入させて圧縮機へ戻し循環させることとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機より吐出させた非共沸混合冷媒を、凝縮器を通過させ、その凝縮器を通過した前記冷媒を、一枚の伝熱プレートで一次側と二次側に仕切られ、その一次側と二次側の伝熱面積と容量を同一に構成した第一の熱交換器の一次側を通過させ、この一次側を通過した冷媒を気液分離器に導入させ、この気液分離器で分離された未凝縮冷媒ガスは前記第一の熱交換器と同様の構造をした第二の熱交換器の一次側へ導入させ、凝縮された液状ガスは、この第二の熱交換器の二次側へ導入させ、第二の熱交換器の一次側を通過したガスは前記第一の熱交換器の二次側へ導入させて圧縮機へ戻し、第二の熱交換器の一次側を通過した冷媒は蒸発器を通過させて第二の熱交換器の二次側に導入させて圧縮機へ戻し循環させることを特徴とする冷凍方法。
【請求項2】
前記した非共沸混合冷媒として二酸化炭素とHFOの冷媒混合ガスを使用することを特徴とする請求項1に記載の冷凍方法。
【請求項3】
前記気液分離器は縦長の円筒形のものとし、前記第一の熱交換器の一次側を通過した冷媒は気液分離器の上下中間位置の導入口から導入されることを特徴とする請求項1に記載の冷凍方法。
【請求項4】
気液分離器に導入された冷媒は、未凝縮の冷媒ガスは気液分離器の上部へ流れ、凝縮された冷媒液は自重で気液分離器の下部へ落下滞留させることを特徴とする請求項3に記載の冷凍方法。
【請求項5】
前記気液分離器からの凝縮された液状ガスの第二の熱交換器の二次側への導入は、蒸発器を通過して第二の熱交換器の二次側への戻り冷媒の流路と合流させることを特徴とする請求項1に記載の冷凍方法。
【請求項6】
二酸化炭素とHFO冷媒を混合させた非共沸冷媒を圧縮吐出する圧縮機と、その圧縮機から吐出された冷媒ガスを凝縮する凝縮器と、その凝縮器からの冷媒を通過させる、一枚の伝熱プレートで一次側と二次側に仕切られ、その一次側と二次側は伝熱面積と容量を同一に構成した第一の熱交換器と、その第一の熱交換器の一次側を通過した冷媒を気液に分離する気液分離器と、その気液分離器で分離された未凝縮冷媒ガスを一次側に通過させる、前記第一の熱交換器と同様の構造の第二の熱交換器と、蒸発器が組み込まれ、前記第二の熱交換器の二次側には気液分離器で分離された凝縮液と蒸発器からの戻り冷媒が合流して通過する構成となっていることを特徴とする冷媒の冷凍回路。
【請求項7】
前記気液分離器は円筒形の縦型のものとし、その上下中間位置に冷媒の導入口を設け、その気液分離器内における冷媒の流速は5m/s以下に制御されていることを特徴とする請求項6に記載の冷凍回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷凍方法及びその冷凍回路に関し、特に常温下で冷媒を凝縮し、低温で蒸発可能とする冷凍方法及びその冷凍回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、冷凍方法や回路にあっては地球環境の保全のため、冷媒としてフロンガスの使用が制約されている。そこで冷媒として地球温暖化係数(GWP値)が小さいハイドロフルオレフィン(HFO-1224yd,HFO-1234yf等)が使用されるようになっているもので、混合冷媒としてR-744CO2(GWP1)との混合はノンフロン冷媒として認定されている。
【0003】
しかし、前記したR-744CO2は、その特性としてP-h線図上では温度勾配が大きく常温では凝縮温度域内に収まらず、即ち、未凝縮冷媒となり、高圧異常となって安全な連続運転は不可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術文献として示した特許文献は本願出願人が出願し、特許を取得したものであり、その内容として本願発明にも使用される、一枚の伝熱プレートで一次側と二次側に仕切り、その一次側と二次側は同一の伝熱面積と容量を持つ熱交換器が示されている。この特許文献では、その熱交換器の一次側を流通した冷媒をそのまま二次側へ導入通過させ、一次側と二次側とで相互に熱交換を行なうものであって、非共沸混合冷媒を用いて、常温下でも凝縮を行なえ、低温でも蒸発可能とすることは特記されていない。
【0006】
本発明が解決しようとする問題点は、現状では、非共沸混合冷媒を使用して、常温下でも凝縮を可能とし、低温でも蒸発可能とする冷凍方法及び冷凍回路は存在していないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した問題点を解決するために、本発明に係る冷凍方法は、圧縮機より吐出させた非共沸混合冷媒を、凝縮器を通過させ、その凝縮器を通過した前記冷媒を、一枚の伝熱プレートで一次側と二次側に仕切られ、その一次側と二次側の伝熱面積と容量を同一に構成した第一の熱交換器の一次側を通過させ、この一次側を通過した冷媒を気液分離器に導入させ、この気液分離器で分離された未凝縮冷媒ガスは前記第一の熱交換器と同様の構造をした第二の熱交換器の一次側へ導入させ、凝縮された液状ガスは、この第二の熱交換器の二次側へ導入させ、第二の熱交換器の一次側を通過したガスは前記第一の熱交換器の二次側へ導入させて圧縮機へ戻し、第二の熱交換器の一次側を通過した冷媒は蒸発器を通過させて第二の熱交換器の二次側に導入させて圧縮機へ戻し循環させることを特徴としている。
【0008】
また、本発明に係る冷凍方法は、前記した非共沸混合冷媒として二酸化炭素とHFOの冷媒混合ガスを使用することを特徴としている。
【0009】
さらに、本発明に係る冷凍方法は、前記気液分離器は縦長の円筒形のものとし、前記第一の熱交換器の一次側を通過した冷媒は気液分離器の上下中間位置の導入口から導入されることを特徴としている。
【0010】
そして、本発明に係る冷凍方法は、気液分離器に導入された冷媒は、未凝縮の冷媒ガスは気液分離器の上部へ流れ、凝縮された冷媒液は自重で気液分離器の下部へ落下滞留させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る冷凍方法は、前記気液分離器からの凝縮された液状ガスの第二の熱交換器の二次側への導入は、蒸発器を通過して第二の熱交換器の二次側への戻り冷媒の流路と合流させることを特徴としている。
【0012】
さらに、本発明に係る冷凍回路は、二酸化炭素とHFO冷媒を混合させた非共沸冷媒を圧縮吐出する圧縮機と、その圧縮機から吐出された冷媒ガスを凝縮する凝縮器と、その凝縮器からの冷媒を通過させる、一枚の伝熱プレートで一次側と二次側に仕切られ、その一次側と二次側は伝熱面積と容量を同一に構成した第一の熱交換器と、その第一の熱交換器の一次側を通過した冷媒を気液に分離する気液分離器と、その気液分離器で分離された未凝縮冷媒ガスを一次側に通過させる、前記第一の熱交換器と同様の構造の第二の熱交換器と、蒸発器が組み込まれ、前記第二の熱交換器の二次側には気液分離器で分離された凝縮液と蒸発器からの戻り冷媒が合流して通過する構成となっていることを特徴とし、前記気液分離器は円筒形の縦型のものとし、その上下中間位置に冷媒の導入口を設け、その気液分離器内における冷媒の流速は5m/s以下に制御されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る冷凍方法及び冷凍回路は上記のように構成されている。そのため、圧縮機から吐出された非共沸混合冷媒は常温で凝縮する凝縮器と低温となっている戻り冷媒によって冷却、凝縮させる第一の熱交換器に導入され、その第一の熱交換器の一次側を通過して気液分離器に導入され、冷媒は高温部と低温部の二つの温度域に分かれるが、上下温度域の冷媒は一体に連結状態であり、一つの冷媒回路となっている。気液分離器で凝縮冷媒液と未凝縮冷媒ガスに分離された回路を形成し、凝縮冷媒液の高沸点冷媒回路で凝縮潜熱を放出し、未凝縮冷媒ガスの低沸点回路で蒸発潜熱を気液分離器を経由しながらも放出する系を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】高沸点、低沸点冷媒を等分に近い量で混合した冷媒のP-h線図である。
【
図3】高沸点、冷媒と僅かに低沸点冷媒を混合した冷媒のP-h線図である。
【
図4】低沸点冷媒と僅かに高沸点冷媒を混合した冷媒のP-h線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面として示し、実施例で説明したように構成したことで実現した。
【実施例0016】
次に、本願発明の好ましい実施の一例を図面を参照して説明する。図中1は冷凍回路の圧縮機を示し、二酸化炭素とHFO冷媒の非共沸混合冷媒を圧縮し、吐出する。この圧縮機1から吐出された混合冷媒は、常温で凝縮を行なう凝縮器2へ導入される。
【0017】
前記凝縮器2を通過した凝縮冷媒は第一の熱交換器(一段熱交換器)Aの一次側A1へ導入される。ここで第一の熱交換器Aは一枚の伝熱プレートによって一次側A1と二次側A2に仕切られ、その一次側A1と二次側A2は同一の伝熱面積と容量を持った構造となっている。
【0018】
この第一の熱交換器Aの一次側A1を通過した冷媒は吐出されて気液分離器Bへ導入される。この気液分離器Bは縦長の円筒形をしており縦型として配備され、その高さ寸法は300~500mmとなっているもので、これは高さが短いと冷媒液の分離落下が不十分となってしまうための対策であり、その導入口は該気液分離器Bの上下方向の中間位置に設けられている。
【0019】
この気液分離器Bによって冷媒は凝縮して液化した冷媒と未凝縮のガス状冷媒に分離され、未凝縮のガス状冷媒は気液分離器Bの上部に向かい、凝縮して液化した冷媒は自重によって気液分離器Bの下部に落下滞留する。ここで、液化された冷媒が上部に向かって逆流することのないように、横断面を大きく設計することで冷媒の流速は5m/s以下におとすように設定されている。
【0020】
また、前記した気液分離器Bの上部には未凝縮のガス冷媒の流出口B1が形成され、下部には凝縮した冷媒液の流出口B2が形成されている。
【0021】
さらに、図中Cは第二の熱交換器を示しており、この第二の熱交換器(二段熱交換器)Cは前記した第一の熱交換器Aと構造的に同一のものとなっており、前記気液分離器Bの流出口B1から流出した未凝縮のガス冷媒は第二の熱交換器Cの一次側C1へ導入される。また、気液分離器Bの流出口B2から流出して凝縮した冷媒液は絞り膨張弁3を介して第二の熱交換器Cの二次側C2に導入される。
【0022】
この第二の熱交換器Cにあって、二次側C2に導入された凝縮冷媒液は、この一次側C1と熱交換し蒸発して低沸点冷媒の凝縮潜熱となり、低沸点の未凝縮冷媒ガスは高沸点の蒸発冷媒を凝縮熱源として凝縮液化する。
【0023】
気液分離器Bを経由した凝縮冷媒液は第二の熱交換器Cの二次側C2に導入されるに際して、絞り膨張弁3で減圧されて、気化され後述する蒸発器Dで蒸発を終了した戻り冷媒ガスと合流して第二の熱交換器Cの二次側C2に導入される。
【0024】
第二の熱交換器Cの一次側C1を通過した冷媒は膨張弁4で減圧されて蒸発器Dへ導入される。蒸発器Dでは、第二の熱交換器Cの一次側C1を未凝縮の冷媒ガスが通過して、ここで二段目の凝縮がなされているので、超低温が具現化される。
【0025】
この蒸発器Dからの戻り冷媒は、前記したように気液分離器Bから流出された凝縮冷媒と合流して第二の熱交換器Cの二次側C2に導入され、この二次側C2を通過した冷媒は前記した第一の熱交換器Aの二次側A2に導入され、その第一の熱交換器Aの一次側A1を通過する凝縮器2からの冷媒と熱交換をする。そして、その第一の熱交換器Aの二次側A2を通過した冷媒は圧縮機1へ循環される。
【0026】
図2として示すP-h線図はレフロップ-バージョン10を利用したもので、高沸点、低沸点の冷媒を等分に近い量で混合した場合のもので、冷媒温勾配が急激なため、冷媒凝縮量が不安定となり、常温では凝縮不可能な温度域となってしまう。
【0027】
図3は高沸点冷媒と僅かに低沸点冷媒の混合状態(高沸点、低沸点分離後:気液分離器を設けた場合)のP-h線図で、第一の熱交換器Aでは気液分離器Bに導入される前で、凝縮器2と、この第一の熱交換器Aで凝縮液化されずに冷媒は凝縮熱源温度の関係から高沸点冷媒と凝縮されない僅かに残った低沸点冷媒の混合となって、未凝縮冷媒ガスは気液分離器Bの上方から第二の熱交換器Cの一次側C1へ流出される。低沸点冷媒が分離された後の相は分離する前の冷媒とほとんど影響を与えないので混合冷媒の構成比には付加せず、僅かな残留量となる。P-h線図は疑似共沸混合冷媒の線図となり、常温での凝縮可能の特性となる。一つの冷媒系に極度に温度特性の異なった冷媒を混入させて、常温で凝縮可能な冷媒と不凝縮の冷媒を気液分離器で分離し、高沸点、低沸点冷媒の特性を利用して、初めに高沸点冷媒を凝縮させ、次いで高沸点冷媒の蒸発温度によって低沸点冷媒を冷却凝縮する。系中の凝縮潜熱は気液分離器B、第一の熱交換器Aを逆のぼり、凝縮器2から系外に放熱される。
【0028】
図4は、低沸点冷媒と僅かに残留高沸点冷媒の混合状態(気液分離器を設けた場合)のP-h線図で、高沸点冷媒は第一の熱交換器Aで凝縮されて、気液分離器Bの下部より、絞り膨張弁3を介して減圧蒸発して第二の熱交換器Cの二次側C2へ、蒸発器Dからの戻り冷媒と合流して導入され、第二の熱交換器Cの二次側C2を冷却する。
【0029】
高沸点冷媒の蒸発冷媒温度は低沸点冷媒の凝縮可能温度となり、二段目の凝縮を可能として低沸点冷媒が冷却凝縮液化する。気液分離器Bで分離した後の冷媒は相変化にほとんど影響を与えないので、混合冷媒の構成比には付加なく、僅かな残留量として構成することとなる。この
図4の場合も前記した
図3の場合も気液が完全に分離されればより大きな効果が得られると考えるが、残念ながら現時点で完全な分離は不可能である。
本発明の好適な実施例は上記に記載したように構成されており、冷媒としては実施例で示したもののほか、二酸化炭素を除いた高沸点、低沸点の非共沸混合冷媒を用いることも可能となる。また、熱交換器も実施例に加えて、第三、第四等と多段に設けることでより一層の効果を高めることも可能である。