(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109212
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/42 20060101AFI20240806BHJP
F16K 1/38 20060101ALI20240806BHJP
F16K 1/34 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F16K1/42 F
F16K1/38 C
F16K1/34 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013887
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】那須 裕章
(72)【発明者】
【氏名】樋口 孝行
【テーマコード(参考)】
3H052
【Fターム(参考)】
3H052AA01
3H052BA22
3H052CA02
3H052CA15
3H052CB16
3H052EA03
(57)【要約】
【課題】弁体の当接部表面と弁座の当接部表面の耐摩耗性を向上させ、寿命の長いバルブを提供する。
【解決手段】流体の流入通路23及び流出通路24を有するバルブボディ2と、前記バルブボディに設けられた弁座6と上下動により当接離間して流体を制御する弁体3と、前記弁体を先端に備えるステム5と、前記ステムを上下動させるアクチュエータ4と、を有する制御弁1であって、前記弁体と当接する前記弁座の弁座当接部34の材質がサファイアであり、前記弁座当接部と当接する前記弁体の弁体当接部65の材質がサファイアである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流入通路及び流出通路を有するバルブボディと、
前記バルブボディに設けられた弁座と上下動により当接離間して流体を制御する弁体と、
前記弁体を先端に備えるステムと、
前記ステムを上下動させるアクチュエータと、を有する制御弁であって、
前記弁体と当接する前記弁座の弁座当接部の材質がサファイアであり、
前記弁座当接部と当接する前記弁体の弁体当接部の材質がサファイアである制御弁。
【請求項2】
前記弁座当接部は、弁座主部に形成された弁座凹所に締り嵌めにより固定され、
前記弁体当接部は、弁体主部に形成された弁体凹所に締り嵌めにより固定されている請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記弁体には当該弁体の外周面と前記弁体凹所とを連通する雌ねじ孔が刻設され、前記雌ねじ孔に螺入される止めねじによって前記弁体当接部が前記弁体凹所にさらに固定される請求項2に記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流体の流量を制御する制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量を調節し、開閉を行うことができる制御弁として、特許文献1に記載のような制御弁が知られている。この制御弁101は、
図4に示すように、流入通路123、流出通路124を有するバルブボディ102と、流体の流量を制御する弁体103と、弁体103を上下動させるアクチュエータ104を備えている。バルブボディ102には弁座当接面164が形成された弁座106がバルブボディ102に螺合によって固定されている。弁体103の弁体当接面132は、弁閉時はアクチュエータ104によるステム105の降下にしたがって、弁体当接面132に当接して流体を遮断する。
この制御弁は、弁体103が回転を伴わない上下動によって弁体103と対向する弁座106に強く押圧されて、高圧流体に耐えられる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、燃料の精製関連において、高温高圧の流体を制御するバルブが必要となっている。特に流体内にコークス粒が混在する場合には、バルブの弁座と弁体の摩耗が激しいという問題がある。
この摩耗の問題に対応する目的で、弁体と弁座の当接部にコバルトを主成分とした耐摩耗材料(例えばビシライト(登録商標))を弁体と弁座に溶接によって肉盛りし、その後機械加工をしているが、バルブの使用開始後15日ほどで摩耗により開度が低下して問題の解決には至っていない。
【0005】
この発明の目的は、弁体の当接部表面と弁座の当接部表面の耐摩耗性を向上させ、寿命の長いバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、流体の流入通路及び流出通路を有するバルブボディと、前記バルブボディに設けられた弁座と上下動により当接離間して流体を制御する弁体と、前記弁体を先端に備えるステムと、前記ステムを上下動させるアクチュエータと、を有する制御弁であって、前記弁体と当接する前記弁座の弁座当接部の材質がサファイアであり、前記弁座当接部と当接する前記弁体の弁体当接部の材質がサファイアである制御弁である。
【0007】
本発明(1)によると、弁体と当接する弁座の弁座当接部がサファイアで作られ、弁座当接部と当接する弁体の弁体当接部がサファイアで作られており、サファイアはビシライト(登録商標)等のコバルトを主成分とした耐摩耗材料に比べて格段に硬度が高いので、制御弁の寿命の長寿命化を図ることができる。
【0008】
本発明(2)は、前記弁座当接部は、弁座主部に形成された弁座凹所に締り嵌めにより固定され、前記弁体当接部は、弁体主部に形成された弁体凹所に締り嵌めにより固定されている本発明(1)の制御弁である。
【0009】
本発明(2)によると、弁座当接部は、弁座主部に形成された弁座凹所に締り嵌めによって固定され、弁体当接部は、弁体主部に形成された弁座凹所に締り嵌めによって固定されているので、弁座当接部及び弁座主部と、並びに、弁体当接部及び弁体主部とは、非常に強固に接合することができる。
【0010】
締り嵌めには焼き嵌めと冷やし嵌めの2方式があるがいずれの方式でも可能である。弁座主部と弁体主部とは金属材料、好ましくはSUS316などのステンレス鋼材を用いるのが好ましく、セラミック材料よりも熱膨張率が大きいため、弁座主部と弁体主部とを加熱する焼き嵌め方式が好ましい。
【0011】
本発明(3)は、前記弁体には当該弁体の外周面と前記弁体凹所とを連通する雌ねじ孔が刻設され、前記雌ねじ孔に螺入される止めねじによって前記弁体当接部が前記弁体凹所にさらに固定される本発明(2)の制御弁ある。
【0012】
本発明(3)によると、弁体主部には当該弁体主部の外周面と弁体凹所とを連通する雌ねじ孔が刻設され、この雌ねじ孔に螺入される雄ねじによって弁体当接部が弁体主部とさらに係止されているので、弁体当接部及び弁体主部とは、より強固に接合することができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明の制御弁によると、弁体の当接部表面と弁座の当接部表面の耐摩耗性を向上させ、寿命の長い制御弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明による制御弁の第1実施例の全体を示す部分縦断面図である。
【
図2】この発明による制御弁に使用される弁体の各種実施例を示す部分断面図である。
【
図3】この発明による制御弁に使用される弁座の各種実施例を示す断面図である。
【
図4】従来の制御弁の全体を示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている構成部品の材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0016】
図1に示すように、制御弁1は、流路を有するバルブボディ2と、バルブボディ2の流路を上下動により開閉する弁体3と、弁体3を上下動させるアクチュエータ4とを備えている。アクチュエータ4には、アクチュエータ4の動作により上下動するシャフト41が設けられている。シャフト41と弁体3とはステム5によって連結されている。シャフト41とステム5との間には連結構造10が備えられている。
【0017】
制御弁1は、バルブボディ2の上部に接続されるボンネット8と、ボンネット8とアクチュエータ4とを接続するヨーク9とを備えている。
【0018】
バルブボディ2は、中央上面にバルブボディ突出部26が形成され、弁体3を挿通させるボンネット8を収容するバルブボディ凹所25が設けられ、ボンネット8のバルブボディ2への接続は、ボンネット8に取り付けられた、ボンネットナット81によって行われる。
【0019】
バルブボディ2には、流体が流入する流入口21、流体が流出する流出口22、流入口21とバルブボディ凹所25を連通する流入通路23、流入通路23のバルブボディ凹所25側の開口に設けられ弁体3の弁座当接部34(
図2参照)と当接する弁座当接面65b(
図3参照)が形成された弁座6、流出口22とバルブボディ凹所25を連通する流出通路24が備えられている。
【0020】
ボンネット8の内部にはOリングホルダー82に保持された状態でOリング83が設けられており、このOリング83によってボンネット8の内面とステム5の外面との隙間からの流体の漏洩を防ぐようになっている。Oリングホルダー82の下部にはグランドパッキン84が介装されている。グランドパッキン84は、例えばPFA、PTFE等の硬質合成樹脂から形成されており、Oリング83と共にボンネット8の内面とステム5の外面との隙間からの流体の漏洩を防ぐ。パッキン押えねじ85によって、上方向から荷重を加えて、グランドパッキン84のシール性を確実にしている。
【0021】
ヨーク9は、アクチュエータ4の下端面とねじ(図示せず)によって連結され、ヨーク9の下部はその中心に形成されたねじ穴にボンネット8の筒部の上部外面に形成された雄ねじ部が螺着されており、これによってボンネット8とアクチュエータ4がヨーク9によって連結されている。
【0022】
ステム5に設けられたインジケータ51と、ヨーク9に取り付けられたインジケータスケール91とから制御弁の開度を確認することができる。
【0023】
図2は、
図1に示す第1実施例の弁体3の各種実施例の拡大図である。
図2(1)は、
図1に示す第1実施例の制御弁に使用されている弁体3を示す。
弁体3は弁座当接部34および弁座当接部34を篏合するための弁体凹所32が形成された弁体主部31を備えている。弁体主部31には
図1に示すステム5の下端に形成された雌ねじ孔(符号なし)と螺合する雄ねじ部33が形成されている。弁座当接部34は、弁体凹所32にはまり込む頭部35、弁座当接部65(
図3参照)と当接する当接面36及び貫通孔65a(
図3参照)に嵌入する嵌入部37が形成されている。
【0024】
弁体主部31は、SUS316などのステンレス鋼を用いるのが好ましく、弁座当接部34は、サファイア、特に工業的に製造された単結晶サファイアを用いるのが好ましい。サファイアはAl2O3を主成分とする硬度が高い材料であり、含有物により様々な特性を持ち、単結晶サファイアは特に硬度が高く摩耗に強い。多結晶材料の場合、粒界のガラス成分から摩耗が進むが、単結晶サファイアだとこの粒界のガラス成分がないため硬度が高く摩耗が進みにくい。ビッカース硬さにおいてビシライト(登録商標)の435(HV)に対し2295(HV)と格段に優位である。サファイアは材料特性上ねじ加工が難しいため、ねじ加工が必要な弁座主部31をSUS316などのステンレス鋼とし、締り嵌め法(特に焼き嵌め法を用いるのが好ましい)により固定している。工業用サファイアは、熱膨張率もSUS316が約17×10-6/Kであるのに対して、サファイアが5.5×10-6/Kであるので、制御弁の使用温度よりもさらに高い温度まで弁体主部31を熱して膨張させたのちに、弁座当接部34をすりあわせで弁体凹所32に嵌め合わせて常温にまで冷却すると、弁座当接部34は弁体主部31にしっかりと固定される。
【0025】
図2(2)、(3)、(4)は、
図2(1)の変形例である。
図2(2)では、弁体主部31に雌ねじ孔39が水平方向に形成され、その雌ねじ孔39に螺入する止めねじ38が配設されている点にある。この止めねじ38による締め付けによって、弁座当接部34と弁体主部31との固定はさらに強くなる。
【0026】
図2(3)では、頭部35に凹所35aが形成され、止めねじ38の先端がその凹所35aにはまり込んで、弁座当接部34が弁体主部31に対して上下動が規制されて、弁座当接部34と弁体主部31との固定がより強化される。凹所35aは、環状溝とすると加工が容易であるが、弁座当接部34の軸の周りの回転動を押さえることが出来ないので、凹所35aは丸穴形状が好ましい。
【0027】
図2(4)では、頭部35に凹所35aに加えてさらに凹所35bが形成され、止めねじ38aの先端が丸穴形状の凹所35bにはまり込んで、弁座当接部34の軸の周りの回転動を押さえることができる。
【0028】
図3(1)は、
図1で用いられた弁座6の拡大断面図である。弁座6は、弁座主部61と、この弁座主部61の弁座凹所62にはまり込む弁座当接部65を有している。弁座当接部65には、弁体3と当接する弁座当接面65bが形成され、弁座当接面65bは、この実施例ではテーパー面となっているが、テーパー面に限られず、例えば球面であってもよい。弁座当接部65は段部61aで支えられている。弁座当接部65には流体が通過する貫通孔65aが形成されている。
【0029】
弁座主部61は、流体が流れる貫通孔63が形成され、外周面にバルブボディ2と螺合する雄ねじ64が形成されている。弁座当接部65と弁座主部61とは、締り嵌め法の中の焼き嵌め法を用いて固定するのが好ましい。これは、上述の弁体凹所32に頭部35を係合させてしっかりと固定する方法と同様である。弁座主部61の材料はSUS316が好ましく、弁座当接部65の材料はサファイアが好ましい。
【0030】
図3(2)は、
図3(1)の変形例のである。弁座6は、弁座主部61と、この弁座主部61の弁座凹所62にはまり込む弁座当接部66を有している。弁座当接部66は、太径部66aと細径部66bを備え、貫通孔66cが形成されている。弁座当接部66には、弁体3と当接する弁座当接面66dが形成される。弁座当接面66dは、この実施例ではテーパー面となっているが、テーパー面に限られず、例えば球面であってもよい。弁座当接部66の段部66eは弁座主部61の段部61aで支えられている。弁座主部61には貫通孔63が形成され、弁座主部61の外周面にバルブボディ2と螺合する雄ねじ64が形成されている。
【0031】
弁座当接部66と弁座主部61との固定は、上述の弁座当接部65と弁座主部61との固定と同様である。また、弁座主部61に雌ねじ孔を水平に刻設し、その雌ねじ孔に止めねじを螺入して
図2(2)及び
図2(3)に示す実施例と同様に弁座主部61と弁座当接部65との固定、及び、弁座主部61と弁座当接部66との固定を強化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の制御弁によると、高温高圧環境で流体にコークス等の微粒子を含んだ場合であっても流体を制御するバルブとして好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
1:制御弁
2:バルブボディ
3:弁体
4:アクチュエータ
5:ステム
6:弁座
8:ボンネット
9:ヨーク
10:連結構造
21:流入口
22:流出口
23:流入通路
24:流出通路
25:バルブボディ凹所
26:突出部
31:弁体主部
32:弁体凹所
35a、35b:凹所
33:雄ねじ部
34:弁体当接部
35:頭部
36:当接面
37:嵌入部
38、38a:止めねじ
39:雌ねじ孔
41:シャフト
51:インジケータ
61:弁座主部
61a:段部
62:弁座凹所
63:貫通孔
64:雄ねじ
65、66:弁座当接部
65a:貫通孔
65b、66d:弁座当接面
66a:太径部
81:ボンネットナット
82:Oリングホルダー
83:Oリング
84:グランドパッキン
85:パッキン押えねじ
91:インジケータスケール