(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109213
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】基準軌跡生成装置、基準軌跡生成方法及び基準軌跡生成決定用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20240806BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240806BHJP
B60W 30/10 20060101ALI20240806BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/16 D
B60W30/10
G09B29/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013888
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【テーマコード(参考)】
2C032
2F129
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
2C032HB05
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB27
2F129BB28
2F129DD39
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE72
2F129EE73
2F129EE75
2F129EE94
2F129FF02
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF71
3D241BA15
5H181AA01
5H181BB04
5H181CC24
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL02
5H181LL15
5H181MB01
(57)【要約】
【課題】道路の所定区間について基準となる走行軌跡を適切に生成することが可能な基準軌跡生成装置を提供する。
【解決手段】基準軌跡生成装置は、少なくとも一つの車両2が道路の所定区間を走行したときの、所定区間における複数の走行軌跡をクラスタリングすることで、複数の走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類する分類部41と、複数のクラスのうち、属する走行軌跡の数が最も多いクラスを選択する選択部42と、複数のクラスのうちの選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、所定区間において基準となる基準走行軌跡を生成する基準軌跡生成部43とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの車両が道路の所定区間を走行したときの、前記所定区間における複数の走行軌跡をクラスタリングすることで、前記複数の走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類する分類部と、
前記複数のクラスのうち、属する走行軌跡の数が最も多いクラスを選択する選択部と、
前記複数のクラスのうちの選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、前記所定区間において基準となる基準走行軌跡を生成する基準軌跡生成部と、
を有する基準軌跡生成装置。
【請求項2】
前記複数の走行軌跡のそれぞれは、当該走行軌跡上の位置において前記車両に掛かった加速度を表す情報を含み、前記分類部は、前記複数の走行軌跡のうち、前記加速度の絶対値が所定の閾値以下となる走行軌跡を前記複数のクラスの何れかに分類する、請求項1に記載の基準軌跡生成装置。
【請求項3】
前記分類部は、前記複数の走行軌跡のうち、前記少なくとも一つの車両が走行する際に進入することが禁止される禁止範囲を通らない走行軌跡を前記複数のクラスの何れかに分類する、請求項1に記載の基準軌跡生成装置。
【請求項4】
前記所定区間における道路の構造を表す情報を含む地図情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記分類部は、前記クラスタリングにおいて、前記複数の走行軌跡のそれぞれを表すデータとして、前記地図情報に表される前記所定区間における前記道路の構造に応じたデータを使用する、請求項1~3の何れか一項に記載の基準軌跡生成装置。
【請求項5】
少なくとも一つの車両が道路の所定区間を走行したときの、前記所定区間における複数の走行軌跡をクラスタリングすることで、前記複数の走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類し、
前記複数のクラスのうち、属する走行軌跡の数が最も多いクラスを選択し、
前記複数のクラスのうちの選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、前記所定区間において基準となる基準走行軌跡を生成する、
ことを含む基準軌跡生成方法。
【請求項6】
少なくとも一つの車両が道路の所定区間を走行したときの、前記所定区間における複数の走行軌跡をクラスタリングすることで、前記複数の走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類し、
前記複数のクラスのうち、属する走行軌跡の数が最も多いクラスを選択し、
前記複数のクラスのうちの選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、前記所定区間において基準となる基準走行軌跡を生成する、
ことをコンピュータに実行させるための基準軌跡生成用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路区間において基準となる走行軌跡を生成する基準軌跡生成装置、基準軌跡生成方法及び基準軌跡生成決定用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図に含める情報の一つとして、個々の道路区間において車両が走行可能な範囲を示すデータを生成する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された地図データ生成装置は、第1車線の開始区間から第2車線の終了区間までの跨り走行軌跡データを統計処理する。そしてこの地図データ生成装置は、所定範囲から外れる跨り走行軌跡データを除外した上で実際に車両が自動運転機能や運転支援機能を用いて走行する際の走行可能範囲を示す走行可能範囲データを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両が実際に走行したときの走行軌跡は、その車両の周囲の状況に影響される。そのため、場合によっては、走行軌跡は、車両が普通に走行するときには通らないような不自然な軌跡となることがある。そのような不自然な走行軌跡が基準となる走行軌跡の生成に利用されると、その基準となる走行軌跡が不適切なものとなるおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、道路の所定区間について基準となる走行軌跡を適切に生成することが可能な基準軌跡生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、基準軌跡生成装置が提供される。この基準軌跡生成装置は、少なくとも一つの車両が道路の所定区間を走行したときの、所定区間における複数の走行軌跡をクラスタリングすることで、複数の走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類する分類部と、複数のクラスのうち、属する走行軌跡の数が最も多いクラスを選択する選択部と、複数のクラスのうちの選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、所定区間において基準となる基準走行軌跡を生成する基準軌跡生成部とを有する。
【0008】
この基準軌跡生成装置において、複数の走行軌跡のそれぞれは、その走行軌跡上の位置において車両に掛かった加速度を表す情報を含み、分類部は、複数の走行軌跡のうち、加速度の絶対値が所定の閾値以下となる走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類することが好ましい。
【0009】
さらに、分類部は、複数の走行軌跡のうち、少なくとも一つの車両が走行する際に進入することが禁止される禁止範囲を通らない走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類することが好ましい。
【0010】
また、この基準軌跡生成装置は、所定区間における道路の構造を表す情報を含む地図情報を記憶する記憶部をさらに有することが好ましい。そして分類部は、クラスタリングにおいて、複数の走行軌跡のそれぞれを表すデータとして、地図情報に表される所定区間における道路の構造に応じたデータを使用することが好ましい。
【0011】
他の実施形態によれば、基準軌跡生成方法が提供される。この基準軌跡生成方法は、少なくとも一つの車両が道路の所定区間を走行したときの、所定区間における複数の走行軌跡をクラスタリングすることで、複数の走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類し、複数のクラスのうち、属する走行軌跡の数が最も多いクラスを選択し、複数のクラスのうちの選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、所定区間において基準となる基準走行軌跡を生成する、ことを含む。
【0012】
さらに他の実施形態によれば、基準軌跡生成用コンピュータプログラムが提供される。この基準軌跡生成用コンピュータプログラムは、少なくとも一つの車両が道路の所定区間を走行したときの、所定区間における複数の走行軌跡をクラスタリングすることで、複数の走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類し、複数のクラスのうち、属する走行軌跡の数が最も多いクラスを選択し、複数のクラスのうちの選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、所定区間において基準となる基準走行軌跡を生成する、ことをコンピュータに実行させるための命令を含む。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る基準軌跡生成装置は、道路の所定区間について基準となる走行軌跡を適切に生成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】基準軌跡生成装置が実装される地図生成システムの概略構成図である。
【
図2】基準軌跡生成装置の一例であるサーバのハードウェア構成図である。
【
図3】基準軌跡生成処理に関連するプロセッサの機能ブロック図である。
【
図4】基準軌跡の生成に利用される走行軌跡の一例を示す図である。
【
図5】基準軌跡の生成に利用される走行軌跡の他の一例を示す図である。
【
図6】基準軌跡生成処理の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図を参照しつつ、基準軌跡生成装置、及び、基準軌跡生成装置にて実行される基準軌跡生成方法ならびに基準軌跡生成用コンピュータプログラムについて説明する。この基準軌跡生成装置は、カーブ、交差点あるいは分岐点といった道路の所定区間について、その区間を走行する車両の自動運転システムあるいは運転支援システムが参照できる、基準となる走行軌跡を生成する。以下では、基準となる走行軌跡を、単に基準走行軌跡または基準軌跡と呼ぶことがある。この基準軌跡生成装置は、道路の所定区間を走行した1台以上の車両から、実際にその区間を走行したときの走行軌跡を表す情報を収集する。この基準軌跡生成装置は、収集した、所定区間における個々の走行軌跡をクラスタリングすることで、個々の走行軌跡を複数のクラスの何れかに分類する。そしてこの基準軌跡生成装置は、複数のクラスのうち、含まれる走行軌跡の数が最も多いクラスを選択し、選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、所定区間における基準走行軌跡を生成する。
【0016】
図1は、基準軌跡生成装置が実装される地図生成システムの概略構成図である。本実施形態では、地図生成システム1は、少なくとも一つの車両2と、基準軌跡生成装置の一例であるサーバ3とを有する。各車両2は、例えば、サーバ3が接続される通信ネットワーク4とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。なお、
図1では、簡単化のため、一つの車両2のみが図示されているが、地図生成システム1は、複数の車両2を有していてもよい。同様に、
図1では、一つの無線基地局5のみが図示されているが、複数の無線基地局5が通信ネットワーク4に接続されていてもよい。
【0017】
車両2は、GPS受信機と、加速度センサと、走行軌跡記録装置と、無線通信端末とを有する。GPS受信機は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介して走行軌跡記録装置へ出力する。なお、車両2はGPS受信機以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0018】
加速度センサは、車両2に掛かる所定方向(例えば、車両2の進行方向または横方向)の加速度を測定し、所定の周期ごとに測定した加速度を表す情報を走行軌跡記録装置へ出力する。
【0019】
走行軌跡記録装置は、例えば、プロセッサとメモリとを有する。そして走行軌跡記録装置のプロセッサがGPS受信機から取得した測位情報で表される車両2の位置を時間順に並べることで車両2が走行した軌跡を表す走行軌跡情報を生成し、生成した走行軌跡情報を走行軌跡記録装置のメモリに保存する。なお、サーバ3から無線通信端末を介して走行軌跡の収集対象となる所定区間を表す情報を予め受信している場合には、走行軌跡記録装置は、測位された車両2の位置のうち、所定区間内、及び、所定区間の前後における車両2の位置のみを走行軌跡情報に含めてもよい。この場合、走行軌跡記録装置は、走行軌跡情報に、収集対象となった所定区間の識別情報をさらに含めてもよい。また、走行軌跡記録装置は、走行軌跡情報に、車両2の識別情報を含めてもよい。さらに、走行軌跡記録装置は、測位情報を受信する度に、その測位情報の受信時に最も近いタイミングで加速度センサにより測定された、車両2に掛かる所定方向の加速度を、その測位情報に表される車両2の位置に対応付けて走行軌跡情報に含めてもよい。さらにまた、走行軌跡記録装置は、走行軌跡情報に、所定区間を車両2が走行する際の速度(例えば、所定区間全体にわたる平均速度、あるいは、所定区間内の所定の地点(何れか一端または中間点)を通過する際の速度)を含めてもよい。さらにまた、走行軌跡記録装置は、走行軌跡情報に、走行軌跡上の個々の位置を車両2が通過したときの時刻を表す情報を含めてもよい。
【0020】
なお、車両2は、車両2の周辺領域を撮影するためのカメラを有していてもよい。そしてカメラは、所定の周期ごとに、車両2の周辺領域を表す画像を生成し、生成した画像を、車内ネットワークを介して走行軌跡記録装置へ出力してもよい。この場合、走行軌跡記録装置のプロセッサは、カメラから画像を受け取る度に、その画像から車両2が走行中の道路上または道路周囲の地物を検出する。さらに、走行軌跡記録装置のプロセッサは、車両2のオドメトリ情報を、車両2の走行を制御する電子制御装置(図示せず)から取得して、各画像の生成間隔ごとの車両2の移動量及び向きの変位量を求める。そして走行軌跡記録装置のプロセッサは、各画像から検出された地物及び各画像の生成間隔ごとの車両2の移動量及び向きの変位量に基づいて、いわゆるStructure from Motionの手法に従って、各画像生成時の車両2の位置を推定してもよい。そして走行軌跡記録装置のプロセッサは、各画像生成時の車両2の位置を時間順に並べることで、走行軌跡情報を生成してもよい。
【0021】
走行軌跡記録装置は、所定のタイミングになると、生成した走行軌跡情報を無線通信端末へ出力する。なお、所定のタイミングは、例えば、車両2のイグニッションスイッチがオフにされたタイミング、あるいは、車両2のイグニッションスイッチがオンにされてから一定の時間(例えば、30分~1時間)を経過する度のタイミングとすることができる。あるいは、走行軌跡の収集対象となる領域を表す収集領域情報がサーバ3から通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2に予め通知されていてもよい。この場合には、走行軌跡記録装置は、収集領域情報及び測位情報を参照して、車両2が収集対象となる領域外へ移動したタイミングを、所定のタイミングとしてもよい。
【0022】
無線通信端末は、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局5にアクセスすることで、無線基地局5及び通信ネットワーク4を介してサーバ3と接続される。そして無線通信端末は、走行軌跡記録装置から受け取った走行軌跡情報を含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局5へ送信することで、走行軌跡情報をサーバ3へ送信する。また、無線通信端末は、無線基地局5からダウンリンクの無線信号を受信して、その無線信号に含まれる、サーバ3からの収集領域情報を走行軌跡記録装置へわたす。
【0023】
次に、基準軌跡生成装置の一例であるサーバ3について説明する。
図2は、基準軌跡生成装置の一例であるサーバ3のハードウェア構成図である。サーバ3は、通信インターフェース31と、ストレージ装置32と、メモリ33と、プロセッサ34とを有する。通信インターフェース31、ストレージ装置32及びメモリ33は、プロセッサ34と信号線を介して接続されている。サーバ3は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0024】
通信インターフェース31は、通信部の一例であり、サーバ3を通信ネットワーク4に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース31は、車両2と、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース31は、車両2から無線基地局5及び通信ネットワーク4を介して受信した走行軌跡情報をプロセッサ34へわたす。また、通信インターフェース31は、プロセッサ34から受け取った収集領域情報を、通信ネットワーク4及び無線基地局5を介して車両2へ送信する。
【0025】
ストレージ装置32は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置32は、基準軌跡生成処理において使用される各種のデータ及び情報を記憶する。例えば、ストレージ装置32は、基準走行軌跡を表す情報を追加するための地図を記憶する。この地図は、所定区間における道路の構造を表す情報を含む地図情報の一例である。地図には、基準走行軌跡を表す情報を追加しようとする道路の所定区間の位置及び道路の構造を表す情報が含まれる。地図には、所定区間の位置を表す情報として、例えば、その所定区間の一端における、道路の幅方向の中心の位置と、その所定区間の他端における、道路の幅方向の中心の位置とが含まれる。また、所定区間における道路が複数の車線を含む場合には、地図には、車線ごとに、その所定区間の一端における、車線の幅方向の中心の位置と、その所定区間の他端における、車線の幅方向の中心の位置とが含まれる。さらに、地図には、その所定区間における、道路端、道路または車線の幅、中心線、及び、その幅方向を表す情報が含まれてもよい。さらにまた、地図には、所定区間の構造を表す情報として、所定区間における道路または各車線の曲率、道路の構造の種類(カーブ、交差点、分岐点etc.)を表す情報が含まれてもよい。さらにまた、地図には、リンクIDといった、その所定区間を識別するための情報が含まれてもよい。さらに、ストレージ装置32は、各車両2から受信した走行軌跡情報を記憶する。さらにまた、ストレージ装置32は、プロセッサ34上で実行される、基準軌跡生成処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。
【0026】
メモリ33は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ33は、基準軌跡生成処理の実行中に生成される各種データなどを一時的に記憶する。
【0027】
プロセッサ34は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ34は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ34は、車両2の何れかから走行軌跡情報を受信する度に、受信した走行軌跡情報をストレージ装置32に保存する。さらに、プロセッサ34は、基準軌跡生成処理を実行する。
【0028】
図3は、基準軌跡生成処理に関連するプロセッサ34の機能ブロック図である。プロセッサ34は、分類部41と、選択部42と、基準軌跡生成部43と、地図生成部44とを有する。プロセッサ34が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ34上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ34が有するこれらの各部は、プロセッサ34に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0029】
分類部41は、基準走行軌跡を生成しようとする道路の所定区間を走行したときのその所定区間における複数の走行軌跡をクラスタリングすることで、それら複数の走行軌跡のそれぞれを複数のクラスの何れかに分類する。各走行軌跡は、1台の車両2によるものでもよく、あるいは、複数の車両2によるものでもよい。
【0030】
道路の所定区間は、例えば、高速道路といった特定の道路のカーブ区間、交差点、あるいは、分岐点を含む区間といった、その区間を走行する車両2が直進以外の行動を取ることが求められる区間とすることができる。ただし、所定区間はこれらの区間に限られるものではなく、基準走行軌跡を生成することが求められる任意の道路区間であってよい。
【0031】
分類部41は、各車両2から収集され、ストレージ装置32に保存されている複数の走行軌跡情報のなかから、基準軌跡を生成しようとする道路の所定区間を通る走行軌跡情報を複数選択する。そのために、分類部41は、個々の走行軌跡情報に含まれる、車両2が通過した位置の集合と所定区間の位置とを比較する。そして分類部41は、複数の走行軌跡情報のうち、車両が通過した位置の集合が所定区間の一端から他端まで通るものを、その所定区間を車両2が走行した走行軌跡を表すものとして選択する。具体的に、分類部41は、所定区間の一端及び他端のそれぞれにおいて、車線または道路の幅方向と、走行軌跡を表す車両の位置の並び方向とが交差する走行軌跡情報を、その所定区間を車両2が走行した走行軌跡を表すものとして選択する。また、所定区間を指定して走行軌跡が収集されている場合には、分類部41は、その所定区間の識別情報を含む走行軌跡情報を、その所定区間を車両2が走行した走行軌跡を表すものとして選択すればよい。
【0032】
なお、道路の所定区間において複数の車線が含まれる場合、分類部41は、その所定区間において車線ごとにその車線を走行する走行軌跡を選択する。例えば、所定区間が交差点である場合、分類部41は、交差点の入り口となる道路の何れかの車線と、交差点の出口となる道路の何れかの車線の組み合わせを設定し、その組み合わせを通る走行軌跡を選択すればよい。この場合、分類部41は、所定区間の一端及び他端における、着目する車線の中心位置からその車線の幅の半分以内の位置でその一端及び他端と走行軌跡を表す位置の集合とが交差する走行軌跡情報を、着目する車線を車両2が走行した走行軌跡を表すものとして選択すればよい。
【0033】
分類部41は、選択した複数の走行軌跡情報に表される各走行軌跡のなかから、所定区間内の何れかの位置において車両2に掛かる加速度の絶対値が所定の閾値を超える走行軌跡を、分類対象とする走行軌跡から除外してもよい。すなわち、分類部41は、所定区間内において加速度の絶対値が所定の閾値以下となる走行軌跡を何れかのクラスに分類する。所定区間の走行中において加速度の絶対値が所定の閾値を超える場合、車両2は、衝突を避けるための回避行動といった何らかの異常な挙動を示している可能性がある。そこでこのような走行軌跡を除外することで、サーバ3は、より適切な基準走行軌跡を生成することが可能となる。
【0034】
さらに、分類部41は、選択した複数の走行軌跡情報に表される各走行軌跡のなかから、交通法規に違反するような走行軌跡を、分類対象とする走行軌跡から除外してもよい。例えば、分類部41は、所定区間の途中において、走行軌跡を表す車両2の位置の集合に含まれる何れかの位置が、対向車線といった車両2の進行方向において進入が禁止される禁止範囲に含まれている場合、その走行軌跡を分類対象とする走行軌跡から除外してもよい。すなわち、分類部41は、所定区間内において禁止範囲を通らない走行軌跡を何れかのクラスに分類する。このような交通法規に違反する走行軌跡を分類対象とする走行軌跡から除外することで、サーバ3は、より適切な基準走行軌跡を生成することが可能となる。なお、着目する走行軌跡を除外するか否かを判定するために、分類部41は、地図を参照することで禁止範囲を特定し、特定した禁止範囲に着目する走行軌跡上の個々の位置が含まれるか否かを判定すればよい。また、走行軌跡情報に車両2の速度を表す情報が含まれている場合、分類部41は、所定区間の途中において車両2の速度が所定区間の法定速度または制限速度を超える走行軌跡情報に表される走行軌跡を、分類対象とする走行軌跡から除外してもよい。
【0035】
分類部41は、分類対象となる複数の走行軌跡情報のそれぞれに表される走行軌跡に対して所定のクラスタリング手法に従ってクラスタリング処理を実行することで、それら複数の走行軌跡のそれぞれを複数のクラスの何れかに分類する。分類部41は、所定のクラスタリング手法として、例えば、k-means法といった非階層化クラスタリング手法、あるいは、ウォード法または群平均法といった階層化クラスタリング手法を用いることができる。あるいは、分類部41は、所定のクラスタリング手法として、いわゆるディープニューラルネットワーク(DNN)ベースのクラスタリング手法を用いてもよい。
【0036】
分類部41は、類似する走行軌跡同士が同じクラスに含まれ易くなるように、クラスタリング処理を実行する前に、分類対象となる各走行軌跡を正規化してもよい。例えば、分類部41は、道路の所定区間をその道路の延伸方向に沿って複数のサブ区間に分割する。すなわち、分類部41は、隣接する二つのサブ区間の境界が道路の延伸方向と直交するように、各サブ区間を設定する。所定区間が分岐点、合流点あるいは交差点を含む場合には、分類部41は、所定区間の一端における道路または車線の幅方向の中心位置と所定区間の他端における道路または車線の幅方向の中心位置とを結んだ基準線に沿った方向を道路の延伸方向とすればよい。そして分類部41は、その延伸方向に沿って所定区間を複数のサブ区間に分割すればよい。分類部41は、着目する走行軌跡について、その走行軌跡に示される車両2の位置の集合のなかから、サブ区間ごとにそのサブ区間内の一つの位置を選択し、選択した位置の集合を、着目する走行軌跡を正規化した走行軌跡とする。さらに、分類部41は、サブ区間ごとに、そのサブ区間における、道路の中心線(車線単位でクラスタリングを実行する場合には、車線の中心線)から選択した位置までの距離を算出してもよい。そして分類部41は、サブ区間ごとの道路または車線の中心線から走行軌跡上の選択した位置までの距離の集合を、着目する走行軌跡を正規化した走行軌跡としてもよい。さらにまた、分類部41は、所定区間全体にわたる走行軌跡の長さを算出し、算出した長さを、正規化した走行軌跡を表す情報に含めてもよい。その際、分類部41は、走行軌跡を表す車両2の位置の集合のうち、所定区間内において隣接する位置同士を結んだ線分のそれぞれの長さの合計を、所定区間全体にわたる走行軌跡の長さとして算出すればよい。分類部41は、分類対象となる個々の走行軌跡に対して同様の正規化処理を実行することで、各走行軌跡を正規化すればよい。
【0037】
分類部41は、クラスごとに、そのクラスに属する走行軌跡を表す情報を選択部42及び基準軌跡生成部43へわたす。
【0038】
選択部42は、分類部41により各走行軌跡が分類された複数のクラスのそれぞれについて、そのクラスに属する走行軌跡の数を計数する。そして選択部42は、複数のクラスの中から、属する走行軌跡の数が最大となるクラスを選択する。選択部42は、選択したクラスを表す情報を基準軌跡生成部43へ通知する。
【0039】
基準軌跡生成部43は、選択部42により選択されたクラスに属する個々の走行軌跡を平均化することで基準走行軌跡を生成する。個々の走行軌跡を平均化するために、基準軌跡生成部43は、例えば、分類部41と同様に、道路の所定区間をその道路の延伸方向に沿って複数のサブ区間に分割する。さらに、基準軌跡生成部43は、選択されたクラスに属する個々の走行軌跡について、サブ区間ごとに、そのサブ区間内の走行軌跡上の位置を選択する。そして基準軌跡生成部43は、サブ区間ごとに、個々の走行軌跡について選択されたそのサブ区間内の位置の平均位置を基準位置として算出する。そして基準軌跡生成部43は、サブ区間ごとの基準位置を近似する曲線を、基準走行軌跡として算出すればよい。その際、基準軌跡生成部43は、例えば、各サブ区間の基準位置と基準走行軌跡間の距離の二乗和が最小化されるように、最小二乗法にしたがって基準走行軌跡を算出する。また、基準軌跡生成部43は、サブ区間ごとの基準位置を近似する曲線を求める際に、所定の式で表される曲線を仮定してもよい。基準軌跡生成部43は、そのような曲線として、例えば、所定区間の何れかの端部に近付くほど曲率が小さくなるクロソイド曲線を用いてもよい。
【0040】
図4は、基準走行軌跡の生成に利用される走行軌跡の一例を示す図である。
図4に示される例では、所定区間400はカーブ区間である。そしてこの例では、所定区間400について、5本の走行軌跡401~405が収集されている。このうち、走行軌跡401は、車両が対向車線にはみ出す軌跡となっているので、交通法規に違反している。そのため、走行軌跡401は、分類部41による分類の対象から除外される。そして走行軌跡402~405に対してクラスタリング処理が行われる。その結果として、3本の走行軌跡402~404が同じクラス411に分類され、走行軌跡405が別のクラス412に分類される。クラス411とクラス412とを比較すると、クラス411に属する走行軌跡の数がクラス412に属する走行軌跡の数よりも多い。そのため、クラス411に属する走行軌跡402~404を平均化することで、基準走行軌跡421が生成される。
【0041】
図5は、基準走行軌跡の生成に利用される走行軌跡の他の一例を示す図である。
図5に示される例では、所定区間500は交差点区間である。またこの例では、交差点と接続する道路501が、交差点へ進入可能な2本の車線501a、501bを有している。そして車線501aは、左折可能な車線となっており、一方、車線501bは、右折可能な車線となっている。また、道路501から左折する経路と道路501から右折する経路が異なっている。そのため、道路501の車線501aから左折する経路と、道路501の車線501bから右折する経路とで、それぞれ別個に基準走行軌跡が生成される。
【0042】
左折する経路に関して、3本の走行軌跡511~513が示されている。このうち、走行軌跡511は、右側の車線501bから左側の道路へ左折する経路となっており、交通法規に違反している。そのため、走行軌跡511は、分類部41による分類の対象から除外される。そして走行軌跡512~513に対してクラスタリング処理が行われ、そのクラスタリング処理の結果に基づいて基準走行軌跡が生成される。同様に、右折する経路に関して、3本の走行軌跡521~523が示されており、これらの走行軌跡に対してクラスタリング処理が行われる。その結果として、2本の走行軌跡521及び522が同じクラス531に分類され、走行軌跡523が別のクラス532に分類される。クラス531とクラス532とを比較すると、クラス531に属する走行軌跡の数がクラス532に属する走行軌跡の数よりも多い。そのため、クラス531に属する走行軌跡521及び522を平均化することで、基準走行軌跡が生成される。
【0043】
基準軌跡生成部43は、生成した基準走行軌跡を表す情報(例えば、サブ区間ごとの基準走行軌跡上の位置または基準走行軌跡を表す近似曲線)を地図生成部44へ出力する。
【0044】
地図生成部44は、所定区間についての基準走行軌跡を表す情報を含む地図を生成する。すなわち、地図生成部44は、ストレージ装置32から読み出した地図に表される所定区間について、基準軌跡生成部43により生成された基準走行軌跡を表す情報を追加する。これにより、基準走行軌跡を含む地図が生成される。
【0045】
地図生成部44は、生成した地図を、ストレージ装置32に保存する。あるいは、地図生成部44は、生成した地図を、通信インターフェース31を介して他の機器へ出力してもよい。
【0046】
図6は、サーバ3における、基準軌跡生成処理の動作フローチャートである。サーバ3のプロセッサ34は、所定区間について所定数以上の走行軌跡が収集されると、以下に示される動作フローチャートに従って基準軌跡生成処理を実行すればよい。
【0047】
プロセッサ34の分類部41は、各車両2から収集された、所定区間の複数の走行軌跡情報のそれぞれに表される走行軌跡のうち、所定区間内の何れかの位置において車両2に掛かる加速度の絶対値が所定の閾値を超える走行軌跡を除外する(ステップS101)。さらに、分類部41は、それら走行軌跡のうち、交通法規に違反するような走行軌跡をさらに除外する(ステップS102)。そして分類部41は、残りの走行軌跡をクラスタリングすることで、それら走行軌跡のそれぞれを複数のクラスの何れかに分類する(ステップS103)。
【0048】
プロセッサ34の選択部42は、分類部41により各走行軌跡が分類された複数のクラスのそれぞれについて、そのクラスに属する走行軌跡の数を計数する。そして選択部42は、複数のクラスの中から、属する走行軌跡の数が最大となるクラスを選択する(ステップS104)。
【0049】
プロセッサ34の基準軌跡生成部43は、選択された、属する走行軌跡の数が最大となるクラスの個々の走行軌跡を平均化することで基準走行軌跡を生成する(ステップS105)。そしてプロセッサ34の地図生成部44は、基準走行軌跡を表す情報を地図に追加する(ステップS106)。そしてプロセッサ34は、基準軌跡生成処理を終了する。
【0050】
以上に説明してきたように、この基準軌跡生成装置は、道路の所定区間を走行した1台以上の車両から収集した、実際に車両がその区間を走行したときの複数の走行軌跡のそれぞれを複数のクラスの何れかに分類する。そしてこの基準軌跡生成装置は、複数のクラスのうち、含まれる走行軌跡の数が最も多いクラスを選択し、選択したクラスに含まれる個々の走行軌跡を平均化することで、所定区間において基準となる基準走行軌跡を生成する。このように基準走行軌跡を生成することで、この基準軌跡生成装置は、車両が何らかの異常な走行を行ったときの走行軌跡を除外して、基準走行軌跡を生成することができる。そのため、この基準軌跡生成装置は、基準走行軌跡が車両の走行に適した軌跡となるように、基準走行軌跡を適切に生成することができる。
【0051】
なお、普通乗用車の走行軌跡と大型車両の走行軌跡とは異なることが想定される。また、収集される走行軌跡は普通乗用車によるものが殆どであることが想定される。そこで変形例によれば、基準軌跡生成部43は、一旦生成した基準走行軌跡を大型車両用に補正することで、大型車両用の基準走行軌跡を生成してもよい。例えば、大型車両は普通乗用車ほど小さい回転半径で進行方向を変えることができない。そこで、所定区間が、交差点における右折または左折を含む区間といった、通行する車両の向きが変化する区間である場合、基準軌跡生成部43は、生成した基準走行軌跡の曲率半径が所定量だけ大きくなるように、基準走行軌跡を補正してもよい。さらに、基準軌跡生成部43は、補正された基準走行軌跡が通る位置を、元の基準走行軌跡の位置に対して車両が向きを変える方向と逆側に所定量だけずらしてもよい。また、地図生成部44は、元の基準走行軌跡だけでなく、補正された基準走行軌跡も地図に追加してもよい。
【0052】
この変形例によれば、基準軌跡生成部43は、大型車両用の基準走行軌跡を適切に生成することができる。
【0053】
他の変形例によれば、分類部41は、クラスタリングにおいて、各走行軌跡を表すデータとして、所定区間の道路の構造に応じたデータを使用してもよい。また、選択部42は、所定区間の道路の構造に応じて、基準走行軌跡の生成に利用するクラスの選択手法を変更してもよい。この場合、分類部41及び選択部42は、地図における、所定区間の道路構造を表す情報を参照し、その道路構造に応じて、クラスタリングに用いるデータまたは適用するクラスの選択手法を選択すればよい。
【0054】
例えば、所定区間がカーブ区間である場合、分類部41は、地図を参照して、所定区間の複数の走行軌跡のそれぞれについて、所定区間を分割した複数のサブ区間のそれぞれにおける、道路または車線の中心線から走行軌跡までの距離の集合を求める。あるいは、分類部41は、複数の走行軌跡のそれぞれについて、各サブ区間における、道路端から走行軌跡までの距離の集合を求めてもよい。そして分類部41は、複数の走行軌跡のそれぞれについて、その距離の集合と、その所定区間を車両2が走行したときの速度とを、クラスタリングに利用するデータとする。また、選択部42は、上記の実施形態と同様に、属する走行軌跡の数が最大となるクラスを選択すればよい。
【0055】
なお、所定区間がカーブ区間である場合、基準軌跡生成部43は、カーブ区間の曲率が所定の曲率閾値よりも大きい場合にのみ、走行軌跡に基づいて基準走行軌跡を生成してもよい。そしてカーブ区間の曲率が曲率閾値以下である場合、基準軌跡生成部43は、カーブ区間の道路の中心線あるいは各車線の中心線を基準走行軌跡としてもよい。
【0056】
また、道路の所定区間が、側道への分岐または合流地点、あるいは、登坂車線を含む、車線数の変化が有る区間である場合、分類部41は、各走行軌跡について、所定区間を分割した複数のサブ区間のそれぞれにおける、道路端から走行軌跡までの距離を求める。そして分類部41は、複数の走行軌跡のそれぞれについて、その距離の集合を、クラスタリングに利用するデータとする。さらに、分類部41は、所定区間についての複数の走行軌跡を、所定区間の入口における車線と出口における車線の組み合わせごとに、それらの車線を通る走行軌跡ごとに分類し、分類された走行軌跡の集合ごとにクラスタリングを行う。また、所定区間が合流地点を含む場合、選択部42は、各クラスのうち、そのクラスに属する各走行軌跡における、合流地点で無くなる合流車線から被合流車線へ移動する地点の平均値が合流地点に最も近いクラスを選択してもよい。
【0057】
さらに、道路の所定区間が、交差点を含む区間である場合、分類部41は、複数の走行軌跡のそれぞれについて、所定区間を分割した複数のサブ区間のそれぞれにおける走行軌跡上の位置の集合を求める。そして分類部41は、複数の走行軌跡のそれぞれについて、その位置の集合を、クラスタリングに利用するデータとする。さらに、分類部41は、各走行軌跡について、所定区間を通過する前に車両2が最後に停車した位置をクラスタリングに利用するデータに含めてもよい。この場合、分類部41は、走行軌跡情報に含まれる、車両2の各位置の時刻を参照して、所定時間以上にわたって車両2の位置が変化しない地点を、車両2が停車した位置として特定すればよい。さらに、分類部41は、所定区間についての複数の走行軌跡を、所定区間の入口における車線と出口における車線の組み合わせごとに、それらの車線を通る走行軌跡ごとに分類し、分類された走行軌跡の集合ごとにクラスタリングを行う。さらにまた、分類部41は、左折時における大回り、及び、右折時における小回りといった、事故を誘発する危険の有る走行軌跡を、分類対象とする走行軌跡から除外してもよい。この場合、分類部41は、所定区間の入口における車線の中心位置と所定区間の出口における車線の中心位置とを結び、かつ、交差点の中心に対して凸となる円弧を基準線としてもとめ、その基準線から所定距離以上離れる走行軌跡を除外すればよい。
【0058】
上記の各実施形態または変形例による基準軌跡生成装置のプロセッサが有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。なお、コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリとすることができる。
【0059】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 地図生成システム
2 車両
3 サーバ(基準軌跡生成装置)
31 通信インターフェース
32 ストレージ装置
33 メモリ
34 プロセッサ
41 分類部
42 選択部
43 基準軌跡生成部
44 地図生成部
4 通信ネットワーク
5 無線基地局