(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109217
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】磁気センサ
(51)【国際特許分類】
G01R 33/02 20060101AFI20240806BHJP
G01R 33/09 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01R33/02 V
G01R33/09
G01R33/02 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013902
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】林 承彬
(72)【発明者】
【氏名】笠島 多聞
(72)【発明者】
【氏名】大川 秀一
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA01
2G017AC01
2G017AC06
2G017AC07
2G017AD55
2G017BA03
2G017BA07
(57)【要約】
【課題】低周波領域の磁界を高感度に検出可能な改良された磁気センサを提供する。
【解決手段】磁気センサ1は、磁気ギャップG1を介して配列された磁性体構造物10,20と、磁気ギャップG1によって形成される磁路上に配置された感磁素子R1と、環状構造を有する磁性体構造物30とをそなえる。磁性体構造物10,20は磁性体構造物30の領域31,32にそれぞれ固定され、励磁コイルC1,C2は磁性体構造物30の領域33,34にそれぞれ巻回される。これによれば、励磁コイルC1,C2に所定の周波数を有する電流を流すことにより、感磁素子R1から出力される検出信号を所定の周波数で変調することができることから、低周波領域の磁界を高感度に検出することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ギャップを介して配列された第1及び第2の磁性体構造物と、
前記磁気ギャップによって形成される磁路上に配置された感磁素子と、
第1及び第2の領域と、前記第1の領域と前記第2の領域の間に並列に接続された第3及び第4の領域とを含む環状構造を有する第3の磁性体構造物と、
第1及び第2の励磁コイルと、を備え、
前記第1の磁性体構造物は、前記第3の磁性体構造物の前記第1の領域に固定され、
前記第2の磁性体構造物は、前記第3の磁性体構造物の前記第2の領域に固定され、
前記第1の励磁コイルは、前記第3の磁性体構造物の前記第3の領域に巻回され、
前記第2の励磁コイルは、前記第3の磁性体構造物の前記第4の領域に巻回される、磁気センサ。
【請求項2】
前記第1の励磁コイルと前記第2の励磁コイルは、互いに逆方向の磁界が発生するよう、直列に接続されている、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項3】
前記第1及び第2の励磁コイルに所定の周波数を有する電流を流す変調回路をさらに備える、請求項2に記載の磁気センサ。
【請求項4】
前記第3の磁性体構造物の前記第1の領域と前記第2の領域の間に配置された基板をさらに備え、
前記感磁素子は、前記基板上に搭載される、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項5】
前記第1の磁性体構造物は、前記第3の磁性体構造物の前記第1の領域に設けられた位置決め部によって位置決めされ、
前記第2の磁性体構造物は、前記第3の磁性体構造物の前記第2の領域に設けられた位置決め部によって位置決めされる、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項6】
前記第1の領域と前記第2の領域は、第1の方向に配列され、
前記第3の領域と前記第4の領域は、前記第1の方向と直交する第2の方向に配列され、
前記第1の領域は、前記第2の方向に配列され、前記第1及び第2の方向と直交する第3の方向における高さが前記第1の磁性体構造物よりも高い第1及び第2のシールド部を有し、これにより、前記第1の磁性体構造物の少なくとも一部は、前記第1及び第2のシールド部によって前記第2の方向から挟まれ、
前記第2の領域は、前記第2の方向に配列され、前記第3の方向における高さが前記第2の磁性体構造物よりも高い第3及び第4のシールド部を有し、これにより、前記第2の磁性体構造物の少なくとも一部は、前記第3及び第4のシールド部によって前記第2の方向から挟まれる、請求項1に記載の磁気センサ。
【請求項7】
前記第3の磁性体構造物は、磁性体からなる単一のブロックである、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の磁気センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は磁気センサに関し、特に、低周波領域の磁界を高感度に検出可能な磁気センサに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、感磁素子を用いた磁気センサは様々な分野で利用されているが、極めて微弱な磁界を検出するためには、S/N比の高い磁気センサが必要となる。ここで、磁気センサのS/N比を低下させる要因として、1/fノイズが挙げられる。1/fノイズは、測定対象となる磁界の周波数成分が低いほど顕著となることから、例えば1kHz以下といった低周波領域の磁界を高感度に検出するためには、1/fノイズを低減させることが重要となる。
【0003】
1/fノイズを低減させた磁気センサとしては、特許文献1に記載された磁気センサが知られている。特許文献1に記載された磁気センサは、変調手段を用いて感磁素子の動作点を変調することによって、1/fノイズを低減させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された磁気センサにおいては、感磁素子自身のノイズも変調されてしまうという問題があった。
【0006】
本開示においては、低周波領域の磁界を高感度に検出可能な改良された磁気センサについて説明される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一側面による磁気センサは、磁気ギャップを介して配列された第1及び第2の磁性体構造物と、磁気ギャップによって形成される磁路上に配置された感磁素子と、第1及び第2の領域、並びに、第1の領域と第2の領域の間に並列に接続された第3及び第4の領域を含む環状構造を有する第3の磁性体構造物と、第1及び第2の励磁コイルとを備え、第1の磁性体構造物は第3の磁性体構造物の第1の領域に固定され、第2の磁性体構造物は第3の磁性体構造物の第2の領域に固定され、第1の励磁コイルは第3の磁性体構造物の第3の領域に巻回され、第2の励磁コイルは第3の磁性体構造物の第4の領域に巻回される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、低周波領域の磁界を高感度に検出可能な改良された磁気センサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の第1の実施形態による磁気センサ1の外観を示す略斜視図である。
【
図2】
図2は、磁気センサ1の略分解斜視図である。
【
図3】
図3は、磁性体構造物10,20とセンサチップ100を分離した状態を示す略分解斜視図である。
【
図4】
図4は、センサチップ100の構造を説明するための略斜視図である。
【
図5】
図5は、センサチップ100から磁性体層111,112を除去した状態を示す略斜視図である。
【
図6】
図6は、センサチップ100の主要部のXZ断面図である。
【
図7】
図7は、磁気センサ1の使用方法を説明するための模式図である。
【
図8】
図8は、磁気センサ1の効果を説明するためのグラフである。
【
図9】
図9は、本開示の第2の実施形態による磁気センサ2の外観を示す略斜視図である。
【
図10】
図10は、本開示の第3の実施形態による磁気センサ3の外観を示す略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本開示に係る技術の実施形態について詳細に説明する。
【0011】
図1は、本開示の第1の実施形態による磁気センサ1の外観を示す略斜視図である。また、
図2は磁気センサ1の略分解斜視図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、第1の実施形態による磁気センサ1は、基板5と、基板5に搭載されたセンサチップ100と、磁性体構造物10,20,30と、励磁コイルC1,C2とを備えている。基板5はXZ面を主面とし、主面にセンサチップ100が搭載されている。
【0013】
磁性体構造物10,20,30は、いずれもフェライトなどの高透磁率材料からなるブロックである。磁性体構造物10は、X方向を長手方向とする棒状の本体部11と、本体部11の-X方向における端部に設けられた突出部12からなる。同様に、磁性体構造物20は、X方向を長手方向とする棒状の本体部21と、本体部21の+X方向における端部に設けられた突出部22からなる。突出部12と突出部22は接触しておらず、両者間にはX方向の磁気ギャップG1が形成される。このように、磁性体構造物10と磁性体構造物20は、磁気ギャップG1を介してX方向に配列されている。突出部12,22のZ方向における厚みは、本体部11,21のZ方向における厚みよりも薄く、突出部12,22とZ方向に重なるよう、センサチップ100が配置される。
【0014】
磁性体構造物30は領域31~34からなる環状構造を有している。領域31と領域32はX方向に配列されている。領域33と領域34は、領域31と領域32の間に並列に接続されるよう、Z方向に配列されている。領域33には励磁コイルC1が巻回され、領域34には励磁コイルC2が巻回されている。磁性体構造物30は、磁性体からなる単一のブロックであっても構わないし、磁性体からなる複数のブロックを組み合わせたものであっても構わない。
【0015】
磁性体構造物30の領域31は、XZ面を有する本体部B1と、本体部B1からY方向に突出するシールド部S1,S2を有している。本体部B1には、X方向に延在する溝31aが設けられており、磁性体構造物10の本体部11が位置決め部である溝31aに挿入されることにより、磁性体構造物30の本体部B1に磁性体構造物10が位置決め固定される。本体部B1に溝31aを設けることによって磁性体構造物10を位置決めする代わりに、本体部B1に複数の突起を設けることによって磁性体構造物10を位置決めしても構わない。また、シールド部S1,S2は、本体部B1のZ方向における両端部に配置されており、Y方向における高さが磁性体構造物10よりも高い。これにより、磁性体構造物10の一部は、シールド部S1,S2によってZ方向から挟まれることから、Z方向のノイズ磁界がシールドされる。
【0016】
磁性体構造物30の領域32は、XZ面を有する本体部B2と、本体部B2からY方向に突出するシールド部S3,S4を有している。本体部B2には、X方向に延在する溝32aが設けられており、磁性体構造物20の本体部21が位置決め部である溝32aに挿入されることにより、磁性体構造物30の本体部B2に磁性体構造物20が位置決め固定される。本体部B2に溝32aを設けることによって磁性体構造物20を位置決めする代わりに、本体部B2に複数の突起を設けることによって磁性体構造物20を位置決めしても構わない。また、シールド部S3,S4は、本体部B2のZ方向における両端部に配置されており、Y方向における高さが磁性体構造物20よりも高い。これにより、磁性体構造物20の一部は、シールド部S3,S4によってZ方向から挟まれることから、Z方向のノイズ磁界がシールドされる。
【0017】
磁性体構造物30の領域33は、シールド部S1とシールド部S3を繋ぐように設けられるとともに、励磁コイルC1が巻回される。磁性体構造物30の領域34は、シールド部S2とシールド部S4を繋ぐように設けられるとともに、励磁コイルC2が巻回される。また、基板5は、領域31の本体部B1と領域32の本体部B2の間に位置する空間35に配置される。これにより、基板5は、領域31の本体部B1と領域32の本体部B2によってX方向から挟まれる。
【0018】
図3は、磁性体構造物10,20とセンサチップ100を分離した状態を示す略分解斜視図である。
【0019】
図3に示すように、センサチップ100の主面である素子形成面105はXY面を構成する。つまり、センサチップ100の素子形成面105は、基板5の主面に対して垂直である。素子形成面105上には、磁性体層111,112が形成されている。磁性体層111は磁性体構造物10の突出部12とZ方向に重なり、磁性体層112は磁性体構造物20の突出部22とZ方向に重なる。
【0020】
図4は、センサチップ100の構造を説明するための略斜視図である。
【0021】
図4に示すように、センサチップ100の素子形成面105上には感磁素子R1、磁性体層111,112、端子電極T11~T14が形成されている。磁性体層111,112は、パーマロイなどのNiFe系材料からなる薄膜であり、磁性体層111,112からなる磁気ギャップG2によって形成される磁路上に感磁素子R1が配置されている。磁気ギャップG2は磁気ギャップG1より狭く、これにより漏れ磁束が低減することから、磁性体層111,112を設けない場合と比べて、感磁素子R1により多くの磁界を印加することができる。磁性体層111は磁性体構造物10の突出部12とZ方向に重なり、磁性体層112は磁性体構造物20の突出部22とZ方向に重なる。これにより、磁性体構造物10,20間を流れるX方向の磁束は、磁性体層111,112を介して感磁素子R1に印加される。
【0022】
図5は、センサチップ100から磁性体層111,112を除去した状態を示す略斜視図である。
【0023】
図5に示すように、感磁素子R1は、素子形成面105上においてY方向に延在し、その一端が配線L1を介して端子電極T11に接続され、他端が配線L2を介して端子電極T12に接続されている。感磁素子R1は、磁束の向きによって電気抵抗が変化する磁気抵抗効果素子である。感磁素子R1の感度軸方向である固定磁化方向はX方向である。本発明において感磁素子R1が磁気抵抗効果素子である必要はないが、感磁素子R1として磁気抵抗効果素子を用いることにより、微弱な磁界を高感度に検出することが可能となる。素子形成面105の下層又は上層には、補償コイル120も形成されている。補償コイル120の一端は端子電極T13に接続され、他端は端子電極T14に接続されている。補償コイル120は、感磁素子R1に印加される磁界を打ち消すことによって、いわゆるクローズドループ制御を行うために用いられる。そして、本実施形態においては、センサチップ100の主面である素子形成面105が基板5の主面に対して垂直となるよう、センサチップ100を立てて搭載していることから、端子電極T11~T14と基板5の配線距離を短縮することができる。これにより、ハンダなどを用いて、基板5に設けられたランドパターンと端子電極T11~T14を直接接続することが可能となる。
【0024】
図6は、センサチップ100の主要部のXZ断面図である。
【0025】
図6に示すように、センサチップ100の素子形成面105には、感磁素子R1が形成されている。感磁素子R1は絶縁層107で覆われており、絶縁層107の表面に磁性体層111,112が形成されている。磁性体層111,112は絶縁層108で覆われている。そして、平面視で(Z方向から見て)、感磁素子R1は磁性体層111と磁性体層112の間に位置する。これにより、磁気ギャップG2を通過する磁界が感磁素子R1に印加される。つまり、感磁素子R1は、磁性体層111と磁性体層112によって形成される磁気ギャップG2の近傍であり、磁気ギャップG2を通過する検出対象磁界を検出可能な磁路上に配置される。このように、感磁素子R1を必ずしも2つの磁性体層111,112間に配置する必要はなく、磁性体層111,112からなる磁気ギャップG2を通過する磁界の少なくとも一部が感磁素子R1に印加されるような配置であれば足りる。磁気ギャップG2の幅と感磁素子R1の幅の関係については特に限定されない。
図6に示す例では、磁気ギャップG2のX方向における幅G2xが感磁素子R1のx方向における幅Rxよりも狭く、これにより、Z方向から見て磁性体層111,112と感磁素子R1が重なりOVを有している。磁気ギャップG2を通過する磁界のより多くを感磁素子R1に印加するためには、重なりOVにおける磁性体層111,112と感磁素子R1のZ方向における距離ができるだけ近いことが望ましく、磁気ギャップG2のX方向における幅G2xよりも磁性体層111,112と感磁素子R1のZ方向における距離が近いことがより望ましい。これにより、感磁素子R1が磁気ギャップG2を通過する磁界の主な磁路となる。
【0026】
図7は、本実施形態による磁気センサ1の使用方法を説明するための模式図である。
【0027】
図7に示すように、本実施形態による磁気センサ1を使用する際には、励磁コイルC1,C2を変調回路50に接続することによって、励磁コイルC1,C2に所定の周波数を有する交流電流iを流す。ここで、励磁コイルC1によって磁性体構造物30の領域33に流れる磁束の方向Aと、励磁コイルC2によって磁性体構造物30の領域34に流れる磁束の方向Bは互いに逆となるよう、励磁コイルC1,C2の巻回方向及び電流方向を設定する。励磁コイルC1と励磁コイルC2は直列に接続されており、これにより励磁コイルC1と励磁コイルC2に流れる電流量は一致する。また、交流電流iの電流経路には可変抵抗51が接続されており、可変抵抗51の抵抗値を変化させることによって、交流電流iの電流量を調整することができる。交流電流iの代わりに、パルス状の直流電流を断続的に流しても構わない。
【0028】
励磁コイルC1,C2に交流電流iを流すことよって磁性体構造物30が励磁されると、磁束が環状構造を有する磁性体構造物30を周回することによって磁性体構造物30が磁気飽和し、透磁率が大幅に低下する。つまり、磁性体構造物30が励磁されている期間においては、検出対象となるX方向の磁界成分は、磁性体構造物30をバイパスすることなく、磁性体構造物10,20を通ることになる。このため、磁気ギャップG1を通過するX方向の磁界が感磁素子R1に印加される。また、補償コイル120には、感磁素子R1から得られる検出信号に応じたフィードバック電流が流れ、これにより生じるキャンセル磁界によって、感磁素子R1に印加される磁界がゼロに保たれる。このようなクローズドループ制御によって、高い検出精度を得ることが可能となる。
【0029】
しかも、励磁コイルC1によって磁性体構造物30によって生じる磁界の方向Aと、励磁コイルC2によって磁性体構造物30によって生じる磁界の方向Bが互いに逆であることから、励磁コイルC1,C2によって生じる磁界は、環状構造を有する磁性体構造物30を周回する。このため、励磁コイルC1,C2によって生じる磁界は、感磁素子R1にほとんど印加されない。特に、磁性体からなる単一のブロックによって磁性体構造物30を構成した場合、磁性体構造物30を周回する磁界に漏れが少なくなるため、励磁コイルC1,C2によって生じる磁界は、感磁素子R1に対してほとんど影響を与えない。
【0030】
一方、励磁コイルC1,C2に流れる電流がゼロになるタイミングにおいては、磁性体構造物30が励磁されないことから、磁性体構造物30は透磁率が高い状態が維持される。これにより、検出対象となるX方向の磁界成分は、磁気ギャップG1を有する磁性体構造物10,20を通ることなく、磁性体構造物30の領域33,34によってバイパスされる。このため、検出対象となるX方向の磁界は、感磁素子R1に印加されなくなる。
【0031】
このように、励磁コイルC1,C2が励磁されている期間においては、検出対象となるX方向の磁界成分が感磁素子R1に印加され、励磁コイルC1,C2が励磁されていない期間においては、検出対象となるX方向の磁界成分が磁性体構造物30の領域33,34をバイパスする。その結果、感磁素子R1から得られる検出信号が交流電流iの周波数によって変調されることから、1/fノイズが大幅に低減される。
【0032】
このように、本実施形態による磁気センサ1は、検出対象となる微弱な磁界を感磁素子R1に集める一対の磁性体構造物10,20を備えるとともに、磁性体構造物10,20によって形成される磁気ギャップG1をバイパスする環状の磁性体構造物30には励磁コイルC1,C2が巻回されている。これにより、励磁コイルC1,C2に交流電流iを流すことによって、感磁素子R1によって得られる検出信号を変調することができる。その結果、検出対象となる微弱な磁界の周波数が低い場合であっても、1/fノイズを大幅に低減することが可能となる。しかも、励磁コイルC1,C2によって生じる磁界は、環状構造を有する磁性体構造物30をループ状に周回し、感磁素子R1には印加されないことから、感磁素子R1自身のノイズが変調されることもない。さらに、感磁素子R1として磁気抵抗効果素子を用いていることから、コイルを用いて磁界を検出する場合と比べて単位面積当たりの磁気検出効率を高めることができる。
【0033】
図8は、本実施形態による磁気センサ1の効果を説明するためのグラフであり、実線は本実施形態による磁気センサ1におけるノイズの周波数特性を示し、破線は変調手段を持たない従来の磁気センサにおけるノイズの周波数特性を示している。
図8に示すように、本実施形態による磁気センサ1は、感磁素子R1によって得られる検出信号が変調されることから、特に低周波領域における1/fノイズが大幅に低減していることが分かる。
【0034】
図9は、本開示の第2の実施形態による磁気センサ2の外観を示す略斜視図である。
【0035】
図9に示すように、第2の実施形態による磁気センサ2は、磁性体構造物30がシールド部S1~S4を有していない点において、上述した第1の実施形態による磁気センサ1と相違している。また、感磁素子R1は、磁気ギャップG1内に配置されている。その他の基本的な構成は、第1の実施形態による磁気センサ1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態による磁気センサ2が例示するように、磁性体構造物30は単純な環状構造体であっても構わない。これによれば、磁性体構造物30の作製が容易となるとともに、全体のY方向における高さを低背化することが可能となる。
【0036】
図10は、本開示の第3の実施形態による磁気センサ3の外観を示す略斜視図である。
【0037】
図10に示すように、第3の実施形態による磁気センサ3は、磁性体構造物10,20がX方向を軸として90°回転している点において、上述した第2の実施形態による磁気センサ2と相違している。その他の基本的な構成は、第2の実施形態による磁気センサ2と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態による磁気センサ3が例示するように、磁性体構造物10,20のより広い面がXZ面となるよう、磁性体構造物10,20を寝かせて磁性体構造物30に固定しても構わない。これによれば、磁性体構造物10,20をより安定的に磁性体構造物30に固定することが可能となる。
【0038】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記の実施形態に限定されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本開示の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0039】
本開示に係る技術には、以下の構成例が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0040】
本開示の一側面による磁気センサは、磁気ギャップを介して配列された第1及び第2の磁性体構造物と、磁気ギャップによって形成される磁路上に配置された感磁素子と、第1及び第2の領域、並びに、第1の領域と第2の領域の間に並列に接続された第3及び第4の領域を含む環状構造を有する第3の磁性体構造物と、第1及び第2の励磁コイルとを備え、第1の磁性体構造物は第3の磁性体構造物の第1の領域に固定され、第2の磁性体構造物は第3の磁性体構造物の第2の領域に固定され、第1の励磁コイルは第3の磁性体構造物の第3の領域に巻回され、第2の励磁コイルは第3の磁性体構造物の第4の領域に巻回される。これによれば、第1及び第2の励磁コイルに所定の周波数を有する電流を流すことにより、感磁素子から出力される検出信号を所定の周波数で変調することができることから、低周波領域の磁界を高感度に検出することが可能となる。
【0041】
上記の磁気センサにおいて、第1の励磁コイルと第2の励磁コイルは、互いに逆方向の磁界が発生するよう、直列に接続されていても構わない。これによれば、第1及び第2の励磁コイルによって生じる磁界が第3の磁性体構造物を周回することから、第1及び第2の励磁コイルによって生じる磁界が感磁素子に対するノイズになりにくい。
【0042】
上記の磁気センサは、第1及び第2の励磁コイルに所定の周波数を有する電流を流す変調回路をさらに備えても構わない。これによれば、第1及び第2の励磁コイルに所定の周波数を有する電流を流すことが可能となる。
【0043】
上記の磁気センサは、第3の磁性体構造物の第1の領域と第2の領域の間に配置された基板をさらに備え、感磁素子は基板上に搭載されていても構わない。これによれば、感磁素子を安定的に支持することが可能となる。
【0044】
上記の磁気センサにおいて、第1の磁性体構造物は、第3の磁性体構造物の第1の領域に設けられた位置決め部によって位置決めされ、第2の磁性体構造物は、第3の磁性体構造物の第2の領域に設けられた位置決め部によって位置決めされても構わない。これによれば、第1及び第2の磁性体構造物を第3の磁性体構造物に安定的に固定することが可能となる。
【0045】
上記の磁気センサにおいて、第1の領域と第2の領域は第1の方向に配列され、第3の領域と第4の領域は第1の方向と直交する第2の方向に配列され、第1の領域は、第2の方向に配列され、第1及び第2の方向と直交する第3の方向における高さが第1の磁性体構造物よりも高い第1及び第2のシールド部を有し、これにより、第1の磁性体構造物の少なくとも一部は、第1及び第2のシールド部によって前記第2の方向から挟まれ、第2の領域は、第2の方向に配列され、第3の方向における高さが第2の磁性体構造物よりも高い第3及び第4のシールド部を有し、これにより、第2の磁性体構造物の少なくとも一部は、第3及び第4のシールド部によって第2の方向から挟まれても構わない。これによれば、第2の方向のノイズ磁界をシールドすることが可能となる。
【0046】
上記の磁気センサにおいて、第3の磁性体構造物は、磁性体からなる単一のブロックであっても構わない。これによれば、第3の磁性体構造物を周回する磁界に漏れが少なくなる。
【符号の説明】
【0047】
1~3 磁気センサ
5 基板
10,20,30 磁性体構造物
11,21 本体部
12,22 突出部
31~34 領域
31a,32a 溝
35 空間
50 変調回路
51 可変抵抗
100 センサチップ
105 素子形成面
107,108 絶縁層
111,112 磁性体層
120 補償コイル
A,B 方向
B1,B2 本体部
C1,C2 励磁コイル
G1,G2 磁気ギャップ
L1,L2 配線
R1 感磁素子
S1~S4 シールド部
T11~T14 端子電極
i 交流電流