(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109223
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】鉄道軌道用樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
E01B 37/00 20060101AFI20240806BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
E01B37/00 C
C08F290/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013913
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 英哲
(72)【発明者】
【氏名】河野 宏之
【テーマコード(参考)】
2D057
4J127
【Fターム(参考)】
2D057CA05
2D057CA08
4J127AA03
4J127BB021
4J127BB031
4J127BB091
4J127BB221
4J127BC021
4J127BD411
4J127CB123
4J127CB142
4J127CB151
4J127CB154
4J127CC014
4J127CC091
4J127CC153
4J127DA08
4J127DA45
4J127DA46
4J127DA54
4J127DA61
4J127EA05
4J127EA06
4J127EA07
4J127FA01
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】乾燥状態のみならず、湿潤状態の被着体に対しても付着力に優れる硬化体を形成することができる、鉄道軌道に好適に用いることができる鉄道軌道用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ウレタンアクリレート樹脂(A)、無機顔料(B)、硬化剤(C)、および、20℃で液体であるノニオン系界面活性剤(D)を含有し、該ノニオン系界面活性剤(D)の含有量が、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~3.4質量部である、鉄道軌道用樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンアクリレート樹脂(A)、無機顔料(B)、硬化剤(C)、および、20℃で液体であるノニオン系界面活性剤(D)を含有し、
該ノニオン系界面活性剤(D)の含有量が、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~3.4質量部である、
鉄道軌道用樹脂組成物。
【請求項2】
カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(E1)および(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(E2)から選択される少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ノニオン系界面活性剤(D)が前記成分(A)と反応性の基を有さない、請求項1に記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
【請求項4】
前記ノニオン系界面活性剤(D)のHLB値が1~13である、請求項1に記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
【請求項5】
前記鉄道軌道用樹脂組成物から得られた硬化体のバネ定数が15~80MN/mである、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
【請求項6】
下記式(1)で算出される付着保持率が50%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
付着保持率=(Tw/Td)×100 ・・・(1)
[式(1)中、Tdは、乾燥した140mm×140mmの大きさのモルタル板表面に、前記鉄道軌道用樹脂組成物を配置し、23℃で3日間硬化させることで得られた硬化体(40mm×40mm×5mm(厚))を、該モルタル板から剥離する際の、建研式引張試験機を用いて測定した最大引張強度(MPa)であり、Twは、乾燥した140mm×140mmの大きさのモルタル板の代わりに、140mm×140mmの大きさのモルタル板に水1gを塗布し、該モルタル板の全面を水で濡らした板を用いた以外は、Tdと同様にして測定した最大引張強度(MPa)である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道軌道用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄道軌道として、コンクリート等で構築した高架構造物や地下構造物、橋梁などを路盤(以下、これらの構造物を「路盤側構造物」ともいう。)とし、この路盤側構造物上に、充填層を介してコンクリート製等の軌道スラブを固定し、この軌道スラブに軌道レールを締結してなるスラブ式軌道が広く採用されている。
【0003】
このようなスラブ式軌道は、具体的には、
図1に示すように、路盤側構造物20の上面に、充填層22を介して軌道スラブ24が設けられ、さらに軌道スラブ24の上面には、一対の軌道レール30,30が配設されている。なお軌道スラブ24は両端部に切欠き部26,26を備え、路盤側構造物20上に所定間隔置きに設けられた突起部28と、軌道スラブ24の切欠き部26とが位置合わせされている。
【0004】
このような軌道スラブ24の高低調整、軌道スラブ24の列車通過時の上下方向のあおり防止、雨水の進入防止などを目的として、スラブ式軌道の路盤側構造物20の突起部28周囲の樹脂硬化体や、路盤側構造物20と軌道スラブ24との間の充填層22を形成するために、樹脂組成物が用いられている。
また、劣化した充填層22を補修するためにも樹脂組成物が用いられている。
【0005】
さらに、スラブ式軌道以外の他の鉄道軌道としては、枕木を用いるバラスト軌道が挙げられるが、該バラスト軌道でも、列車通過時の上下方向のあおり防止などを目的として、レール下部の枕木下に生じる間隙を埋めるために、樹脂組成物が用いられている。
【0006】
このような鉄道軌道用樹脂組成物としては、例えば、特許文献1~2に記載の組成物が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2015-98527号公報
【特許文献2】特開2018-59301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、鉄道軌道用樹脂組成物は、既に敷設されているスラブ式軌道やバラスト軌道の補修などのために用いられることも多いが、このような補修の際には、該樹脂組成物から形成される硬化体が接する被着体(以下単に「被着体」ともいう。)が、雨水、水蒸気、雪等により、湿潤状態になっている場合があり、このような湿潤状態の軌道は、劣化が起こりやすいため、特に補修が必要となる場合が多い。
このような湿潤状態の被着体に鉄道軌道用樹脂組成物を用いる際には、該被着体が乾燥するまで待てないため、湿潤状態のままの被着体に、鉄道軌道用樹脂組成物を用いる必要があるが、該鉄道軌道用樹脂組成物として、前記特許文献1や2に記載などの従来の樹脂組成物、特に、ポリウレタン系樹脂(ポリオールとポリイソシアネートの反応硬化型)やウレタンアクリレート系樹脂を含む樹脂組成物を用いると、被着体に存在する水の影響により、該樹脂組成物から得られる硬化体は、被着体に対する付着力が弱く、鉄道軌道からの脱落等が起こりやすいことが分かった。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、乾燥状態のみならず、湿潤状態の被着体に対しても付着力に優れる硬化体を形成することができる、鉄道軌道に好適に用いることができる鉄道軌道用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究した。その結果、特定の組成物によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の態様例は、以下の通りである。
【0011】
[1] ウレタンアクリレート樹脂(A)、無機顔料(B)、硬化剤(C)、および、20℃で液体であるノニオン系界面活性剤(D)を含有し、
該ノニオン系界面活性剤(D)の含有量が、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~3.4質量部である、
鉄道軌道用樹脂組成物。
【0012】
[2] カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(E1)および(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(E2)から選択される少なくとも1種を含有する、[1]に記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
【0013】
[3] 前記ノニオン系界面活性剤(D)が前記成分(A)と反応性の基を有さない、[1]または[2]に記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
[4] 前記ノニオン系界面活性剤(D)のHLB値が1~13である、[1]~[3]のいずれかに記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
【0014】
[5] 前記鉄道軌道用樹脂組成物から得られた硬化体のバネ定数が15~80MN/mである、[1]~[4]のいずれかに記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
【0015】
[6] 下記式(1)で算出される付着保持率が50%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の鉄道軌道用樹脂組成物。
付着保持率=(Tw/Td)×100 ・・・(1)
〔式(1)中、Tdは、乾燥した140mm×140mmの大きさのモルタル板表面に、前記鉄道軌道用樹脂組成物を配置し、23℃で3日間硬化させることで得られた硬化体(40mm×40mm×5mm(厚))を、該モルタル板から剥離する際の、建研式引張試験機を用いて測定した最大引張強度(MPa)であり、Twは、乾燥した140mm×140mmの大きさのモルタル板の代わりに、140mm×140mmの大きさのモルタル板に水1gを塗布し、該モルタル板の全面を水で濡らした板を用いた以外は、Tdと同様にして測定した最大引張強度(MPa)である。〕
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、乾燥状態のみならず、湿潤状態の被着体に対しても付着力に優れる硬化体を形成することができる、鉄道軌道に好適に用いることができる鉄道軌道用樹脂組成物を提供することができる。
また、本発明に係る鉄道軌道用樹脂組成物は、注入(てん充)性に優れるため、軌道、特に、スラブ式軌道の補修材料として、さらには、軌道スラブと路盤側構造物との間に流し込む材料として好適に使用することができ、容易にスラブ式軌道の補修を行うことができるだけでなく、既設のCAモルタルからなる充填層とも密着した状態で硬化し、かつ、硬化収縮も小さい。このため、軌道スラブと路盤側構造物との間の空隙に隙間なく硬化体を形成することができ、形成される硬化体は、水分等による凍害の影響を受けにくく、耐久性に優れる。
さらに、前記スラブ式軌道の補修は、電車が運行していない夜間等に短時間で行う必要があるため、速硬化性が求められるが、本発明に係る鉄道軌道用樹脂組成物は速硬化性に優れるため、この点でも好ましい。
また、本発明によれば、バネ定数が以下の範囲にある硬化体を形成することができる。このような硬化体は、軌道スラブと路盤側構造物との間の充填層や枕木下部の充填層として用いられた際に軌道を十分に支持でき、列車走行時に発生するあおり等を抑制でき、快適な乗り心地を提供できる軌道を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、スラブ式軌道の構造の一例を一部断面にして示した斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例におけるバネ定数を測定する際に用いた型枠を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
≪鉄道軌道用樹脂組成物≫
本発明に係る鉄道軌道用樹脂組成物(以下「本組成物」ともいう。)は、ウレタンアクリレート樹脂(A)(以下「成分(A)」ともいう。他の成分についても同様。)と、無機顔料(B)と、硬化剤(C)と、20℃で液体であるノニオン系界面活性剤(D)とを含有し、
該ノニオン系界面活性剤(D)の含有量が、前記ウレタンアクリレート樹脂(A)100質量部に対し、0.1~3.4質量部である。
【0019】
本組成物は、鉄道軌道に使用され、鉄道軌道を新設する際や、鉄道軌道を補修する際に好適に用いることができる。該軌道としては、バラスト軌道やスラブ式軌道等が挙げられるが、スラブ式軌道が好ましい。
本組成物は、具体的には、スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体形成用組成物、路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物、枕木下部の樹脂硬化体形成用組成物であることが好ましく、路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物であることが特に好ましい。
【0020】
前記スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体とは、
図1における軌道スラブ24と突起部28との間に形成される樹脂硬化体のことをいい、前記路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体とは、前記充填層22(の少なくとも一部)のことをいう。
前記充填層22は、スラブ式軌道を作製した初期の段階では、セメントとアスファルト乳剤と細骨材とを混合することで得られるCAモルタルからなることが多いが、このCAモルタルからなる層は劣化するため、この劣化した層の補修のため、通常、劣化した層を削り取った後、補修用組成物により樹脂硬化体が形成される。つまり、前記路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物の好適例としては、この補修用組成物が挙げられる。
【0021】
本組成物は、該組成物から得られた硬化体のバネ定数が15~80MN/mとなる組成物であることが好ましい。
本組成物を、前記路盤側構造物と軌道スラブとの間の樹脂硬化体形成用組成物として用いる場合(前記硬化体を軌道スラブと路盤側構造物との間の充填層として用いる場合)には、軌道を十分に支持でき、列車走行時に発生するあおり等を抑制でき、快適な乗り心地を提供できる軌道を得ることができる等の点から、前記硬化体のバネ定数は、好ましくは15~80MN/m、より好ましくは18~40MN/mである。
また、本組成物を、前記スラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の樹脂硬化体形成用組成物や、枕木下部の樹脂硬化体形成用組成物として用いる場合(前記硬化体をスラブ式軌道の路盤側構造物の突起部周囲の充填層や枕木下部の充填層として用いる場合)には、軌道を十分に支持でき、列車走行時に発生するあおり等を抑制でき、快適な乗り心地を提供できる軌道を得ることができる等の点から、前記硬化体のバネ定数は、より好ましくは8~24MN/mである。
該バネ定数は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0022】
本組成物の、下記実施例に記載の方法で測定される乾燥被着体に対する接着強度は、好ましくは1.00MPa以上、より好ましくは1.40MPa以上であり、その上限は、好ましくは7.00MPaである。
乾燥被着体に対する接着強度が前記範囲にあると、本組成物を用いて鉄道軌道を新設する際や、鉄道軌道を補修等する際に補修箇所が乾燥している場合に、本組成物から得られた硬化体が、被着体と十分に接着し、所望の物性を長期にわたり奏する鉄道軌道を容易に形成することができる。
【0023】
本組成物の、下記実施例に記載の方法で測定される湿潤被着体に対する接着強度は、好ましくは0.70MPa以上、より好ましくは1.0MPa以上、さらに好ましくは1.40MPa以上であり、その上限は、好ましくは7.00MPaである。
湿潤被着体に対する接着強度が前記範囲にあると、本組成物を用いて鉄道軌道を補修等する際に被着体(補修箇所)が濡れていても、本組成物から得られた硬化体が、該湿潤状態の被着体と十分に接着し、所望の物性を長期にわたり奏する鉄道軌道を容易に形成することができる。
【0024】
本組成物は、下記式(1)で算出される付着保持率が、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であり、その上限は大きい方が好ましいため特に制限されず100%であってもよい。
付着保持率が前記範囲にあると、被着体が、乾燥していても、湿潤状態にあっても、制限なく所望の硬化体を形成することができ、被着体の状態に応じて、用いる組成物の種類を変更することなく、所望の硬化体を得ることができ、所望の物性を長期にわたり奏する鉄道軌道を容易に形成することができる。
【0025】
付着保持率=(Tw/Td)×100 ・・・(1)
[式(1)中、Tdは、乾燥した140mm×140mmの大きさのモルタル板表面に、前記鉄道軌道用樹脂組成物を配置し、23℃で3日間硬化させることで得られた硬化体(40mm×40mm×5mm(厚))を、該モルタル板から剥離する際の、建研式引張試験機を用いて測定した最大引張強度(MPa)であり、Twは、乾燥した140mm×140mmの大きさのモルタル板の代わりに、140mm×140mmの大きさのモルタル板に水1gを塗布し、該モルタル板の全面を水で濡らした板を用いた以外は、Tdと同様にして測定した最大引張強度(MPa)である。]
【0026】
本組成物は、1成分型の組成物であってもよいが、貯蔵安定性に優れる等の点から、2成分型以上の組成物であることが好ましく、2成分型の組成物であることがより好ましい。本組成が2成分型以上の組成物である場合、通常、前記成分(A)および成分(D)は主剤成分に配合され、前記成分(C)は硬化剤成分に配合され、該主剤成分と硬化剤成分とを混合することによって、本組成物を調製することができる。
なお、本組成物が2成分型の組成物である場合、成分(B)は硬化剤成分中に配合してもよいが、均一な物性を有する硬化体を容易に得ることができる等の点から、主剤成分に配合することが好ましい。
【0027】
<ウレタンアクリレート樹脂(A)>
成分(A)としては、ラジカル反応性不飽和基を有するウレタンアクリレート樹脂が挙げられる。成分(A)の具体例としては、ポリイソシアネートと、ポリヒドロキシ化合物および多価アルコール類から選ばれる少なくとも1種とを含む原料化合物を反応させた後、余剰のイソシアナト基と水酸基含有(メタ)アクリル化合物等のラジカル反応性不飽和基含有モノマーなどとを反応させて得られるラジカル反応性不飽和基含有オリゴマーが挙げられる。この反応の際には、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリル化合物とともに、水酸基含有アリルエーテル化合物等を用いてもよい。
また、成分(A)としては、ポリイソシアネートと、ポリヒドロキシ化合物および多価アルコール類から選ばれる少なくとも1種と、水酸基含有(メタ)アクリル化合物とを含む原料化合物を反応させた後、ポリヒドロキシ化合物または多価アルコール類由来の未反応のヒドロキシ基に、ポリイソシアネートなどを反応させて得られる樹脂も挙げられる。この反応の際にも、必要に応じて水酸基含有(メタ)アクリル化合物ともに、水酸基含有アリルエーテル化合物等を用いてもよい。
成分(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0028】
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルのことを意味する。同様の表現(例:(メタ)アクリレート)は同様の意味を有する。
また、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂を、単に「アクリル樹脂」ともいう。つまり、ウレタンアクリレート樹脂は、ウレタンアクリレート樹脂および/またはウレタンメタクリレート樹脂のことである。
【0029】
前記ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネートおよびその異性体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートが挙げられる。これらの中でも、コスト等の点から、ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。
前記ポリイソシアネートの市販品としては、バーノック D-750(DIC(株)製)、クリスボン NK(DIC(株)製)、デスモジュール L(住化バイエルウレタン(株)製)、コロネート L(東ソー(株)製)、タケネート D102(武田薬品工業(株)製)、イソネート 143L(三菱化学(株)製)、デュラネートシリーズ(旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
前記ポリイソシアネートは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0030】
前記ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、グリセリン-エチレンオキシド付加物、グリセリン-プロピレンオキシド付加物、グリセリン-テトラヒドロフラン付加物、グリセリン-エチレンオキシド-プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン-エチレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン-プロピレンオキシド付加物、トリメチロールプロパン-テトラヒドロフラン付加物、トリメチロールプロパン-エチレンオキシド-プロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールプロピレンオキシド付加物、ジペンタエリスリトールテトラヒドロフラン付加物、ジペンタエリスリトールエチレンオキシド-プロピレンオキシド付加物などが挙げられる。
前記ポリヒドロキシ化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0031】
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、ビスフェノールAとプロピレンオキシドまたはエチレンオキシドとの付加物、1,2,3,4-テトラヒドロキシブタン、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2-シクロヘキサングリコール、1,3-シクロヘキサングリコール、1,4-シクロヘキサングリコール、パラキシレングリコール、ビシクロヘキシル-4,4-ジオール、2,6-デカリングリコール、2,7-デカリングリコールが挙げられる。
前記多価アルコール類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0032】
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物としては、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。具体例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ブレンマーシリーズ(日油(株)製)が挙げられる。
前記水酸基含有(メタ)アクリル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0033】
前記水酸基含有アリルエーテル化合物の具体例としては、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、ジプロピレングリコールモノアリルエーテル、トリプロピレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、1,2-ブチレングリコールモノアリルエーテル、1,3-ブチレングリコールモノアリルエーテル、ヘキシレングリコールモノアリルエーテル、オクチレングリコールモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテルが挙げられる。
前記水酸基含有アリルエーテル化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0034】
成分(A)の含有量は、バネ定数が前記範囲にある硬化体を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは10~34質量%、より好ましくは14~30質量%である。成分(A)の含有量が前記範囲よりも少ない場合、本組成物の粘度が上昇し、流動性が低下するおそれがある。また、成分(A)の含有量が前記範囲よりも多い場合、本組成物から得られる硬化体の硬化収縮が増加するおそれがある。
本明細書において、本組成物の固形分とは、本組成物中の溶剤以外の成分のことをいう。
【0035】
なお、本組成物(主剤成分)を調製する際には、成分(A)の原料として、ウレタンアクリレート樹脂自体を用いてもよく、得られる本組成物の硬度、耐候性、耐水性等の物性向上および粘度調整等の点から、1種または2種以上のウレタンアクリレート樹脂と、1種または2種以上のラジカル重合性モノマーとを含有するウレタンアクリレート樹脂組成物を用いてもよい。
【0036】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、エチレン性不飽和基を含有するモノマーであればよく、例えば、スチレン、スチレンのα-,o-,m-またはp-アルキル誘導体、ニトロ誘導体、シアノ誘導体、アミド誘導体、エステル誘導体、クロロスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのスチレン系モノマー;ブタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸-n-プロピル、(メタ)アクリル酸-i-プロピル、(メタ)アクリル酸-n-ブチル、(メタ)アクリル酸-sec-ブチル、(メタ)アクリル酸-tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-メチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸プロパギル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラセニル、(メタ)アクリル酸アントラニル、(メタ)アクリル酸ピペロニル、(メタ)アクリル酸サリチル、(メタ)アクリル酸フリル、(メタ)アクリル酸フルフリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフリル、(メタ)アクリル酸ピラニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェネチル、(メタ)アクリル酸クレジル、(メタ)アクリル酸-1,1,1-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロ-n-プロピル、(メタ)アクリル酸トリフェニルメチル、(メタ)アクリル酸クミル、(メタ)アクリル酸3-(N,N-ジメチルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピルなどの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸-N,N-ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸-N,N-ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸-N,N-ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸-N,N-ジ-i-プロピルアミド、(メタ)アクリル酸アントラセニルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド;(メタ)アクリル酸アニリド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクロレイン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、酢酸ビニルなどのビニル化合物;シトラコン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチルなどの不飽和ジカルボン酸ジエステル;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-(4-ヒドロキシフェニル)マレイミドなどのモノマレイミド化合物;N-(メタ)アクリロイルフタルイミドが挙げられる。
【0037】
また、前記ラジカル重合性モノマーとして、分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物も使用できる。具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの各種ポリオール類の(メタ)アクリル酸エステル;2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE-100)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE-200)、2,2-ビス[4-(メタクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:BPE-500)、2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:A-BPE-4)、2,2-ビス[4-(アクリロイルオキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン(新中村化学工業(株)製:A-BPE-10)が挙げられる。
【0038】
前記ウレタンアクリレート樹脂組成物中のラジカル重合性モノマーの含有量は、粘度を低下させることができ、硬度、耐候性、耐水性に優れる本組成物を容易に得ることができる等の点から、前記ウレタンアクリレート樹脂組成物100質量%に対して、好ましくは40~70質量%、より好ましくは50~60質量%である。
【0039】
<無機顔料(B)>
成分(B)としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、珪砂、マイカ、カリ長石、ウォラストナイト、カオリン、クレー、ベントナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、硫酸バリウムが挙げられる。これらの中でも、貯蔵安定性や経済性に優れる本組成物が得られ、さらに、バネ定数が前記範囲にある硬化体を容易に形成することができる等の点から、シリカまたは炭酸カルシウムが好ましい。
成分(B)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0040】
成分(B)のJIS K 5101 顔料試験方法 第14部 ふるい残分に準拠して測定した平均粒径(重量累積粒度分布の50%径)は、硬化収縮率が小さい本組成物を容易に得ることができ、かつ、バネ定数が前記範囲にある硬化体を容易に形成することができる等の点から、好ましくは10~120μm、より好ましくは30~100μm、さらに好ましくは45~85μmである。
【0041】
成分(B)の含有量は、硬化収縮率が小さい本組成物を容易に得ることができ、かつ、バネ定数が前記範囲にある硬化体を容易に形成することができる等の点から、本組成物の固形分100質量%に対し、好ましくは30~80質量%、より好ましくは50~65質量%であり、成分(A)100質量部に対し、好ましくは100~500質量部、より好ましくは180~450質量部である。
【0042】
<硬化剤(C)>
成分(C)は、成分(A)を硬化させることができれば特に制限されないが、具体例としては、ラジカル重合開始剤が挙げられる。
成分(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0043】
成分(C)としては、例えば、公知の有機過酸化物が挙げられる。該有機過酸化物としては、10時間半減期温度が、30~180℃である化合物が好ましい。
前記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネートが挙げられる。
また、成分(C)としては、公知のアゾ化合物も挙げられる。
【0044】
成分(C)の具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、3-イソプロピルヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイル-m-メチルベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミドが挙げられる。
【0045】
成分(C)の含有量は、速硬化性に優れる本組成物を容易に得ることができ、また、硬化が十分に進み、バネ定数が前記範囲にあり、強度や靱性などに優れる硬化体を容易に形成することができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは1~10質量部、より好ましくは2~6質量部である。
なお、前記成分(C)の含有量は、本組成物を調製する際に用いる成分(C)の使用量であり、成分(C)が反応や分解等する前の本組成物中の量であり、具体的には、本組成物を加熱しない(例:23℃以下)で調製する際の成分(A)に対する使用量である。
【0046】
<ノニオン系界面活性剤(D)>
成分(D)としては、20℃で液体であり、かつ、ノニオン系の界面活性剤であれば特に制限されず、従来公知の液状のノニオン系界面活性剤を用いることができる。
成分(D)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0047】
ここで、20℃で液体である界面活性剤とは、20℃において、BII形粘度計(BL II、東機産業(株)製)で測定した粘度が、10万mPa・s以下の界面活性剤のことをいう。
20℃で液体である界面活性剤を用いることで、特に、湿潤状態の被着体に対する付着力に優れる硬化体を容易に形成することができる。一方、ノニオン系界面活性剤であっても、20℃において固体の界面活性剤を用いた場合には、得られる硬化体は、湿潤状態の被着体に対する付着力が低下することが分かった。
【0048】
成分(D)は、乾燥状態および湿潤状態の被着体に対する付着力に優れ、バネ定数が前記範囲にある硬化体を容易に形成することができる等の点から、前記成分(A)と反応性の基(例:アミノ基、アミド基)を有さないことが好ましい。成分(D)が前記成分(A)と反応性の基を有すると、本組成物を調製する際に成分(A)と反応する場合があり、前記効果を奏さない場合がある。
【0049】
成分(D)としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンカルボン酸エステル、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンソルビタンエステルが挙げられる。
【0050】
これらの中でも、乾燥状態および湿潤状態の被着体に対する付着力に優れ、バネ定数が前記範囲にある硬化体を容易に形成することができる等の点から、成分(D)としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。
【0051】
成分(D)のHLB値は、乾燥状態および湿潤状態の被着体に対する付着力にバランスよく優れる、特に、湿潤状態の被着体に対する付着力に優れる硬化体を容易に形成することができる等の点から、好ましくは1~13、より好ましくは3~13、さらに好ましくは8~10である。
【0052】
ここで、HLB値とは、Hydrophile-Lipophile-Balance(親水性-親油性-バランス)のことであり、化合物の親水性または親油性の大きさを示す値である。HLB値が小さいほど親油性が高く、値が大きいほど親水性が高くなる。
下記実施例で用いた成分(D)のHLB値はカタログ値であり、本明細書では、HLB値として、カタログ値を採用することができる。なお、HLB値は、例えば、グリフィン法で求めることができ、具体的には下記式により求めることができる。
HLB値=20×親水性基部分の式量の総和/ノニオン系界面活性剤の分子量
【0053】
成分(D)としては、従来公知の方法で得たものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、ノニオンOP-85R(ソルビタントリオレート)、ノニオンOP-83RAT(ソルビタンセスキオレエート)等の日油(株)製の市販品;エマルゲン404(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、エマルゲン104P(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、エマルゲン108(ポリオキシエチレンラウリルエーテル)、エマルゲン408(ポリオキシエチレンオレイルエーテル)、エマルゲン707(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)等の花王(株)製の市販品;が挙げられる。
【0054】
成分(D)の含有量は、乾燥状態および湿潤状態の被着体に対する付着力にバランスよく優れる、特に、湿潤状態の被着体に対する付着力に優れる硬化体を容易に形成することができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、0.1~3.4質量部であり、好ましくは0.2~3.0質量部であり、より好ましくは0.4~2.8質量部、さらに好ましくは0.7~2.6質量部、特に好ましくは1.0~2.4質量部である。
【0055】
<その他の成分>
本組成物は、必要に応じ、本発明の目的を損なわない範囲で、前記成分(A)~(D)以外のその他の成分を含んでもよい。該その他の成分としては、カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(E1)、(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(E2)、ラジカル重合性モノマー、チオール化合物、触媒(硬化促進剤)、消泡剤、分散剤、水分吸着剤、表面調整剤、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、可塑剤、溶剤等が挙げられる。
その他の成分はそれぞれ、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
本組成物が2成分型以上の組成物である場合、これらその他の成分は硬化剤成分に配合してもよいが、主剤成分に配合することが好ましい。
【0056】
[重合体(E1)および(E2)]
本組成物は、カルボン酸ビニル由来の構造単位を有する重合体(E1)および(メタ)アクリル酸エステル由来の構造単位を有するアクリル重合体(E2)から選択される少なくとも1種(以下、重合体(E1)および(E2)を「成分(E)」ともいう。)を含有していてもよい。
成分(E)を前記成分(A)~(D)とともに用いることで、本組成物が硬化する際の硬化収縮を容易に抑制することができる。
本組成物が、重合体(E1)を含有する場合、該重合体(E1)は、1種でも、2種以上でもよく、本組成物が、重合体(E2)を含有する場合、該重合体(E2)は、1種でも、2種以上でもよい。
【0057】
成分(E)としては、硬化収縮がより小さい本組成物を容易に得ることができる等の点から、前記重合体(E1)であることがより好ましい。
前記重合体(E1)は、前記成分(A)以外の重合体であり、前記重合体(E1)としては、例えば、ポリカルボン酸ビニルの変性体;カルボン酸ビニルとカルボン酸ビニル以外のラジカル重合可能な単量体とを用いた共重合体;が挙げられる。
成分(E1)としては、硬化収縮の抑制の点から、カルボン酸ビニル由来の構造単位が100%であり、かつ、未変性であるポリカルボン酸ビニル以外の重合体であることが好ましい。
【0058】
なお、本組成物から形成された硬化体が劣化した場合や、土地の隆起や地震などにより、本組成物から形成された硬化体が所定の目的を達成できなくなった場合には、該硬化体を、電動工具等を用いて破壊して除去し、新たに硬化体を形成する必要が生じることがある。このような硬化体の破壊が必要な場合、前記特許文献に記載などの従来の樹脂組成物から形成された硬化体は、強靭で容易に破壊することができなかった。
前記重合体(E1)は、易破壊性に優れる硬化体を容易に形成することができる等の点から、23℃において固体であることが好ましく、さらに、極性モノマーに完全に溶解しない(例:23℃において極性モノマー[例:2-ヒドロキシエチルメタクリレート]100質量部に重合体(E1)を70質量部溶解させた場合に、完全に溶解しない)重合体であることが好ましい。このような重合体(E1)は、前記成分(A)や、ウレタンアクリレート樹脂組成物中に含まれるラジカル重合性モノマーと混合した際に、これらの成分に溶解する部位と、溶解せず固体状態のままの部位の両方が存在すると考えられる。後者の固体状態のままの部位は、本組成物を硬化させた際に、微小なボイド(空隙)やクレイズ(小クラック)を発生させるため、本組成物の易破壊性が向上すると考えられる。
【0059】
前記ポリカルボン酸ビニルの変性体としては、例えば、ポリカルボン酸ビニルの一部をケン化した部分ケン化物、ポリカルボン酸ビニルまたは該部分ケン化物を酸変性した酸変性物、ポリカルボン酸ビニルまたは該部分ケン化物にアセトアセチル基などの疎水性基を付与した疎水性基変性物が挙げられる。
【0060】
前記カルボン酸ビニルとしては、例えば、酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、桂皮酸ビニルが挙げられ、これらの中でも酢酸ビニルが好ましい。
カルボン酸ビニルは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0061】
前記カルボン酸ビニル以外のラジカル重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、スチレン、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルが挙げられる。
前記カルボン酸ビニル以外のラジカル重合可能な単量体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記カルボン酸ビニルとカルボン酸ビニル以外のラジカル重合可能な単量体との共重合体としては、該共重合体を酸変性した酸変性物であってもよく、該共重合体に疎水性基を付与した疎水性基変性物であってもよい。
【0062】
前記重合体(E2)は、前記成分(A)および重合体(E1)以外の重合体であり、前記重合体(E2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体、およびその変性物が挙げられる。前記変性物としては、該(共)重合体を酸変性した酸変性物であってもよく、該共重合体に疎水性基を付与した疎水性基変性物であってもよい。
前記重合体(E2)としては、可塑剤のような作用を有し、応力緩和に寄与できる等の点から、重量平均分子量が1万~10万程度の(メタ)アクリル酸エステルの(共)重合体であることが好ましい。
【0063】
前記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは1種単独で用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0064】
成分(E)の合計含有量は、硬化収縮率がより小さい本組成物を容易に得ることができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは5~30質量部、より好ましくは7~27質量部、特に好ましくは10~24質量部である。
【0065】
なお、本組成物(主剤成分)を調製する際には、成分(E)の原料として、重合体(E1)および/または重合体(E2)自体を用いてもよく、得られる本組成物の硬度、耐候性、耐水性等の物性向上および粘度調整等の点から、重合体(E1)および重合体(E2)から選ばれる少なくとも1種と、1種または2種以上のラジカル重合性モノマーとを含有する重合体組成物を用いてもよい。
前記重合体組成物中のラジカル重合性モノマーの含有量は、粘度を低下させることができ、硬度、耐候性、耐水性に優れる本組成物を容易に得ることができる等の点から、前記重合体組成物100質量%に対して、好ましくは50質量%未満、より好ましくは35~45質量%である。
前記ラジカル重合性モノマーとしては特に制限されないが、具体的には、成分(A)の欄で例示したラジカル重合性モノマーと同様のモノマーが挙げられる。
【0066】
また、本組成物(主剤成分)を調製する際には、成分(E)の原料として、重合体(E1)および重合体(E2)から選ばれる少なくとも1種と、1種または2種以上の溶剤とを含む重合体混合物を用いてもよいが、このような重合体混合物を用いる場合、硬化収縮率がより小さい本組成物を容易に得ることができる等の点から、有機溶剤の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、該重合体混合物100質量%に対する溶剤の含有量は、5質量%未満であることが好ましく、溶剤を含有しないことがより好ましい。
【0067】
成分(E)としては、公知の方法で合成して得たものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
該市販品としては、例えば、サクノールSA09A(デンカ(株)製、酢酸ビニル系樹脂)、デンカASR M-4(デンカ(株)製、酸変性酢酸ビニル系樹脂)、モディパーSV30B(日油(株)製、スチレン・酢酸ビニルブロックコポリマー)、HVポリマー D-100(デンカ(株)製、疎水基変性ポリビニルアルコール(ケン化度86.5~89モル%の変性ポリ酢酸ビニル))、ダイカラック8506(大同化成工業(株)製、アクリル共重合体を含む重合体組成物)、BYK-350(ビックケミー・ジャパン(株)製、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体)、BYK-356(ビックケミー・ジャパン(株)製、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体)、BYK-361N(ビックケミー・ジャパン(株)製、(メタ)アクリル酸エステルの共重合体)が挙げられる。
これらの市販品は、重合体(E1)および重合体(E2)から選ばれる少なくとも1種の重合体自体、前記重合体組成物、または、溶剤量が前記範囲にある重合体混合物であり、公知の消泡剤とは異なる。
【0068】
[ラジカル重合性モノマー]
前記ラジカル重合性モノマーとしては特に制限されないが、具体的には、成分(A)の欄で例示したラジカル重合性モノマーと同様のモノマーが挙げられる。
【0069】
[チオール化合物]
前記チオール化合物としては特に制限されないが、例えば、デカンチオール、ドデカンチオール、オクタンチオール、ヘキサデカンチオール等の単官能チオール化合物、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン等の2官能チオール化合物、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)等の3官能チオール化合物、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等の4官能チオール化合物、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)等の6官能チオール化合物が挙げられる。
前記チオール化合物としては、得られる本組成物の保存安定性等の点から、2官能以上のチオール化合物が好ましく、より好まくは2~4官能チオール化合物である。
【0070】
前記チオール化合物としては、公知の方法で合成して得たものを用いてもよく、市販品を用いてもよい。
前記チオール化合物の市販品としては、例えば、ドデカンチオール(単官能チオール化合物)、カレンズMT BD(昭和電工(株)製、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン)、カレンズMT NR(昭和電工(株)製、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)、カレンズMT PE1(昭和電工(株)製、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート))、EGMP-4(SC有機化学(株)製、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート))、TMMP(SC有機化学(株)製、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート))、TEMPIC(SC有機化学(株)製、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート)、PEMP(SC有機化学(株)製、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート))、DPMP(SC有機化学(株)製、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート))が挙げられる。
【0071】
本組成物がチオール化合物を含む場合、該チオール化合物の含有量は、本組成物の硬化性を損なわない範囲で適宜調整することができ、チオール化合物の種類に応じて異なるが、硬化収縮率がより小さい本組成物を容易に得ることができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは0.5~20質量部、より好ましくは6~12質量部である。
【0072】
[触媒]
本組成物は、前記成分(A)と(C)との反応を促進する触媒(硬化促進剤)を含有してもよい。
このような触媒としては、アミン系触媒、スズカルボン酸塩、スズ以外の金属カルボン酸塩および1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)塩等が挙げられる。
【0073】
前記アミン系触媒としては、3級アミンが挙げられ、その具体例としては、芳香族3級アミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、テトラメチルブタンジアミンが挙げられる。これらの中でも、芳香族3級アミンが好ましい。
【0074】
前記芳香族3級アミンとしては、例えば、N-メチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、N-ブチル-N-β-ヒドロキシエチルアニリン、N-メチル-N-β-ヒドロキシエチル-p-トルイジン、N-ブチル-N-β-ヒドロキシエチル-p-トルイジン、N-メチル-N-β-ヒドロキシプロピルアニリン、N-メチル-N-β-ヒドロキシプロピル-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン、N,N-ジイソプロピロール-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-アニシジン、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジンが挙げられる。これらの中でも特に、低温硬化性に優れる本組成物を容易に得ることができる等の点から、N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N,N-ジ(β-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジンが好ましい。
【0075】
前記スズカルボン酸塩としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、スズオクチレート等が挙げられる。
前記スズ以外の金属カルボン酸塩としては、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸亜鉛等が挙げられる。
前記DBU塩としては、DBU-ステアリン酸塩、DBU-オレイン酸塩、DBU-ギ酸塩等が挙げられる。
【0076】
本組成物が触媒を含む場合、該触媒の含有量は、注入(てん充)性、硬化性、特に低温硬化性に優れる本組成物を容易に得ることができる等の点から、成分(A)100質量部に対し、好ましくは0.1~5質量部、より好ましくは0.5~2質量部である。
【0077】
[溶剤]
本組成物が溶剤(例:水、有機溶媒)を含む場合、該溶剤の含有量は、硬化収縮率がより小さい本組成物を容易に得ることができる等の点から、溶剤の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、本組成物100質量%中の溶剤の含有量は、5質量%未満であることが好ましく、1質量%未満であることがより好ましい。
【0078】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、前記成分(A)~(D)、さらに必要により前記その他の成分を混合することにより調製することができる。
また、本組成物は、成分(A)および前記ウレタンアクリレート樹脂組成物から選ばれる少なくとも1種と;成分(B)と;成分(C)と;成分(D)と;さらに必要により前記その他の成分と;を混合することにより調製することができる。
本組成物に成分(E)を配合する場合、成分(E)自体を用いてもよく、前記重合体組成物や、前記重合体混合物を用いてもよい。
【0079】
前記混合する方法としては特に制限されないが、前記主剤成分の調製時や、主剤成分と硬化剤成分との混合時に、空気が取り込まれると、得られる硬化体内に気泡が残り、ひび割れやへたりの原因となる傾向にあるため、主剤成分の調製時に脱泡工程を行ったり、主剤成分と硬化剤成分との混合時に低回転で撹拌を行うことにより、本組成物中への空気の取り込み量を減らすことが好ましい。
【0080】
<硬化体>
本組成物は、通常、本組成物を硬化させた硬化体として使用される。
該硬化体の形状や厚みは、該硬化体を設けたい場所に応じて適宜選択すればよい。
【0081】
前記硬化体は、例えば、本組成物を、該硬化体を形成したい場所に配置し、次いで、該本組成物を硬化させることで形成することができる。
【0082】
前記硬化体が接する被着体としては、例えば、前記路盤側構造物、前記路盤側構造物の突起部、前記軌道スラブ、枕木が挙げ挙げられ、これらの材質としては、コンクリート(モルタルを含む)、樹脂(例:ガラス長繊維強化プラスチック発泡体)、木材等が挙げられる。
本組成物によれば、これらの材質の鉄道軌道用部材に対し、これらの部材が、乾燥状態であっても、湿潤状態であっても、付着性に優れる硬化体を形成することができる。
【0083】
樹脂硬化体を形成したい場所に本組成物を配置する方法としては、特に制限されないが、例えば、必要により本組成物が所定の場所から流れ出ないよう、型枠または不織布等の袋体を設置した後、本組成物を流し込む(てん充)する方法が挙げられる。
例えば、軌道に適用される硬化体を形成する際の具体例としては、必要により本組成物が所定の場所から流れ出ないよう型枠や不織布等の袋体等を設置した後、
図1における軌道スラブ24と突起部28との間に本組成物をてん充する方法、路盤側構造物20と軌道スラブ24との間に本組成物をてん充する方法、枕木下部に本組成物をてん充する方法等が挙げられる。路盤側構造物20と軌道スラブ24との間に本組成物をてん充する際や、枕木下部に本組成物をてん充する際には、必要により、軌道スラブ24や枕木を所定位置に持ち上げておいてから、本組成物をてん充してもよい。
【0084】
また、前記硬化体の形成方法は、軌道におけるCAモルタルからなる充填層などの層の劣化部分(劣化層)を削り取った後、削り取った箇所に本組成物をてん充し、硬化体(てん充層)を形成する方法、つまり、劣化層の補修方法であってもよい。
劣化層部分に本組成物を充填する方法としては特に制限されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、予め劣化層を削り取った後、削り取った箇所を取り囲むように型枠等を配設し、該型枠等の内側に本組成物を流し込んで充填する額縁補修方法が挙げられる。
また、前記型枠を用いる方法の他に、補修箇所に予め不織布等の袋体を設置し、該袋体内に本組成物を充填し硬化させる方法、補修箇所に発泡成形体等の埋め込み型枠を設置し、その内側補修部に本組成物を充填し硬化させる方法、補修箇所の側面開口部に外側から粘着シートを貼着し、その内側補修部に本組成物を充填し硬化させる方法等も用いることができる。
【0085】
本組成物を硬化させる際には、硬化時間を短くする等の点から、加熱してもよいが、通常、加熱することなく常温下で20分~1時間放置すればよい。
本組成物は、常温下での硬化性にも優れているため、常温下で短時間で硬化させることができる。このため、本組成物は、鉄道軌道用として、スラブ式軌道用として、特にスラブ式軌道の補修用として好適に用いられる。
【実施例0086】
次に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0087】
用いた原材料は以下の通りである。
【0088】
<ウレタンアクリレート樹脂(A)>
ウレタンアクリレート樹脂(A)としては、ウレタンアクリレート樹脂を含む以下のウレタンアクリレート樹脂組成物(A-1)または(A-2)を用いた。
・「ウレタンアクリレート樹脂組成物(A-1)」:ウレタンアクリレート樹脂 46質量%、2-エチルヘキシルアクリレート 25質量%、2-ヒドロキシエチルメタクリレート 12質量%、メタクリル酸n-ブチル 12質量%、ラウリルメタクリレート 5質量%を含有する樹脂組成物
・「ウレタンアクリレート樹脂組成物(A-2)」:ウレタンアクリレート樹脂 80.0質量%、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA) 20.0質量%を含有する樹脂組成物
【0089】
<無機顔料(B)>
・「無機顔料」:G-100(三共製粉(株)製、砂状炭酸カルシウム、平均粒径:65μm)
【0090】
<硬化剤(C)>
・「硬化剤」:パーカドックスL-40ES(化薬ヌーリオン(株)製、過酸化ベンゾイル含有、有効成分量:40質量%)
【0091】
<界面活性剤(D)>
・「界面活性剤(D-1)」:ノニオンOP-85R(日油(株)製、ソルビタントリオレート、ノニオン系、液体、HLB値:1.8、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D-2)」:ノニオンOP-83RAT(日油(株)製、ソルビタンセスキオレエート、ノニオン系、液体、HLB値:3.7、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D-3)」:エマルゲン404(花王(株)製、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ノニオン系、液体、HLB値:8.8、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D-4)」:エマルゲン104P(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ノニオン系、液体、HLB値:9.6、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D-5)」:エマルゲン108(花王(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ノニオン系、液体、HLB値:12.1、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D-6)」:エマルゲン408(花王(株)製、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ノニオン系、液体、HLB値:10.0、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D-7)」:エマルゲン707(花王(株)製、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ノニオン系、液体、HLB値:12.1、有効成分量:100質量%)
【0092】
<界面活性剤(D)以外の界面活性剤(D’)>
・「界面活性剤(D’-1)」:ぺレックスOT-P(花王(株)製、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、アニオン系、液体、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D’-2)」:オレオイルザルコシン221P(日油(株)製、N-オレイル-N-メチルグリシン、アニオン系、液体、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D’-3)」:ラピゾールA-80(日油(株)製、ジ-2-エチルヘキシル-スルホコハク酸ナトリウム、アニオン系、液体、有効成分量:80.0質量%)
・「界面活性剤(D’-4)」:ニューレックスソフト5S(日油(株)製、直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸、アニオン系、液体、有効成分量:96.0質量%)
・「界面活性剤(D’-5)」:アデカミン4DAC-85((株)ADEKA製、アルキルカチオン(ジ長鎖アルキル型アンモニウムクロライド)、カチオン系、液体、有効成分量:85.0質量%)
・「界面活性剤(D’-6)」:アデカミンSF-106((株)ADEKA製、エステル型カチオン、カチオン系、液体、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D’-7)」:カチオン2-OLR(日油(株)、ジオレイルジメチルーアンモニウムクロライド、カチオン系、液体、有効成分量:75.0質量%)
・「界面活性剤(D’-8)」:ノニオンE-202(日油(株)、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ノニオン系、固体、HLB値:4.9、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D’-9)」:エマルゲン120(花王(株)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ノニオン系、固体、HLB値:15.3、有効成分量:100質量%)
・「界面活性剤(D’-10)」:アデカアンホートPB-30L((株)ADEKA製、ラウリルアミドプロピル酢酸ベタイン、両性、液体、有効成分量:30.0質量%)
【0093】
<その他の成分>
・「重合体(E1-1)」:HVポリマー D-100S(デンカ(株)製、疎水基変性ポリビニルアルコール(ケン化度86.5~89モル%の変性ポリ酢酸ビニル))
・「重合体組成物(E2-1)」:ダイカラック8506(大同化成工業(株)製、アクリル共重合体 60質量%、トリプロピレングリコールジアクリレート 40質量%)
・「アミン系触媒」:N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン(昭和電工(株)製)70質量%をメタクリル酸-2-ヒドロキシエチル30質量%で希釈したもの
・「金属系触媒」:リゴラック コバルトO(昭和電工(株)製、8%オクチル酸コバルト)
【0094】
[実施例1]
容器に、ウレタンアクリレート樹脂組成物(A-1)50質量部を加え、さらに、アミン系触媒0.35質量部、金属系触媒0.125質量部、重合体(E1-1)5質量部、無機顔料82.8質量部、および、界面活性剤(D-1)0.5質量部を加えて撹拌混合した後、さらに硬化剤1.25質量部を加えて十分に撹拌混合し、樹脂組成物を調製した。
【0095】
[実施例2~15および比較例1~16]
下記表1または2に示す原材料を表1または2に示す量(数値、質量部)で用いた以外は実施例1と同様にして、樹脂組成物を調製した。
【0096】
<バネ定数>
まず、
図2に示す型枠の各部品(
図2の白い部品)を、パーツクリーナーを用いて清掃し、組み立てた後に内面となる部分を、信越化学工業(株)製のKF-96-SP(シリコーン離型剤)で離型処理した。離型処理した各部品を、
図2に示す形状(100mm×100mm×25mm(厚み))になるように、ボルトを用い、固定金具で締め上げ固定した。この際に、ボルトが緩んでいないよう、隙間ができないよう、固定金具を締め込み過ぎないようにして、型枠を形成した。
【0097】
次に、調製した樹脂組成物を、形成した型枠に流し込んだ。この際に、樹脂組成物の流し込み量が型枠の大きさとぴったりになるよう、樹脂組成物を流し込んだ。
樹脂組成物を型枠に流し込んでから、室温で3日間程度放置し、樹脂組成物の表面を指触することにより硬化を確認した後、型枠を外すことで、成形体を3個作製した。型枠を外す際には、得られる成形体に、割れや欠けが生じないように注意深く型枠を外した。作製した成形体の大きさを、ノギスを用いて測定し、100mmであるはずの長さ部分が100±1mmであり、かつ、厚みが25±0.5mmであった場合、該成形体を用いてバネ定数測定の試験を行った。
【0098】
作製した成形体それぞれを、圧縮試験機(サーボパルサーEHF-EG10-2-L、(株)島津製作所製)に、成形体の長さ方向が圧縮方向となるように配置し、荷重4.4kNで予圧を2回かけてから30秒後、変位速度:1mm/minの条件で成形体に荷重4.4kNまで載荷する際の、荷重0.98kNと3.92kNとにおける成形体のたわみを、レーザー変位計(HL-G103-AC、パナソニック(株)製、標線間距離:100mm)を用いて測定し、下記式からバネ定数を算出した。結果を表1または2に示す。
バネ定数(MN/m)=(F2(kN)-F1(kN))/(X2(mm)-X1(mm))
[F2は荷重3.92kNであり、X2は、該荷重3.92kNの時の成形体のたわみ(mm)であり、F1は荷重0.98kNであり、X1は、該荷重0.98kNの時の成形体のたわみ(mm)である。]
【0099】
<乾燥被着体に対する接着強度>
乾燥した140mm×140mm×40mm(厚)の大きさのモルタル板(ISO規格)上に、5mm厚の型枠を配置し、該型枠の内側に、調製した樹脂組成物を配置した(流し込んだ)。その後、23℃で3日間硬化させることで厚さ5mmの硬化体を得た。得られた硬化体の中央付近の3箇所に40mm×40mmの大きさの鋼製治具を、瞬間接着剤を用いて貼り付け、該瞬間接着剤を1日硬化させた。その後、鋼製治具の縁に沿って硬化体側からモルタル板に届く切り込みを入れ、建研式引張試験機(BA-450D、(株)丸菱科学機械製作所製)を用い、鋼製治具を真上(モルタル板と硬化体との積層方向)に引っ張り、乾燥モルタル板から硬化体が剥離した時の、最大引張強度(MPa)を測定した。3箇所における最大引張強度の平均値(Td)を表1または2に示す。
このTdが1.00MPa以上である場合、実用上問題ないと言える。
【0100】
また、実施例1~9、15および比較例2~13については、これら各試験における乾燥被着体に対する接着強度の、比較例1における乾燥被着体に対する接着強度に対する割合(比較例1に対する接着強度(%))を表1または2に示す。
実施例10~11については、これら各試験における乾燥被着体に対する接着強度の、比較例14における乾燥被着体に対する接着強度に対する割合(比較例14に対する接着強度(%))を表1に示す。
実施例12~13については、これら各試験における乾燥被着体に対する接着強度の、比較例15における乾燥被着体に対する接着強度に対する割合(比較例15に対する接着強度(%))を表1に示す。
実施例14については、該実施例14における乾燥被着体に対する接着強度の、比較例16における乾燥被着体に対する接着強度に対する割合(比較例16に対する接着強度(%))を表1に示す。
各比較例1、14、15または16に対する接着強度(%)が90%以上の場合を合格とする。
【0101】
<湿潤被着体に対する接着強度>
乾燥した140mm×140mm×40mm(厚)の大きさのモルタル板(ISO規格)の代わりに、該モルタル板に、水1gを塗布し、該モルタル板の全面を水で濡らした板(湿潤モルタル板)を用いた以外は、前記乾燥被着体に対する接着強度と同様にして、湿潤モルタル板から硬化体が剥離した時の、最大引張強度(MPa)を測定した。3箇所における最大引張強度の平均値(Tw)を表1または2に示す。
このTwが0.70MPa以上である場合、実用上問題ないと言える。
【0102】
<付着保持率>
付着保持率は、前記TdおよびTwの値を用い、下記式(1)から算出した。
付着保持率=(Tw/Td)×100 ・・・(1)
この付着保持率が50%以上である場合、実用上問題ないと言える。
【0103】
【0104】