IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-エレベータシステム及びプログラム 図1
  • 特開-エレベータシステム及びプログラム 図2
  • 特開-エレベータシステム及びプログラム 図3
  • 特開-エレベータシステム及びプログラム 図4
  • 特開-エレベータシステム及びプログラム 図5
  • 特開-エレベータシステム及びプログラム 図6
  • 特開-エレベータシステム及びプログラム 図7
  • 特開-エレベータシステム及びプログラム 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109224
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】エレベータシステム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20240806BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B66B5/02 S
B66B3/00 U
B66B3/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013914
(22)【出願日】2023-02-01
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-12
(71)【出願人】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須藤 豪
(72)【発明者】
【氏名】小村 章
【テーマコード(参考)】
3F303
3F304
【Fターム(参考)】
3F303DC26
3F303DC27
3F303EA02
3F303FA14
3F304ED13
3F304ED18
(57)【要約】
【課題】エレベータに異常が発生した場合における利用者による通報を容易にしつつ、そのときのエレベータが復旧作業中であることをできるだけ早く利用者に認識させることを可能にする技術を提供する。
【解決手段】エレベータシステムは、エレベータを制御する制御処理部と、コードと、中継処理部と、を備える。コードは、暗号キーが付与された作業員用の特定端末装置によって読み取られる非公開部と、利用者の端末装置によって暗号キーなしで読み取られる公開部と、を含む。公開部には、エレベータの識別情報を端末装置から中継処理部に送信することを可能にするための情報が含まれ、非公開部には、制御処理部への特定端末装置からの指令を可能にするための情報が含まれている。中継処理部の通知処理部が、端末装置から識別情報を受信した場合に、当該識別情報を、その識別情報で特定されるエレベータの復旧作業を担当する作業員の特定端末装置に通知する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを制御する制御処理部と、
暗号キーが付与された作業員用の特定端末装置によって読み取られる非公開部と、利用者が携帯する端末装置によって暗号キーなしで読み取られる公開部と、を含むコードと、
前記端末装置から前記特定端末装置への情報送信を中継する中継処理部と、
を備え、
前記公開部には、前記エレベータの識別情報を前記端末装置から前記中継処理部に送信することを可能にするための情報が含まれ、前記非公開部には、前記制御処理部への前記特定端末装置からの指令を可能にするための情報が含まれており、
前記中継処理部は、
前記端末装置から前記識別情報を受信した場合に、当該識別情報を、その識別情報で特定されるエレベータの復旧作業を担当する作業員の特定端末装置に通知する通知処理部、
を含む、エレベータシステム。
【請求項2】
前記エレベータは、そのエレベータが復旧作業中であることを利用者に認識させるための表示を行うことが可能な表示装置を備えており、
前記制御処理部は、前記特定端末装置からの前記指令に応じて前記表示装置の表示を切り替える、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
中継処理部は、
前記エレベータの状態を示す画像を前記識別情報と共に前記端末装置から受信した場合に、その画像に基づいて当該エレベータの復旧作業が必要であるか否かを判定する判定処理部、
を更に含み、
前記通知処理部は、前記エレベータの復旧作業が必要であると前記判定処理部が判定した場合に、そのエレベータの識別情報を前記作業員の特定端末装置に通知する、請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記エレベータの識別情報と、当該エレベータの状態を示す状態情報と、が対応付けて記録される対応管理データ、
を更に備え、
前記中継処理部は、
前記端末装置から前記識別情報を受信した場合であって、且つ、前記対応管理データにて当該識別情報に対応付けられている前記状態情報が、正常運転中であることを示すデータであった場合に、その識別情報を前記作業員の特定端末装置に通知し、
前記端末装置から前記識別情報を受信した場合であって、且つ、前記対応管理データにて当該識別情報に対応付けられている前記状態情報が、復旧作業中であることを示すデータであった場合には、復旧作業中であることを、前記作業員の特定端末装置には通知せずに、その識別情報を送信してきた前記端末装置に通知する、請求項1~3の何れかに記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記コードは、前記非公開部と前記公開部とが1つに纏めてコード化されたものである、請求項1~3の何れかに記載のエレベータシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のエレベータシステムとの通信が可能な、暗号キーが付与された作業員用の特定端末装置、に実行させるプログラムであり、
前記特定端末装置による前記コードの読取りを作業員が行った場合に、そのコード内の前記非公開部を、前記暗号キーを用いて読み取る読取処理ステップと、
前記読取処理ステップにて前記非公開部が読み取られた場合に、その非公開部に含まれている情報を用いて、前記制御処理部への前記特定端末装置からの指令を可能にするための設定を行う設定処理ステップと、
を前記特定端末装置に実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータの異常を通知する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかご内には、異常(故障や地震検知による緊急停止など)が発生した場合に監視センタに通報するための緊急用ボタンが設けられている。そして、エレベータの異常が乗りかご内の緊急用ボタンで監視センタに通報された場合、作業員が、通報されたエレベータの設置場所へ向かい、そのエレベータの復旧作業を行う。
【0003】
また、エレベータの乗場には、復旧作業中であることを利用者に認識させるための表示を行うことが可能な表示装置が設けられていることがある(例えば、特許文献1参照)。この場合、復旧作業の前に、作業員がエレベータの機械室などで操作子(スイッチやボタンなど)を物理的に操作することにより、表示装置の表示が切り替えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-169077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のエレベータでは、乗りかご内にしか監視センタへの通報手段(緊急用ボタン)がなく、そのような通報手段は乗りかごの外側(乗場など)には設けられていなかった。このため、乗りかごの外側から利用者がエレベータの異常を認識した場合であっても、利用者は、その場で即座に監視センタに通報することができず、連絡先を調べて電話で通報したり、駅員や店員などを通じて監視センタに通報してもらったりしなければならなかった。このような煩わしさが原因で、利用者は、異常に気付いたとしても通報せずに放置してしまうおそれがあった。また、車椅子利用者など、必ずエレベータを利用しなければ移動できない利用者にとっては、エレベータの異常を即座に通報できないと、移動手段を奪われてしまうことになる。
【0006】
また、従来のエレベータでは、エレベータの異常が通報された場合であっても、作業員がエレベータの機械室などで操作子を物理的に操作するまでは、復旧作業中であることを利用者に認識させるための表示がないままにエレベータが長時間に亘って放置されることになる。
【0007】
そこで本発明の目的は、エレベータに異常が発生した場合における利用者による通報を容易にしつつ、そのときのエレベータが復旧作業中であることをできるだけ早く利用者に認識させることを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエレベータシステムは、エレベータを制御する制御処理部と、コードと、中継処理部と、を備える。コードは、暗号キーが付与された作業員用の特定端末装置によって読み取られる非公開部と、利用者が携帯する端末装置によって暗号キーなしで読み取られる公開部と、を含む。中継処理部は、端末装置から特定端末装置への情報送信を中継する。そして、公開部には、エレベータの識別情報を端末装置から中継処理部に送信することを可能にするための情報が含まれ、非公開部には、制御処理部への特定端末装置からの指令を可能にするための情報が含まれている。また、中継処理部は通知処理部を含み、通知処理部は、端末装置から識別情報を受信した場合に、当該識別情報を、その識別情報で特定されるエレベータの復旧作業を担当する作業員の特定端末装置に通知する。
【0009】
上記エレベータシステムによれば、利用者は、エレベータの異常を認識にした場合に、自身の端末装置を用いて上記コードの公開部の読取りを行うことにより、そのエレベータの識別情報を中継処理部に送信することができる。そして中継処理部により、利用者によって異常が認識されたエレベータの識別情報が、そのエレベータの復旧作業を担当する作業員の特定端末装置に通知されることになる。従って、作業員は、自身の特定端末装置に識別情報が通知されたことを以て、自身に対してエレベータの復旧作業の依頼があったことを認識することができる。また、作業員は、通知された識別情報を確認することより、自身が担当するエレベータのうちのどのエレベータに対する復旧作業が依頼されたのかを認識することができる。
【0010】
その後、作業員は、復旧作業が必要なエレベータの設置場所へ移動し、その設置場所にて自身の特定端末装置を用いて上記コードの非公開部の読取りを行う。これにより、その特定端末装置において、当該エレベータの制御処理部への指令を可能にするための設定が自動的に行われる。その結果として、作業員は、自身の特定端末装置を用いて、制御処理部に対する指令を行うことが可能になる。
【0011】
また、上記エレベータシステムによれば、作業員の特定端末装置だけに暗号キーを付与することにより、利用者の端末装置による非公開部の読取りを制限することができ、その結果として、非公開部に含まれている情報に対するセキュリティを向上させることが可能になっている。
【0012】
上記エレベータは、そのエレベータが復旧作業中であることを利用者に認識させるための表示を行うことが可能な表示装置を備えていてもよい。この場合、上記エレベータシステムにおいては、制御処理部は、特定端末装置からの指令に応じて表示装置の表示を切り替えてもよい。この構成によれば、作業員は、自身の特定端末装置を用いて非公開の読取りを行うといった簡単な操作で、当該特定端末装置からの指令による表示装置の表示の切替えを可能にすることができる。
【0013】
上記エレベータシステムにおいて、中継処理部は、判定処理部を更に含んでいてもよい。ここで、判定処理部は、エレベータの状態を示す画像を識別情報と共に端末装置から受信した場合に、その画像に基づいて当該エレベータの復旧作業が必要であるか否かを判定する。このような構成において、通知処理部は、エレベータの復旧作業が必要であると判定処理部が判定した場合に、そのエレベータの識別情報を作業員の特定端末装置に通知してもよい。この構成によれば、エレベータの状態を示す画像に基づいた判定を行うことにより、復旧作業が必要でない通報にまで作業員が対応するといった無駄を防止することができる。また、通報の際に画像の送信を必要とすることで、いたずらによる通報を防止することができる。
【0014】
上記エレベータシステムは、対応管理データを更に備えていてもよい。ここで、対応管理データは、エレベータの識別情報と、当該エレベータの状態を示す状態情報と、が対応付けて記録されるデータである。この場合、中継処理部は、端末装置から識別情報を受信した場合であって、且つ、対応管理データにて当該識別情報に対応付けられている状態情報が、正常運転中であることを示すデータであった場合に、その識別情報を作業員の特定端末装置に通知することができる。また、中継処理部は、端末装置から識別情報を受信した場合であって、且つ、対応管理データにて当該識別情報に対応付けられている状態情報が、復旧作業中であることを示すデータであった場合には、復旧作業中であることを、作業員の特定端末装置には通知せずに、その識別情報を送信してきた端末装置に通知することができる。
【0015】
上記構成によれば、同じ1つのエレベータについて複数の利用者が異常を認識し、且つ、当該複数の利用者が、コードの公開部を読み取って当該エレベータの識別情報を中継処理部へ送信した場合であっても、そのエレベータの復旧作業を担当する作業員へは、識別情報の一度の通知(即ち、復旧作業の一度の依頼)だけで済ませることができる。よって、同じ1つのエレベータについて、復旧作業の依頼(通知)が作業員に対して複数回行われるといった煩雑な処理を回避することができる。
【0016】
上記エレベータシステムにおいて、コードは、非公開部と公開部とが1つに纏めてコード化されたものであってもよい。この構成によれば、1つのコードを用意するだけで、その1つのコードに対する利用者の端末装置による読取り(暗号キーなしでの読取り)が行われた場合には公開部の情報を当該端末装置に提供し、その1つのコードに対する作業員の特定端末装置による読取り(暗号キーを用いた読取り)が行われた場合には非公開部の情報を当該特定端末装置に提供することが可能になる。よって、公開部と非公開部とを別々にコード化した場合に比べて、エレベータシステムを簡略化することができる。
【0017】
本発明に係るプログラムは、上記エレベータシステムとの通信が可能な作業員用の特定端末装置に、読取処理ステップと、設定処理ステップと、を実行させる。読取処理ステップでは、特定端末装置によるコードの読取りを作業員が行った場合に、当該特定端末装置が、そのコード内の非公開部を、暗号キーを用いて読み取る。読取処理ステップにて非公開部が読み取られた場合、上記特定端末装置は、設定処理ステップにおいて、その非公開部に含まれている情報を用いて、制御処理部への特定端末装置からの指令を可能にするための設定を行う。
【0018】
上記プログラムによれば、復旧作業が必要なエレベータにおいて作業員が自身の特定端末装置を用いて非公開部の読取りを行うだけで、当該特定端末装置において、制御処理部への指令を可能にするための設定が自動的に行われることになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、エレベータに異常が発生した場合における利用者による通報を容易にしつつ、そのときのエレベータが復旧作業中であることをできるだけ早く利用者に認識させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(A)実施形態に係るエレベータシステムの全体構成を例示した概念図、及び(B)そのエレベータシステムとの通信が可能な作業員用の特定端末装置の構成を示した概念図である。
図2】実施形態で用いられる対応管理データの一例を示した概念図である。
図3】実施形態において利用者及び作業員が行う操作、管理サーバが実行する制御処理、特定端末装置が実行する制御処理、制御装置が実行する制御処理、をそれぞれ示したフローチャートである。
図4】第1変形例に係るエレベータシステムの全体構成を例示した概念図である。
図5】第1変形例において利用者及び作業員が行う操作、管理サーバが実行する制御処理、特定端末装置が実行する制御処理、制御装置が実行する制御処理、をそれぞれ示したフローチャートである。
図6】第2変形例で用いられる対応管理データの一例を示した概念図である。
図7】第2変形例を実施形態に適用した場合において利用者が行う操作、及び管理サーバが実行する制御処理、を抽出してそれぞれ示したフローチャートである。
図8】第2変形例を第1変形例に適用した場合において利用者が行う操作、及び管理サーバが実行する制御処理、を抽出してそれぞれ示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[1]実施形態
[1-1]エレベータシステムの全体構成
図1(A)は、実施形態に係るエレベータシステムの全体構成を例示した概念図である。図1(A)の例では、エレベータシステムは、エレベータ1と、管理サーバ2と、コードSと、を備える。このエレベータシステムでは、利用者がエレベータ1の異常を認識した場合に、そのエレベータ1の異常を、利用者が携帯する端末装置3(スマートフォン、タブレットなど)から管理サーバ2に通報することができ、更に、当該管理サーバ2を介して、そのエレベータ1の復旧作業を担当する作業員用の特定端末装置4(スマートフォン、タブレット、専用端末機など)に通知することができる。以下、各部について具体的に説明する。
【0022】
<エレベータ>
エレベータ1は、制御装置10Aと、表示装置10Bと、を備える。制御装置10Aは、エレベータ1の各部の動作(乗りかごの昇降やドアの開閉などを含む)を制御する。表示装置10Bは、エレベータ1が復旧作業中であることを利用者に認識させるための表示を行うことができる。具体例として、表示装置10Bは、復旧作業中であることを利用者に認識させるための文字(「復旧作業中」や「点検中」などの文字)の点灯及び消灯が選択的に切り替えられるものであってもよいし、そのような文字が液晶パネルなどの画面に表示されるものであってもよい。このような表示装置10Bは、エレベータ1の乗りかごが停止する各階の乗場(例えば、エレベータ1の乗降口)に設けられる。
【0023】
本実施形態では、制御装置10Aは、表示装置10Bの動作をも制御する。詳細については後述するが、制御装置10Aは、特定端末装置4からの指令に応じて表示装置10Bの表示を切り替える。
【0024】
また、制御装置10Aは、作業員用の特定端末装置4とのネットワーク通信が可能となるように構成されている。尚、制御装置10Aと特定端末装置4との間のネットワーク通信は、WANで実現されてもよいし、LANで実現されてもよい。尚、上記エレベータシステムがエレベータ1を複数備えている場合であって、それらのエレベータ1が群管理制御装置によって一元的に管理されている場合には、各エレベータ1の制御装置10Aと特定端末装置4とは、群管理制御装置を介してネットワーク通信を行うことになる。
【0025】
より具体的な構成として、制御装置10Aは、記憶部11と制御部12とを備える。記憶部11は、エレベータ1に対する制御処理(乗りかごの昇降、ドアの開閉、表示装置10Bの表示の切替えなど)に必要な情報が保存される部分であり、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成されている。制御部12は、エレベータ1に対する上記制御処理を実行する部分であり、CPUなどの処理デバイスで構成されている。
【0026】
このような制御処理は、制御装置10Aの制御部12内に構築される制御処理部120によって実行される(図1(A)参照)。本実施形態では、当該処理部は、制御部12にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されてインストールされたものが制御装置10Aの記憶部11に保存されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされてインストールされたものが記憶部11に保存されてもよい。尚、上記の処理部は、制御装置10A内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。
【0027】
<管理サーバ>
管理サーバ2は、上記エレベータ1の状態を管理するサーバであり、本実施形態では、利用者が携帯する端末装置3から作業員用の特定端末装置4への情報送信を中継する(中継処理)。このような中継処理を可能にするべく、管理サーバ2は、端末装置3及び特定端末装置4とのネットワーク通信が可能となるように構成されている。尚、管理サーバ2と端末装置3及び特定端末装置4との間のネットワーク通信は、WANで実現されてもよいし、LANで実現されてもよい。
【0028】
そして、管理サーバ2は、利用者がエレベータ1の異常を認識し、そのエレベータ1の異常が当該利用者の端末装置3から通知されてきた場合に、当該エレベータ1の異常を、そのエレベータ1の復旧作業を担当する作業員の特定端末装置4に通知する(通知処理)。具体的には、利用者がエレベータ1の異常を認識した場合、当該利用者は、そのエレベータ1の識別情報Peを自身の端末装置3から管理サーバ2に送信することができる。そして、管理サーバ2は、端末装置3から識別情報Peを受信した場合に、当該識別情報Peを、その識別情報Peで特定されるエレベータ1の復旧作業を担当する作業員の特定端末装置4に通知する。
【0029】
具体的な構成として、管理サーバ2は、記憶部21と制御部22とを備える。
【0030】
記憶部21は、中継処理(通知処理など)に必要な情報が保存される部分であり、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成されている。本実施形態では、そのような情報の1つとして、対応管理データDrが記憶部21に保存される。図2は、対応管理データDrの一例を示した概念図である。図2に示されるように、対応管理データDrは、エレベータ1ごとに、そのエレベータ1の識別情報Peと、当該識別情報Peで特定されるエレベータ1の復旧作業を担当する作業員の特定端末装置4の端末情報Pfと、が互いに対応付けて記録されたものである。尚、図2の例では、3つのエレベータ1の識別情報Pe(E00001~E00003)に同じ端末情報Pf(Ag00001)が対応付けられた場合(即ち、当該3つのエレベータ1を同じ1人の作業員が担当する場合)が部分的に示されている。
【0031】
制御部22は、中継処理を実行する部分であり、CPUなどの処理デバイスで構成されている。具体的には、制御部22は、端末装置3から識別情報Peを受信した場合、対応管理データDrから、当該識別情報Peに対応付けられている端末情報Pfを抽出する。そして、制御部22は、抽出した端末情報Pfで特定される特定端末装置4へ上記識別情報Peを送信することにより、その特定端末装置4を携帯する作業員(即ち、その識別情報Peで特定されるエレベータ1の復旧作業を担当する作業員)に当該識別情報Peを通知する(通知処理)。
【0032】
このような中継処理は、管理サーバ2の制御部22内に構築される中継処理部220によって実行される(図1(A)参照)。より具体的には、通知処理が、管理サーバ2の制御部22内に構築される通知処理部221によって実行される。本実施形態では、これらの処理部は、制御部22にプログラムを実行させることによってソフトウェアで構成される。そして、そのようなプログラムは、携帯可能な記憶媒体(例えば、フラッシュメモリ等)に読取可能な状態で保存され、当該記憶媒体から読み出されてインストールされたものが管理サーバ2の記憶部21に保存されてもよいし、他のサーバなどにダウンロード可能に保存され、当該サーバからダウンロードされてインストールされたものが記憶部21に保存されてもよい。尚、上記の処理部は、管理サーバ2内に回路を構築することによってハードウェアで構成されてもよい。
【0033】
ここで、従来のエレベータでは、乗りかご内にしか監視センタへの通報手段(緊急用ボタン)がなく、そのような通報手段は乗りかごの外側(乗場など)には設けられていなかった。このため、乗りかごの外側から利用者がエレベータの異常を認識した場合であっても、利用者は、その場で即座に監視センタに通報することができなかった。また、従来のエレベータでは、エレベータの異常が通報された場合であっても、作業員がエレベータの機械室などで操作子(スイッチやボタンなど)を物理的に操作するまでは、復旧作業中であることを利用者に認識させるための表示がないままにエレベータが長時間に亘って放置されることになる。
【0034】
そこで、図1(A)のエレベータシステムでは、エレベータ1に異常が発生した場合における利用者による通報を容易にしつつ、そのときのエレベータ1が復旧作業中であることをできるだけ早く利用者に認識させることが可能となるように、上述した管理サーバ2と共に、以下に説明するコードSが備えられている。
【0035】
<コード>
コードSは、読取りに暗号キーWcが必要とされる非公開部Spと、暗号キーWcなしでの読取りが可能な公開部Sqと、を含む。そして本実施形態では、利用者が携帯する端末装置3には暗号キーWcが付与されておらず、作業員用の特定端末装置4だけに暗号キーWcが付与されている。従って、端末装置3は、コードS内の非公開部Spの読取りが制限されており、コードS内の公開部Sqだけを、暗号キーWcなしでカメラ機能を用いて読み取ることができる。一方、特定端末装置4は、そのカメラ機能(後述する読取部44(図1(B)参照))を用いてコードS内の非公開部Spを読み取ることができる。
【0036】
更に本実施形態では、コードSは、非公開部Spと公開部Sqとが1つに纏めてコード化されたものである。具体的には、コードSは、SQRC(登録商標)など、非公開部Spと公開部Sqとを持ったQRコード(登録商標)である。そして、このコードSは、利用者が自身の端末装置3を用いて読み取ることができる場所において、壁面への貼付や画面への表示などの手段によって利用者に提供される。具体例として、コードSは、エレベータ1の乗りかごが停止する各階の乗場(例えば、エレベータ1の乗降口)に設けられる。尚、コードSには、上記QRコード(登録商標)に代えて、非公開部Spと公開部Sqとを持った2次元バーコードが用いられてもよい。
【0037】
具体的な構成として、コードSの公開部Sqには、当該コードSに対応するエレベータ1(即ち、そのコードSが設けられているエレベータ1)の識別情報Peを端末装置3から管理サーバ2に送信することを可能にするための情報が含まれている。具体例として、コードSの公開部Sqには、当該コードSに対応するエレベータ1の異常を管理サーバ2に通報するために用意された通報用WebサイトのURLの情報と、そのエレベータ1の識別情報Peと、が含まれる。
【0038】
また、コードSの非公開部Spには、当該コードSに対応するエレベータ1の制御装置10Aへの特定端末装置4からの指令(本実施形態では、表示装置10Bの表示を切り替えるための指令)を可能にするための情報が含まれている。具体例として、コードSの非公開部Spには、当該コードSに対応するエレベータ1の制御装置10AのIPアドレスが含まれる。
【0039】
このような制御装置10AのIPアドレスは、セキュリティの観点から、利用者には非公開にされるべき情報である。そこで本実施形態では、上述したように作業員の特定端末装置4だけに暗号キーWcを付与することにより、利用者の端末装置3による非公開部Spの読取りを制限することができ、その結果として、非公開部Spに含まれている情報に対するセキュリティを向上させることが可能になっている。
【0040】
<特定端末装置>
図1(B)は、特定端末装置4の構成を示した概念図である。特定端末装置4は、通信部41と、入力部42と、表示部43と、読取部44と、記憶部45と、制御部46と、を備える。
【0041】
通信部41は、ネットワーク通信用のデバイスで構成される部分であり、外部とのネットワーク通信を担う。入力部42は、タッチパネルやボタンなどの入力デバイスで構成される部分であり、作業員による各種情報の入力(後述する制御装置10Aへの指令のための操作を含む)に用いられる。表示部43は、タッチパネルなどの表示デバイスで構成される部分であり、各種情報の表示を担う。読取部44は、カメラなどの撮像デバイスで構成される部分であり、コードSの読取りを担う。
【0042】
記憶部45は、ROMやRAMなどの記憶デバイスで構成された部分である。記憶部45には、特定端末装置4に付与された暗号キーWc、当該特定端末装置4にインストールされた復旧作業用アプリ、当該復旧作業用アプリの設定に用いられた情報などが保存される。ここで、復旧作業用アプリは、当該アプリにて必要な設定を行うことで、その設定で指定された制御装置10Aへの指令(本実施形態では、表示装置10Bの表示を切り替えるための指令)が可能になるアプリケーションプログラムである。
【0043】
制御部46は、CPUなどの処理デバイスで構成された部分であり、特定端末装置4の各部の動作を制御する。そして、作業員が自身の特定端末装置4にて復旧作業用アプリを起動した場合には、制御部46は、復旧作業用アプリに基づいた制御処理を実行することにより、その特定端末装置4からの制御装置10Aへの指令(本実施形態では、表示装置10Bの表示を切り替えるための指令)を可能にする。換言すれば、制御装置10Aへの指令を特定端末装置4から行うために必要な処理が、復旧作業用アプリの実行によって遂行される。また、そのような処理は、復旧作業用アプリの実行によって特定端末装置4の制御部46内にソフトウェアで構築される処理部(読取処理部461など)によって遂行される。尚、復旧作業用アプリに基づいて制御部46が実行する制御処理の詳細については以下で説明する。
【0044】
[1-2]操作及び制御処理
図3は、本実施形態において利用者及び作業員が行う操作、管理サーバ2が実行する制御処理、特定端末装置4が実行する制御処理、制御装置10Aが実行する制御処理、をそれぞれ示したフローチャートである。
【0045】
利用者が、何れか1つのエレベータ1において当該エレベータ1の異常を認識した場合、当該利用者は、自身の端末装置3のカメラ機能を用いて、そのエレベータ1(例えば、当該エレベータ1の各階の乗場)に設けられているコードSの読取りを行う(ステップS101A)。
【0046】
端末装置3には暗号キーWcが付与されていないため、ステップS101AでのコードSの読取りが行われた場合、当該コードS内の公開部Sqに含まれている情報だけが、端末装置3によって暗号キーWcなしで読み取られる。これにより、利用者は、エレベータ1の異常を管理サーバ2に通報するために用意された通報用Webサイトにアクセスすることが可能になる。また、そのコードSの公開部Sqからは、当該コードSに対応するエレベータ1の識別情報Peが得られる。
【0047】
ステップS101Aの後、利用者は、上記通報用Webサイトにアクセスし(ステップS101B)、自身が認識したエレベータ1の異常に関する情報を管理サーバ2に送信する(ステップS102)。一例として、上記通報用Webサイトへのアクセスにより、エレベータ1の状態を入力(リストからの選択を含む)するための画面が表示される。そして、利用者は、自身が認識したエレベータ1の状態を画面で入力して送信することにより、当該エレベータ1の状態が管理サーバ2に送信される。また本実施形態では、エレベータ1の異常に関する情報と共に、ステップS101Aで得られた当該エレベータ1の識別情報Peも管理サーバ2に送信される。
【0048】
これにより、管理サーバ2は、端末装置3から受信した識別情報Peに基づいて、どのエレベータ1にて異常が発生したのかを認識することができる。
【0049】
管理サーバ2は、端末装置3から識別情報Peを受信した場合(ステップS201)、異常が通報されたエレベータ1を復旧させるべく、そのエレベータ1の復旧作業を担当する作業員に当該エレベータ1の識別情報Peを通知する(通知処理。ステップS202)。具体的には、管理サーバ2は、端末装置3から識別情報Peを受信した場合、対応管理データDrから、当該識別情報Peに対応付けられている端末情報Pfを抽出する。そして、管理サーバ2は、抽出した端末情報Pfで特定される特定端末装置4へ上記識別情報Peを送信することにより、その特定端末装置4を携帯する作業員(即ち、その識別情報Peで特定されるエレベータ1の復旧作業を担当する作業員)に当該識別情報Peを通知する。
【0050】
これにより、作業員は、自身が担当するエレベータ1に異常が発生したことを認識することができる。具体的には、作業員は、自身の特定端末装置4に識別情報Peが通知されたことを以て、自身に対してエレベータ1の復旧作業の依頼があったことを認識することができる。また、作業員は、通知された識別情報Peを確認することより、自身が担当するエレベータ1のうちのどのエレベータ1に対する復旧作業が依頼されたのかを認識することができる。
【0051】
作業員は、自身の特定端末装置4が管理サーバ2からの通知を受信した場合(ステップS301)、その通知に含まれている識別情報Peで特定されるエレベータ1の設置場所へ移動する。そして、作業員は、エレベータ1の設置場所に到着後、自身の特定端末装置4のカメラ機能(読取部44(図1(B)参照))を用いて、そのエレベータ1(例えば、当該エレベータ1の各階の乗場)に設けられているコードSの読取りを行う(ステップS302)。
【0052】
特定端末装置4には暗号キーWcが付与されているため、ステップS302でのコードSの読取りが行われた場合、当該コードS内の非公開部Spに含まれている情報が、特定端末装置4によって暗号キーWcを用いて読み取られる(読取処理。ステップS401)。これにより、復旧作業用アプリの設定(ここでは、その復旧作業用アプリからエレベータ1の制御装置10Aへ指令できるようにするための設定)に必要となる情報が特定端末装置4に取り込まれる。このような読取処理は、特定端末装置4内にソフトウェアで構築される読取処理部461(図1(B)参照)によって実行される。
【0053】
その後、特定端末装置4は、ステップS401で読み取った情報を用いて復旧作業用アプリの設定を行う(設定処理。ステップS402)。このとき、特定端末装置4は、設定のための操作(入力や選択など)を作業員に要求することなく、ステップS401で読み取った情報を用いて自動で設定を行う。従って、この復旧作業用アプリによれば、復旧作業が必要なエレベータ1(即ち、異常が通報されたエレベータ1)において作業員が自身の特定端末装置4で非公開部Spの読取りを行うだけで、その特定端末装置4において、当該エレベータ1の制御装置10Aへの指令を可能にするための設定が自動的に行われることになる。このような設定処理は、特定端末装置4内にソフトウェアで構築される設定処理部462(図1(B)参照)によって実行される。
【0054】
これにより、作業員は、自身の特定端末装置4を用いて、復旧作業が必要なエレベータ1の制御装置10Aに対する指令(本実施形態では、表示装置10Bの表示を切り替えるための指令)を行うことが可能になる。しかも、作業員は、自身の特定端末装置4を用いてコードSの非公開部Spの読取りを行うといった簡単な操作(ステップS302)で、当該特定端末装置4からの指令による表示装置10Bの表示の切替えを可能にすることができる。
【0055】
ステップS402の後、作業員は、自動で設定された復旧作業用アプリを用いて、復旧作業の対象になっているエレベータ1の各階に設けられている表示装置10Bの表示を切り替えるための操作を行う(表示オンの操作。ステップS303)。具体的には、作業員は、復旧作業用アプリにおいて、対象になっているエレベータ1が復旧作業中であることを利用者に認識させるための表示(「復旧作業中」や「点検中」などの文字の表示)へ切り替えるための操作を行う。一例として、復旧作業用アプリの画面には、表示装置10Bの表示を切り替えるためのボタンが表示され、そのボタンを作業員が操作してオンに設定する。
【0056】
ステップS303での操作を作業員が行った場合、特定端末装置4は、復旧作業の対象になっているエレベータ1の制御装置10Aへ、当該エレベータ1の各階に設けられている表示装置10Bの表示を切り替えるための第1指令V1を送信する(指令処理。ステップS403)。このような指令処理は、特定端末装置4内にソフトウェアで構築される指令処理部463(図1(B)参照)によって実行される。
【0057】
エレベータ1の制御装置10Aは、特定端末装置4から第1指令V1を受信した場合(ステップS501)、その第1指令V1に応じて、当該エレベータ1の各階の乗場に設けられた表示装置10Bの表示を、そのエレベータ1が復旧作業中であることを利用者に認識させるための表示に切り替える(表示オン。ステップS502)。これにより、表示装置10Bの表示を確認した利用者は、その表示装置10Bが設けられているエレベータ1が復旧作業中であることを認識することができる。
【0058】
その後、作業員は、エレベータ1の復旧作業を完了した場合、復旧作業用アプリを用いて、表示装置10Bの表示を再び切り替えて元の状態に戻すための操作を行う(表示オフの操作。ステップS304)。具体的には、作業員は、復旧作業用アプリにおいて、復旧作業中であることを利用者に認識させるために行っていた表示(「復旧作業中」や「点検中」などの文字の表示)を消すための操作を行う。一例として、復旧作業用アプリの画面において、作業員は、表示装置10Bの表示を切り替えるためのボタンを操作してオフに設定する。
【0059】
ステップS304での操作を作業員が行った場合、特定端末装置4は、表示装置10Bの表示を再び切り替えて元の状態に戻すための第2指令V2をエレベータ1の制御装置10Aへ送信する(指令処理。ステップS404)。
【0060】
エレベータ1の制御装置10Aは、特定端末装置4から第2指令V2を受信した場合(ステップS503)、その第2指令V2に応じて、当該エレベータ1の各階の乗場に設けられた表示装置10Bの表示を再び切り替えて元の状態に戻す(表示オフ。ステップS504)。これにより、表示装置10Bの表示(例えば、「復旧作業中」や「点検中」などの文字が消えた状態)を確認した利用者は、その表示装置10Bが設けられているエレベータ1が正常運転中であること、或いは、そのエレベータ1が正常運転に戻ったことを認識することができる。
【0061】
このように、本実施形態のエレベータシステムによれば、エレベータ1に異常が発生した場合における利用者による通報を容易にしつつ、そのときのエレベータ1が復旧作業中であることをできるだけ早く利用者に認識させることが可能になる。
【0062】
また本実施形態では、コードSは、非公開部Spと公開部Sqとが1つに纏めてコード化されたものである。このような構成によれば、1つのコードSを用意するだけで、その1つのコードSに対する利用者の端末装置3による読取り(暗号キーWcなしでの読取り)が行われた場合には公開部Sqの情報を当該端末装置3に提供し、その1つのコードSに対する作業員の特定端末装置4による読取り(暗号キーWcを用いた読取り)が行われた場合には非公開部Spの情報を当該特定端末装置4に提供することが可能になる。よって、公開部Sqと非公開部Spとを別々にコード化した場合に比べて、エレベータシステムを簡略化することができる。
【0063】
[2]変形例
上述したエレベータシステムは、以下のような構成を備えたものに適宜変更されてもよい。
【0064】
[2-1]第1変形例
図4は、第1変形例に係るエレベータシステムの全体構成を例示した概念図である。図5は、第1変形例において利用者及び作業員が行う操作、管理サーバ2が実行する制御処理、特定端末装置4が実行する制御処理、制御装置10Aが実行する制御処理、をそれぞれ示したフローチャートである。
【0065】
第1変形例では、利用者がコードSの読取り(ステップS101A)を行って通報用Webサイトにアクセスした場合(ステップS101B)、そのときのエレベータ1の状態を示す画像Gsの送信を利用者に要求する画面が表示される。尚、この画面では、画像Gsの送信と共に、エレベータ1の状態の入力(リストからの選択を含む)が要求されてもよい。そして、利用者は、自身の端末装置3のカメラ機能を用いて、エレベータ1の異常を認識できる画像Gsを取得し、その画像Gsを管理サーバ2に送信する(ステップS110)。そして、管理サーバ2への画像Gsの送信により、ステップS101Aで得られた当該エレベータ1の識別情報Peも管理サーバ2に送信される。
【0066】
管理サーバ2(中継処理部220)は、エレベータ1の状態を示す上記画像Gsを当該エレベータ1の識別情報Peと共に端末装置3から受信した場合(ステップS210)、先ず、その画像Gsに基づいて当該エレベータ1の復旧作業が必要であるか否かを判定する(判定処理。ステップS211)。このような判定処理は、管理サーバ2内にソフトウェア又はハードウェアで構築される判定処理部222(図4参照)によって実行される。
【0067】
そして、管理サーバ2は、ステップS211にてエレベータ1の復旧作業が「必要である」と判定した場合に、当該エレベータ1の識別情報Peを、そのエレベータ1の復旧作業を担当する作業員に通知する(通知処理。ステップS212)。具体的には、管理サーバ2は、ステップS211にて上記画像Gsに基づいて「必要である」と判定した場合に、対応管理データDr(図2参照)から、その画像Gsと共に受信した識別情報Peに対応付けられている端末情報Pfを抽出する。そして、管理サーバ2は、抽出した端末情報Pfで特定される特定端末装置4へ上記識別情報Peを送信することにより、その特定端末装置4を携帯する作業員に当該識別情報Peを通知する。
【0068】
このような第1変形例の構成によれば、エレベータ1の状態を示す画像Gsに基づいた判定を行うことにより、復旧作業が必要でない通報にまで作業員が対応するといった無駄を防止することができる。また、通報の際に画像Gsの送信を必要とすることで、いたずらによる通報を防止することができる。
【0069】
[2-2]第2変形例
図6(A)及び図6(B)は、第2変形例で用いられる対応管理データDrの一例を示した概念図である。この対応管理データDrでは、エレベータ1ごとに、そのエレベータ1の識別情報Peと、当該識別情報Peで特定されるエレベータ1の復旧作業を担当する作業員の特定端末装置4の端末情報Pfと、が互いに対応付けて記録されると共に、それらに更に対応付けて、当該エレベータ1の状態(当該作業員の状態を含む)を示す状態情報Psが記録されている。
【0070】
ここで、状態情報Psとして、デフォルトでは、正常運転中であることを示すデータ(以下では、データ「正常運転中」と称す)が対応管理データDrに記録される(図6(A)参照)。そして、管理サーバ2が、端末装置3からエレベータ1の識別情報Peを受信し、そのエレベータ1の復旧作業を担当する作業員に当該識別情報Peを通知する場合には、管理サーバ2は、当該エレベータ1に対応する対応管理データDr内の状態情報Psを、データ「正常運転中」から、復旧作業中であることを示すデータ(以下では、データ「復旧作業中」と称す)へ書き換える(図6(B)参照)。尚、図6(B)の例では、識別情報Peが「E00001」であるエレベータ1の状態情報Psが、データ「正常運転中」からデータ「復旧作業中」に書き換えられた場合が示されている。
【0071】
このような状態情報Psを用いることにより、管理サーバ2は、端末装置3からエレベータ1の識別情報Peを受信した場合において、そのエレベータ1について、データ「正常運転中」が状態情報Psとして対応管理データDrに記録されている場合にのみ、当該エレベータ1の復旧作業を担当する作業員に識別情報Peを通知することができる。また、管理サーバ2は、端末装置3からエレベータ1の識別情報Peを受信した場合において、そのエレベータ1について、データ「復旧作業中」が状態情報Psとして対応管理データDrに記録されている場合には、改めて作業員に通知することはせずに、当該エレベータ1の識別情報Peを送信してきた端末装置3に対して、復旧作業中であることを通知することができる。以下、具体的に説明する。
【0072】
図7は、第2変形例を実施形態に適用した場合において利用者が行う操作及び管理サーバ2が実行する制御処理、を抽出してそれぞれ示したフローチャートである。また、図8は、第2変形例を第1変形例に適用した場合において利用者が行う操作及び管理サーバ2が実行する制御処理、を抽出してそれぞれ示したフローチャートである。
【0073】
図7の例では、管理サーバ2は、端末装置3から識別情報Peを受信した場合(ステップS201)、対応管理データDrから、当該識別情報Peに対応付けられている状態情報Psを抽出する(ステップS221)。そして、管理サーバ2は、抽出した状態情報Psがどのようなデータであるのかを判断することにより、エレベータ1の状態を判断する(ステップS222)。このようなステップS221及びS222の処理は、管理サーバ2内にソフトウェア又はハードウェアで構築される状態判断処理部(不図示)によって実行される。
【0074】
管理サーバ2は、ステップS222にて状態情報Psがデータ「正常運転中」であると判断した場合には、エレベータ1の復旧作業を担当する作業員に当該エレベータ1の識別情報Peを通知する(通知処理。ステップS202)。
【0075】
一方、管理サーバ2は、ステップS222にて状態情報Psがデータ「復旧作業中」であると判断した場合には、改めて作業員に通知することはせずに、エレベータ1の識別情報Peを送信してきた端末装置3に対して、復旧作業中であることを通知する(通知処理。ステップS223)。利用者は、自身の端末装置3に通知された内容を確認することにより、エレベータ1の異常が管理側で既に認識されていることを知ることができる(ステップS110)。
【0076】
図8の例では、管理サーバ2は、エレベータ1の状態を示す上記画像Gsを当該エレベータ1の識別情報Peと共に端末装置3から受信した場合(ステップS210)に、上述したステップS221及びS222を実行する。
【0077】
そして、管理サーバ2は、ステップS222にて状態情報Psがデータ「正常運転中」であると判断した場合に、ステップS210で受信した画像Gsに基づいて当該エレベータ1の復旧作業が必要であるか否かを判定し(判定処理。ステップS211)、当該ステップS211にてエレベータ1の復旧作業が「必要である」と判定した場合に、当該エレベータ1の識別情報Peを、そのエレベータ1の復旧作業を担当する作業員に通知する(通知処理。ステップS212)。
【0078】
一方、管理サーバ2は、ステップS222にて状態情報Psがデータ「復旧作業中」であると判断した場合には、図7(A)の例と同様、改めて作業員に通知することはせずに、エレベータ1の識別情報Peを送信してきた端末装置3に対して、復旧作業中であることを通知する(通知処理。ステップS223)。
【0079】
このような第2変形例の構成によれば、同じ1つのエレベータ1について複数の利用者が異常を認識し、且つ、当該複数の利用者が、コードSの公開部Sqを読み取って当該エレベータ1の識別情報Peを管理サーバ2へ送信した場合であっても、そのエレベータ1の復旧作業を担当する作業員へは、識別情報Peの一度の通知(即ち、復旧作業の一度の依頼)だけで済ませることができる。よって、同じ1つのエレベータ1について、復旧作業の依頼(通知)が作業員に対して複数回行われるといった煩雑な処理を回避することができる。
【0080】
[2-3]他の変形例
上述したエレベータシステムにおいて、コードSの非公開部Spには、当該コードSに対応するエレベータ1が備える表示装置10Bに表示できる情報のリスト(「復旧作業中」や「点検中」以外の表示を含む)が含まれていてもよい。このような構成によれば、非公開部Spの読取りによる復旧作業用アプリの設定により、当該アプリにおいて、表示装置10Bに表示させる内容の選択を可能にすることができる。
【0081】
上述の実施形態及び変形例の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態や変形例ではなく、特許請求の範囲によって示される。更に、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0082】
また、上述の実施形態や変形例からは、発明の対象として、エレベータシステムに限らず、そのエレベータシステムに含まれるエレベータ1、管理サーバ2、及びコードS、並びにそれらの一部(制御装置10Aや表示装置10Bなど)が個々に抽出されてもよいし、それらの幾つかを組み合わせたものが抽出されてもよい。また、発明の対象として、端末装置3や特定端末装置4が抽出されてもよい。更には、エレベータシステム、端末装置3、及び特定端末装置4で実行される制御処理やプログラムが個々に抽出されてもよいし、それらの一部が部分的に抽出されてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 エレベータ
2 管理サーバ
3 端末装置
4 特定端末装置
S コード
10A 制御装置
10B 表示装置
11 記憶部
12 制御部
21 記憶部
22 制御部
41 通信部
42 入力部
43 表示部
44 読取部
45 記憶部
46 制御部
Dr 対応管理データ
Gs 画像
Pe 識別情報
Pf 端末情報
Ps 状態情報
Sp 非公開部
Sq 公開部
V1 第1指令
V2 第2指令
Wc 暗号キー
120 制御処理部
220 中継処理部
221 通知処理部
222 判定処理部
461 読取処理部
462 設定処理部
463 指令処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8