(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109230
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】複数のドローンを備えた散布装置及び散布方法
(51)【国際特許分類】
B64U 50/34 20230101AFI20240806BHJP
B64U 10/13 20230101ALI20240806BHJP
B64U 50/11 20230101ALI20240806BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20240806BHJP
B64U 50/33 20230101ALI20240806BHJP
B64U 101/45 20230101ALN20240806BHJP
B64U 101/40 20230101ALN20240806BHJP
【FI】
B64U50/34
B64U10/13
B64U50/11
B64U50/19
B64U50/33
B64U101:45
B64U101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013926
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】592029256
【氏名又は名称】福井県
(72)【発明者】
【氏名】田中 大樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 弘
(57)【要約】
【課題】 広範囲にわたって大量の液体、粉体、又は粒体を効率よく散布する為にドローンを備えた散布装置の提供。
【解決手段】 噴射ノズル(007)を備えた先頭ドローン(003)と複数の後続ドローン(008)を有し、先頭ドローンには電気を供給するケーブル(002)と液体、粉体、又は粒体を供給するホース(006)が接続され、上記後続ドローンは把持装置(009)を備えて上記ケーブル及びホースを把持し、後続ドローンが飛行することが困難になった場合、また上記ケーブルやホースに無理な力が作用した際には、把持装置が開いてケーブル及びホースを解放することが出来るようにしている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
広範囲にわたって大量の液体、粉体、又は粒体を効率よく散布する為にドローンを備えた散布装置において、噴射ノズルを備えた先頭ドローンと複数の後続ドローンを有し、先頭ドローンには電気を供給するケーブルと上記噴射ノズルから噴射する液体、粉体、又は粒体を供給するホースが接続され、上記後続ドローンはモータ又はエンジンにて飛行すると共に、上記ケーブル及びホースを把持する把持装置を有し、該把持装置はケーブル及びホースを把持・解放出来るように開閉機構を備えたことを特徴とするドローンを備えた散布装置。
【請求項2】
先頭ドローンにエンジンを搭載し、電気を供給するケーブルに代わってガソリンを供給する為のホースを用いた請求項1記載のドローンを備えた散布装置。
【請求項3】
先頭ドローンの飛行に合わせ、ホース及びケーブルが長く延びるように、上記ホース及びケーブルを巻き取るリールを用いた請求項1、又は請求項2記載のドローンを備えた散布装置。
【請求項4】
上記ケーブル及びホースを把持する複数の後続ドローンは、互いに接触することなく所定の間隔でケーブル及びホースに沿って配列できるように間隔センサーを備えた請求項1、請求項2、又は請求項3記載のドローンを備えた散布装置。
【請求項5】
広範囲にわたって大量の液体、粉体、又は粒体を効率よく散布する為にドローンを用いた散布方法において、噴射ノズルを設けて地上から延びるホース及びケーブルの先端に先頭ドローンを接続し、上記ホース及びケーブルは複数の後続ドローンに備えた把持装置によって把持し、上記後続ドローンが飛行するに必要な燃料又は蓄電量が不足した場合、又はホースやケーブルに無理な張力が作用した際には、上記把持装置を開いてホース及びケーブルを解放して単独で飛び立つことが出来、そして飛び立ったドローンの代わりに別の後続ドローンがケーブル及びホースを把持するようにしたことを特徴とするドローンを用いた散布方法。
【請求項6】
上記ケーブル及びホースを解放して飛び立つことで形成される空間には、後方に位置するドローンが移動して該空間を埋めるようにした請求項5記載のドローンを用いた散布方法。
【請求項7】
先頭ドローンにエンジンを搭載し、電気を供給するケーブルに代わってガソリンを供給する為のホースを用いた請求項5、又は請求項6記載のドローンを用いた散布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のドローンを用いて液体、粉体、又は微粒子を散布する散布装置、及び散布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
土木・建設業や農業や消火現場では、大量水や薬剤を人がホースで散布している。この場合、急な斜面での転落、重機との接触、有害薬剤の飛散、火災によるやけどなど人的被害のリスクが高い。
【0003】
ドローンと呼ばれる無人航空機は、事前に設定した位置に自動で移動するか、無線を用いたコントローラーで操縦者によって操縦されるか、コンピュータからの無線信号で自動もしくは手動で移動する。
【0004】
近年、ドローンによる農地への薬剤散布での利用が進んでおり、ドローンによって大量の薬剤を広範囲に持続して散布できれば、農業従事者を重労働から解放することが期待されている。また、土木・建設業においても、高所作業など危険な場所でも安全な作業か可能となる。
【0005】
しかしながら、一般的にドローンは、バッテリーの容量の制限で飛行時間が限られている。さらに、搭載可能な薬剤タンクの容量は可搬重量により制限され、ゆえに一度に散布可能な薬剤の量は限られている。
【0006】
したがって、例えば農業でのドローンによる薬剤散布においては、高濃度の薬剤を少量散布することに限られている。そのため、適用できる作物、農薬の種類も限られ、ドローンの利用による省力化が進まない要因となっている。
【0007】
一方、建設・土木においても、大量の薬液散布ができないことにより、高所の洗浄作業などには適用できない。
【0008】
特願2017-554177号に係る「無人飛行体による薬剤散布装置」は、ドローン(無人飛行体)を活用した長時間稼働可能な薬剤散布装置である。
すなわち、相互位置を協調制御された複数のドローンにより給電ケーブル、薬剤パイプ、制御ケーブル等を支持した上で、別の薬剤散布専用ドローンによる薬剤散布を行なうことで、ケーブル等の取り回しの問題を解決し、ドローン上のバッテリー容量や薬剤タンクの容量に制約されず、効率的で長時間の安定した薬剤散布を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載された散布装置は、すべてのドローンが有線給電を前提としているため、広範囲に散布しようとすればドローンの機体数が増加して、給電ケーブルに流れる電流も増加するため、この電流を許容するためケーブルも太くなり、ドローンの支持するケーブル重量が大きくなる。ところが、有線給電を使わずに機体搭載のバッテリーでは、飛行時間が限定され長時間稼働できない。
【0011】
また、特許文献1に記載された散布装置は、すべてドローンがホースやケーブルに固定されているため、1機が飛行不能で墜落した場合、その他の機体が張力で引っ張られ、すべての機体が飛行不能で墜落するリスクが高い。
【0012】
さらに、複数のドローンがホースと電線に固定していることにより、同装置の移動や収納が容易に行えず不便となる。
本発明が解決しようとする課題はこれら問題点であり、複数のドローンで構成し、長時間にわたって広範囲を安定して散布することが出来る散布装置、及び散布方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る散布装置は、先頭ドローンと複数の後続ドローンから成り、先頭ドローンは液体や粉体、又は微粒子から噴射物を噴射するノズルを有し、該ノズルは噴射物を収容しているタンクとホースを介して接続し、噴射物はポンプによってホースを流れて先頭ドローンに送られる。また、先頭ドローンが飛行する動力原として一般的に電気が用いられ、バッテリーから延びるケーブルが先頭ドローンに接続される。動力原としてはエンジンを用いることも出来、この際には該エンジンが作動する為の燃料タンクを有し、該燃料タンクからホースを介して先頭ドローンへ送られる。
【0014】
先頭ドローンは地上に設置しているタンクやバッテリーから燃料や電気が送られることで長時間にわたって飛行することが出来る。
一方、複数の後続ドローンは、上記バッテリー及びタンクから延びて先頭ドローンに接続している長いケーブルやホースを支える為に一定間隔で配列している。
そして、先頭ドローンの飛行に追従してケーブルやホースは引っ張られるが、長く延びるケーブルやホースは後続ドローンによって所定の高さに支持される。
【0015】
ところで、複数の後続ドローンは独自の燃料タンク又はバッテリーを搭載し、その為に長時間にわたって飛行することは出来ない。その為に飛行する燃料や電気が無くなる前に、支えているケーブルやホースから離脱して地上に降り、燃料や電気を補充て再び飛び立ち、ケーブルやホースを支えることが出来る。
そこで、後続のドローンはケーブル及びホースを支えることが出来る把持装置を有し、該把持装置にはケーブル及びホースを把持する機構が備わっている。
【0016】
燃料や電気を補充する為に、後続ドローンの一部はケーブルやホースから離脱するが、離脱するドローンによって形成される空間を埋めるために、後続ドローンは先頭ドローン側へ移動する。各後続ドローンには間隔センサーが取付けられ、前後のドローンと接触することなく、所定の空間が保たれるようにケーブルやホースに沿って移動することが出来る。
またケーブルやホースを保持するドローンに対し、機体の姿勢に影響を与える強い張力がホースやケーブルから与えられた場合には、離脱して切り離すことが出来る制御機能を備えている。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る散布装置は、薬剤や水を散布することが出来る先頭ドローンと、その他複数の後続ドローンから成り、先頭ドローンはリール巻きされたケーブル及びホースの先端に設けられ、ケーブル及びホースをリールから延ばすことで遠くに飛行して広範囲に散布することが出来る。
そして、先頭ドローンは地上に配置したタンクから水や薬剤がホースを介して送られ、また電気はバッテリーからケーブルを介して送ることで、長時間にわたって広範囲を頒布することが可能となる。
【0018】
地面に配置したタンク及びバッテリーから遠く離れることで長く延びるケーブルやホースは、後続の複数ドローンによって支持され、先頭ドローンに大きな負荷がかからないようにしている。後続の複数ドローンは、その間隔が一定に保たれるように間隔センサーを有し、特定のドローンに無理な負荷がかからないように成っている。
【0019】
後続ドローンは独自のバッテリーや燃料で飛行するが、電気や燃料が少なく成れば、保持しているホースやケーブルから離れ、電気及び燃料を補充したとことで飛び立って、再びケーブルやホースを保持することが出来る。この際、ケーブル及びホースから離脱することで、大きな空間が形成されるが、各ドローンに設けている間隔センサーによって、ほぼ一定の間隔になるようにドローンは先頭側へ移動して大きな空間を埋めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明にかかる散布装置の散布形態を示す概要図である。
【
図2】本発明に係る散布装置において、後続ドローンの交代方式を示す説明図である。
【
図3】本発明に係る散布装置の散布開始前のドローン配置形態の一例を上方から見た説明図である。
【
図4】本発明に係る散布装置のホースとケーブルを支持するドローンに墜落の危険がある場合に、ホースとケーブルを解放させた際の説明図である。
【
図5】本発明に係る散布装置の把持装置の一例を示した実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る散布装置の一例を示す実施例である。
該散布装置は先頭ドローン(003)と複数の後続ドローン(008)を有し、先頭ドローン(003)へ電気を供給するバッテリー(001)とケーブル(002)、先頭ドローン(003)へ液体を供給するタンク(005)、ポンプ(004)、及びホース(006)を備えている。
定置型バッテリー(001)から供給される電気はケーブル(002)を介して先頭のドローン(003)に給電され、そして定置型ポンプ(004)によって定置型タンク(005)から供給される液体は、ホース(006)を流れて先頭のドローン(003)のノズル(007)から散布される。ホース(006)とケーブル(002)は、把持装置(009)を搭載した複数の後続ドローン(008)によって把持されることで浮上し、後続ドローン(008)は、地上の障害物や他のドローンやその支持物と接触しないように衛星測位システムで位置制御されている。先頭のドローン(003)および後続ドローン(008)を浮上させる推力は回転翼(010)であるが、下方に気体や流体を噴射して浮力を得る機構でもよく、またそれらを併用してもよい。ドローン(003)、(008)の具体的な構造は限定しない。
定置型バッテリー(001)を利用するのは、電源の確保が難しい現場での散布を想定しているからであるが、商用電源でも散布は可能である。また、先頭のドローン及び複数の後続ドローンはバッテリーによる電気エネルギーで駆動する以外に水素ガスによる燃料電池で駆動したり、ガソリンを使用するエンジンによって駆動することも可能である。そして、ホース(006)で送られるのは液体以外に気体や粉体、粒体でも可能である。ホース(006)やケーブル(002)は、ホースリール(011)やケーブルリール(012)に巻いて格納することが出来るため容易に可搬可能である。ホース(006)とケーブル(002)を一体化して1本にすることも可能であり、その場合のリールは1つになる。ケーブルリール(012)についてはスリップリングを搭載しており回転状態でも給電できる。給電時にケーブル(002)の熱を放熱するためケーブルリール(012)は直径を大きくしてケーブル(002)が巻き取られている状態でも重なりを少なくしている。
【0022】
図2は本発明にかかる後続ドローンの交代方式の一例を示す実施例である。先頭のドローン(003)はケーブル(002)で有線給電されているが、後続ドローン(008)は搭載型バッテリーで駆動されているため、そのバッテリー残量は飛行時間に応じて少なくなる。例えば、1番目の後続ドローン(008)のバッテリー残量が少なくなった場合、2番目の後続ドローン(008 a)が1番目の後続ドローン(008)の位置付近までホースとケーブルに沿って移動する。このときn+1番目の後続ドローン(008c)はn番目の後続ドローン(008b)の位置付近までホースとケーブルに沿って移動する。また、最後尾の後続ドローン(008e)もホースとケーブルに沿って1つ前の後続ドローン(008d)の位置付近に移動すると同時に、満充電の新たな後続ドローン(008f)が、自動もしくは手動で取り付けられ、最後尾の後続ドローン(008e)の位置付近までホース(006)とケーブル(002)に沿って移動する。そして、バッテリー残量が少なくなっている1番目のドローン(008)は、ホース(006)とケーブル(002)から切り離されて基地へ戻り、満タンのバッテリーと交換されて次回の交代時に新たなドローンとして投入される。基地に商用電源があれば、後続ドローン用の空のバッテリーを再度満充電にしながら同時に散布も行えるため後続ドローンの交代は何度でも可能である。
【0023】
図3は、本発明にかかる散布装置の散布開始前のドローン配置形態の一例を上方から見た実施例である。ホースリール(011)及びケーブルリール(012)に格納されたホース(006)とケーブル(002)の繰り出し口部に着脱できる把持装置(009)が配置されている。ノズル(007)を有する先頭ドローン(003)の飛び立ちに合わせてホース(006)がホースリール(011)から、ケーブル(002)がケーブルリール(012)から繰り出され、所定の長さが繰り出されたら1番目の後続ドローン(008)が飛び立つ。さらに所定の長さ繰り出されたら2番目の後続ドローン(008a)が飛び立ち、次に3番目の後続ドローン(008b)、4番目の後続ドローン(008c)と、これを繰り返していく。飛び立つ順番が回ってくる前に待機している後続ドローンに搭載の把持装置(009)は、繰り出されているホース(006)とケーブル(002)を拘束しないが、飛び立つ順番が回ってきたらホース(006)とケーブル(002)を把持・拘束して飛び立つ。
【0024】
散布途中、ホースリール(011)やケーブルリール(012)の付近を散布する際、余分なホース(006)とケーブル(002)が発生した場合は、ホース(006)とケーブル(002)をそれぞれホースリール(011)とケーブルリール(012)が巻き取る。その際、後続ドローン(008、008a、008b、008c)は、ホース(006)とケーブル(002)の支持に必要なドローンは飛行して支持を続け、それ以外は、散布前の配置へ着陸する。そして、散布場所によって、ホースリール(011)やケーブルリール(012)を繰り出す必要が発生したら再度繰り出し、着陸していた後続ドローンは飛び立って、ホース(006)とケーブル(002)を支持する。
【0025】
ホースリール(011)の外径は限定しないが、出来るだけ外径を大きくすることで、送られる液体等の抵抗を少なくすることや繰り出すホース(006)の速度を大きくすることができる。
ケーブルリール(012)は、その外径を大きくすることで、ケーブル(002)の重なりを少なくして放熱させることができる。また、ケーブルリール(012)の巻き付け部は、アルミやCFRPなど熱伝導性が高い材質を使用することで放熱効率を上げることができる。
【0026】
散布に必要となる後続ドローンの機体数は、1機あたりの重量制限があるため、散布に際して浮上させるホース(006)とケーブル(002)の合計重量によって決まってくる。散布範囲が広くなればホース(006)とケーブル(002)も長くなるため必要な後続ドローン(008)の機体数も増える。大型のドローンで1機当たりの重量制限を大きくすれば、少ない機体数で散布可能となる。
上記
図3に示している配置は一例であるが、散布現場の地形に合わせてドローン(008)を上下方向に配置することも可能である。
【0027】
図4は、散布装置のホース(002)とケーブル(006)を支持する後続ドローン(008)に墜落の危険がある場合、ホース(002)とケーブル(006)を解放した際の水平方向から見た状態である。例えば、後続ドローン(008)が支持するホース(002)とケーブル(006)部分に強い張力がかかり墜落の危険がある場合には、同図に示すようにホース(002)とケーブル(006)を解放して離脱する。
【0028】
図5は把持装置(009)の一例を示した具体例である。ホース(002)とケーブル(006)を通す空間(014)と、ホース(006)とケーブル(002)を支持する支持部(013)を備えている。駆動部(015)を中心として支持部(013)が回転することで、ホース(006)とケーブル(002)を解放したり、把持したりすることが出来る。
【符号の説明】
【0029】
001 定置型バッテリー
002 ケーブル
003 先頭のドローン
004 定置型ポンプ
005 定置型タンク
006 ホース
007 ノズル
008 後続ドローン
008a 後続ドローン
008b 後続ドローン
008c 後続ドローン
008d 後続ドローン
008e 後続ドローン
008f 後続ドローン
009 把持装置
010 回転翼
011 ホースリール
012 ケーブルリール
013 支持部
014 空間
015 駆動部