(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109231
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】受信装置、送信装置、量子鍵配送システム、ピーク位置検出方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G02F 2/00 20060101AFI20240806BHJP
H04L 9/12 20060101ALI20240806BHJP
H04B 10/63 20130101ALI20240806BHJP
【FI】
G02F2/00
H04L9/12
H04B10/63
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013927
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100181135
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】平下 晋也
【テーマコード(参考)】
2K102
5K102
【Fターム(参考)】
2K102BA40
2K102BC01
2K102BD01
2K102EA01
2K102EB06
2K102EB12
2K102EB16
2K102EB20
2K102EB22
5K102AA52
5K102AB11
5K102AH02
5K102AH13
5K102AH26
5K102AH27
5K102PB01
5K102PH01
5K102PH22
5K102PH24
5K102PH31
5K102PH42
5K102PH49
5K102RD26
5K102RD28
(57)【要約】
【課題】連続量量子鍵配送を行うために送信装置と受信装置との同期をとる際、送信装置が信号光の送信に用いる光では、受信装置が同期をとるために十分大きい振幅を得られない場合でも、光の送受信のための構成を別途設ける必要無しに、量子鍵配送のための構成を用いて、同期のための光を送受信できるようにする。
【解決手段】受信装置が、送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出する信号取得手段と、前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出するピーク位置検出手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出する信号取得手段と、
前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出するピーク位置検出手段と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅の絶対値をとる絶対値取得手段をさらに備え、
前記ピーク位置検出手段は、前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅の絶対値をとった信号の振幅が極大となるタイミングを前記ピーク位置として検出する、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記ピーク位置検出手段が検出したピーク位置における振幅の大きさが、所定の閾値よりも大きいか否かを判定する振幅判定手段と、
前記ピーク位置における振幅の大きさが前記閾値よりも大きいと前記振幅判定手段が判定した場合、そのピーク位置を記憶するタイミング記憶手段と、
を備え、
前記ピーク位置における振幅の大きさが前記閾値以下であると前記振幅判定手段が判定した場合、前記信号取得手段による前記第1の光のホモダイン検出と、前記ピーク位置検出手段による前記ピーク位置の検出と、前記振幅判定手段による、前記ピーク位置における振幅の大きさが前記閾値よりも大きいか否かの判定とを繰り返す、
請求項1または請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
送信装置と受信装置との同期をとるための光パルスによる第1の光を、前記受信装置が前記第1の光をホモダイン検出するための第2の光に対して90度偏光させる半波長板と、
互いに90度偏光している前記第1の光と前記第2の光とを同一光軸上に纏める偏光ビームスプリッタと、
を備え、
前記第1の光と前記第2の光とが同一光軸上に纏められた光を前記受信装置へ送信する、送信装置。
【請求項5】
送信装置と受信装置とを備え、
前記送信装置は、前記送信装置と前記受信装置との同期をとるための第1の光と、前記前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光とを送信し、
前記受信装置は、
前記第1の光を、前記第2の光を用いてホモダイン検出する信号取得手段と、
前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出するピーク位置検出手段と、
を備える
量子鍵配送システム。
【請求項6】
受信装置が、
送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出し、
前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出する、
ことを含むピーク位置検出方法。
【請求項7】
受信装置を制御するコンピュータに、
送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出して得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出すること
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、送信装置、量子鍵配送システム、ピーク位置検出方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
暗号鍵を配送する方法の1つとして連続量量子鍵配送が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
連続量量子鍵配送を行うために送信装置と受信装置との同期をとる際、送信装置が信号光の送信に用いる光では、受信装置が同期をとるために十分大きい振幅を得られない場合でも、光の送受信のための構成を別途設ける必要無しに、量子鍵配送のための構成を用いて、同期のための光を送受信できることが好ましい。
【0005】
本発明の目的の一例は、上述の課題を解決することのできる受信装置、送信装置、量子鍵配送システム、ピーク位置検出方法およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、受信装置は、送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出する信号取得手段と、前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出するピーク位置検出手段と、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様によれば、送信装置は、送信装置と受信装置との同期をとるための光パルスによる第1の光を、前記受信装置が前記第1の光をホモダイン検出するための第2の光に対して90度偏光させる半波長板と、互いに90度偏光している前記第1の光と前記第2の光とを同一光軸上に纏める偏光ビームスプリッタと、を備え、前記第1の光と前記第2の光とが同一光軸上に纏められた光を前記受信装置へ送信する。
【0008】
本発明の第3の態様によれば、量子鍵配送システムは、送信装置と受信装置とを備え、前記送信装置は、前記送信装置と前記受信装置との同期をとるための第1の光と、前記前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光とを送信し、前記受信装置は、前記第1の光を、前記第2の光を用いてホモダイン検出する信号取得手段と、前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出するピーク位置検出手段と、を備える。
【0009】
本発明の第4の態様によれば、ピーク位置検出方法は、受信装置が、送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出し、前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出する、ことを含む。
【0010】
本発明の第5の態様によれば、プログラムは、受信装置を制御するコンピュータに、送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出して得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出することを実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、連続量量子鍵配送を行うために送信装置と受信装置との同期をとる際、送信装置が信号光の送信に用いる光では、受信装置が同期をとるために十分大きい振幅を得られない場合でも、光の送受信のための構成を別途設ける必要無しに、量子鍵配送のための構成を用いて、同期のための光を送受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る量子鍵配送システムの構成の例を示す図である。
【
図2】実施形態に係る受信装置が検出するピーク位置の例を示す図である。
【
図3】受信装置が単一のフォトダイオードを用いて正確なタイミング検出を行うことができない場合の信号光の強度の例を示す図である。
【
図4】実施形態における信号光と参照光との位相差の第1例を示す図である。
【
図5】実施形態に係る減算部が出力する差信号の振幅の第1例を示す図である。
【
図6】実施形態における信号光と参照光との位相差の第2例を示す図である。
【
図7】実施形態に係る減算部が出力する差信号の振幅の第2例を示す図である。
【
図8】実施形態における信号光と参照光との位相差の第3例を示す図である。
【
図9】実施形態に係る減算部が出力する差信号の振幅の第3例を示す図である。
【
図10】実施形態における信号光と参照光との位相差の第4例を示す図である。
【
図11】実施形態に係る減算部が出力する差信号の振幅の第4例を示す図である。
【
図12】実施形態に係る受信装置が、減算部が出力する差信号のピーク位置を検出する処理手順の例を示す図である。
【
図13】実施形態に係る受信装置の構成のもう1つの例を示す図である。
【
図14】実施形態に係る送信装置の構成のもう1つの例を示す図である。
【
図15】実施形態に係る量子鍵配送システムの構成のもう1つの例を示す図である。
【
図16】実施形態に係るピーク位置検出方法における処理の手順の例を示す図である。
【
図17】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、実施形態に係る量子鍵配送システムの構成の例を示す図である。
図1に示す構成で、量子鍵配送システム1は送信装置100と、受信装置200とを備える。
送信装置100と受信装置200とは、伝送路300を介して通信を行う。伝送路300が、量子鍵配送システム1の一部となっていてもよいし、量子鍵配送システム1の外部の構成となっていてもよい。
【0015】
送信装置100をAliceとも称する。受信装置200をBobとも称する。
ここでの「送信装置」および「受信装置」との名称は、以下の説明における量子鍵配送時の送信側および受信側に基づく名称である。受信装置200から送信装置100へも信号を送信するようにしてもよい。
【0016】
送信装置100は、伝送路300を介した連続量量子鍵配送(Continuous Variable Quantum Key Dirtribution;CV-QKD)により、暗号鍵の基となる乱数のビット列を受信装置200へ送信する。送信装置100および受信装置200は、送受信した乱数のビット列に対して、基底照合、誤り訂正、および、秘匿性増強等の鍵蒸留処理をおこなって、送信装置100と受信装置200とが同じ暗号鍵を取得する。送受信される乱数のビット列を鍵情報とも称する。得られる暗号鍵を最終鍵とも称する。
【0017】
連続量量子鍵配送では、送信装置100は、暗号鍵の基となる乱数のビット列(鍵情報)を載せた信号光と、その信号光の直交位相振幅をホモダイン検出するために用いられる比較的強度の大きい参照光とを、伝送路300を介して受信装置200へ送信する。具体的には、送信装置100は、光パルスによる信号光に対して位相変調を行うことで、暗号鍵の基となる乱数のビット列を信号光に載せる。量子鍵配送では、信号光に載せられた乱数のビット列を検出するために受信側でホモダイン検出を行う。
【0018】
また、送信装置100と受信装置200とは、暗号鍵の基となる乱数のビット列を載せた信号光の送受信に先立って、同期をとる。具体的には、受信装置200が、送信装置100が送信する光の位相に応じて、信号光のサンプリングタイミングの調整を行う。
送信装置100が位相変調にて信号光に載せた情報を、受信装置200が正しく取得するために、同期をとる必要がある。
【0019】
そこで、送信装置100と受信装置200とは、乱数のビット列の送信の際に信号光として用いられる光(乱数のビット列が載せられる光)を用いて、同期をとっておく。以下では、乱数のビット列の送信の際に信号光として用いられる光を、送信装置100と受信装置200との同期をとる処理でも信号光と称する。
同期をとる処理では、送信装置100が光パルスによる信号光を変調せずに送信し、受信装置200は、受信した信号光のピーク位置を検出する。ここでいう信号光のピーク位置は、信号光の強度が極大または極小となるタイミングである。
【0020】
図2は、受信装置200が検出するピーク位置の例を示す図である。
図2のグラフの横軸は時間を表す。縦軸は信号光の強度を表す。
線L11は、受信装置200が受信した信号光の、時間ごとの強度の例を示す。点P11などの点は、信号光を観測して得られた電圧信号をアナログ/デジタル変換部によってサンプリングしたサンプリング点の例を示す。
受信装置200は、点P11のように、光パルスによる信号光の強度が極大となるタイミング(時間)を検出する。
【0021】
ここで、仮に、送信装置が、信号光として量子光より十分強い光を送信可能な場合について考える。この場合、送信装置と受信装置とで同期をとるときは、送信装置が参照光を送信せずに信号光のみを送信することが考えられる。この場合、受信装置は、単一のフォトダイオードを用いて信号光の強度(振幅)を測定し、その強度が最大値を示すタイミングを検出する。
【0022】
しかしながら、信号光として送信される光パルスの振幅が小さい場合、上述の強度測定では、受信装置はパルスの最大値を得づらい。連続量量子鍵配送では、量子力学的な状態変化の検出ができるほど信号光を微弱にする必要があり、信号光は微弱光で送信される。送信装置が可変光アッテネータを備えて信号光の強度を調節できるようにするといったことが行われているが、可変光アッテネータによる可変減衰量には限度がある。可変光アッテネータによって信号光を最も透過するように設定しても、上記のように、受信装置が単一のフォトダイオードを用いて正確なタイミング検出を行うために必要な振幅を得ることができない場合が考えられる。
【0023】
図3は、受信装置が単一のフォトダイオードを用いて正確なタイミング検出を行うことができない場合の信号光の強度の例を示す図である。
図3のグラフの横軸は時間を表す。縦軸は信号光の強度を表す。
線L21は、受信装置が受信した信号光の、時間ごとの強度の例を表す。
図3の例のように、信号光の強度が小さいことで、受信装置が単一のフォトダイオードを用いて信号光のピーク位置を正確に検出することができず、正確なタイミング検出を行えないことが考えられる。
【0024】
そこで、量子鍵配送システム1では、送信装置100と受信装置200とが同期をとる処理でも、受信装置200が、信号光の直交位相振幅をホモダイン検出する。受信装置200は、ホモダイン検出によって受信光の直交位相振幅を示す信号を増幅させることができる。これによって、受信装置200が、信号光のピーク位置をより正確に検出でき、送信装置100と受信装置200との同期をより正確に取れることが期待される。
受信装置200は、ホモダイン検出によって取得したパルスピークの絶対値をピーク位置の判別のための閾値と比較することで、ピーク位置を正しく得られる程度に大きい振幅でピーク位置の選別を行い、ピーク位置を取得する。
【0025】
図1に示す構成で、送信装置100は、レーザ光源101と、ビームスプリッタ(Beam splitter;BS)102と、半波長板(Half-Wave Plate;HWP)103と、強度変調器(Amplitude Modulator;AM)と、可変光アッテネータ(Variable Optical Attenuator;VOA)105と、位相変調器(Phase Modulator;PM)106と、偏光ビームスプリッタ(Polarized Beam Splitter;PBS)107とを備える。
【0026】
送信装置100から受信装置200へ暗号鍵の基となる乱数のビット列を送信する際、レーザ光源101は、連続波(Continuous Wave)によるレーザ光を発生させ出力する。連続波によるレーザ光をCW光とも称する。
ビームスプリッタ102は、レーザ光源101が出力するCW光を2つの経路に分岐する。ビームスプリッタ102が出力するCW光は、参照光および信号光として用いられる。
【0027】
半波長板103は、ビームスプリッタ102が出力するCW光のうち信号光の偏光を90°(度)回転させる。
強度変調器104は、信号光をパルス化する。具体的には、強度変調器104は、半波長板103が出力する偏光回転後のCW光に対して強度変調をおこなって、CW光をパルス光に変換する。
【0028】
可変光アッテネータ105は、強度変調器104が出力する信号光の光強度を調節する。
位相変調器106は、可変光アッテネータ105が出力する信号光に対して位相変調を行う。これにより、位相変調器106は、暗号鍵の基となる乱数のビット列を信号光に載せる。
【0029】
偏光ビームスプリッタ107は、参照光と信号光を同一光軸上に纏める。これにより、偏光ビームスプリッタ107は、互いに90°直交している信号光と参照光とを偏波多重する。
偏光ビームスプリッタ107が参照光と信号光とを同一光軸上に纏めた光は、受信装置200へ送信される。
【0030】
受信装置200は、偏光ビームスプリッタ201と、半波長板202と、位相変調器203と、ビームスプリッタ204と、2つのフォトダイオード205および206と、減算部207と、アナログ/デジタル変換部(Analog/Digital Converter;ADC)208と、信号記憶部209と、絶対値取得部210と、ピーク位置検出部211と、振幅判定部212と、タイミング記憶部213とを備える。
【0031】
偏光ビームスプリッタ201と、半波長板202と、位相変調器203と、ビームスプリッタ204と、2つのフォトダイオード205および206との組み合わせを、受信装置200の光学系とも称する。アナログ/デジタル変換部208と、信号記憶部209と、絶対値取得部210と、ピーク位置検出部211と、振幅判定部212と、タイミング記憶部213との組み合わせを、受信装置200の信号処理系とも称する。
信号処理系またはその一部が、専用のハードウェアを用いて構成されていてもよい。信号処理系またはその一部の機能が、コンピュータを用いて実行されてもよい。
【0032】
偏光ビームスプリッタ201は、伝送路300を介して送信装置100から送信された光を、信号光と参照光とに分離する。
半波長板202は、偏光ビームスプリッタ201が出力する信号光の偏光を90°回転させる。
位相変調器203は、偏光ビームスプリッタ201が出力する参照光に対して、基底選択のための位相変調を行う。
【0033】
ビームスプリッタ204は、半波長板202が出力する信号光と、位相変調器203が出力する参照光とを干渉させる。
フォトダイオード205および206は、それぞれ、ビームスプリッタ204による干渉後の光を検出する。具体的には、フォトダイオード205および206は、それぞれに入射される光を光電変換する。
【0034】
減算部207は、フォトダイオード205による光の検出結果からフォトダイオード206による光の検出結果を減算した差信号を出力する。減算部207が出力する差信号は、電流信号から電圧信号に変換される。例えば、フォトダイオード205および206と、減算部207とを含むバランス検出器が、差信号の増幅および電圧への変換をおこなって、アナログ/デジタル変換部208へ出力する。
【0035】
減算部207が出力する信号の振幅の大きさは、ビームスプリッタ204が出力する信号光の振幅の大きさと参照光の振幅の大きさとを掛け合わせた大きさに比例する。ここで、信号光が、量子力学的な特性を利用するために微弱光で送信されるのに対し、参照光は、比較的強い光で送信される。減算部207が出力する信号では、位相変調器203による位相変調後の微弱な信号光を増幅することができる。
【0036】
ここで、上記のように、送信装置100が受信装置200へ送信する参照光がCW光である場合、参照光をそのまま用いて送信装置100と受信装置200との同期をとることはできない。また、送信装置100から受信装置200への信号光をそのまま用いたのでは、上記のように、信号光の強度を最大にしても、送信装置100と受信装置200との同期をとるために十分な信号強度を得られないことが考えられる。
これに対し、受信装置200が、参照光を用いて信号光をホモダイン検出することで、パルス光で送信される信号光を増幅することができ、送信装置100と受信装置200との同期を比較的高精度にとることができると期待される。
【0037】
ビームスプリッタ204が、信号光と参照光とを干渉させ、フォトダイオード205および206が、それぞれ干渉後の光を検出し、減算部207が、フォトダイオード205および206による光の検出結果の差信号を出力する処理は、ホモダイン検出の例に該当する。ビームスプリッタ204と、フォトダイオード205および206と、減算部207との組み合わせは、信号取得手段の例に該当する。
【0038】
アナログ/デジタル変換部208は、フォトダイオード205による光の検出結果からフォトダイオード206による光の検出結果を減算した差を示す電圧信号をアナログからデジタルに変換する。上記のように、フォトダイオード205による光の検出結果からフォトダイオード206による光の検出結果を減算した差を示す信号は、位相変調器203による位相変調後の信号光を増幅した信号に該当する。
【0039】
信号記憶部209は、アナログ/デジタル変換部208が出力するデジタル信号を記録する。
絶対値取得部210は、信号記憶部209が記憶する信号の振幅の絶対値をとる。絶対値取得部210は、絶対値取得手段の例に該当する。
【0040】
ピーク位置検出部211は、絶対値取得部210が出力する、信号記憶部209が記憶する信号の絶対値をとった信号のピーク位置を検出する。ここでいう信号のピーク位置は、その信号の振幅が極大となるタイミングである。ピーク位置検出部211は、ピーク位置検出手段の例に該当する。
【0041】
振幅判定部212は、ピーク位置検出部211が検出したピーク位置における、絶対値取得部210が絶対値をとった信号の振幅が閾値よりも大きいかを判別する。振幅判定部212は、振幅判定手段の例に該当する。
タイミング記憶部213は、振幅判定部212が、振幅が閾値よりも大きいと判定した場合に、ピーク位置検出部211が検出したピーク位置(信号の振幅が極大となるタイミング)を記憶する。タイミング記憶部213は、タイミング記憶手段の例に該当する。
【0042】
送信装置100と受信装置200との同期をとる処理でも、レーザ光源101は、CW光を発生させ出力する。
ビームスプリッタ102は、レーザ光源101が出力するCW光を2つの経路に分岐する。上記のように、暗号鍵の基となる乱数のビット列の送受信の場合と同様、送信装置100と受信装置200との同期をとる処理でも、ビームスプリッタ102が出力するCW光のうち、強度が小さい方の光、または、その光に対して位相回転およびパルス化などの処理が行われた光を信号光と称する。送信装置100と受信装置200との同期をとる処理でも、ビームスプリッタ102が出力するCW光のうち、強度が大きい方の光を参照光と称する。ここでの信号光を第1の光とも称し、参照光を第2の光とも称する。
【0043】
半波長板103は、ビームスプリッタ102が出力するCW光のうち信号光の偏光を90°回転させる。これにより、送信装置100は、信号光の偏光と参照光の偏光とを直交させて送信する。
強度変調器104は、信号光をパルス化する。上述したように、強度変調器104は、半波長板103が出力する偏光回転後のCW光に対して強度変調をおこなって、CW光をパルス光に変換する。
また、送信装置100と受信装置200との同期をとる処理では、可変光アッテネータ105は、半波長板103が出力する信号光を全透過させる。これにより、送信装置100は、受信装置200へ送信する信号光を可能な限り大きな光強度にする。
【0044】
また、送信装置100と受信装置200との同期をとる処理では、位相変調器106は、可変光アッテネータ105が出力する信号光に対する位相変調を行わず、そのまま可変光アッテネータ105へ出力する。
偏光ビームスプリッタ107は、参照光と信号光を同一光軸上に纏める。これにより、偏光ビームスプリッタ107は、互いに90°直交している信号光と参照光とを偏波多重する。
【0045】
さらに、信号光と参照光とが、それぞれの経路差によって時間多重されて受信装置へと送信されてもよい。すなわち、信号光の経路長と参照光の経路長との差によって、送信装置100が、信号光と参照光とを別々のタイミングで送信するようになっていてもよい。
【0046】
受信装置200では、偏光ビームスプリッタ201は、伝送路300を介して送信装置100から送信された光を、信号光と参照光とに分離する。
半波長板202は、偏光ビームスプリッタ201が出力する参照光の偏光を90°回転させて、ビームスプリッタ204に入射する。
【0047】
また、送信装置100と受信装置200との同期をとる処理では、位相変調器203は、偏光ビームスプリッタ201が出力した参照光に対する変調を行わずに、そのまま、ビームスプリッタ204に入射させる。
ビームスプリッタ204は、半波長板202が出力する信号光と、位相変調器203が出力する参照光とを干渉させる。
【0048】
フォトダイオード205および206は、それぞれ、ビームスプリッタ204による干渉後の光を検出する。具体的には、フォトダイオード205および206は、それぞれに入射される光を光電変換する。
【0049】
減算部207は、フォトダイオード205による光の検出結果からフォトダイオード206による光の検出結果を減算した差信号を出力する。減算部207が出力する差信号は、電流信号から電圧信号に変換される。
上記のように、ビームスプリッタ204が、信号光と参照光とを干渉させ、フォトダイオード205および206が、それぞれ干渉後の光を検出し、減算部207が、フォトダイオード205および206による光の検出結果の差信号を出力する処理は、ホモダイン検出の例に該当する。
【0050】
受信装置200がホモダイン検出を行った場合に得られる差信号の振幅の大きさは、参照光の強度と信号光の強度とによって決まる。上述したように、この差信号の振幅の大きさは、信号光の振幅の大きさと参照光の振幅の大きさとを掛け合わせた大きさに比例する。参照光の強度を大きくするほど、差信号の振幅が大きくなり、微弱光の直交位相振幅を読み出し易くなる。
【0051】
一方、振動および温度変化など、量子鍵配送システム1が受ける外乱によって、信号光と参照光とに位相揺らぎが生じる。それによって、減算部207が出力する差信号の振幅が小さくなってしまうことが考えられる。
【0052】
図4は、信号光と参照光との位相差の第1例を示す図である。
図4のグラフの横軸は実軸を表す。縦軸は虚軸を表す。
図4のグラフは、信号光と参照光との位相差を、実軸の正の方向に対する回転角度で表しており、点P211は、位相差が0°の場合を表している。
【0053】
図5は、減算部207が出力する差信号の振幅の第1例を示す図である。
図5は、
図4の例のように信号光と参照光との位相差が0°に近い場合の差信号の振幅の例を示している。
図5のグラフの横軸は時間を表す。縦軸は差信号の振幅を表す。
線L211は、減算部207が出力する差信号の、時間毎の振幅の例を表す。線L212は、差信号の振幅に対する閾値XmVを表す。
【0054】
図4および
図5の例のように、信号光と参照光との位相差が0°に近い場合、差信号として縦軸の正側に大きい振幅のパルスが得られる。差信号の振幅が大きいことで、振幅が極大となるピーク付近での振幅の変化が比較的大きく、受信装置200が比較的正確に差信号のピーク位置を検出できると期待される。
【0055】
図6は、信号光と参照光との位相差の第2例を示す図である。
図6のグラフの横軸は実軸を表す。縦軸は虚軸を表す。
図6のグラフは、信号光と参照光との位相差を、実軸の正の方向に対する回転角度で表しており、点P221は、位相差が180°の場合を表している。
【0056】
図7は、減算部207が出力する差信号の振幅の第2例を示す図である。
図7は、
図6の例のように信号光と参照光との位相差が180°に近い場合の差信号の振幅の例を示している。
図7のグラフの横軸は時間を表す。縦軸は差信号の振幅を表す。
線L221は、減算部207が出力する差信号の、時間毎の振幅の例を表す。線L222は、差信号の振幅に対する閾値-XmVを表す。
【0057】
図6および
図7の例のように、信号光と参照光との位相差が180°に近い場合、差信号として縦軸の負側に大きい振幅のパルスが得られる。差信号の振幅が大きいことで、振幅が極小となるピーク付近での振幅の変化が比較的大きく、受信装置200が比較的正確に差信号のピーク位置を検出できると期待される。
【0058】
図8は、信号光と参照光との位相差の第3例を示す図である。
図8のグラフの横軸は実軸を表す。縦軸は虚軸を表す。
図8のグラフは、信号光と参照光との位相差を、実軸の正の方向に対する回転角度で表しており、点P231は、位相差が90°の場合を表している。
【0059】
図9は、減算部207が出力する差信号の振幅の第3例を示す図である。
図9は、
図8の例のように信号光と参照光との位相差が90°に近い場合の差信号の振幅の例を示している。特に、
図9は、信号光と参照光との位相差が90°よりも少しだけ大きい場合の例を示している。
図9のグラフの横軸は時間を表す。縦軸は差信号の振幅を表す。
線L231は、減算部207が出力する差信号の、時間毎の振幅の例を表す。線L232は、差信号の振幅に対する閾値-XmVを表す。
【0060】
図8および
図9の例のように、信号光と参照光との位相差が90°に近い場合、差信号として小さい振幅のパルスが得られる。例えば、信号光と参照光との位相差が90°よりも少しだけ大きい、差信号として縦軸の負側に小さい振幅のパルスが得られる。差信号の振幅が小さいことで、振幅が極大または極小となるピーク付近での振幅の変化が比較的小さく、受信装置200がピーク位置を正確に検出できないことが考えられる。
【0061】
図10は、信号光と参照光との位相差の第4例を示す図である。
図10のグラフの横軸は実軸を表す。縦軸は虚軸を表す。
図10のグラフは、信号光と参照光との位相差を、実軸の正の方向に対する回転角度で表しており、点P241は、位相差が270°の場合を表している。
【0062】
図11は、減算部207が出力する差信号の振幅の第4例を示す図である。
図11は、
図10の例のように信号光と参照光との位相差が270°に近い場合の差信号の振幅の例を示している。特に、
図11は、信号光と参照光との位相差が270°よりも少しだけ大きい場合の例を示している。
図11のグラフの横軸は時間を表す。縦軸は差信号の振幅を表す。
線L241は、減算部207が出力する差信号の、時間毎の振幅の例を表す。線L242は、差信号の振幅に対する閾値XmVを表す。
【0063】
図10および
図11の例のように、信号光と参照光との位相差が270°に近い場合、差信号として小さい振幅のパルスが得られる。例えば、信号光と参照光との位相差が270°よりも少しだけ大きい、差信号として縦軸の正側に小さい振幅のパルスが得られる。差信号の振幅が小さいことで、振幅が極大または極小となるピーク付近での振幅の変化が比較的小さく、受信装置200がピーク位置を正確に検出できないことが考えられる。
このように、減算部207が出力する差信号の振幅は、光強度によって決まる振幅の範囲内で正負に揺らぐ。
【0064】
図12は、受信装置200が、減算部207が出力する差信号のピーク位置を検出する処理手順の例を示す図である。
受信装置200の信号処理系では、アナログ/デジタル変換部208が、減算部207が出力する差信号をアナログからデジタルに変換(ステップS11)し、信号記憶部209が、デジタルに変換された信号を記憶する(ステップS12)。
【0065】
絶対値取得部210が、信号記憶部209が記憶している信号の振幅の絶対値をとった後(ステップS13)、ピーク位置検出部211が、絶対値取得部210が絶対値をとった信号のピーク位置(振幅が極大となる点)を検出する(ステップS14)。
振幅判定部212は、ピーク位置検出部211が検出したピーク位置における信号の振幅と閾値とを比較する(ステップS15)。
【0066】
閾値よりも大きな振幅が得られたと振幅判定部212が判定した場合(ステップS15:YES)、タイミング記憶部213が、ピーク位置検出部211が検出したピーク位置を記憶する(ステップS16)。
ステップS16の後、受信装置200は、
図12の処理を終了する。
【0067】
一方、ステップS15で、振幅の大きさが閾値以下であると振幅判定部212が判定した場合(ステップS15:NO)、処理がステップS11へ戻る。この場合、受信装置200は、閾値よりも大きい振幅を得られるまで、ステップS11からS15までの処理を繰り返す。
上述したように、位相揺らぎによって差信号のパルスピークが上下に揺らぐのに対し、受信装置200が、ステップS11からS15までの処理を繰り返すことで、確実にピーク位置を得ることができると期待される。
【0068】
以上のように、ビームスプリッタ204と、フォトダイオード205および206と、減算部207との組み合わせによる信号取得手段は、送信装置100から送信される信号光(第1の光)を、送信装置100から送信され信号光よりも光強度が大きい参照光(第2の光)を用いてホモダイン検出する。ピーク位置検出部211は、ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出する。
【0069】
受信装置200によれば、連続量量子鍵配送を行うために送信装置100と受信装置200との同期をとる際、参照光をそのまま用いることはできず、かつ、送信装置100が信号光の送信に用いる光では、受信装置200が同期をとるために十分大きい振幅を得られない場合でも、光の送受信のための構成を別途設ける必要無しに、量子鍵配送のための構成を用いて、同期のための光を送受信することができる。
【0070】
特に、ビームスプリッタ204と、フォトダイオード205および206と、減算部207との組み合わせによる信号取得手段が、ホモダイン検出にて、光パワーの強い参照光を信号光と干渉させることにより、微弱光の光増幅効果を得ることができ、信号光の強度が小さい場合でも、比較的振幅の大きい信号を検出することができる。ピーク位置検出部211は、ホモダイン検出で得られた信号のピーク位置を検出することで、比較的振幅の大きい信号のピーク位置を検出することができる。この点で、ピーク位置検出部211が、比較的正確にピーク位置を検出できると期待される。
【0071】
また、絶対値取得部210は、ホモダイン検出で得られた信号の振幅の絶対値をとる。ピーク位置検出部211は、ホモダイン検出で得られた信号の振幅の絶対値をとった信号の振幅が極大となるタイミングをピーク位置として検出する。
ここで、振動および温度変化などの外乱によって、受信装置200が受信する信号光の位相と参照光の位相とに揺らぎが生じ、ホモダイン検出で得られる信号の振幅に揺らぎが生じることが考えられる。特に、ホモダイン検出で得られる信号の振幅が正側および負側に揺らぐことが考えられる。
これに対し、絶対値取得部210が信号の振幅の絶対値をとることで、ピーク位置検出部211は、振幅が極大となるタイミングを検出すればよく、振幅が極小となるタイミングを検出する必要は無い。受信装置200によれば、この点で、ピーク位置検出部211がピーク位置を検出する処理の負荷を比較的軽くすることができる。
【0072】
また、振幅判定部212は、ピーク位置検出部211が検出したピーク位置における振幅の大きさが、所定の閾値よりも大きいか否かを判定する。タイミング記憶部213は、ピーク位置における振幅の大きさが閾値よりも大きいと振幅判定部212が判定した場合、そのピーク位置を記憶する。ピーク位置における振幅の大きさが閾値以下であると振幅判定部212が判定した場合、信号取得手段(ビームスプリッタ204と、フォトダイオード205および206と、減算部207との組み合わせ)による信号光のホモダイン検出と、ピーク位置検出部211によるピーク位置の検出と、振幅判定部212による、ピーク位置における振幅の大きさが閾値よりも大きいか否かの判定とを繰り返す。
【0073】
受信装置200によれば、ホモダイン検出で得られる信号の振幅の揺らぎに対し、十分大きい振幅の信号を得られているか否かを判定し、十分大きい振幅の信号を得られている場合にピーク位置を検出することができる。受信装置200によれば、この点で、比較的正確にピーク位置を検出することができる。
また、受信装置200によれば、十分大きい振幅の信号を得られていない場合は、十分大きい振幅の信号を得られたのちにピーク位置を検出することができ、この点で、比較的正確にピーク位置を検出することができる。
【0074】
また、半波長板103は、送信装置100と受信装置200との同期をとるための光パルスによる第1の光(信号光)を、受信装置200が第1の光をホモダイン検出するための第2の光(参照光)に対して90度偏光させる。偏光ビームスプリッタ107は、互いに90度偏光している第1の光と第2の光とを同一光軸上に纏める。送信装置100は、第1の光と第2の光とが同一光軸上に纏められた光を受信装置200へ送信する。
送信装置100によれば、送信装置100が送信した光を受信した受信装置200は、第2の光を用いて第1の光をホモダイン検出することができる。
【0075】
図13は、実施形態に係る受信装置の構成のもう1つの例を示す図である。
図13に示す構成で、受信装置610は、信号取得部611と、ピーク位置検出部612とを備える。
かかる構成で、信号取得部611は、送信装置から送信される第1の光を、送信装置から送信され第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出する。ピーク位置検出部612は、ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出する。
信号取得部611は、信号取得手段の例に該当する。ピーク位置検出部612は、ピーク位置検出手段の例に該当する。
【0076】
受信装置610によれば、連続量量子鍵配送を行うために送信装置と受信装置610との同期をとる際、送信装置が信号光の送信に用いる第1の光では、受信装置610が同期をとるために十分大きい振幅を得られず、かつ、参照光として用いられる第2の光をそのまま同期に用いることはできない場合でも、光の送受信のための構成を別途設ける必要無しに、量子鍵配送のための構成を用いて、同期のための光を送受信することができる。
【0077】
特に、信号取得部611が、ホモダイン検出にて、光パワーの強い参照光を信号光と干渉させることにより、微弱光の光増幅効果を得ることができ、信号光の強度が小さい場合でも、比較的振幅の大きい信号を検出することができる。ピーク位置検出部612は、ホモダイン検出で得られた信号のピーク位置を検出することで、比較的振幅の大きい信号のピーク位置を検出することができる。この点で、ピーク位置検出部612が、比較的正確にピーク位置を検出できると期待される。
【0078】
図14は、実施形態に係る送信装置の構成のもう1つの例を示す図である。
図14に示す構成で、送信装置620は、半波長板621と、偏光ビームスプリッタ622とを備える。
かかる構成で、半波長板621は、送信装置620と受信装置との同期をとるための光パルスによる第1の光を、受信装置が第1の光をホモダイン検出するための第2の光に対して90度偏光させる。偏光ビームスプリッタ622は、互いに90度偏光している第1の光と第2の光とを同一光軸上に纏める。送信装置620は、第1の光と第2の光とが同一光軸上に纏められた光を受信装置へ送信する。
送信装置620によれば、送信装置620が送信した光を受信した受信装置は、第2の光を用いて第1の光をホモダイン検出することができる。特に、受信装置は、第1の光、または、第2の光の何れか一方のみを用いて送信装置620との同期をとることができない場合でも、第2の光を用いて第1の光をホモダイン検出することで、送信装置620との同期をとることができると期待される。
【0079】
図15は、実施形態に係る量子鍵配送システムの構成のもう1つの例を示す図である。
図15に示す構成で、量子鍵配送システム630は、送信装置631と、受信装置632とを備える。受信装置632は、信号取得部633と、ピーク位置検出部634とを備える。
かかる構成で、信号取得部633は、送信装置から送信される第1の光を、送信装置から送信され第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出する。ピーク位置検出部634は、ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出する。
信号取得部633は、信号取得手段の例に該当する。ピーク位置検出部634は、ピーク位置検出手段の例に該当する。
【0080】
量子鍵配送システム630によれば、連続量量子鍵配送を行うために送信装置631と受信装置632との同期をとる際、送信装置631が信号光の送信に用いる第1の光では、受信装置632が同期をとるために十分大きい振幅を得られず、かつ、参照光として用いられる第2の光をそのまま同期に用いることはできない場合でも、光の送受信のための構成を別途設ける必要無しに、量子鍵配送のための構成を用いて、同期のための光を送受信することができる。
【0081】
特に、信号取得部633が、ホモダイン検出にて、光パワーの強い参照光を信号光と干渉させることにより、微弱光の光増幅効果を得ることができ、信号光の強度が小さい場合でも、比較的振幅の大きい信号を検出することができる。ピーク位置検出部634は、ホモダイン検出で得られた信号のピーク位置を検出することで、比較的振幅の大きい信号のピーク位置を検出することができる。この点で、ピーク位置検出部634が、比較的正確にピーク位置を検出できると期待される。
【0082】
図16は、実施形態に係るピーク位置検出方法における処理の手順の例を示す図である。
図16に示すピーク位置検出方法は、ホモダイン検出を行うこと(ステップS611)と、ピーク位置を検出すること(ステップS612)とを含む。
ホモダイン検出を行うこと(ステップS611)では、受信装置が、送信装置から送信される第1の光を、送信装置から送信され第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出する。
ピーク位置を検出すること(ステップS612)では、受信装置が、ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出する。
【0083】
図16に示すピーク位置検出方法によれば、連続量量子鍵配送を行うために送信装置と受信装置との同期をとる際、送信装置が信号光の送信に用いる第1の光では、受信装置が同期をとるために十分大きい振幅を得られず、かつ、参照光として用いられる第2の光をそのまま同期に用いることはできない場合でも、光の送受信のための構成を別途設ける必要無しに、量子鍵配送のための構成を用いて、同期のための光を送受信することができる。
【0084】
特に、
図16に示すピーク位置検出方法によれば、ホモダイン検出にて、光パワーの強い参照光を信号光と干渉させることにより、微弱光の光増幅効果を得ることができ、信号光の強度が小さい場合でも、比較的振幅の大きい信号を検出することができる。ピーク位置を検出すること(ステップS612)では、ホモダイン検出で得られた信号のピーク位置を検出することで、比較的振幅の大きい信号のピーク位置を検出することができる。
図16に示すピーク位置検出方法によれば、この点で、比較的正確にピーク位置を検出できると期待される。
【0085】
図17は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
図17に示す構成で、コンピュータ700は、CPU710と、主記憶装置720と、補助記憶装置730と、インタフェース740と、不揮発性記録媒体750とを備える。
【0086】
上記の受信装置200の信号処理系、受信装置610のピーク位置検出部612、および、受信装置632のピーク位置検出部634のうち何れか1つ以上またはその一部が、コンピュータ700に実装されてもよい。その場合、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU710は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域を主記憶装置720に確保する。各装置と他の装置との通信は、インタフェース740が通信機能を有し、CPU710の制御に従って通信を行うことで実行される。また、インタフェース740は、不揮発性記録媒体750用のポートを有し、不揮発性記録媒体750からの情報の読出、および、不揮発性記録媒体750への情報の書込を行う。
【0087】
受信装置200の信号処理系がコンピュータ700に実装される場合、アナログ/デジタル変換部208、絶対値取得部210、ピーク位置検出部211、および、振幅判定部212の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
また、CPU710は、プログラムに従って、信号記憶部209およびタイミング記憶部213のための記憶領域を主記憶装置720に確保する。
【0088】
受信装置610のピーク位置検出部612がコンピュータ700に実装される場合、ピーク位置検出部612の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
また、CPU710は、プログラムに従って、ピーク位置検出部612が処理を行うための記憶領域を主記憶装置720に確保する。
【0089】
受信装置632のピーク位置検出部634がコンピュータ700に実装される場合、ピーク位置検出部634の動作は、プログラムの形式で補助記憶装置730に記憶されている。CPU710は、プログラムを補助記憶装置730から読み出して主記憶装置720に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。
また、CPU710は、プログラムに従って、ピーク位置検出部634が処理を行うための記憶領域を主記憶装置720に確保する。
【0090】
上述したプログラムのうち何れか1つ以上が不揮発性記録媒体750に記録されていてもよい。この場合、インタフェース740が不揮発性記録媒体750からプログラムを読み出すようにしてもよい。そして、CPU710が、インタフェース740が読み出したプログラムを直接実行するか、あるいは、主記憶装置720または補助記憶装置730に一旦保存して実行するようにしてもよい。
【0091】
なお、受信装置200の信号処理系、受信装置610のピーク位置検出部612、および、受信装置632のピーク位置検出部634が行う処理の全部または一部を実行するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0092】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0093】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0094】
(付記1)
送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出する信号取得手段と、
前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出するピーク位置検出手段と、
を備える受信装置。
【0095】
(付記2)
前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅の絶対値をとる絶対値取得手段をさらに備え、
前記ピーク位置検出手段は、前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅の絶対値をとった信号の振幅が極大となるタイミングを前記ピーク位置として検出する、
付記1に記載の受信装置。
【0096】
(付記3)
前記ピーク位置検出手段が検出したピーク位置における振幅の大きさが、所定の閾値よりも大きいか否かを判定する振幅判定手段と、
前記ピーク位置における振幅の大きさが前記閾値よりも大きいと前記振幅判定手段が判定した場合、そのピーク位置を記憶するタイミング記憶手段と、
を備え、
前記ピーク位置における振幅の大きさが前記閾値以下であると前記振幅判定手段が判定した場合、前記信号取得手段による前記第1の光のホモダイン検出と、前記ピーク位置検出手段による前記ピーク位置の検出と、前記振幅判定手段による、前記ピーク位置における振幅の大きさが前記閾値よりも大きいか否かの判定とを繰り返す、
付記1または付記2に記載の受信装置。
【0097】
(付記4)
送信装置と受信装置との同期をとるための光パルスによる第1の光を、前記受信装置が前記第1の光をホモダイン検出するための第2の光に対して90度偏光させる半波長板と、
互いに90度偏光している前記第1の光と前記第2の光とを同一光軸上に纏める偏光ビームスプリッタと、
を備え、
前記第1の光と前記第2の光とが同一光軸上に纏められた光を前記受信装置へ送信する、送信装置。
【0098】
(付記5)
送信装置と受信装置とを備え、
前記送信装置は、前記送信装置と前記受信装置との同期をとるための第1の光と、前記前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光とを送信し、
前記受信装置は、
前記第1の光を、前記第2の光を用いてホモダイン検出する信号取得手段と、
前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出するピーク位置検出手段と、
を備える
量子鍵配送システム。
【0099】
(付記6)
受信装置が、
送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出し、
前記ホモダイン検出で得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出する、
ことを含むピーク位置検出方法。
【0100】
(付記7)
受信装置を制御するコンピュータに、
送信装置から送信される第1の光を、前記送信装置から送信され前記第1の光よりも光強度が大きい第2の光を用いてホモダイン検出して得られた信号の振幅が極大または極小となるタイミングであるピーク位置を検出すること
を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0101】
1、630 量子鍵配送システム
100、620、631 送信装置
101 レーザ光源
102、204 ビームスプリッタ
103、202、621 半波長板
105 可変光アッテネータ
106、203 位相変調器
107、201、622 偏光ビームスプリッタ
200、610、632 受信装置
205、206 フォトダイオード
207 減算部
208 アナログ/デジタル変換部
209 信号記憶部
210 絶対値取得部
211、612、634 ピーク位置検出部
212 振幅判定部
213 タイミング記憶部
611、633 信号取得部