(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109233
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ホットランナーの温度測定構造
(51)【国際特許分類】
B29C 45/28 20060101AFI20240806BHJP
B29C 45/73 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B29C45/28
B29C45/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013932
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(72)【発明者】
【氏名】植村 俊基
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 鷹彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 公亮
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AG28
4F202AK09
4F202AP05
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK03
4F202CK07
4F202CN01
(57)【要約】
【課題】樹脂流路内の溶融樹脂の温度を直接的に測定することができるホットランナーの温度測定構造を提供する。
【解決手段】ランナー部と、前記ランナー部を加熱するヒータと、を備え、前記ランナー部は、溶融樹脂を金型内のキャビティに導く流路と、前記流路から前記キャビティに前記溶融樹脂を注入するゲートと、前記流路内で前記ゲートに対して進退することで前記ゲートを開閉するバルブピンと、を備え、前記バルブピンは、前記バルブピンの外周面に前記バルブピンの軸に沿って形成された溝と、前記溝内に配置された温度センサと、を備える、ホットランナーの温度測定構造。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランナー部と、
前記ランナー部を加熱するヒータと、を備え、
前記ランナー部は、
溶融樹脂を金型内のキャビティに導く流路と、
前記流路から前記キャビティに前記溶融樹脂を注入するゲートと、
前記流路内で前記ゲートに対して進退することで前記ゲートを開閉するバルブピンと、を備え、
前記バルブピンは、
前記バルブピンの外周面に前記バルブピンの軸に沿って形成された溝と、
前記溝内に配置された温度センサと、を備える、
ホットランナーの温度測定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットランナーの温度測定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形の金型には、射出成形機から供給された溶融樹脂をキャビティまで導く樹脂流路が設けられている。特許文献1は、ホットランナー方式の射出成形金型を開示する。ホットランナーとは、上記した樹脂流路を加熱することで、樹脂流路内の樹脂を溶融状態に保つ装置である。ホットランナーでは、樹脂の溶融状態を保つために、樹脂流路の温度管理が行われている。
【0003】
特許文献1には、固定型と移動型よりなる射出成形金型が記載されている。固定型は、ホットランナーブロックと、ゲートブッシュと、バルブピンとを備える。ホットランナーブロックは、内部に第一の樹脂通路が設けられている。ホットランナーブロックには、ゲートブッシュが設置されている。ゲートブッシュの内部には、ホットランナーブロックに設けられた第一の樹脂通路に連通される第二の樹脂通路が設けられている。第二の樹脂通路は、ゲートブッシュの先端部に形成されたゲートにつながっている。バルブピンは、第二の樹脂通路内に挿通されている。バルブピンは、シリンダーによって進退することで、ゲートを開閉する。ゲートブッシュの外壁には、バンドヒータが配置されている。ゲートブッシュのゲート付近の外壁には凹溝穴が形成され、凹溝穴内に熱電対が埋め込まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂流路内の溶融樹脂は適正な温度となるように制御されることが望まれる。樹脂流路内の溶融樹脂の温度が低すぎると、溶融樹脂の粘度が高くなり、溶融樹脂の流れが悪くなる。樹脂流路内の溶融樹脂の温度が高すぎると、樹脂の成分が熱によって気化し、溶融樹脂にガスが混入しやすい。溶融樹脂が適正温度から外れると、樹脂部品の品質に影響をおよぼす。
【0006】
特許文献1の技術では、ゲートブッシュの外壁に埋め込まれた熱電対により測定された温度に基づいてバンドヒータを制御することによって、ゲートブッシュの温度管理が行われている。この技術は、ゲートブッシュの温度を測定しているだけで、樹脂流路内の溶融樹脂の温度を測定するものではない。ゲートブッシュの温度は熱伝導を考慮すると、樹脂流路内の溶融樹脂の温度と乖離する。この技術は、樹脂流路内の溶融樹脂の温度を測定することができないため、溶融樹脂が適正温度になるように制御することが難しい。
【0007】
本発明の目的の一つは、樹脂流路内の溶融樹脂の温度を直接的に測定することができるホットランナーの温度測定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の一態様に係るホットランナーの温度測定構造は、
ランナー部と、
前記ランナー部を加熱するヒータと、を備え、
前記ランナー部は、
溶融樹脂を金型内のキャビティに導く流路と、
前記流路から前記キャビティに前記溶融樹脂を注入するゲートと、
前記流路内で前記ゲートに対して進退することで前記ゲートを開閉するバルブピンと、を備え、
前記バルブピンは、
前記バルブピンの外周面に前記バルブピンの軸に沿って形成された溝と、
前記溝内に配置された温度センサと、を備える。
【0009】
(2)上記(1)に記載のホットランナーの温度測定構造において、
前記バルブピンは、
前記ゲートから近い位置に配置される先端部と、
前記ゲートから遠い位置に配置される基部と、
前記先端部と前記基部とを着脱自在に結合する連結部と、を備え、
前記先端部は、前記連結部によって前記基部に対して交換可能な第一先端部と第二先端部とを備えてもよい。
前記第一先端部は、前記溝と前記温度センサとを有し、
前記第二先端部は、前記溝と前記温度センサとを有さない。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)のホットランナーの温度測定構造は、温度センサによって、ランナー部における流路内の溶融樹脂の温度を直接的に測定することができる。
【0011】
上記(2)のホットランナーの温度測定構造によれば、第一先端部と第二先端部とを交換することで、後述するように、1つのバルブピンによって予備試験と成形とを行うことができる。第一先端部は、予備試験を行う際に使用する。第二先端部は、成形を行う際に使用する。また、先端部が基部に対して着脱自在に構成されていることで、第二流路内に基部が配置された状態で先端部の交換を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態に係るホットランナーの温度測定構造を備える金型の概略断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るホットランナーの温度測定構造に備わるランナー部を拡大して示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るホットランナーの温度測定構造に備わるバルブピンの概略平面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示すIV-IV線で切断した概略断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示すV-V線で切断した概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示すVI部を拡大して示す概略側面図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係るホットランナーの温度測定構造に備わるランナー部のゲート近傍を拡大して示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るホットランナーの温度測定構造に備わるランナー部を拡大して示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係るホットランナーの温度測定構造の具体例を、図面を参照して説明する。各図において、同一又は相当する部分には同じ符号を付している。
【0014】
[実施形態]
実施形態に係るホットランナーの温度測定構造の詳細な説明に先立って、
図1を参照して、ホットランナー1を備える金型100の一例を説明する。
【0015】
(金型)
金型100は、熱可塑性樹脂の射出成形に用いられる。金型100は、第一金型101と第二金型102とを備える。第一金型101は固定型である。第二金型102は移動型である。第二金型102は第一金型101に対して開閉する方向に移動可能である。
図1は、第二金型102が開いた状態を示している。第二金型102が閉じて第一金型101と結合されると、第二金型102と第一金型101との間にキャビティ110が形成される。樹脂部品を成形する際、第二金型102が閉じられる。キャビティ110に溶融樹脂10を注入して樹脂部品が成形された後、第二金型102が開いて第一金型101から離れると、キャビティ110から樹脂部品が取り出される。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレンである。樹脂部品は、例えば、バンパー及びラジエータグリルなどの自動車部品である。
【0016】
(ホットランナー)
ホットランナー1は第一金型101に組み込まれる。ホットランナー1は、ホットランナーブロック2とランナー部3とヒータ4とを備える。
【0017】
(ホットランナーブロック)
ホットランナーブロック2は、射出成形機200から溶融樹脂10が供給される。ホットランナーブロック2は第一流路21を備える。第一流路21はホットランナーブロック2内に設けられている。第一流路21は、射出成形機200から供給された溶融樹脂10を、後述するランナー部3に導く。第一流路21内の溶融樹脂10は、後述する第二流路31に向かって流れる。ホットランナーブロック2には、図示しないヒータが設けられている。このヒータによってホットランナーブロック2が加熱されることで、第一流路21内の溶融樹脂10が溶融状態に保たれる。
【0018】
射出成形機200は、熱可塑性樹脂を加熱して溶融させ、ノズル201から溶融樹脂10を射出する。ホットランナーブロック2は、射出成形機200のノズル201が接続されるスプルー部20を有する。スプルー部20は第一流路21につながっている。ノズル201から射出された溶融樹脂10は、スプルー部20から第一流路21を通って、ランナー部3へ送られる。本実施形態では、スプルー部20は、ホットランナーブロック2の第一面2aから射出成形機200に向って突出するように設けられている。
【0019】
(ランナー部)
ランナー部3は、第二流路31とゲート32とバルブピン5とを備える。ランナー部3は、ホットランナーブロック2に接続されている。本実施形態では、ホットランナーブロック2の第二面2bからランナー部3が突出している。第二面2bは、第一金型101と向き合う面である。第二流路31は、ノズル30内に形成されている。ノズル30は筒状の形状を有する。ゲート32はノズル30の先端に設けられている。バルブピン5はノズル30内に形成された第二流路31内に配置されている。バルブピン5の詳細な構成については後述する。
【0020】
第二流路31は、溶融樹脂10を金型100内のキャビティ110に導く。第二流路31が請求項1における「流路」に相当する。第二流路31内の溶融樹脂10は、ゲート32に向かって流れる。第二流路31は、ノズル30の内周面とバルブピン5の外周面との間の空間である。ゲート32は、第二流路31からキャビティ110に溶融樹脂10を注入する開口である。第二流路31は、第一流路21に連通している。第一流路21内の溶融樹脂10は、第二流路31を通って、ゲート32へ送られる。つまり、射出成形機200のノズル201から射出された溶融樹脂10は、第一流路21及び第二流路31を経由して、ゲート32まで送られる。第二流路31におけるゲート32に近い領域は、ゲート32に向かって先細りする形状を有している。
【0021】
本実施形態では、ノズル30の形状が円筒状である。ノズル30の断面及びゲート32の断面のそれぞれの形状は円形状である。ノズル30の断面及びゲート32の断面とは、ノズル30の中心軸と直交する断面のことである。つまり、第二流路31の断面及びゲート32の断面とは、溶融樹脂10が流れる方向と直交する断面のことである。ノズル30は、鋼などの金属で構成されている。ノズル30の材質は、例えば、炭素鋼、合金鋼、プリハードン鋼又はステンレス鋼である。ノズル30の材質が炭素鋼などの鋼材である場合、耐摩耗性を高める表面処理が施されていてもよい。耐摩耗性を高める表面処理は、例えば窒化処理である。
【0022】
ランナー部3は1つでもよいし、2つ以上でもよい。本実施形態におけるホットランナー1は、複数のランナー部3を備える。複数のランナー部3がホットランナーブロック2に接続されている場合、ホットランナーブロック2の第一流路21が複数に分岐しており、複数のランナー部3のそれぞれの第二流路31が第一流路21に連通している。
【0023】
(ヒータ)
ヒータ4は、ランナー部3を加熱する。ヒータ4によってノズル30が加熱されることで、第二流路31内の溶融樹脂10が溶融状態に保たれる。ヒータ4は、ノズル30の外周面に配置されている。ヒータ4は、例えばバンドヒータである。本実施形態では、バンドヒータがノズル30の外周面に巻き付けられている。
【0024】
(成形用温度センサ)
本実施形態におけるホットランナー1は、
図2に示すように、ランナー部3の温度を測定する成形用温度センサ45を備える。成形用温度センサ45によって、ノズル30の温度が測定される。成形用温度センサ45は、ノズル30の外周面に配置されている。本実施形態において、2つの成形用温度センサ45のうち、1つの成形用温度センサ45は、ノズル30におけるゲート32の近傍に設けられている。ただし、成形用温度センサ45は、ノズル30の外周面に面して設けられており、第二流路31に面するようには設けられていない。つまり、成形用温度センサ45は、ノズル30を貫通するように設けられていない。成形用温度センサ45は、例えば熱電対である。
【0025】
(バルブピン)
バルブピン5は、第二流路31内でゲート32に対して進退することでゲート32を開閉する。バルブピン5は、ノズル30の軸に沿って進退する。バルブピン5は棒状の形状を有する。バルブピン5は、
図2に示すように、先端部51と基部50とを有する。先端部51は、第二流路31におけるゲート32から近い位置に配置される。先端部51は、ゲート32に挿入される嵌合部59を有する。基部50は、第二流路31におけるゲート32から遠い位置に配置される。基部50は、第二流路31の入口に近い端部に配置される。第二流路31の入口は、第一流路21と第二流路31との境界に位置する。つまり、第二流路31の入口は、第二面2bと接するノズル30の端面に位置する。基部50は、後述する駆動装置8に支持される。
図2は、バルブピン5がゲート32を閉じた状態を示している。
図2では、第一金型101、第二金型102及び射出成形機200を省略している。バルブピン5が前進すると、嵌合部59が第二流路31内からゲート32に進出する。嵌合部59がゲート32に挿入されることで、ゲート32が閉じられる。嵌合部59がゲート32に挿入されたとき、嵌合部59はゲート32から突出しない。バルブピン5が後退すると、嵌合部59がゲート32から第二流路31内に退避する。嵌合部59がゲート32から離れることで、ゲート32が開かれる。ゲート32が開かれると、第二流路31内の溶融樹脂10がゲート32からキャビティ110(
図1参照)に注入される。
【0026】
本実施形態では、バルブピン5の形状が丸棒状である。基部50にはフランジ部50fが設けられている。基部50の断面及び先端部51の断面のそれぞれの形状は円形状である。基部50の断面及び先端部51の断面とは、バルブピン5の中心軸と直交する断面のことである。バルブピン5は、鋼などの金属で構成されている。バルブピン5の材質は、例えば、炭素鋼、合金鋼、プリハードン鋼又はステンレス鋼である。
【0027】
バルブピン5における嵌合部59から基部50までを含めた長さは、第二流路31の長よりも長い。第二流路31の長さは、ゲート32から第二流路31の入口までの長さである。第二流路31の長さはノズル30の長さに等しい。本実施形態におけるバルブピン5は、基部50が第二流路31の入口から第一流路21に向かって突出すると共に、基部50がホットランナーブロック2の第一面2aを貫通するように構成されている。
【0028】
(駆動装置)
本実施形態におけるホットランナー1は、
図2に示すように、バルブピン5を進退させる駆動装置8を備える。本実施形態では、ホットランナーブロック2の第一面2aに駆動装置8が設けられている。駆動装置8は、バルブピン5の基部50を支持する。駆動装置8によって、バルブピン5がランナー部3の軸に沿って往復動する。駆動装置8は、例えば、エアシリンダー又は油圧シリンダーである。
【0029】
<実施形態におけるバルブピン>
実施形態に係るホットランナーの温度測定構造の特徴の一つは、
図3に示すように、バルブピン5が試験用温度センサ6を備える点にある。ホットランナーの温度測定構造は、試験用温度センサ6によって、
図2に示す第二流路31内の溶融樹脂10の温度を直接的に測定することができる。本実施形態におけるバルブピン5の特徴を
図3から
図7を参照して説明する。
【0030】
バルブピン5は、
図3の左図に示すように、バルブピン5の外周面に溝54を備える。溝54は、バルブピン5の軸に沿って形成されている。溝54は、バルブピン5の外周面に開口している。試験用温度センサ6は、
図5に示すように、溝54内に配置されている。試験用温度センサ6が請求項1における「温度センサ」に相当する。試験用温度センサ6は、
図2に示す第二流路31内の溶融樹脂10に直接接触する。
【0031】
試験用温度センサ6は、溝54を通って、ゲート32から引き出されている。試験用温度センサ6は、ワイヤー状のセンサであって、その先端部(
図3の上端部)で温度を測定する。ゲート32から引き出された端部(
図3の下端部)は、図示しない測定機器につながっている。本実施形態において、試験用温度センサ6は熱電対である。
【0032】
試験用温度センサ6の先端部をバルブピン5の長さのどの位置に取り付けるのかは、適宜選択できる。試験用温度センサ6の取付位置によって、
図2に示す第二流路31内における温度の測定位置を任意に設定することができる。試験用温度センサ6の取付位置を変更することで、第二流路31に沿った溶融樹脂10の温度分布を測定することが可能である。例えば、試験用温度センサ6の先端部が嵌合部59に近い位置に配置されている場合、ゲート32に近い位置における溶融樹脂10の温度を測定することができる。試験用温度センサ6の先端部が基部50に近い位置に配置されている場合、第二流路31の入口に近い位置における溶融樹脂10の温度を測定することができる。試験用温度センサ6の先端部が嵌合部59と基部50との間の中間部に取り付けられている場合、第二流路31の中間部に位置する溶融樹脂10の温度を測定することができる。
【0033】
本実施形態では、試験用温度センサ6の数が1つである。試験用温度センサ6の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。複数の試験用温度センサ6を備える場合、バルブピン5の外周面に複数の溝54を備え、各溝54内に試験用温度センサ6がそれぞれ配置される。複数の溝54は、バルブピン5の軸周りに等間隔に配置されることが好ましい。複数の試験用温度センサ6のそれぞれの取付位置を異ならせることで、第二流路31内の溶融樹脂10の複数の位置における温度を測定することが可能である。
【0034】
バルブピン5は、
図3に示すように、先端部51と基部50とに分割されている。先端部51と基部50とはそれぞれ独立した部材である。
【0035】
バルブピン5は、さらに、先端部51と基部50とを着脱自在に結合する連結部55を備える。本実施形態では、先端部51と基部50とがねじ結合によって連結されている。連結部55は、ネジ部56とネジ穴57とにより構成されている。ネジ部56の外周面には雄ネジが形成されている。ネジ穴57の内周面には雌ネジが形成されている。先端部51がネジ部56を有する。ネジ部56は、基部50が接続される端面から突出するように設けられている。基部50がネジ穴57を有する。ネジ穴57は、先端部51が接続される端面に開口する。ネジ穴57にネジ部56がねじ込まれることによって、先端部51と基部50とが着脱自在に連結される。本実施形態とは異なり、先端部51がネジ穴57を有し、かつ、基部50がネジ部56を有してもよい。連結部55は、例えば、互いに嵌合する凸部と凹部とにより構成されていてもよい。凸部と凹部とが嵌合することによって、先端部51と基部50とが着脱自在に連結される。
【0036】
先端部51は、連結部55によって基部50に対して交換可能な第一先端部51aと第二先端部51bを備える。
図3の左側に示す先端部51が第一先端部51aであり、右側に示す先端部51が第二先端部51bである。第一先端部51aは、溝54と試験用温度センサ6とを有する。溝54内に試験用温度センサ6が配置されている。第二先端部51bは、溝54と試験用温度センサ6とを有さない。
【0037】
第一先端部51aは、試験用のバルブピンに用いられる。第一先端部51aは、実際の成形を行う前の予備試験において用いられる。予備試験とは、どのような条件で成形すれば、第二流路31内の溶融樹脂10の温度が所定の温度となるのかを確認するための試験である。
【0038】
本実施形態では、第一先端部51aは、第一部分52と第二部分53とを備える。第一部分52は、第一先端部51aのうち、基部50が接続される端部から嵌合部59までの部分である。第一部分52の長さは、第二流路31の長さとほぼ同じである。第二部分53は、基部50から離れる方向に嵌合部59から突出する部分である。第一部分52と第二部分53とは同軸に形成されている。第一部分52の断面及び第二部分53の断面のそれぞれの形状は円形状である。第一部分52と第二部分53とは一体に構成されている。
【0039】
第一先端部51aの外周面には、試験用温度センサ6が配置される溝54が形成されている。溝54は、第一部分52と第二部分53のそれぞれに形成されている。第一部分52における溝54は、第一部分52の全長にわたって形成されている。第二部分53における溝54は、嵌合部59から第二部分53の中間部まで形成されている。第一部分52及び第二部分53における各溝は、一連につながっている。各溝は直線状である。
【0040】
第二部分53は第一部分52よりも細い。つまり、第一先端部51aにおいて、第一部分52は太径部であり、第二部分53は細径部である。
図7は、バルブピン5がゲート32を開いた状態を示している。
図7に示すように、嵌合部59がゲート32に挿入されず、嵌合部59が第二流路31内に退避しているとき、ゲート32と第二部分53との間の隙間から溶融樹脂10を排出することができる。
【0041】
第二先端部51bは、成形用のバルブピンに用いられる。第二先端部51bは、予備試験後に実際に成形する際に用いられる。本実施形態では、第二先端部51bは、第一先端部51aの第一部分52と同じサイズである。第二先端部51bは、第一先端部51aの第一部分52を有するが、第二部分53を有していない。第二先端部51bは、第一先端部51aと同様に、連結部55によって基部50に対して結合される。第二先端部51bの外周面には、試験用温度センサ6を配置するための溝以外の溝が形成されていてもよい。
【0042】
先端部51の交換は、
図2に示す第二流路31内に基部50を残したまま行うことができる。先端部51は、ゲート32から第二流路31内に挿し込むことで、基部50に取り付けることができる。先端部51は、ゲート32から引き抜くことで、基部50から取り外すことができる。先端部51の交換は、第二流路31内に溶融樹脂10が存在している状態で行うことができる。
【0043】
第一先端部51aにおいて、第二部分53は、
図2に示す第二流路31内にバルブピン5が配置されたとき、ゲート32から突出するように設けられている。つまり、ノズル30の外部に第二部分53が露出されている。第一部分52が第二流路31内に配置された状態であっても、第二部分53がゲート32から突出されている。そのため、第二部分53を掴んで、ゲート32から第二流路31内に先端部51を挿し込んだり、ゲート32から先端部51を引き抜いたりすることができる。また、第一先端部51aを着脱する際に、第二部分53を回転させることで、ネジ穴57にネジ部56を締めたり、ネジ穴57からネジ部56を外したりすることができる。本実施形態では、第二部分53の先端に角柱部53aが形成されている。第二部分53が角柱部53aを有することで、角柱部53aを工具で掴みやすく、第二部分53を回転させる操作が行いやすい。
【0044】
図2に示す第二流路31内にバルブピン5が配置されたとき、図示は省略するが、
図3に示す第二先端部51bはゲート32から突出しない。本実施形態では、第二先端部51bの先端に、図示しない止まり穴が設けられている。この止まり穴は、第二先端部51bの端面に開口し、第二先端部51bの中心軸を通るように形成されている。第二先端部51bを着脱する際には、この止まり穴にレンチなどの工具を挿し込むことで、第二先端部51bを回転させることが可能である。例えば、止まり穴は円形の穴であり、止まり穴の内周面には逆雌ネジが形成されている。ネジ部56を締める方向は時計回りであり、ネジ部56を緩める方向は反時計回りである。逆雌ネジは、締める方向と緩める方向が通常とは逆向きになるようにネジ溝が形成されている。止まり穴にレンチをねじ込むときは、レンチを反時計回りに回す。止まり穴からレンチを外すときは、レンチを時計回りに回す。ネジ穴57にネジ部56を締めるときは、止まり穴にレンチがねじ込まれた状態で第二先端部51bを時計回りに回転させる。ネジ穴57にネジ部56が連結された後、レンチを時計回りにそのまま回転させるとレンチが緩み、止まり穴からレンチが外れる。レンチを緩める方向とネジ部56を締める方向とが一致するので、ネジ穴57にネジ部56を締め付けやすい。ネジ穴57からネジ部56を外すときは、止まり穴にレンチをねじ込んで、第二先端部51bを反時計回りに回転させる。レンチを反時計回りに回転させると、止まり穴にレンチがねじ込まれ、第二先端部51bが反時計回りに回転してネジ部56が緩む。レンチを締める方向とネジ部56を緩める方向とが一致するので、ネジ部56を容易に緩めることができる。その他、止まり穴は、四角形または六角形などの多角形の穴であってもよい。この場合、止まり穴の内周面に逆雌ネジがなくても、止まり穴にレンチを嵌め込むことで、第二先端部51bを回転させることができる。
【0045】
第二流路31内に溶融樹脂10が存在している状態で、第一先端部51aをゲート32から挿し込んで、ネジ穴57にネジ部56を締める際、ネジ穴57に溶融樹脂10が入り込んでいる。そのため、ネジ穴57にネジ部56を締めようとしても、ネジ穴57内の溶融樹脂10が邪魔をして、ネジ部56がネジ穴57に入りにくい。本実施形態では、
図4に示すように、ネジ部56の外周面にネジ部56の軸に沿った切欠561が形成されている。
図4では、ネジ穴57を仮想的に二点鎖線で示している。ネジ部56の外周面に切欠561を有することで、ネジ穴57にネジ部56を締める際、ネジ穴57内の溶融樹脂10が切欠561を通って排出される。よって、第二流路31内に溶融樹脂10が存在していても、ネジ部56がネジ穴57に挿し込まれやすい。切欠561の断面の形状は、例えばU字状である。切欠561の断面とは、ネジ部56の軸と直交する断面のことである。切欠561は、ネジ部56の全長にわたって形成されていることが好ましい。切欠561の数は、1つでも複数でもよい。本実施形態では、切欠561の数が3つである。複数の切欠561を設けた場合、溶融樹脂10をネジ穴57内から均等に排出する観点から、各切欠561はネジ部56の外周面に沿って等間隔に配置されることが好ましい。
【0046】
試験用温度センサ6は、
図6に示すように、溝54内に配置された状態で固定部58によって固定されている。
図6は、第一先端部51aにおける第一部分52と第二部分53の境界付近を溝54の開口に向かって見た図である。換言すれば、
図6は、
図3に示す第一先端部51aの外周面を
図3の右から見た図である。本実施形態では、固定部58は、第一固定部58aと第二固定部58bとを備える。第一固定部58aは、試験用温度センサ6を樹脂により溝54内に埋め込んで固定している。第一固定部58aの樹脂は、例えばエポキシ樹脂である。本実施形態において、第一固定部58aは、第一部分52の嵌合部59のみに設けられている。この構成により、嵌合部59でゲート32を閉じることができる。試験用温度センサ6における温度を測定する部分、即ち熱電対の先端部は、第一固定部58aから露出されている。熱電対の先端部は、
図3において、第一部分52の途中に配置されている。熱電対の先端部が溶融樹脂10に直接接触するので、溶融樹脂10の温度を精度よく測定できる。
【0047】
第二固定部58bは、試験用温度センサ6である熱電対を溶接により溝54内に固定している。第二固定部58bは、第一部分52と第二部分53のそれぞれにおいて熱電対を固定している。より具体的には、第一固定部58aを挟むように2つの第二固定部58bが設けられている。
【0048】
実施形態に係るホットランナーの温度測定構造の使用方法について説明する。成形を行う前に、第一先端部51aが取り付けられた試験用のバルブピン5を用いて予備試験を行う。試験用のバルブピン5を第二流路31内に配置した状態で、射出成形機200から溶融樹脂10を供給する。第二流路31内の溶融樹脂10が適切な流量となるように、射出成形機200から射出される溶融樹脂10の流量及び圧力を調整する。バルブピン5がゲート32を開いた状態で、第二流路31内に流れる溶融樹脂10の温度を試験用温度センサ6によって測定する。溶融樹脂10が適正温度Taとなるように、ヒータ4によってノズル30の温度を制御する。通常、第二流路31内に流れる溶融樹脂10の温度とノズル30の温度とは乖離している。溶融樹脂10が適正温度Taとなったときのノズル30の温度Tbを成形用温度センサ45によって取得する。予備試験では、第二金型102が開いた状態とし、ゲート32を第二金型102に接触させない。つまり、キャビティ110への溶融樹脂10の注入は行わない。ゲート32から排出された溶融樹脂10は適宜な容器で受け取る。
【0049】
予備試験後、第一先端部51aを第二先端部51bに交換し、第二先端部51bが取り付けられた成形用のバルブピン5を用いて成形を行う。成形は、上述した溶融樹脂10が適正温度Taとなる条件、即ちノズル30が温度Tbとなるようにヒータ4を制御して行う。
【0050】
本発明は、これらの例示に限定されず、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。先端部51と基部50とをねじ結合することに代えて、例えば
図8に示すように、弾性部材9によって先端部51を基部50に押し付けるように構成してもよい。先端部51が弾性部材9によって付勢されることで、先端部51と基部50の端面同士が接触した状態が保たれる。弾性部材9は、例えば第二部分53の先端部の端面に固定され、第二部分53と第二金型102との間に配置される。弾性部材9は、例えばスプリングである。
【符号の説明】
【0051】
1 ホットランナー
10 溶融樹脂
2 ホットランナーブロック
2a 第一面、2b 第二面
20 スプルー部
21 第一流路
3 ランナー部
30 ノズル
31 第二流路、32 ゲート
4 ヒータ
45 成形用温度センサ
5 バルブピン
50 基部、51 先端部
50f フランジ部
51a 第一先端部
51b 第二先端部
52 第一部分
53 第二部分
53a 角柱部
54 溝
55 連結部
56 ネジ部、561 切欠
57 ネジ穴
58 固定部、58a 第一固定部、58b 第二固定部
59 嵌合部
6 試験用温度センサ
8 駆動装置
9 弾性部材
100 金型
101 第一金型、102 第二金型、110 キャビティ
200 射出成形機、201 ノズル