(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109235
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】回路基板搭載用構造体
(51)【国際特許分類】
H05K 7/14 20060101AFI20240806BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240806BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240806BHJP
H02G 3/16 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H05K7/14 E
H05K7/20 B
H01L23/36 D
H02G3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013934
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】阪本 容宜
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮太
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 歩
【テーマコード(参考)】
5E322
5E348
5F136
5G361
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB06
5E322FA04
5E348AA14
5E348AA16
5E348AA40
5F136BC04
5F136BC05
5F136FA51
5G361BA01
5G361BB01
5G361BB03
5G361BC01
5G361BC03
(57)【要約】
【課題】
電子機器の筐体に熱伝導性の接着剤によって接着された回路基板に対して、応力や歪みを抑制しつつ当該回路基板を筐体から分離可能な回路基板搭載用構造体を提供する。
【解決手段】
回路基板を搭載する搭載面を有し、かつ前記搭載面に1の方向に沿って延在する領域でありかつ前記回路基板を搭載する領域である搭載領域を有する回路基板搭載部と前記回路基板搭載部の表面に前記1の方向に移動自在に係合している移動体であって、前記表面に平行な主面を有しかつ前記移動体の移動に伴って前記搭載面に沿って前記搭載領域上を横断する板状部を有する前記移動体とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を搭載する搭載面を有し、かつ前記搭載面に1の方向に沿って延在する領域でありかつ前記回路基板を搭載する領域である搭載領域を有する回路基板搭載部と、
前記回路基板搭載部の表面に前記1の方向に移動自在に係合している移動体であって、前記表面に平行な主面を有しかつ前記移動体の移動に伴って前記搭載面に沿って前記搭載領域上を横断する板状部を有する前記移動体と
を有することを特徴とする回路基板搭載用構造体。
【請求項2】
前記回路基板搭載部は、前記搭載面に前記1の方向に沿って伸張する案内構造を有し、
前記移動体は、前記案内構造に係合して前記案内構造に沿って移動自在であることを特徴とする請求項1に記載の回路基板搭載用構造体。
【請求項3】
前記案内構造は各々が前記移動体と係合しかつ前記搭載領域を挟むように設けられた2つのガイドを有し、
前記移動体は、各々が前記2つのガイドに係合しておりかつ前記板状部を共に支持している2つの支持部を有することを特徴とする請求項2に記載の回路基板搭載用構造体。
【請求項4】
前記2つの支持部の各々は、互いに対向する面から突出し、前記搭載面に垂直な方向から見た上面視において前記板状部から前記1の方向に離間して位置する下面を有する突出部を備えることを特徴とする請求項3に記載の回路基板搭載用構造体。
【請求項5】
前記搭載領域に前記回路基板が搭載されている状態で前記板状部が前記搭載領域外から前記搭載領域を横断するように前記移動体を移動させると、前記板状部が前記回路基板と前記搭載面との間に入り込むことで前記回路基板が前記搭載面から引き離され、前記突出部の下面に前記回路基板の上面が当接するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載の回路基板搭載用構造体。
【請求項6】
前記回路基板搭載部の前記搭載面と別の面に放熱構造が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の回路基板搭載用構造体。
【請求項7】
前記板状部は、前記1の方向に向いた側面のいずれかに外方にいくにつれて前記搭載面に近づく傾斜面を有することを特徴とする請求項1に記載の回路基板搭載用構造体。
【請求項8】
前記回路基板は前記搭載面に接着剤にて接合されていることを特徴とする請求項1に記載の回路基板搭載用構造体。
【請求項9】
前記接着剤は室温硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂であることを特徴とする請求項8に記載の回路基板搭載用構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器において回路基板を搭載する回路基板搭載用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子機器等において、放熱対策として回路基板等を筐体又は放熱板等に熱伝導性の接着剤を用いて直接接着する手法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、接着剤によって積層されたガラス等の板状部材において、それらを分離する際に専用の剥離装置及び剥離ジグ(ナイフ)等を用いて板状部材に傷等の外的負荷をかけることなく剥離させる剥離方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の剥離方法においては、電子機器の構造によっては周辺部品との干渉により、実施が困難であった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、電子機器の筐体に熱伝導性の接着剤によって接着された回路基板に対して、応力や歪みを抑制しつつ当該回路基板を筐体から分離可能な回路基板搭載用構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による回路基板搭載用構造体は、回路基板を搭載する搭載面を有し、かつ前記搭載面に1の方向に沿って延在する領域でありかつ前記回路基板を搭載する領域である搭載領域を有する回路基板搭載部と前記回路基板搭載部の表面に前記1の方向に移動自在に係合している移動体であって、前記表面に平行な主面を有しかつ前記移動体の移動に伴って前記搭載面に沿って前記搭載領域上を横断する板状部を有する前記移動体とを有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例に係る剥離機構を有する電子機器の断面図である。
【
図4】実施例に係る剥離機構の剥離動作を示す図である。
【
図5】実施例に係る剥離機構の剥離動作を示す図である。
【
図6】実施例に係る剥離機構の剥離動作を示す図である。
【
図7】実施例に係る剥離機構の剥離動作を示す図である。
【
図8】実施例に係る剥離機構の剥離動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ具体的に説明する。なお、図面において、同一の構成要素については同一の符号を付け、重複する構成要素の説明は省略する。
【実施例0010】
図1は、実施例1に係る電子機器1の断面図である。
図2は、回路搭載部11の搭載面11Sを示す斜視図である。また、
図3は、移動体70のスライド方向に沿った方向から見た電子機器1の側面図である。
【0011】
なお、
図2においては、電子機器1の内部の構造を明確にするため、カバー板12、ポストP1、P2、P3及び第2の回路基板30の図示を省略している。また、
図3においては、移動体70と第1の回路基板20及び第2の回路基板30との位置関係を明確にするため、カバー板12及びポストP1、P2の図示を省略している。また、
図1乃至
図3において、移動体70は、熱伝導材60と搭載面11Sとを剥離させる前の待機位置にある場合について図示している。
【0012】
筐体10は、回路搭載部11及びカバー板12によって構成され、内部が中空となった箱型の構造を有している。筐体10の回路搭載部11及びカバー板12は、例えば、アルミ等の金属からなり、分解可能なように任意の面で分割されている。
【0013】
回路搭載部11は、例えば、平板状の形状を有する平板部11A及び平板部11Aの外方に向いた面に放熱フィン等の放熱構造11Bが一体的に設けられた放熱板である。
【0014】
カバー板12は、例えば、回路搭載部11の側面を覆いかつ内部に中空の空間が形成されるように箱型の1の面が開口された構造を有している。本実施例においては、例えば、回路搭載部11の側面にカバー板12がねじ止め等により固定されており、筐体10を回路搭載部11とカバー板12とに分離可能に構成されている。
【0015】
また、回路搭載部11の筐体10における内面は、第1の回路基板20及び第2の回路基板30を搭載する搭載面11Sである。回路搭載部11の搭載面11S上には、第1の回路基板20及び第2の回路基板30と、搭載面11Sに設けられたガイド11Dと係合してガイド11Dに沿って移動可能な移動体70と、が取り付けられている。すなわち、電子機器1の筐体10は、第1の回路基板20、第2の回路基板30及び移動体70を内包する構造を有している。なお、以下の説明において、回路搭載部11の搭載面11Sに垂直な方向を上下方向とし、かつ回路搭載部11の放熱構造11Bが設けられた面の方向を下方、搭載面11Sの方向を上方として説明する。
【0016】
回路搭載部11の搭載面11Sには、
図2に示すように、1の方向に平行に設けられた一対の溝状のガイド11D1及び11D2からなるガイド11Dが設けられている。また、ガイド11D1及び11D2の間には、上記1の方向に延在する搭載領域11SAが設けられている。言い換えれば、案内構造であるガイド11Dは各々が移動体70と係合しかつ搭載領域11SAを挟むように設けられた2つのガイド11D1及び11D2を有する。
【0017】
ガイド11D1及び11D2は、後述する移動体70と係合し、移動体70をスライド移動可能に支持する案内構造である。ガイド11D1及び11D2は、それぞれの伸長方向から見て、回路搭載部11の搭載面11Sから下方に向けて徐々に幅が広くなる台形形状の溝形状を有している。
【0018】
搭載領域11SAは、回路搭載部11の搭載面11S上に第1の回路基板20に配する領域であり、後述する熱伝導材60によって第1の回路基板20と搭載面11Sとを接着する領域である。
【0019】
第1の回路基板20は、
図1乃至
図3に示すように、搭載面11Sの搭載領域11SAの上方に配され、回路搭載部11の搭載面11Sと対向する面に半導体装置等の発熱体21が実装された回路基板である。
【0020】
第2の回路基板30は、
図1及び
図3に示すように、第1の回路基板20の上方に配され、回路搭載部11の搭載面11Sと対向する面に第1の回路基板20の一方の端部と接続するコネクタ40が設けられた回路基板である。また、第1の回路基板20の他方の端部近傍には、第1の回路基板20と第2の回路基板30とを固定するスペーサねじ等のポストP1が設けられている。すなわち、第1の回路基板20及び第2の回路基板30は、コネクタ40及びポストP1で固定され一体となった複合回路基板である。
【0021】
また、第2の回路基板30は、
図1に示すように、第1の回路基板20と回路搭載部11の搭載面11Sとの間に所定の間隔が設けられるようにスペーサねじ等のポストP2、P3によって回路搭載部11の搭載面11Sに固定されている。
【0022】
熱伝導材60は、
図1乃至
図3に示すように、搭載面11Sの搭載領域11SAの領域内において、第1の回路基板20と回路搭載部11の搭載面11Sとの間に充填され、第1の回路基板20と搭載面11Sとを互いに接着する熱伝導性の接着剤である。熱伝導材60は、例えば、室温硬化性、熱硬化性又は紫外線硬化性の液状樹脂である。なお、熱伝導材60は、電子機器1の駆動時(発熱体21の発熱時)に第1の回路基板20及び発熱体21に膨張率差による過度な応力が印加されないように、硬化後においてもある程度の弾性を有することが好ましい。
【0023】
熱伝導材60は、例えば、第1の回路基板20及び第2の回路基板30のポストP2、P3による回路搭載部11の搭載面11Sへの固定前に、搭載面11Sの搭載領域11SAにおける第1の回路基板20の配置領域上に塗布される。その後、第2の回路基板30は、第1の回路基板20の発熱体21と搭載面11Sの搭載領域11SAとが熱伝導材60に互いに接するようにポストP2、P3によって固定される。
【0024】
移動体70は、電子機器1の分解時において、回路搭載部11の搭載面11Sから熱伝導材60を剥離させる剥離機構である。
【0025】
移動体70は、ガイド11D1及び11D2にそれぞれ係合し、ガイド11D1及び11D2に沿ってスライド可能な金属製の一対のスライド部70A及び70Bと、スライド部70A及び70Bとを連結するように固定された板状部70Cを有する。
【0026】
すなわち、スライド部70A及び70Bは、各々が2つのガイド11D1及び11D2に係合しておりかつ板状部70Cを共に支持している2つの支持部として機能する。また、スライド部70A及び70Bは、板状部70Cによって連結されることで、ガイド11D1及び11D2の伸長方向に連動してスライドする。言い換えれば、板状部70Cは、移動体70の移動に伴って搭載面11Sに沿って搭載領域11SA上を横断する。
【0027】
スライド部70A及び70Bの各々は、それぞれガイド11D1及び11D2と係合する係合部71A及び71Bと、板状部70Cの両端部を支持する本体部72A及び72Bと、がそれぞれ一体的に形成されている。
【0028】
係合部71A及び71Bは、
図3に示すように、ガイド11D1及び11D2の伸長方向から見て、ガイド11D1及び11D2の台形の断面形状よりもやや小さい台形形状で形成されている。すなわち、係合部71A及び71Bは、ガイド11D1及び11D2からの抜けが発生しないように、ガイド11D1及び11D2に沿ってスライド可能に支持されている。
【0029】
本体部72A及び72Bは、
図2及び
図3に示すように、本体部72A及び72Bの互いに対向する面の下端領域で板状部70Cを支持するように固定している。すなわち、板状部70Cは、
図3に示すように、下面が回路搭載部11の搭載面11Sと平行にかつ搭載面11Sに接するような高さ位置で本体部72A及び72Bの互いに対向する面に両端が固定されている。
【0030】
本体部72A及び72Bの互いに対向する面の上方の領域には、本体部72A及び72B間の距離が大きくなるような段差STが設けられている。また、本体部72A及び72Bの互いに対向する面の各々の上端領域には、内方方向に突出する突出部73A及び73Bがそれぞれ設けられている。すなわち、
図3に示すように、ガイド11D1及び11D2の伸長方向から見て、本体部72A及び72Bの互いに対向する面は、段差ST及び突出部73A、73Bによってそれぞれ凹状形状となるように形成されている。すなわち、突出部73A、73Bは、板状部70Cから搭載面11Sに垂直な方向に離間して位置する下面を有する。
【0031】
なお、本体部72A及び72Bの互いに対向する面は、
図3に示すように、ガイド11D1及び11D2の伸長方向から見て、第1の回路基板20が通過可能な大きさとなっている。
【0032】
なお、熱伝導材60は、
図3に示すように、本体部72A及び72Bと干渉しないように、ガイド11D1及び11D2の間の搭載面11Sの搭載領域11SAの範囲内に配される。同様に、第2の回路基板30、コネクタ40及びポストP3も、ガイド11D1及び11D2の伸長方向から見て、本体部72A及び72B及び突出部73A及び73Bと干渉しない構造となっている。
【0033】
また、突出部73A及び73Bは、
図2に示すように、移動体70の待機位置において、本体部72A及び72Bの互いに対向する面の各々の上端領域のスライド方向、すなわち熱伝導材60の方向の端部領域に設けられている。これは、後述の剥離工程において、移動体70のスライドを容易にするためである。
【0034】
板状部70Cは、例えば、ガイド11D1及び11D2の伸長方向と垂直な方向の端部が鋭利な刃となっている厚さ0.2mm程度のカッターである。言い換えれば、板状部70Cは、ガイド11D1及び11D2の伸長方向である1の方向に向いた側面のいずれかに外方にいくにつれて搭載面11Sに近づく傾斜面を有する。板状部70Cの刃先(傾斜面)は、移動体70の待機位置において、熱伝導材60の方向を向くようにセットされている。
【0035】
次に、
図4乃至
図8を参照しつつ、熱伝導材60と回路搭載部11の搭載面11Sとの剥離工程における動作を説明する。
【0036】
図4乃至
図8は、移動体70の剥離動作を示す断面図である。なお、
図4乃至
図8においては、移動体70として、一方のスライド部70Aの突出部73Aと及び板状部70Cの断面のみが図示されているが、上述の通り、スライド部70Aと連動してスライド部70Bの突出部73Bも同位置にスライドしている。
【0037】
図4は、回路搭載部11の搭載面11Sから第1の回路基板20及び第2の回路基板30を取り外せる状態まで電子機器1の筐体10を分解した際の断面図である。具体的には、回路搭載部11からカバー板12を取り外し、かつ、第2の回路基板30と回路搭載部11の搭載面11Sとを固定していたポストP2及びP3を取り外した状態である。なお、この際、熱伝導材60は硬化しており、構成樹脂由来の弾性を有しつつ第2の回路基板30と回路搭載部11の搭載面11Sとを接着している。
【0038】
次に、
図5に示すように、突出部73A及び73Bが第1の回路基板20の上面上の位置であり、かつ板状部70Cが熱伝導材60に干渉する位置となるまで移動体70をスライドさせる。
【0039】
次に、
図6に示すように、第2の回路基板30の移動体70のスライド方向と反対の側の端部を手などによって持ち上げ、第1の回路基板20の上面と移動体70の突出部73A及び73Bとを接触させる。この時、第1の回路基板20は、移動体70のスライド方向において両端部近傍がコネクタ40及びポストP1で固定されているため、第2の回路基板30に同調して第1の回路基板20の移動体70のスライド方向と反対の側の端部も持ち上がる。
【0040】
なお、熱伝導材60が弾性を有するため、持ち上げに伴い熱伝導材60が変形するため、第1の回路基板20に過度な応力又は歪みがかかることはない。
【0041】
また、持ち上げにより、第1の回路基板20の上面と移動体70の突出部73A及び73Bの下面が当接する。従って、第1の回路基板20の持ち上げの力及び第1の回路基板20の上面の傾きによって移動体70の突出部73A及び73Bの下面に熱伝導材60の方向の力が加わり、移動体70は熱伝導材60の方向にスライド移動する。
【0042】
次に、
図7に示すように、第2の回路基板30の端部をさらに持ち上げ、移動体70を熱伝導材60の方向にさらにスライドさせつつ板状部70Cによって熱伝導材60と回路搭載部11の搭載面11Sとの接着界面を破断していく。具体的には、第1の回路基板20の持ち上げの力及び第1の回路基板20の上面の傾きによって、板状部70Cが搭載領域11SAを横断するように移動体70を移動させると、板状部70Cの刃先が第1の回路基板20と搭載面11Sとの間、特に、熱伝導材60と搭載面11Sとの間に入り込むことで第1の回路基板20及び熱伝導材60が搭載面11Sから引き離される。
【0043】
最終的に、
図8に示すように、第2の回路基板30の端部を持ち上げ続けることにより、移動体70がスライドし続け、移動体70のスライドに伴い板状部70Cが熱伝導材60と回路搭載部11の搭載面11Sとの接着界面を全て剥離させる。
【0044】
これにより、第1の回路基板20及び第2の回路基板30を回路搭載部11の搭載面11Sから分離させることができる。
【0045】
本実施例によれば、第2の回路基板30を回路搭載部11の搭載面11Sから引き剥がす力を利用し、熱伝導材60と回路搭載部11の搭載面11Sとの接着界面を破断させつつ第1の回路基板20及び第2の回路基板30を回路搭載部11の搭載面11Sから分離させることができる。従って、分離時の第1の回路基板20及び第2の回路基板30への過度な応力又は歪みを抑制でき、第1の回路基板20及び第2の回路基板30の破損を防ぐことが可能となる。
【0046】
また、本実施例によれば、例えば、電子機器1の修理時等において第1の回路基板20若しくは第2の回路基板30の一部交換又は回路基板を取り外さないと交換できない部品の交換時に、電子機器1の部品を破損させることなく筐体10から取り外すことが可能となる。
【0047】
また、本実施例によれば、移動体70を電子機器1の筐体10内に部品として組み込めるため、第1の回路基板20と回路搭載部11の搭載面11Sとを剥離させる専用の剥離装置及びジグ等を用いることが不要となる。これにより、例えば、電子機器1の分解時に、当該電子機器1の設置場所での現場対応が容易となる。
【0048】
なお、本実施例においては、熱伝導材60が液状樹脂を原料とする熱伝導材である場合について説明したが、熱伝導材60は液状樹脂に限定されない。本実施例は、例えば、熱伝導材60は、粘着シート又は粘着テープ状の熱伝導材であっても適用可能である。
【0049】
また、本実施例においては、移動体70の案内構造として、台形状の溝構造を有するガイド11D1及び11D2である場合について説明したが、当該案内構造はこれに限定されない。例えば、案内構造は、回路搭載部11の搭載面11SからT字状に突出するようなレールであってもよい。また、例えば、案内構造は、回路搭載部11の搭載面11Sに、回路搭載部11とは別体で取り付けられるガイドレールであってもよい。要は、移動体70と係合しかつ移動体70を支持可能であって、移動体70の板状部70Cを搭載面11Sの搭載領域11SAを横断可能に移動可能な案内構造であればよい。
【0050】
また、本実施例においては、ガイド11D1及び11D2の伸長方向から見て、移動体70の本体部72A及び72Bの互いに対向する面が凹状である場合について説明したが、本体部72A及び72Bの互いに対向する面の形状はこれに限定されない。例えば、移動体70の本体部72A及び72Bが、ガイド11D1及び11D2の伸長方向から見て、矩形の形状を有し、当該本体部72A及び72Bの対向する面の上端部領域に突出部73A及び73Bが形成されていてもよい。要は、移動体70のスライド部70A及び70Bのスライド方向において、スライド部70A及び70Bが第1の回路基板20の両端部まで通過可能であり、かつ突出部73A及び73Bが第1の回路基板20を持ち上げた際に、突出部73A及び73Bの下面が第1の回路基板20と当接する構造であればよい。
【0051】
また、本実施例においては、突出部73A及び73Bが移動体70のスライド部70A及び70Bとそれぞれ一体的に形成された場合について説明したが、突出部73A及び73Bの構成はこれに限定されない。例えば、突出部73A及び73Bは、本体部72A及び72Bに取付けられた、ガイド11D1及び11D2の伸長方向に回動可能なローラ等の別部材であってもよい。突出部73A及び73Bをローラとすることにより、剥離工程時に突出部73A及び73Bと第1の回路基板20の摺動抵抗を低減し、かつ移動体70のスライド移動を容易にすることができる。同様に、移動体70の係合部71A及び71Bにおいても、ガイド11D1及び11D2との摺動抵抗低減可能なローラ、又はベアリング構造であってもよい。
【0052】
以上のように、記載の実施例は発明の範囲を限定することは意図していない。記載の実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。そして、それら変形例も、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。