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特開2024-109238真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法
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  • 特開-真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法 図1
  • 特開-真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法 図2
  • 特開-真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法 図3
  • 特開-真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109238
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/12 20060101AFI20240806BHJP
   F16L 55/105 20060101ALI20240806BHJP
   F16L 9/18 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
F16K27/12
F16L55/105
F16L9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013940
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】池田 充志
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕介
【テーマコード(参考)】
3H025
3H051
3H111
【Fターム(参考)】
3H025BA21
3H025BB02
3H025DA02
3H025DB12
3H051AA02
3H051BB03
3H051CC06
3H051FF04
3H111AA01
3H111BA03
3H111CA12
(57)【要約】
【課題】 小型化を図りつつメンテナンスの作業性を向上させた真空二重配管用弁装置を提供する。
【解決手段】 低温流体が流れる内管2と内管2を覆う外管4との間に真空層6が形成される真空二重配管8に用いられる弁装置10であって、弁箱12と、弁体16と、メンテナンスホール18と、メンテナンス用カバー20と、ジャケット部材22とを備え、ジャケット部材22は、弁箱12の周囲に形成される内部空間が仕切られて操作室24と非操作室26とが形成されており、操作室24は、メンテナンス用カバー20が収容され、外部からメンテナンス用カバー20の開閉操作が可能となるように操作用カバー28によって開閉可能に閉じられており、開閉弁30を備える真空連結流路32によって、操作室24と非操作室26とが連結されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温流体が流れる内管と前記内管を覆う外管との間に真空層が形成される真空二重配管に用いられる弁装置であって、
前記内管に接続されて内部を低温流体が通過する弁箱と、
前記弁箱内に設けられて弁軸の駆動により前記内管の流路を開閉する弁体と、
前記弁箱に形成されて前記弁箱内のメンテナンスを行うためのメンテナンスホールと、
前記メンテナンスホールを開閉可能に閉じるメンテナンス用カバーと、
前記外管に接続されて前記弁箱を覆うジャケット部材とを備え、
前記ジャケット部材は、前記弁箱の周囲に形成される内部空間が仕切られて操作室と非操作室とが形成されており、
前記操作室は、前記メンテナンス用カバーが収容され、外部から前記メンテナンス用カバーの開閉操作が可能となるように操作用カバーによって開閉可能に閉じられており、
開閉弁を備える真空連結流路によって、前記操作室と非操作室とが連結されている真空二重配管用弁装置。
【請求項2】
前記ジャケット部材は、前記外管に接続される円筒状部と、前記円筒状部の外周面から起立する角筒状部とを備え、
前記操作室は、前記角筒状部の内部に形成され、前記非操作室は、前記円筒状部の内部に形成される請求項1に記載の真空二重配管用弁装置。
【請求項3】
前記操作室を外部と連通する外部連通路と、前記外部連通路を開閉可能な真空破壊弁とを更に備える請求項1に記載の真空二重配管用弁装置。
【請求項4】
前記弁軸は、前記弁箱から突出する筒状の挿通部に挿通されており、
前記操作室は、前記挿通部の一部を収容する請求項1に記載の真空二重配管用弁装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の真空二重配管用弁装置のメンテナンス方法であって、
前記開閉弁を開いた状態で前記真空層の内部を真空引きすることにより、前記操作室および前記非操作室が真空に維持された状態から、前記開閉弁を閉じた後に前記操作用カバーを開いて前記メンテナンス用カバーの開閉操作を行う工程を備える真空二重配管用弁装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液化水素などの低温流体を輸送するため、低温流体が通過する内管を外管で覆い、内管と外管との間に真空層を形成した真空二重配管が知られている。真空二重配管に使用される従来の弁装置として、特許文献1には、図4に示すように、真空二重配管60の内管61に接続される弁箱51と、弁箱51の流れ方向Fの下流側に形成されたメンテナンスホール52と、メンテナンスホール52を開閉するメンテナンスカバー53とを備える構成が開示されている。
【0003】
真空二重配管60の真空層62には、弁箱51の上流側および下流側にそれぞれ設けられた隔壁部材64a,64bの間に隔離部65が形成されており、開閉弁66a,66bを備えるバイパス流路67a,67bによって、隔離部65が、真空層62の他の部分と連通可能とされている。
【0004】
真空二重配管60の外管63におけるメンテナンスホール52の直上部68は、取り外し可能に構成されており、メンテナンス時においては、バイパス流路67a,67bの開閉弁66a,66bを閉じて、隔離部65を真空層62の他の部分から遮断した後、メンテナンスホール52の直上部68を取り外すことにより、メンテナンスカバー53を開閉することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-174398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に開示された構成は、弁箱51の全体が円筒状の外管63により覆われるため、弁箱51の大きさに対して外管63の径が大きくなり過ぎて、構成全体が大型化するおそれがあった。
【0007】
また、このように外管63の径が大きくなることで、隔離部65の容積が大きくなることから、メンテンナンス時に広範囲が真空ブレイクされることで、メンテンナンス終了後に隔離部65の全体を真空状態に戻す作業が煩雑になり易く、メンテナンスの作業性の面でも改良の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、小型化を図りつつメンテナンスの作業性を向上させた真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記目的は、低温流体が流れる内管と前記内管を覆う外管との間に真空層が形成される真空二重配管に用いられる弁装置であって、前記内管に接続されて内部を低温流体が通過する弁箱と、前記弁箱内に設けられて弁軸の駆動により前記内管の流路を開閉する弁体と、前記弁箱に形成されて前記弁箱内のメンテナンスを行うためのメンテナンスホールと、前記メンテナンスホールを開閉可能に閉じるメンテナンス用カバーと、前記外管に接続されて前記弁箱を覆うジャケット部材とを備え、前記ジャケット部材は、前記弁箱の周囲に形成される内部空間が仕切られて操作室と非操作室とが形成されており、前記操作室は、前記メンテナンス用カバーが収容され、外部から前記メンテナンス用カバーの開閉操作が可能となるように操作用カバーによって開閉可能に閉じられており、開閉弁を備える真空連結流路によって、前記操作室と非操作室とが連結されている真空二重配管用弁装置により達成される。
【0010】
この真空二重配管用弁装置において、前記ジャケット部材は、前記外管に接続される円筒状部と、前記円筒状部の外周面から起立する角筒状部とを備えることが好ましく、前記操作室は、前記角筒状部の内部に形成され、前記非操作室は、前記円筒状部の内部に形成されることが好ましい。
【0011】
また、前記操作室を外部と連通する外部連通路と、前記外部連通路を開閉可能な真空破壊弁とを更に備えることが好ましい。
【0012】
前記弁軸は、前記弁箱から突出する筒状の挿通部に挿通することができ、前記操作室は、前記挿通部の一部を収容することができる。
【0013】
また、本発明の前記目的は、上記の真空二重配管用弁装置に対し、前記開閉弁を開いた状態で前記真空層の内部を真空引きすることにより、前記操作室および前記非操作室が真空に維持された状態から、前記開閉弁を閉じた後に前記操作用カバーを開いて前記メンテナンス用カバーの開閉操作を行う工程を備える真空二重配管用弁装置のメンテナンス方法により達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の真空二重配管用弁装置およびそのメンテナンス方法によれば、小型化を図りつつ、メンテナンスの作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る真空二重配管用弁装置の断面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】本発明の他の実施形態に係る真空二重配管用弁装置の断面図である。
図4】従来の真空二重配管用弁装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る真空二重配管用弁装置の断面図であり、図2は、図1のA-A断面図である。図1および図2に示す真空二重配管用弁装置(以下、単に「弁装置」という)10は、溶接型のバタフライ弁であり、低温流体の流れ方向Fの上流側および下流側に、真空二重配管8,8がそれぞれ溶接により接続される。真空二重配管8と弁装置10との接続は、溶接型に限らず、フランジ接続等であってもよい。弁装置10の用途は特に限定されないが、例えば船舶用として使用することができる。
【0017】
真空二重配管8は、ステンレス等の金属材料からなる内菅2および外管4を備えており、本実施形態においては、内管2の内部を、液化水素、液化アンモニア、液化ヘリウム、液化窒素、液化酸素等の低温流体が矢示F方向に通過する。低温流体の流れ方向は、矢示F方向と反対方向であってもよい。
【0018】
外管4は、内管2を覆うように内管2と同心状に配置されており、内管2と外管4との間に真空層6が形成される。真空層6は、真空ポンプ(図示せず)による真空引きが行われて、内管2を真空断熱する。
【0019】
弁装置10は、内管2に接続されて内部を低温流体が通過する円筒状の弁箱12と、弁箱12内に設けられて弁軸14の駆動により内管2の流路を開閉する弁体16と、弁箱12における弁体16の下流側に形成されたメンテナンスホール18と、メンテナンスホール18を開閉可能に閉じるメンテナンス用カバー20と、外管4に接続されて弁箱12の全体を覆うジャケット部材22とを備えている。弁軸14は、流路が水平になるように配置された弁箱12から上方に突出する筒状の挿通部13に、回動可能に挿通されている。
【0020】
メンテナンスホール18は、弁箱12の上部から上方に突出する角筒状部分の先端に形成された矩形状の開口部であり、メンテナンス用カバー20により開閉可能に閉じられる。メンテナンス用カバー20は、矩形平板状の部材であり、周縁部に沿って複数配置されるボルト・ナット等の締結具19により、メンテナンスホール18の周縁部に着脱可能に締結される。
【0021】
ジャケット部材22は、外管4に接続されるように水平に延びる円筒状部221と、円筒状部221の外周面から上方に起立して上端が開口する断面矩形状の角筒状部223と、角筒状部223の上縁に沿って形成されたフランジ部224と、複数の締結具29によってフランジ部224に着脱可能に取り付けられる矩形平板状の操作用カバー28とを備えている。
【0022】
円筒状部221の周壁には、角筒状部223の内部に開口する第1の開口部222が形成されている。第1の開口部222には、メンテナンスホール18の周縁部が嵌入されて、全周が溶接により接合されている。
【0023】
ジャケット部材22が上記の構成を備えることで、ジャケット部材22の内部において弁箱12の周囲に形成される内部空間は、円筒状部221の周壁の一部からなる仕切部23によって仕切られて、角筒状部223の内部に操作室24が形成され、円筒状部221の内部に非操作室26が形成されている。操作室24には、メンテナンスホール18を開閉可能に覆うメンテナンス用カバー20が収容され、操作室24を開閉可能に閉じる操作用カバー28を開くことで、外部からメンテナンス用カバー20の開閉操作を行うことができる。
【0024】
図2に示すように、操作室24と非操作室26とは、開閉弁30を備える真空連結流路32によって互いに連結されている。また、操作用カバー28には、操作室24の内部を外部と連通する外部連通路34が接続されており、外部連通路34に真空破壊弁36が設けられている。真空連結流路32および外部連通路34は、例えば配管により形成されるが、その構成や配置は特に限定されるものではない。
【0025】
円筒状部221の周壁における第1の開口部222よりも上流側には、上方に膨出した部分に第2の開口部225が形成されている。第2の開口部225には、挿通部13が嵌入されて、全周が溶接により接合されている。
【0026】
上記の構成を備える弁装置10は、開閉弁30を開き、真空破壊弁36を閉じた状態で、真空二重配管8の真空層6の内部を真空引きすることにより、ジャケット部材22の操作室24および非操作室26が真空状態に維持される。これにより、低温流体が流れる弁箱12の周囲全体を真空断熱することができる。
【0027】
弁装置10のメンテナンス方法は、開閉弁30を閉じて、真空破壊弁36を開くことにより、操作室24のみを真空ブレイクした後、操作用カバー28を開くことで、作業者がメンテナンス用カバー20の開閉操作を行う工程を備えることができる。非操作室26は真空状態が維持されるため、仕切部23に断熱材を施工する等して、操作室24と非操作室26との間の断熱性を高めることが好ましい。
【0028】
メンテナンス作業の終了後は、メンテナンス用カバー20および操作用カバー28を閉じた後に、真空破壊弁36を閉じて開閉弁30を開くことにより、非操作室26を介して操作室24の真空引きが行われ、通常運用を行うことができる。
【0029】
このように、本実施形態の弁装置10によれば、操作室24からなる最小限のスペースのみを真空ブレイクするだけで、メンテナンス用カバー20を開閉してメンテナンス作業を行うことができるため、従来のように真空ブレイクが広範囲にわたるおそれがなく、メンテナンスの作業性を向上させることができる。
【0030】
また、メンテナンス用カバー20の位置や形状に合わせて操作室24を形成することで、ジャケット部材22が弁箱12の全体を円筒状に覆う必要がないため、ジャケット部材22の小型化を図ることができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態においては、メンテナンス用カバー20が操作室24に収容される一方、弁軸12が挿通される挿通部13の一部は、非操作室26に収容されるように構成しているが、図3に示す弁装置10’のように、挿通部13の一部が操作室24に収容されるように構成してもよい。操作室24の上部は上壁226で覆われており、この上壁226に、操作用カバー28により開閉される開口と、挿通部13が挿通される開口とを形成することができる。なお、図3において、図1と同様の構成部分には同一の符号を付している。
【0032】
図3に示す弁装置10’によれば、操作室24の内部空間は若干大きくなる一方で、挿通部13の一部をメンテナンス用カバー20と共に操作室24に一体的に収容するため、ジャケット部材22の製造を容易にして低コスト化を図ることができる。
【符号の説明】
【0033】
2 内管
4 外管
6 真空層
8 真空二重配管
10 真空二重配管用弁装置
12 弁箱
13 挿通部
14 弁軸
16 弁体
18 メンテナンスホール
20 メンテナンス用カバー
22 ジャケット部材
221 円筒状部
223 角筒状部
23 仕切部
24 操作室
26 非操作室
28 操作用カバー
30 開閉弁
32 真空連結管
34 外部連通路
36 真空破壊弁
図1
図2
図3
図4