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特開2024-109239収容ユニット、豆煮装置及び煮豆製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109239
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】収容ユニット、豆煮装置及び煮豆製造方法
(51)【国際特許分類】
   A47J 27/14 20060101AFI20240806BHJP
   A23L 11/00 20210101ALN20240806BHJP
【FI】
A47J27/14 C
A23L11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013941
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】507328863
【氏名又は名称】株式会社キューレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】網内 亜貴子
(72)【発明者】
【氏名】開 礼菜
【テーマコード(参考)】
4B020
4B054
【Fターム(参考)】
4B020LB27
4B020LP04
4B054AA02
4B054AA16
4B054AB01
4B054AC03
4B054BA20
4B054BB01
4B054CA01
4B054CA05
4B054CB02
(57)【要約】
【課題】味わいの低減を抑えつつ豆類を煮るのに有利な技術を提供する。
【解決手段】煮液を貯留可能な釜の内側に配置される収容ユニットであって、煮液によって煮られる豆類が収容される収容スペースを区画する天井部、側壁部及び底部を備え、天井部は、収容スペースの外側と収容スペースとを連通する開口を少なくとも1つ以上有し、側壁部及び底部は開口を有さない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
煮液を貯留可能な釜の内側に配置される収容ユニットであって、
前記煮液によって煮られる豆類が収容される収容スペースを区画する天井部、側壁部及び底部を備え、
前記天井部は、前記収容スペースの外側と前記収容スペースとを連通する開口を少なくとも1つ以上有し、
前記側壁部及び前記底部は前記開口を有さない、収容ユニット。
【請求項2】
前記天井部は、前記側壁部に対して着脱可能に設けられる、
請求項1に記載の収容ユニット。
【請求項3】
前記収容ユニットは、複数の収容容器を有する、
請求項1又は2に記載の収容ユニット。
【請求項4】
前記収容ユニットは、前記釜の内側においてお互いに離間して配置される複数の収容容器を有する、
請求項1又は2に記載の収容ユニット。
【請求項5】
煮液を貯留可能な釜と、
前記釜の内側に配置される請求項1又は2に記載の収容ユニットと、を備える豆煮装置。
【請求項6】
収容ユニットの収容スペースに収容される豆類を、釜内に貯留される煮液に浸す工程と、
前記煮液に浸されている前記豆類から流出した灰汁の少なくとも一部を、前記釜内から取り除く工程と、を含み、
前記収容ユニットは、前記収容スペースを区画する天井部、側壁部及び底部を有し、
前記天井部は、前記収容スペースの外側と前記収容スペースとを連通する開口を少なくとも1つ以上有し、
前記側壁部及び前記底部は前記開口を有さず、
前記豆類から流出した前記灰汁の少なくとも一部は、前記天井部が有する前記少なくとも1つ以上の開口を通って、前記収容スペースの外側に流出する、
煮豆製造方法。
【請求項7】
前記釜内に貯留される前記煮液に前記豆類が浸された後に前記収容スペースに残存する液体を、前記釜内に貯留される前記煮液から取り出された前記豆類に添加する工程を含む、請求項6に記載の煮豆製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収容ユニット、豆煮装置及び煮豆製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
餡を製造する場合などにおいて多量の小豆を煮熟するため、多数の貫通孔を有するバスケットに小豆を収容しつつ、当該バスケットを小豆と一緒に釜内の水(煮液)に沈めることが一般に行われている。
【0003】
特許文献1が開示する循環式豆煮機では、煮釜よりも小さな煮カゴ内に豆を入れ、当該煮カゴが煮釜内に配置され、煮釜外部で加熱された水を煮釜内に導入することで、煮カゴ内の豆が煮られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-267023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
収容容器を釜の内側の水(煮液)に沈めて収容容器内の豆を煮熟する場合、釜内の水が収容容器内に適切に流入するように、収容容器には貫通孔が設けられる。そのような貫通孔は、通常、豆が収容される収容容器の全体にわたって多数が設けられることが多い。また特許文献1の循環式豆煮機で用いられる煮カゴのように、豆が収容される収容容器の底部及び側部のうちの少なくともいずれかには、そのような貫通孔が形成される。
【0006】
豆を煮熟する過程で豆から流出する灰汁(渋と呼ばれる成分も含む)は、煮熟後の豆の味わいを損なうものであるため、煮汁から取り除かれつつ豆の煮熟が行われることが好ましい。
【0007】
その一方で、豆を煮熟する過程で、豆の良好な味わいに寄与する旨み成分も、灰汁と一緒に豆から流出する。このようにして豆から流出した旨み成分は、収容容器の貫通孔を通って収容容器外に流出し、灰汁と一緒に煮汁から取り除かれてしまう。このように豆を煮熟することで旨み成分が豆から流出して取り除かれるため、煮熟の結果得られる煮豆の味わいが損なわれる。
【0008】
本開示は上述の事情に鑑みてなされたものであり、味わいの低減を抑えつつ豆類を煮るのに有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、煮液を貯留可能な釜の内側に配置される収容ユニットであって、煮液によって煮られる豆類が収容される収容スペースを区画する天井部、側壁部及び底部を備え、天井部は、収容スペースの外側と収容スペースとを連通する開口を少なくとも1つ以上有し、側壁部及び底部は開口を有さない、収容ユニットに関する。
【0010】
本開示の他の態様は、煮液を貯留可能な釜と、釜の内側に配置される上記の収容ユニットと、を備える豆煮装置に関する。
【0011】
本開示の他の態様は、収容ユニットの収容スペースに収容される豆類を、釜内に貯留される煮液に浸す工程と、煮液に浸されている豆類から流出した灰汁の少なくとも一部を、釜内から取り除く工程と、を含み、収容ユニットは、収容スペースを区画する天井部、側壁部及び底部を有し、天井部は、収容スペースの外側と収容スペースとを連通する開口を少なくとも1つ以上有し、側壁部及び底部は開口を有さず、豆類から流出した灰汁の少なくとも一部は、天井部が有する少なくとも1つ以上の開口を通って、収容スペースの外側に流出する、煮豆製造方法に関する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、味わいの低減を抑えつつ豆類を煮るのに有利である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、豆煮装置の一例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す収容ユニット(収容容器)の一例を示す斜視図である。
図3図3は、煮豆製造方法の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、上述の図1に示す豆煮装置(特に図2に示す収容容器)を使った煮豆製造方法の一例を説明するための豆煮装置の概念図である。
図5図5は、天井部、側壁部及び底部の全体にわたって多数の貫通孔を有する収容容器を使った煮豆製造方法の一例を説明するための豆煮装置の概念図である。
図6図6は、豆類(煮豆)の煮熟後に収容容器に残存する煮液の味わい評価についてのレーダチャートの一例を示す。
図7図7は、収容ユニットの一変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態について説明する。
【0015】
図1は、豆煮装置10の一例を示す斜視図である。図2は、図1に示す収容ユニット(収容容器30)の一例を示す斜視図である。
【0016】
図1に示す豆煮装置10は、釜20及び収容ユニット(複数の収容容器30)を有する。
【0017】
釜20は内側スペースS1に煮液を貯留可能である。図1に示す釜20は、円筒状の側壁部と、当該側壁部の下部に液密に取り付けられる円盤状の底部とを有し、当該側壁部及び当該底部によって上方が開放された内側スペースS1が区画される。釜20の底部と側壁部との間から液体(例えば煮液)が漏出しないように、釜20の底部は側壁部に対して隙間無く取り付けられている。
【0018】
釜20の内側スペースS1に貯留される煮液は限定されず、水であってもよいし、水に調味料等が加えられたものであってもよいし、水以外の液体であってもよい。煮液の温度は限定されず、例えば常温(5~35℃)であってもよいし、常温よりも高い温度(例えば沸点又は沸点近傍の温度)であってもよい。なお、後述のように豆類が煮液に漬けられて当該豆類から煮液に灰汁や旨み成分が流出するが、そのような灰汁や旨み成分を含む煮液全体も、単に煮液と呼ばれる。
【0019】
図1に示す釜20は、更に、内側スペースS1の中心位置において中心軸線Cに沿って高さ方向に延びる中心軸体22を有する。中心軸体22は、釜20の底部に固定されており、内側スペースS1において複数の収容容器30を位置決めするのに役立つ。中心軸体22は、取付具を介して釜20の底部に取り付けられてもよいし、釜20の底部と一体的に設けられて当該底部から取り外せないように設けられてもよい。また中心軸体22自体が設けられなくてもよい。
【0020】
複数の収容容器30は、釜20の内側スペースS1に配置され、煮液によって煮られる豆類が収容される収容スペースS2を有する。
【0021】
煮液によって煮られる豆類に含まれる豆は限定されず、例えば小豆であってもよい。煮液によって煮られる豆類は、豆のみを含んでいてもよいし、豆に加えて豆以外の任意の食材(通常は固形物)を含んでいてもよい。
【0022】
収容スペースS2は、収容容器30の天井部31、側壁部32及び底部33によって区画される。
【0023】
天井部31は、収容容器30(収容スペースS2)の外側と収容スペースS2とを連通する開口35を少なくとも1つ以上(図1及び図2に示す例では多数)有する。一方、側壁部32及び底部33は、そのような開口35を有さない。側壁部32及び底部33は、一体的に構成されていてもよいし、別体によって構成されていてもよいが、お互いに液密に接続されており、側壁部32と底部33との間を通って液体(煮液等)が流通することは基本的にない。
【0024】
このように収容スペースS2は、下方及び側方においては完全に閉じられて収容容器30の外部からは遮断されており、上方において開口35を介してのみ収容容器30の外部につながる。したがって収容容器30が釜20の内側スペースS1に配置されている状態で、収容スペースS2内への液体(煮液等)の流入及び収容スペースS2からの液体(灰汁を含みうる)の流出は、収容スペースS2の上方の開口35を介してのみ行われる。
【0025】
開口35の形状及びサイズは限定されない。ただし後述のように灰汁が開口35を通って収容スペースS2から収容容器30の外側に流出しやすく且つ豆類が開口35を通って収容スペースS2から収容容器30の外側に流出しにくいような形状及びサイズを、開口35は有することが好ましい。
【0026】
各収容容器30の天井部31は、側壁部32に対して着脱可能に設けられる。天井部31が側壁部32から取り外されて収容スペースS2の上方に開放部が形成されている状態で、当該開放部を介し、収容スペースS2に煮熟前の豆類が投入されたり、収容スペースS2から煮熟後の豆類が取り出されたりすることができる。
【0027】
図1及び図2に示す例では収容スペースS2の天面を形成する天井部31の全体が、収容容器30の内側の収容スペースS2を開閉する開閉部を構成する。ただし天井部31の一部のみによって当該開閉部が構成されてもよい。或いは、天井部31以外の収容容器30の部分(側壁部32及び/又は底部33)によって当該開閉部が構成されてもよい。ただし後述のように側壁部32及び底部33は、収容スペースS2の液体を収容容器30(収容スペースS2)の外側に流出させない液密構造を有することが好ましい。そのため、収容容器30の内側の収容スペースS2を開閉する開閉部は、天井部31の一部又は全部によって構成されることが好ましい。
【0028】
本実施形態では収容容器30が複数(図1に示す例では6つ)設けられる。これらの複数の収容容器30は、釜20の内側スペースS1において、当該内側スペースS1の中心軸線C(中心軸体22)に関して対称的に配置される。図1に示す例では6つの収容容器30が、内側スペースS1において中心軸体22(中心軸線C)の周りで円周上に回転対称(特に6回対称)を持つように配置される。
【0029】
これらの収容容器30は、2つの円環状の支持具15の内側に配置され、当該支持具15により支持されて外側(すなわち中心軸線Cを基準とした放射方向)への移動が制限される。一方、各収容容器30の内側(すなわち中心軸線Cに向かう半径方向)への移動が中心軸体22によって制限される。
【0030】
これらの収容容器30は、釜20の内側側壁面及び中心軸体22に沿って高さ方向に昇降可能に設けられている。すなわちこれらの収容容器30は、中心軸体22に沿って降下させられることで釜20の内側スペースS1に配置され、中心軸体22に沿って上昇させられることで内側スペースS1から釜20の外側に取り出される。なお本例では収容容器30が釜20に対して能動的に移動可能に設けられるが、釜20が収容容器30に対して能動的に移動可能に設けられてもよい。
【0031】
次に、上述の図1及び図2に示す豆煮装置10を使って豆類を煮て煮豆を製造する煮豆製造方法の一例について説明する。
【0032】
図3は、煮豆製造方法の一例を示すフローチャートである。図4は、上述の図1に示す豆煮装置10(特に図2に示す収容容器30)を使った煮豆製造方法の一例を説明するための豆煮装置10の概念図である。図5は、天井部、側壁部及び底部の全体にわたって多数の開口35(貫通孔)を有する収容容器30を使った煮豆製造方法の一例を説明するための豆煮装置10の概念図である。
【0033】
図4及び図5では釜20の内側の状態が示されており、釜20の内側に配置される収容容器30内の収容スペースS2に収容されている豆類Bが点線によって透視的に描かれている。
【0034】
なお図4及び図5は理解を容易にするために豆煮装置10が簡略化して示されており、特に図4に示す豆煮装置10は、図1及び図2に示す豆煮装置10と具体的な構成が異なっている。例えば、図4に示す釜20の底部には排液ライン23が設けられている。当該排液ライン23は弁(図示省略)によって開閉される。排液ライン23が弁によって閉じられることで、釜20の内側スペースS1に液体(煮液L)を貯留できる。一方、排液ライン23が弁によって開かれることで、釜20の内側スペースS1の液体(煮液L)を、排液ライン23を介して排出できる。また釜20の上方開口部からあふれ出す液体(煮液L)を受け止めるための液受け容器17が設けられる。
【0035】
煮豆製造方法は、一例として図3に示す煮液煮沸工程S11、豆類投入工程S12、煮液再煮沸工程S13、煮液補充工程S14、煮熟工程S15、煮豆取出工程S16及び煮豆練上工程S17を含む。
【0036】
煮液煮沸工程S11では、釜20内に貯留される煮液Lが、収容容器30に収容される豆類Bが当該煮液Lに浸されるのに先立って、加熱されて沸騰される。本例の煮液煮沸工程S11では、釜20の内側スペースS1の一部領域(例えば内側スペースS1の6~7割の領域)のみが煮液Lによって占められるように煮液Lが釜20内に貯留される。
【0037】
釜20内の煮液Lを加熱する方法は限定されない。加熱装置(図示省略)は、ガスを燃焼させたり、電気ヒータに電気を流して電気ヒータを発熱させたり、IH(Induction Heating:誘導加熱)を利用して電磁誘導(渦電流)を生じさせたりすることで、釜20及び釜20内の煮液Lを加熱することが可能である。また加熱装置は、高温の蒸気を発生させて当該蒸気を使って釜20を加熱することで、釜20内の煮液Lを加熱することが可能である。
【0038】
豆類投入工程S12では、収容容器30の収容スペースS2に収容される豆類Bが、釜20内に貯留される煮液Lに浸される。すなわち上述の煮液煮沸工程S11で煮液Lが一旦沸騰させられた後、収容容器30を豆類Bと一緒に釜20内に配置して煮液L内に沈めることで、豆類Bが煮液L内に投入される。
【0039】
この際、収容容器30の全体が釜20内の煮液Lに沈められ、収容容器30の上面が釜20内の煮液Lの液面(上面)よりも下方に位置づけられる。これにより釜20の内側スペースS1における煮液Lが、天井部31の開口35を介して収容容器30内の収容スペースS2に流入し、その結果、収容スペースS2において豆類Bが煮液Lに浸される。
【0040】
なお、煮液Lが沸騰する前に豆類Bを釜20内の煮液Lに投入してもよい。具体的には、煮液Lの加熱を開始する前に、豆類Bが釜20内の煮液Lに投入されてもよいし、煮液Lの加熱の開始後且つ煮液Lが沸騰する前に、豆類Bが釜20内の煮液Lに投入されてもよい。これらの場合、豆類Bが釜20内の煮液Lに存在している状態で当該煮液Lが沸騰するため、後述の「煮液再煮沸工程S13」は行われないが、「灰汁除去工程」は必要に応じて行われる。
【0041】
煮液再煮沸工程S13では、釜20の内側スペースS1の煮液Lに収容容器30が豆類Bとともに沈められている状態で、当該煮液Lが加熱されて再沸騰される。この際、煮液Lに浸されている豆類Bから灰汁が流出する。
【0042】
灰汁の少なくとも一部は、煮液L中を上昇して、煮液Lの液面(上面)の近傍において滞留する性質を有する。したがって豆類Bから流出した灰汁の少なくとも一部は、収容容器30の天井部31の開口35を通って、収容容器30(収容スペースS2)の外側に流出する。このようにして収容容器30の外側に流出した豆類Bからの灰汁は、人力によって又は機械的に煮液Lの少なくとも一部を釜20内から排出することで取り除かれる(灰汁除去工程)。
【0043】
煮液補充工程S14では、灰汁の少なくとも一部が煮液Lの一部とともに釜20内から取り除かれた後、釜20の内側スペースS1に新たな煮液Lが追加される。この煮液補充工程S14は、上述の煮液再煮沸工程S13と同時的に行われてもよく、内側スペースS1の煮液Lが再沸騰のために加熱されつつ、新たな煮液Lが内側スペースS1に追加されてもよい。したがって上述の灰汁除去工程が行われつつ煮液補充工程S14が行われてもよく、内側スペースS1の煮液Lから灰汁が取り除かれつつ、必要に応じて新たな煮液Lが内側スペースS1に追加されてもよい。
【0044】
煮熟工程S15では、釜20内の煮液Lの温度が所望温度に調整されつつ、釜20内に配置される収容容器30内の豆類Bが煮込まれる。すなわち釜20内の煮液Lが加熱装置(図示省略)によって継続的に又は断続的に加熱されることで、豆類Bは収容容器30内において所望温度の煮液Lにより煮込まれる。
【0045】
そして煮豆取出工程S16では、釜20の内側に配置される収容容器30内の豆類Bの煮熟が行われた後、収容容器30が上昇されて収容容器30の全体が釜20の内側スペースS1から釜20の外側に移動させられる。そして収容容器30の収容スペースS2から煮液Lと豆類Bが同時に取り出される。または収容容器30の収容スペースS2から豆類Bが、煮液Lとは別に、取り出されてもよい。これにより豆類Bは、釜20及び収容容器30内の煮液Lから煮豆として取り出される。
【0046】
本実施形態では、煮豆として取り出された豆類Bを練り上げる煮豆練上工程S17が更に行われる。この煮豆練上工程S17では、釜20内に貯留される煮液Lに豆類Bが浸された後に収容スペースS2に残存する液体(煮液L)が、釜20内及び収容容器30内に貯留される煮液Lから取り出された豆類Bに添加され、当該豆類Bの練り上げが行われる。
【0047】
収容容器30の収容スペースS2において煮液Lに浸される豆類Bからは、良好な味わいに寄与する旨み成分Jも、灰汁と一緒に流出する。このようにして豆類Bから流出した旨み成分Jの一部は灰汁のように煮液Lにおいて上昇するかもしれないが、旨み成分Jの少なくとも一部は、煮液Lにおいて下降したり、上昇も下降もせずにほぼ同じ高さ領域で滞留したりする傾向を示す。
【0048】
図5に示すように収容容器30の側壁部32及び底部33が開口35を有する場合、煮液L中で上昇することなく漂う旨み成分Jは、煮液Lとともに側壁部32及び底部33の開口35を通って収容容器30(収容スペースS2)の外側に流出する。この場合、収容容器30の収容スペースS2における旨み成分Jの濃度は必ずしも高くはなく、豆類Bは、収容容器30内において高濃度の旨み成分Jに晒されずに煮られる。
【0049】
一方、図4に示すように収容容器30の側壁部32及び底部33が開口35を有していない場合、煮液L中で上昇することなく漂う旨み成分Jは、収容容器30内の収容スペースS2において豆類Bとともに滞留する。そのため収容容器30内の収容スペースS2には、豆類Bから流出した旨み成分Jが徐々に溜まり、豆類Bは、そのようにして収容容器30内に溜まった高濃度の旨み成分Jに晒されながら煮られる。これにより濃厚な味及び風味を持つ餡を作り出すことが可能である。
【0050】
上述の煮豆練上工程S17では、釜20内に貯留される煮液Lに豆類Bが浸された後に収容スペースS2に残存するそのような高濃度の旨み成分Jを含む液体(煮液L)が、豆類B(煮豆)に添加される。その結果、豆類B(煮豆)は、高濃度の旨み成分Jによって味わいが更に増大されつつ練り上げられ、最終的に濃厚な味及び風味を持つ餡を作り出すことが可能である。
【0051】
なお煮豆練上工程S17では、高濃度の旨み成分Jを含む液体(煮液L)以外の食材が、豆類B(煮豆)に加えられてもよい。典型的には、糖などの調味料が更に加えられた状態で豆類B(煮豆)が練り上げられてもよい。
【0052】
以上説明したように本実施形態によれば、天井部31のみに開口35が設けられる収容容器30を用いることで、収容容器30の収容スペースS2から灰汁を効果的に排除しつつ、高濃度の旨み成分Jを収容スペースS2にとどめておくことができる。その結果、収容容器30の収容スペースS2に収容される豆類Bは、灰汁が低減され且つ旨み成分Jの濃度が増大された収容スペースS2の煮液Lによって煮熟される。
【0053】
このように本実施形態によれば豆類Bが高濃度の旨み成分Jに晒されつつ煮られるため、味わいの低減を抑えつつ豆類Bを煮ることができ、濃厚な味わいを有する豆類Bを煮豆として提供することが可能である。
【0054】
また灰汁が排除され且つ高濃度の旨み成分Jを有する収容スペースS2の煮液Lを、豆類B(煮豆)に添加して練り上げることによって、より深い味わいの餡を作り出すことができる。
【0055】
また収容容器30の天井部31が側壁部32に対して着脱可能に設けられることで、収容容器30内の収容スペースS2に対する豆類Bの投入及び収容スペースS2からの豆類B(煮豆)の取り出しを容易に行うことができる。
【0056】
また複数の収容容器30が、釜20の内側において、釜20の内側スペースS1の中心軸線Cに関して対称的に配置されることで、豆類Bの煮熟が収容容器30間で不均一になるのを抑えることができ、豆類Bを均一的に煮ることができる。
【0057】
また収容容器30に収容される豆類Bが釜20内に貯留される煮液Lに浸されるのに先立って、当該煮液Lを加熱することで、豆類Bを効率良く煮ることができる。また灰汁の少なくとも一部が煮液Lから取り除かれた後、釜20内に煮液Lを追加することで、灰汁が低減された十分量の煮液Lによって豆類Bを適切に煮ることができる。
【0058】
[実施例]
本件発明者は、上述の豆煮装置10(図1及び図2参照)を使って上述の煮豆製造方法(図3参照)に基づいて煮豆を作り、当該煮豆を作った後に各収容容器30の収容スペースS2に残存する煮液L(煮汁)の味わいの評価を行った。
【0059】
具体的には、豆類Bとして小豆を準備し、煮液Lとして水を準備した。その後、釜20の内側スペースS1(内側スペースS1の全体の6割程度)に煮液Lを入れて、当該煮液Lを内側スペースS1において沸騰させた(煮液煮沸工程S11)。その後、豆類Bを収容する収容容器30が釜20の内側スペースS1に配置され(豆類投入工程S12)、釜20内の煮液Lを加熱して再沸騰させつつ、当該煮液Lからの灰汁の除去(いわゆる渋切を含む)が行われた(煮液再煮沸工程S13及び灰汁除去工程)。
【0060】
そして釜20の内側スペースS1に新たな煮液Lを補充して、内側スペースS1の全体を煮液Lによって充填し、内側スペースS1の煮液Lの加熱が続けられた(煮液補充工程S14及び煮熟工程S15)。
【0061】
そして豆類Bが煮液Lによって十分に加熱(煮熟)された後、収容容器30が釜20内の煮液Lから取り出され、収容容器30の収容スペースS2から豆類Bが取り出された(煮豆取出工程S16)。
【0062】
なお本評価では「釜20内の煮液Lに豆類Bが浸された後に収容スペースS2に残存する高濃度の旨み成分Jを含む液体が、煮液Lから取り出された豆類B(煮豆)に添加されつつ、当該豆類Bが練り上げられる煮豆練上工程S17(図3参照)」は行われなかった。
【0063】
そして豆類Bが取り出された後に収容容器30内に残る液体である煮汁(すなわち豆類Bから流出した高濃度の旨み成分Jを含む煮液L)について、味わいの評価を行った。具体的には、上述のようにして得られる煮液Lを、人工脂質膜型味覚センサーを用いる味認識装置(型番:TS-5000Z;株式会社インテリジェントセンサーテクノロジー製)を使って分析し、図6に示す分析結果を得た。
【0064】
図6は、豆類B(煮豆)の煮熟後に収容容器30に残存する煮液Lの味わい評価についてのレーダチャートの一例を示す。図6のレーダチャートでは、「苦味雑味」、「渋味刺激」、「旨味」、「塩味」、「苦味」、「渋味」、「旨味コク」及び「甘味」の観点(項目)で、煮汁(煮液L)の味わいが「-5」~「5」の点数で相対的に評価されている。各項目に関して「5」に近い点数ほど良好な評価結果を示し、「-5」に近い点数ほど悪い評価結果を示す。
【0065】
図6において「苦味雑味」は、低濃度ではコク、雑味、隠し味及び複雑さなどに相当する。「苦味」は、一般食品に見られる後味の苦味に相当する。「渋味刺激」は、渋味物質に由来し、低濃度では刺激味及び隠し味に相当する。「渋味」は、例えばカテキンやタンニンなどが呈する味である。「旨味」は、アミノ酸や核酸に由来するダシ味である。「旨味コク」は、持続性のある旨味であり、旨味の余韻に相当する。「塩味」は、食塩のような無機塩由来の味である。「甘味」は、糖類や糖アルコールの甘味である。
【0066】
なお図6のレーダチャートにおいて「0」は基準点数を表す。この基準点数(「0」)は、例えば天井部31、側壁部32及び底部33のすべてに多数の開口35が形成されている収容容器30(図5参照)を使って豆類B(煮豆)を煮熟した後に収容容器30内に残る煮液Lの味わい評価に基づいて決められてもよい。
【0067】
その結果、図6に示すように、天井部31のみに開口35が設けられる収容容器30(図1図2及び図4参照)を使うことによって、収容容器30内の煮液Lの苦味雑味及び渋味刺激を低減しつつ旨味を増大できることが分かった。豆類Bをこのような煮液Lに晒しつつ煮熟することで、豆本来の味わいが低減するのを抑えつつ豆類Bを煮ることができ、濃厚な味わいを有する豆類Bを煮豆として提供することができる。また、このように素材本来の味を大切にする煮豆製法は、健康で豊かな食の実現を図るSDGs(Sustainable Development Goals)にもつながる。
【0068】
[変形例]
図7は、収容ユニットの一変形例を示す斜視図である。複数の収容容器30が設けられる場合、複数の収容容器30は、釜20の内側(内側スペースS1)においてお互いに離間して配置されてもよく、水平方向に離間して配置されてもよいし(図1参照)、高さ方向に離間して配置されてもよい(図7参照)。図7に示す例では、各収容容器30は全体として円柱状の形状を有し、円盤状の天井部31及び底部33と、中空円筒状の側壁部32とを含む。図7に示す複数の収容容器30は、図示しない固定部に取り付けられ、当該固定具によって一体的に支持され且つ一体的に移動可能に設けられてもよい。この場合、全ての収容容器30が共通の固定具(例えば柱状部材)に取り付けられてもよいし、高さ方向に隣り合う収容容器30のみを連結する固定具が設けられてもよい。
【0069】
高さ方向に複数の収容容器30が並べられる場合、複数の収容容器30が釜20の内側に配置された際に各収容容器30の天井部31の直上の空間に内側スペースS1の煮液が流入するように、固定具が設けられることが好ましい。したがって複数の収容容器30が1又は複数の固定部(図示省略)に取り付けられる場合、1又は複数の固定部は高さ方向に隣り合う収容容器30間の空間を完全には閉鎖しないように設けられることが好ましい。この場合、煮液Lを、各収容容器30の天井部31の開口35を介して各収容容器30の収容スペースS2に適切に供給でき、収容スペースS2における豆類Bを煮液Lによって適切に煮ることができる。また灰汁を収容スペースS2から各収容容器30(収容スペースS2)の外側に適切に流出させて、釜20内の煮液Lの液面近傍に移動させることができる。
【0070】
なお図7に示す収容ユニット(複数の収容容器30)は、中心軸体22(図1参照)が設けられていない釜20の内側スペースS1に配置される。ただし図示は省略するが、複数の収容容器30が高さ方向に離間して配置される場合であっても、中心軸体22を配置可能な貫通穴部を各収容容器30に設けることによって、図1に示すような中心軸体22が設けられている釜20を使用することが可能である。
【0071】
また図1図2及び図7に示す例では、お互いに別個の収容スペースS2を有する複数の収容容器30が設けられているが、1つの収容スペースS2を有する単数の収容容器30が設けられてもよい。
【0072】
本明細書で開示されている実施形態及び変形例はすべての点で例示に過ぎず限定的には解釈されないことに留意されるべきである。上述の実施形態及び変形例は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態での省略、置換及び変更が可能である。例えば上述の実施形態及び変形例が全体的に又は部分的に組み合わされてもよく、また上述以外の実施形態が上述の実施形態又は変形例と組み合わされてもよい。また、本明細書に記載された本開示の効果は例示に過ぎず、その他の効果がもたらされてもよい。
【0073】
上述の技術的思想を具現化する技術的カテゴリーは限定されない。例えば上述の装置を製造する方法或いは使用する方法に含まれる1又は複数の手順(ステップ)をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムによって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。またそのようなコンピュータプログラムが記録されたコンピュータが読み取り可能な非一時的(non-transitory)な記録媒体によって、上述の技術的思想が具現化されてもよい。
【0074】
[付記]
上述からも明らかなように、本開示は以下の態様を含む。
【0075】
[態様1]
煮液を貯留可能な釜の内側に配置される収容ユニットであって、
前記煮液によって煮られる豆類が収容される収容スペースを区画する天井部、側壁部及び底部を備え、
前記天井部は、前記収容スペースの外側と前記収容スペースとを連通する開口を少なくとも1つ以上有し、
前記側壁部及び前記底部は前記開口を有さない、収容ユニット。
【0076】
[態様2]
前記天井部は、前記側壁部に対して着脱可能に設けられる、態様1に記載の収容ユニット。
【0077】
[態様3]
前記収容ユニットは、複数の収容容器を有する、
態様1又は2に記載の収容ユニット。
【0078】
[態様4]
前記収容ユニットは、前記釜の内側においてお互いに離間して配置される複数の収容容器を有する、
態様1又は2に記載の収容ユニット。
【0079】
[態様5]
煮液を貯留可能な釜と、
前記釜の内側に配置される態様1~4に記載の収容ユニットと、を備える豆煮装置。
【0080】
[態様6]
収容ユニットの収容スペースに収容される豆類を、釜内に貯留される煮液に浸す工程と、
前記煮液に浸されている前記豆類から流出した灰汁の少なくとも一部を、前記釜内から取り除く工程と、を含み、
前記収容ユニットは、前記収容スペースを区画する天井部、側壁部及び底部を有し、
前記天井部は、前記収容スペースの外側と前記収容スペースとを連通する開口を少なくとも1つ以上有し、
前記側壁部及び前記底部は前記開口を有さず、
前記豆類から流出した前記灰汁の少なくとも一部は、前記天井部が有する前記少なくとも1つ以上の開口を通って、前記収容スペースの外側に流出する、
煮豆製造方法。
【0081】
[態様7]
前記釜内に貯留される前記煮液に前記豆類が浸された後に前記収容スペースに残存する液体を、前記釜内に貯留される前記煮液から取り出された前記豆類に添加する工程を含む、態様6に記載の煮豆製造方法。
【符号の説明】
【0082】
10 豆煮装置
15 支持具
17 液受け容器
20 釜
22 中心軸体
23 排液ライン
30 収容容器
31 天井部
32 側壁部
33 底部
35 開口
B 豆類
C 中心軸線
L 煮液
J 旨み成分
S1 内側スペース
S2 収容スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7