(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109240
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】S-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品並びにS-フルルビプロフェン及びL-メントールの安定化方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/192 20060101AFI20240806BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240806BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20240806BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240806BHJP
【FI】
A61K31/192
A61K9/70 401
A61K47/32
A61K47/02
A61K47/44
A61K47/06
A61K47/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013942
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】弁理士法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 達成
(72)【発明者】
【氏名】岳川 明彦
(72)【発明者】
【氏名】深町 隆広
(72)【発明者】
【氏名】林 茂樹
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA74
4C076AA76
4C076AA79
4C076AA84
4C076BB31
4C076CC04
4C076DD21
4C076DD34
4C076DD37S
4C076DD37T
4C076EE03A
4C076EE49
4C076EE53
4C076FF02
4C076FF27
4C076FF28
4C076FF36
4C076FF65
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA22
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA52
4C206NA03
4C206NA10
4C206ZA08
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】 S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層を備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤において、包装袋に封入して保存している間における前記S-フルルビプロフェン、及び、前記ハッカ油中のL-メントールの経時的な減少を十分に抑制せしめて保存中の安定性を向上させること。
【解決手段】 S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層と、支持体層とを備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤が、包装袋に封入されているS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品であって、
前記包装袋は、
シクロオレフィンコポリマーからなる最内層と、
前記最内層より外側に配置された酸素遮断層と、
前記酸素遮断層より外側に配置された外層と、
を少なくとも有する積層体により形成されていることを特徴とするS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層と、支持体層とを備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤が、包装袋に封入されているS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品であって、
前記包装袋は、
シクロオレフィンコポリマーからなる最内層と、
前記最内層より外側に配置された酸素遮断層と、
前記酸素遮断層より外側に配置された外層と、
を少なくとも有する積層体により形成されていることを特徴とするS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【請求項2】
前記酸素遮断層がアルミニウムからなるものであり、かつ、前記外層がポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも1種からなるものであることを特徴とする請求項1に記載のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【請求項3】
前記粘着剤層中に、粘着基剤として、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種が含有されていることを特徴とする請求項1に記載のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【請求項4】
前記粘着剤層中に、可塑剤として流動パラフィン、及び、粘着付与剤として水素添加ロジングリセリンエステルがさらに含有されていることを特徴とする請求項3に記載のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【請求項5】
前記包装製品を40℃、相対湿度75%の条件下で6ヶ月保存した後に、
前記S-フルルビプロフェンの含有量が、S-フルルビプロフェンの初期含有量(100質量%)に対して95質量%以上に維持され、かつ、
前記ハッカ油中のL-メントールの含有量が、L-メントールの初期含有量(100質量%)に対して99質量%以上に維持される、
ことを特徴とする請求項1~4のうちのいずれか一項に記載のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【請求項6】
S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層と、支持体層とを備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤が、包装袋に封入されているS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品において、前記S-フルルビプロフェン、及び、前記ハッカ油中のL-メントールを安定化させる方法であって、
前記包装袋として、
シクロオレフィンコポリマーからなる最内層と、
前記最内層より外側に配置された酸素遮断層と、
前記酸素遮断層より外側に配置された外層と、
を少なくとも有する積層体により形成されているものを用いることを特徴とするS-フルルビプロフェン及びL-メントールの安定化方法。
【請求項7】
前記包装製品を40℃、相対湿度75%の条件下で6ヶ月保存した後に、
前記S-フルルビプロフェンの含有量が、S-フルルビプロフェンの初期含有量(100質量%)に対して95質量%以上に維持され、かつ、
前記ハッカ油中のL-メントールの含有量が、L-メントールの初期含有量(100質量%)に対して99質量%以上に維持される、
ことを特徴とする請求項6に記載のS-フルルビプロフェン及びL-メントールの安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、S-フルルビプロフェン含有貼付剤が包装袋に封入されているS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品、並びに、S-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品におけるS-フルルビプロフェン及びL-メントールを安定化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルルビプロフェンはシクロオキシゲナーゼ活性を阻害して消炎鎮痛効果を示す非ステロイド系消炎鎮痛剤として知られており、ラセミ体であるフルルビプロフェンからS体のみが光学分割されたS-フルルビプロフェンは、ラセミ体より消炎鎮痛作用が格段に優れている。一方、ハッカ油は、S-フルルビプロフェンに対する溶解剤として結晶析出を防止して経皮吸収促進剤として作用するとともに、関節痛等に使用する一般用医薬品の有効成分として承認されており、有効成分としてS-フルルビプロフェンとともにハッカ油を含有する外用剤組成物が開発されている。
【0003】
例えば、特開平8-119859号公報(特許文献1)には、S-フルルビプロフェンとハッカ油とを含有する膏体を支持体に塗布展延してなる鎮痛抗炎症貼付剤が記載されている。
【0004】
また、特開2016-73623号公報(特許文献2)には、S-フルルビプロフェンとハッカ油とを含有する外用剤組成物を包装袋に封入している包装体においては、包装袋の最内層に接した製品中のS-フルルビプロフェンが包装袋に吸着して含有量が経時的に減少するという問題があり、前記包装袋の最内層をポリエチレンとすることにより、S-フルルビプロフェンの包装袋への移行が抑制されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-119859号公報
【特許文献2】特開2016-73623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討した結果、特許文献2に記載の包装体であっても、S-フルルビプロフェンの包装袋への移行の抑制は未だ十分ではなく、特に保存期間が6ヶ月を超えて長期化すると、包装袋に封入して保存している間におけるS-フルルビプロフェンの経時的な減少をより高水準に抑制することが要求され、さらに、ハッカ油中のL-メントールについても包装袋への吸着を十分に抑制して保存中の安定性を向上させることが要求されることが判明した。
【0007】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層を備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤において、包装袋に封入して保存している間における前記S-フルルビプロフェン、及び、前記ハッカ油中のL-メントールの経時的な減少を十分に抑制して保存中の安定性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層を備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤を封入する包装袋の最内層を構成する樹脂としてシクロオレフィンコポリマーを用いることにより、包装袋に封入して保存している間におけるS-フルルビプロフェン及びL-メントールの最内層への吸着及び/又は吸収が高水準に抑制され、S-フルルビプロフェン及びL-メントールの経時的な減少が十分に抑制されて保存中の安定性が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下の態様を提供する。
【0010】
[1]S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層と、支持体層とを備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤が、包装袋に封入されているS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品であって、
前記包装袋は、
シクロオレフィンコポリマーからなる最内層と、
前記最内層より外側に配置された酸素遮断層と、
前記酸素遮断層より外側に配置された外層と、
を少なくとも有する積層体により形成されているS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【0011】
[2]前記酸素遮断層がアルミニウムからなるものであり、かつ、前記外層がポリエチレン及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選択される少なくとも1種からなるものである[1]に記載のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【0012】
[3]前記粘着剤層中に、粘着基剤として、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体及びポリイソブチレンからなる群から選択される少なくとも1種が含有されている[1]又は[2]に記載のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【0013】
[4]前記粘着剤層中に、可塑剤として流動パラフィン、及び、粘着付与剤として水素添加ロジングリセリンエステルがさらに含有されている[1]~[3]のうちのいずれか1項に記載のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【0014】
[5]前記包装製品を40℃、相対湿度75%の条件下で6ヶ月保存した後に、
前記S-フルルビプロフェンの含有量が、S-フルルビプロフェンの初期含有量(100質量%)に対して95質量%以上に維持され、かつ、
前記ハッカ油中のL-メントールの含有量が、L-メントールの初期含有量(100質量%)に対して99質量%以上に維持される、
[1]~[4]のうちのいずれか1項に記載のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品。
【0015】
[6]S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層と、支持体層とを備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤が、包装袋に封入されているS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品において、前記S-フルルビプロフェン、及び、前記ハッカ油中のL-メントールを安定化させる方法であって、
前記包装袋として、
シクロオレフィンコポリマーからなる最内層と、
前記最内層より外側に配置された酸素遮断層と、
前記酸素遮断層より外側に配置された外層と、
を少なくとも有する積層体により形成されているものを用いる、S-フルルビプロフェン及びL-メントールの安定化方法。
【0016】
[7]前記包装製品を40℃、相対湿度75%の条件下で6ヶ月保存した後に、
前記S-フルルビプロフェンの含有量が、S-フルルビプロフェンの初期含有量(100質量%)に対して95質量%以上に維持され、かつ、
前記ハッカ油中のL-メントールの含有量が、L-メントールの初期含有量(100質量%)に対して99質量%以上に維持される、
[6]に記載のS-フルルビプロフェン及びL-メントールの安定化方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層を備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤において、包装袋に封入して保存している間における前記S-フルルビプロフェン、及び、前記ハッカ油中のL-メントールの経時的な減少を十分に抑制せしめて保存中の安定性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
【0019】
本発明のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品は、S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層と、支持体層とを備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤が、シクロオレフィンコポリマーからなる最内層と、前記最内層より外側に配置された酸素遮断層と、前記酸素遮断層より外側に配置された外層とを少なくとも有する積層体により形成されている包装袋に封入されているものである。
【0020】
また、本発明のS-フルルビプロフェン及びL-メントールを安定化させる方法は、S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層と支持体層とを備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤が包装袋に封入されているS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品において、前記包装袋として、シクロオレフィンコポリマーからなる最内層と、前記最内層より外側に配置された酸素遮断層と、前記酸素遮断層より外側に配置された外層とを少なくとも有する積層体により形成されている包装袋を用いる方法である。
【0021】
<S-フルルビプロフェン含有貼付剤>
先ず、本発明に係るS-フルルビプロフェン含有貼付剤について説明する。本発明に係るS-フルルビプロフェン含有貼付剤は、有効成分として、S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩及びハッカ油を含有する粘着剤層と、支持体層とを備える。前記粘着剤層は通常、支持体層の一方の面上に形成され、皮膚等への貼付を可能とするものであり、感圧接着性を有する粘着基剤と前記有効成分とを含有する層である。
【0022】
(有効成分)
S-フルルビプロフェンは、ラセミ体であるフルルビプロフェン(2-(2-フルオロ-4-ビフェニリル)プロピオン酸)からS体のみが光学分割された薬物であり、ラセミ体より消炎鎮痛作用が格段に優れている非ステロイド系消炎鎮痛剤である。
【0023】
S-フルルビプロフェンの薬学的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられるが、好ましくは、S-フルルビプロフェンが用いられる。
【0024】
S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩の含有量(初期含有量)としては、治療の目的により適宜調整することができるが、治療効果が発揮され易く、また好適な粘着物性を得られ易いという観点から、前記粘着剤層の全質量に対して0.1~10重量%であることが好ましく、0.5~5重量%であることがより好ましい。
【0025】
ハッカ油は、ハッカの地上部を水蒸気蒸留して得た油を冷却し、固形分を除去した精油であり、日本薬局方ではメントール(2-イソプロピル-5-メチルシクロヘキサノール)として30.0%以上を含むものである。ハッカ油の主成分は、L-メントール((1R,2S,5R)-5-メチル-2-(1-メチルエチル)シクロヘキサノール)、メントン、ピネン、カンフェン、メンテノン、リモネン、セスキテルペン等である。ハッカ油として、具体的には、日本薬局方 ハッカ油(長岡実業株式会社製)、日本薬局方 ハッカ油(日医工株式会社製)が挙げられる。
【0026】
ハッカ油は、S-フルルビプロフェンに対する溶解剤として結晶析出を防止して経皮吸収促進剤として作用するとともに、関節痛等に使用する一般用医薬品の有効成分として承認されている。
【0027】
ハッカ油の含有量(初期含有量)としては、前記粘着剤層の全質量に対して0.1~10重量%であることが好ましく、0.5~5重量%であることがより好ましい。ハッカ油の含有量が前記下限未満である場合には、S-フルルビプロフェンの結晶が析出し易くなる傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、粘着剤層の粘着力又は凝集力が低下する傾向にある。
【0028】
(粘着基剤)
本発明に係る粘着剤層に含有される感圧接着性を有する粘着基剤としては、特に制限されず、例えば、ゴム系粘着基剤、アクリル系粘着基剤、ポリウレタン系粘着基剤、シリコーン系粘着基剤、水性高分子からなるハイドロゲル、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0029】
ゴム系粘着基剤は、天然ゴム及び/又は合成ゴムを主体とする、非水系又は無水系の粘着組成物である。このような合成ゴムとしては、例えば、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴムが挙げられ、これらを単独又は複数組み合わせて用いることができる。ゴム系粘着基剤として、S-フルルビプロフェンの皮膚透過性をより高め、また本発明に係る粘着剤層の凝集力をより高めるという観点から、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)及びポリイソブチレン(PIB)からなる群から選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、SISとPIBとを組み合わせて用いることがより好ましい。また、ポリイソブチレンには、いわゆるブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)も含まれ、ゴム系粘着基剤として、ブチルゴムが用いられることも好ましい。
【0030】
前記ゴム系粘着基剤の総含有量は、前記粘着剤層の全質量に対して10~60質量%であることが好ましく、20~40質量%であることがより好ましい。前記合計含有量が前記下限未満である場合には、粘着剤層の凝集力が低下し、膏体残りが増加する傾向にあり、他方、前記上限を超える場合には、粘着剤層の粘着力が低下する傾向にあり、さらには貼付剤の生産性が低下する傾向にある。
【0031】
スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の具体例としては、Quintac(登録商標)3570C(商品名、日本ゼオン株式会社製)、SIS5002、SIS5229、SIS5505、SIS5505P(商品名、JSR株式会社製)、SIBSTAR(登録商標)T102(商品名、株式会社カネカ製)等が挙げられ、また、ポリイソブチレンには、いわゆるブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム)も含まれ、具体例としては、Oppanol(登録商標)N50、N80、N100、N150、B11、B12、B50、B80、B100、B120、B150、B220(商品名、BASF社製)、JSR(登録商標)Butyl065、268、365(商品名、JSR株式会社製)、X_Butyl(登録商標)RB100、101-3、301、402(商品名、ARLANXEO社製)、Exxon(登録商標)Butyl065、065S、068、068S、268、268S、365、365S(商品名、Exxon Mobile社製)、Butyl065、268、365(商品名、日本ブチル株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
また、ゴム系粘着基剤としてSISとPIBとを組み合わせて用いる場合、SISとPIBとの質量比(SISの質量:PIBの質量)が、1:2~10:1であることが好ましく、1:1~5:1であることがより好ましい。
【0033】
また、アクリル系粘着基剤としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリルモノマーのうちの少なくとも1種を重合又は共重合させた粘着基剤を用いることができる。さらに、ポリウレタン系粘着基剤としては、例えば、脂肪族系ポリウレタン粘着基剤、芳香族系ポリウレタン粘着基剤を用いることができ、また、シリコーン系粘着基剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等のシリコーンゴムを主成分とするものを用いることができる。さらに、水性高分子からなるハイドロゲルとしては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ヒドロキシエチルセルロース等を主成分とするものを用いることができる。
【0034】
(その他の成分)
本発明に係る粘着剤層には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、その他添加剤等がさらに含有されていてもよい。
【0035】
前記粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル、水素添加ロジンエステル、水素添加ロジングリセリンエステル、マレイン化ロジン、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂が挙げられ、これらの中でもS-フルルビプロフェンの皮膚透過性が高く、皮膚への刺激性は低く、また好適な粘着物性が得られ易いという観点から、水素添加ロジンエステル、水素添加ロジングリセリンエステル、脂環族飽和炭化水素樹脂、テルペン樹脂が好ましく、水素添加ロジングリセリンエステルがより好ましい。さらに、前記粘着付与剤として、具体的には、エステルガムA、AA-G、H又はHP(商品名、荒川化学工業株式会社製)、ハリタックSE10、PH、F85、FK100又はFK125(商品名、ハリマ化成グループ株式会社製)、パインクリスタルKE-100(商品名、荒川化学工業株式会社製)、KE-311(商品名、荒川化学工業株式会社製)、アルコンP-85又はP-100(商品名、荒川化学工業株式会社製)、YSレジン(商品名、ヤスハラケミカル株式会社製)が挙げられる。また、係る粘着付与剤としては1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
前記粘着付与剤の総含有量は、前記粘着剤層の全質量に対して1~40質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましい。前記総含有量が前記下限未満である場合には、粘着力及び長時間の皮膚への付着性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、S-フルルビプロフェンの経皮吸収性、保型性等が低下し、また貼付剤の剥離時の痛み、皮膚のかぶれ、ベタツキ等が増加する傾向にある。
【0037】
前記可塑剤としては、石油系オイル(例えば、流動パラフィン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル)、スクワラン、スクワレン、植物系オイル(例えば、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、ひまし油、トール油、ラッカセイ油)、二塩基酸エステル(例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート)、液状ゴム(例えば、液状ポリブテン、液状イソプレンゴム等)が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、前記可塑剤としては、皮膚に対する付着性がより向上する傾向にあるという観点から、流動パラフィン、液状ポリブテンが好ましく、流動パラフィンがより好ましい。
【0038】
前記可塑剤の総含有量は、前記粘着剤層の全質量に対して7~70質量%であることが好ましく、10~60質量%であることがより好ましい。前記総含有量が前記下限未満である場合には、粘着力、S-フルルビプロフェンの経皮吸収性及び分散性が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、凝集力、保型性を低下させ、貼付剤の剥離時の痛み、ベタツキ等が増加する傾向にある。
【0039】
本発明に係る粘着剤層には、必要に応じて、さらに、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール)、紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エステル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、サリチル酸エステル、アントラニル酸メチル、ウンベリフェロン、エスクリン、ケイヒ酸ベンジル、シノキサート、グアイアズレン、ウロカニン酸、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、オクタペンゾン、ジオキシベンゾン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、スリンペンゾン、ベンゾレルシノール、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート)、抗菌剤(例えば、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、安息香酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、4-イソプロピル-3-メチルフェノール、2-イソプロピル-5-メチルフェノール、ヒノキチオール、クレゾール、2,4,4-トリクロロ-2’-ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4’-トリクロロカルバニドクロロブタノール等)、充填剤(例えば、水酸化アルミニウム、含水ケイ酸アルミニウム、カオリン、酸化チタン、タルク、酸化亜鉛、含水シリカ、炭酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイソウ土、無水ケイ酸、ベントナイト、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛)、清涼剤、香料等を配合することができる。
【0040】
(粘着剤層)
本発明に係る粘着剤層は、前述の成分を含有する層であり、1種の組成からなる単層であってもよく、組成の異なる複数の層が積層してなる複層であってもよい。このような粘着剤層の単位面積当たりの質量としては、通常10~500g/m2であり、好適な皮膚に対する付着性並びに良好な製造適性が得られ易いという観点から、30~300g/m2であることが好ましい。また、粘着剤層の厚さとしては、通常10~500μmであり、好適な皮膚に対する付着性並びに良好な製造適性が得られ易いという観点から、30~300μmであることが好ましい。
【0041】
(支持体層)
次に、本発明に係る支持体層について説明する。本発明において用いられる支持体層は、前述の粘着剤層を保持するものである。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステル、ナイロン、セルロース誘導体、ポリウレタン等の合成樹脂のフィルム、シート、シート状多孔質体、シート状発泡体、織布、編布、不織布、紙、又はこれらの積層体を用いることができる。これらの中では、貼付剤の皮膚への付着性をより確保し易いという観点から、編布等の伸縮性を有するものが好ましく、貼付剤のハンドリング性の観点からは、自己支持性を有するもの(例えばフィルム、シート状発泡体)が好ましい。また、このような支持体層の厚みとしては、10~1500μmであることが好ましい。
【0042】
(剥離ライナー層)
以上、本発明に係る貼付剤が備える粘着剤層及び支持体層の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る貼付剤としては、貼付剤を使用する時まで前記粘着剤層の表面を被覆して保護するために、剥離ライナー層をさらに備えていてもよい。前記剥離ライナー層の材質としては、特に制限されないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、紙、又はこれらの積層体からなるシート状材料に離型処理(シリコーンコーティング等)を施したものを用いることが好ましい。また、このような剥離ライナー層の厚みとしては、25~150μmであることが好ましい。
【0043】
(貼付剤)
本発明に係る貼付剤の面積としては、通常、1~1000cm2の範囲で任意に設定でき、治療上有効なS-フルルビプロフェンの皮膚透過量を達成できるものであれば、特に制限はないが、貼付を容易にし、貼付している間に剥がれることのない十分な粘着力を確保するという観点から、30~300cm2の面積であることが好ましい。
【0044】
本発明に係る貼付剤の製造方法は、特に制限されず、公知の貼付剤の製造方法を適宜採用することができる。例えば、先ず、前記粘着剤層を構成する有効成分以外の諸成分を各々所定の質量%になるよう秤取し、均一になるまで混和し、次いで、ハッカ油にS-フルルビプロフェンを分散させた分散液を各々所定の質量%になるよう添加した後に更に撹拌して均一な粘着剤層組成物を得る。次に、このようにして得られた粘着剤層組成物を常法に従って直接支持体層の面上(通常は一方の面上)に所定の厚みで展延して粘着剤層を形成する。次いで、前記粘着剤層の前記支持体層と反対の面上を剥離ライナー層で覆った後に所望の形状に裁断することにより、本発明に係る貼付剤を得ることができる。また、前記粘着剤層組成物を先ず剥離ライナー層上の一方の面上に所定の厚みで展延して粘着剤層を形成した後に、前記粘着剤層の前記剥離ライナー層と反対の面上に支持体層を圧着転写させ、所望の形状に裁断することにより本発明に係る貼付剤を得てもよい。
【0045】
また、前記諸成分及びハッカ油にS-フルルビプロフェンを分散させた分散液を各々所定の割合となるようにヘキサン、トルエン、酢酸エチル等の有機溶剤に添加し、攪拌して均一な粘着剤層組成物を得てもよい。そして、この粘着剤層組成物を支持体層の一方の面上に所定の厚みで展延し、乾燥機等により乾燥し、有機溶剤を揮発除去し、粘着剤層を形成した後に、前記粘着剤層の前記支持体層と反対の面上を剥離ライナー層にて覆った後に所望の形状に裁断することにより、本発明に係る貼付剤を得ることができる。また、前記粘着剤層組成物を先ず剥離ライナー層の一方の面上に所定の厚みで展延し、乾燥機等により乾燥し、有機溶剤を揮発除去し、粘着剤層を形成した後に、前記粘着剤層の前記剥離ライナー層と反対の面上に支持体層を圧着転写させ、所望の形状に裁断することにより、本発明に係る貼付剤を得てもよい。
【0046】
<S-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品>
次に、本発明のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品について説明する。本発明のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品は、後述する本発明に係る包装袋に前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤が封入されることにより構成されている。
【0047】
本発明で用いる包装袋は、シクロオレフィンコポリマーからなる最内層と、前記最内層より外側に配置された酸素遮断層と、前記酸素遮断層より外側に配置された外層とを少なくとも有する積層体により形成されている。本発明においては、前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤を封入する包装袋として、シクロオレフィンコポリマーからなる最内層を有するものを用いることにより、包装袋に封入して保存している間におけるS-フルルビプロフェン及びL-メントールの最内層への吸着及び/又は吸収が高水準に抑制され、S-フルルビプロフェン及びL-メントールの経時的な減少が十分に抑制されて保存中の安定性が向上する。
【0048】
本発明に係る包装袋の最内層は、ヒートシール可能な層であり、シクロオレフィンコポリマーからなるフィルムである。シクロオレフィンコポリマー(COC)は、環状オレフィン共重合体とも表記され、環状オレフィンと非環式オレフィンとを付加共重合することによって合成される。
【0049】
環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロオクテン、シクロペンタジエン等の1環の環状オレフィン;ノルボルネン、5-メチル-ノルボルネン、ジメチルオクタヒドロナフタレン等の2環の環状オレフィン;ジシクロペンタジエン等の3環の環状オレフィン;テトラシクロドデセン等の4環の環状オレフィン;シクロペンタジエンの4量体等の多環の環状オレフィンが挙げられ、中でもノルボルネン系環状オレフィンが好ましく、ノルボルネンが特に好ましい。また、非環式オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等が挙げられ、中でもエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。
【0050】
シクロオレフィンコポリマーとしては、具体的には、エチレンノルボルネンコポリマー、エチレンテトラシクロドデセンコポリマーが好ましく、エチレンノルボルネンコポリマーが特に好ましい。また、シクロオレフィンコポリマーの分子量は、特に制限されないが、数平均分子量が5000~30万が好ましく、1万~15万がより好ましい。
【0051】
このようなシクロオレフィンコポリマーとしては、市販品として、アペル(登録商標、三井化学株式会社製)、トパス(登録商標、ポリプラスチックス株式会社製)等が挙げられる。
【0052】
前記最内層の厚みは、特に制限されず、最内層同士を対向させて周辺部をヒートシールして気密な包装袋を形成できる厚みを有していればよく、一般には15~60μmが好ましい。
【0053】
本発明に係る包装袋を形成する積層体においては、前記最内層より外側に酸素遮断層が配置され、さらに前記酸素遮断層より外側に外層が配置されている。
【0054】
係る酸素遮断層は、包装袋の外部からの酸素の混入を遮断できる材料であればよく、例えば、アルミニウム箔等の軟質金属箔や、アルミ蒸着、シリカ蒸着、アルミナ蒸着、シリカアルミナ2元蒸着等の蒸着層が好適に採用され、アルミニウムからなるものであることが特に好ましい。前記酸素遮断層の厚みは、特に制限されず、包装袋の外部からの酸素の混入を遮断できる厚みを有していればよく、一般には5~20μmが好ましい。
【0055】
また、係る外層は、積層体自体の強度を保つ機能や、酸素遮断層等を支持する基材としての機能や、包装袋とした際に外部からの物理的刺激や化学的刺激に対抗する機能を有するものであり、機械的強度や寸法安定性を有するフィルムを採用することが好ましい。また、前記の機能を併せ持つ一の外層の形態としてもよいし、前記の機能を複数の層に分担させ複数の外層が存在する積層形態としてもよい。このような外層を構成するフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂フィルム;ポリスチレン系樹脂フィルム;6-ナイロン、ポリ-p-キシリレンアジパミド(MXD6ナイロン)等のポリアミド系樹脂フィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム;ポリアクリロニトリル系樹脂フィルム;ポリイミド系樹脂フィルム;セロハン等の樹脂フィルムが挙げられ、PETフィルム、PEフィルム、PET/PE積層フィルムが特に好ましい。さらに、外層として紙や合成紙等の紙層を採用してもよい。前記外層の厚みは、特に制限されず、所望の前記機能を発揮できる厚みを有していればよく、一般には5~50μmが好ましい。
【0056】
本発明に係る包装袋を形成する積層体においては、前記最内層と、その外側に前記酸素遮断層と、さらにその外側に前記外層が配置されていればよく、前記最内層、前記酸素遮断層、前記外層のうちのいずれか又は全てが複数配置されている態様であってもよい。また、本発明に係る包装袋を形成する積層体においては、前記最内層、前記酸素遮断層、前記外層の他に、必要に応じて更なる層を含む積層構成としてもよい。さらに、本発明に係る包装袋を形成する積層体においては、その少なくとも一つの層に、必要に応じて、酸化防止剤、酸素吸着剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤、難燃化剤、充填剤、架橋剤、着色剤、改質用樹脂等の添加剤を1種又は2種以上添加してもよい。前記積層体の厚みは、特に制限されず、一般には25~130μm程度が好ましい。
【0057】
本発明に係る積層体の製造方法は、特に制限されず、ドライラミネート、押出ラミネート、共押し出しラミネート、熱ラミネート等の公知の積層体の製造方法を適宜採用することができる。また、本発明に係る積層体の各層は、直接積層されていても、接着剤等を介して積層されていてもよい。
【0058】
本発明のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品は、前記積層体により形成された包装袋に前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤が気密に封入されることにより構成される。
【0059】
前記積層体により包装袋を形成する方法は、特に制限されず、例えば、2枚の前記積層体を各最内層が対向するように重ね、外周をヒートシールすることにより本発明に係る包装袋を得ることができる。また、前記包装袋に前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤を封入する方法も特に制限されず、例えば、前記包装袋の開口部から内部に前記貼付剤を装入した後に開口部をヒートシールすることにより、前記貼付剤が気密に封入された本発明のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品を得ることができる。本発明に係る包装袋の大きさも、特に制限されず、内部に封入するS-フルルビプロフェン含有貼付剤の大きさに応じて、貼付剤よりも一回り大きくすればよく、一般的には貼付剤の面積の1.5~10倍の面積とすることが好ましい。
【0060】
<S-フルルビプロフェン及びL-メントールの安定化方法>
次に、本発明のS-フルルビプロフェン及びL-メントールの安定化方法について説明する。本発明のS-フルルビプロフェン及びL-メントールを安定化させる方法は、前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤を内部に封入する包装袋として、前記の本発明に係る包装袋を用いる方法である。
【0061】
本発明のS-フルルビプロフェン及びL-メントールの安定化方法においては、前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤を封入する包装袋として、シクロオレフィンコポリマーからなる最内層を有するものを用いることにより、包装袋に封入して保存している間におけるS-フルルビプロフェン及びL-メントールの最内層への吸着及び/又は吸収が高水準に抑制され、S-フルルビプロフェン及びL-メントールの経時的な減少が十分に抑制されて保存中の安定性が向上する。
【0062】
そのため、本発明によれば、前記包装製品を40℃、相対湿度75%の条件下で6ヶ月保存した後(以下「保存試験後」という。)において、前記S-フルルビプロフェンの含有量を、S-フルルビプロフェンの初期含有量(100質量%)に対して95質量%以上という高い水準に維持することが可能となり、さらに、前記ハッカ油中のL-メントールの含有量を、L-メントールの初期含有量(100質量%)に対して99質量%以上という高い水準に維持することが可能となる。
【実施例0063】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
(実施例1及び比較例1~2)
先ず、表1に記載の成分(有効成分を除く)を、各々所定の質量%になるよう秤取し、均一になるまで混和して溶解物を得た。次いで、各々所定の質量%になるよう秤取したハッカ油にS-フルルビプロフェンを分散させた分散液を、前記溶解物に加えて均一になるまで混和して粘着剤層組成物を得た。次いで、前記粘着剤層組成物を剥離ライナー(剥離ライナー層、シリコーン処理されたPETフィルム)の一方の面上に展延し、前記剥離ライナーと反対側の面上を支持体層(PET不織布)にて覆い、圧着させることにより、粘着剤層(膏体)質量が123.6g/m2のS-フルルビプロフェン含有貼付剤を得た。その後、7cm×10cmの大きさに裁断し、面積が70cm2のS-フルルビプロフェン含有貼付剤とした。
【0065】
なお、ハッカ油としては長岡実業株式会社製、商品名:日本薬局方 ハッカ油(L-メントール含有率:41.5質量%)を用いた。
【0066】
【0067】
次いで、表2に記載の積層体(いずれも凸版印刷株式会社製)を、それぞれの最内層が対向するように2枚重ね、外周約6mmをヒートシールして11cm×14cmの包装袋とし、1包装袋中に前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤1枚を充填し、開口部をヒートシールして内部に前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤が気密に封入されたS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品を得た。
【0068】
【0069】
続いて、前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品を、40℃、相対湿度75%の恒温恒湿チャンバー内で6ヶ月保存(保存試験)し、保存開始から1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、5ヶ月後、6ヶ月後のそれぞれの粘着剤層中におけるS-フルルビプロフェン含有量、L-メントール含有量をそれぞれ高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、初期含有量(100質量%)に対する含有量[質量%]を求めた。得られた結果を表3及び表4に示す。
【0070】
【0071】
【0072】
次いで、前記S-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品を、60℃、相対湿度75%の恒温恒湿チャンバー内で2週間保存(保存試験)した後、保存試験後の粘着剤層中及び包装袋(最内層)中のL-メントール含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、包装袋(最内層)に吸着したL-メントールの量[mg]と、粘着剤層中におけるL-メントール初期含有量(100質量%)に対して包装袋(最内層)に吸着したL-メントール量の比率[質量%]を求めた。得られた結果を表5に示す。
【0073】
【0074】
表3~表5に示した結果から明らかなとおり、最内層の材質がシクロオレフィンコポリマー(COC)である包装袋を用いた本発明のS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品(実施例1)においては、包装袋に封入して保存している間におけるS-フルルビプロフェン及びL-メントールの最内層への吸着が高水準に抑制され、S-フルルビプロフェン及びL-メントールの経時的な減少が十分に抑制されて保存中の安定性が向上しており、
(1)包装製品を40℃、相対湿度75%の条件下で6ヶ月保存した後において、S-フルルビプロフェンの含有量を、S-フルルビプロフェンの初期含有量(100質量%)に対して95質量%以上という高い水準に維持すること、
(2)包装製品を40℃、相対湿度75%の条件下で6ヶ月保存した後において、L-メントールの初期含有量(100質量%)に対して99質量%以上という高い水準に維持すること、
がいずれも達成されていることが確認された。
【0075】
一方、最内層の材質がポリエチレン(PE)である包装袋を用いたS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品(比較例1)や、最内層の材質がヒートシール性ポリエチレンテレフタレート(HSPET)である包装袋を用いたS-フルルビプロフェン含有貼付剤包装製品(比較例2)においては、包装袋に封入して保存している間におけるS-フルルビプロフェン及びL-メントールの最内層への吸着及び経時的な減少が実施例より劣っていることが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、S-フルルビプロフェン又はその薬学的に許容される塩とハッカ油とを含有する粘着剤層を備えるS-フルルビプロフェン含有貼付剤において、包装袋に封入して保存している間における前記S-フルルビプロフェン、及び、前記ハッカ油中のL-メントールの経時的な減少を十分に抑制せしめて保存中の安定性を向上させることが可能となる。