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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109244
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/023 20120101AFI20240806BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20240806BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F16H57/023
F16H57/04 Q
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013946
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】池田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】柴山 大
【テーマコード(参考)】
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J063AA04
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA05
3J063BA11
3J063CB58
3J063CD42
3J063CD44
3J063XD03
3J063XD22
3J063XD32
3J063XD43
3J063XD44
3J063XD47
3J063XD62
3J063XD73
3J063XE15
5H607AA12
5H607BB01
5H607CC03
5H607EE33
5H607EE34
5H607GG01
(57)【要約】
【課題】回転電機の回転軸の方向に沿って回転電機、変速機、差動歯車機構が配置された車両用駆動装置を、当該回転軸に沿った方向の寸法がより短くなるように構成する。
【解決手段】回転電機1のロータ12と差動歯車機とが同軸上に配置され、ロータ12、変速機3、差動歯車機構が、軸方向Lに沿って記載の順に配置されている。ロータ12の回転を検出する回転センサ8は、センサロータ8rとセンサステータ8sとコネクタ4とを備えている。ロータ12と変速機3との軸方向Lの間に、パーキングロック機構6のパーキングギヤ6Gと、回転センサ8と、ロータ軸受B1とが配置されている。パーキングギヤ6Gと回転センサ8とが、径方向Rに沿う径方向視で重複する位置に配置され、回転センサ8とロータ軸受B1とが、径方向視で重複する位置に配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを備えた回転電機と、
それぞれが車輪に駆動連結される一対の出力部材と、
前記ロータと一体的に回転するロータ軸と、
前記ロータ軸の回転を変速する変速機と、
前記変速機を介して伝達される前記回転電機の駆動力を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、
一対の前記出力部材の回転を規制するためのパーキングロック機構と、
前記ロータの回転を検出する回転センサと、
前記ロータ軸を回転自在に支持するロータ軸受と、
前記回転電機、前記変速機、及び、前記差動歯車機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置であって、
前記パーキングロック機構は、パーキングギヤと、前記パーキングギヤに対して選択的に係合して前記パーキングギヤの回転を規制する係合機構と、を備え、
前記回転センサは、前記ロータ軸と一体的に回転するセンサロータと、前記ケースに対して固定されたセンサステータと、前記センサステータに一体的に取り付けられたコネクタと、を備え、
前記ロータと前記差動歯車機構とが同軸上に配置され、
前記ロータ軸の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側とし、前記回転軸心に直交する方向を径方向として、
前記ロータ、前記変速機、及び前記差動歯車機構が、前記軸方向第1側から前記軸方向第2側に向けて記載の順に配置され、
前記ロータと前記変速機との前記軸方向の間に、前記パーキングギヤ、前記回転センサ、及び、前記ロータ軸受が配置され、
前記パーキングギヤと前記回転センサとが、前記径方向に沿う径方向視で重複する位置に配置され、
前記回転センサと前記ロータ軸受とが、前記径方向視で重複する位置に配置されている、車両用駆動装置。
【請求項2】
前記軸方向第1側から前記軸方向第2側に向けて、前記パーキングギヤ、前記回転センサ、前記ロータ軸受の順に配置され、
前記センサステータは、前記センサロータに対して前記径方向の外側に配置され、
前記パーキングギヤは、前記ロータ軸に取り付けられる取付部と、前記取付部に対して前記径方向の外側に配置されて前記係合機構が係合する被係合部と、を備え、
前記取付部は、前記センサロータよりも前記軸方向第1側に配置され、
前記被係合部は、前記取付部よりも前記軸方向第2側に配置された部分である特定部分を備え、
前記特定部分が、前記センサステータに対して前記径方向の外側であって前記径方向視で前記センサステータと重複する位置に配置されている、請求項1に記載の車両用駆動装置。
【請求項3】
前記回転電機の前記ロータに対して前記径方向の外側に配置されたステータを前記軸方向第2側から覆うカバー部材を備え、
前記パーキングギヤの前記被係合部は、前記軸方向に沿う軸方向視で前記カバー部材と重複する位置に配置され、
前記パーキングギヤの前記取付部は、前記カバー部材に対して前記径方向の内側であって前記径方向視で前記カバー部材と重複する位置に配置されている、請求項2に記載の車両用駆動装置。
【請求項4】
前記ロータ軸受は、当該ロータ軸受の内周面である軸受内周面が前記ロータ軸の外周面である軸外周面に嵌合するように配置され、
前記ロータ軸には、前記ロータ軸受に油を供給するための供給油路が設けられ、
前記供給油路は、前記径方向視で前記軸受内周面と重複する位置において前記軸外周面に開口する供給開口を備え、
前記軸外周面には、前記供給開口から前記軸受内周面と重複しない位置まで前記軸方向に延在する油溝が形成されている、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【請求項5】
前記ロータ軸の外周面における前記ロータと前記変速機との前記軸方向の間の領域に、前記パーキングギヤが嵌合する第1嵌合部と、前記センサロータが嵌合する第2嵌合部と、前記ロータ軸受が嵌合する第3嵌合部とが形成され、
前記第1嵌合部、前記第2嵌合部、及び前記第3嵌合部は、前記軸方向第1側から前記軸方向第2側に向けて記載の順に配置され、
前記第1嵌合部の外径は前記第2嵌合部の外径より大きく、前記第2嵌合部の外径は前記第3嵌合部の外径より大きい、請求項1から3の何れか一項に記載の車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-107737号公報には、回転電機(2)、変速機(4)、差動歯車機構(5)が、同軸上に記載の順に配置され、回転電機(2)と変速機(4)との間に、パーキングロック機構(3)が配置された車両用駆動装置(1)が開示されている(背景技術において括弧内の符号は参照する文献のもの。)。この車両用駆動装置(1)では、回転電機(2)のロータコア(21)に対して変速機(4)の側に、ロータコア(21)と一体的に回転するロータ軸(20)を回転自在に支持する軸受(B1)が配置されている。パーキングロック機構(3)を構成するパーキングギヤ(30)は、当該軸受(B1)に対して変速機(4)の側にロータ軸(20)と一体的に回転するようにロータ軸(20)に連結されて配置されている。即ち、この車両用駆動装置(1)では、回転電機(2)のロータコア(21)、軸受(B1)、パーキングギヤ(30)、変速機(4)が、回転軸に沿った方向に互いに隣り合うように並んで配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-107737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、回転電機、変速機、差動歯車機構が、回転軸に沿って並んで配置された車両用駆動装置では、軸方向の寸法が大きくなり易いため、車両への搭載性を考慮し、軸方向の寸法の短縮が望まれる。しかし、上記の文献に開示された車両用駆動装置は、種々の構成要素が互いに隣り合うように並んで配置されているため、軸方向の寸法を短くする上で限界がある。
【0005】
上記背景に鑑みて、回転電機の回転軸の方向に沿って回転電機、変速機、差動歯車機構が配置された車両用駆動装置を、当該回転軸に沿った方向の寸法がより短くなるように構成することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みた車両用駆動装置は、ロータを備えた回転電機と、それぞれが車輪に駆動連結される一対の出力部材と、前記ロータと一体的に回転するロータ軸と、前記ロータ軸の回転を変速する変速機と、前記変速機を介して伝達される前記回転電機の駆動力を一対の前記出力部材に分配する差動歯車機構と、一対の前記出力部材の回転を規制するためのパーキングロック機構と、前記ロータの回転を検出する回転センサと、前記ロータ軸を回転自在に支持するロータ軸受と、前記回転電機、前記変速機、及び、前記差動歯車機構を収容するケースと、を備えた車両用駆動装置であって、前記パーキングロック機構は、パーキングギヤと、前記パーキングギヤに対して選択的に係合して前記パーキングギヤの回転を規制する係合機構と、を備え、前記回転センサは、前記ロータ軸と一体的に回転するセンサロータと、前記ケースに対して固定されたセンサステータと、前記センサステータに一体的に取り付けられたコネクタと、を備え、前記ロータと前記差動歯車機構とが同軸上に配置され、前記ロータ軸の回転軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側とし、前記回転軸心に直交する方向を径方向として、前記ロータ、前記変速機、及び前記差動歯車機構が、前記軸方向第1側から前記軸方向第2側に向けて記載の順に配置され、前記ロータと前記変速機との前記軸方向の間に、前記パーキングギヤ、前記回転センサ、及び、前記ロータ軸受が配置され、前記パーキングギヤと前記回転センサとが、前記径方向に沿う径方向視で重複する位置に配置され、前記回転センサと前記ロータ軸受とが、前記径方向視で重複する位置に配置されている。
【0007】
本構成によれば、ロータと差動歯車機構とが同軸上に配置され、且つ、ロータ、変速機、及び差動歯車機構が軸方向に並ぶ構成、つまり、軸方向に長くなり易い構成の車両用駆動装置において、車両用駆動装置の軸方向寸法の小型化が図られている。具体的には、ロータと変速機との軸方向の間に配置されたパーキングギヤ、回転センサ、及びロータ軸受が、パーキングギヤと回転センサとが径方向視で重複すると共に回転センサとロータ軸受とが径方向視で重複するように配置されている。そのため、パーキングギヤと回転センサとが径方向視で重複せずに配置される場合、及び、回転センサとロータ軸受とが径方向視で重複せずに配置される場合に比べて、回転電機と変速機との間の軸方向の寸法を短くし易く、車両用駆動装置の軸方向寸法の小型化を図り易い。即ち、本構成によれば、回転電機の回転軸の方向に沿って回転電機、変速機、差動歯車機構が配置された車両用駆動装置を、当該回転軸に沿った方向の寸法がより短くなるように構成することができる。
【0008】
車両用駆動装置のさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】車両用駆動装置のスケルトン図
図2】車両用駆動装置の部分断面図
図3】車両用駆動装置の拡大断面図
図4】車両用駆動装置の模式的な制御ブロック図
図5】カバー部材を取り付けた状態で変速機の側から回転電機を見た図
図6】カバー部材及びパーキングギヤを取り付けた状態で変速機の側から回転電機を見た図
図7】カバー部材の斜視図
図8】車両搭載状態でのカバー部材を回転電機の側から見た図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、車両用駆動装置の実施形態を図面を参照して説明する。本明細書において「駆動連結」とは、2つの回転要素が駆動力を伝達可能に連結された状態を指し、当該2つの回転要素が一体的に回転するように連結された状態、或いは当該2つの回転要素が1つ又は2つ以上の伝動部材を介して駆動力を伝達可能に連結された状態を含む。このような伝動部材としては、回転を同速で又は変速して伝達する各種の部材、例えば、軸、歯車機構、ベルト、チェーン等が含まれる。尚、伝動部材として、回転及び駆動力を選択的に伝達する係合装置、例えば、摩擦係合装置、噛み合い式係合装置等が含まれていても良い。ただし、遊星歯車機構の各回転要素について「駆動連結」という場合には、遊星歯車機構における複数の回転要素が、互いに他の回転要素を介することなく連結されている状態を指すものとする。また、本明細書において「一体的に回転」とは、分離可能か分離不可能かは問わず一体的に回転することをいう。即ち、一体的に回転する複数の部材は同一部材から一体的に形成されていてもよいし、別部材によって構成されて溶接やスプライン結合等によって一体化されていてもよい。また、本明細書において、2つの要素の配置に関して、「特定方向視で重複する」とは、その視線方向に平行な仮想直線を当該仮想直線と直交する各方向に移動させた場合に、当該仮想直線が2つの要素の両方に交わる領域が少なくとも一部に存在することを意味する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態の車両用駆動装置100は、ロータ12を備えた回転電機1と、それぞれが車輪Wに駆動連結される一対の出力部材(例えば後述するスプライン係合部59)と、ロータ12と一体的に回転するロータ軸13と、ロータ軸13の回転を変速する変速機3と、変速機3を介して伝達される回転電機1の駆動力を一対の出力部材に分配する差動歯車機構5とを備えている。また、車両用駆動装置100は、図2に示すように、一対の出力部材の回転を規制するためのパーキングロック機構6と、ロータ12の回転を検出する回転センサ8と、ロータ軸13を回転自在に支持するロータ軸受B1とを備えている。回転電機1、変速機3、及び差動歯車機構5は、ケース9に形成された収容室Eに収容されている。
【0012】
回転電機1と差動歯車機構5とは、同軸上に配置されている。本実施形態では、変速機3が、遊星歯車式の固定変速比の動力伝達機構であり、回転電機1と差動歯車機構5と変速機3とが同軸上に配置されている。しかし、変速機3は、遊星歯車機構に限らず、複数の回転軸を有するカウンタギヤ機構による変速機として構成されていてもよく、この場合には少なくとも回転電機1と差動歯車機構5とが同軸上に配置される。また、本実施形態では、変速機3が遊星歯車式の固定減速比の減速機である構成を例示している。しかし、変速機3は、固定変速比の動力伝達機構に限らず、複数段の変速比を実現可能な有段変速機であってもよい。この場合、動力伝達機構は、複数段の変速比として増速比と減速比とを実現するものであっても良いし、複数の減速比や複数の増速比を実現するものであってもよい。当然ながら、変速機3が固定変速比の増速機であることを妨げるものでもない。
【0013】
一対の車輪Wは一対のドライブシャフトDSに駆動連結されている。一対の車輪Wは、第1車輪W1及び第2車輪W2を含み、一対のドライブシャフトDSは、第1ドライブシャフトDS1及び第2ドライブシャフトDS2を含む。第1車輪W1は第1ドライブシャフトDS1に駆動連結され、第2車輪W2は第2ドライブシャフトDS2に駆動連結されている。
【0014】
以下の説明では、ロータ12の回転軸心に沿う方向を「軸方向L」とする。そして、軸方向Lの一方側を「軸方向第1側L1」とし、軸方向Lの他方側を「軸方向第2側L2」とする。本実施形態では、ロータ12、変速機3、及び差動歯車機構5が、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向けて記載の順に配置されている。従って、軸方向第1側L1は、変速機3に対して回転電機1が配置されている側、軸方向第2側L2は、変速機3に対して差動歯車機構5が配置されている側である。本実施形態の車両用駆動装置100は、1軸構成であり、回転電機1と変速機3と差動歯車機構5とが配置された軸(回転軸心X)は、車両用駆動装置100の回転軸心Xであると共に、回転電機1、変速機3、差動歯車機構5の回転軸心Xでもある。また、ロータ12の回転軸心Xに直交する方向を「径方向R」とする。そして、径方向Rにおいて、ロータ12の回転軸心X側を「径方向内側R1」とし、その反対側を「径方向外側R2」とする。また、車両用駆動装置100が車両に搭載された車両用搭載状態において鉛直方向に沿う方向を「上下方向V」とする(図5から図8等参照)。上下方向Vにおいて上方を上側V1、下方を下側V2と称する。車両用駆動装置100が車両に水平に搭載されている場合、径方向Rの内の一方向と上下方向Vとは一致する。
【0015】
回転電機1は、一対の車輪Wの駆動源として機能する。回転電機1は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置により構成された直流電源80(図4参照)と電気的に接続され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能とを有している。回転電機1は、直流電源80に蓄えられた電力により力行して駆動力を発生すると共に、一対の車輪Wの側から伝達される駆動力により発電して直流電源80を充電する。
【0016】
回転電機1のステータ11は、円筒状のステータコア11aを備えている。ステータコア11aは、ケース9に固定されている。回転電機1のロータ12は、円筒状のロータコア12aを備えている。ロータコア12aは、ロータ軸13と一体的に回転するようにロータ軸13に連結され、ステータコア11aに対して回転可能にケース9に支持されている。本実施形態では、回転電機1はインナロータ型の回転電機である。ロータコア12aは、ステータコア11aに対して径方向内側R1に配置され、ロータ軸13は、ロータコア12aに対して径方向内側R1に配置されている。ロータ軸13は、ケース9に支持された軸受により回転自在に支持されている。ロータ軸13は、ロータコア12aに対して軸方向Lの両側でそれぞれ軸受により回転自在に支持されている。本実施形態では、回転電機1と変速機3との間に配置された軸受、つまり、ロータコア12aに対して軸方向第2側L2に配置された軸受をロータ軸受B1と称して説明する。
【0017】
回転電機1は回転界磁型の回転電機である。ステータコア11aには、ステータコイル11bが巻き回され、ステータコア11aに対して軸方向Lの両側に突出したコイルエンド部11eが形成されている。また、図示は省略するが、ロータコア12aには、永久磁石が配置されている。
【0018】
図4に示すように、車両用駆動装置100は、車両に搭載された車両制御装置200によって制御されている。ここでは、車両制御装置200として、車両用駆動装置100の全体を制御する駆動系制御装置201と、回転電機1を制御する回転電機制御装置202とを例示している。図4に示す形態は、例示的且つ概念的なブロック図であり、実際の制御装置の物理的構成(回路構成)を限定するものではない。
【0019】
回転電機1は、車両用駆動装置100を制御する駆動系制御装置201からの指令に従って設定される回転電機1の目標トルクに基づいて、回転電機制御装置202により駆動制御される。回転電機制御装置202は、複数のスイッチング素子を有して構成されたインバータINVを介して回転電機1を駆動制御する。インバータINVは、直流電源80と回転電機1(ステータコイル11b)との間に接続されて直流と複数相の交流との間で電力を変換する。回転電機制御装置202は、インバータINVをスイッチング制御して、回転電機1を駆動制御する。ここでは、回転電機1が3相交流型である形態を例示しており、インバータINVは、直流と3相交流との間で電力を変換する。直流電源80及びインバータINVは、回転電機1の電源ということができる。直流電源80と対比して、インバータINVは、回転電機1の交流電源ということもできる。
【0020】
回転電機制御装置202は、ロータ12の回転位置(永久磁石の磁極位置)、ロータ12の回転速度、及び3相各相のステータコイル11bを流れる電流に基づいて、電流フィーダバック制御を行ってインバータINVを介して回転電機1を駆動制御する。ステータコイル11bを流れる電流は、電流センサ82によって検出される。電流センサ82は、例えばインバータINVと回転電機1のステータコイル11bとを接続する動力線14の近傍に設置された非接触型電流センサである。
【0021】
ロータ12の回転位置及び回転速度は、回転センサ8によって検出される。本実施形態では、回転センサ8として、レゾルバを例示している。尚、回転センサ8は、レゾルバに限らず、ロータ軸13と一体的に回転するセンサロータ8rと、ケース9に対して固定されたセンサステータ8sとを備えて構成されていればよい。尚、センサステータ8sは、ケース9に直接固定されていてもよいし、ケース9に固定されたブラケット等を介して間接的にケース9に固定されていてもよい。本実施形態では、少なくともセンサロータ8rの回転により変化する電気信号を回転電機制御装置202に出力するために、センサステータ8sに一体的に取り付けられたコネクタ4も回転センサ8に含む。尚、回転センサ8がレゾルバの場合には、センサステータ8sのステータ巻線を励磁する信号など、回転電機制御装置202の側から回転センサ8を制御する信号もコネクタ4を介して伝達される。
【0022】
本実施形態では、ロータ軸13と一体的に回転するセンサロータ8rが、ロータ軸13の径方向外側R2に配置され、さらにセンサロータ8rの径方向外側R2にセンサステータ8sが配置されている形態を例示している。しかし、中空筒状のロータ軸13の径方向内側R1にセンサロータ8rが配置され、さらにセンサロータ8rの径方向内側R1にセンサステータ8sが配置される形態を妨げるものではない。
【0023】
ステータコイル11bは、電流が流れることによって発熱する。このため、コイルエンド部11eには冷却用の油が振り掛けられる。ケース9の底部には、ステータコイル11bの冷却、回転電機1、変速機3、差動歯車機構5等が備える各種ギヤ等の回転部材の潤滑、これらの回転部材を回転自在に支持する軸受の潤滑を行うための油が貯留されている。底部に貯留された油は、油路を介してケース9の外部或いは内部に配置された不図示のオイルポンプによりケース9の上部に形成された油路に導かれ、ステータコイル11b、ギヤ、軸受等の、冷却や潤滑の対象箇所に供給される。このオイルポンプは、車輪Wの駆動源である回転電機1とは異なる駆動源(例えばポンプモータ)により駆動され、ケース9における収容室E内の油を循環させると好適である。
【0024】
本実施形態では、ロータ軸13は、ロータコア12aと同軸の筒状に形成されている。ロータ軸13の、ロータ12に対して軸方向第2側L2における外周側には、変速機3を構成する遊星歯車機構のサンギヤSGがロータ軸13と一体的に回転するように配置されている。本実施形態では、ロータ軸13に一体的にサンギヤSGが形成されている。ロータ軸13とサンギヤSGとは同一部材によって構成されていてもよいし、別部材によって構成されて溶接等によって接合されてもよい。サンギヤSGは、変速機3の入力要素である。
【0025】
差動歯車機構5は、傘歯車式の差動歯車機構である。差動歯車機構は、何れも傘歯車のピニオンギヤ51と、サイドギヤ52とを含む。ピニオンギヤ51は、差動支持部材としての差動ケース50に支持されると共に径方向Rに沿って延在するように配置されたピニオンシャフト55により回転自在に支持されている。ピニオンシャフト55は、差動ケース50と一体的に回転し、ピニオンギヤ51は、ピニオンシャフト55を中心として回転(自転)自在、かつ、差動ケース50の回転軸心Xを中心として回転(公転)自在に構成されている。差動ケース50は、ピニオンギヤ51、サイドギヤ52、ピニオンシャフト55を内部に収容している。
【0026】
本実施形態では、複数のピニオンシャフト55が、差動ケース50の回転軸心を中心として放射状に配置された構成(例えば、軸方向Lに沿う軸方向視で、4つのピニオンシャフト55が十字状に配置された構成)となっている。そして、複数のピニオンシャフト55のそれぞれに、ピニオンギヤ51が取り付けられている。
【0027】
サイドギヤ52は、第1サイドギヤ53と第2サイドギヤ54とを備えて軸方向Lに離間して一対配置されている。第1サイドギヤ53及び第2サイドギヤ54は、複数のピニオンギヤ51のそれぞれに噛み合っている。第1サイドギヤ53及び第2サイドギヤ54は、差動ケース50の回転軸心Xを中心として回転するように配置されている。
【0028】
本実施形態では、第1サイドギヤ53は、軸方向Lに沿って延在する連結軸Jに連結されている。連結軸Jは、第1車輪W1に駆動連結された第1ドライブシャフトDS1と一体的に回転するように連結されている。従って、第1サイドギヤ53は、連結軸Jを介して第1車輪W1に駆動連結されている。連結軸Jは、回転電機1、ロータ軸13、及び変速機3に対して径方向内側R1を軸方向Lに貫通するように配置されている。また、第2サイドギヤ54は、第2車輪W2に駆動連結された第2ドライブシャフトDS2と一体的に回転するように連結されている。
【0029】
車輪Wに駆動連結されて、車輪Wと一体的に回転する第1ドライブシャフトDS1、第2ドライブシャフトDS2、連結軸J、第1サイドギヤ53、第2サイドギヤ54は、何れも出力部材に相当する回転部材ということができる。サイドギヤ52(第1サイドギヤ53、第2サイドギヤ54)は、差動歯車機構5であると共に出力部材ということもできる。尚、第1サイドギヤ53及び第2サイドギヤ54は、それぞれ、ピニオンギヤ51に噛み合うギヤ部と、連結軸Jや第2ドライブシャフトDS2に連結されるスプライン係合部59とを備えている。機能的に分けて考える場合、ギヤ部が差動歯車機構5に含まれる回転部材に相当し、スプライン係合部59が出力部材に相当する。
【0030】
変速機3は、ロータ軸13と一体的に回転する入力要素と、ケース9に固定された固定要素と、差動入力要素(差動ケース50)と一体的に回転する出力要素と、遊星ギヤPGを備えた遊星歯車機構として構成されている。この遊星歯車機構は、1つのサンギヤSG、2つのリングギヤ(第1リングギヤRG1、第2リングギヤRG2)と、一体的に回転する2つのギヤ部(第1ギヤ部G1、第2ギヤ部G2)を備えた遊星ギヤPGと、遊星ギヤPGを回転自在に支持するキャリヤCRとを備えた複合型の遊星歯車機構である。
【0031】
サンギヤSGは、ロータ12と一体的に回転するように連結されている。第1リングギヤRG1は、ケース9に固定されている。第2リングギヤRG2は、第1リングギヤRG1に対して差動歯車機構5の側に配置され、差動入力要素と一体的に回転するように連結されている。遊星ギヤPGは、サンギヤSG及び第1リングギヤRG1に噛み合う第1ギヤ部G1と、第1ギヤ部G1と一体的に回転すると共に第2リングギヤRG2に噛み合う第2ギヤ部G2とを備えている。本実施形態では、第2ギヤ部G2は、第1ギヤ部G1よりも小径に形成されている。本実施形態では、遊星ギヤPGは、同一部材により形成されている。しかし、溶接等によって2つの部材が一体化されていてもよい。本実施形態では、サンギヤSGが入力要素であり、第1リングギヤRG1が固定要素であり、第2リングギヤRG2が出力要素である。キャリヤCRは、何れの回転要素及び固定要素にも連結されていない。
【0032】
パーキングロック機構6は、一対の出力部材の回転を規制するために設けられている。本実施形態では、パーキングロック機構6は、サンギヤSGと一体的に回転するロータ軸13の回転を規制することで、変速機3及び差動歯車機構5を介して、一対の出力部材の回転を規制する。図1及び図2に示すように、パーキングロック機構6は、パーキングギヤ6Gと、パーキングギヤ6Gに対して選択的に係合してパーキングギヤ6Gの回転を規制する係合機構6Kとを備えている。以下、パーキングギヤ6Gを取り付けた状態で、変速機3の側から回転電機1を見た図である図6も参照して説明する。図2図3図6等に示すように、パーキングギヤ6Gは、軸方向視でコイルエンド部11eと重複するように配置されている。
【0033】
パーキングギヤ6Gは、ロータ軸13と一体的に回転するように、ロータ軸13に連結されている。図3に示すように、パーキングギヤ6Gは、ロータ軸13に取り付けられる取付部69を備えている。パーキングギヤ6Gの取付部69とロータ軸13とは、スプライン係合によって相対回転が規制された状態で嵌合している。即ち、パーキングギヤ6Gは、ロータ軸13に対して相対回転不能な状態で嵌合している。取付部69に対して径方向外側R2には、パーキングギヤ6Gの歯部62が配置されている。歯部62の周方向の一部には、図6に示すように、係合機構6Kが係合する被係合部61が形成されている。
この被係合部61に係合機構6Kのパーキングポール63(係合突起)が選択的に係合することでパーキングギヤ6Gの回転が規制される。パーキングギヤ6Gの回転が規制されることにより、ロータ軸13の回転も規制され、変速機3及び差動歯車機構5の回転も規制され、出力部材の回転も規制される。
【0034】
上述したように、本実施形態では、変速機3における入力要素が、ロータ軸13と一体的に回転するサンギヤSGである。従って、パーキングギヤ6Gは、変速機3を構成する回転体と一体的に回転するということもできる。ロータ軸13及びサンギヤSGは、パーキングギヤ6Gと一体的に回転する回転体であり、パーキングロック機構6による規制対象の回転体ということができる。
【0035】
パーキングロック機構6は、パーキングギヤ6G及び係合機構6Kに加え、図4に示すように、電動モータ等のパーキングアクチュエータ6Aを含む。係合機構6Kは、パーキングギヤ6Gの被係合部61(ギヤ歯)に選択的に係合するパーキングポール63、パーキングアクチュエータ6Aにより駆動されるパーキングロッド65、伝達機構64を含む(図6参照)。また、伝達機構64は、カム機構やリンク機構を含み、パーキングロッド65からパーキングポール63へパーキングアクチュエータ6Aからの動力を伝達する。パーキングポール63は、パーキングギヤ6Gの被係合部61に係合した係合位置と、パーキングギヤ6Gの被係合部61に係合していない非係合位置との間で姿勢変更可能に構成されている。
【0036】
ところで、パーキングロック機構6は、車両の乗員による操作によってパーキングギヤ6Gを係止する。勿論、車両の停止に応じて自動的にパーキングギヤ6Gが係止されるような制御が実行されることを妨げるものではない。何れにせよ、一般的には、車輪Wが回転していない状態でパーキングロック機構6が作動するため、パーキングロック機構6の作動時にはパーキングギヤ6Gは回転していない。しかし、車両が停止するよりも早く、乗員がパーキングロック機構6を作動させてしまう場合もあり、この場合には、係止部材であるパーキングポール63が回転中のパーキングギヤ6Gに接触することになる。パーキングギヤ6Gが停止している状態でも、パーキングギヤ6Gとパーキングポール63との接触により、金属粉等の粉塵が生じる可能性はあるが、パーキングギヤ6Gが回転しているとそのような粉塵がより発生し易くなる。
【0037】
本実施形態では、パーキングギヤ6Gは、回転軸心Xに沿って、変速機3のサンギヤSGとロータ12との間に配置されている。ロータ12の径方向外側R2には、ステータコイル11bを備えたステータ11が配置されており、コイルエンド部11eがパーキングギヤ6Gの側に突出している。また、パーキングギヤ6Gは、ステータコア11aに対して軸方向第2側L2に配置されたコイルエンド部11eに対して軸方向第2側L2に隣接して配置されている。粉塵がこのコイルエンド部11eに到達すると、ステータコイル11bの絶縁皮膜に傷を付けたり、付着した粉塵によってステータコイル11bの短絡を招いたりするおそれがある。
【0038】
このため、本実施形態では、図1図3図6等に示すように、コイルエンド部11eにおける係合機構6Kに対向する部分を覆うカバー部材2が、パーキングギヤ6Gに対して軸方向第1側L1に配置されている。これにより、パーキングロック機構6により発生した金属粉等の異物がコイルエンド部11eの側に飛散した場合であっても、パーキングロック機構6の係合機構6Kとコイルエンド部11eとの間に配置されたカバー部材2によって、当該異物がコイルエンド部11eに付着することを回避できる。従って、当該異物によってコイルエンド部11eの絶縁性能が低下する可能性を低減することができる。
【0039】
尚、本実施形態では、図5に示すように、軸方向視でコイルエンド部11eの周方向の一部分を覆うようにカバー部材2が配置される形態を例示している。しかし、カバー部材2が、軸方向視でコイルエンド部11eの周方向の全域(ステータ11の周方向の全域)を覆うようにカバー部材2が配置される形態を妨げるものではない。
【0040】
図7は、カバー部材2の一例を示す斜視図であり、図8はカバー部材2を車両搭載状態での回転電機1の側から見た平面図である。図7に示すように、カバー部材2は、軸方向Lにおいてコイルエンド部11eに対向してコイルエンド部11eを保護するカバー本体部20と、カバー部材2をケース9に取り付けるカバー取付部25とを備えている。図5等に示すように、カバー本体部20は、軸方向視でコイルエンド部11eと重複しており、カバー取付部25は、軸方向視でコイルエンド部11eと重複していない。
【0041】
図7及び図8に示すように、カバー部材2は、ケース9に設けられた不図示の油供給部に接続される油流入口26hと、油が排出される油排出口28hと、油流入口26hと油排出口28hとを接続する接続油路27pとを備えている。図7に示すように、カバー本体部20から軸方向Lに突出するように、流入口形成部26と、排出口形成部28とが形成されている。流入口形成部26及び排出口形成部28は、カバー取付部25と同様に、カバー本体部20に対して径方向外側R2に配置され、軸方向視でコイルエンド部11eと重複していない。一方、軸方向Lに突出する流入口形成部26及び排出口形成部28は、径方向視でコイルエンド部11eと重複する。
【0042】
油流入口26hは、流入口形成部26におけるカバー本体部20とは逆側の端部(車両用搭載状態において軸方向第1側L1の端部)において、軸方向Lに開口するように形成され、ケース9に設けられた不図示の油供給部に接続される。排出口形成部28におけるカバー本体部20とは逆側の端部(車両用搭載状態において軸方向第1側L1の端部)は閉塞されており、車両用搭載状態において排出口形成部28の下側V2には、油排出口28hとなる複数の開口が形成されている。上述したように、排出口形成部28は、径方向視でコイルエンド部11eと重複しており、油排出口28hは、径方向視でコイルエンド部11eと重複している。
【0043】
また、カバー部材2には、図8に示すように、流入口形成部26と、排出口形成部28との間を結ぶように、油路形成部27も設けられている。油路形成部27には、油流入口26hと油排出口28hとを接続する接続油路27pが形成されている。ケース9に設けられた不図示の油供給部から油流入口26hに供給された油は、接続油路27pを介して油排出口28hまで導かれる。油排出口28hは、コイルエンド部11eよりも上側V1に位置している。従って、油排出口28hから油を滴下させることによって油をコイルエンド部11eに供給し、ステータコイル11bを適切に冷却することができる。
【0044】
本実施形態では、図2に示すように、ロータ12と変速機3との軸方向Lの間に、パーキングギヤ6G、回転センサ8、及びロータ軸受B1が配置されている。そして、パーキングギヤ6Gと回転センサ8とが、径方向Rに沿う径方向視で重複する位置に配置されている。また、回転センサ8とロータ軸受B1とが、径方視で重複する位置に配置されている。尚、図2に示すように、パーキングギヤ6Gとロータ軸受B1とは、径方視で重複していなくてもよい。尚、本実施形態では、回転センサ8が、センサロータ8rと、センサステータ8sと、コネクタ4とを備えて構成されており、回転センサ8のコネクタ4とロータ軸受B1とが、径方視で重複する位置に配置されている形態を例示している。しかし、例えば、回転センサ8のセンサステータ8sが図示の例(図2図3参照)よりも径方向外側R2に位置し、センサロータ8rの径が図示の例よりも大きく構成され、或いはロータ軸受B1の外径が図示の例よりも小さく構成されている場合、センサロータ8rとロータ軸受B1との軸方向Lの離間距離を図示の例よりも短くすることができる。そして、この場合には、センサステータ8sとロータ軸受B1とが、径方向視で重複する形態であってもよい。
【0045】
本実施形態のように、ロータ12、変速機3、及び差動歯車機構5が軸方向Lに並ぶ構成では、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法が長くなり易い。本実施形態では、パーキングギヤ6Gと回転センサ8とが径方向視で重複せずに配置される場合、及び、回転センサ8とロータ軸受B1とが径方向視で重複せずに配置される場合に比べて、回転電機1と変速機3との間の軸方向の寸法を短くし易く、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法の小型化を図り易い。
【0046】
図2に示すように、本実施形態では、回転電機1の側から変速機3の側に向けて(軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向けて)、パーキングギヤ6G、回転センサ8、ロータ軸受B1の順に配置されている。また、上述したように、本実施形態では、センサステータ8sは、ロータ軸13と一体的に回転するセンサロータ8rに対して径方向外側R2に配置されている。また、図3に示すように、パーキングギヤ6Gは、ロータ軸13に取り付けられる取付部69と、取付部69に対して径方向外側R2に配置されて係合機構6Kが係合する被係合部61とを備えている。図3に示すように、取付部69は、センサロータ8rよりも軸方向第1側L1(ロータ12の側)に配置されている。また、被係合部61(被係合部61を含む歯部62)は、取付部69よりも軸方向第2側L2(変速機3の側)に配置された部分である特定部分68を備えている。そして、特定部分68は、センサステータ8sに対して径方向外側R2であって径方向視でセンサステータ8sと重複する位置に配置されている。
【0047】
このように構成されることで、センサステータ8sと特定部分68とが径方向視で重複しないように配置された構成に比べて、車両用駆動装置100の軸方向Lの寸法の小型化を図り易い。また、本実施形態では、回転センサ8のセンサロータ8r及びセンサステータ8sに対して回転電機1のロータ12の側がパーキングギヤ6Gにより覆われているため、回転電機1を冷却して高温になった油がロータ12の回転によって飛散した場合であっても、当該飛散した油が回転センサ8にかかり難い。そのため、回転センサ8の耐熱性を高く確保する必要性を低減でき、回転センサ8の低コスト化を図り易い。
【0048】
上述したように、コイルエンド部11eには、コイルエンド部11eの径方向外側R2から油排出口28hを介して冷却用の油が供給される。図3図6等に示すように、軸方向視で油排出口28hと重複する位置に、パーキングギヤ6Gが配置されており、コイルエンド部11eから飛散する油が、回転センサ8にかかり難くすることができる。
【0049】
尚、パーキングギヤ6Gと、回転センサ8と、ロータ軸受B1とは、パーキングギヤ6Gと回転センサ8とが、径方向視で重複する位置に配置され、回転センサ8とロータ軸受B1とが、径方向視で重複する位置に配置されていればよい。従って、パーキングギヤ6G、回転センサ8、ロータ軸受B1は、軸方向第1側L1から、パーキングギヤ6G、回転センサ8、ロータ軸受B1の順に配置されていなくてもよい。例えば、軸方向第1側L1から、ロータ軸受B1、回転センサ8、パーキングギヤ6Gの順に配置されていてもよい。
【0050】
上述したように、車両用駆動装置100は、ロータ12に対して径方向外側R2に配置されたステータ11を軸方向第2側L2から覆うカバー部材2を備えている。カバー部材2は、回転電機1に備えられているということもでき、この場合、回転電機1は、ロータ12に対して径方向外側R2に配置されたステータ11と、ステータ11を軸方向第2側L2から覆うカバー部材2とを備える。本実施形態では、カバー部材2は、コイルエンド部11eの少なくとも一部(軸方向視でパーキングギヤ6Gの被係合部61と重複するコイルエンド部11eの少なくとも一部)を軸方向第2側L2から覆う。従って、パーキングギヤ6Gの被係合部61は、軸方向視でカバー部材2と重複する位置に配置されている。パーキングギヤ6Gの取付部69は、カバー部材2に対して径方向内側R1であって径方向視でカバー部材2と重複する位置に配置されている。
【0051】
このように、パーキングギヤ6Gにおける被係合部61に対して径方向内側R1に配置される取付部69が、カバー部材2に対して径方向内側R1であって径方向視でカバー部材2と重複する位置に配置されていることで、取付部69とカバー部材2とが径方向視で重複しないように配置された構成に比べて、車両用駆動装置100の軸方向寸法の小型化を図り易い。また、本構成によれば、回転センサ8のセンサロータ8r及びセンサステータ8sに対してロータ12の側がパーキングギヤ6Gに加えてカバー部材2によっても覆われている。このため、回転電機1を冷却して高温になった油がロータ12の回転によって飛散した場合であっても、当該飛散した油が回転センサ8にかかり難いようにできる。そのため、回転センサ8の耐熱性を高く確保する必要性を低減でき、回転センサ8の低コスト化を図り易い。
【0052】
図3に示すように、ロータ軸受B1は、ロータ軸受B1の内周面である軸受内周面B1aがロータ軸13の外周面である軸外周面13bに嵌合するように配置されている。本実施形態では、軸方向Lに沿って潤滑用(冷却を含む)の油を供給する軸方向油路18が連結軸Jに形成されている。連結軸Jには、軸方向油路18に連通する径方向油路19が形成されており、径方向油路19を通って、軸方向油路18からの油は、連結軸Jが貫通し、連結軸Jの径方向外側R2に配置されたロータ軸13の内周面に供給される。ロータ軸13には、ロータ軸13の内周面である軸内周面13aと外周面である軸外周面13bとを連通し、径方向Rに沿って形成された供給油路135が形成されている。つまり、ロータ軸13には、ロータ軸受B1に油を供給するための供給油路135が設けられている。
【0053】
軸内周面13aと軸外周面13bとを連通する供給油路135は、径方向視で軸受内周面B1aと重複する位置において軸外周面13bに開口する供給開口136を備えている。軸外周面13bには、さらに、供給開口136から、軸受内周面B1aと重複しない位置まで軸方向Lに延在する油溝137が形成されている。油溝137の軸方向第2側L2には、ケース9の内壁の一部が位置しており、当該内壁とロータ軸受B1との軸方向Lの間には、軸受油路98が形成されている。油は、軸方向油路18、径方向油路19、供給油路135、油溝137、軸受油路98を介してロータ軸受B1に供給される。
【0054】
尚、本実施形態では、軸方向Lに平行に油溝137が形成されている形態を例示しているが、油溝137は、軸方向Lに対して傾斜した方向に延在するように形成されていてもよい。また、本実施形態では、供給開口136から軸方向第2側L2に向けて油を導くように、油溝137が形成され、ロータ軸受B1の軸方向第2側L2に形成された軸受油路98に油が導かれてロータ軸受B1に油が供給される形態を例示した。しかし、供給開口136から軸方向第1側L1に向けて油を導くように油溝137が形成され、ロータ軸受B1の軸方向第1側L1に軸受油路が形成され、油溝137及び当該軸受油路を介してロータ軸受B1に油が供給される形態であってもよい。
【0055】
このような構成により、ロータ軸13に設けられた供給油路135から供給開口136及び油溝137を介してロータ軸受B1に油を供給することができる。また、この構成によれば、供給開口136及び油溝137の一部が径方向視で軸受内周面B1aと重複する位置に配置されるため、これらが径方向視で重複しないように配置された構成に比べて、車両用駆動装置100の軸方向寸法の小型化を図り易い。
【0056】
本実施形態では、ロータ軸13にパーキングギヤ6Gが固定され、ロータ軸13に回転センサ8のセンサロータ8rが固定されている。また、ロータ軸13を回転自在に支持するロータ軸受B1の転動体を支える支持体(転動体支持体)も、当然ながらロータ軸13に固定されている。本実施形態では、ロータ軸13の外周面である軸外周面13bにおけるロータ12と変速機3との軸方向Lの間の領域に、パーキングギヤ6G、センサロータ8r、ロータ軸受B1を固定するための嵌合部が設けられている。具体的には、ロータ軸13の軸外周面13bに、図3に示すように、パーキングギヤ6Gが嵌合する第1嵌合部131と、センサロータ8rが嵌合する第2嵌合部132と、ロータ軸受B1(転動体支持体)が嵌合する第3嵌合部133とが形成されている。第1嵌合部131、第2嵌合部132、及び第3嵌合部133は、軸方向第1側L1から前記軸方向第2側L2に向けて記載の順に配置されている。第1嵌合部131の外径である第1外径φ1は第2嵌合部132の外径である第2外径φ2より大きく、第2外径φ2は第3嵌合部133の外径である第3外径φ3より大きい。つまり、パーキングギヤ6G、センサロータ8r、ロータ軸受B1が嵌合する軸外周面13bの外径は、軸方向第1側L1から軸方向第2側L2にいくに従って小径となるように形成されている。
【0057】
このように、ロータ軸13の外周面(軸外周面13b)に形成された第1嵌合部131、第2嵌合部132、及び第3嵌合部133を段階的に小径となるように形成することで、パーキングギヤ6Gと回転センサ8とロータ軸受B1とを、互いに軸方向Lに近い位置に配置し易い。よって、ロータ12と変速機3との軸方向Lの間にパーキングギヤ6G、回転センサ8、及び、ロータ軸受B1が配置された車両用駆動装置100の軸方向寸法の小型化を図り易い。また、この構成によれば、ロータ軸13に対して軸方向第2側L2から軸方向第1側L1に向けて、パーキングギヤ6G、回転センサ8、及びロータ軸受B1を記載の順に組み付ける作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、上述したように、本実施形態では、少なくともセンサロータ8rの回転により変化する電気信号を回転電機制御装置202に出力するために、センサステータ8sに一体的にコネクタ4が備えられている。尚、回転センサ8がレゾルバの場合には、センサステータ8sのステータ巻線を励磁する信号など、回転電機制御装置202の側から回転センサ8を制御する信号もコネクタ4を介して伝達される。コネクタ4は、センサステータ8sに対して軸方向第2側L2に配置されて径方向外側R2に延出する径方向延出部41を備えている。この径方向延出部41は、ロータ軸受B1よりも径方向外側R2であって径方向視でロータ軸受B1と重複する位置に配置されている。
【0059】
この構成によれば、回転センサ8のコネクタ4における径方向延出部41が、ロータ軸受B1よりも径方向外側R2であって径方向視でロータ軸受B1と重複する位置に配置されているため、径方向延出部41とロータ軸受B1とが径方向視で重複しないように配置された構成に比べて、車両用駆動装置100の軸方向寸法の小型化を図り易い。
【符号の説明】
【0060】
1:回転電機、2:カバー部材、3:変速機、4:コネクタ、5:差動歯車機構、6:パーキングロック機構、6G:パーキングギヤ、6K:係合機構、8:回転センサ、8r:センサロータ、8s:センサステータ、9:ケース、11:ステータ、12:ロータ、13:ロータ軸、13a:軸内周面、13b:軸外周面、52:サイドギヤ(出力部材)、59:スプライン係合部(出力部材)、61:被係合部、68:特定部分、69:取付部、100:車両用駆動装置、131:第1嵌合部、132:第2嵌合部、133:第3嵌合部、135:供給油路、136:供給開口、137:油溝、B1:ロータ軸受、B1a:軸受内周面、DS:ドライブシャフト(出力部材)、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、R:径方向、R1:径方向内側(径方向の内側)、R2:径方向外側(径方向の外側)、W:車輪、X:回転軸心、φ1:第1外径(第1嵌合部の外径)、φ2:第2外径(第2嵌合部の外径)、φ3:第3外径(第3嵌合部の外径)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8