(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109250
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】リール
(51)【国際特許分類】
B65H 75/18 20060101AFI20240806BHJP
B65H 75/14 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B65H75/18 Z
B65H75/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013955
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】598075756
【氏名又は名称】株式会社浪速工作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】谷本 和考
【テーマコード(参考)】
3F058
【Fターム(参考)】
3F058AA06
3F058AB03
3F058AC07
3F058BB11
3F058CA09
3F058CA11
3F058DA05
3F058DB03
3F058DB05
3F058DC01
3F058DC04
(57)【要約】
【課題】 低コスト化を図りつつ強度を高めたリールを提供する。
【解決手段】 筒状の胴体10と、胴体10の両端部に互いに対向するように取り付けられた一対のフランジ部材20,20とを備えるリール1であって、胴体10は、外筒11と、外筒11の内部に隙間をあけて設けられた内筒12とを備え、フランジ部材20は、中央に開口21が形成され、開口21を取り囲むように対向面22側に突出する第1の環状リブ23と、開口21の周縁から対向面22と反対側に突出する第2の環状リブ24とを備えており、外筒11の内周面と第1の環状リブ23の外周面とが第1のインロー部F1でインロー嵌合し、内筒12の外周面と第2の環状リブ24の内周面とが第2のインロー部F2でインロー嵌合する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴体と、前記胴体の両端部に互いに対向するように取り付けられた一対のフランジ部材とを備えるリールであって、
前記胴体は、外筒と、前記外筒の内部に隙間をあけて設けられた内筒とを備え、
前記フランジ部材は、中央に開口が形成され、前記開口を取り囲むように対向面側に突出する第1の環状リブと、前記開口の周縁から対向面と反対側に突出する第2の環状リブとを備えており、
前記外筒の内周面と前記第1の環状リブの外周面とが第1のインロー部でインロー嵌合し、
前記内筒の外周面と前記第2の環状リブの内周面とが第2のインロー部でインロー嵌合するリール。
【請求項2】
前記内筒は、両端部が前記外筒の両端から突出するように設けられており、
前記第2のインロー部は、前記第1のインロー部よりも前記胴体の長手方向外方に配置される請求項1に記載のリール。
【請求項3】
前記第2のインロー部における前記内筒の肉厚は、前記第1のインロー部における前記外筒の肉厚よりも大きい請求項1に記載のリール。
【請求項4】
前記胴体およびフランジ部は、合成樹脂からなる請求項1に記載のリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ、電線、ケーブル等の長尺物を巻き取ることができるリールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のリールは、胴体の両端に一対のフランジ部を一体化することで強度を高めた構成が一般的であるが、金型コストが高くなるおそれがあることから、胴体と一対のフランジ部とを分割可能な構成も知られている。例えば、特許文献1には、
図6に示すように、円筒状の胴部材51の左右両側に円盤状のつば部材52,52を配置した巻き取りドラム50が開示されている。胴部材51は、合成樹脂等からなり、平板状の板状部材53を円筒状に変形させて構成され、内側のリブ54により補強されている。
【0003】
つば部材52の互いに対向する対向面の中央部には凹部55が形成されており、各つば部材52の凹部55に胴部材51の両端部をそれぞれ嵌合した後、つば部材52,52同士をボルト56およびナット57で締結することにより、胴部材51とつば部材52とが接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の巻き取りドラム50は、胴部材51とつば部材52,52とが分離可能に構成されているため、金型コストが安価である一方で、胴部材51にワイヤ等の長尺物を巻き取ると、巻き取った長尺物からつば部材52に対して外方(スラスト方向)への力が作用して、凹部55が胴部材51から外れ易くなる。特に、大型の巻き取りドラム50に大径の長尺物を巻き取る場合には、つば部材52が長尺物から受ける外方への力が過大になり、つば部材52の変形や脱落等の問題を生じるおそれがあるだけでなく、長尺物の巻き締めによって胴部材51に作用する径方向の力も大きくなるため、高強度化が求められていた。
【0006】
そこで、本発明は、低コスト化を図りつつ強度を高めたリールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の前記目的は、筒状の胴体と、前記胴体の両端部に互いに対向するように取り付けられた一対のフランジ部材とを備えるリールであって、前記胴体は、外筒と、前記外筒の内部に隙間をあけて設けられた内筒とを備え、前記フランジ部材は、中央に開口が形成され、前記開口を取り囲むように対向面側に突出する第1の環状リブと、前記開口の周縁から対向面と反対側に突出する第2の環状リブとを備えており、前記外筒の内周面と前記第1の環状リブの外周面とが第1のインロー部でインロー嵌合し、前記内筒の外周面と前記第2の環状リブの内周面とが第2のインロー部でインロー嵌合するリールにより達成される。
【0008】
このリールにおいて、前記内筒は、両端部が前記外筒の両端から突出するように設けられていることが好ましく、前記第2のインロー部は、前記第1のインロー部よりも前記胴体の長手方向外方に配置されることが好ましい。
【0009】
前記第2のインロー部における前記内筒の肉厚は、前記第1のインロー部における前記外筒の肉厚よりも大きいことが好ましい。
【0010】
前記胴体およびフランジ部は、合成樹脂からなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コスト化を図りつつ強度を高めたリールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るリールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るリールの斜視図であり、
図2は、
図1に示すリールの分解斜視図である。
図1および
図2に示すように、リール1は、筒状の胴体10と、胴体10の両端部に互いに対向するように取り付けられた一対のフランジ部材20,20とを備えている。
【0014】
図3は、
図2に示す胴体10の断面図である。
図2および
図3に示すように、胴体10は、円筒状の外筒11と、外筒11の内部に設けられた円筒状の内筒12とを備えている。外筒11と内筒12との間には、内筒12の長手方向中央を支持する環状の支持部材13が介在されており、内筒12が外筒11との間に隙間をあけて同心円状に配置されている。内筒12の長さは外筒11の長さよりも長く、内筒12の両端部が外筒11の両端から突出している。支持部材13には、ボルトが挿通される貫通孔18が形成されている。
【0015】
外筒11は、長手方向に沿って延びる複数の外筒リブ14が内周面に設けられている。各外筒リブ14は、周方向に一定の間隔をあけて配置されている。外筒11の両端側の内周面には、外筒11の両端部が中央部に比べて薄肉となるように段部16,16が形成されており、外筒リブ14は、段部16,16の間全体に延びている。
【0016】
内筒12は、長手方向に沿って延びる複数の内筒リブ15が外周面に設けられている。各内筒リブ15は、周方向に一定の間隔をあけて配置されている。内筒12の両端側の外周面には、内筒12の両端部が中央部に比べて薄肉となるように段部17,17が形成されており、内筒リブ15は、段部17,17の間全体に延びている。内筒12の両端部の肉厚は、外筒11の両端部の肉厚よりも大きくなるように形成されている。複数の内筒リブ15は、少なくともいずれかが、外筒リブ14まで径方向に延びて、外筒リブ14と一体化されていてもよい。
【0017】
図4は、
図2に示すリール1を組み立てた状態で示す断面図である。
図2および
図4に示すように、フランジ部材20は、円盤状に形成されており、中央に開口21が形成されている。フランジ部材20が互いに対向する対向面22には、開口21を取り囲むように第1の環状リブ23が設けられている。第1の環状リブ23は、胴体10の外筒11の内周側に嵌合可能な大きさで円環状に形成されており、フランジ部材20の対向面22側に厚み方向に突出する。
【0018】
フランジ部材20の対向面22と反対側の面には、第2の環状リブ24および第3の環状リブ25が設けられている。第2の環状リブ24は、胴体10の内筒12の外周側に嵌合可能な大きさで円環状に形成されており、対向面22と反対側に厚み方向に突出する。第3の環状リブ25は、フランジ部材20の外縁に沿って円環状に形成されており、第2の環状リブ24と略同じ突出高さで、対向面22と反対側に厚み方向に突出する。
【0019】
また、フランジ部材20は、第1の環状リブ23の内周に沿った複数箇所(本実施形態では8箇所)に挿通孔26が形成されており、胴体10の両側に一対のフランジ部材20,20を配置した状態で、各挿通孔26に支持部材13の貫通孔18を介してボルト40を挿通し、ナット41を締結することにより、一対のフランジ部材20,20が胴体10の両端部に固定される。胴体10に対するフランジ部材20の固定方法は、上記のようにボルト40とナット41による締結方法に限定されるものではなく、例えば、胴体10に対してフランジ部材20をネジやビス等で直接固定してもよく、更には、胴体10に対するフランジ部材20の嵌合のみで行ってもよい。
【0020】
図5は、
図4の要部拡大図である。
図4および
図5に示すように、胴体10とフランジ部材20とは、第1のインロー部F1でインロー嵌合すると共に、第2のインロー部F2でインロー嵌合する。第1のインロー部F1は、外筒11の端面がフランジ部材20の対向面22側に当接した状態で、外筒11の内周面と第1の環状リブ23の外周面とがインロー嵌合することにより構成される。また、第2のインロー部F2は、内筒12の段部17がフランジ部材20の対向面22側に当接した状態で、内筒12の外周面と第2の環状リブ24の内周面とがインロー嵌合することにより構成される。
【0021】
上記の構成を備えるリール1は、
図4に示すように、一対のフランジ部材20,20の開口21,21に、巻取機のチャックC,Cを挿入して挟持し、回転させることにより、長尺物を胴体10の外周面に巻き取ることができる。フランジ部材20には、胴体10に巻き取った長尺物から矢示のように外方への力が作用するが、胴体10およびフランジ部材20は、径方向に離隔配置された第1のインロー部F1および第2のインロー部F2でインロー嵌合されているため、フランジ部材20に作用する押圧力を、第1のインロー部F1が支点となって、第2のインロー部F2で確実に受けとめることができる。これにより、フランジ部材20の変形や脱落等を防止することができる。更に、胴体10に巻き取った長尺物から径方向内方に作用する力についても、第1のインロー部F1および第2のインロー部F2を備えることによって、一対のフランジ部材20,20を介して内筒12で確実に受けとめて分散させることができる。このように、本実施形態のリール1は、胴体10および一対のフランジ部材20,20を別部材とすることで製造コストの低減を図りつつ、強度を容易に高めることができる。
【0022】
また、本実施形態のリール1は、内筒12の両端部が外筒11の両端から突出するように設けられており、第2のインロー部F2は、第1のインロー部F1よりも胴体10の長手方向(
図4および
図5の左右方向)外方に配置されているので、フランジ部材20が長尺物から受ける押圧力を、内筒12の外周面において、より確実に受けとめることができる。
【0023】
また、第2のインロー部F2における内筒12の肉厚が、第1のインロー部F1における外筒11の肉厚よりも大きく形成されているので、リール1全体としての軽量化を図りつつ、内筒12の剛性を確保することができる。
【0024】
胴体10およびフランジ部材20の材料は、必ずしも限定されないが、合成樹脂により形成することが好ましい。本実施形態のリール1は、胴体10および一対のフランジ部材20,20を分割構造とすることで軽量化を図りつつ、胴体10とフランジ部材20とを個別に成形して機械加工した後に組み立てることができるので、寸法精度を高めることができる。特に、第1のインロー部F1および第2のインロー部F2における嵌合精度はリール1の強度に大きく影響するが、胴体10およびフランジ部材20を合成樹脂により射出成形した後に、それぞれのかみ合わせ調整を容易に行うことができるので、高強度のリール1を迅速安価に製造することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 リール
10 胴体
11 外筒
12 内筒
20 フランジ部材
21 開口
22 対向面
23 第1の環状リブ
24 第2の環状リブ
F1 第1のインロー部
F2 第2のインロー部