(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109251
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】機器特定方法及び機器特定プログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 40/20 20180101AFI20240806BHJP
【FI】
G16H40/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013957
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】楠嶺 生宏
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 邦将
(72)【発明者】
【氏名】谷中 聖志
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
(57)【要約】
【課題】スケジューリング対象の手術で使用する機器を高精度に特定する機器特定方法及び機器特定プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】機器特定方法は、コンピュータが、過去の手術の術式名に出現する文字列が閾値数未満である特定の術式名を有するスケジューリング対象手術が入力されたと判断した場合、前記特定の術式名を説明する文中の単語を前記コンピュータ以外の装置から取得し、前記過去の手術の術式名と前記過去の手術で使用した機器とを対応付けた判定モデルに、取得した前記単語を入力することにより、前記スケジューリング対象手術で使用する機器を特定する、処理を実行する方法である。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータが、
過去の手術の術式名に出現する文字列が閾値数未満である特定の術式名を有するスケジューリング対象手術が入力されたと判断した場合、前記特定の術式名を説明する文中の単語を前記コンピュータ以外の装置から取得し、
前記過去の手術の術式名と前記過去の手術で使用した機器とを対応付けた判定モデルに、取得した前記単語を入力することにより、前記スケジューリング対象手術で使用する機器を特定する、
処理を実行する機器特定方法。
【請求項2】
前記判定モデルは、前記過去の手術の術式名をベクトルで表現した第1特徴量と前記過去の手術で使用した機器とを対応付けた対応データであり、
前記コンピュータが、
取得した前記単語をベクトルで表現した第2特徴量と前記第1特徴量との類似度が閾値類似度以上であると判断した場合に、前記スケジューリング対象手術で使用する機器を特定する、
処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の機器特定方法。
【請求項3】
前記判定モデルは、前記過去の手術の術式名から手術分野での慣用語を除去した第1術式名をベクトルで表現した第1特徴量と前記過去の手術で使用した機器とを対応付けた対応データであり、
前記コンピュータが、
入力された前記スケジューリング対象手術が前記慣用語を含む第2術式名を有すると判断した場合、前記第2術式名から前記慣用語を除去し、
前記慣用語を除去した前記第2術式名をベクトルで表現した第2特徴量と前記第1特徴量との類似度が閾値類似度以上であると判断した場合に、前記スケジューリング対象手術で使用する機器を特定する、
処理を実行することを特徴とする請求項1に記載の機器特定方法。
【請求項4】
前記コンピュータが、
前記特定の術式名と、特定した前記機器の情報とを対応付けて端末装置に表示し、前記端末装置から前記機器の情報を修正する要求を検出した場合、修正後の前記機器の情報に基づいて、前記閾値類似度を変更する、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の機器特定方法。
【請求項5】
前記コンピュータが、
前記要求を検出した場合、修正後の前記機器の情報と対応付けられた複数の術式名をそれぞれベクトルで表現した特徴量同士の類似度を算出し、算出した前記類似度の中の最小類似度に前記閾値類似度を変更する、
ことを特徴とする請求項4に記載の機器特定方法。
【請求項6】
コンピュータに、
過去の手術の術式名に出現する文字列が閾値数未満である特定の術式名を有するスケジューリング対象手術が入力されたと判断した場合、前記特定の術式名を説明する文中の単語を前記コンピュータ以外の装置から取得し、
前記過去の手術の術式名と前記過去の手術で使用した機器とを対応付けた判定モデルに、取得した前記単語を入力することにより、前記スケジューリング対象手術で使用する機器を特定する、
処理を実行させるための機器特定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、機器特定方法及び機器特定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道システムに関する分野において、異なる2つのデータの特徴ベクトルをそれぞれ算出し、算出した特徴ベクトルのコサイン類似度が所定の範囲内にあるデータを機械学習に関する教師データとして抽出する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、手術の分野において、手術の執刀医やその手術の術式、その手術で使用する機器を事前にスケジューリングする業務に、上述した特徴ベクトルや数理最適化の技術を適用して業務の自動化を図ることが検討されている。しかしながら、スケジューリング対象の手術で使用する予定の機器を高精度に特定することが難しい場合がある。
【0005】
例えば、タニケットと呼ばれる機器は、四肢切断術(下腿)、四肢関節離断術(足指)、デブリードマンといった術式で共通に使用される。四肢切断術(下腿)と四肢関節離断術(足指)といった術式の術式名は共通の文字列「四肢」を含むため、これらの術式名を特徴ベクトルで表現すれば、特徴ベクトル同士が類似する可能性が高い。したがって、これらの特徴ベクトルと使用機器とを事前に対応付けた対応データを判定モデルとして用意すれば、文字列「四肢」を含む他の術式についても同様に特徴ベクトルが類似することで、タニケットを使用機器として特定することができる。
【0006】
しかしながら、デブリードマンは文字列「四肢」を含まない術式名である。このため、デブリードマンの術式名が特徴ベクトルで表現されても、文字列「四肢」を含む術式の特徴ベクトルとは類似しない可能性が高い。すなわち、上述した判定モデルを用意しても、使用機器としてのタニケットをデブリードマンから高精度に特定することが難しい。
【0007】
そこで、1つの側面では、スケジューリング対象の手術で使用する機器を高精度に特定する機器特定方法及び機器特定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
1つの実施態様では、機器特定方法は、コンピュータが、過去の手術の術式名に出現する文字列が閾値数未満である特定の術式名を有するスケジューリング対象手術が入力されたと判断した場合、前記特定の術式名を説明する文中の単語を前記コンピュータ以外の装置から取得し、前記過去の手術の術式名と前記過去の手術で使用した機器とを対応付けた判定モデルに、取得した前記単語を入力することにより、前記スケジューリング対象手術で使用する機器を特定する、処理を実行する方法である。
【発明の効果】
【0009】
スケジューリング対象の手術で使用する機器を高精度に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】データ処理サーバのハードウェア構成の一例である。
【
図7】事前処理の一例を示すフローチャートである。
【
図8】機器特定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図9】スケジュール対象手術に含まれる術式名の特徴量である。
【
図10】使用機器が特定された対応データの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本件を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0012】
図1に示すように、データ処理システムSTは端末装置10とデータ処理サーバ100とを含んでいる。データ処理システムSTは手術のスケジュールを調整するスケジューリング業務を支援するコンピュータシステムである。端末装置10とデータ処理サーバ100はLAN(Local Area Network)やインターネットといった通信ネットワークNWを介して接続されている。データ処理システムSTにデータ処理サーバ100とは異なる外部のデータ提供サーバ200を含めてもよいし、含めなくてもよい。データ提供サーバ200は文言の解説文書や説明文を提供するサーバであって、例えばWikipediaといったインターネット上の百科事典サービスを提供する。
【0013】
図1では、端末装置10の一例として、PC(Personal Computer)が示されている。端末装置10はタブレット端末やスマートフォンといった携帯型のスマート端末などであってもよい。また、
図1では、データ処理サーバ100及びデータ提供サーバ200の一例として物理的なサーバ装置が示されているが、データ処理サーバ100及びデータ提供サーバ200は仮想的なサーバ装置であってもよい。
【0014】
端末装置10はスケジューリング業務を担当する担当者11によって操作される。担当者11は、手術を実施する予定の執刀医やその手術で実施される予定の術式、その手術で使用する予定の機器などを事前に調整する。例えば、大型の手術用医療機器は医療機関(具体的には病院など)に数台(例えば1台や2台など)しか配置されていない場合があり、その機器の使用に関して事前の調整が必要となる場合がある。なお、手術用医療機器としては、タニケットやハーモニック、アルゴンなどがある。
【0015】
詳細は後述するが、データ処理サーバ100は、端末装置10からのアクセスを検出すると、スケジューリング業務を支援する様々な処理を実行する。例えば、データ処理サーバ100は、手術で実施される予定の術式を含むスケジューリング対象手術が入力されたと判断した場合、後述する様々な処理を実行し、その術式で使用される可能性が高い機器を端末装置10に表示する。これにより、担当者11が術式と機器との対応関係に関する専門知識を十分に有していなくても、術式に応じた機器を確認することができる。結果的に、担当者11はこのような対応関係を調べる手間を低減することができる。このように、手術における術式と手術用医療機器との対応関係に関する特有の課題に対して、手術のスケジューリングを行う製品に本件の方法を適用すれば、担当者11の負担を抑制することができる。
【0016】
次に、
図2を参照して、データ処理サーバ100のハードウェア構成について説明する。なお、上述した端末装置10及びデータ提供サーバ200は基本的にデータ処理サーバ100のハードウェア構成と同様のハードウェア構成であるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
データ処理サーバ100は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)100Aと、メモリとしてのRAM(Random Access Memory)100B及びROM(Read Only Memory)100Cを含んでいる。データ処理サーバ100は、ネットワークI/F(インタフェース)100D及びHDD(Hard Disk Drive)100Eを含んでいる。HDD(Hard Disk Drive)100Eに代えて、SSD(Solid State Drive)を採用してもよい。
【0018】
データ処理サーバ100は、必要に応じて、入力I/F100F、出力I/F100G、入出力I/F100H、ドライブ装置100Iの少なくとも1つを含んでいてもよい。CPU100Aからドライブ装置100Iまでは、内部バス100Jによって互いに接続されている。すなわち、データ処理サーバ100はコンピュータによって実現することができる。
【0019】
入力I/F100Fには入力装置710が接続される。入力装置710としては例えばキーボードやマウス、タッチパネルなどがある。出力I/F100Gには表示装置720が接続される。表示装置720としては例えば液晶ディスプレイなどがある。入出力I/F100Hには半導体メモリ730が接続される。半導体メモリ730としては、例えばUSB(Universal Serial Bus)メモリやフラッシュメモリなどがある。入出力I/F100Hは半導体メモリ730に記憶された機器特定プログラムを読み取る。入力I/F100F及び入出力I/F100Hは例えばUSBポートを備えている。出力I/F100Gは例えばディスプレイポートを備えている。
【0020】
ドライブ装置100Iには可搬型記録媒体740が挿入される。可搬型記録媒体740としては、例えばCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)といったリムーバブルディスクがある。ドライブ装置100Iは可搬型記録媒体740に記録された機器特定プログラムを読み込む。ネットワークI/F100Dは例えばLANポートや通信回路などを備えている。通信回路は有線通信回路と無線通信回路のいずれか一方又は両方を含んでいる。ネットワークI/F100Dは通信ネットワークNWと接続されている。
【0021】
RAM100BにはROM100C、HDD100E、半導体メモリ730の少なくとも1つに記憶された機器特定プログラムがCPU100Aによって一時的に格納される。RAM100Bには可搬型記録媒体740に記録された機器特定プログラムがCPU100Aによって一時的に格納される。格納された機器特定プログラムをCPU100Aが実行することにより、CPU100Aはデータ処理サーバ100として後述する各種の機能を実現し、また、後述する各種の処理を含む機器特定方法を実行する。なお、機器特定プログラムは後述するフローチャートに応じたものとすればよい。
【0022】
図3乃至
図6を参照して、データ処理サーバ100の機能構成について説明する。なお、
図3ではデータ処理サーバ100の機能の要部が示されている。
【0023】
図3に示すように、データ処理サーバ100は記憶部110、処理部120、及び通信部130を備えている。記憶部110は上述したRAM100BとHDD100Eのいずれか一方又は両方によって実現することができる。処理部120は上述したCPU100Aによって実現することができる。通信部130は上述したネットワークI/F100Dによって実現することができる。
【0024】
記憶部110、処理部120、及び通信部130は互いに接続されている。記憶部110は、過去データ記憶部111、モデルデータ記憶部112、対応データ記憶部113、及び対象データ記憶部114を含んでいる。処理部120は、データ生成部121、機器特定部122、及びデータ修正部123を含んでいる。
【0025】
過去データ記憶部111は既に実施を終えた手術のスケジューリングデータを過去データとして手術案件毎に記憶する。過去データは、
図4に示すように、手術ID(Identifier)、病名ID、術式ID、使用機器ID、使用部屋ID、スタッフIDといった複数の項目を含んでいる。図示しないが、過去データは、執刀医IDや患者IDなどの項目を含んでいてもよい。これら複数の項目に様々な情報が登録される。
【0026】
手術IDの項目には手術案件を識別する識別子が登録される。病名IDの項目には患者が罹患した疾病名を識別する識別子が登録される。術式IDの項目には手術で実施した術式を識別する識別子が登録される。術式IDの項目には漢字やアルファベット、数字、カタカナなどの組合せが識別子として登録されてもよいし、術式の具体的な名称である術式名が登録されてもよい。本実施形態では、例えば術式Aは術式名「四肢切断術(下腿)」を表し、術式Bは術式名「脊椎骨切り(胸部)」を表し、術式Cは術式名「四肢関節離断術(足指)」を表している。使用機器IDの項目には手術で使用した機器を識別する識別子が登録される。使用機器IDの項目には上述した組合せが登録されてもよいし、機器の具体的な名称である機器名が登録されてもよい。本実施形態では、例えば機器1は機器名「タニケット」を表し、機器2は機器名「ハーモニック」を表している。
【0027】
使用部屋IDの項目には手術で使用した手術室を識別する識別子が登録される。スタッフIDの項目には手術の際に立ち会ったスタッフを識別する識別子が登録される。このように、過去データ記憶部111には、既に実施を終えた手術のスケジューリングデータが過去データとして手術案件毎に事前に格納されている。
【0028】
モデルデータ記憶部112は単語又は複数の単語を含む単語群から特徴量を算出するためのモデルデータを記憶する。モデルデータは単語又は単語群から単語又は単語群の特徴をN次元(Nは2以上の自然数)のベクトルで表現した特徴量を算出する。モデルデータとしては、例えばWord2Vecといった既知の特徴量算出アルゴリズムを実装したライブラリなどがある。
【0029】
対応データ記憶部113は上述した特徴量と手術での使用機器とを事前に対応付けた対応データを判定モデルとして記憶する。使用機器は既に手術で使用し終えた使用済機器であってもよいし、手術で使用する前の使用予定機器であってもよい。例えば、
図5に示すように、対応データは、術式ID、特徴量、使用機器ID、類似度、類似術式IDといった複数の項目を含んでいる。類似術式IDの項目には術式IDに類似する術式IDが登録される。対応データは後述するデータ生成部121によって生成され、対応データ記憶部113に格納される。対応データにより、例えば術式Aと類似する別の術式A´(不図示)を含むスケジュール対象手術がデータ処理サーバ100に入力された場合、特徴量が互いに類似することにより、術式A´で使用する予定の機器を特定することができる。
【0030】
対象データ記憶部114は手術がまだ実施されていないスケジュール対象手術のスケジューリングデータ(以下、対象データという)を手術案件毎に記憶する。
図6に示すように、対象データは、基本的に上述した過去データと同様に、複数の項目を含んでいる。本実施形態では、例えば術式Xは術式名「デブリードマン」を表し、術式Yは術式名「胸部試験開胸術」を表している。対象データでは、担当者11の不十分な専門知識に起因する誤った機器の登録を回避するため、使用機器IDの項目には機器1や機器2といった情報がまだ登録されていない。なお、手術室ID及びスタッフIDの項目には、手術を実施する予定の手術室や手術に立ち会う予定のスタッフが決定されていないため、これらの項目にも必要な情報が登録されていない。対象データはスケジュール対象手術がデータ処理サーバ100に入力された場合に、対象データ記憶部114に格納される。
【0031】
図3に戻り、データ生成部121は上述した判定モデルとしての対応データを生成し、対応データ記憶部113に格納する。詳細は後述するが、例えば、データ生成部121は設定時刻(例えば夜間の所定時刻など)の到来を検出すると、過去データ記憶部111が記憶する過去データから術式名と機器名の組合せを抽出する。そして、データ生成部121は抽出したこれらの組合せと、モデルデータ記憶部112が記憶するモデルデータとに基づいて、対応データを生成する。
【0032】
機器特定部122は、過去データの術式名に出現する文字列が閾値数未満である特定の術式名を有するスケジューリング対象手術が入力されたと判断した場合、スケジューリング対象手術で使用する機器を特定する。例えば、本実施形態であれば、過去データには術式Aが表す術式名「四肢切断術(下腿)」や術式Cが表す術式名「四肢関節離断術(足指)」には文字列「四肢」が出現する。
【0033】
ここで、例えば閾値数「1」が機器特定部122に設定された状態で、術式Xが表す術式名「デブリードマン」を有するスケジューリング対象手術が入力されたと判断した場合、術式Xには文字列「四肢」が含まれていない。すなわち、術式Xは文字列「四肢」の個数が閾値数「1」未満である特定の術式名に相当する。詳細は後述するが、このようなスケジューリング対象手術が入力された場合、機器特定部122は術式Xを説明する説明文中の単語をデータ提供サーバ200から取得し、取得した単語と判定モデルとを用いて、スケジューリング対象手術で使用する機器を特定する。なお、機器特定部122は術式Xを説明する説明文を事前に用意してもよいし、説明文を端末装置10に要求し、担当者11が端末装置10に入力した説明文を取得してもよい。
【0034】
データ修正部123は対応データを修正する。詳細は後述するが、例えば術式名とこの術式名に対応する機器とを対応付けた対応表を含む画面を端末装置10に表示し、担当者11の操作に基づいて、端末装置10からの機器の修正要求を検出した場合、データ修正部123は対応データを修正する。これにより、術式名と機器との不正確な対応付けやその後の登録を抑制することができる。
【0035】
次に、データ処理サーバ100の動作について説明する。
【0036】
まず、
図7を参照して、データ生成部121が実行する事前処理について説明する。
図7に示すように、データ生成部121は、まず、過去データを取得する(ステップS1)。より詳しくは、データ生成部121は過去データ記憶部111から過去データを取得する(
図4参照)。過去データを取得すると、データ生成部121は術式名と使用機器名とを手術案件毎に抽出する(ステップS2)。より詳しくは、データ生成部121は術式名と使用機器名の組合せを手術案件毎に抽出する。例えば、データ生成部121は手術IDの項目に登録された手術案件「ope1」について術式IDの項目に術式Aとして登録された術式名「四肢切断術(下腿)」と使用機器IDの項目に機器1として登録された機器名「タニケット」の組合せを抽出する(
図4参照)。
【0037】
術式名と使用機器名を抽出すると、データ生成部121は抽出した術式名が特殊パターンか否かを判断する(ステップS3)。ここで、特殊パターンは過去データの術式名に出現する所定の文字列が閾値数未満である特定の術式名を表している。例えば、所定の文字列「四肢」がデータ生成部121に設定された状態で、データ生成部121が術式名「四肢切断術(下腿)」を抽出した場合、この術式名には文字列「四肢」が含まれている。すなわち、この術式名は文字列「四肢」が閾値数「1」未満である特定の術式名に相当しない。この場合、データ生成部121は抽出した術式名が特殊パターンでないと判断し(ステップS3:NO)、後続のステップS4の処理をスキップする。
【0038】
一方、データ生成部121が例えば不図示の術式D(例えば術式名「TUEB」といった略称や固有名称)を抽出した場合、術式Dには文字列「四肢」が含まれていない。すなわち、術式Dは文字列「四肢」が閾値数「1」未満である特定の術式名に相当する。この場合、データ生成部121は抽出した術式名が特殊パターンであると判断し(ステップS3:YES)、抽出した術式名を説明文に変換する(ステップS4)。
【0039】
例えば、術式名とその術式名を説明する文章である説明文を対応付けて格納したデータ提供サーバ200にアクセス可能である場合、データ生成部121は抽出した術式名に対応する説明文を含むデータをデータ提供サーバ200から取得する。これにより、データ生成部121は抽出した術式名を説明文に変換することができる。なお、データ生成部121は説明文を端末装置10に要求し、端末装置10に入力された説明文を取得してもよい。また、抽出した術式名に手術分野での慣用語が含まれている場合、データ生成部121は抽出した術式名からその慣用語を除去してもよい。このような慣用語としては、例えば文字「術」や文字列「手術」などがある。術式名から慣用語を除去することにより、高精度な特徴量が算出される。
【0040】
ステップS4の処理を実行した場合、又は、ステップS4の処理をスキップした場合、データ生成部121は形態素解析を実行する(ステップS5)。例えば、術式Aが表す術式名「四肢切断術」を抽出した場合、データ生成部121は、慣用語「術」を除いた文字列「四肢切断」に対する形態素解析を実行することにより、単語「四肢」と単語「切断」とに分割する。そして、データ生成部121は単語「四肢」と単語「切断」の単語間に空白(スペース)を挿入する分かち処理を実行し、単語「四肢」と単語「切断」と空白を含む単語群を生成する。このように、データ生成部121は説明文から単語群を取得する。
【0041】
形態素解析を実行すると、データ生成部121は特徴量を算出する(ステップS6)。より詳しくは、データ生成部121はモデルデータ記憶部112からモデルデータを取得し、形態素解析及び分かち処理により得られた単語群をモデルデータに入力して、モデルデータの機械学習を行う。これにより、データ生成部121は単語群をベクトルで表現した特徴量を算出することができる。
【0042】
特徴量を算出すると、データ生成部121は対応データを生成して格納する(ステップS7)。より詳しくは、データ生成部121は、ステップS2の処理で抽出した術式名と使用機器名の組合せに、ステップS6の処理で算出した特徴量を対応付けた対応データを生成する。対応データを生成すると、データ生成部121は対応データを対応データ記憶部113に格納する。これにより、対応データ記憶部113は処理対象の手術案件に関する対応データを記憶する。
【0043】
対応データを格納すると、データ生成部121は全手術案件の処理が完了したか否か判断する(ステップS8)。全手術案件の処理が完了していない場合(ステップS8:NO)、データ生成部121はステップS2からステップS7までの処理を繰り返す。一方、全手術案件の処理が完了した場合(ステップS8:YES)、データ生成部121は事前処理を終了する。これにより、対応データ記憶部113は全手術案件に関する対応データを記憶する(
図5参照)。
【0044】
次に、
図8乃至
図11を参照して、機器特定部122が実行する機器特定処理について説明する。まず、
図8に示すように、機器特定部122はスケジュール対象手術が入力されるまで待機する(ステップS11:NO)。スケジュール対象手術が入力されると(ステップS11:YES)、機器特定部122は手術案件毎に術式名を抽出する(ステップS12)。
【0045】
例えば、術式Xが表す術式名「デブリードマン」と術式Yが表す術式名「胸部試験開胸術」とを有し、これらの使用機器名を含まない対象データのスケジュール対象手術が入力された場合、まず、機器特定部122は対象データを対象データ記憶部114に格納する。これにより、対象データ記憶部114は対象データを記憶する(
図6参照)。対象データを格納すると、対象データ記憶部114が記憶する対象データから術式名を抽出する。例えば、機器特定部122は術式名「デブリードマン」を抽出する。
【0046】
術式名を抽出すると、機器特定部122は術式名が特殊パターンか否かを手術案件毎に判断する(ステップS13)。上述したように、術式名「デブリードマン」を抽出した場合、術式名「デブリードマン」は文字列「四肢」が閾値数「1」未満であるため、術式名「デブリードマン」は特殊パターンである。したがって、この場合、機器特定部122は術式名が特殊パターンであると判断する(ステップS13:YES)。この結果、機器特定部122は術式名を説明文に変換する(ステップS14)。例えば、術式名「デブリードマン」であれば、データ提供サーバ200から説明文「患部の壊死状態をメスで切除・切断する手術」を含むデータを取得することにより、機器特定部122は術式名を説明文に変換する。
【0047】
なお、術式名が特殊パターンでない場合(ステップS13:NO)、機器特定部122はステップS14の処理をスキップする。また、機器特定部122は説明文を端末装置10に要求し、端末装置10に入力された説明文を取得してもよい。さらに、抽出した術式名に手術分野での慣用語が含まれている場合、機器特定部122は抽出した術式名からその慣用語を除去してもよい。
【0048】
ステップS14の処理を実行した場合、又は、ステップS14の処理をスキップした場合、機器特定部122は形態素解析を手術案件毎に実行する(ステップS15)。例えば、術式Xを上述した説明文に変換した場合、データ生成部121は、慣用語「手術」を除いた文字列「患部の壊死状態をメスで切除・切断する」に対する形態素解析を実行することにより、単語「メス」や単語「切除」、単語「切断」など複数の単語に分割する。そして、データ生成部121はこれら複数の単語間に空白を挿入する分かち処理を実行し、複数の単語と空白を単語間に含む単語群を生成する。このように、データ生成部121は説明文から単語群を取得する。
【0049】
形態素解析を実行すると、機器特定部122は特徴量を算出する(ステップS16)。より詳しくは、機器特定部122はモデルデータ記憶部112から学習済のモデルデータを取得し、形態素解析及び分かち処理により得られた単語群をモデルデータに入力して、手術案件毎に特徴量を算出する。これにより、
図9に示すように、術式名に対応する特徴量が算出される。機器特定部122はこのような術式名ごとの特徴量を保持する。
【0050】
特徴量を算出すると、機器特定部122は類似度を算出する(ステップS17)。より詳しくは、機器特定部122は対応データ記憶部113から対応データを取得し、対応データに含まれる特徴量(
図5参照)とステップS6の処理で算出した特徴量(
図9参照)とのコサイン類似度を比較対象の術式名毎に算出する。コサイン類似度に代えて、ユークリッド距離を採用してもよい。
【0051】
類似度を算出すると、機器特定部122は類似度が閾値類似度以上であるか否かを比較対象の術式名毎に判断する(ステップS18)。閾値類似度としては例えば70%や80%など類似度が高類似度であることを判断可能な数値を定めることができる。類似度が閾値類似度以上である場合(ステップS18:YES)、機器特定部122は閾値類似度以上となる類似度を算出した対応データの術式名を抽出する(ステップS19)。機器特定部122は類似度が最も高い1つの術式名を抽出してもよいし、類似度が閾値類似度以上となる複数の術式名を抽出してもよい。本実施形態では、一例として、術式Xが表す術式名「デブリードマン」に対し、機器特定部122は特徴量の類似度が最も高い術式Aが表す術式名「四肢切断術(下腿)」を抽出する。
【0052】
術式名を抽出すると、機器特定部122は術式名と対応付けられた使用機器名を特定する(ステップS20)。本実施形態であれば、機器特定部122は術式Aが表す術式名「四肢切断術(下腿)」に機器1として対応付けられた機器名「タニケット」を特定する。なお、機器特定部122は類似度が閾値類似度以上となる術式Aが表す術式名「四肢切断術(下腿)」と術式Cが表す術式名「四肢関節離断術(足指)」の両方を抽出し、それぞれに機器1として対応付けられた機器名「タニケット」を特定してもよい。また、類似度が閾値類似度未満である場合(ステップS18:NO)、機器特定部122はステップS19,S20の処理をスキップする。術式名の抽出を回避することにより、機器特定部122は使用機器の特定を回避する。これにより、術式名と使用機器名とが誤って対応付けされる可能性が低減する。
【0053】
ステップS20の処理が実行された場合、又はステップS19,S20の処理がスキップされた場合、機器特定部122は対応データを更新する(ステップS21)。より詳しくは、機器特定部122はステップS20の処理で特定した使用機器名を、類似度や類似術式名と共に、ステップS12の処理で抽出した術式名に対応付けて対応データに登録することにより、対応データを更新する。
【0054】
これにより、
図10に示すように、例えば術式Xが表す術式名「デブリードマン」に対し、使用機器名「機器1」が対応付けられる。また、術式名「デブリードマン」に対し、術式名「四肢切断術(下腿)」を表す術式Aが類似術式名として類似度「80%」と共に対応付けられる。なお、例えば術式Yが表す術式名「胸部試験開胸術」に対し、使用機器名が特定されない場合には、
図10に示すように、空欄が維持され、類似度の算出結果(例えば「0%」など)や対応する術式名がない旨などが登録される。対応データ記憶部113はこのような更新後の対応データを記憶する。
【0055】
対応データを更新すると、データ修正部123は確認画面を端末装置10に表示する(ステップS22)。これにより、
図11の上段に示すように、端末装置10(具体的には端末装置10の表示部)には確認画面が表示される。確認画面は対応データを部分的に含んでいる。具体的には、確認画面は特徴量を除いた対応データを含んでいる。確認画面により、担当者11はスケジュール対象手術に含まれる術式Xや術式Yで使用される予定の使用機器名を確認することができる。
【0056】
ここで、担当者11は確認画面に現れる使用機器名を修正することができる。例えば、
図11の下段に示すように、担当者11は術式Aが表す術式名「四肢切断術」に対応付けられた機器1(すなわちタニケット)を機器3(例えばアルゴン)に修正することができる。また、担当者11は修正により術式Yを表す術式名「胸部試験開胸術」に機器2(すなわちハーモニック)を新たに対応付けることができる。
【0057】
使用機器名を修正した後に、担当者11が端末装置10(具体的には端末装置10の入力部)を操作して、マウスポインタPTを移動させ、修正対象の使用機器名と対応付けられた修正ボタンBTが押下されると、端末装置10は使用機器名の修正を要求する修正要求をデータ処理サーバ100に送信する。修正要求は修正後の使用機器名を含んでいる。
【0058】
データ修正部123は修正要求を検出すると(ステップS23:YES)、閾値類似度を変更し(ステップS24)、処理を終了する。より詳しくは、データ修正部123は修正要求に含まれる修正後の使用機器名に基づいて、閾値類似度を変更する。例えば、上述したように、術式名「胸部試験開胸術」に機器2が新たに対応付けられると、術式Bが表す術式名「脊椎骨切り(胸部)」に対応付けられた機器2と共通する。このように、修正要求に含まれる修正後の使用機器名に基づいて、様々な使用機器名との重複を検出した場合、データ修正部123は共通する使用機器名と対応付けられた術式名同士の類似度を各術式名の特徴量に基づいて算出する。
【0059】
類似度を算出すると、データ修正部123は閾値類似度を算出した類似度又は算出した類似度の中から最低の類似度に変更する。これにより、機器特定部122が別の機会に対応データを生成する場合、術式名に対する使用機器名の特定不能が解消され易くなる。結果的に、担当者11による使用機器名の修正負担を低減することができる。
【0060】
図12を参照して、本件の実施形態を簡潔に説明する。なお、
図12に示す丸付きの数字は手順を表している。
【0061】
まず、端末装置10から術式名「デブリードマン」を含むスケジュール対象手術がデータ処理サーバ100に入力される(手順1)。データ処理サーバ100には、例えば術式名「四肢切断術(下腿)」とその術式名に応じたベクトルで表現された特徴量と使用機器名「タニケット」が対応付けられた対応データが事前に格納されている。
【0062】
術式名「デブリードマン」と術式名「四肢切断術(下腿)」は術式名をベクトルで表現した特徴量で類似度を算出すると、類似する可能性が低い。このため、データ処理サーバ100は術式名「デブリードマン」をデータ提供サーバ200に送信する(手順2)。ここで、データ提供サーバ200には術式名「デブリードマン」を説明する説明文「患部の壊死状態をメスで切除・切断する手術」を含むデータが格納されている。このため、データ処理サーバ100は術式名「デブリードマン」をデータ提供サーバ200に送信することにより、この説明文を含むデータを取得することができる(手順3)。
【0063】
データ処理サーバ100はこの説明文のデータに基づいて特徴量の類似度を算出する。具体的には、術式名「四肢切断術(下腿)」と説明文「患部の壊死状態をメスで切除・切断する手術」に対して形態素解析が実行されると、この術式名とこの説明文には共通する単語「切断」が含まれている。このため、術式名と説明文が類似する可能性が高い。これにより、データ処理サーバ100は術式名「四肢切断術(下腿)」に対応付けられた使用機器名「タニケット」を特定することができる。この結果、データ処理サーバ100は術式名「デブリードマン」の手術で使用する機器として使用機器名「タニケット」を端末装置10に送信して表示することができる(手順4)。これにより、担当者11は術式に対応する使用機器の調査負担を低減することができる。
【0064】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明に係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、データ処理サーバ100が備える機能の一部を端末装置10が備えていてもよい。
【符号の説明】
【0065】
ST データ処理システム
10 端末装置
100 データ処理サーバ
110 記憶部
111 過去データ記憶部
112 モデルデータ記憶部
113 対応データ記憶部
114 対象データ記憶部
120 処理部
121 データ生成部
122 機器特定部
123 データ修正部
200 データ提供サーバ