(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109254
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】保守スケジュール支援装置および保守スケジュール支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240806BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023013961
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】中島 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】吉成 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 政弘
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
(57)【要約】
【課題】車両に装着されたタイヤ等の保守の効率化を図ることができる保守スケジュール支援装置および保守スケジュール支援方法を提供する。
【解決手段】保守スケジュール支援装置10は、車両情報取得部12、停留時間帯算出部13および停留状況推定部14を備える。車両情報取得部12は、車両7で計測される位置情報を含む車両情報を取得する。停留時間帯算出部13は、車両情報(車両7の位置情報)に基づいて車両が停留場所に存在している時間帯を算出する。停留状況推定部14は、停留時間帯算出部13によって複数の日に対して算出した時間帯の情報を解析し、曜日および時間帯に対する車両7の停留状況の度合いを推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両で計測される位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、
前記車両情報に基づいて車両が停留場所に存在している時間帯を算出する停留時間帯算出部と、
前記停留時間帯算出部によって複数の日に対して算出した前記時間帯の情報を解析し、曜日および時間帯に対する車両の停留状況の度合いを推定する停留状況推定部と、
を備えることを特徴とする保守スケジュール支援装置。
【請求項2】
前記車両は、輸送事業者が運用する複数の車両であることを特徴とする請求項1に記載の保守スケジュール支援装置。
【請求項3】
前記停留状況推定部は、曜日および時間帯に対して車両の停留回数を積算することによって、車両の停留状況の度合いを推定することを特徴とする請求項1に記載の保守スケジュール支援装置。
【請求項4】
前記停留状況推定部は、前記停留時間帯算出部によって複数の日に対して算出した前記時間帯の情報を教師データとして学習させた学習型の演算モデルを有し、前記演算モデルに基づいて車両の停留状況の度合いを推定することを特徴とする請求項1に記載の保守スケジュール支援装置。
【請求項5】
前記停留状況推定部によって推定された車両の停留状況に基づいて車両の保守スケジュールを生成する保守スケジュール作成部と、
前記保守スケジュール作成部によって生成した保守スケジュールに基づく保守作業が完了した車両に関する情報を作業者端末装置から取得する保守状況取得部と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の保守スケジュール支援装置。
【請求項6】
車両で計測される位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得ステップと、
前記車両情報に基づいて車両が停留場所に存在している時間帯を算出する停留時間帯算出ステップと、
前記停留時間帯算出ステップによって複数の日に対して算出した前記時間帯の情報を解析し、曜日および時間帯に対する車両の停留状況の度合いを推定する停留状況推定ステップと、
を備えることを特徴とする保守スケジュール支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されたタイヤ等に対する保守計画を支援する保守スケジュール支援装置および保守スケジュール支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に装着されたタイヤは、走行状態や走行距離等に応じて摩耗が進行し、時間経過とともにタイヤ空気圧が変化するため、適宜、点検や交換等の保守が必要となる。例えば、輸送事業者において運用されているトラック等の車両に対しては、輸送事業者に車両の運行スケジュールを問い合せ、タイヤ保守の対象車両が停留場所に停留している日時を確認し、保守スケジュールを計画している。
【0003】
特許文献1には従来の運用計画作成装置が記載されている。運用計画作成装置は、列車の運行経路を示す行路情報ならびに列車の点検および清掃作業の予定を含む作業予定情報の日付に対する制約条件を判断し、行路情報と作業予定情報とを含む運用計画情報を出力する処理部と、列車の運用計画を作成する画面に運用計画情報を表示する表示部とを備える。表示部は、編成番号毎および日付毎に運用計画情報を表す車両運用計画表と、行路情報を表す車両運用順序表とを同一の画面に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の運用計画作成装置は、表示部に車両運用計画表と車両運用順序表とを同一の画面に表示することで、運用計画表の作成時間を短縮し操作性を向上する。ところで、輸送事業者で運用されている車両におけるタイヤ等の保守においては、車両の運行スケジュールを問合せしてからタイヤ保守の計画を作成する手間がかかる。また実際の保守作業においては、交通状況や輸送量などに応じて停留場所への車両の帰還遅延が発生することによって、長時間にわたって保守作業者が待機状態となり作業効率が低下する。更には、車両の帰還遅延によって、別の日に停留場所へ作業者が出向いて対象車両の保守作業を実施しなければならない状況が生じるという問題点があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両に装着されたタイヤ等の保守の効率化を図ることができる保守スケジュール支援装置および保守スケジュール支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様の保守スケジュール支援装置は、車両で計測される位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得部と、前記車両情報に基づいて車両が停留場所に存在している時間帯を算出する停留時間帯算出部と、前記停留時間帯算出部によって複数の日に対して算出した前記時間帯の情報を解析し、曜日および時間帯に対する車両の停留状況の度合いを推定する停留状況推定部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様は保守スケジュール支援方法である。保守スケジュール支援方法は、車両で計測される位置情報を含む車両情報を取得する車両情報取得ステップと、前記車両情報に基づいて車両が停留場所に存在している時間帯を算出する停留時間帯算出ステップと、前記停留時間帯算出ステップによって複数の日に対して算出した前記時間帯の情報を解析し、曜日および時間帯に対する車両の停留状況の度合いを推定する停留状況推定ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車両に装着されたタイヤ等の保守の効率化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係る保守スケジュール支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図3】停留時間帯データの別の一例を示す図表である。
【
図4】停留状況推定部によって推定した停留状況推定データの一例を示す図表である。
【
図5】保守スケジュール支援装置による保守スケジュール支援処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係る保守スケジュール支援システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図7】演算モデルの停留状況の度合いの推定および学習について説明するための模式図である。
【
図8】停留時間帯データの更に別の一例を示す図表である。
【
図9】演算モデルによって推定した停留状況推定データの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに
図1から
図9を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る保守スケジュール支援システム100の機能構成を示すブロック図である。保守スケジュール支援システム100は、車両7に搭載された位置情報計測装置71と、作業者端末装置80と、車両7に装着されたタイヤ等の保守スケジュールの計画作成を支援し、保守状況を管理する保守スケジュール支援装置10とを備える。
【0013】
位置情報計測装置71は、例えばGPS受信機および通信装置を含んでおり、車両7の現在の位置情報(緯度、経度および高度)を計測する。位置情報計測装置71は、例えばインターネット等の通信ネットワーク9を介して保守スケジュール支援装置10へ車両7の現在の位置情報を送信する。車両7は、例えば輸送事業者において運用されている複数のトラックやタクシー等である。保守スケジュール支援装置10は、各車両7から位置情報を例えば数秒ごとに取得し蓄積する。
【0014】
作業者端末装置80は、例えば携帯通信装置であり、車両7に装着されたタイヤ等に対して、点検、ローテーションおよび交換等の保守作業を行う作業者が携行する装置である。作業者端末装置80は、保守作業を行う複数の車両7のリストを保守計画に基づいて予め記憶しており、リスト中の車両7における保守作業の完了状況を作業者の入力操作により取得する。作業者端末装置80は、保守作業を行う複数の車両7のリストを保守スケジュール支援装置10から受信して取得する。作業者端末装置80は、リスト中の車両7における保守作業の完了状況を保守スケジュール支援装置10へ送信する。尚、保守スケジュール支援装置10は、前回の点検結果や摩耗予測モデルに基づいて、保守作業を行う複数の車両7の候補を抽出してリストを作成する。
【0015】
保守スケジュール支援装置10は、車両情報取得部12、停留時間帯算出部13、停留状況推定部14、保守スケジュール作成部15および保守状況取得部19等を備える。また、保守スケジュール支援装置10は、通信部11、操作部16、表示部17および記憶部18等を備える。保守スケジュール支援装置10における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0016】
通信部11は、例えばWiFi(登録商標)等の無線通信によって通信ネットワーク9に通信接続し、位置情報計測装置71および作業者端末装置80との間で通信する。操作部16は、例えばタッチパネル、スイッチ、キーボードおよびマウスなどの操作可能な入力装置である。表示部17は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置である。
【0017】
操作部16による作業者の操作入力に基づいて、表示部17に輸送事業者で運用している車両7の情報や各車両7に装着されたタイヤ等の保守状況などを表示することができる。また作業者は、表示部17に表示された画面表示を見ながら、各車両7に装着されたタイヤ等の保守スケジュールを計画することができる。
【0018】
記憶部18は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置である。記憶部18は、運用車両データ18a、車両位置情報18b、停留時間帯データ18c、停留状況推定データdおよび保守状況データ18e等を記憶する。運用車両データ18aは、輸送事業者等において運用されている各車両7に関する車名や識別番号などのデータである。
【0019】
車両情報取得部12は、通信部11を介して、位置情報計測装置71から車両の位置情報を取得し、車両位置情報18bとして記憶部18に記憶させる。車両情報取得部12は、運用車両データ18aの各車両7に対して位置情報を取得する。車両位置情報18bは、車両7ごとに、位置情報が計測された日付および時間と対応付けられて記憶部18に記憶される。車両位置情報18bは、各車両7の運用期間中において継続的に取得され記憶部18に蓄積される。
【0020】
停留時間帯算出部13は、車両位置情報18bに基づいて、各車両7が停留場所に存在している時間帯を算出する。停留場所は、例えば輸送事業者が有する駐車場である。停留時間帯算出部13は、車両7の位置情報と停留場所の位置情報とが一致している場合に車両7が停留場所に存在していると判定し、対応する時刻が含まれる時間帯を特定し、停留時間帯データ18cとして記憶部18に記憶させる。
【0021】
図2は、停留時間帯データ18cの一例を示す図表である。
図2では、2021年9月27日週において、各車両7が停留場所に存在していた時間帯を示している。
図2において斜線でハッチングした時間帯に車両7が停留場所に存在している。停留時間帯データ18cは、車両7ごとに、日付および時間帯に対応して、車両が停留場所に存在している場合に例えば符号1、車両が停留場所に存在していない場合に符号0が付加されて記憶部18に記憶される。尚、停留時間帯との表記は、車両7が停留場所に存在している時間帯を意味する。
【0022】
停留時間帯算出部13は、2021年9月27日週に続いて、10月4日週、10月11日週、10月18日週、10月25日週と、各週における車両7の停留時間帯を算出し、停留時間帯データ18cとして記憶部18に記憶される。
図3は、停留時間帯データ18cの別の一例を示す図表である。
図3では、2021年10月25日週において、各車両7が停留場所に存在していた時間帯を示しており、
図2と同様に斜線でハッチングした時間帯に車両7が停留場所に存在している。尚、
図2および
図3において、時間帯として午後の時間帯を対象として挙げているが、午前の時間帯についても同様に対象としてもよい。
【0023】
停留状況推定部14は、停留時間帯算出部13によって、複数の日(例えば前5週間分の日)に対して算出した停留時間帯データ18cを解析し、将来における曜日および時間帯に対する車両7の停留状況の度合いを推定する。停留状況は、将来の週間における曜日および時間帯に対応して車両7が停留場所に存在しているか否かの状況を示している。
【0024】
停留状況の度合いは、例えば、過去における各時間帯に車両7が停留場所に存在していた回数(停留回数)を積算して求めた値や、積算値を考慮した日数で除算して求めた確率の値によって表され、統計的な手法を用いて解析して求められる。停留状況推定部14は、停留状況の度合いを算出し、停留状況推定データ18dとして記憶部18に記憶させる。
【0025】
図4は、停留状況推定部14によって推定した停留状況推定データ18dの一例を示す図表である。
図4では、2021年11月1日週において推定される各車両7の停留状況の度合いを示す図表であり、停留状況の度合いを積算値で表している。例えば識別番号5480の車両における11月1日の停留状況の推定値は、13時から14時の時間帯で0と小さく、16時から17時の時間帯で5と大きい。
【0026】
図4では、8台の保守対象の車両について、停留状況の度合いの合計値を示している。例えば、11月5日の15時から16時の時間帯で合計値が34となり、同日の16時から17時の時間帯で合計値が33となり、保守作業の時間帯を11月5日の15時から17時に設定すれば、保守対象の車両のうち、より多くの車両に対して効率良く保守作業を行えることが判る。
【0027】
停留状況の度合いは、車両が停留場所に存在している度合い、或いは車両が停留場所に存在していると推定される度合いと換言してもよい。
【0028】
保守スケジュール作成部15は、停留状況推定データ18dを表示部17に表示し、作業者による操作部16からの操作入力を受け付け、日付および時間帯を特定した保守スケジュールを生成する。保守スケジュール作成部15は、例えば、停留状況推定データ18dのうち、各車両7の停留状況の度合いが高い日付および時間帯を所定の色で表示することで、より多くの車両7に対してタイヤ等の保守を行える日時を作業者が選択することを促す。作業者は、表示部17に表示された停留状況推定データ18dのうち、各車両7の停留状況の度合いが高い日付および時間帯を操作部16によって選択することで、保守作業の効率化が図られる。
【0029】
保守状況取得部19は、作業者端末装置80から保守作業が完了した車両に関する情報を取得する。作業者端末装置80には、車両7の保守作業に当たって予め、保守作業の当日にタイヤ等の保守を行う車両に関する情報が保守スケジュール支援装置10から送信されているものとする。タイヤ等の保守を行う車両に関する情報は、例えば、車名や識別番号である。
【0030】
作業者端末装置80は、例えば10台の保守作業を行う車両の車名と識別番号を表示し、保守作業が完了した車両を選択する保守作業者の操作入力を受け付ける。作業者端末装置80は、保守作業が完了した車名および識別番号等の車両に関する情報を保守スケジュール支援装置10へ送信する。
【0031】
保守状況取得部19は、保守作業の当日にタイヤ等の保守を行う車両に関する情報をリストアップした保守状況データ18eを記憶部18に記憶させる。保守状況取得部19は、通信部11を介して、保守作業が完了した車名および識別番号等の車両に関する情報を作業者端末装置80から取得し、保守状況データ18eに保守作業完了の有無の情報を付加する。保守状況取得部19は、保守作業完了の有無を含む保守状況データ18eを表示部17に表示することによって、視覚的に分かり易く、保守作業の進捗を作業者に提供する。
【0032】
次に保守スケジュール支援装置10の動作について説明する。
図5は、保守スケジュール支援装置10による保守スケジュール支援処理の手順を示すフローチャートである。保守スケジュール支援装置10の車両情報取得部12は、車両7に搭載された位置情報計測装置71から車両7の位置情報を取得する(S1)。車両情報取得部12は、各車両7の運用期間中において車両7の位置情報を継続的に取得し、車両位置情報18bとして記憶部18に記憶させる。
【0033】
停留時間帯算出部13は、車両位置情報18bに基づいて、各車両7が停留場所に存在している時間帯を算出する(S2)。停留時間帯算出部13は、日付ごとに停留場所に車両が存在している時間帯を特定し、停留時間帯データ18cとして記憶部18に記憶させる。
【0034】
停留状況推定部14は、停留時間帯データ18cに基づいて、将来における曜日および時間帯に対する車両7の停留状況の度合いを推定する(S3)。停留状況推定部14は、例えば、過去における各時間帯における停留回数の積算値や確率を算出し、将来における曜日および時間帯に対する停留状況推定データ18dとして記憶部18に記憶させる。
【0035】
保守スケジュール作成部15は、停留状況推定データ18dを表示部17に表示し、作業者による操作部16からの操作入力を受け付け、日付および時間帯を特定した保守スケジュールを生成する(S4)。
【0036】
保守状況取得部19は、作業者端末装置80から保守作業が完了した車両に関する情報を取得する(S5)。この際、作業者端末装置80は、保守作業が完了した車両を選択する保守作業者の操作入力を受け付け、保守作業が完了した車両の情報を保守スケジュール支援装置10へ送信する。保守状況取得部19は、保守作業完了の有無の情報を含む保守状況データ18eを表示部17に表示し(S6)、処理を終了する。
【0037】
保守スケジュール支援装置10は、上述のように、例えば
図4に示した曜日および時間帯に対する車両の停留状況の度合いを推定し、保守スケジュールを立案する作業者に提供する。保守スケジュール支援装置10は、車両の停留状況の度合いを提供することによって、保守スケジュールの立案を簡便化し、車両に装着されたタイヤ等の保守の効率化を図ることができる。
【0038】
保守スケジュール作成部15は、例えば各車両7の停留状況の度合いが高い日付および時間帯に色付けして停留状況推定データ18dを表示部17に表示することにより、作業者が車両7に装着されたタイヤ等の保守の日程を選択し易くすることができる。
【0039】
対象となる車両7は、例えば輸送事業者が運用する複数の車両7である。輸送事業者における輸送量は、1年間の各月および季節の要因に応じて変化する傾向にある。例えば発泡酒などの輸送は、とくに夏に輸送量が多く、その他の季節では減少する傾向にある。また輸送用の車両が走行する道路のトラフィック量も曜日および時間帯の影響を受ける。
【0040】
保守スケジュール支援装置10は、輸送事業者が運用する複数の車両7に対して、実際の輸送量や交通状況を考慮した車両7の停留状況の度合いを推定し提供することができる。また保守スケジュール支援装置10の停留状況推定部14は、曜日および時間帯に対して車両7の停留回数を積算することによって、より簡単に車両の停留状況の度合いを推定することができる。
【0041】
保守スケジュール支援装置10は、保守スケジュール作成部15によって保守スケジュールを作成し、保守状況取得部19によって保守作業が完了した車両に関する情報を取得する。保守状況取得部19は、例えば保守作業完了の有無の情報を含む保守状況データ18eを表示部17に表示することによって、視覚的に分かり易く、保守作業の進捗を作業者に提供することができる。
【0042】
保守スケジュール支援装置10によって立案された計画どおりに保守作業を行うことができた車両7の台数を把握することで、保守スケジュール支援装置10による保守計画立案の効果を輸送事業者ごとに評価することができる。車両7のタイヤ等の保守作業の完了率が高い輸送事業者に対しては、保守スケジュール支援装置10を用いて保守計画立案を行うことができる。
【0043】
(実施形態2)
図6は、実施形態2に係る保守スケジュール支援システム100の機能構成を示すブロック図である。実施形態2に係る保守スケジュール支援装置10では、停留状況推定部14が学習型の演算モデル14aを有している。実施形態2に係る保守スケジュール支援装置10において、停留状況推定部14以外の構成は実施形態1に係る保守スケジュール支援装置10と同等であり、簡潔化のため説明を省略する。
【0044】
停留状況推定部14の演算モデル14aは、入力されたデータに対して車両7の停留状況の度合いを算出して出力する学習型モデルである。
図7は、演算モデル14aの停留状況の度合いの推定および学習について説明するための模式図である。演算モデル14aへの入力データは、例えば週の始まりの日付、車両7の識別番号、季節などである。また演算モデル14aへの入力データは、輸送事業者ごとに異なる繁忙期であるか否かの情報や、天気や気温などの天候に関する情報を用いてもよい。
【0045】
演算モデル14aは、例えばニューラルネットワーク等の学習型モデルを用いる。演算モデル14aは、例えばDNN(Deep Neural Network)や、決定木などの手法を用いて構築される。また演算モデル14aは、例えば入力データに対する多重線形回帰モデルとし、学習によってモデル生成されるものであってもよい。
【0046】
演算モデル14aは、過去における車両の停留状況を教師データとして与えることによって学習させる。過去における車両7の停留状況は、週の始まりの日に対して、その週内の各曜日および各時間帯に車両7が停留場所に存在していたか否かの情報によって表される。停留場所に存在していたか否かの情報は、車両7が停留場所に存在していた場合には例えば数値1を、存在していない場合には数値0を付与することによって表される。
【0047】
図8は、停留時間帯データ18cの更に別の一例を示す図表である。
図8では、2022年9月26日週において、各車両7が停留場所に存在していた時間帯を示しており、
図2と同様に斜線でハッチングした時間帯に車両7が停留場所に存在している。
図2に示した2021年9月27日週の停留時間帯データ18cに続いて、2022年9月26日週までの各週の停留時間帯データ18cにおける1年分の停留状況を教師データとして演算モデル14aを学習させることができる。
【0048】
演算モデル14aの学習過程では、週の始まりの日付、車両7の識別番号よび季節を演算モデル14aに入力して演算モデル14aによって、週内の各曜日および各時間帯における車両7の停留状況の度合いを算出する。演算モデル14aによって算出した車両7の停留状況の度合いと、週の始まりの日付に対応する停留時間帯データ18cの各曜日および各時間帯における停留状況(教師データであり、例えば1、0の値である)とを比較する。
【0049】
比較結果に基づいて、重みづけ等の演算過程における各種係数を演算モデル14aに新たに設定する。例えば1年分の教師データによってモデルの更新を繰り返すことで演算モデル14aの学習を実行することができる。尚、演算モデル14aの学習過程では、勾配ブースティングなどの公知の学習方法を用いることができる。また演算モデル14aの検証には、ランダムデータサンプリングや交差検証などの公知の検証方法を用いることができる。
【0050】
演算モデル14aは、例えば季節ごとなどの期間を限定して学習させるようにしてもよい。また演算モデル14aの入力データである週の始まりの日付を、単に日付のデータで置き換え、演算モデル14aによって、日付に対応する各時間帯の停留状況の度合いを算出するようにしてもよい。
【0051】
図9は、演算モデル14aによって推定した停留状況推定データ18dの一例を示す模式図である。
図9では、2022年10月3日週について、各曜日および時間帯における停留状況の度合いを0から1の数値で表している。数値0に近いほど、停留場所に車両7が存在している確率は低く、数値1に近いほど、停留場所に車両7が存在している確率は高くなる。
【0052】
図9では、曜日および時間帯ごとに、8台の対象車両について推定された停留状況の度合いを平均した値を示している。例えば、10月5日の13時から14時の時間帯において、停留状況の度合いの平均値が高いことが判る。停留状況の度合いの平均値が高い曜日および時間帯に保守作業を計画することで、保守作業の効率化を図ることができる。
【0053】
保守スケジュール支援装置10の保守スケジュール作成部15は、推定した停留状況推定データ18dの各数値に応じて濃淡や色付けを行って表示部17に表示させることで、推定した停留状況の度合いを作業者にとって分かり易く提供することができる。
【0054】
保守スケジュール支援装置10は、停留状況推定部14による停留状況の度合いの推定において、学習型の演算モデルを採用することができる。また保守スケジュール支援装置10は、例えば1年分の停留時間帯データ18cのように多数の教師データを用いることができ、演算モデル14aによる推定精度の向上を図ることができる。
【0055】
上述の各実施形態では、主として車両7におけるタイヤ等の保守について説明した。保守作業の対象は、例えば車両7におけるバッテリや、ブレーキ、エンジンオイル、クーラント液の点検および交換などであってもよく、これらの保守作業に対しても、同様に保守スケジュール支援装置10によって保守作業計画等の支援を行うことができる。
【0056】
また各実施形態について、保守スケジュール支援装置10の保守スケジュール作成部15は、保守作業中に車両で計測される位置情報に基づいて、保守作業の対象車両とするかどうかを判断するようにしてもよい。保守スケジュール作成部15は、保守作業の日時において、停留場所に停留していると推定される車両を保守作業の対象として保守スケジュールを作成する。また保守スケジュール作成部15は、保守作業の日時に停留場所に停留していないと推定された車両についても、車両の位置情報によって保守作業の時間内に停留場所へ戻ってくる距離にある車両や、所定時間内に停留場所に戻ってくる車両を保守対象としてもよい。
【0057】
次に実施形態に係る保守スケジュール支援装置10および保守スケジュール支援方法の特徴について説明する。
保守スケジュール支援装置10は、車両情報取得部12、停留時間帯算出部13および停留状況推定部14を備える。車両情報取得部12は、車両7で計測される位置情報を含む車両情報を取得する。停留時間帯算出部13は、車両情報(車両7の位置情報)に基づいて車両が停留場所に存在している時間帯を算出する。停留状況推定部14は、停留時間帯算出部13によって複数の日に対して算出した時間帯の情報を解析し、曜日および時間帯に対する車両7の停留状況の度合いを推定する。これにより、保守スケジュール支援装置10は、保守スケジュールの立案を簡便化し、車両に装着されたタイヤ等の保守の効率化を図ることができる。
【0058】
また保守対象の車両7は、輸送事業者が運用する複数の車両である。これにより、保守スケジュール支援装置10は、輸送事業者が運用する複数の車両7に対して、実際の輸送量や交通状況を考慮した車両7の停留状況の度合いを推定し提供することができる。
【0059】
また停留状況推定部14は、曜日および時間帯に対して車両の停留回数を積算することによって、車両の停留状況の度合いを推定する。これにより、保守スケジュール支援装置10は、曜日および時間帯に対して車両7の停留回数を積算することで、より簡単に車両の停留状況の度合いを推定することができる。
【0060】
また停留状況推定部14は、停留時間帯算出部13によって複数の日に対して算出した時間帯の情報を教師データとして学習させた学習型の演算モデル14aを有し、演算モデル14aに基づいて車両の停留状況の度合いを推定する。これにより、保守スケジュール支援装置10は、停留状況推定部14による停留状況の度合いの推定において、学習型の演算モデルを採用することができる。
【0061】
また停留状況推定部14によって推定された車両7の停留状況に基づいて車両の保守スケジュールを生成する保守スケジュール作成部15と、保守スケジュール作成部15によって生成した保守スケジュールに基づく保守作業が完了した車両に関する情報を作業者端末装置80から取得する保守状況取得部19と、を更に備える。これにより、保守スケジュール支援装置10は、例えば保守作業完了の有無を含む保守状況データ18eを表示部17に表示することによって、視覚的に分かり易く、保守作業の進捗を作業者に提供することができる。
【0062】
保守スケジュール支援方法は、車両情報取得ステップ、停留時間帯算出ステップおよび停留状況推定ステップを備える。車両情報取得ステップは、車両7で計測される位置情報を含む車両情報を取得する。停留時間帯算出ステップは、車両情報(車両7の位置情報)に基づいて車両7が停留場所に存在している時間帯を算出する。停留状況推定ステップは、停留時間帯算出ステップによって複数の日に対して算出した時間帯の情報を解析し、曜日および時間帯に対する車両の停留状況の度合いを推定する。この方法によれば、保守スケジュールの立案を簡便化し、車両に装着されたタイヤ等の保守の効率化を図ることができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0064】
7 車両、12 車両情報取得部、 13 停留時間帯算出部、
14 停留状況推定部、 14a 演算モデル、
15 保守スケジュール作成部、 19 保守状況取得部、
80 作業者端末装置、 10 保守スケジュール支援装置。