(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109295
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】噴霧容器に充填された飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A23L2/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014007
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163784
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 健志
(72)【発明者】
【氏名】長田 知也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 康子
(72)【発明者】
【氏名】宗口 瑛
【テーマコード(参考)】
4B117
【Fターム(参考)】
4B117LE10
4B117LK12
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】本発明は、飲用した際に飲み応えが感じられ、且つ止渇感が得られる、噴霧容器に充填された飲料を提供することを目的とする。
【解決手段】飲料において、条件(a)~(c):(a)水分活性が0.94以上である;(b)甘味度が4~30である、及び/又は酸度が0.005~6.0である;並びに(c)1プッシュあたりの噴霧量が0.3mL以上であるポンプ式噴霧容器、又はエアゾール式噴霧容器に充填されている;を満たすように調整する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の条件(a)~(c):
(a)水分活性が0.94以上である;
(b)甘味度が4~30である、及び/又は酸度が0.005~6.0である;並びに
(c)1プッシュあたりの噴霧量が0.3mL以上であるポンプ式噴霧容器、又はエアゾール式噴霧容器に充填されている;
を満たす、飲料。
【請求項2】
糖アルコールを除く単糖及び二糖の合計含有量が20g/L以下である、請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
水分活性が0.97~1.0である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項4】
甘味度が5~20である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項5】
酸度が0.01~5である、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項6】
ポンプ式噴霧容器における1プッシュあたりの噴霧量が0.3~5mLである、請求項1又は2に記載の飲料。
【請求項7】
エアゾール式噴霧容器に充填されている、請求項1又は2に記載の飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧容器に充填された飲料に関し、より具体的には、噴霧容器に充填されていながらも、飲み応えがあり、且つ止渇感が得られる飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、市場における飲料製品は、多くのものがペットボトルや缶などの容器に充填された状態で販売されている。このような飲料製品に関して、外出業務の多いビジネスマンや頻繁に接客業を行う者にとっては、安易に飲料を多量に摂取するわけにもいかず、また、外出時において飲料製品はやや重いことから、持ち運びに若干の不便が感じられることもあった。
【0003】
一方、スプレータイプの容器の中に経口摂取可能な液体を充填した製品は、市場において存在しているが、多くの場合は口中への清涼感付与や口臭抑制、口内殺菌を目的としたいわゆるマウススプレーである(特許文献1、2)。場合によって、飲料ではなく醤油や生クリーム等が収納されたエアゾールタイプの食品が見られるが、一度で多量に飲用することができる飲料それ自体が噴霧容器に充填された製品はほとんど見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-104235号公報
【特許文献2】特開2012-193153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、噴霧容器に充填された飲料を研究開発する過程において、噴霧容器を用いた場合には、従来の飲料製品で感じられるような飲み応えが乏しくなり、また、口内に潤いを与える点でも不十分になるといった問題が生じることを見出した。そこで、本発明は、飲用した際に飲み応えが感じられ、且つ止渇感が得られる、噴霧容器に充填された飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、所定の噴霧容器を使用し、容器に充填する飲料の水分活性を高め、そして飲料の甘味度又は酸度を所定の範囲に調整することによって、噴霧容器に充填した場合でも飲み応えが感じられ、且つ止渇感が得られる飲料が得られることを見出した。かかる知見に基づき、本発明者らは本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、これらに限定されないが、以下のものに関する。
(1)以下の条件(a)~(c):
(a)水分活性が0.94以上である;
(b)甘味度が4~30である、及び/又は酸度が0.005~6.0である;並びに
(c)1プッシュあたりの噴霧量が0.3mL以上であるポンプ式噴霧容器、又はエアゾール式噴霧容器に充填されている;
を満たす、飲料。
(2)糖アルコールを除く単糖及び二糖の合計含有量が20g/L以下である、(1)に記載の飲料。
(3)水分活性が0.97~1.0である、(1)又は(2)に記載の飲料。
(4)甘味度が5~20である、(1)~(3)のいずれか1に記載の飲料。
(5)酸度が0.01~5である、(1)~(4)のいずれか1に記載の飲料。
(6)ポンプ式噴霧容器における1プッシュあたりの噴霧量が0.3~5mLである、(1)~(5)のいずれか1に記載の飲料。
(7)エアゾール式噴霧容器に充填されている、(1)~(5)のいずれか1に記載の飲料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飲用した際に飲み応えが感じられ、且つ止渇感が得られる、噴霧容器に充填された飲料を提供することができる。本発明の飲料を利用することによって、従来の飲料製品よりも少量の摂取で飲み応えと止渇感を得ることができる。また、噴霧容器の利用により容器の軽量小型化を図ることができ、外出時の持ち運びやすさも向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下に説明する。なお、特に断りがない限り、本明細書において用いられる「ppm」、「ppb」、及び「重量%」は、重量/容量(w/v)のppm、ppb、及び重量%をそれぞれ意味する。
【0010】
本発明の一態様は、以下の条件(a)~(c):
(a)水分活性が0.94以上である;
(b)甘味度が4~30である、及び/又は酸度が0.005~6.0である;並びに
(c)1プッシュあたりの噴霧量が0.3mL以上であるポンプ式噴霧容器、又はエアゾール式噴霧容器に充填されている;
を満たす飲料である。かかる構成を採用することにより、噴霧容器に充填された飲料において、飲用した際に飲み応えが感じられ、且つ止渇感が得られるようになる。
【0011】
(水分活性)
本発明の飲料は、水分活性が0.94以上である。本発明において、水分活性の値は、飲料中に含まれる各種成分の量を調整することによって調節することができる。本発明の飲料の水分活性は、0.94以上である限り特に限定されないが、好ましくは0.95以上、より好ましくは0.96以上、さらに好ましくは0.97以上、さらに好ましくは0.98以上である。また、本発明の飲料の水分活性は1.0以下である。水分活性は、公知の水分活性測定装置を用いて測定することができ、例えば、AquaLab 4TE(メータージャパン株式会社)を用いて測定することができる。なお、本発明の飲料における水分活性は、飲料の温度が25℃の条件下で測定される水分活性である。
【0012】
(甘味度)
本発明の飲料は、甘味度が4~30であってよい。本発明において甘味度とは、飲料100g中にショ糖1g含有する飲料の甘さを「1」とした、飲料の甘味を表す指標である。飲料の甘味度は、各甘味成分の含有量を、ショ糖の甘味1に対する当該甘味成分の甘味の相対比に基づいて、ショ糖の相当量に換算して、次いで当該飲料に含まれる全ての甘味成分のショ糖甘味換算量(果汁やエキス等由来の甘味成分も含む)を総計することによって求められる。甘味成分のショ糖に対する甘味度は、当該甘味成分を製造又は販売しているメーカーが提示する甘味度、或いは官能評価により得られた甘味度を利用することができる。
【0013】
本発明において、飲料の甘味度は、好ましくは5~20、より好ましくは5~15である。飲料の甘味度が前記範囲内であることにより、噴霧により飲用した場合の飲み応えがより強く感じられる傾向にあり、また、止渇感もより強くなる傾向にある。
【0014】
本発明の飲料では、甘味成分を用いて飲料の甘味度を調整することができる。甘味成分としては、例えば、飲料分野で通常使用される甘味成分を用いることができるが、飲料分野以外で使用される甘味成分を用いてもよい。本発明においては、飲料中に甘味成分を甘味料として直接配合してもよいし、甘味成分を含有する果汁やエキス等を配合してもよい。
【0015】
本発明の飲料において好ましい甘味成分は、糖アルコールである。糖アルコールとしては、例えば、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マンニトール等の単糖アルコール類、マルチトール、イソマルチトール、ラクチトール等の二糖アルコール類、マルトトリイトール、イソマルトトリイトール、パニトール等の三糖アルコール類、オリゴ糖アルコール等の四糖以上アルコール類、粉末還元麦芽糖水飴などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に用いられる好ましい糖アルコールは単糖アルコール類であり、その中でも、キシリトール、エリスリトール、及びソルビトールがより好ましい。本発明の飲料には、これら糖アルコールを単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本発明の飲料における糖アルコールの含有量は、上述した通り、飲料の甘味度及び糖アルコールの種類に応じて設定することができる。言い換えれば、本発明の飲料において糖アルコールは、飲料の甘味度が4~30、好ましくは5~20、より好ましくは5~15となる量で含有させることができる。
【0017】
また、糖アルコールがキシリトールである場合は、本発明の飲料中の含有量は、40~300g/Lであることが好ましく、50~200g/Lであることがより好ましく、50~150g/Lであることがさらに好ましい。
【0018】
糖アルコールがエリスリトールである場合は、本発明の飲料中の含有量は、50~370g/Lであることが好ましく、60~250g/Lであることがより好ましく、60~190g/Lであることがさらに好ましい。
【0019】
糖アルコールがソルビトールである場合は、本発明の飲料中の含有量は、66~500g/Lであることが好ましく、82~333g/Lであることがより好ましく、82~250g/Lであることがさらに好ましい。
【0020】
本発明の飲料に配合された糖アルコールの含有量は、HPLC法などの公知の方法により測定することができる。
【0021】
上記の糖アルコール以外に、本発明の飲料において好ましい甘味成分は、高甘味度甘味料である。高甘味度甘味料とは砂糖(ショ糖)と比べて十から一万倍の甘味を有する甘味料を意味する。本発明に用いる高甘味度甘味料としては、天然甘味料及び合成甘味料のいずれの高甘味度甘味料も使用することができる。高甘味度甘味料の種類としては、具体的には、スクラロース、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビア(レバウディオサイド、ステビオサイド)、ソーマチン、サッカリン、サッカリンナトリウム、甘草、羅漢果、ネオテーム、マビンリン、ブラゼイン、モネリン、グリチルリチン、アリテーム、チクロ、ズルチン、ネオヘスペリジン等が挙げられるが、これらに限定されない。本発明に用いられる好ましい高甘味度甘味料は、アセスルファムカリウム及びスクラロースである。本発明の飲料には、これら高甘味度甘味料の1種又は2種以上を使用することができる。また、本発明の飲料には、高甘味度甘味料と糖アルコールとを併用して配合することもできる。
【0022】
本発明の飲料における高甘味度甘味料の含有量は、上述した通り、飲料の甘味度及び高甘味度甘味料の種類に応じて設定することができる。言い換えれば、本発明の飲料において高甘味度甘味料は、飲料の甘味度が4~30、好ましくは5~20、より好ましくは5~15となる量で含有させることができる。
【0023】
また、高甘味度甘味料がスクラロースである場合は、本発明の飲料中の含有量は、66~500mg/Lであることが好ましく、82~333mg/Lであることがより好ましく、82~250mg/Lであることがさらに好ましい。
【0024】
高甘味度甘味料がアセスルファムカリウムである場合は、本発明の飲料中の含有量は、200~1500mg/Lであることが好ましく、250~1000mg/Lであることがより好ましく、250~750mg/Lであることがさらに好ましい。
【0025】
本発明の飲料に配合された高甘味度甘味料の含有量は、HPLC法などの公知の方法により測定することができる。
【0026】
(酸度)
本発明の飲料は、酸度が0.005~6.0であってよい。本発明において酸度とは、酸の含有量の指標となる値であり、一定量の飲料(試料)に水酸化ナトリウムなどのアルカリを加えて中和する際の、中和に要した(pH7.0)アルカリの量から計算により求めることができる。酸度の測定には、自動滴定装置(京都電子工業、AT-710/CHA-700など)を用いることができる。本発明において、酸度は、クエン酸量に換算した値(中和量から、飲料に含まれている酸が全てクエン酸であると仮定して計算して求める)を用いる。また、本発明における酸度の単位は、「g/100mL」である。
【0027】
本発明において、飲料の酸度は、好ましくは0.01~6、より好ましくは0.05~5である。飲料の酸度が前記範囲内であることにより、噴霧により飲用した場合の飲み応えがより強く感じられる傾向にあり、また、止渇感もより強くなる傾向にある。
【0028】
本発明の飲料の酸度は、いずれの酸を用いて調整してもよい。例えば、クエン酸、リン酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、グルコン酸、アスコルビン酸、コハク酸、乳酸、酢酸、硫酸、塩酸、フマル酸、フィチン酸、イタコン酸、又はその他の酸を用いて飲料の酸度を調整することができるが、これに限定されない。また、本発明において酸度は、果汁(透明果汁及び混濁果汁のいずれであってもよい)や食品添加物基準の酸味料等を用いて調整することもできる。
【0029】
本発明の飲料における酸の含有量は、上述した通り、飲料の酸度及び酸の種類に応じて設定することができる。言い換えれば、本発明の飲料において酸は、飲料の酸度が0.005~6.0、好ましくは0.01~6、より好ましくは0.05~5となる量で含有させることができる。具体的に示すと、酸としてクエン酸を用いた場合、本発明の飲料におけるクエン酸の含有量は、例えば0.05~60g/L、好ましくは0.1~60g/L、より好ましくは0.5~50g/Lである。
【0030】
(単糖及び二糖)
本発明の飲料は、糖アルコールを除く単糖及び二糖の合計含有量が20g/L以下であってもよい。そうすることにより、糖アルコールを除く単糖及び二糖が有する独特の甘味を低減することができる。また、糖アルコールを除く単糖及び二糖の合計含有量を低減することにより、それらの糖に由来するカロリーを抑えることができ、さらには、飲料における微生物増殖の制御能を高めることができる。
【0031】
本発明の飲料において、糖アルコールを除く単糖及び二糖の合計含有量は、好ましくは15g/L以下であり、より好ましくは10g/L以下、さらに好ましくは5g/L以下、最も好ましくは0g/L(すなわち、糖アルコールを除く単糖及び二糖は含まれない)である。糖アルコールを除く単糖としては、特に限定されないが、具体的には、ブドウ糖、果糖、D-キシロース、L-アラビノース等を挙げることができる。また、糖アルコールを除く二糖としては、具体的には、ショ糖、ラクトース等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0032】
本発明の飲料において、糖アルコールを除く単糖及び二糖の合計含有量は、HPLC法などの公知の方法により測定することができる。
【0033】
(その他の成分)
本発明の飲料には、本発明の効果を妨げない範囲で、通常の飲料と同様、各種添加剤等を配合してもよい。各種添加剤としては、例えば、栄養強化剤、酸化防止剤、乳化剤、保存料、エキス類、食物繊維、pH調整剤、品質安定剤等を挙げることができる。
【0034】
本発明の飲料には、γ-アミノ酪酸(GABA)が含まれていてもよい。本発明の飲料におけるγ-アミノ酪酸の含有量は、特に限定されないが、例えば0.1~100g/Lであり、好ましくは0.1~50g/L、より好ましくは1~50g/Lである。
【0035】
また、本発明の飲料には、テアニンが含まれていてもよい。本発明の飲料におけるテアニンの含有量は、特に限定されないが、例えば0.1~100g/Lであり、好ましくは0.1~50g/L、より好ましくは1~50g/Lである。
【0036】
また、本発明の飲料には、カフェインが含まれていてもよい。本発明の飲料におけるカフェインの含有量は、特に限定されないが、例えば1~50g/Lであり、好ましくは2~20mg/L、より好ましくは3~15mg/Lである。
【0037】
また、本発明の飲料には、ビタミン類が含まれていてもよい。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、ルテイン、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK等が挙げられる。本発明の飲料におけるビタミン類の含有量は、特に限定されないが、例えば0.1~100mg/Lであり、好ましくは0.1~80mg/L、より好ましくは1~80mg/Lである。なお、当該含有量は、ビタミン類の総量である。
【0038】
また、本発明の飲料には、ヒアルロン酸が含まれていてもよい。本発明の飲料におけるヒアルロン酸の含有量は、特に限定されないが、例えば0.1~200g/Lであり、好ましくは0.1~150g/L、より好ましくは1~100g/Lである。
【0039】
(pH)
本発明の飲料のpHとしては、特に限定されないが、例えばpH2.0~6.0であり、好ましくはpH2.5~5.0、より好ましくはpH3.0~4.6である。pH調整剤としては、例えば、クエン酸三ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素ニナトリウム、及び炭酸カリウム等が挙げられるが、本発明では特にクエン酸三ナトリウムが最も好ましい。
【0040】
(Brix)
本発明の飲料のBrix(ブリックス)は、特に限定されないが、例えば0.2以上であり、1以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましい。また、上限値として、本発明の飲料のBrixは、例えば30以下であり、25以下であることが好ましく、20以下であることがより好ましい。Brixは、糖度計や屈折計などを用いて得られるBrix値によって評価することができる。Brix値は、20℃で測定された屈折率を、ICUMSA(国際砂糖分析統一委員会)の換算表に基づいてショ糖溶液の質量/質量パーセントに換算した値である。単位は「°Bx」、「%」又は「度」で表示される。
【0041】
(飲料)
本発明の飲料の種類は、特に限定されず、例えば清涼飲料とすることができる。本発明の飲料は、例えば、栄養飲料、機能性飲料、フレーバードウォーター(ニアウォーター)系飲料、茶系飲料(紅茶、ウーロン茶、緑茶等)、コーヒー飲料などいずれであってもよい。また、本発明の飲料は、炭酸ガスを含む飲料(すなわち、炭酸飲料)であってもよいし、炭酸ガスを含まない飲料(すなわち、非炭酸飲料)であってもよい。
【0042】
(噴霧容器)
本発明の飲料は、噴霧容器に充填されることを特徴とする。すなわち、本発明の飲料は、容器詰め飲料であって、より具体的には噴霧容器詰め飲料である。本発明における噴霧容器は、内容物が霧状に噴射される容器であり、具体的には、エアゾール式噴霧容器又はポンプ式噴霧容器が用いられる。本発明では、エアゾール式噴霧容器を用いることが好ましい。また、噴霧容器は、手動により内容物を噴射する容器(手動式容器)であってもよいし、電動機械により内容物を噴射する容器(電動式容器)であってもよい。また、噴霧容器は、所定量の内容物が1回の吐出操作で噴射される単回噴霧式容器であってもよいし、或いは、吐出操作を行っている間(例えば、噴霧容器のアクチュエータ部を作動し続けている間)は内容物が連続的に持続して噴射される連続噴霧式容器であってもよい。
【0043】
エアゾール式の噴霧容器を用いる場合、噴射剤としては、従来のエアゾール製品に利用可能な公知の噴霧ガスを用いることができ、例えば、亜酸化窒素ガス、窒素ガス、炭酸ガス等の圧縮ガスが使用できる。また、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)等の液化ガスも使用することができる。エアゾール式噴霧容器の噴射圧は、特に限定されないが、例えば20℃における噴射圧が0.05~1.5MPaであり、好ましくは0.1~1.0MPaである。
【0044】
本発明において噴射剤を使用する場合、噴射剤を含まない内容物(飲料)を調製し、当該内容物に噴射剤を混合して容器に充填することにより、噴霧容器に充填された飲料を製造することができる。本発明において、内容物(飲料)と噴射剤との含有比は、特に限定されないが、例えば、体積比で10:90~60:40であり、好ましくは20:80~50:50である。
【0045】
また、エアゾール式の噴霧容器については、バッグオンバルブ(BOV)を用いることもできる。バッグオンバルブは、エアゾールバルブの下部に固定された遮断材(アルミパウチ等)により噴射剤室と内容物(飲料)室の二層式に容器内部が分割されたエアゾール式容器である。バッグオンバルブは、噴射剤室と内容物(飲料)室との二重構造により、噴射剤(ガス等)が内容物に直接接触することがなく、内容物の酸化や変質を防ぐことができるといった特徴がある。また、エアゾール缶を押した分だけ噴射されるという特徴から、使用量の削減や調節が可能である。バッグオンバルブは、市販されているものを用いることができる。本発明では、エアゾール式噴霧容器として、好ましくはバッグオンバルブが用いられる。
【0046】
本発明においてエアゾール式噴霧容器は、1回の使用での噴霧量が、例えば0.3mL以上、好ましくは0.4mL以上、より好ましくは0.5mL以上のものを用いることができる。本発明において用いられるエアゾール式噴霧容器は、特に限定されないが、0.5秒間あたりの噴霧量が0.3mL以上(1秒間あたりの噴霧量が0.6mL以上)であることが好ましく、より好ましくは0.5秒間あたりの噴霧量が0.4mL以上(1秒間あたりの噴霧量が0.8mL以上)であり、さらに好ましくは0.5秒間あたりの噴霧量が0.5mL以上(1秒間あたりの噴霧量が1mL以上)である。ここで、本発明において噴霧量とは、噴霧容器から噴射された内容物の量を意味する。本発明においてエアゾール式噴霧容器は、特に限定されないが、0.5秒以上噴射するよう使用されることが好ましく、1秒以上噴射するよう使用されることがより好ましく、2秒以上噴射するよう使用されることがさらに好ましい。本発明におけるエアゾール式噴霧容器の使用時間は、特に限定されないが、例えば10秒以下である。
【0047】
本発明で用いられるポンプ式噴霧容器は、1プッシュあたりの噴霧量が0.3mL以上であり、好ましくは1プッシュあたりの噴霧量が0.4mL以上、より好ましくは1プッシュあたりの噴霧量が0.5mL以上である。当該噴霧量の上限値は特に限定されるものではないが、例えば、飲料の1プッシュあたりの噴霧量は5mL以下であり、好ましくは3mL以下である。本発明において、1プッシュあたりの噴霧量とは、1回の吐出操作により噴射される内容物の量を意味する。ポンプ式噴霧容器のポンプヘッドがトリガー型である場合は、ハンドル部を1回引いて噴射される内容物の量が、1プッシュあたりの噴霧量に相当する。ポンプ式噴霧容器が電動により断続的に噴射される場合は、1回あたりに噴射される内容物の量が、1プッシュあたりの噴霧量に相当する。
【0048】
本発明の飲料は、噴霧容器から直接的に口内に噴射して飲用することができる。本発明の飲料の噴霧量は、噴射前後の内容物の重量差と当該内容物の比重を用いて算出することができる。また、本発明の飲料の容器内部への充填量は、特に限定されないが、例えば10~500mL、好ましくは20~400mL、より好ましくは30~300mLである。
【0049】
(製造方法)
ある態様では、本発明は、噴霧容器に充填された飲料の製造方法である。より具体的には、本発明の一態様は、飲料の製造方法であって、
(a)飲料の水分活性を0.94以上に調整する工程;
(b)飲料の甘味度を4~30に調整する、及び/又は飲料の酸度を0.005~6.0に調整する工程;並びに
(c)1プッシュあたりの噴霧量が0.3mL以上であるポンプ式噴霧容器、又はエアゾール式噴霧容器に飲料を充填する工程;
を含む、上記方法である。
【0050】
本発明の飲料は、上述した各種成分を適宜配合したり、飲料中のその含有量を調整したりすることによって製造されてもよい。すなわち、本発明の製造方法は、上述した成分を配合する工程や、飲料中の当該成分の含有量を調整する工程を含むことができる。また、本発明の製造方法は、飲料のpHを調整する工程や、Brix値を調整する工程等も含むことができる。本発明の製造方法では、上記の各工程をどの順序で行ってもよく、最終的に得られた飲料における各種条件などが所要の範囲にあればよい。なお、本発明の飲料の製造における飲料中の成分の種類やその含有量等の各種要素については、本発明の飲料に関して上記した通りであるか、それらから自明である。
【0051】
また、本発明の飲料の製造方法においては、必要に応じて飲料を加熱殺菌する工程が含まれてもよい。例えば、飲料を噴霧容器に充填した後に加熱殺菌等を行う方法や、飲料を殺菌してから無菌環境下で噴霧容器に充填する方法により、殺菌された噴霧容器詰め飲料を製造することができる。加熱殺菌処理は、例えば、各地の法規(日本にあっては食品衛生法)に従って行うことができる。具体的には、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を保存容器に充填した後、レトルト処理を行うレトルト殺菌法が挙げられる。UHT殺菌法の場合、通常70~150℃で1~60秒間程度、好ましくは80~130℃で1~30秒間程度の条件であり、レトルト殺菌法の場合、通常70~150℃で1~30分間程度、好ましくは80~140℃で1~10分間程度の条件である。
【実施例0052】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。また、本明細書において、特に記載しない限り、数値範囲はその端点を含むものとして記載される。
【0053】
<実験例1>
ショ糖と同等の甘味度を有するキシリトールを用いて、噴霧容器に充填された飲料の官能評価を行った。具体的には、下表に示した通り、飲料の甘味度が3~30になるようにキシリトール(物産フードサイエンス株式会社)を水に溶解して飲料を調製し、得られた各種飲料をプラスチック製コップに30mL注いだ。コップに注いだ飲料の中に、1プッシュあたり0.1mL噴射可能なポンプ式ノズル(ディスペンサー)(株式会社三谷バルブ、Z-100-113)、又は1プッシュあたり0.5mL噴射可能なポンプ式ノズル(ディスペンサー)(株式会社三谷バルブ、Z-500-C038)のチューブ部分を差し込み、2種類の噴霧容器入り飲料を準備した。
【0054】
調製した飲料の水分活性は、水分活性測定装置AquaLab 4TE(メータージャパン株式会社)を用いて25℃の条件下で測定を行った。その結果、甘味度が30の飲料の水分活性は0.967であった。また、この結果から、甘味度が30を下回る飲料の水分活性は0.967以上であるものと判断された。
【0055】
官能評価試験においては、1回あたりに口内に噴射される飲料の量を調整すべく、1回あたりの噴霧量が0.2~0.4mLとなる試験は、1プッシュあたり0.1mL噴射可能な噴霧容器入り飲料を2~4個準備して、補助者の助力を得ながら一度に同じタイミングで評価者の口内に噴射した。また、1回あたりの噴霧量が1mLとなる試験は、1プッシュあたり0.5mL噴射可能な噴霧容器入り飲料を2個準備して、評価者自身の両手を使用しながら一度に同じタイミングで評価者の口内に噴射した。これらの操作により、1プッシュあたり0.2~0.4mL又は1mL噴射可能な噴霧容器を用いた場合と同等の試験を行った。
【0056】
官能評価としては、専門パネラー2名にて、各種飲料の止渇感及び飲み応えについて評価を行った。各専門パネラーは、以下の基準に従って5点評価を行い、その平均点を評価点とした。また、止渇感と飲み応えの評価点を合計した結果も合わせて調べた。
【0057】
<止渇感>
5点:強く感じる
4点:感じる
3点:やや感じる
2点:ほとんど感じない
1点:全く感じない
【0058】
<飲み応え>
5点:強く感じる
4点:感じる
3点:やや感じる
2点:ほとんど感じない
1点:全く感じない
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
結果は上記の通りであり、所定の甘味度及び所定の噴霧量の場合に、良好な止渇感と飲み応えが得られることがわかった。なお、上記試験の評価結果について、各専門パネラーの評価点が2点以上異なることはなかった。
【0063】
<実験例2>
噴霧容器に充填された飲料の止渇感及び飲み応えについて、酸度の影響を調べた。下表に示した通り、飲料の酸度が0.001~6になるようにクエン酸(磐田化学工業株式会社)を水に溶解して飲料を調製し、得られた各種飲料をプラスチック製コップに30mL注いだ。上記実験例1と同様にして、1プッシュあたり0.1mL噴射可能な噴霧容器入り飲料と、1プッシュあたり0.5mL噴射可能な噴霧容器入り飲料とを準備した。
【0064】
調製した飲料の水分活性は、水分活性測定装置AquaLab 4TE(メータージャパン株式会社)を用いて25℃の条件下で測定を行った。その結果、酸度が6の飲料の水分活性は0.987であった。また、この結果から、酸度が6を下回る飲料の水分活性は0.987以上であるものと判断された。
【0065】
官能評価試験は上記実験例1と同様の方法及び基準を用いて行い、専門パネラー2名にて各種飲料の止渇感及び飲み応えについて評価を行った。また、止渇感と飲み応えの評価点を合計した結果も合わせて調べた。
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
結果は上記の通りであり、所定の酸度及び所定の噴霧量の場合に、良好な飲み応えと止渇感が得られることがわかった。なお、上記試験の評価結果について、各専門パネラーの評価点が2点以上異なることはなかった。
【0070】
<実験例3>
最終含有量が下表に示した量となるよう各種成分を水に溶解し、3種類の飲料を調製した。得られた各種飲料をプラスチック製コップに30mL注ぎ、上記実験例1と同様にして、1プッシュあたり0.5mL噴射可能な噴霧容器入り飲料を準備した。香料に関しては、サンプル1、サンプル2、及びサンプル3に対してそれぞれジャスミンフレーバー、ミントフレーバー、及びレモンフレーバーを使用し、いずれも甘味度及び酸度には影響を及ぼさないものを使用した。調製した飲料について、それぞれpH及び水分活性(25℃)を測定した。
【0071】
【0072】
上記実験例1と同様の方法及び基準を用いて、1回あたりの噴霧量を0.5mL又は1mLに調整して官能評価試験を行った。上記実験例1と同様に、専門パネラー2名にて各種飲料の止渇感及び飲み応えについて評価を行った。
【0073】
【0074】
【0075】
結果は上記の通りであり、いずれの飲料も良好な飲み応えと止渇感が得られることがわかった。
【0076】
<実験例4>
実験例3で用いた3種類の飲料サンプルを、それぞれ60mLずつエアゾール缶(株式会社三谷バルブ製BOV(60mL)、初期内圧0.6MPa)に充填した。得られたエアゾール缶入り飲料について、官能評価試験を行った。
【0077】
官能評価試験においては、事前にエアゾール缶からの噴霧量を十分に確認した上で、口内に噴射される飲料の量を約0.5mL又は約1mLに調整して、評価者の口内に飲料を噴射した。口内への噴射後は、エアゾール缶入り飲料の重量減少量を調べて、噴霧量が0.5mL~0.55mL又は1mL~1.05mLの範囲内であることを確認した。なお、噴霧量約0.5mLの噴射時間は約0.5秒であり、噴霧量約1mLの噴射時間は約1秒であった。
【0078】
官能評価としては、専門パネラー2名にて、各種飲料の止渇感及び飲み応えについて評価を行った。官能評価は、上記実験例1と同様の基準を用いて行い、その平均点を評価点とした。
【0079】
【0080】
【0081】
結果は上記の通りであり、いずれの飲料も良好な飲み応えと止渇感が得られることがわかった。