(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001093
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ヒト組織内の生体変化の認識のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0507 20210101AFI20231226BHJP
【FI】
A61B5/0507
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023169721
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2021547882の分割
【原出願日】2019-04-30
(31)【優先権主張番号】18203207.8
(32)【優先日】2018-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521182593
【氏名又は名称】パエガスス メディカル ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カネパ、ステファノ ニコロ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高感度で高精度の結果を可能にし、がんの存在だけでなく位置も検出できる装置を提供する。
【解決手段】本発明は、マイクロ波領域の電磁波を使用するヒト組織内の生体変化の認識のためのシステムを対象とし、装置は、少なくとも1つの送信アンテナ101、送信機102、及び電源103を備える送信機装置100と、少なくとも1つの受信アンテナ201、受信機202、前処理モジュール204、及び電源203を備える受信装置200と、マイクロプロセッサ301及びディスプレイ302とを具備し、送信機装置100及び受信装置200が2.0GHzと3.0GHzとの間に含まれる周波数で動作するように構成される。好ましい実施例では、動作周波数が、2.3GHzと2.5GHzとの間に含まれ、装置が、ヒトの体内のがんの検出、例えば、前立腺がん、大腸がん、乳がん、甲状腺がんの検診のために適している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織異常を検出するためのシステムであって、
a.少なくとも1つの受信アンテナ(101)、送信機(102)、及び電源(103)を備える送信機装置(100)と、
b.少なくとも1つの受信アンテナ(201)、受信機(202)、前処理モジュール(204)、及び電源(203)を備える受信装置(200)と、
c.マイクロプロセッサ(301、104)及びディスプレイ(302、105)と
を具備し、
前記送信機装置(100)及び前記受信装置(200)が2.0GHzと3.0GHzとの間に含まれる周波数で動作するように構成される、システム。
【請求項2】
前記マイクロプロセッサ(104)及び前記ディスプレイ(105)が、ブルートゥース(登録商標)送信機/受信機(106)とともに前記送信機装置(100)に統合され、前記受信装置もまたブルートゥース(登録商標)送信機/受信機(206)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記動作周波数が、2.1GHzと2.7GHzとの間に含まれる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記動作周波数が、2.3GHzと2.5GHzとの間に含まれる、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記送信機が、狭帯域入射無線周波数信号を放射するように構造化される、請求項1から4までのいずれかに記載の装置。
【請求項6】
前記送信機装置が、単一のアンテナ、及び特定の放出される無線周波数に固定するための水晶発振器を備える、請求項1から5までのいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記送信アンテナ(101)が、10°と30°との間に含まれる角度で照射する指向性アンテナである、請求項1から5までのいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記電源(103、203、303)が、充電式電池を備える、請求項1から6までのいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記プロセッサが、次の臓器、前立腺、大腸、乳房及び甲状腺のうちの少なくとも1つの検査に適合されたソフトウェアを備える、請求項1から8までのいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記マイクロプロセッサが、多数の検査の結果を記憶するように適合される、請求項1から9までのいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記マイクロプロセッサが、検査の少なくとも100の結果を記憶するように適合される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
外部プロセッサへ前記記憶したデータを転送するように適合される、請求項10又は11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織内の生体変化の認識のためのシステムを対象とし、特に、2.0と3.0GHzとの間を含む動作周波数を有する電磁波を使用するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
組織内の生体変化の認識のため無線周波数の使用が、いくつかの特許出願に開示されてきている。WO01/07909(Vedruccio)は、3つの異なる波長(436、872及び1308MHz)において無線周波数を発生するコヒーレント・トランシーバ・プローブ並びにスペクトル・アナライザを備える装置を開示している。プローブは、患者の体に沿って手動で掃引され、3つのピークのうちの1つの低下又は消失が、あるタイプの変化の指標と考えられる。このために、3つの異なる波長は、必須と考えられる。Trimprobとして商業的に知られている装置が、多くの医師によって使用されたが、結果がオペレータに強く依存するのでほとんど信頼性がないと考えられた。
【0003】
EP2364647(Centro Studi e Ricerche Sant’ Angela srl)は、生体組織内の異常を検出するための装置を開示し、この装置は先行技術の限界を克服しようと試みている。特に、装置は、送信機とアンテナとの間の距離を一定に保つことによって信頼性の欠如の問題に対処する。‘647の装置はまた、自動的にアンテナを動かすことによってオペレータの依存性を克服しようと試みた。好ましい周波数範囲は、400と1000MHzとの間である。
【0004】
EP2465428(Medielma srl)もまた、同一の問題に対処し、受信アンテナのうちの1つが送信機に常に接続され、その結果、装置が異常を検出できるように、受信アンテナの数を増加させることによってこの問題を解決しようと試みている。装置は、700MHzよりも低い周波数で動作する。実際に、この特許は、「近接場条件」で組織を照射することが非常に重要と考える。この特許によれば、このような条件を、波長が700MHzよりも短い場合にのみ達成することができる。
【0005】
EP3257439(Medielma srl)は、‘428の装置の発展形を開示し、アンテナ放射素子がサーボ機構によって時計回り方向及び反時計回り方向の両方に所定の角度だけ回転される。またこの場合、人間の行為を減らすこと及び解析を実行するための標準方法を規定することが試みられる。
【0006】
先行技術による装置の結果は、有用であるとはいえ、がんの存在に関する最終判断が、他の検査、例えば、NMR解析、大腸内視鏡検査、生体組織検査、等に常に残されているので、予備的な検診と考えられる。しかしながら、上記の検査は、費用が掛かり侵襲的である。
【0007】
米国特許出願第2017/007149号は、10から26GHzまでの範囲内のマイクロ波の使用によってヒトの体内の異常を検出するための撮像システムを開示している。このシステムは、X線撮像の代替として意図されており、2から3GHzまでの周波数範囲内のマイクロ波の使用を示唆するものではない。
【0008】
したがって、上記の侵襲的な検査を受ける患者の数を減少させることが可能であることが強く望まれるはずである。本発明は、この方向の非常に重要なステップを表し、より高価な撮像検査に匹敵する信頼性のある解析ツールを提供する。
【0009】
本発明は、画像検査を受けることを必要とせずにヒト組織内の生体変化の認識のため、より詳しくは、ヒトの体のある臓器内のがんを検出するためのシステムを対象とし、がんが存在するかどうかの正しい評価の点だけでなくがんの場所に関しても正確である診断につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO01/07909
【特許文献2】EP2364647
【特許文献3】EP2465428
【特許文献4】EP3257439
【特許文献5】米国特許出願第2017/007149号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ヒト組織内の生体変化の認識のためのシステムを対象とし、このシステムは、マイクロ波送信機と、マイクロ波受信機と、データ処理ユニットとを備え、上記マイクロ波送信機及び受信機の動作周波数は2.0と3.0GHzとの間に含まれる。この範囲内の周波数の使用は、がんの非常に信頼性のある診断及び位置確認を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による装置のある実施例のブロック図である。
【
図2】本発明のもう1つの好ましい実施例のブロック図である。
【
図3】
図2のブロック図にしたがったシステムの写真である。
【
図4】
図3のシステムの送信機のスクリーンを表示する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、少なくとも1つの送信アンテナ、送信機、及び電源を備える送信機装置と、少なくとも1つの受信アンテナ、受信機、前処理モジュール、及び電源を備える受信装置と、マイクロプロセッサ、ディスプレイ及び電源を備えるデータ処理装置とを具備し、上記送信機装置及び上記受信装置が2.0GHzと3.0GHzとの間に含まれる周波数で動作するように構成される、組織異常を検出するためのシステムを対象とする。
【0014】
図1のブロック図は、アンテナ101、送信機102、及び電源103を備える送信機装置100と、4つの受信アンテナ201、受信機202、前処理モジュール204、及び電源203を備える受信機装置200と、マイクロプロセッサ301、ディスプレイ302、及び電源303を備えるデータ処理装置300とを示す。
【0015】
図2は、本発明のもう1つの好ましい実施例を表し、そこでは、データ処理装置300が、ブルートゥース(登録商標)送信機/受信機106とともに送信機装置100に統合される。この実施例では、送信機100は、アンテナ101、送信機102、電源103、ブルートゥース(登録商標)送信機/受信機106、マイクロプロセッサ104及びディスプレイ105を備える。受信装置200もまた、ブルートゥース(登録商標)送信機206を備え、ブルートゥース(登録商標)送信機/受信機106を通してマイクロプロセッサ104へデータを送る。この実施例では、オペレータは、解析の結果を送信機100上で直接見ることができる。
【0016】
図3は、
図2のブロック図によるシステムの試作品の写真である。送信機装置は、スクリーンを備え、ブルートゥース(登録商標)接続を通して受信機装置からデータを受信する。この試作品は、非常に軽く、バッグで容易に搬送することができる。受信機は、約0.25m×0.20mのサイズのものであり、正方形配置に設置された4つのアンテナを包含する。
【0017】
図4は、
図3の送信機のディスプレイを示す。ディスプレイから、オペレータは、解析の応答を追いかけることができる。
【0018】
1つの実施例では、送信機装置は、任意選択で共振空洞双極子アンテナ又は小さな臓器の場合に使用されることがある指向性アンテナである単一のアンテナ、及び特定の放出無線周波数を固定するための水晶発振器を含む。好ましいタイプの指向性アンテナは、八木アンテナである。好ましくは、本発明の送信機において使用される指向性アンテナは、10°と30°との間に含まれる角度で照射する。
【0019】
送信機は、患者組織を照射するために狭帯域入射マイクロ波周波数信号を放射するように構造化されることが好ましい。本出願の目的に関して、狭帯域信号は、1/Bw(帯域幅、bandwidth)が照射された患者生体組織の緩和時間よりも短い(典型的にBw>1KHz)ことを条件に、体との相互作用の結果としての応答が帯域幅Bw内で一定と考えられるという仮定を用いることができる十分小さい帯域幅Bwを有する信号を意味する。送信機装置によって放射される周波数は、2.0GHzから3.0GHzまで、例えば、2.2GHzから2.7GHzまで、より好ましくは2.3GHzから2.5GHzまでの範囲内、最も好ましくは2.35GHzから2.45GHzまでを意味する約2.4GHz付近に含まれる。
【0020】
受信機装置は、少なくとも1つの受信アンテナ、前処理モジュール及び電源を備える。
【0021】
電源は、充電式電池を含むことが好ましい。受信アンテナは、送信アンテナの周波数、すなわち、2.0GHzから3.0GHzまで、好ましくは2.2GHzから2.7GHzまで、より好ましくは2.3GHzから2.5GHzまで、最も好ましくは2.35GHzから2.45GHzまでを意味する約2.4GHz付近に同調される。受信アンテナは、指向性又は無指向性のいずれであってもよく、好ましくは、受信アンテナは、180°をカバーできる。
【0022】
前処理モジュールは、環境の電磁ノイズを除去するために放出された周波数とは異なるすべての他の周波数を除いて信号をクリーンにするために使用されるフィルタを備えることが好ましい。受信アンテナのシステムからの信号は、受信機を通してディジタル化され、前処理モジュールへ送られる。前処理ユニットから、信号は、好ましくは送信装置又は別の装置、例えば、ラップトップ・コンピュータ若しくは等価なコンソールのいずれかにある処理ユニットへ送られる。
【0023】
処理アルゴリズムを通してデータ処理ユニットは、減衰、分極化、共振及び干渉などの異なる特性で表して後方散乱波動場の尺度を表すパラメータを提供する。最も好ましくは、データ処理ユニットは、受信した信号内の組織の異常、より具体的にがんの存在と関連するヌル又は最小値(すなわち、しきい値よりも下の値)の存在を決定するアルゴリズムを実行するように構成される。これらのアルゴリズムの実例は、EP2465428に開示されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。データ処理ユニットはまた、ディスプレイ及び電源を備えることができ、電源は好ましくは充電式電池を備える。代替例として、受信装置は、ブルートゥース(登録商標)送信機を備え、データ処理ユニットを備え且つスクリーン上に診断の結果を可視化する送信装置へデータを伝達する。
【0024】
受信機のサイズは、小型である。アンテナのサイズが放射線の波長λ(2.4GHz、λ=12cm)に関係するので、2.4GHzの周波数用の受信機が小さいことに留意することが重要である。2つ以上の受信アンテナが使用される場合には、受信機の長さは、好ましくは0.80m未満、より好ましくは0.50m未満、さらにより好ましくは0.30m未満である。
【0025】
複数のアンテナが存在できるとはいえ、受信装置内に単一のアンテナを有することもまた可能である。単一のアンテナの使用は、受信機装置のサイズのさらなる縮小を可能にする。単一の受信アンテナを備える受信機は、0.40m未満、より好ましくは0.30m未満、さらにより好ましくは0.25m未満である長さを有することが好ましい。
【0026】
いずれの場合も、受信機の幅は、好ましくは0.30m未満であり、厚さは0.030m未満である。受信機のこの小さなサイズ及び厚さは、検査すべき臓器に対応する位置で患者の下の診療台上に受信機を設置することを可能にする。
【0027】
送信機及び受信機の両方の小さなサイズに鑑みて、本発明による装置は、何の問題もなく患者ベッド又は別の場所に容易に移動することができる。実際に、装置全体を、移動を容易にするバッグ内に設置することができる。本発明による装置の総重量は、非常に制限される、例えば、10kg未満、好ましくは5kg未満、より好ましくは2kg未満である。
【0028】
本発明による装置を、すべての室内で及びすべての利用可能な診療台上で使用することができ、専用の診療台及び部屋を必要としない。
【0029】
この目的のために、本発明の装置は、外部電源を必要とせずに装置の運転を可能にする充電式電池が提供されることが好ましい。
【0030】
本発明の装置のもう1つの強みは、がんの位置を検出する能力である。前立腺がんの場合、本発明による装置は、がんが左葉又は右葉に位置するかどうかを決定することができる。この情報を得るために、現在まで、NMR解析を実行することが必要であった。同様に、大腸がんに関して、本発明による装置は、がんが存在する腸管の診断を可能にする。
【0031】
本発明による装置の使用の方法は、簡単である。受信機が、チェックすべき臓器に対応する患者の下に置かれる。次いで、送信機をオンにし、検査すべき臓器に可能な限り近づけて体と接触させて置く。
【0032】
好ましい実施例では、
図3及び
図4のシステムのスクリーンは、検査すべき臓器の選択を要求するスクリーンショットをオペレータに提供することになる。前立腺及び大腸検査の可能性のある手順が例としてここに提示される。しかしながら、情報の別の表示が可能であることが明らかである。同様に、他の臓器を、システムのメニューに導入することができる。臓器が前立腺である場合に、オペレータは、前立腺を選択し、スクリーンが前立腺の左葉の検査を要求することになる。オペレータは、左葉に対応して送信機装置を設置することになる、データを保存するためにスクリーン上のボタンを押すことになる。スクリーンは、次いで右葉の検査を要求することになる、オペレータは、右葉上に送信機装置を設置し、再びボタンを押すことになる。
【0033】
臓器として大腸を選択すると、スクリーンは、検査すべき関連する点に対応する6つの異なる位置、1)右腸骨か(盲腸及び上行結腸)、2)右腰(上行結腸及び右結腸曲)、3)中腹部(横行結腸)、4)左腰(左結腸曲及び下行結腸)、5)左腸骨か(下行結腸及びS字結腸)、6)下腹部(S字結腸及び直腸結腸)の解析を要求することになる。オペレータは、順にそれぞれの位置に送信機を設置し、データを取得するためにボタンを押すことになる。
【0034】
このように、本発明の好ましい実施例では、システムは、下記の臓器、前立腺、大腸、乳房及び甲状腺のうちの少なくとも1つの検査に適合されたソフトウェアを備える。好ましくは、システムのディスプレイは検査をガイドし、ボタンを押すことによってオペレータは、システムによって測定されたデータを保存し、検査が陽性か陰性かどうかを指示する。検査すべき領域のすべてが完了すると、システムは、検査の結果(陽性又は陰性)及びおそらくがんが位置する領域(前立腺については左葉又は右葉、大腸については大腸の領域、等)を提供する。
【0035】
好ましくは、プロセッサは、少なくとも一作業日に対応する多数の検査のデータを記憶するように適合される。例えば、プロセッサは、検査の少なくとも100の結果を記憶できる。このようにして、オペレータは、いくつかの検査を実行することができ、その日の終わりにコンピュータなどのプロセッサにシステムを接続することができ、データをダウンロードすることができる。このように、本発明のシステムは、外部プロセッサに記憶したデータを転送するように適合されることが好ましい。転送は、ブルートゥース(登録商標)接続(106、206)によって好ましくは実行される。
【0036】
実験部分
前立腺検査
155人の泌尿器科の患者が、多パラメータNMRによって並びに本発明による
図3及び
図4のシステム(2.4GHz)によって調べられた。結果は、前立腺がん診断においてゴールドスタンダードと考えられる前立腺経直腸エコでガイドされる生体組織検査の結果と対比される。
【0037】
各々の方法について、2つの異なる解析、全体の前立腺についての第1の解析(表1)、及び可能性のある前立腺がんの左右差を評価するための第2の解析(表2)が実行された。
【表1】
【表2】
【0038】
表1の結果は、本発明による装置が何も偽陰性を生じさせず偽陽性の数がNMRによって求められた数と同等であることを示す。偽陰性が起きたときに、健全であると診断された人が実際にはがんによって冒されているので、偽陰性が最も危険な場合であることに留意することが重要である。表3及び表4は、感度、特異性、負の適中率(NPV:negative predictive value)、正の適中率〈PPV:positive predictive value〉、及び精度を計算することによって、それぞれ表1及び表2のデータの統計的な評価を報告する。ここでは、
【0039】
感度=TP/(TP+FN)・100
【0040】
特異性=TN/(TN+FP)・100
【0041】
PPV=TP/(TP+FP)・100
【0042】
NPV=TN/(TN+FN)・100
【0043】
精度=(TP+TN)/(TP+FP+TN+FN)・100
【表3】
【表4】
【0044】
表3及び表4のデータから、本発明の装置は、信頼性が高く、容易で経済的な方法で前立腺がんの存在を検出するための患者の検診を可能にする。装置はまた、他の臓器の変化の認識のために、例えば、大腸がん、乳がん、甲状腺がんの検診のためにも適している。
【0045】
大腸検査
大腸内視鏡検査を受ける連続した成人の予測単心盲検調査(a prospective single-center blinded study)が実行された。患者が大腸内視鏡検査を受ける前に、患者は本発明によるシステムにより検査された。
【0046】
処置中に、被験者は服を着ている。手持ち装置を、腹部の全体にわたり動かし、組織信号の電磁応答が記録された(2.4GHz)。一人の検査員がシステムを使用して試験を実行した。異常信号が特定され、悪性又は良性(腺腫、過形成性ポリープ若しくは憩室)として記録された。知見が、大腸内視鏡検査からのものと比較された。統計的解析が次いで実行された。
【0047】
結果
組み入れ基準を満足する合計で107人の連続する患者が5か月の期間にわたり登録された。大腸内視鏡検査に関する最も頻度の高い症状は、便秘、下痢、腹痛又は糞便血であった。本発明によるシステムは、32すべての腺がん及びポリープを検出し特徴を明らかにした。
【0048】
方法は、大腸内視鏡検査に比較して、96.97%の感度、78.38%の特異性、及び84.11%の診断精度でがん及びポリープを特定した。正の適中率は66.67%であり、負の適中率は98.31%であった。107人の被験者の中で、16人の偽陽性結果(14.95%)及び1人の偽陰性(0.93%)結果があった。結果は表5にまとめられる。
【表5】
【0049】
大腸内視鏡検査は、長い準備を必要とする非常に侵襲的な検査であるが、一方で本発明によるシステムよる検査は、実行するのが容易であり何の準備も必要としない。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌を検出するためのシステムであって、
a.少なくとも1つの受信アンテナ(101)、送信機(102)、及び電源(103)を備え、狭帯域入射無線周波数信号を放射し患者の組織を照射するように構成される送信機装置(100)と、
b.2つ以上の受信アンテナ(201)、受信機(202)、前処理モジュール(204)、及び電源(203)を備える受信装置(200)と、
c.マイクロプロセッサ(301、104)及びディスプレイ(302、105)を備え、検査対象の組織における癌の存在に関連する受信信号において、しきい値を下回る値の存在を判定するアルゴリズムを実行するように構成されたデータ処理ユニットと
を具備し、
前記送信機装置(100)及び前記受信装置(200)が2.3GHzと2.5GHzとの間に含まれる周波数で動作するように構成される、システム。
【請求項2】
前記マイクロプロセッサ(104)及び前記ディスプレイ(105)が、ブルートゥース(登録商標)送信機/受信機(106)とともに前記送信機装置(100)に統合され、前記受信装置もまたブルートゥース(登録商標)送信機/受信機(206)を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記動作周波数が、2.35GHzと2.45GHzとの間に含まれる、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記送信機装置が、単一のアンテナ、及び特定の放出される無線周波数に固定するための水晶発振器を備える、請求項1から3までのいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記送信アンテナ(101)が、10°と30°との間に含まれる角度で照射する指向性アンテナである、請求項1から4までのいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記指向性アンテナは八木アンテナである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記電源(103、203、303)が、充電式電池を備える、請求項1から6までのいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記プロセッサが、次の臓器、前立腺、大腸、乳房及び甲状腺のうちの少なくとも1つの検査に適合されたソフトウェアを備える、請求項1から7までのいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記マイクロプロセッサが、多数の検査の結果を記憶するように適合される、請求項1から8までのいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記マイクロプロセッサが、検査の少なくとも100の結果を記憶するように適合される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
外部プロセッサへ前記記憶したデータを転送するように適合される、請求項9又は10に記載のシステム。
【外国語明細書】