(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109304
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】マンホールの継手構造とその施工方法
(51)【国際特許分類】
E02D 29/12 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
E02D29/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014024
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000229128
【氏名又は名称】ベルテクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 伴行
(72)【発明者】
【氏名】石田 孝太郎
(72)【発明者】
【氏名】横塚 泰弘
【テーマコード(参考)】
2D147
【Fターム(参考)】
2D147BA21
(57)【要約】
【課題】端面間の目開きを許容しつつ継手構造により目開き量を抑制することができるマンホールの継手構造と施工方法を提供する。
【解決手段】上下方向に組積みした上下の筒体2,2間に設けられる可撓性を有するマンホール1の継手構造である。上下の筒体2,2の端面たる下端面3と上端面4の間に、伸縮性を備える弾性体からなる目地材35を設け、目地材35を上下の筒体2,2の下端面3と上端面4に接着すると共に、該目地材35により下端面3と上端面4との間の変位を抑制するように構成したから、地震などにより上下の筒体2,2の端面間を開く力が加わると、弾性体からなる目地材35が目開きを許容して伸び、この伸びに必要な力の分だけ開く力が吸収され、目開き量を抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に組積みした上下の筒体間に設けられる可撓性を有するマンホールの継手構造において、
前記上下の筒体の端面間に、伸縮性を備える弾性体からなる目地材を設け、
前記目地材を前記上下の筒体の端面に接着すると共に、該目地材により前記端面間の変位を抑制するように構成したことを特徴とするマンホールの継手構造。
【請求項2】
前記上下の筒体の前記端面の少なくとも一方に溝部を設け、前記溝部に前記目地材を設けたことを特徴とする請求項1記載のマンホールの継手構造。
【請求項3】
前記上下の筒体の一方の端面側に受け口部を設けると共に、他方の端面側に前記受け口部に挿入する挿し口部を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載のマンホールの継手構造。
【請求項4】
前記挿し口部と前記受け口部の間に止水部材を設け、この止水部材を前記目地材より前記筒体の外周面側に設けたことを特徴とする請求項3記載のマンホールの継手構造。
【請求項5】
前記挿し口部が下向きであることを特徴とする請求項3記載のマンホールの継手構造。
【請求項6】
請求項1記載のマンホールの継手構造を設ける施工方法において、
前記上下の筒体を重ね合わせた後、前記筒体の内側から前記上下の筒体の端面間に前記目地材を設けることを特徴とするマンホールの継手構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒体を重ね合わせるマンホールの継手構造とその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の継手構造として、筒体の継手部分に伸縮性の可撓継手装置を設置し、筒体の変位を吸収するものが知られている(例えば特許文献1の
図12)。
【0003】
前記筒体間の継手は漏水の発生箇所となる可能性があり、なるべく継手箇所が少ない方がよい。しかし、継手を少なくすると筒体間の目開き量が大きくなり、継手に弾性のあるシール部材を使用して止水性と可撓性とを確保するには、対応可能な目開き量に限度がある。
【0004】
また、目開き量はマンホールの外径が大きくなると同じ屈曲角度でも大きくなるため、大口径のマンホールになるほど、継手に高い可撓性が求められる。
【0005】
図17~
図18は、特許文献1の
図12に対応した概略説明図である。同図に示すように、上下の筒体101,101の重ね合せ箇所に跨って伸縮性の可撓継手装置102が設けられており、地震などにより上下の筒体が相対的に傾くと、
図17に示すように重ね合せ箇所に目開きが発生し、可撓継手装置102に外側から地下水圧が加わることにより内側に屈曲し、地震が終了すると、
図18に示すように、可撓継手装置102の屈曲部分102Aが重ね合せ箇所に挟まれ、これにより可撓継手装置102の止水性能の低下を招くという問題がある。
【0006】
この問題を解決すものとして、上下に重ねた筒体の重ね合せ箇所の上下に跨って上下方向に伸縮可能な弾性筒状体を設けるマンホールの継手構造において、前記弾性筒状体の前記重ね合せ箇所への侵入を防止する侵入防止部材を、前記重ね合せ箇所の上下に跨って前記上下の筒体の外周に配置し、前記侵入防止部材の外周に前記弾性筒状体を配置すると共に、前記弾性筒状体の上,下取付部を前記上下の筒体に取り付けたマンホールの継手構造(例えば特許文献2)がある。
【0007】
上記特許文献2のマンホールの継手構造では、地震力などが作用した場合、筒体の重ね合せ箇所が開くことで地震時などの力を吸収し、筒体にひび割れ等が生じない。また、筒体の重ね合せ箇所が開くと、弾性筒状体が上下方向に伸び、この状態でも弾性筒状体には地下水圧が加わるが、侵入防止材により弾性筒状体が開いた重ね合せ箇所に挟まれることがなく、地震終了後は前の状態に戻ることができる。
【0008】
ところで、この種のマンホールは、既存の地下埋設物を避けるために施工スペースを確保することができない場合、外作業が必要となる従来の大深度型では対応できないという問題がある。
【0009】
即ち、特許文献1では、立坑内に上下の筒体101,101の重ね合せた後、立坑内の作業員が筒体の外部側から伸縮性の可撓継手装置を取り付ける必要があり、また、特許文献2では、立坑内の作業員が筒体の外部側から、筒体に侵入防止部材と弾性筒状体を取り付ける必要があり、筒体外部での施工スペースを確保するため、立坑を大きくする必要があり、施工スペースを必要とする現場では施工が難しい。
【0010】
また、マンホールの下部が基盤層に入るケース等で目地開き量が大きくなるとき、目開きを許容する上記特許文献1や2などと異なる従来型の変位制限するものでは、耐震性を満足することができない場合がある。
【0011】
そこで、施工スペースが確保できず、目開きが大きい現場でマンホールを利用するために、止水性のある継手構造の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007-56462号公報
【特許文献1】特開2016-113882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
解決しようとする課題は、端面間の目開きを許容しつつ継手構造により目開き量を抑制することができるマンホールの継手構造と施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明は上下方向に組積みした上下の筒体間に設けられる可撓性を有するマンホールの継手構造において、前記上下の筒体の端面間に、伸縮性を備える弾性体からなる目地材を設け、前記目地材を前記上下の筒体の端面に接着すると共に、該目地材により前記端面間の変位を抑制するように構成したことを特徴とする。
【0015】
また、請求項2の発明は、前記上下の筒体の前記端面の少なくとも一方に溝部を設け、前記溝部に前記目地材を設けたことを特徴とする。
【0016】
また、請求項3の発明は、前記上下の筒体の一方の端面側に受け口部を設けると共に、他方の端面側に前記受け口部に挿入する挿し口部を設けたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項4の発明は、前記挿し口部と前記受け口部の間に止水部材を設け、この止水部材を前記目地材より前記筒体の外周面側に設けたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項5の発明は、前記挿し口部が下向きであることを特徴とする。
【0019】
また、請求項6の発明は、請求項1記載のマンホールの継手構造を設ける施工方法において、前記上下の筒体を重ね合わせた後、前記筒体の内側から前記上下の筒体の端面間に前記目地材を設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の構成によれば、地震などにより上下の筒体の端面間を開く力が加わると、弾性体からなる目地材が目開きを許容して伸び、この伸びに必要な力の分だけ前記開く力が吸収され、目開き量を抑制することができる。
【0021】
また、請求項2の構成によれば、溝部に目地材を設けることにより、上下の筒体の端面を目地材により接着することができ、また、溝部の上下寸法だけ目地材の上下長さを確保することができる。
【0022】
また、請求項3の構成によれば、受け口部に挿し口部を挿入して上下の筒体を接続することより、筒体外部での作業が不要となり、立坑の大きさ寸法を抑えることができる。
【0023】
また、請求項4の構成によれば、止水部材により筒体内への水の侵入を防止できる。
【0024】
また、請求項5の構成によれば、外部からの土砂の侵入を防止できる。
【0025】
また、請求項6の構成によれば、筒体の外側での作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図11】同上、左半分が筒体の平面を示し、右半分が筒体の底面を示す説明図である。
【
図16】本発明の実施例4を示す充填空間周りの拡大断面図である。
【
図17】従来例を示す重ね合せ部分が開いた状態の断面図である。
【
図18】同上、重ね合せ部分が開いた後に閉まった状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0028】
図1~
図6は実施例1を示しており、マンホール1は、筒状ブロックたる筒体2,2・・・を上下に複数組み立てる組立式マンホールであり、前記筒体2はプレキャストコンクリートなどからなる。尚、前記筒体2の直径(内径)は、例えば2000~3500mm程度である。また、マンホール1は地中に埋設され、土圧を受ける。尚、この例では、筒体2は周方向に一体のものを用いている。
【0029】
上下の筒体2,2が上下方向に組積みされ、上下の筒体2,2の端面たる下端面3と上端面4との間に目地部5が設けられ、この目地部5にはシート状のクッション材6が配置され、このクッション材6は上端面4に接着剤を塗布した接着剤層7(
図2)により固定されている。尚、前記目地部5は、下端面3と上端面4の重ね合せ箇所である。また、この例では、下端面3と上端面4は平坦面に形成されている。
【0030】
継手構造として以下の構成を備える。この例では、鋼管からなるカラー11の一端側12を上の筒体2の下端に固定すると共に、そのカラー11の前記下端面3から下方に突出した部分により受け口部13を構成している。
【0031】
前記カラー11の一端側12の内周面には、複数のアンカーたる鋼製ボルト14が筒体2の中心側に向かって突設されていると共に、それらボルト14の上下に位置してアンカーたる鉄筋15,15が固定されており、筒体2の成型時にそれら鋼製ボルト14と鉄筋15,15がインサートにより筒体2に一体化され、これによりカラー11が筒体2に取り付けられている。尚、カラー11の外周面と筒体2の外周面2Gが面一になるように、筒体2にカラー11が固定されている。
【0032】
また、前記カラー11の一端側12の内面には、前記ボルト14の上下に、膨潤ゴムなどからなる埋込用止水材16,16が設けられている。
【0033】
下の筒体2の上端には、その中央側の外周面2Gより径小な挿し口部21が形成され、この挿し口部21が前記受け口部13に挿入接続される。また、前記差し口部21の外周面には、上端面4側にパッキン装着溝22が環状に形成され、このパッキン装着溝22に環状の止水パッキン23が固定されている。
【0034】
前記止水パッキン23は、
図3に示すように、外周側が挿し口部21の挿し込み方向と逆側に傾斜させた複数の舌片部24,24,24,24の間に切込み部25,25,25が設けられており、複数の舌片部24,24,24,24が前記受け口部13の内周面に圧接する。また、受け口部13の先端側の内周面と挿し口部21の外周面との間には、スポンジ系のパッキン材26が配置され、このパッキン材26は外部からの土砂の侵入を防止する侵入防止材である。
【0035】
図4は「地震動レベル1」の抜出し時を示し、下端面3とクッション材6の間隔である目開き量が20mm、
図5は「地震動レベル2」の抜出し時を示し、下端面3とクッション材6の間隔である目開き量が70mm、
図6は最大抜出し時で、目開き量が140mmであり、挿し口部21の長さLは一例として180mmである。尚、「地震動レベル1」とは、25カイン(cm/s)以上で基準化した地震波を想定したものであり、「地震動レベル2は、50カイン以上で基準化した地震波を想定したものであり、カインとは、地震の大きさを表す単位のひとつで、構造物が1秒間に何センチ変位したかを示す。
【0036】
前記下端面3と上端面4の少なくとも一方である上端面4には、環状の溝部31が形成されている。この溝部31は、筒体2の内周面2Uに開口し、他方である下端面3と平行且つ対向する溝底面部32と、この溝底面部32から上端面4に向かって該溝部31を拡大するテーパー状の溝内周面部33とを有し、コーキングガンなどの充填装置により目地材35が充填される。この目地材35は経時的に硬化するものであって、所定の弾性復元力を有する高弾性と高い接着性とを備える。尚、前記溝内周面部33には、目地材35が接着することを防止するため、バックアップ材やボンドブレーカなどの接着防止材36が設けられている。また、目地材35は止水性を有するが、前記止水パッキン23のみでマンホール1の止水性を確保することができる。
【0037】
また、
図2に示すように、この例では、下端面3と溝底面部32と接着防止材36の外周面36Gとにより、目地材35のリング状をなす充填空間37が形成され、この充填空間37の上下幅Wを30mm以下、充填空間37の深さDを30mm以下としている。尚、前記上下幅Wが30mmの場合、溝部31の上下幅は、組積み後のクッション材6の厚さ分だけ30mmより小さくなる。それら上下幅Wと深さDの寸法は、高弾性を有する目地材35により筒体2,2間の変位の抑制を可能にすると共に、目地材35の充填作業性を考慮したものである。そして、充填空間37が広すぎると充填作業に時間が掛かったり、目地材35が充填空間37から筒体2の内面に垂れ落ちたりする虞があるのに対して、上記寸法を採用することにより充填作業性が低下することがない。
【0038】
前記目地材35としては、高接着高弾性シール材が用いられ、例えばベルテクス建設株式会社(東京都千代田区麹町)より販売されている「ゼニスタフシール」を用いることができる。また、他にも高弾性シール材として、株式会社TSシール工業(高知県高知市はりまや町)より提供されている「TSシール」を用いることができ、この「TSシール」は、水酸基末端液状ポリブタジエンと、液状プレポリマーが反応して3次元の網目構造を有する弾性体である。また、他にも株式会社ソテック(千葉県市川市原木)より提供されている「クレージーラバー」を用いることができる。これらシール材は、高弾性ゴムシール材や高接着高弾性シール材と称される。
【0039】
前記「ゼニスタフシール」は、水酸基末端ポリブタジエンを主成分とするゴム弾性体であり、水酸基末端ポリブタジエンを主成分とする主剤(基剤)と、硬化剤とを混合して使用される。主剤に対して、硬化剤は重量で10%程度混合され、これら主剤と硬化剤に加え、必要に応じて溶剤としてのプライマーが用いられる。前記硬化剤には、イソシアネート化合物であるトリレンジイソシアネート(TDI)と、ポリブタジエンとノルマルパラフィン塩化物などの成分を含有する。
【0040】
前記目地材35は、高弾性ゴムシール材からなり、高弾性ゴムシール材の引張接着強さ、はく離接着強さを利用した継手構造を採用することにより、組積みされた上下の筒体2,2間の変位を効果的に抑制することができる。
【0041】
前記「ゼニスタフシール」の硬化物の物性を下記の表1及び表2により説明する。
【0042】
【0043】
上記表1に示す試験方法により得られた「ゼニスタフシール」の試験結果を下記の表2に示す。項目は、左から引張強さ(MPa)、破断時伸び(%)、弾性率(MPa)、硬さ(JIS-A)であり、それぞれ5回の試験を行い、これら5回の試験の平均値と中央値を示している。
【0044】
尚、引張強さ(MPa)、破断時伸び(%)は、JISK6251に準拠して、試験温度23°Cで、「ゼニスタフシール」を23°Cで28日養生した厚さ2mmのダンベル状3号形を用いた試験により測定して得たものであり、弾性率(MPa)、硬さ(JIS-A)はJISK6253に準拠して、測定により得られたものであり、それらの中央値を用いている。
【0045】
【0046】
目地材35は、引張強さが0.49MPa以上、好ましくは0.784MPa以上とすれば、引張強さが大きな目地材35により上下の筒体2,2間の変位を効果的に抑制することができる。即ち、目地材に係るJISA5754-1975(建築用ポリサルファイドシーリング材)では、シーリング材は引張接着強さが9.8N/cm2(0.098MPa)以上に合格しなければならない、とされているのに対して、0.49MPaは0.098MPaの5倍以上であり、0.784MPaは0.098MPaの8倍以上であり、高い引張強さを有するものとなり、その高弾性により筒体2,2間の変位を抑制すると共に、加わる力を吸収することができる。
【0047】
また、目地材35は、破断時伸びが400%以上、好ましくは、500%以上であれば、高い伸びと弾性復元力を有するものとなり、上下の筒体2,2間の変位を効果的に抑制することができる。この例では、目地材35の充填性等を考慮して充填空間37の上下幅Wを、30mm以下としているが、その上下幅Wを20mmに設定すれば、前記「地震動レベル2」の目開き量70mmに対して、70mm/20mm=3.5となり、破断時伸びが400%以上であれば、「地震動レベル2」でも目地材35が破断することがない。また、充填空間37の上下幅Wを15mmに設定すれば、前記「地震動レベル2」の目開き量70mmに対して、70mm/15mm=4.67となり、破断時伸びが500%以上であれば、「地震動レベル2」でも目地材35が破断することがない。また、一般的な溝状の充填空間37の上下幅で施工できると共に、充填した目地材35により筒体2,2間の変位を抑制すると共に、加わる力を吸収することができる。
【0048】
さらに、弾性率は、目地材35の変形のし難さ、言い換えれば変形に必要なエネルギーに対応するから、0.609MPa以上、好ましくは0.973MPa以上であれば、上下の筒体2,2間の変位を効果的に抑制することができると共に、目開きの際のエネルギーを吸収することができる。尚、それら弾性率の数値は、弾性率の中央値(1.39)を前記引張強さの中央値(1.12)で割ったものを、前記引張強さで記載した(0.49)と(0.784)に掛けた値である。
【0049】
また、本実施例の継手構造では、挿し口部21の長さは一例として180mmであり、地震時の可撓性が向上し、レベル1地震時の目開き量20mm、レベル2地震時の目開き量70mm、最大抜出し時の目開き量140mmに対応可能となる。また、この最大抜出し時の目開き量140mmは、レベル2地震時の目開き量70mmに対して2倍の安全率を有する長さとなる。さらに、大深度の0.6MPaの高水圧に耐えるリング状の止水パッキン23により水密性が確保され、伸び能力に優れる高弾性ゴムシール材により地震時における継手の局部的な抜出しを抑制することができる。
【0050】
次に、前記継手構造の施工方法について説明する。マンホール1を構築する立坑41(
図11)内に、下の筒体2を据え付けた後、地上から上の筒体2を吊り下し、挿し口部21に受け口部13を外嵌して接続する。この場合、筒体2と立坑41の間に作業員が入る必要がなく、作業員は筒体2内で作業できるため、作業のために立坑41を大きく形成する必要が無い。したがって、立坑41の開削コストを大幅に削減することができる。
【0051】
このようにして上下の筒体2,2を組積みし後、溝部31に目地材35を充填し、目地材35が硬化して下端面3と上端面4が接着される。この場合も、目地材35の充填作業を筒体2内で行うことができる。したがって、作業の安全性が高まる。尚、目地材35は、上端面4側の溝底面部32と下端面3に接着される。
【0052】
このようにして構築したマンホール1にあっては、マンホール1に地震力などが作用し、マンホール1が傾き、目地部5を開こうとする力が加わると、目地材35が伸びて目開きを許容すると共に、目地材35により目地部5を開く力の一部を吸収し、目地材35のない場合に比べて目開き量を抑制することができる。このように従来のシール材だけでは得られなかった目地材35の弾性復元力により、目開き時に加わる力の一部を吸収し、変位を抑制することができる。
【0053】
また、このように上下の筒体2,2の接合に、溶接やPC材緊張などの特殊作業を必要とせず、受け口部13に挿し口部21を挿入だけで、大深度に対応可能な水密性を有するマンホール1を構築できる。
【0054】
このように本実施例では、請求項1に対応して、上下方向に組積みした上下の筒体2,2間に設けられる可撓性を有するマンホール1の継手構造において、上下の筒体2,2の端面たる下端面3と上端面4の間に、伸縮性を備える弾性体からなる目地材35を設け、目地材35を上下の筒体2,2の下端面3と上端面4に接着すると共に、該目地材35により下端面3と上端面4との間の変位を抑制するように構成したから、地震などにより上下の筒体2,2の端面間を開く力が加わると、弾性体からなる目地材35が目開きを許容して伸び、この伸びに必要な力の分だけ前記開く力が吸収され、目開き量を抑制することができる。このように弾性体からなる目地材35を介して上下の筒体2,2を接着し、エネルギーを吸収して変位を抑制することができる。
【0055】
このように本実施例では、請求項2に対応して、上下の筒体2,2の端面たる下端面3と上端面4の少なくとも一方である上端面4に、溝部31を設け、溝部31に目地材35を設けたから、上下の筒体2,2の下端面3と上端面4を目地材35により接着することができ、また、溝部31の上下寸法だけ目地材35の上下長さを確保することができる。
【0056】
このように本実施例では、請求項3に対応して、上下の筒体2,2の一方の端面たる下端面3側に受け口部13を設けると共に、他方の端面たる上端面4側に受け口部13に挿入する挿し口部21を設けたから、受け口部13に挿し口部21を挿入して上下の筒体2,2を接続することより、筒体2の外部での作業が不要となり、立坑41の大きさ寸法を抑えることができる。
【0057】
このように本実施例では、請求項4に対応して、挿し口部21と受け口部13の間に止水部材たる止水パッキン23を設け、この止水パッキン23を目地材35より筒体2の外周面側に設けたので、外部からの水の侵入を防止できる。
【0058】
このように本実施例では、請求項5に対応して、挿し口部21が下向きであるから、外部からの土砂の侵入を防止できる。
【0059】
このように本実施例では、請求項6に対応して、請求項1記載のマンホール1の継手構造を設ける施工方法において、上下の筒体2,2を重ね合わせた後、筒体2の内側から上下の筒体2,2の端面たる下端面3と上端面4の間に目地材35を設けるから、筒体2の外側での作業が不要となる。
【0060】
以下、実施例上の効果として、溝部31の溝内周面部33には、目地材35が接着することを防止するため、接着防止材36が設けられているから、目地材35を下端面3と上端面4のみに接着することができる。また、目地材35は、環状に設けた溝部31に環状に設けられるから、周方向に均一に接着することができる。
【0061】
また、筒体2の内径が例えば2000~3500mmで、従来は、作業スペースを確保するため筒体と立坑の間隔を800mm程度取る必要であり、筒体の外径より1600mm程度大きな立坑41を設ける必要があったが、本実施例では、筒体2と立坑41の間隔が150mm程度以下で済み、筒体2の外径より300mm程度大きな立坑41で施工を行うことができる。このように筒体2の内径が2000~3500mmで、受け口部13と挿し口部21により筒体2,2同士を接合することにより、筒体2の外周面2Gと立坑の間隔を150mm以下にすることができ、言い換えると筒体2の外径と立坑の直径との差を300mm以下にすることができ、これによりマンホール1の施工において、地上の道路占用面積が減少でき、また、施工用のクレーン車の作業半径を小さくでき、また、排出土量が減少でき、また、埋め戻し土量(土砂、改良土等)を減少できる。
【0062】
また、挿し口部21の長さLが、レベル2地震時の目開き量70mmの1.5倍である105mm以上である140mm、好ましくはその2倍である140mm以上の180mmであるから、地震に対応した目開き量を確保することができる。
【0063】
また、目地材35を硬化養生期間23℃で28日経過後に得られたダンベル状3号形の試験片を、JISK6251により準拠して測定した試験温度23℃、引張速度500mm/分の引張強さが0.49MPa以上、好ましくは0.784MPa以上とすれば、目地材35の高弾性により上下の筒体2,2間の変位を効果的に抑制することができる。
【0064】
また、目地材35は、JISK6251により準拠して測定した試験温度23℃、硬化養生期間23℃で28日、引張速度500mm/分の破断時伸びが400%以上、好ましくは、500%以上であるから、高い伸びと弾性復元力を有するものとなり、上下の筒体2,2間の変位を効果的に抑制することができる。
【0065】
また、充填空間37の上下幅方向の寸法を15mm以上、30mm以下とすると共に、目地材35の破断時伸びを500%以上、好ましくは、充填空間37の上下幅方向の寸法を20mm以上、30mm以下とすると共に、目地材35の破断時伸びを400%以上としたから、「地震動レベル2」における目開き量70mmで目地材35が破断することなく、「地震動レベル2」に対応することができると共に、充填作業性を良好に行うことができる。この場合、目地材35の充填作業性を考慮して、深さDを15mm以上、30mm以下とすることが好ましい。
鋼管からなるカラー11は、中央側内周に内鍔部51が設けられ、この内鍔部51はリング状の鋼板からなり、その内鍔部51の位置からカラー11の一端までの長さが、内鍔部51からカラー11の他端まで長さより長くなるように、カラー11に対して内鍔部51が一体として形成されている。
また、カラー11の一端側が前記受け口部13であって、上下一方の筒体2の端部が挿入接続され、カラー11の他端側が上下他方の筒体2の端部に固定され、この例では、下の筒体2の上端に、カラー11の他端側である下端側11Kが固定される。また、受け口部13の先端内周面には、斜めの面取り部13Aが設けられ、カラー11の下端側11Kの先端内周面には、斜めの面取り部13Aが設けられている。
尚、内鍔部51を一体に設けたカラー11は、周方向に分割され、例えば2分割された分割カラー11B,11Bを現場で溶接などにより組み立てて使用する。こうすることにより一体物では運搬できない大径のものでも、現場に運搬し、組み立てて施工することができる。
上の筒体2の下端には、その中央側の外周面2Gより径小な前記挿し口部21が形成され、この挿し口部21が前記受け口部13に挿入接続される。前記挿し口部21の外周面には、下端面3側に前記パッキン装着溝22が環状に形成され、このパッキン装着溝22に前記止水パッキン23が固定されている。
下の筒体2の上端には、その中央側の外周面2Gより径小な径小部52が形成され、この径小部52の先端側(上端側)の外周面には前記パッキン装着溝22が形成され、このパッキン装着溝22に止水パッキン23が固定されている。
また、下の筒体2の上端面4には、ナット体53がインサート成形により設けられ、下の筒体2の径小部52をカラー11の下端側11Aに挿入すると共に、上端面4に内鍔部51を重ね合わせた状態で、内鍔部51に挿通した固定用ボルト54を、前記ナット体53に螺合することにより、下の筒体2の上端面4にカラー11を固定している。尚、前記上端面4に接着剤55を塗布した後に前記内鍔部51を重ね合わせて接着している。また、前記クッション材6は、内鍔部51の上面に接着などにより取り付けられている。
次に、前記継手構造の施工方法について説明する。2分割された分割筒体2B,2Bを現場で組み立てて筒体2を形成し、2分割された分割カラー11B,11Bを現場で組み立ててカラー11を形成し、このカラー11を筒体2に取り付ける。
マンホール1を構築する立坑41内に、下の筒体2を据え付けた後、地上から上の筒体2を吊り下し、受け口部13に挿し口部21を内嵌して接続し、接続後、溝部31に目地材35を充填する。
このように本実施例でも、上記実施例1と同様な作用効果を奏する。また、この例では、筒体2及びカラー11を分割することにより、大径な筒体2を用いて施工することができる。