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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109314
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】波長可変干渉フィルター
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20240806BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G02B26/00
B81B3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014038
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 朗
【テーマコード(参考)】
2H141
3C081
【Fターム(参考)】
2H141MA22
2H141MB28
2H141MC06
2H141MD02
2H141MD04
2H141ME01
2H141ME24
2H141MF22
2H141MF24
2H141MF28
2H141MZ25
3C081AA07
3C081AA09
3C081BA02
3C081BA28
3C081BA45
3C081BA48
3C081BA53
3C081CA15
3C081CA32
3C081DA06
3C081DA44
3C081EA07
(57)【要約】
【課題】ダイアフラム部の剛性を低減できる波長可変干渉フィルターを提供する。
【解決手段】波長可変干渉フィルター1は、第1反射膜41が設けられた第1基板2と、第1反射膜41に対してギャップGを介して対向する第2反射膜42が設けられた第2基板3と、を備え、第1基板2は、第1反射膜41が設けられた部位である可動部24と、可動部24を囲うダイアフラム部25と、ダイアフラム部25を介して可動部24を厚み方向に変位可能に支持する基部26と、を備え、ダイアフラム部25は、第1基板2の表面に開口する溝23により、第1基板2の厚みが基部26よりも薄く形成された部位であり、溝23の底部23Bの幅W2は、溝23の開口23Aの幅W1よりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反射膜が設けられた第1基板と、
前記第1反射膜に対してギャップを介して対向する第2反射膜が設けられた第2基板と、を備え、
前記第1基板は、
前記第1反射膜が設けられた部位である可動部と、
前記可動部を囲うダイアフラム部と、
前記ダイアフラム部を介して前記可動部を前記第1基板の厚み方向に変位可能に支持する基部と、を備え、
前記ダイアフラム部は、前記第1基板の表面に開口する溝により、前記第1基板の厚みが前記基部よりも薄く形成された部位であり、
前記溝の幅方向において、前記溝の底部の幅は、前記溝の開口の幅よりも大きい、波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
前記溝は、
前記第1基板の前記表面に開口する縦溝と、
前記縦溝内に面する前記可動部の側壁に開口する第1横溝と、
前記縦溝内に面する前記基部の側壁に開口し、前記第1横溝に対して前記溝の幅方向に対向する第2横溝と、を含み、
前記溝の前記底部の幅は、前記第1横溝の底部から前記第2横溝の底部までの距離に相当する、請求項1に記載の波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
前記溝の幅方向において、前記第2横溝の深さは、前記第1横溝の深さよりも大きい、請求項2に記載の波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
前記第1横溝の前記底部および前記第2横溝の前記底部は、それぞれ、前記溝の幅方向および前記第1基板の厚み方向に沿った断面においてR形状を成している、請求項2に記載の波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
前記第1基板の前記基部の前記第2基板側とは反対側の面に設けられた第1電極と、
前記可動部に対向するように前記第2基板に設けられた第2電極と、をさらに備え、
前記第1基板は、前記第1電極に電気的に接続される導電性を有する、請求項1に記載の波長可変干渉フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の反射膜間のギャップを変更することで分光波長を可変にする波長可変干渉フィルターが知られている。例えば、特許文献に記載の波長可変干渉フィルターは、第1反射膜が設けられた第1基板と、第1反射膜にギャップを介して対向する第2反射膜が設けられた第2基板と、ギャップを変更するためのアクチュエーターと、を備える。
【0003】
このような波長可変干渉フィルターにおいて、第1基板は、反射膜が設けられた部位である可動部と、可動部の周囲を囲うダイアフラム部と、を備える。ここで、ダイアフラム部は、第1基板に形成された溝により薄肉化された部位であり、ダイアフラム部が変形しながら可動部が第2基板側に移動することによりギャップが変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-50102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のような波長可変干渉フィルターの第1基板において、ダイアフラム部の剛性は、第1基板に形成される溝の幅に関係している。ダイアフラム部の剛性を低減させることができると、ギャップを変更するためのアクチュエーターに必要な電力を低減できるという利点がある。しかし、ダイアフラム部の剛性を低減させるために、第1基板に形成される溝の幅を単に広げた場合、一対の反射膜によるフィルター領域が小さくなったり、波長可変干渉フィルターの全体が大きくなったりといった問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る波長可変干渉フィルターは、第1反射膜が設けられた第1基板と、前記第1反射膜に対してギャップを介して対向する第2反射膜が設けられた第2基板と、を備え、前記第1基板は、前記第1反射膜が設けられた部位である可動部と、前記可動部を囲うダイアフラム部と、前記ダイアフラム部を介して前記可動部を前記第1基板の厚み方向に変位可能に支持する基部と、を備え、前記ダイアフラム部は、前記第1基板の表面に開口する溝により、前記第1基板の厚みが前記基部よりも薄く形成された部位であり、前記溝の幅方向において、前記溝の底部の幅は、前記溝の開口の幅よりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態の波長可変干渉フィルターを示す断面図。
図2】第1実施形態の波長可変干渉フィルターを示す平面図。
図3】第1実施形態の波長可変干渉フィルターの製造方法を説明するフロー図。
図4】第2実施形態の波長可変干渉フィルターを示す断面図。
図5】第3実施形態の分光カメラの概略構成を示すブロック図。
図6】第3実施形態の波長可変干渉フィルターと周辺要素とを模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
以下、第1実施形態の波長可変干渉フィルターについて説明する。
【0009】
[波長可変干渉フィルター1の全体構成]
図1は、第1実施形態の波長可変干渉フィルター1を示す断面図であり、図2は、波長可変干渉フィルター1を示す平面図である。図1は、図2のA-A線矢視断面図に相当する。この波長可変干渉フィルター1は、外部から入力される駆動電圧に応じて透過波長を変更可能な分光フィルターである。
【0010】
本実施形態の波長可変干渉フィルター1は、図1および図2に示すように、互いに対向配置された第1基板2および第2基板3と、第1基板2に設けられた第1反射膜41および第1電極51と、第2基板3に設けられた第2反射膜42および第2電極52と、を備える。
【0011】
なお、以下の説明では、第1基板2から第2基板3に向かう方向をZ方向とし、Z方向に直交する一方向をX方向とし、Z方向およびX方向に直交する方向をY方向とする。Z方向は、第1基板2の厚み方向に相当する。
【0012】
第1基板2および第2基板3は、それぞれ、光を透過可能な材料により形成される。本実施形態において、第1基板2および第2基板3は、それぞれ、光を透過可能なシリコン基板であり、導電性を有する。第1基板2および第2基板3は、互いの間にキャビティーCを形成する構造物として一体的に構成される。
【0013】
第1基板2は、第2基板3に対向する第1面21と、第1面21とは反対側の面である第2面22とを有する。第1基板2をZ方向に見たとき、第1基板2の第2面22には、第1反射膜41を囲う環状の溝23が形成されている。これにより、第1基板2は、第1反射膜41が設けられた部位である可動部24と、可動部24を囲うダイアフラム部25と、ダイアフラム部25を介して可動部24をZ方向に変位可能に支持する基部26とを備える。ダイアフラム部25は、第1基板2の溝23により、第1基板2の厚みが基部26および可動部24よりも薄く形成された部位である。なお、第1基板2の第1面21には、ダイアフラム部25が第2基板3側に突出するよう若干の段差が形成されている。
【0014】
第2基板3は、第1基板2に対向する第1面31と、第1面31とは反対側の面である第2面32とを有する。第2基板3の第1面31の中央部には、凹部311が形成されている。これにより、第2基板3は、底部33と、底部33から環状に突出する側壁部34とを有する。また、第2基板3の凹部311内の空間は、第1基板2と第2基板3との間のキャビティーCに相当する。底部33および側壁部34には、絶縁層35,36がそれぞれ形成されている。また、側壁部34は、絶縁層36および接合層11を介して、第1基板2の基部26に接合されている。
【0015】
第1反射膜41は、第1基板2の可動部24に設けられ、第2反射膜42は、第2基板3の底部33に設けられ、第1反射膜41および第2反射膜42は、ギャップGを介して互いに対向している。このギャップGの寸法は、波長可変干渉フィルター1を透過する光の波長に対応する。なお、波長可変干渉フィルター1をZ方向から見たとき、第1反射膜41および第2反射膜42が互いに対向する領域は、波長可変干渉フィルター1のフィルター領域となる。
【0016】
第1反射膜41および第2反射膜42としては、Ag等の金属膜や、Ag合金等の合金膜を用いることができる。また、第1反射膜41および第2反射膜42として、TiO等の高屈折層とSiO等の低屈折層とを交互に積層することで構成された誘電体多層膜を用いてもよい。
【0017】
本実施形態において、第1電極51は、第1基板2の基部26の第2面22に設けられている。この第1電極51は、基部26の第2面22に広く設けられるように、溝23を囲う環状に形成されている。本実施形態の第1基板2は、導電性を有するシリコン基板であるため、第1電極51と同電位に維持される。
【0018】
第2電極52は、可動部24に対向するように、第2基板3の底部33に対して絶縁層35を介して設けられている。また、第2電極52は、第2反射膜42を囲うように環状に形成されている。なお、図示は省略するが、第2電極52は、第2基板3に形成される引出配線または貫通配線を介して、キャビティーCの外側に配置される電極端子に電気的に接続される。
【0019】
以上の構成を有する波長可変干渉フィルター1では、第1電極51および第2電極52の一方がグランドに接地され、他方に駆動電圧が入力されることで、第1基板2と第2電極52との間に静電引力が作用する。これにより、可動部24が第2電極52に向かってZ方向に変位し、ギャップGが変更される。すなわち、本実施形態では、第1基板2および第2電極52がギャップGを変更するためのアクチュエーターとして機能する。
【0020】
[第1基板2の詳細構成]
本実施形態において、第1基板2に形成される上述の溝23は、図2に示すように、第1基板2の表面である第2面22に開口しつつ可動部24を囲うように環状に延伸している。ここで、溝23の幅方向(以下、溝幅方向と称する)は、Z方向および溝23の延伸方向のそれぞれに直交する方向であって、溝23の延伸方向における位置ごとに決定される。溝23の開口23Aは、図1に示すように、溝幅方向の幅W1を有する。
【0021】
また、本実施形態の溝23は、第1基板2の第2面22に開口する縦溝231と、縦溝231の内面にそれぞれ開口し、溝幅方向に互いに対向する第1横溝232および第2横溝233を含む。
【0022】
縦溝231は、第1基板2の第2面22に開口し、Z方向に深さを有する。第1基板2の第2面22における縦溝231の開口は、溝23の開口23Aに相当し、縦溝231の溝幅は、溝23の開口幅W1に等しい。
【0023】
第1横溝232は、縦溝231内に面する可動部24の側壁241に開口し、縦溝231に対する溝幅方向の一方側に深さDs1を有する。第2横溝233は、縦溝231内に面する基部26の側壁261に開口し、縦溝231に対する溝幅方向の他方側に深さDs2を有する。第1横溝232および第2横溝233は、それぞれ、縦溝231の底部に隣接する位置、すなわちダイアフラム部25にZ方向に隣接する位置に形成される。
【0024】
なお、第1基板2をZ方向に見たとき、第1横溝232は、第1反射膜41に重ならないように、第1反射膜41の外側に配置されることが好ましい。
また、本実施形態では、第1横溝232および第2横溝233の各深さDs1,Ds2は、互いに等しく、第1横溝232および第2横溝233の各幅は、特に限定されない。
【0025】
ここで、溝23の底部23Bの幅W2は、第1横溝232の底部232Bから第2横溝233の底部233Bまでの距離に相当する。換言すると、溝23の底部23Bの幅W2は、溝23の開口23Aの幅W1に対して、第1横溝232の深さDs1および第2横溝233の深さDs2を加えた寸法を有する。このような構成において、溝23の底部23Bの幅W2は、溝23の開口23Aの幅W1よりも大きい。
また、ダイアフラム部25は、溝23の底部23Bを含む部位であるため、溝幅方向のダイアフラム部25の幅は、溝23の底部23Bの幅W2に相当する。すなわち、溝幅方向のダイアフラム部25の幅W2は、溝23の開口23Aの幅W1よりも大きい。
【0026】
また、第1横溝232の底部232Bおよび第2横溝233の底部233Bは、それぞれ、溝幅方向およびZ方向に沿った断面においてR形状を成している。なお、図1での詳細な図示は省略されるが、各底部232B,233Bの形状は、後述する製造方法で残留するストップ層27(図3参照)によって形成される。
【0027】
[波長可変干渉フィルター1の製造方法]
次に、本実施形態の波長可変干渉フィルター1の製造方法の例について、図3を参照して簡単に説明する。
まず、図3の1段目に示すように、第1基板2の母材となる基板母材20の第1面201に対して、SiO等のストップ層27をパターン成形する。なお、ストップ層27の形成領域は、図1における溝23の底部23Bの領域に対応する。
【0028】
次に、ストップ層27が形成された基板母材20の第1面201に対して、当該基板母材20と同様の材料を成膜する。これにより、図3の2段目に示すように、ダイアフラム部25に対応する部位がストップ層27上に形成される。
【0029】
その後、基板母材20の第2面202におけるストップ層27の直上領域に対して、ストップ層27に到達するまでドライエッチングを行う。これにより、図3の3段目に示すように、縦溝231の大部分が形成される。
【0030】
次に、基板母材20に対してウェットエッチングを行い、基板母材20からストップ層27を除去する。これにより、縦溝231の底部分と、第1横溝232および第2横溝233とが形成される。そして、第1反射膜41をパターン成形することにより、図3の4段目に示すような第1基板2が形成される。
【0031】
最後に、第1基板2の基部26と、別途形成された第2基板3の側壁部34とのそれぞれに対して接合層11を形成し、常温活性化接合等により接合する。そして、第1基板2に第1電極51をパターン成形することにより、図3の5段目に示すように、波長可変干渉フィルター1が製造される。
【0032】
なお、基板母材20は、複数の第1基板2に対応する領域を含んだチップであってもよい。この場合、基板母材20における各領域に上述の各工程を実施し、複数の第2基板3を含むチップを接合した後、ダイシング等で分割してもよい。
【0033】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の波長可変干渉フィルター1において、第1基板2のダイアフラム部25は、第1基板2の表面に開口する溝23により、第1基板2の厚みが基部26よりも薄く形成された部位であり、溝幅方向において、溝23の底部23Bの幅W2は、溝23の開口23Aの幅W1よりも大きい。
このような構成によれば、溝23の開口23Aの幅W1を抑えつつ、溝23の底部23Bの幅W2、すなわちダイアフラム部25の幅W2を拡大させることができる。これにより、第1反射膜41および第2反射膜42によるフィルター領域を小さくせず、かつ、波長可変干渉フィルター1の全体を大きせずに、ダイアフラム部25の剛性を低減させることができる。その結果、ギャップGを変更するためのアクチュエーターに必要な電力を低減できる。
【0034】
本実施形態において、溝23は、縦溝231、第1横溝232および第2横溝233を含み、溝23の底部23Bの幅は、第1横溝232の底部232Bから第2横溝233の底部233Bまでの距離に相当する。
このような構成によれば、光の通り道となる可動部24が溝23により削られる範囲を抑えつつ、ダイアフラム部25の剛性を好適に低減できる。
【0035】
本実施形態において、第1横溝232の底部232Bおよび第2横溝233の底部233Bは、それぞれ、溝幅方向およびZ方向に沿った断面においてR形状を成している。
このような構成によれば、ダイアフラム部25と可動部24または基部26との境界部において、ダイアフラム部25が変形する際の応力が集中することを抑制できる。これにより、ダイアフラム部25の耐久性を向上できる。
【0036】
本実施形態の波長可変干渉フィルター1は、第1基板2の基部26の第2面22に設けられた第1電極51と、可動部24に対向するように第2基板3に設けられた第2電極52と、をさらに備え、第1基板2は、第1電極51に電気的に接続される導電性を有する。
このような構成では、第1電極51または第2電極52に駆動電圧を入力することで、第1基板2および第2電極52は、ギャップGを変更するためのアクチュエーターとして機能する。ここで、第1基板2では、溝23の開口23Aの幅W1が抑えられているため、基部26の第2面22が広く確保され、第1電極51を基部26の第2面22に広く形成することができる。第1電極51の電極面積を広くすることにより、第1電極51の電気抵抗を低減できる。これにより、アクチュエーターで消費される電力をより好適に低減できる。
【0037】
[第2実施形態]
第2実施形態の波長可変干渉フィルター1Aは、溝23の構成以外、第1実施形態の波長可変干渉フィルター1と同様の構成を有する。具体的には、図4に示すように、第2実施形態の溝23において、第2横溝233の深さDs2は、第1横溝232の深さDs1よりも大きく形成される。
このような第2実施形態では、光の通り道となる可動部24が溝23により削られる範囲を抑えつつ、ダイアフラム部25の剛性をより好適に低減できる。
【0038】
また、第2実施形態では、可動部24が第2基板3側に変位する際、第1横溝232の開口幅が小さくなり、かつ、第2横溝233の開口幅が大きくなるように、ダイアフラム部25が変形する。よって、第2横溝233の深さDs2が第1横溝232の深さDs1よりも大きいことにより、ダイアフラム部25の剛性を効率的に低減できる。
【0039】
[第3実施形態]
図5は、第3実施形態に係る分光カメラ10の概略構成を示すブロック図である。第3実施形態に係る分光カメラ10は、例えばプリンターやプロジェクター、またはドローンなどの各種機器に組み込まれて利用可能であり、測定対象の2次元分光スペクトルや色度などを取得可能である。
【0040】
分光カメラ10は、図5に示すように、測定対象で反射された測定光を集光する集光レンズ6と、第1実施形態とほぼ同様の構成を有する波長可変干渉フィルター1Bと、波長可変干渉フィルター1を透過した光を受光する受光部7と、フィルター駆動部8と、制御部9とを備える。
【0041】
集光レンズ6は、例えば1以上のレンズにより構成される。
受光部7は、例えばCCDやCMOS等のイメージセンサーであり、受光量に応じた受光信号を制御部9に出力する。
フィルター駆動部8は、波長可変干渉フィルター1Bを駆動する回路であり、第1電極51または第2電極52に駆動電圧を入力する。
制御部9は、外部から指示される目標波長などに応じて、フィルター駆動部8に駆動指令を出力する。
【0042】
分光カメラ10において、波長可変干渉フィルター1Bは、制御部9に制御されたフィルター駆動部8の駆動電圧に応じて、分光波長を変更できる。また、分光カメラ10は、測定対象で反射された測定光を集光レンズ6で集光しつつ波長可変干渉フィルター1Bに導き、波長可変干渉フィルター1Bで分光された測定光を受光部7で受光することで、測定対象を分光撮像できる。
【0043】
なお、本実施形態の波長可変干渉フィルター1Bは、ギャップGを変更するためのアクチュエーターに関して、第1実施形態とは異なる構成を有する。具体的には、図6に示すように、第1電極51は、第2電極52に対向するように第1基板2に設けられている。また、第1基板2および第2基板3は、導電性を有さず、各種ガラスや水晶等により形成される。また、第1実施形態の絶縁層35,36が省略されてもよい。
このような構成では、第1電極51および第2電極52の一方がグランドに接地され、他方に駆動電圧が入力されることで、第1電極51と第2電極52との間に静電引力が作用する。すなわち、本実施形態では、第1電極51および第2電極52がギャップGを変更するためのアクチュエーターとして機能する。
さらに、本実施形態の波長可変干渉フィルター1Bは、第1反射膜41と第2反射膜42との間のギャップGの寸法を検出する容量検出部をさらに備えてもよい。
【0044】
第3実施形態の分光カメラ10では、図6に示すように、集光レンズ6と受光部7との間で測定光の通り道となる可動部24を広く確保しつつ、ダイアフラム部25の剛性を好適に低減できる。特に、可動部24を広く確保することで、集光レンズ6で集光される測定光が可動部24の側壁241で反射してしまうことを抑制できる。その結果、受光部7で受光可能な光量を増やすことができる。
【0045】
なお、第3実施形態の分光カメラ10は、波長可変干渉フィルター1Bではなく、第1実施形態の波長可変干渉フィルター1または第2実施形態の波長可変干渉フィルター1Aを備えてもよい。
【0046】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0047】
[変形例1]
上記第1実施形態では、第2横溝233の深さDs2が第1横溝232の深さDs1と等しく、上記第2実施形態では、第2横溝233の深さDs2が第1横溝232の深さDs1よりも大きいが、第2横溝233の深さDs2は、第1横溝232の深さDs1よりも小さくてもよい。
【0048】
[変形例2]
上記各実施形態の溝23は、縦溝231、第1横溝232および第2横溝233を含むが、これに限定されない。すなわち、溝23は、底部23Bの幅W2が開口23Aの幅W1よりも大きい形状であれば、他の形状を有してもよい。例えば、溝23は、第1横溝232および第2横溝233のいずれか一方を含むように形成されてもよい。また、溝23は、底部23Bから開口23Aにかけて溝幅が徐々に小さくなるテーパー形状を有してもよい。この場合、第1横溝232および第2横溝233は共に省略されてもよい。
【0049】
[変形例3]
上記各実施形態の溝23は、第1基板2の表面である第2面22に開口するように形成されるが、第1基板2の表面である第1面21に開口するように形成されてもよい。この場合も、上記各実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0050】
[変形例4]
前記各実施形態の波長可変干渉フィルター1,1A,1Bにおいて、第1基板2をZ方向に見たとき、ダイアフラム部25は、円環形状を有するが、これに限られない。例えば、ダイアフラム部25は、可動部24を囲うように配置されればよく、外形が矩形となる環形状を有してもよいし、第1基板2の貫通孔により断続的となる環形状を有してもよい。
【0051】
[変形例5]
前記各実施形態の波長可変干渉フィルター1,1A,1Bは、所望の波長の光を透過させる透過型分光フィルターであるが、所望の波長の光を反射させる反射型分光フィルターであってもよい。
【0052】
[変形例6]
前記各実施形態の波長可変干渉フィルター1,1A,1Bの製造方法は、上記第1実施形態で説明した方法に限定されず、任意の方法により製造可能である。
【0053】
[本開示のまとめ]
本開示に係る波長可変干渉フィルターは、第1反射膜が設けられた第1基板と、前記第1反射膜に対してギャップを介して対向する第2反射膜が設けられた第2基板と、を備え、前記第1基板は、前記第1反射膜が設けられた部位である可動部と、前記可動部を囲うダイアフラム部と、前記ダイアフラム部を介して前記可動部を前記第1基板の厚み方向に変位可能に支持する基部と、を備え、前記ダイアフラム部は、前記第1基板の表面に開口する溝により、前記第1基板の厚みが前記基部よりも薄く形成された部位であり、前記溝の幅方向において、前記溝の底部の幅は、前記溝の開口の幅よりも大きい。
このような構成によれば、溝の開口の幅を抑えつつ、溝の底部の幅、すなわちダイアフラム部の幅を拡大させることができる。これにより、第1反射膜および第2反射膜によるフィルター領域を小さくせず、かつ、波長可変干渉フィルターの全体を大きせずに、ダイアフラム部の剛性を低減させることができる。その結果、ギャップを変更するためのアクチュエーターに必要な電力を低減できる。
【0054】
本開示に係る波長可変干渉フィルターにおいて、前記溝は、前記第1基板の前記表面に開口する縦溝と、前記縦溝内に面する前記可動部の側壁に開口する第1横溝と、前記縦溝内に面する前記基部の側壁に開口し、前記第1横溝に対して前記溝の幅方向に対向する第2横溝と、を含み、前記溝の前記底部の幅は、前記第1横溝の底部から前記第2横溝の底部までの距離に相当することが好ましい。
このような構成によれば、光の通り道となる可動部が溝により削られる範囲を抑えつつ、ダイアフラム部の剛性を好適に低減できる。
【0055】
本開示に係る波長可変干渉フィルターでは、前記溝の幅方向において、前記第2横溝の深さは、前記第1横溝の深さよりも大きいことが好ましい。
このような構成によれば、ダイアフラム部の剛性を効率的に低減できる。
【0056】
本開示に係る波長可変干渉フィルターにおいて、前記第1横溝の前記底部および前記第2横溝の前記底部は、それぞれ、前記溝の幅方向および前記第1基板の厚み方向に沿った断面においてR形状を成していることが好ましい。
このような構成によれば、ダイアフラム部と可動部または基部との境界部において、ダイアフラム部が変形する際の応力が集中することを抑制できる。これにより、ダイアフラム部の耐久性を向上できる。
【0057】
本開示に係る波長可変干渉フィルターは、前記第1基板の前記基部の前記第2基板側とは反対側の面に設けられた第1電極と、前記可動部に対向するように前記第2基板に設けられた第2電極と、をさらに備え、前記第1基板は、前記第1電極に電気的に接続される導電性を有することが好ましい。
このような構成では、第1電極または第2電極に駆動電圧を入力することで、第1基板および第2電極は、ギャップを変更するためのアクチュエーターとして機能する。ここで、第1基板では、溝の開口の幅が抑えられているため、基部の第2面が広く確保され、第1電極を基部の第2面に広く形成することができる。第1電極の電極面積を広くすることにより、第1電極の電気抵抗を低減できる。これにより、アクチュエーターで消費される電力をより好適に低減できる。
【符号の説明】
【0058】
1,1A,1B…波長可変干渉フィルター、10…分光カメラ、11…接合層、2…第1基板、21…第1面、22…第2面、23…溝、231…縦溝、232…第1横溝、232B…底部、233…第2横溝、233B…底部、23A…開口、23B…底部、24…可動部、241…側壁、25…ダイアフラム部、26…基部、261…側壁、27…ストップ層、20…基板母材、201…第1面、202…第2面、3…第2基板、31…第1面、311…凹部、32…第2面、33…底部、34…側壁部、35…絶縁層、36…絶縁層、41…第1反射膜、42…第2反射膜、51…第1電極、52…第2電極、6…集光レンズ、7…受光部、8…フィルター駆動部、9…制御部、C…キャビティー、G…ギャップ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6