(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109316
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】フライトコンベア
(51)【国際特許分類】
D04H 1/4226 20120101AFI20240806BHJP
C03C 13/00 20060101ALI20240806BHJP
C03B 37/00 20060101ALI20240806BHJP
B65G 19/22 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
D04H1/4226
C03C13/00
C03B37/00
B65G19/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014041
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】313012349
【氏名又は名称】旭ファイバーグラス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】江川 知史
(72)【発明者】
【氏名】仁部 孝行
(72)【発明者】
【氏名】本郷 倭
【テーマコード(参考)】
3F013
4G021
4G062
4L047
【Fターム(参考)】
3F013BA00
3F013BB11
3F013BB12
4G021AA00
4G062AA01
4G062AA05
4G062BB01
4G062NN29
4G062NN40
4L047AA05
4L047AB02
4L047AB07
4L047EA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、フライトへの繊維の付着を低減したフライトコンベアを提供することを目的とする。
【解決手段】ガラス繊維を集綿するためのフライトコンベアであり、主面がフライトコンベアの進行方向に対して平行となるように備えられた、厚み3~4mmの平板状のフライトを有し、フライトは厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有し、複数の貫通孔の開口形状は直径が8mm未満の略円形状であり、複数の貫通孔によるフライトの開口率は40~60%であり、フライトの上方から下方へと複数の貫通孔を通して空気が吸引されることにより、ガラス繊維がフライト上に集綿されることを特徴とする、フライトコンベア。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス繊維を集綿するためのフライトコンベアであり、
主面が前記フライトコンベアの進行方向に対して平行となるように備えられた、厚み3~4mmの平板状のフライトを有し、
前記フライトは厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有し、前記複数の貫通孔の開口形状は直径が8mm未満の略円形状であり、
前記複数の貫通孔による前記フライトの開口率は40~60%であり、
前記フライトの上方から下方へと前記複数の貫通孔を通して空気が吸引されることにより、前記ガラス繊維が前記フライト上に集綿される
ことを特徴とする、フライトコンベア。
【請求項2】
前記複数の貫通孔が60°千鳥配列で配列されている、請求項1に記載のフライトコンベア。
【請求項3】
前記複数の貫通孔の開口形状が、直径が3~4mmの略円形状である、請求項1又は2に記載のフライトコンベア。
【請求項4】
前記フライトの表面が撥水剤でコーティングされており、
前記コーティングされたフライトの表面における水の接触角が110度以上である、請求項1又は2に記載のフライトコンベア。
【請求項5】
前記ガラス繊維の平均繊維径が5.0μm以下である、請求項1又は2に記載のフライトコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維を集綿するためのフライトコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
断熱吸音材等の素材となるグラスウールは、一般に、バインダーを塗布又は噴霧したガラス繊維を有孔コンベア上に集積してマット状にする集綿工程を経た後、バインダーを硬化させることにより製造される(例えば、特許文献1の生産ライン参照)。
集綿工程では、より具体的には、吸引装置により有孔コンベアの上方から下方へと貫通孔を通じて空気を吸引することにより、ガラス繊維を有孔コンベア上に堆積させてマット状の集綿物にする。
有孔コンベアとしては、例えば、進行方向の両側又は中央にチェーンを走らせ、そのチェーンに有孔のフライト(平板)を取り付けたフライトコンベアを用いることができる。チェーンが進行することにより、フライトがガラス繊維を集綿しながら次工程へと搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グラスウールの高性能化のためにガラス繊維を細くする技術が進むにつれ、繊維長が短くなり繊維同士の絡まりが弱くなる傾向ある。また、フライトの孔径に対して繊維長がより小さくなることにより、フライトの孔に繊維が入り込んで引っかかりやすくなり、フライト上に多くの繊維が付着して次工程に搬送されずに残留してしまい、歩留まりの低下やフライトの洗浄作業の負担増加に繋がるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、フライトへの繊維の付着を低減したフライトコンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、特定の形状及びサイズの貫通孔を、特定の開口率を有するフライトにて、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
ガラス繊維を集綿するためのフライトコンベアであり、
主面が前記フライトコンベアの進行方向に対して平行となるように備えられた、厚み3~4mmの平板状のフライトを有し、
前記フライトは厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有し、前記複数の貫通孔の開口形状は直径が8mm未満の略円形状であり、
前記複数の貫通孔による前記フライトの開口率は40~60%であり、
前記フライトの上方から下方へと前記複数の貫通孔を通して空気が吸引されることにより、前記ガラス繊維が前記フライト上に集綿される
ことを特徴とする、フライトコンベア。
[2]
前記複数の貫通孔が60°千鳥配列で配列されている、[1]に記載のフライトコンベア。
[3]
前記複数の貫通孔の開口形状が、直径が3~4mmの略円形状である、[1]又は[2]に記載のフライトコンベア。
[4]
前記フライトの表面が撥水剤でコーティングされており、
前記コーティングされたフライトの表面における水の接触角が110度以上である、[1]~[3]のいずれかに記載のフライトコンベア。
[5]
前記ガラス繊維の平均繊維径が5.0μm以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のフライトコンベア。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フライトへの繊維の付着を低減したフライトコンベアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のフライトコンベアのフライトにおける貫通孔の配列パターンの例を示す図である。
【
図2】実施例及び比較例で用いたガラス繊維マットの製造ラインの一部概略を示す模式的側面図である。
【
図3】(a)
図2の製造ラインにおいて、ガラス繊維の集綿物がフライトコンベアから次のコンベアへと移動した直後のフライトを示す概略図である。(b)(a)のフライトを写真撮影し、フライトの有孔部分のみを切り出した画像の概略図である。(c)(b)の画像を、画像解析ソフトImageJを用いて色の濃淡により二値化処理を行った二値化処理画像の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について、詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0011】
〈フライトコンベア〉
本実施形態のフライトコンベアは、ガラス繊維を集綿するためのフライトコンベアであり、ガラス繊維をフライト上に集綿し、次工程(例えば、ガラス繊維に添加したバインダーを硬化させるためのオーブン)へと搬送する。
フライトの上方から下方へ(ガラス繊維が集綿される側からその反対側へ)とフライトに設けられた複数の貫通孔を通して空気が吸引されることにより、ガラス繊維がフライト上に集綿される。
空気を吸引する手段は、特に限定されず、排気ファン等の吸引装置を用いることができる。
【0012】
フライトコンベアの進行方向は、特に限定されないが、ガラス繊維を効率よく集綿する観点から、水平方向であることが好ましい。
【0013】
[フライト]
フライトは、厚み3~4mmの平板状であり、その主面がフライトコンベアの進行方向に対して平行となるように備えられる。また、フライトは、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を有し、該複数の貫通孔の開口形状は、直径が8mm未満の略円形状である。
【0014】
フライトの厚みを貫通孔の開口の直径(開口径)に合わせて3~4mmの範囲で設定することにより、安価な方法(パンチング加工等)で貫通孔を形成することができ、コンベアの製造コストを抑えることができる。また、補強のために、フライトの裏面(ガラス繊維を集綿する側と反対側の面)にリブ等を設けてもよい。
【0015】
フライトに設けられた複数の貫通孔は、直径が8mm未満である略円形状の開口形状を有する。上記直径(開口径)は、2~6mmであることが好ましく、3~4mmであることがより好ましい。直径(開口径)が8mm未満であると、貫通孔に繊維が入り込みにくく、貫通孔への繊維の付着を良好に抑制することができる。また、繊維径が小さいガラス繊維ほど、貫通孔の開口径を小さくした方がフライトへのガラス繊維の付着がより良好に抑制される傾向にある。
なお、本開示で、略円形状とは、数学的に厳密な円形だけでなく、おおよそ円形と把握される(円形に近似可能な)形状も含むことを意味する。
【0016】
複数の貫通孔の配列(配置)パターンは、特に限定されないが、貫通孔が均一に分散していることが好ましく、例えば、
図1に示すような、格子配列、千鳥配列(45°千鳥配列、60°千鳥配列等)等であってよい。中でも、貫通孔の開口径を小さくして貫通孔への繊維の付着を抑制しつつ、貫通孔によるフライトの開口率を上げて空気の吸引力を高めることにより、ガラス繊維を良好に集綿する観点から、千鳥配列であることがより好ましく、センターピッチと対角ピッチとが等しいことにより貫通孔への繊維の付着がより抑制されることから、60°千鳥配列で配列されていることが特に好ましい。また、貫通孔を形成する際に製作誤差によりフライトの端部で孔欠けが生じるのを防ぐため、必要に応じて配列のピッチを調整してもよい。
【0017】
貫通孔の形成方法は、特に限定されず、例えば、パンチング加工、ドリリング、レーザー加工等が挙げられる。
【0018】
複数の貫通孔によるフライトの開口率は40~60%であり、好ましくは40~55%であり、より好ましくは50~55%である。開口率が40%以上であると、ガラス繊維を集綿するのに十分な吸引力が得られ、ガラス繊維をフライト上に集綿することができる。また、開口率が60%以下であると、ガラス繊維も貫通孔から排出されてしまうのを抑制することができ、歩留まりの低下を防ぐことができるとともに、ガラス繊維の集綿に十分な強度を有するフライトとなる。
なお、開口率は、以下の式により算出することができる。
開口率(%)=(複数の貫通孔の開口面積の合計/フライトの主面の面積)×100
【0019】
本実施形態のフライトコンベアは、貫通孔の開口径が8mm未満であり、かつ貫通孔による開口率が40~60%であるフライトを備えることにより、ガラス繊維の付着抑制と、集綿に十分な吸引力(吸引コンベアとしての十分な性能)の確保とのバランスに優れたフライトコンベアとなっている。
【0020】
フライトの材質は、特に限定されず、フライトコンベアのフライトの材質として通常用いられるものであってよく、例えば、ステンレス鋼、鉄鋼、アルミニウム等が挙げられる。
【0021】
また、フライトは、ガラス繊維の付着をより低減するため、表面が撥水剤でコーティングされていてもよい。フライトの表面全体が撥水剤でコーティングされていてもよいし、表面の一部のみ(例えば、両主面の有孔部分のみ、ガラス繊維が集綿される側の主面の有孔部分のみ等)が撥水剤でコーティングされていてもよい。
ガラス繊維は集綿工程でバインダー等が噴霧される。フライトを撥水剤でコーティングすることで、バインダー等に含まれる水の表面張力による繊維付着を抑えることができ、フライトへの繊維付着が一層低減される傾向にある。
撥水剤としては、特に限定されず、例えば、シリコーン系撥水剤、フッ素系撥水剤等が挙げられ、コスト面からシリコーン系撥水剤が好ましい。
【0022】
シリコーン系撥水剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合物、ジメチルポリシロキサンの分子末端又は側鎖にアミノ基、エポキシ基、水酸基又はポリエーテル基等を導入することによって変性した変性ポリシロキサン化合物等が挙げられる。
シリコーン系撥水剤のコーティング厚みは、3~200μmであることが好ましく、より好ましくは3~150μm、さらに好ましくは50~150μmである。
【0023】
フッ素系撥水剤としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合物等のパーフルオロ脂肪族化合物、ポリペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、ポリトリフルオロエチル(メタ)アクリレート等のポリパーフルオロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
フッ素系撥水剤のコーティング厚みは、3~200μmであることが好ましく、より好ましくは3~150μm、さらに好ましくは50~150μmである。
【0024】
撥水剤は、オイル型、溶液型、エアゾル型等を用いることができる。
撥水剤のコーティング方法は、特に限定されず、例えば、フライト全体を撥水剤槽に含浸させた後、撥水剤を乾燥させる方法や、フライトの表面に撥水剤を塗布又は吹き付けた後、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0025】
撥水剤でコーティングしたフライトは、その表面における水の接触角が110度以上であることが好ましく、より好ましくは115度以上、さらに好ましくは120度以上である。水の接触角が上記範囲であると、フライトの撥水性が高く、フライトへのガラス繊維の付着が一層抑制される傾向にある。
なお、水の接触角は、接触角計を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0026】
[ガラス繊維]
本実施形態のフライトコンベアにより集綿されるガラス繊維は、特に制限されず、例えば、断熱吸音材の分野で通常用いられるものが挙げられる。
ガラス繊維は、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0027】
ガラス繊維の平均繊維径は、特に限定されず、例えば、1.0~8.0μmであってよく、2.0~5.0μmであってよい。ガラス繊維の平均繊維径が小さいほどフライトの貫通孔に繊維が入り込みやすく、繊維同士の絡まりも弱いため、フライトへの繊維の付着が増加し、歩留まりの低下やフライトの洗浄作業の負担増加につながる傾向にあるが、本実施形態のフライトコンベアによれば、ガラス繊維の平均繊維径が小さくてもフライトへの付着を低減することができる。
なお、ガラス繊維の平均繊維径は、Cottonscope Pty Ltd製のcottonscopeHD等を用いて測定することができ、具体的には、後述の実施例に記載される方法により測定することができる。
【0028】
本実施形態のガラス繊維は、例えば、ガラス溶融炉等にてガラスを融液化させた後、繊維化装置にてガス及び空気燃焼による加熱、及び圧縮エアーによる繊維の延伸を行うことで製造することができる。繊維化の方法としては、従来公知の遠心法(ロータリー法)や火焔法、吹き飛ばし法等が挙げられる。中でも、細繊維化が容易であることから遠心法が好ましい。遠心法による繊維化装置の例としては、スピナー等が挙げられる。
【0029】
本実施形態のフライトコンベアにより集綿されて得られるガラス繊維の集綿物は、バインダーを含んでいてもよい。
バインダーは、特に限定されないが、例えば、アミド化反応、イミド化反応、エステル化反応及びエステル交換反応のいずれかで硬化する熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。このような熱硬化性樹脂として、具体的には、例えば、エチレン性不飽和単量体を重合したポリカルボン酸と、アミノ基及び/又はイミノ基を有するアルコールを含有する架橋剤とを含有する樹脂等が挙げられる。
バインダーは、1種単独であっても、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0030】
バインダーは、本発明の効果を損なわない範囲の含有量で、必要により、架橋剤、防塵剤、発色剤、着色剤、pH調整剤、硬化促進剤、シランカップリング剤、ガラス繊維から溶出するアルカリ成分を中和するための中和剤等の添加剤を含有していてもよい。
ることが好ましい。
バインダーは、上記の各成分を常法に従って混合し、水を加えて所定濃度に調整することができる。
【0031】
ガラス繊維の集綿物は、例えば、スプレー装置等を用いてガラス繊維にバインダーを塗布又は噴霧した後、本実施形態のフライトコンベアを用いて集綿することにより、製造することができる。得られたガラス繊維の集綿物は、次工程(例えば、ガラス繊維に添加したバインダーを硬化させるためのオーブン)へと搬送され、然るべき工程を経た後、ガラス繊維マットとなる。
【実施例0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例及び比較例で用いた測定・評価方法は、以下のとおりである。
【0034】
[ガラス繊維の平均繊維径]
Cottonscope Pty Ltd製のcottonscopeHDを用いて、ガラス繊維の平均繊維径(μm)を求めた。具体的には、水に分散させた繊維を顕微鏡で拡大し、カメラで撮影した画像をコンピューターに取り込み、画像処理により繊維径を測定した。得られた30,000本分の測定値を平均することにより、平均繊維径を求めた。
なお、長さ50μm以下の繊維や、繊維径に対して3倍以下の長さの短い繊維は集計から除外した。さらに、繊維長を考慮した集計を行うために、50μmより長い繊維に関しては、画像処理にて自動で長さを分割し、分割したものの繊維径の測定値をそれぞれ集計した。
【0035】
[フライト表面における水の接触角]
撥水剤で表面をコーティングしたフライトについて、その表面における水の接触角を、接触角計(協和界面科学株式会社製「接触角計DMo-501」)を用いて測定した。測定は5点で行い、それらの平均値を水の接触角の値(度)とした。
【0036】
[フライトへのガラス繊維の付着]
ガラス繊維の集綿物がフライトコンベアから次のコンベアへと移動した直後のフライトについて(
図2、
図3(a)のフライトを参照)、固定カメラ(三菱電機(株)製「NC-8820」、約208万画素)を用いてフライトの幅(短辺)の90%以上が映るように写真撮影した。次いで、得られた写真からフライトの有孔部分のみを切り出し(
図3(b)参照)、画像解析ソフトImageJを用いて色の濃淡により二値化処理を行った(
図3(c)参照)。二値化処理画像において、繊維付着部分(白色部分)の面積を求め、フライトの有孔部分の面積に対する比率を算出し、ガラス繊維の付着面積率(%)とした。
なお、カメラの角度、照明の当たり方等により二値化閾値設定が難しい場合は、目視で繊維を判断し、閾値設定を行った。
得られたガラス繊維の付着面積率を基に、以下の評価基準でガラス繊維の付着を評価した。
(評価基準)
A(優れる):ガラス繊維の付着面積率が7%以下である
B(良好):ガラス繊維の付着面積率が7%超15%以下である
C(劣る):ガラス繊維の付着面積率が15%超である
【0037】
[実施例1]
(フライトコンベアの作製)
60°千鳥改配列(短辺方向ピッチ:5.1mm、長辺方向ピッチ:6.0mm)で配列された複数の貫通孔(開口形状:円形、開口径:4mm)を有する複数枚のフライト(材質:SUS304L、短辺151mm×長辺2280mm×厚み4mm)を、主面がフライトコンベアの進行方向に対して平行となるようにして備えたフライトコンベアを作製した。貫通孔はパンチング加工により形成した。貫通孔によるフライトの開口率は40.3%であった。
なお、「60°千鳥改配列」とは、「60°千鳥配列」よりも短辺方向のピッチを詰めた仕様を意味する。「60°千鳥配列」では、貫通孔を形成する際に製作誤差によりフライトの短辺方向端部で孔欠けが生じるおそれがあったため、短辺方向のピッチを調整した「60°千鳥改配列」とすることにより、孔欠けが生じるのを回避した。
(ガラス繊維の集綿)
ガラス溶融炉にてガラスを融液化させ、ガラス融液を得た。ガラス融液を用いて、繊維化装置により繊維化を行い、ガラス繊維(平均繊維径3μm)を得た。繊維化直後に、ガラス繊維に対してアクリル系樹脂バインダーを吹き付けた。次いで、吸引装置又は吸引ファンにより上記作製したフライトコンベアの上方から下方へと貫通孔を通じて空気を吸引することにより、フライトコンベア上にガラス繊維を集綿した。その後、得られたガラス繊維の集綿物は、フライトコンベアにより次のコンベアへと搬送された(
図2参照)。
測定・評価結果を表1に示す。
【0038】
[実施例2]
シリコーン系撥水コーティング(トシコ株式会社製「トシカルSコーティングTS-1310」、膜厚10μm(カタログ値))を施したこと以外は実施例1と同様にして、フライトコンベアを作製し、ガラス繊維を集綿した。シリコーン系撥水コーティングした後のフライト表面の水の接触角は、118度であった。
測定・評価結果を表1に示す。
【0039】
[実施例3]
貫通孔の開口径等を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フライトコンベアを作製し、ガラス繊維を集綿した。
測定・評価結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
貫通孔の開口径等を表1に示すとおりに変更したこと以外は実施例1と同様にして、フライトコンベアを作製し、ガラス繊維を集綿した。
測定・評価結果を表1に示す。
【0041】
本発明のフライトコンベアは、フライトへのガラス繊維の付着が低減され、歩留まりの低下やフライトの洗浄作業の負担増加が抑制されたコンベアであるため、ガラス繊維(特に、繊維径の小さい細繊維のガラス繊維)の集綿に好適に用いることができる。