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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109317
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/02 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01N33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014043
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100129414
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 京
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 ひかる
(72)【発明者】
【氏名】嶋岡 雄大
(57)【要約】
【課題】コラーゲン量を安定的に測定する。
【解決手段】コラーゲンとポリフェノールとを含む組成物中の総コラーゲン量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定する工程を含む、測定方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲンとポリフェノールとを含む組成物中の総コラーゲン量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定する工程を含む、測定方法。
【請求項2】
総コラーゲン量を測定する前記工程が、
前記HPLC法により得られたチャートからヒドロキシプロリン量を算出する工程と、
前記ヒドロキシプロリン量に所定の係数(ヒドロキシプロリン係数)を乗じて前記総コラーゲン量を算出する工程と、
を含む、請求項1に記載の測定方法。
【請求項3】
ヒドロキシプロリン量を算出する前記工程が、下記式(I)に基づきヒドロキシプロリン量を算出する工程を含む、請求項2に記載の測定方法。
ヒドロキシプロリン含量(g/100g)=S×131.13×A/B×V×D×100/W×10-6 (I)
(上記式(I)中の記号は以下の通りである。
S:標準試料の濃度(μmol/mL)
A:測定試料のピーク高さ
B:標準試料のピーク高さ
V:測定試料の定容量(mL)
D:測定試料の希釈倍率
W:検体採取量(g)
131.13:ヒドロキシプロリンの分子量)
【請求項4】
特定のコラーゲン種の量を算出する工程をさらに含み、
特定のコラーゲン種の量を算出する前記工程が、前記総コラーゲン量および前記特定のコラーゲン種の規格値に基づいて、前記特定のコラーゲン種の量を算出する工程を含む、請求項1または2に記載の測定方法。
【請求項5】
前記規格値が、前記特定のコラーゲン種を含むとともに前記ポリフェノールを含まない対照組成物中の総コラーゲン量に対する前記対照組成物中の前記特定のコラーゲン種の量の比である、請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
特定のコラーゲン種の量を算出する前記工程において、下記式(II)に基づき前記特定のコラーゲン種の量を算出する、請求項5に記載の測定方法。
組成物の単位量あたりの特定のコラーゲン種含量(mg)=P×X×(Q÷R) (II)
(上記式(II)中の記号は以下の通りである。
P(mg/単位量mg):組成物の単位量あたりのヒドロキシプロリン量
X:ヒドロキシプロリン係数
Q(%):対照組成物中の特定のコラーゲン種含量
R(%):対照組成物中の総コラーゲン含量)
【請求項7】
前記特定のコラーゲン種が、II型コラーゲンを含む、請求項4に記載の測定方法。
【請求項8】
前記特定のコラーゲン種が、非変性II型コラーゲンを含む、請求項4に記載の測定方法。
【請求項9】
前記ポリフェノールが、プロアントシアニジンおよびクルクミンを含む、請求項1または2に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定方法に関し、具体的には、コラーゲン量の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲン量を測定する技術として、特許文献1(特開2019-130384号公報)および特許文献2(特開2013-35776号公報)に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、組成物中の総コラーゲン量が定量的色素に基づいたアッセイキット(SIRCOL)を使用して測定されること(段落0092)、ならびに、組成物中のコラーゲンのコラーゲン型を決定するために、ELISAアッセイ法を使用してよいこと(段落0093)が記載されている。
【0004】
特許文献2には、線維芽細胞の培養上清中の総コラーゲン量を、酵素免疫吸着測定法(ELISA)を用いて測定したことが記載されている(段落0024)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-130384号公報
【特許文献2】特開2013-35776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者の検討により、組成物中にコラーゲンおよびポリフェノールが含まれている場合には、ELISA法によりコラーゲン量を測定することが困難な場合があることが新たに見出された。
【0007】
本発明は、コラーゲン量を安定的に測定する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の測定方法が提供される。
[1] コラーゲンとポリフェノールとを含む組成物中の総コラーゲン量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定する工程を含む、測定方法。
[2] 総コラーゲン量を測定する前記工程が、
前記HPLC法により得られたチャートからヒドロキシプロリン量を算出する工程と、
前記ヒドロキシプロリン量に所定の係数(ヒドロキシプロリン係数)を乗じて前記総コラーゲン量を算出する工程と、
を含む、[1]に記載の測定方法。
[3] ヒドロキシプロリン量を算出する前記工程が、下記式(I)に基づきヒドロキシプロリン量を算出する工程を含む、[2]に記載の測定方法。
ヒドロキシプロリン含量(g/100g)=S×131.13×A/B×V×D×100/W×10-6 (I)
(上記式(I)中の記号は以下の通りである。
S:標準試料の濃度(μmol/mL)
A:測定試料のピーク高さ
B:標準試料のピーク高さ
V:測定試料の定容量(mL)
D:測定試料の希釈倍率
W:検体採取量(g)
131.13:ヒドロキシプロリンの分子量)
[4] 特定のコラーゲン種の量を算出する工程をさらに含み、
特定のコラーゲン種の量を算出する前記工程が、前記総コラーゲン量および前記特定のコラーゲン種の規格値に基づいて、前記特定のコラーゲン種の量を算出する工程を含む、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の測定方法。
[5] 前記規格値が、前記特定のコラーゲン種を含むとともに前記ポリフェノールを含まない対照組成物中の総コラーゲン量に対する前記対照組成物中の前記特定のコラーゲン種の量の比である、[4]に記載の測定方法。
[6] 特定のコラーゲン種の量を算出する前記工程において、下記式(II)に基づき前記特定のコラーゲン種の量を算出する、[4]または[5]に記載の測定方法。
組成物の単位量あたりの特定のコラーゲン種含量(mg)=P×X×(Q÷R) (II)
(上記式(II)中の記号は以下の通りである。
P(mg/単位量mg):組成物の単位量あたりのヒドロキシプロリン量
X:ヒドロキシプロリン係数
Q(%):対照組成物中の特定のコラーゲン種含量
R(%):対照組成物中の総コラーゲン含量)
[7] 前記特定のコラーゲン種が、II型コラーゲンを含む、[4]乃至[6]いずれか一つに記載の測定方法。
[8] 前記特定のコラーゲン種が、非変性II型コラーゲンを含む、[4]乃至[7]いずれか一つに記載の測定方法。
[9] 前記ポリフェノールが、プロアントシアニジンおよびクルクミンを含む、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の測定方法。
【0009】
また、本発明は、以下の態様とすることもできる。
[10] 前記組成物が抗炎症経口組成物である、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の測定方法。
[11] 前記組成物が固形製剤である、[1]乃至[10]いずれか一つに記載の測定方法。
[12] 前記組成物が食品組成物である、[1]乃至[11]いずれか一つに記載の測定方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コラーゲン量を安定的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のヒドロキシプロリン測定におけるHPLCチャートを示す図である。
図2】実施例2のヒドロキシプロリン測定におけるHPLCチャートを示す図である。
図3】実施例3のヒドロキシプロリン測定におけるHPLCチャートを示す図である。
図4】実施例4のヒドロキシプロリン測定におけるHPLCチャートを示す図である。
図5】ヒドロキシプロリン標準試料のHPLCチャートを示す図である。
図6】対照例1のヒドロキシプロリン測定におけるHPLCチャートを示す図である。
図7】対照例2のヒドロキシプロリン測定におけるHPLCチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。本実施形態において、組成物は、各成分をいずれも単独でまたは2種以上を組み合わせて含むことができる。
本明細書において、数値範囲を示す「~」は、以上、以下を表し、両端の数値をいずれも含む。
【0013】
本実施形態において、測定方法は、以下の工程1を含む。また、測定方法は以下の工程2をさらに含んでもよい。
(工程1)コラーゲンとポリフェノールとを含む組成物中の総コラーゲン量を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法により測定する工程
(工程2)特定のコラーゲン種の量を算出する工程
以下、各工程を具体的に説明する。
【0014】
(工程1)
工程1は、組成物中の総コラーゲン量をHPLC法により測定する工程である。本実施形態においては、総コラーゲン量の測定にHPLC法を用いることにより、組成物中にコラーゲンおよびポリフェノールが含まれている場合であっても、組成物中の総コラーゲン量を安定的に測定することができる。
また、総コラーゲン量の測定は、具体的には、試料中のヒドロキシプロリン含量をHPLC法により測定し、これを総コラーゲン量に換算することによりおこなうことができる。
【0015】
工程1は、総コラーゲン量をより安定的に測定する観点から、具体的には、以下の工程11および12を含む。また、工程11の前にさらに工程10を含んでもよい。
(工程10)組成物のHPLCチャートを取得する工程
(工程11)HPLC法により得られたチャートからヒドロキシプロリン量を算出する工程
(工程12)ヒドロキシプロリン量に所定の係数(ヒドロキシプロリン係数)を乗じて総コラーゲン量を算出する工程
【0016】
(工程10)
工程10においては、具体的には、標準試料および測定試料を測定装置に注入し、各試料のHPLCチャートを取得する。
【0017】
工程10におけるHPLCの測定条件の一例を以下に示す。
(条件)
測定装置:アミノ酸分析計(たとえばLA8080高速アミノ酸分析計、日立ハイテクサイエンス社製)
カラム種:陽イオン交換樹脂(たとえば日立カスタムイオン交換樹脂、φ4.6mm×60mm、日立ハイテクサイエンス社製)
カラム温度:57℃
反応槽温度:135℃
移動相:タンパク質加水分解物分析法用緩衝液(たとえば、関東化学社製、PH KANTOシリーズ(PH-1~PH-RG))
反応液:ニンヒドリン発色試薬(たとえば日立用ニンヒドリン発色溶液キット、富士フイルム和光純薬社製)
流速:移動相0.40mL/min,反応液0.35mL/min
検出系:紫外可視吸光度検出器、440nm
【0018】
HPLC測定の標準物質は、たとえばL-ヒドロキシプロリンとし、これを用いて既知濃度の標準試料(標準溶液)を調製することができる。
【0019】
HPLC測定における測定試料は、たとえば組成物の加水分解物の溶液としてもよい。すなわち、工程10は、組成物を加水分解して加水分解物を得る工程と、上記加水分解物を含む測定試料を調製する工程と、をさらに含んでよく、これらは同一工程であってもよい。また、工程10は、測定試料をHPLC測定に供して上記組成物のHPLCチャートを取得する工程であってもよい。加水分解は、たとえば、塩酸の酸加水分解とすることができる。
【0020】
標準試料および測定試料の溶媒の具体例として、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)が挙げられる。
【0021】
(工程11)
工程11においては、たとえば標準試料のチャートにおけるヒドロキシプロリンのピーク保持時間より、測定試料中のヒドロキシプロリンを同定(定性)し、標準試料と測定試料のピーク高さの比率から測定試料中のヒドロキシプロリン量を算出することができる。
【0022】
工程11は、総コラーゲン量をより安定的に測定する観点から、好ましくは、下記式(I)に基づきヒドロキシプロリン量を算出する工程を含む。
ヒドロキシプロリン含量(g/100g)=S×131.13×A/B×V×D×100/W×10-6 (I)
S:標準試料の濃度(μmol/mL)
A:測定試料のピーク高さ
B:標準試料のピーク高さ
V:測定試料の定容量(mL)
D:測定試料の希釈倍率
W:検体採取量(g)
131.13:ヒドロキシプロリンの分子量
【0023】
(工程12)
工程12では、工程11で得られたヒドロキシプロリン量にヒドロキシプロリン係数を乗じて組成物中の総コラーゲン量を算出することができる。具体的には、以下の式(III)により試料中の総コラーゲン量を得ることができる。
総コラーゲン量(g/100g)=X×ヒドロキシプロリン含量(g/100g) (III)
X:ヒドロキシプロリン係数
【0024】
ここで、上記ヒドロキシプロリン係数Xは、具体的にはコラーゲンの由来に応じて定められ、たとえば鶏胸軟骨由来コラーゲンの場合、AOAC Official Method 990.26.Hydroxyproline in Meat and Meat Products Colorimetric Method. First Action 1990 Final Action 1993より、X=8である。
【0025】
(工程2)
工程2では、特定のコラーゲン種の量を算出する。工程2は、特定のコラーゲン種の量を安定的に測定する観点から、具体的には、以下の工程21を含むことができる。
(工程21)総コラーゲン量および特定のコラーゲン種の規格値に基づいて、特定のコラーゲン種の量を算出する工程
【0026】
(工程21)
工程21において、総コラーゲン量は、具体的には前述の工程1により測定される。
また、特定のコラーゲン種の規格値は、好ましくは特定のコラーゲン種を含むとともにポリフェノールを含まない対照組成物中の総コラーゲン量に対する対照組成物中の特定のコラーゲン種の量の比である。ポリフェノールを含まない対照組成物に基づく規格値を用いて特定のコラーゲン種の量を算出することにより、組成物にポリフェノールが含まれる場合であっても、より安定的な測定が可能となる。このとき、具体的には、下記式(II)に基づき特定のコラーゲン種の量を算出することができる。
組成物の単位量あたりの特定のコラーゲン種含量(mg)=P×X×(Q÷R) (II)
P(mg/単位量mg):組成物の単位量あたりのヒドロキシプロリン量
X:ヒドロキシプロリン係数
Q(%):対照組成物中の特定のコラーゲン種含量
R(%):対照組成物中の総コラーゲン含量
なお、式(II)中のXは、式(III)におけるXと同じである。
【0027】
ここで、対照組成物中の特定のコラーゲン種含量は、公知の方法、たとえば酵素免疫測定(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay:ELISA)法により測定することができる。
【0028】
特定のコラーゲン種は、たとえば、I型コラーゲン、II型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲンまたはV型であり、これらは変性コラーゲンおよび非変性コラーゲンのいずれであってもよい。ここで、非変性コラーゲンとは、その製造工程において変性処理を施されていないコラーゲンをいい、好ましくは、抽出工程、製剤化工程等のコラーゲンの調製工程中に、加水分解や酵素処理等による低分子化工程を含まないことをいう。一方、非変性コラーゲンは、調製後、不可避的に自然変性されたものであってもよい。また、非変性コラーゲンは、好ましくはその由来組織における高次構造を有するものである。
特定のコラーゲン種は、その量をより安定的に測定する観点から、さらに具体的には、II型コラーゲンを含み、好ましくは非変性II型コラーゲンを含む。
【0029】
本実施形態において、測定方法が工程2をさらに含むことにより、組成物中の総コラーゲン量に加えて、特定のコラーゲン量についても安定的に測定することができる。
【0030】
(組成物)
次に、測定対象の組成物について説明する。組成物は、前述のとおり、コラーゲンとポリフェノールとを含むものであればよい。
【0031】
組成物として、たとえば、液剤、固形製剤が挙げられ、好ましくは固形製剤である。
固形製剤の剤形は、たとえば、タブレット等の錠剤、グミ、ゼリー、粉末または顆粒末であり、好ましくは錠剤である。これらの固形製剤は、糖衣層、フィルムコーティング層等の被覆層を有してもよい。
組成物は、たとえばその剤形に応じて製造し、製剤とすることができる。
【0032】
また、組成物は、たとえば経口組成物であり、好ましくは食品組成物であり、より好ましくは機能性表示食品である。
また、組成物は、好ましくは抗炎症用の組成物であり、より好ましくは抗炎症経口組成物である。
以下、組成物に含まれる成分をさらに具体的に説明する。
【0033】
(コラーゲン)
コラーゲンは、具体的には、皮膚、筋肉、腱、靱帯、軟骨、骨、血管、内臓等の組織に存在するタンパク質である。コラーゲンは、これらの組織からの抽出物であってもよい。
コラーゲンとしては、動物由来コラーゲン、植物由来コラーゲン等の各種由来が挙げられる。このうち、動物由来コラーゲンとして、たとえば、ブタ、ウシ、クジラ等の哺乳類由来コラーゲン;ニワトリ(鶏)等の鳥由来コラーゲン;ならびに、サケ、エイ、サメ等の魚およびイカ等の他の魚介類由来コラーゲンが挙げられる。動物由来コラーゲンとして、たとえば軟骨組織由来のものを用いることができる。
【0034】
総コラーゲン量を安定的に測定する観点から、コラーゲンは、好ましくは動物由来コラーゲンであり、より好ましくは鳥類および魚類由来のコラーゲンから選択される少なくとも一種であり、さらに好ましくは鶏胸軟骨由来のコラーゲンである。
【0035】
組成物中の総コラーゲン量は、たとえば組成物に求める機能、効能等に応じて決めることができる。
たとえば、好ましい抗炎症効果を得る観点から、一錠または一包の組成物中の総コラーゲン量は、たとえば0.5mg以上であり、好ましくは1mg以上、より好ましくは1.2mg以上であり、たとえば2mg以上または5mg以上であってもよく、また、たとえば50mg以下であり、好ましくは40mg以下、より好ましくは30mg以下、さらに好ましくは20mg以下である。
【0036】
コラーゲン種の具体例については、工程21の説明の中で前述のとおりである。
組成物中の特定のコラーゲン種の量についても、たとえば組成物に求める機能、効能等に応じて決めることができる。
たとえば、好ましい抗炎症効果を得る観点から、一錠または一包の組成物中の非変性II型コラーゲンの量は、たとえば0.3mg超であり、好ましくは0.5mg超であり、また、たとえば25mg未満であり、好ましくは20mg以下、より好ましくは15mg以下、さらに好ましくは10mg以下、さらにより好ましくは5mg以下、よりいっそう好ましくは1.2mg以下である。
【0037】
(ポリフェノール)
本実施形態において、ポリフェノールは、たとえば組成物に求める機能、効能等に応じて選ぶことができ、制限はないが、たとえば抗炎症効果向上の観点から、プロアントシアニジン、クルクミンおよびケルセチンからなる群から選択される一または二以上の成分を含み、好ましくはプロアントシアニジンおよびクルクミンを含む。
【0038】
組成物中のポリフェノール量は、たとえば組成物に求める機能、効能等に応じて決めることができる。
たとえば、好ましい抗炎症効果を得る観点から、一錠または一包の組成物中のポリフェノールの量は、たとえば10mg以上であり、好ましくは50mg以上、より好ましくは100mg以上、さらに好ましくは150mg以上であり、また、たとえば1000mg以下であり、好ましくは800mg以下、より好ましくは600mg以下、さらに好ましくは500mg以下、さらにより好ましくは400mg以下である。
【0039】
組成物中のコラーゲンの含有量(総コラーゲン量)に対するポリフェノールの含有量の質量比(ポリフェノール/コラーゲン)についても、たとえば組成物に求める機能、効能等に応じて決めることができる。
たとえば、上記質量比(ポリフェノール/コラーゲン)は、抗炎症効果向上の観点から、好ましくは5以上であり、より好ましくは6以上、さらに好ましくは6.25以上である。
また、同様の観点から、上記質量比(ポリフェノール/コラーゲン)は、好ましくは50以下であり、より好ましくは25以下、さらに好ましくは7.5以下である。
【0040】
(その他の成分)
組成物は、上述の成分以外の成分を含んでもよい。その他の成分は、たとえば食品に用いられる成分から選択することができる。また、その他の成分は、たとえば組成物の剤形に応じて選択することができる。
その他の成分は、たとえば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、懸濁化剤、防腐剤、抗酸化剤(ポリフェノールを除く。)および矯味剤からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0041】
賦形剤として、たとえば、コーンスターチ、結晶セルロース、炭酸カルシウム、寒梅粉、デヒドロ酢酸Na、ヒプロメロース、薬用炭、セラック、バレイショデンプン、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素、沈降炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、酸化マグネシウム、乳酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト、合成ケイ酸アルミニウム、乳糖、白糖、マルトース、D-マンニトール、エリスリトール、ブドウ糖および果糖からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0042】
結合剤として、たとえば、アラビアゴム末、デキストリン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0043】
崩壊剤として、たとえば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスポビドン、アルギン酸、デンプングリコール酸ナトリウム、部分アルファー化デンプンおよびベントナイトからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0044】
滑沢剤としては、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールおよび硬化油からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0045】
コーティング剤としては、たとえば、タルク、ヒプロメロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、アラビアゴム、エチルセルロース、カルナウバロウ、カルボキシビニルポリマー、ステアリン酸マグネシウム、セラック、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プルラン、ポビドン、ポリビニルアルコールおよびマクロゴールからなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0046】
懸濁化剤としては、たとえば、アルギン酸ナトリウムおよびポリビニルピロリドンからなる群から選択される少なくとも一つの成分が挙げられる。
【0047】
防腐剤として、たとえば、パラオキシ安息香酸エチルおよびパラオキシ安息香酸ブチルからなる群から選択される少なくとも一つの成分が挙げられる。
【0048】
抗酸化剤(ポリフェノールを除く。)としては、たとえば、トコフェロールが挙げられる。
【0049】
矯味剤としては、たとえば、白糖、ハチミツ、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸ニカリウムおよび活性炭からなる群から選択される一または二以上の成分が挙げられる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0051】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0052】
(実施例1~4、対照例1および2)
本例では、HPLC法により試料中のタンパク質量の測定をおこなった。
【0053】
(組成物の調製)
各例において、以下の原料を用いた。
非変性II型コラーゲンを含む配合品として、ロンザ社製、UC-II(登録商標、以下同じ。)を用いた。メーカーCOA(試験成績書)より、使用ロットにおいてはUC-II 40mgあたり、非変性II型コラーゲンを3.2(実施例1~4、対照例1で使用)または4.0mg含む。
クルクミンおよびタマリンド由来プロアントシアニジンを含む配合品として、オクトロール社製、TamaFlex(登録商標、以下同じ。)を用いた。メーカーCOA(試験成績書)より、使用ロットにおいてはTamaFlex 250mgあたり、ウコン由来クルクミン 11.4mg、および、タマリンド由来プロアントシアニジン 173.575mgを含む。
【0054】
(実施例1)
コラーゲンおよびポリフェノールを含む粉状の組成物を以下の手順で製造した。
組成物中のUC-IIの含有量に対するTamaFlexの含有量の質量比(TamaFlex/UC-II)が6.25となるように常法にて混合した。
【0055】
(実施例2)
コラーゲンおよびポリフェノールを含む組成物(錠剤)を以下の手順で製造した。
組成物中のUC-IIの含有量に対するTamaFlexの含有量の質量比(TamaFlex/UC-II)が6.25となるように常法にて混合・打錠を行った。
【0056】
(実施例3)
実施例2で得られた錠剤を40℃にて2ヶ月保存した。
【0057】
(実施例4)
実施例2で得られた錠剤を40℃にて4ヶ月保存した。
【0058】
(対照例1)
非変性II型コラーゲンを含む上記配合品(ロンザ社製、UC-II)をそのまま用いた。
【0059】
(対照例2)
非変性II型コラーゲンを含む錠剤を以下の手順で製造した。
組成物中のUC-IIの含有量が実施例2の錠剤の2倍量となるように常法にて混合・打錠を行った。
【0060】
(総コラーゲン量の測定)
各例で得られた組成物の総コラーゲン量をHPLC法により測定した。
【0061】
(測定試料の調製)
各例の組成物をミルで粉砕し、得られた粉砕物を加水分解用試験管に約0.5gを精密に量りとった。これに20%塩酸(0.04% 2-メルカプトエタノール含有)を20mL加えて15分間脱気後、封管し、110℃で24時間加水分解した。冷却後、加水分解液を水で100mLに定容した。この溶液5mLを分取し、減圧下で濃縮乾固後、クエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)10mLに溶解した。これを孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液を測定試料とした。
【0062】
(標準試料の調製)
HPLC測定の標準物質としてL-ヒドロキシプロリン(≧99.0%、富士フイルム和光純薬社製)を用いた。標準物質を0.01mol/L塩酸に溶解して2.5μmol/mLの標準原液を調製した。この標準原液をクエン酸ナトリウム緩衝液(pH2.2)で希釈し、既知濃度(0.1μmol/mL)の標準試料を調製した。
【0063】
(測定条件)
測定装置:LA8080高速アミノ酸分析計(日立ハイテクサイエンス社製)
カラム種:日立カスタムイオン交換樹脂(陽イオン交換樹脂)、φ4.6mm×60mm(日立ハイテクサイエンス社製)
カラム温度:57℃
反応槽温度:135℃
移動相:タンパク質加水分解物分析法用緩衝液 PH KANTO(PH-1~PH-RG)(関東化学社製)
反応液:ニンヒドリン発色試薬(日立用ニンヒドリン発色溶液キット、富士フイルム和光純薬社製)
流速:移動相0.40mL/min,反応液0.35mL/min
検出系:紫外可視吸光度検出器、440nm
アミノ酸自動分析計タイムプログラム:表1に記載の通りとした。
【0064】
【表1】
【0065】
(測定方法)
標準試料および測定試料のそれぞれ20μLをアミノ酸自動分析計に注入し、各例のHPLCチャートを取得した。
標準試料のピーク保持時間より、測定試料中のヒドロキシプロリンを同定(定性)し、ピーク高さを測定した。
図1図4図6および図7は、それぞれ、実施例1~4、対照例1および2のHPLCチャートを示す図である。また、図5は、標準試料のHPLCチャートを示す図である。
【0066】
各例で得られたHPLCチャートにおけるピーク高さに基づき、以下の式(I)により測定試料中のヒドロキシプロリン含量を求めた。
ヒドロキシプロリン含量(g/100g)=S×131.13×A/B×V×D×100/W×10-6 (I)
S:標準試料の濃度(μmol/mL)
A:測定試料のピーク高さ
B:標準試料のピーク高さ
V:測定試料の定容量(mL)
D:測定試料の希釈倍率
W:検体採取量(g)
131.13:ヒドロキシプロリンの分子量
【0067】
そして、以下の式(III)により試料中の総コラーゲン量を得た。
総コラーゲン量(g/100g)=X×ヒドロキシプロリン含量(g/100g) (III)
X:ヒドロキシプロリン係数=8
【0068】
各例のヒドロキシプロリン含量および総コラーゲン量を表2に示す。
表2より、組成物中にポリフェノールが共存する場合においても、粉状および錠剤の組成物の総コラーゲン量を測定することができた(実施例1、2)。
また、実施例2の錠剤の2ヶ月および4ヶ月保存後においても、保存後の試料中の総コラーゲン量を安定的に測定することができた(実施例3、4)。
【0069】
【表2】
【0070】
(非変性II型コラーゲン量の測定)
上述の総コラーゲン量の測定結果を用いて、各例の組成物中の非変性II型コラーゲンの含有量を以下の式(II)により得た。各例における非変性II型コラーゲン量を表2にあわせて示す。
組成物の単位量あたりの非変性II型コラーゲン含量(mg)=P×X×(Q÷R) (II)
P(mg/単位量mg):組成物の単位量あたりのヒドロキシプロリン量
X:ヒドロキシプロリン係数
Q(%):対照組成物中の非変性II型コラーゲン含量
R(%):対照組成物中の総コラーゲン含量
【0071】
ここで、対照組成物としては非変性II型コラーゲンを含む配合品(ロンザ社製、UC-II)を用いた。
式(II)のPについては、前述の方法で対照組成物中の総コラーゲン含量を測定し、P=35%であった。
また、式(II)のQについては、後述のELISA法で対照組成物中の非変性II型コラーゲン含量を測定し、Q=8%であった。
【0072】
表2より、各例について、総コラーゲン量および非変性II型コラーゲン量をHPLC法により測定することができた。
また、対照例2における非変性II型コラーゲン量は、後述の比較例2にてELISA法により測定された非変性II型コラーゲン量に近似していた。
これらのことから、ELISA法によるコラーゲン量の測定が難しい試料についても、HPLC法によりコラーゲン量の測定が可能となることがわかる。
【0073】
(比較例1および2)
本例では、ELISA法により試料中の非変性II型コラーゲン量の測定をおこなった。
【0074】
(組成物の調製)
(比較例1)
実施例2と同様の方法により、コラーゲンおよびポリフェノールを含む錠剤を製造した。
【0075】
(比較例2)
対照例2と同様の方法により、非変性II型コラーゲンを含む錠剤を製造した。
【0076】
(ELISA法による測定)
非変性II型コラーゲン含量を以下の手順で測定した。
1.サンプルの可溶化
サンプルを秤量し、2本の50mL遠沈管に分けて投入した。その後、3Mグアニジン塩酸塩バッファー(pH7.5)を遠沈管1本につき25mL 加え、ローテーターを用いて冷蔵庫内(4℃)で21時間撹拌した。
攪拌後、遠心分離機にて10,800rpmで20分間、4℃で遠心分離を行った。遠心分離後、デカンテーションにて上清を捨てた。
【0077】
2.洗浄
遠沈管1本につき、25mLの水(4℃に予冷)を加え、ガラス棒でゆっくりと攪拌することにより沈殿をほぐした。その後、10,800rpmで20分間、4℃で遠心分離を行った。遠心分離後、10mLのマイクロヒペットを用いて上清を捨てた。上記の操作を3回繰り返した。
【0078】
3.加水分解
遠沈管1本につき15mLの0.05M酢酸を添加し、ガラス棒でゆっくりと撹拌することにより沈殿をほぐした。その後、遠沈管2本に入っている懸濁液全量を100mLビーカーに入れた。さらに、5mLの0.05M酢酸で2回共洗いすることで、遠沈管内の沈殿を回収した。最終的に遠沈管2本につき50mLの0.05M酢酸で沈殿物を懸濁したことになる。懸濁液のpHを70%ギ酸にて2.8へと調整後、125mgのペプシンを添加し、スターラーで22時間、室温にて攪拌することにより沈殿を溶解させた。
ペプシン処理後、5.5 mLの10×TBS(+CaCl2)バッファー(pH8.0)をベプシン処理後の懸濁液に添加し、さらに1M NaOHを用いてpHを8.0へと調整した。その後、溶液の重量を測定するとともに、ヒペットを用いて懸濁液量を計測した。
懸濁液を1mL取り、15mLの遠沈管に投入後、9 mLの1×TBS(+CaCl2)/バッファー(pH8.0)を加え、さらにエラスターゼ溶液を1mL添加した。添加後、ローテーターで冷蔵庫内にて18時間撹拌した。
撹拌した溶液を600×gで20分間、4℃で遠心分離を行った。遠心分離後、上清を新しい15 mLの遠沈管に回収した。
【0079】
4.ELISA法による非変性II型コラーゲンの定量用試料の調製
比較例1、2および対照組成物中の非変性II型コラーゲンの定量は、TypeII Collagen Detection ELISAKit (Chondrex社製、#6018)を用いて、キット付属のプロトコールに従い測定した。なお、測定はキットに付属しているプロトコールに記載されている1ステップ法で実施した。測定用試料として、サンプル抽出で最終的に得られた上清をキットに付属の希釈溶液で100、500、1,000倍および2,000倍に希釈したものを用いた。また、検量線としてキットに付属のII型コラーゲン溶液を200、100、50、25、12.5、6.3、3.1 ng/mLに希釈した溶液を調製し、試験に供した。同時にブランクウェルとしてII型コラーゲンを含まないウェルも準備した。Duplicateで測定用ウェルを調製後、吸光度測定、解析を行った。
【0080】
5.吸光度測定
プレートリーダーを用いて測定波長490 nm、参照波長630 nmの光学密度(OD490およOD630)を測定した。その後、測定波長の光学密度から参照波長の光学密度を減算したものを測定試料の光学密度(OD490-630)とした。
【0081】
6.解析
試料を含む測定ウェルの(OD490-630)からプランクウェルの平均(OD490-630)を減算した値を、その測定ウェルの吸光度とした。検量線用に測定した測定値から4パラメータロジスティック回帰分析により検量線を算出し、得られた式を用いて、測定試料の濃度を算出した。
サンプルに含まれる非変性II型コラーゲン量は以下の式より算出した。
非変性II型コラーゲン量(mg)=算出された濃度(ng/mL)×ELISA試料の希釈倍率×懸濁液量(mL)× 11 ÷ 1,000,000
また、サンプルに含まれる非変性II型コラーゲンの含有率は以下の式より算出した。
非変性II型コラーゲンの含有率(%)=非変性II型コラーゲン量(mg)/サンプル量(mg)×100
【0082】
比較例2の組成物、すなわち、非変性II型コラーゲンを含みポリフェノールが配合されていない組成物(錠剤)については、サンプルの懸濁溶液(77mL)から得られた検体を1000倍希釈した溶液の濃度が71.7(ng/mL)であったため、サンプル(2467.1mg)中の非変性II型コラーゲン量は以下の通り算出された。
71.7ng/mL×1000×77mL×11÷1,000,000=60.22mg
したがって、サンプル中に含まれる非変性II型コラーゲンの含有率は以下の通り算出された。
60.22mg/2467.1mg×100=2.4%
さらに、求められた含有率から、サンプル100g中の非変性II型コラーゲン量は以下の通り算出された。
100g×2.4%=2.4g
【0083】
一方、比較例1の組成物、すなわち、非変性II型コラーゲンおよびポリフェノールが配合された組成物については、検量線の範囲にある測定結果が得られず、非変性II型コラーゲン量を測定することができなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7