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  • 特開-頚椎補助用フォアヘッドレスト 図1
  • 特開-頚椎補助用フォアヘッドレスト 図2
  • 特開-頚椎補助用フォアヘッドレスト 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109325
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】頚椎補助用フォアヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
   A61F 5/01 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A61F5/01 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014058
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雄亮
(72)【発明者】
【氏名】趙 旭
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朗人
(72)【発明者】
【氏名】村岡 幹夫
【テーマコード(参考)】
4C098
【Fターム(参考)】
4C098AA01
4C098BB03
4C098BC08
4C098BC13
4C098BC17
4C098BD02
4C098BD13
(57)【要約】
【課題】作業者が前傾姿勢をとることを妨げず、かつ、該前傾姿勢によって生じる頚椎への負荷を低減することができる、新たな構造の頚椎補助用フォアヘッドレストを提供する。
【手段】腰または臀部から、背中、後頭部、および、頭頂部を通って、額に至るまで伸びる弾性部材、および、前記弾性部材を腰または臀部に固定する固定部、を備えてなる、頚椎保護用フォアヘッドレスト。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰または臀部から、背中、後頭部、および、頭頂部を通って、額に至るまで伸びる弾性部材、および、前記弾性部材を腰または臀部に固定する固定部、を備えてなる、頚椎保護用フォアヘッドレスト。
【請求項2】
前記頚椎保護用フォアヘッドレストを作業者が着用した際に、前記弾性部材が、前記腰または前記臀部、前記背中および前記額において、前記作業者に接触している、請求項1に記載の頚椎保護用フォアヘッドレスト。
【請求項3】
前記固定部が、前記弾性部材を前記腰に固定する腰固定部、または、前記弾性部材を臀部に固定する座位部である、請求項1または2に記載の頚椎保護用フォアヘッドレスト。
【請求項4】
前記弾性部材の腰側端部に、かえし部を備える、請求項1または2に記載の頚椎保護用フォアヘッドレスト。
【請求項5】
さらに額接触部を備える、請求項1または2に記載の頚椎保護用フォアヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頚椎補助用フォアヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
成人の頭部は約5kgの重さがあり、まっすぐ前を向いている時は頚椎に約5kgの負荷がかかっている。しかし、下を向けば向くほどその負荷は増加し、60度下を向くと約27kgの負荷が頚椎にかかることが報告されている。外科医などの長時間前傾姿勢を取ることが必要となる職業では、長年の頚椎負荷による頚椎症が“職業病”となっている。また、頭部前傾姿勢を保持したスマートフォンの使用や長時間のデスクワークも同様に頚椎負荷による頚椎症の原因となっている。作業の特性上、前傾姿勢を回避できない事例も多くあり、作業者の作業を妨げることなく、前傾姿勢時に生じる頚椎負荷を軽減する手段が望まれている。
【0003】
頚椎症用のネックカラーは多数市販されているが、これは頚椎が大きく可動しないように安静を保つことが目的であり、これを装着したままでの下向き作業には向いていない。
また、頚椎負荷を軽減する手段として、正常姿勢(前傾でない姿勢)を保つことが挙げられ、正常姿勢に保持するための剛体の支持器は散見される(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-135499
【特許文献2】特開2014-117382
【特許文献3】特開2013-78553
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前傾姿勢での作業を必須とする場合(手術など、のぞき込む姿勢をとる作業が必須となる場合)、前述のような剛体の支持器は作業の妨げとなり適用できない。このため前傾姿勢での作業を必須とする場合において使用可能なサポート器具が要望されている。
本発明は、作業者が前傾姿勢をとることを妨げず、かつ、該前傾姿勢によって生じる頚椎への負荷を低減することができる、新たな構造の頚椎補助用フォアヘッドレストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、以下の発明を完成させた。
【0007】
[1] 腰または臀部から、背中、後頭部、および、頭頂部を通って、額に至るまで伸びる弾性部材、および、前記弾性部材を腰または臀部に固定する固定部、を備えてなる、頚椎保護用フォアヘッドレスト。
[2] 前記頚椎保護用フォアヘッドレストを作業者が着用した際に、前記弾性部材が、前記腰または前記臀部、前記背中および前記額において、前記作業者に接触している、[1]に記載の頚椎保護用フォアヘッドレスト。
【0008】
[3] 前記固定部が、前記弾性部材を前記腰に固定する腰固定部、または、前記弾性部材を臀部に固定する座位部である、[1]または[2]に記載の頚椎保護用フォアヘッドレスト。
[4] 前記弾性部材の腰側端部に、かえし部を備える、[1]~[3]のいずれかに記載の頚椎保護用フォアヘッドレスト。
[5] さらに額接触部を備える、[1]~[4]のいずれかに記載の頚椎保護用フォアヘッドレスト。
【発明の効果】
【0009】
本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストによれば、腰または臀部を起点として後方から伸びた弾性部材が額を支持する構成であるので、作業者の作業を妨害せずに、頭部前傾により生じる頚椎への負担を軽減することができる。
また、剛体ではなく、弾性部材を使用することで、姿勢を矯正するのではなく、前傾姿勢に追従しつつも、頭部を支持することで、頭部前傾によって生じる頚椎への負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、弾性部材の一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は側面図である。
図2図2は、本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストを作業者が着用した状態の頭部付近の拡大図である。
図3図3(a)は、本発明の立位用の頚椎保護用フォアヘッドレストを作業者が着用した状態を側面から見た図であり、図3(b)は本発明の座位用の頚椎保護用フォアヘッドレストを作業者が着用した状態を側面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<頚椎保護用フォアヘッドレスト>
本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストは、所定の弾性部材、および、該弾性部材を腰または臀部に固定する固定部を備えている。
【0012】
(弾性部材)
弾性部材は、腰または臀部から、背中、後頭部、および、頭頂部を通って額、に至るまで伸びる形状を有している。具体的形状としては、棒状体、または、板状体が挙げられる。弾性部材は、作業者の頭部の重さを、該弾性部材を介して作業者の腰部または臀部に伝える役割を有する。
【0013】
本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストを作業者が着用した際に、弾性部材は、作業者の腰または臀部、背中、および、額において、少なくとも作業者と接触している。これにより、作業者が前傾した際に、フォアヘッドレスト(弾性部材)に生じるたわみに対する復元力によって、頭部を支えることで、頭部前傾時に発生する頚椎への負荷を低減することが可能となる。なお、弾性部材が腰または臀部に接触しているとは、後に説明する腰固定部を介して腰に接触している、または、後に説明する座位部を介して臀部に接触していることを意味する。
【0014】
弾性部材10の形状の一実施形態を図1に示す。図1(a)が斜視図であり、図1(b)が側面図である。図1(a)(b)において、図示左側が腰側であり、右側が頭側である。図1(b)に示す通り、弾性部材10は、着用者の腰に対応する箇所12、背中に対応する箇所14、および、額に対応する箇所16を備えており、該箇所が作業者に接触する構成となっている。
【0015】
弾性部材の腰側端部には、かえし部18が形成されていてもよい。該かえし部18は、後述する腰固定部20にひっかけることで、弾性部材10が腰固定部20から抜けないようにするためのものである。なお、弾性部材10の腰側端部には、該かえし部18ではなく、腰固定部20に接続することができる他の形状を形成してもよい。他の形状としては、例えば、ベルトループ状等を挙げることができる。
【0016】
図1に示した形態は、立位用の頚椎保護用フォアヘッドレストに使用する弾性部材の一例であり、腰側端部にかえし部18が形成されている。座位用の頚椎保護用フォアヘッドレストに使用する弾性部材には、該かえし部18が形成されておらず、背中から延びる弾性部材が直線状のままとなっている。
【0017】
弾性部材10の頭側の額に対応する箇所16は、作業者の額と接触する箇所であるが、作業者の額との接触面接を増やすべく、弾性部材10の幅が該箇所16において、広がっていることが好ましい。図1(b)においては、箇所16は、図示奥手前方向に幅広に構成されている。箇所16の幅は、3cm~15cmが好ましく、5cm~10cmがより好ましい。
【0018】
弾性部材10を構成する材料としては、弾力性のある材料であれば、特に限定されないが、例えば、ステンレス、鉄、銅、チタンなどの金属材料、プラスチック、GFRP、CFRP、木材、竹、等を挙げることができる。中でも、本発明のフォアヘッドレストとして、好ましい弾性力であること、および、軽量であることから、CFRPを用いることが好ましい。
【0019】
弾性部材10の弾性力は、作業者が行う作業の種類、あるいは、作業者の好みによって、適宜調整することが可能である。弾性部材10の弾性力の調整方法は、材料を選択することで材料の弾性により調整する方法、または、弾性部材10の幅、厚みにより調整する方法が有りうる。作業者が外科医の場合は、図2に示すような、頭部を前方に60°傾ける姿勢を取る時間が、手術の間の大部分を占める。よって、この姿勢を取ることを阻害しないと共に、この姿勢をとっている間、額を十分な弾性力で支えることで、頭部の重さによる頚椎の負担を低減することができる弾性力を有していることが好ましい。なお、図2中の矢印は、弾性部材10の額に対応する箇所16が、弾性力により額を支持する力の方向を示している。
【0020】
このような弾性力としては、本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストを装着した作業者が、水平方向から60度の位置まで前屈した姿勢にて、100~600Nであることが好ましく、200~400Nであることがより好ましい。
ここで、「水平方向から60度の位置まで前屈した姿勢」とは、図3(a)における、角度αが60度であることを意味する。なお、図3において、線X1は、本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストの、腰固定部20の側面視の中心位置(側面視における腰固定部の幅方向中心線と腰回り方向の中心線とが交わる箇所)を通る水平線を意味し、線Y1は該腰固定部の側面視中心位置と、作業者の頭頂部とを結ぶ線を意味する。
【0021】
なお、図3(b)に示すように、座位の場合は、線X2が座面を含む水平線であり、また、線Y2は、弾性部材と座位部との接続箇所Z1を鉛直方向に線X2におろした箇所Z2と頭頂部とを結ぶ線である。
【0022】
また、弾性部材10を、CFRPにより形成した場合、所望の弾性力を発揮すべく、板状体(板バネ)の弾性部材10とした場合に、その断面二次モーメントI(=hb/12、h:厚さ、b:幅)が,3~10mmが好ましく,5~8mmがより好ましい。その厚みは、0.5~10mmが好ましく、0.5~5mmがより好ましく、その幅は、1~300mmが好ましく、1~50mmがより好ましい。
【0023】
(腰固定部20)
図3に、本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストの装着時の様子を示す。図3(a)が立位用の本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストを装着した作業者を側面からみた図であり、図3(b)は座位用の本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストを装着した作業者を側面から見た図である。
【0024】
図3(a)に示すように、弾性部材10の腰側端部は、腰固定部20を介して、作業者の腰に固定される。該腰固定部20は、弾性部材10の腰側端部を作業者の腰に固定可能であれば、その形状は特に限定されないが、例えば、通常のベルトであってもよいし、また、図3(a)に示したような、ベルトよりも幅広のコルセット状の部材であっても構わない。なお、コルセット状の部材である方が、弾性部材10の腰側端部を安定して作業者の腰に固定することが可能であるので、より好ましい。
【0025】
また、図3(a)に示したように、作業者の背面に位置する腰固定部20の下部には、弾性部材10のかえし部18をひっかける窪みを有していることが好ましい。
腰固定部20は、例えば、マジックテープ(登録商標)等により容易に着脱可能な構造となっていることが好ましい。
【0026】
(座位部30)
座位用の頚椎保護用フォアヘッドレストにおいては、腰固定部20の代わりに、弾性部材を作業差の臀部に固定する座位部30を有する。座位部30は、例えば、図3(b)に示すように、側面視L字状であり、座面に相当する座面部32と、座面部32から立設し、臀部上部に当接する立設片31から構成されている。立設片31と、弾性部材10の臀部側端部とが、所定の固定構造33により、固定されている。図3(b)に示した形態では、固定構造33は、ベルト状(板バネ状)の弾性部材10を通してネジで固定するベルトループ状となっている。
なお、座位部30が、弾性部材10を臀部に固定するとは、本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストを使用する作業者が、座位部30に着座することにより、作業者の体重により臀部が座位部30を介して弾性部材に固定されることを含む意味である。
【0027】
(額接触部)
弾性部材10は、額に対応する箇所16が直接作業者の額に接触してもよいし(この場合、額に対応する箇所16が、額接触部となる。)、あるいは、額に対応する箇所16の額接触面側に、スポンジなどの緩衝材を張り合わせて、額接触部を形成してもよい。
【0028】
(付加的効果)
本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストは、長時間下向き作業をする全ての方にとって、頚椎保護効果をもたらすものである。ちょうどいいしなりで頭をささえてくれるので、長時間の作業であっても、首が楽である。また、着脱が容易であるという利点があるが、本発明のフォアヘッドレスト着用したままであっても、寝ることが可能である。
また、弾性部材10により、種々の頭の角度に対応することが可能である。
また、弾性部材10のしなり具合をセンサにより測定することで、どのくらいの重さをどのくらいの時間支えたのかを計測する機能を付加することが可能であり、その場合、たとえば、携帯端末で、その状態を確認できるようにしておけば、作業者の負担を可視化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の頚椎保護用フォアヘッドレストは、長時間下向き作業をする全ての方にとって利用可能である。外科医、PC作業者、デスクワーク作業者、イラストレーターなど、長時間前傾姿勢を取ることが必要となる職業にとって、特に有用である。
医療分野での長時間下向き作業の代表例は、手術である。手術を行なっているのは消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、乳腺外科、小児外科、整形外科、脳神経外科、歯科口腔外科と外科が付く診療科に限らず、眼科、皮膚科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、産科婦人科などがあり多岐にわたる。さらに医療以外の分野でも製図やイラストなど手書きが必要な職種、手元での作業が必要な職種は多岐にわたり、本製品を必要としている人は多い。
図1
図2
図3