(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109334
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両
(51)【国際特許分類】
B62J 43/16 20200101AFI20240806BHJP
B62J 9/14 20200101ALI20240806BHJP
【FI】
B62J43/16
B62J9/14
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014071
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 かおり
(72)【発明者】
【氏名】坂本 健
(57)【要約】
【課題】バッテリを持ち上げる高さを低くし、バッテリの着脱作業を容易にすること。
【解決手段】シート(17)の下方にバッテリ収容部(51)を備え、バッテリ収容部(51)はバッテリ(52)を着脱可能に収容する鞍乗り型車両において、前記シート(17)は、前記バッテリ収容部(51)よりも高い位置のシートヒンジ(17S)に開閉自在に取り付けられ、前記バッテリ収容部(51)の側壁(51S)は、前記シートヒンジ(17S)よりも下方に凹む切り欠き部(71)を有し、前記切り欠き部(71)は、前記バッテリ収容部(51)内の前記バッテリ(52)の上部より下方の位置でバッテリ側面と車幅方向で重なる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート(17)の下方にバッテリ収容部(51)を備え、バッテリ収容部(51)はバッテリ(52)を着脱可能に収容する鞍乗り型車両において、
前記シート(17)は、前記バッテリ収容部(51)よりも高い位置のシートヒンジ(17S)に開閉自在に取り付けられ、
前記バッテリ収容部(51)の側壁(51S)は、前記シートヒンジ(17S)よりも下方に凹む切り欠き部(71)を有し、前記切り欠き部(71)は、前記バッテリ収容部(51)内の前記バッテリ(52)の上部より下方の位置でバッテリ側面と車幅方向で重なる
鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記シートヒンジ(17S)は、前記バッテリ(52)よりも上方に位置する
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記側壁(51S)を支持するフレーム(21,40)を備え、
前記切り欠き部(71)は、前記フレーム(21,40)の上方に位置する
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記バッテリ収容部(51)は、前記バッテリ収容部(51)内の前記バッテリ(52)の上部と同一又は近傍の高さを有する前壁(51F)と後壁(51R)とを備え、
車体側面視で、前記切り欠き部(71)は、前記前壁(51F)の上端と前記後壁(51R)の上端とをつなぐ直線よりも下方に凹んでいる
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記側壁(51S)は、前記バッテリ収容部(51)を支持するフレーム(21)と前記切り欠き部(71)との間で車幅方向外側に露出する化粧面(72A)を備え、
前記化粧面(72A)は、上方に行くほど車幅中心に近づく傾斜のテーパー面である
請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記シートヒンジ(17S)は、前記バッテリ収容部(51)の前壁(51F)の上部に位置して前記シート(17)の前ヒンジとして機能し、
前記シート(17)は、このシート(17)を閉じた場合に車体側面視で前記化粧面(72A)を覆う下方凸形状を有する
請求項5に記載の鞍乗り型車両。
【請求項7】
前記バッテリ収容部(51)は、2個の前記バッテリ(52)を前後に並べると共に前側のバッテリ(52)の上端よりも後側のバッテリ(52)の上端を高くした状態で収容し、
前記前壁(51F)の上端は、前記後壁(51R)の上端よりも低く、前記切り欠き部(71)は、前記後壁(51R)から前方に離れるほど低くなる
請求項4に記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
前記バッテリ(52)の上部にバッテリハンドル(53)が設けられ、
前記切り欠き部(71)は、前記バッテリ収容部(51)内の前記バッテリ(52)の前記バッテリハンドル(53)と車幅方向で重なる
請求項1から7のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の鞍乗り型車両には、シートの下方に、バッテリを収容するバッテリ収容部を備え、充電時にはバッテリを取り外し、屋内等でバッテリを充電できるようにした構成が知られている。バッテリ収容部は、バッテリを前後左右から囲い、バッテリの上部を前後左右から隠れるように収容する(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バッテリは重量を有するため、バッテリを出し入れする際にバッテリを持ち上げる高さを下げることが望まれる。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、バッテリを持ち上げる高さを低くし、バッテリの着脱作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シートの下方にバッテリ収容部を備え、バッテリ収容部はバッテリを着脱可能に収容する鞍乗り型車両において、前記シートは、前記バッテリ収容部よりも高い位置のシートヒンジに開閉自在に取り付けられ、前記バッテリ収容部の側壁は、前記シートヒンジよりも下方に凹む切り欠き部を有し、前記切り欠き部は、前記バッテリ収容部内の前記バッテリの上部より下方の位置でバッテリ側面と車幅方向で重なる鞍乗り型車両を提供する。
【発明の効果】
【0006】
バッテリを持ち上げる高さを低くし、バッテリの着脱作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図2】バッテリ収容部を周辺構成と共に車体左側から示す図である。
【
図3】バッテリ収容部を上方から周辺構成と共に示す図である。
【
図5】バッテリ収容部を周辺構成と共に車体左側から示す図である。
【
図8】着脱自在な給電ユニットの一例を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る鞍乗り型車両の側面図である。
【
図10】
図9のB-B断面をサブフレームと共に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LHは車体左方を示す。
【0009】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
鞍乗り型車両10は、モノコックフレームを採用したスクータ型の電動二輪車であり、モノコックフレームからなる車体フレーム11と、パワーユニットとして機能する駆動用のモータ12と、前輪13を操舵自在に支持するフロントフォーク14と、後輪15を支持するスイングアーム16と、乗員用のシート17とを備える。
鞍乗り型車両10は、乗員がシート17に跨るようにして着座する車両である。シート17は、車体フレーム11の後部の上方に設けられる。
【0010】
車体フレーム11は、ヘッドパイプ18、ダウンフレーム部19、フロアフレーム部20、及びリアフレーム部21が一体であって、金属材や炭素繊維強化樹脂等の剛性を有する材料で形成されることによって、車体のボディ(車体カバーと言うこともできる)を兼用するモノコックフレームに形成される。
ヘッドパイプ18は、車体フレーム11の前部に設けられ、ダウンフレーム部19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びるフレーム部分を構成し、該ダウンフレーム部19にフロントカバー19A及びレッグシールド19Bを設ける。フロアフレーム部20は、ダウンフレーム部19の下端部から後方に延びるフレーム部分及びアンダーカバーを構成する。リアフレーム部21は、フロアフレーム部20の後端から後上方に延びるフレーム部分及びサイドカバー等を構成する。なお、リアフレーム部21は、シート17等を支持するシートフレームとしても機能する。
【0011】
モータ12は、後輪15のホイールに収められるインホイールモータであり、後輪15を駆動する。フロントフォーク14は、ヘッドパイプ18によって左右に操舵自在に支持される。前輪13は、フロントフォーク14の下端部に設けられる車軸13aに回転自在に支持される。乗員が把持する操舵用のハンドル11Hは、フロントフォーク14の上端部に取り付けられる。
スイングアーム16は、車体フレーム11の後下部に回動自在に支持され、車体フレーム11から後方に延出する。スイングアーム16の後端部には、後輪15を支持する車軸15aが設けられる。リアフレーム部21とスイングアーム16との間にはリアクッション23が介挿される。
【0012】
乗員用のシート17は、リアフレーム部21の前上部にシートヒンジ17Sを介して揺動可能に支持される。シート17とダウンフレーム部19との間には、下方に凹む足跨ぎ空間が形成される。足跨ぎ空間の下方、かつフロアフレーム部20の左右には、乗員が足を置くステップフロア24が設けられる。
【0013】
図2は、シート17下方のバッテリ収容部51を周辺構成と共に車体左側から示す図である。
図2では、シート17の外形線を二点鎖線で示している。
シート17は、シート17の前部に位置するシートヒンジ17Sに回動自在、つまり、開閉自在に取り付けられる。シート17の下方には、車体駆動用のバッテリ52を着脱自在に収容するバッテリ収容部51が支持される。シート17を開くことにより、バッテリ収容部51内に外部からアクセス可能となり、シート17を閉じることによって、バッテリ収容部51内に外部からアクセス不能となる。
【0014】
図3は、バッテリ収容部51を上方から周辺構成と共に示す図である。
図3に示す符号L0は、車幅中心を前後方向に延びる面であり、以下、「車幅中心L0」と表記する。
バッテリ収容部51は、上方に開口するボックス形状を有し、駆動用のバッテリ52を着脱自在に収容する。本実施形態のバッテリ収容部51は、同サイズの2個のバッテリ52を、前後に並べると共に前側のバッテリ52の上端よりも後側のバッテリ52の上端を高くした状態で収容する。シートヒンジ17Sは、前後のバッテリ52よりも上方かつ前方に設けられてシート17の前ヒンジとして機能する。
【0015】
図1に示すように、鞍乗り型車両10は、バッテリ52以外の電装部品として、モータ12等の制御装置として機能するPCU(Power Control Unit)61、電力変換装置62、及び、バッテリ52を車載している状態で充電可能とする給電口として機能する給電ユニット63等を備えている。
PCU61及び電力変換装置62は、フロアフレーム部20内に収容され、給電ユニット63は、ダウンフレーム部19の上部背面に取り付けられる。電力変換装置62は、DC-DCコンバータを含む電力変換回路を有し、バッテリ52を充電したり、バッテリ52の電力を所定電力に変換して給電ユニット63に出力したりする。給電ユニット63は、所定の電力を出力する出力ポートを有し、この出力ポートを介してユーザ(例えば乗員)が携帯する携帯端末等を充電可能である。つまり、電力変換装置62は、携帯端末等の外部機器の充電装置として機能する。なお、給電ユニット63は、充電用途に限定されず、任意の電力機器の動作電源としても利用可能である。
【0016】
<バッテリ52及びバッテリ収容部51について>
バッテリ52及びバッテリ収容部51について説明する。
図4は、バッテリ52の斜視図である。
バッテリ52は、モータ12の駆動用電源となるバッテリであり、例えば48Vのバッテリである。バッテリ52は上下方向に延びる直方体形状に形成され、バッテリ52の上部には、ユーザが把持可能なバッテリハンドル53が設けられる。バッテリ52の底面にはバッテリ端子(不図示)が設けられ、このバッテリ端子を介して車体と電気的に接続される。バッテリハンドル53をユーザが把持することによって、バッテリ52の持ち運びが容易になる。
【0017】
図5は、バッテリ収容部51を周辺構成と共に車体左側から示す図である。
図5に示すように、バッテリ収容部51は、前壁51Fと、左右の側壁51Sと、後壁51Rとを備え、上方に開口部51K(
図3)を有するボックス形状に形成されている。
図3に示すように、バッテリ収容部51は、車体上面視で、左右長に比して前後長が大きく、かつ、後方に行くほど左右長が広くなる形状であり、車幅中心L0を基準にして左右対称形状である。
なお、バッテリ収容部51は、完全な左右対称形状に限定されず、左右対称形状でなくてもよい。
【0018】
バッテリ収容部51は、同サイズの2個のバッテリ52を、前後に並べると共に前側のバッテリ52の上端よりも後側のバッテリ52の上端を高くした状態でそれぞれ収容する。収容するための保持構造は、特に限定されるものではないが、例えば、2個のバッテリ52をそれぞれ上方に取り出し自在に収容する有底のケースを備えている。また、保持構造には、
図3及び
図5に示すように、バッテリ52の上方に移動自在なロックレバー55(操作レバー、操作ハンドル等とも称される)が設けられる。ロックレバー55をバッテリ52の上方に移動した状態では、バッテリ52の取り出しが規制され、ロックレバー55をバッテリ52の上方から待避した状態では、バッテリ52の取り出しが可能になる。
【0019】
図5に示すように、バッテリ収容部51の左右の側壁51Sには、上面がバッテリ52よりも低い位置まで下方に凹む切り欠き部71が設けられる。
左右の側壁51Sの切り欠き部71は、車幅中心L0を基準にして左右対称形状である。各切り欠き部71は、前後のバッテリ52の上部より下方の位置でバッテリ側面と車幅方向で重なる範囲であって、シート17を閉じたときに、シート17と車体側面視で重なる範囲に設けられている。
換言すると、シート17は、このシート17を閉じたときに、各切り欠き部71を車幅方向外側から覆う下方凸形状を有している。これにより、シート17を閉じているときに側方から各バッテリ52へのアクセスが規制される。
【0020】
また、バッテリ収容部51の左右、つまり、左右の側壁51Sの左右外側には、サイドカバーを兼用するリアフレーム部21(
図5)が位置する。リアフレーム部21の上縁21Uは、バッテリ収容部51の切り欠き部71よりも低い位置に設けられる。リアフレーム部21の上縁21Uは、下方に凹む形状を有している。より具体的には、
図2に示すように、リアフレーム部21の上縁21Uは、シート17を閉じたときに、シート17の左右の下縁に沿った形状で延在し、かつ、シート17の左右の下縁よりも上方に位置する。そのため、シート17を閉じた場合には、シート17とリアフレーム部21とが連続し、バッテリ収容部51の側壁51Sは外部に露出しない。
【0021】
図5等を参照しながらバッテリ収容部51の各部について説明する。以下の説明において、前後のバッテリ52を特に区別して表記する場合、前側のバッテリ52を「前側バッテリ52」と表記し、後側のバッテリ52を「後側バッテリ52」と表記する。
前壁51Fは、前側バッテリ52の前方に位置し、前側バッテリ52の上部と同一又は近傍の高さに上端を有する壁に形成される。シートヒンジ17Sは、前壁51Fの上部に位置することによって、バッテリ収容部51、及び前後のバッテリ52よりも高い位置であって、前後のバッテリ52の直上を避けた位置に配置される。
【0022】
後壁51Rは、後側バッテリ52の後方に位置し、後側バッテリ52の上部と同一又は近傍の高さに上端を有する壁に形成される。これによって、前後のバッテリ52は、前壁51F及び後壁51Rによって前後からバッテリ52上部が囲まれる。
左右の側壁51Sは、車体側面視で、前後のバッテリ52の側方を前後に渡って延出する。各側壁51Sの切り欠き部71は、前壁51Fの上端と後壁51Rの上端とをつなぐ直線LSよりも下方に凹む形状である。より具体的には、切り欠き部71は、前壁51Fの上端位置から後下方に傾斜する第1傾斜部71Aと、第1傾斜部71Aの下端から後方に延びる後方延出部71Bと、後方延出部71Bの後端から後壁51Rの上端位置まで後上方に延びる第2傾斜部71Cとを備える形状である。
【0023】
第1傾斜部71Aは、車体側面視で、前側バッテリ52よりも前方の位置から、前側バッテリ52の上部よりも下方、かつ、前側バッテリ52の側面と車幅方向で重なる位置に向かって後下方に延出する。
後方延出部71Bは、第1傾斜部71Aの下端から、前後のバッテリ52の上部よりも下方を後方に延出し、後側バッテリ52の側面と車幅方向で重なる位置まで延出する。この後方延出部71Bは、切り欠き部71の最下部を構成している。後方延出部71Bの前後長LBは、バッテリ52の前後長(奥行き方向の長さに相当)と同じか、それよりも大きい長さに設定される。
【0024】
また、第1傾斜部71Aの前後長LAは、後方延出部71Bの前後長LC及びバッテリ52の前後長よりも短い。したがって、後方延出部71Bは、車体側面視で、切り欠き部71のうち、前側バッテリ52と重なる範囲が最も長い領域を構成する。
これにより、前側バッテリ52の上部を、車体側面視で前後方向及び上下方向に広く露出させることができる。本構成では、第1傾斜部71A及び後方延出部71Bによって、前側バッテリ52の最上部を構成するバッテリハンドル53を含む領域を、車幅方向に露出させることができ、側方からバッテリハンドル53へのアクセスが容易である。
【0025】
第2傾斜部71Cは、後方延出部71Bの後端から、後側バッテリ52の上部に向かって後上方に延出し、後壁51Rの上端位置と車幅方向で重なる位置まで延出する。これによって、第2傾斜部71Cは、後側バッテリ52の上部より下方の位置で後側バッテリ52の側面と車幅方向で重なる位置を通って後上方に延出する。
第2傾斜部71Cの前後長LCは、バッテリ52の前後長と同じか、それよりも大きい長さに設定される。そのため、第2傾斜部71Cは、車体側面視で、切り欠き部71のうち、後側バッテリ52と重なる範囲が最も前後に長い領域を構成し、後側バッテリ52の上部を前後方向及び上下方向に広く露出させる。
本構成では、第2傾斜部71Cによって、後側バッテリ52の最上部を構成するバッテリハンドル53を含む領域を、車幅方向に露出させることができ、側方からバッテリハンドル53へのアクセスが容易である。
【0026】
シート17を開いた場合、切り欠き部71があるので直線LSより下方の範囲が車幅方向に露出するので、各バッテリ52の上部を車幅方向に効果的に露出させることができる。また、切り欠き部71は、後壁51Rから前方に離れるほど低くなる傾斜形状を有するので、相対的に高い位置に配置された後側バッテリ52の上部と、相対的に低い位置に配置された前側バッテリ52の上部とを、車幅方向に広く露出させることができる。
【0027】
左右の側壁51Sは、バッテリ収容部51を支持するリアフレーム部21と切り欠き部71との間に位置する壁部72を備えている。この壁部72の車幅方向外側の面は、外観性向上に寄与する化粧面72Aに形成されている。
化粧面72Aの構成は特に限定されるものではないが、例えば、色彩、模様及び形状の少なくともいずれかによって外観性を向上させた構成、或いは、リアフレーム部21の表面と色彩、模様及び形状の少なくともいずれかを同系の表面、又は,同系でない表面にした構成を有している。
シート17を開けたときに化粧面72Aが露出するので、シート17を開けた状態の外観性向上に寄与する。なお、シート17を閉じたときは、
図1及び
図2に示すように、シート17によって化粧面72Aが覆われる。つまり、シート17は、このシート17を閉じたときに車体側面視で、前記側壁51Sの化粧面72Aを覆う下方凸形状でもある。
【0028】
図6は、
図5のA-A断面を示す図である。但し、
図6には、車幅中心L0を基準にして車体右側がシート17を閉じた状態を示し、車体左側がシート17を開いた状態を示している。
図6に示すように、壁部72の化粧面72Aは、前後のバッテリ52の車幅方向外側にそれぞれ位置し、上方に行くほど車幅中心L0に近づく傾斜のテーパー面に形成されている。これにより、ユーザは、バッテリ収容部51の開口部51Kへのアプローチがし易くなる。
【0029】
この鞍乗り型車両10は、充電時にはバッテリ52を取り外し、屋内等でバッテリ52を充電できるようにした車両であり、又は、バッテリ52を交換式とし、バッテリ52のシェアリングを実現可能にした車両である。
バッテリ52を取り外す際には、シート17を開き、バッテリ収容部51の周囲壁を乗り越えるようにバッテリ52を移動させる必要がある。また、バッテリ52を装着する際にも、車外からバッテリ収容部51の周囲壁を乗り越えるようにバッテリ52を移動させる必要がある。
【0030】
本構成のバッテリ収容部51は、
図5に示したように、シートヒンジ17Sよりも下方に凹む切り欠き部71を有する側壁51Sを備え、切り欠き部71は、バッテリ収容部51内のバッテリ52の上部より下方の位置でバッテリ側面と車幅方向で重なる構成である。この構成により、シート17を開くと、各バッテリ52の上部が車幅方向に露出する。
したがって、各バッテリ52をバッテリ収容部51から取り出す際に、バッテリ52の上部が露出する上下長の分だけ、バッテリ52を持ち上げる高さを下げることができる。
また、バッテリ52をバッテリ収容部51内に移動する場合、切り欠き部71の箇所を乗り越えるようにバッテリ52を移動させればよいので、バッテリ52をシートヒンジ17S等の高さまで持ち上げる必要がない。これらにより、バッテリ52を持ち上げる高さを低くすることができ、バッテリ52の着脱作業が容易になる。
【0031】
また、シートヒンジ17Sは、バッテリ52よりも上方に位置するので、バッテリ52の側方を覆うバッテリ収容部51の側壁51Sを切り欠くスペースを確保できる。
また、リアフレーム部21は、バッテリ収容部51の少なくとも左右の側壁51Sを支持し、切り欠き部71は、リアフレーム部21の上方に位置する。この構成によれば、重量を有するバッテリ52を収容するバッテリ収容部51を高剛性のフレーム部材で支持できると共に、フレーム部材が切り欠き部71を介したバッテリ52の移動を阻害しない。
【0032】
さらに、バッテリ収容部51は、バッテリ収容部51内のバッテリ52の上部と同一又は近傍の高さを有する前壁51Fと後壁51Rとを備え、車体側面視で、切り欠き部71は、前壁51Fの上端と後壁51Rの上端とをつなぐ直線LSよりも下方に凹んでいる。この構成によれば、バッテリ収容部51によってバッテリ52を周囲から保護可能に収容しながら、側壁51Sの切り欠き部71によってバッテリ52を持ち上げる高さを低くし、バッテリ52の着脱作業を容易にすることができる。
【0033】
また、
図6に示したように、側壁51Sは、バッテリ収容部51を支持するリアフレーム部21と切り欠き部71との間で車幅方向外側に露出する化粧面72Aを備え、化粧面72Aは上方に行くほど車幅中心L0に近づく傾斜のテーパー面である。この構成によれば、化粧面72Aによって外観性を向上しながら、バッテリ収容部51の開口部51Kへのアプローチをし易くなる。したがって、例えば、バッテリ収容部51にバッテリ52が収容される場合、ユーザが、車幅方向外側から各バッテリ52へのアクセスが容易になる。また、バッテリ収容部51内にバッテリ52が無い場合、車幅方向外側からバッテリ52を開口部51K内へ移動させ易くなる。
【0034】
また、
図2に示したように、シートヒンジ17Sは、バッテリ収容部51の前壁51Fの上部に位置してシート17の前ヒンジとして機能し、シート17は、このシート17を閉じた状態のときに、車体側面視で、側壁51Sの化粧面72Aを覆う下方凸形状を有している。この構成によれば、シート17を開いた状態で側面が露出するバッテリ52を、シート17を閉じた場合にシート17で覆って露出しないようにすることができる。
【0035】
また、
図5に示したように、バッテリ収容部51は、2個のバッテリ52を、前後に並べると共に前側バッテリ52の上端よりも後側バッテリ52の上端を高くした状態で収容し、前壁51Fの上端は、後壁51Rの上端よりも低く、切り欠き部71は、後壁51Rから前方に離れるほど低くなる。この構成によれば、前後のバッテリ52の異なる高さに合わせた前壁51Fと後壁51Rを有するバッテリ収容形状にしながら、前後のバッテリ52を車幅方向に露出可能にすると共に、側壁51Sの剛性を十分に確保し易くなる。
【0036】
さらに、各バッテリ52の上部にはバッテリハンドル53が設けられ、切り欠き部71は、バッテリ収容部51内の各バッテリ52のバッテリハンドル53と車幅方向で重なるので、車幅方向外側から各バッテリ52のバッテリハンドル53にアクセスし易くなり、バッテリ収容部51からバッテリ52を取り出し易くなる。
【0037】
<給電ユニット63について>
続いて、給電ユニット63について説明する。
図7は、給電ユニット63の一例を示す図である。
図7中の符号Aは給電ユニット63の正面図を示し、符号Bは側面図を示し、符号Cは給電ユニット63の出力ポートを露出させた状態を示している。本実施形態において、出力ポートはUSB(Universal Serial Bus)ポート63Pである。
図7に示すように、給電ユニット63は、外観視で略円柱形状の本体部63Aを備え、本体部63Aの表面(外部に露出する面)かつ中央にUSBポート63Pを備えると共に、USBポート63Pを開閉自在な蓋部63Bを備えている。
【0038】
蓋部63Bは、回転支点63Cを基準にして本体部63Aの表面に沿ってスライド自在に設けられ、USBポート63Pを隠蔽自在である。そのため、蓋部63Bをスライドさせることによって、USBポート63Pを露出させた状態に維持でき、USBポート63PへUSB端子を接続する作業、及び、接続状態を維持させることが容易である。
また、蓋部63BでUSBポート63Pを閉じることによってUSBポート63Pへの水分や塵埃等の進入を抑制できる。USBポート63Pからは、電力変換装置62を介してUSB規格に従った所定の電力が出力される。これにより、任意のUSB機器に給電することができ、例えば、スマートフォン等の携帯端末を充電可能になる。
【0039】
この給電ユニット63を鞍乗り型車両10に着脱自在に構成してもよい。この場合の給電ユニット63の構成を説明する。なお、この給電ユニット63の表側が、
図7に示したようなUSBポート63Pを備える構成でもよい。
図8は、着脱自在な給電ユニット63の一例を示す図であり、
図8中の符号Aは給電ユニット63の裏面図を示し、符号Bは側面図を示す。
図8に示すように、給電ユニット63の裏側には起立自在な接続用端子63Dが設けられる。なお、
図8中のケーブル63Eは、接続用端子63Dにつながるケーブルであり、電力変換装置62に接続されている。
【0040】
この給電ユニット63は、鞍乗り型車両10に着脱自在であり、ケーブル63Eは、給電ユニット63を鞍乗り型車両10から所定距離まで離間させることが可能な長さに設定されている。これにより、鞍乗り型車両10から離れた箇所まで給電ユニット63、つまり、接続用端子63Dを移動させることができる。
【0041】
例えば、接続用端子63Dはバッテリ52の充電用プラグとして使用される。この場合、接続用端子63Dを、所定のコンセントに接続することにより商用電力等の電力系統(例えば電灯線)からの交流電力が鞍乗り型車両10側に供給される。電力変換装置62は、この交流電力をバッテリ52の充電に適した直流電力に変換し、バッテリ52を充電させる機能を有している。
【0042】
なお、接続用端子63Dを充電用に利用する場合を例示したが、給電用に利用してもよい。給電用に利用する場合、電力変換装置62が、バッテリ52の電力を所定の給電用電力(例えば、100Vの交流電力)に変換し、接続用端子63Dから出力させるようにしてもよい。給電ユニット63の各部の形状や構成は適宜に変更してもよいし、給電ユニット63を設ける位置についても適宜に変更してもよい。
【0043】
[第2実施形態]
図9は、本発明の第2実施形態に係る鞍乗り型車両10の側面図である。
この鞍乗り型車両10は、車体フレーム11がモノコックフレームではなく、車体フレーム11を覆う車体カバー30を備えると共に、バッテリ収容部51を支持するサブフレーム40を備えている。
図9にはPCU61及び電力変換装置62の図示は省略している。なお、第1実施形態と同様の構成は同一の符号を付して示し、重複説明は省略する。
【0044】
車体フレーム11のヘッドパイプ18、ダウンフレーム部19、フロアフレーム部20、及びリアフレーム部21は、金属製のパイプ材等で製作されている。ダウンフレーム部19は、ヘッドパイプ18から後下方に延びており、フロアフレーム部20は、ヘッドパイプ18の下端部から後方に延びている。フロアフレーム部20は、ステップフロア24を支持する。フロアフレーム部20の後端には車幅方向に延びるクロスフレーム20Cが接続される。リアフレーム部21は、クロスフレーム20Cから左右に間隔を空けて後上方に延びている。車体フレーム11を構成する各部材は、溶接等によって互いに接続され、全体として高い強度を有している。
【0045】
車体カバー30は、車体前部を前方及び左右側方から覆うフロントカバー31と、フロントカバー31の後部から左右に張り出すレッグシールド32と、ダウンフレーム部19を左右から覆うアンダーカバー33と、リアフレーム部21を左右から覆うサイドカバー34とを備える。車体カバー30は、樹脂製カバーからなる。
【0046】
サブフレーム40は、バッテリ収容部51と車体フレーム11との間で上下に空くスペースを利用して設けられる。
図10は、
図9のB-B断面をサブフレーム40と共に示す図である。
サブフレーム40は、クロスフレーム20Cから左右に間隔を空けて上方に延びる左右一対の縦フレーム41と、左右一対の縦フレーム41の上部間をつなぐ横フレーム42と、左右一対の縦フレーム41の途中から後方に延びて左右一対のリアフレーム部21にそれぞれ接続される後方延出フレーム43とを備える。サブフレーム40の各部は、金属製のパイプ材等で製作され、溶接等によって互いに接続され、全体として高い強度を有している。
【0047】
サブフレーム40は、車体側面視でバッテリ収容部51の下面に沿って延出し、バッテリ収容部51の少なくとも左右の側壁51Sを支持する。これにより、重量を有するバッテリ収容部51を高剛性のフレーム部材で支持できる。また、サブフレーム40は、バッテリ収容部51の側壁51Sよりも下方に位置するので、フレーム部材からなるサブフレーム40が切り欠き部71を介したバッテリ52の移動を阻害しない。
【0048】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、バッテリ収容部51は、シートヒンジ17Sよりも下方に凹む切り欠き部71を有する側壁51Sを備え、切り欠き部71は、バッテリ収容部51内のバッテリ52の上部より下方の位置でバッテリ側面と車幅方向で重なる等の各種の構成を備える。これにより、第1実施形態と同様に、バッテリ52を持ち上げる高さを低くすることができ、バッテリ52の着脱作業が容易になる。
【0049】
上述の各実施形態は本発明の一態様を示すものであり、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、細部等の構成は適宜に変更してもよい。
例えば、上記実施形態では、バッテリ収容部51が2個のバッテリ52を前後に並べて収容する構成の場合を説明したが、この構成に限定されない。例えば、バッテリ収容部51が1個又は3個以上のバッテリ52を収容する構成でもよいし、バッテリ52を並べる方向は左右方向でもよい。
また、本発明を、
図1等に示す自動二輪車に適用する場合を説明したが、これに限定されず、本発明を、任意の鞍乗り型車両に適用してもよい。なお、鞍乗り型車両は、二輪車両に限定されず、三輪車両、及び四輪車両等でもよい。
【0050】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0051】
(構成1)シートの下方にバッテリ収容部を備え、バッテリ収容部はバッテリを着脱可能に収容する鞍乗り型車両において、前記シートは、前記バッテリ収容部よりも高い位置のシートヒンジに開閉自在に取り付けられ、前記バッテリ収容部の側壁は、前記シートヒンジよりも下方に凹む切り欠き部を有し、前記切り欠き部は、前記バッテリ収容部内の前記バッテリの上部より下方の位置でバッテリ側面と車幅方向で重なる鞍乗り型車両。この構成によれば、バッテリを持ち上げる高さを低くし、バッテリの着脱作業を容易にすることができる。
【0052】
(構成2)前記シートヒンジは、前記バッテリよりも上方に位置する構成1に記載の鞍乗り型車両。この構成によれば、バッテリの側方を覆うバッテリ収容部の側壁を切り欠くスペースを確保できる。
【0053】
(構成3)前記側壁を支持するフレームを備え、前記切り欠き部は、前記フレームの上方に位置する構成1又は2に記載の鞍乗り型車両。この構成によれば、重量を有するバッテリを収容するバッテリ収容部を高剛性のフレーム部材で支持できると共に、フレーム部材が切り欠き部を介したバッテリの移動を阻害しない。
【0054】
(構成4)前記バッテリ収容部は、前記バッテリ収容部内の前記バッテリの上部と同一又は近傍の高さを有する前壁と後壁とを備え、車体側面視で、前記切り欠き部は、前記前壁の上端と前記後壁の上端とをつなぐ直線よりも下方に凹んでいる構成1から3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。この構成によれば、バッテリ収容部によってバッテリを周囲から保護可能に収容しながら、側壁の切り欠き部によってバッテリを持ち上げる高さを低くし、バッテリの着脱作業を容易にすることができる。
【0055】
(構成5)前記側壁は、前記バッテリ収容部を支持するフレームと前記切り欠き部との間で車幅方向外側に露出する化粧面を備え、前記化粧面は、上方に行くほど車幅中心に近づく傾斜のテーパー面である構成1から4のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。この構成によれば、化粧面によって外観性を向上しながら、バッテリ収容部の開口部へのアプローチをし易くなる。
【0056】
(構成6)前記シートヒンジは、前記バッテリ収容部の前壁の上部に位置して前記シートの前ヒンジとして機能し、前記シートは、このシートを閉じた場合に車体側面視で前記化粧面を覆う下方凸形状を有する構成5に記載の鞍乗り型車両。この構成によれば、シートを開いた状態で側面が露出するバッテリを、シートを閉じた場合にシートで覆って露出しないようにすることができる。
【0057】
(構成7)前記バッテリ収容部は、2個の前記バッテリを前後に並べると共に前側のバッテリの上端よりも後側のバッテリの上端を高くした状態で収容し、前記前壁の上端は、前記後壁の上端よりも低く、前記切り欠き部は、前記後壁から前方に離れるほど低くなる構成4に記載の鞍乗り型車両。この構成によれば、前後のバッテリの異なる高さに合わせた前壁と後壁を有するバッテリ収容形状にしながら、前後のバッテリを車幅方向に露出可能にすると共に、側壁の剛性を十分に確保し易くなる。
【0058】
(構成8)前記バッテリの上部にバッテリハンドルが設けられ、前記切り欠き部は、前記バッテリ収容部内の前記バッテリの前記バッテリハンドルと車幅方向で重なる構成1から7のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両。この構成によれば、車幅方向外側からバッテリのバッテリハンドルにアクセスし易くなり、バッテリ収容部からバッテリを取り出し易くなる。
【符号の説明】
【0059】
10 鞍乗り型車両
11 車体フレーム
13 前輪
15 後輪
16 スイングアーム
17 シート
17S シートヒンジ
18 ヘッドパイプ
21 リアフレーム部
40 サブフレーム
51 バッテリ収容部
51F 前壁
51S 側壁
51R 後壁
52 バッテリ
53 バッテリハンドル
63 給電ユニット(給電口)
71 切り欠き部
71A 第1傾斜部
71B 後方延出部
71C 第2傾斜部
72 壁部
72A 化粧面
L0 車幅中心