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特開2024-109338移動体の窓部構造体、バックドアおよび移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109338
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】移動体の窓部構造体、バックドアおよび移動体
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/18 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B60J1/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014076
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保井 猛
(57)【要約】
【課題】ウインドウ、アウターパネルおよびインナーパネルの接合強度をより容易に高めることができ、かつ塗装割れに生じにくくすることができる移動体の窓部構造体を提供すること。
【解決手段】移動体内部方向への凸部を有するウインドウと、前記ウインドウの移動体内部側に接して配置されたアウターパネルと、前記ウインドウの前記凸部に接し、かつ前記凸部への接触部とは異なる位置で前記アウターパネルに接して配置されたインナーパネルと、を有する移動体の窓部構造体。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体内部方向への凸部を有するウインドウと、
前記ウインドウの移動体内部側に接して配置されたアウターパネルと、
前記ウインドウの前記凸部に接し、かつ前記凸部への接触部とは異なる位置で前記アウターパネルに接して配置されたインナーパネルと、
を有する移動体の窓部構造体。
【請求項2】
前記アウターパネルは、前記ウインドウおよび前記インナーパネルに接するフランジ部を有し、
前記フランジ部は、先端が前記ウインドウの前記凸部に接して配置された、
請求項1に記載の窓部構造体。
【請求項3】
前記インナーパネルの前記凸部との接触部と、
前記インナーパネルの前記アウターパネルとの接触部とは、
連続して配置された、
請求項1に記載の窓部構造体。
【請求項4】
前記凸部の高さは、前記アウターパネルの厚みと同一である、
請求項1に記載の窓部構造体。
【請求項5】
前記インナーパネルは、前記ウインドウの前記凸部および前記アウターパネルに、接着剤により接着された、
請求項1に記載の窓部構造体。
【請求項6】
前記アウターパネルは、前記ウインドウに開口する貫通孔を有する、
請求項1に記載の窓部構造体。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記アウターパネルの、前記ウインドウの周縁端部に対応する位置に配置されている、
請求項6に記載の窓部構造体。
【請求項8】
前記貫通孔は、接着剤が充填されている
請求項6に記載の窓部構造体。
【請求項9】
前記インナーパネルは、前記貫通孔への前記接着剤の流入を促進するせき止め部を有する、
請求項8に記載の窓部構造体。
【請求項10】
前記ウインドウおよび前記アウターパネルは、樹脂製の多色成形品である、
請求項1に記載の窓部構造体。
【請求項11】
ウインドウと、
インナーパネルと、
前記ウインドウと前記インナーパネルとに挟まれて配置された、貫通孔を有するアウターパネルと、
を有し、
前記ウインドウ、インナーパネルおよびアウターパネルは、前記貫通孔に充填された接着剤により接着されている、
移動体の窓部構造体。
【請求項12】
前記貫通孔は、前記アウターパネルの、前記ウインドウの周縁端部に対応する位置に配置されている、
請求項11に記載の窓部構造体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の窓部構造体を有する、バックドア。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか1項に記載の窓部構造体を有する、移動体。
【請求項15】
自動車である、請求項14に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の窓部構造体、バックドアおよび移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
移動体の窓部を、接着剤によりアウターパネルおよびインナーパネルに接着する構成は公知である。図1は窓部を有するバックドアの外観を示す模式図であり、図2は窓部がアウターパネル(下部アウターパネル)およびインナーパネルに組み付けられている従来の構成を示す、図1の一点鎖線A-Aにおける模式断面図である。
【0003】
図1および図2に示すバックドア10は、上部アウターパネル112および下部アウターパネル114と、インナーパネル120と、ウインドウ130と、内装トリム140とを有する。そして、図2に示すように、下部アウターパネル114は、ウインドウ130の内部に入り込んで延在するフランジ部114aを有する。同様に、インナーパネル120も、ウインドウ130の内部に入り込んで延在するフランジ部120aを有する。そして、下部アウターパネル114のフランジ部114aの外側面が接着剤150aによりウインドウ130に接着され、フランジ部114aの内側面が接着剤150bによりインナーパネル120のフランジ部120aに接着されることで、ウインドウ130、下部アウターパネル114およびインナーパネル120が接着される(たとえば特許文献1および特許文献2などを参照)。また、内装トリム140も、接着剤150cによりウインドウ130に接着されている。なお、ウインドウ130のうち内部にこれらの部材が配置された領域には、内部の構造を外部から視認しにくくするための着色部162が設けられている。また、ウインドウ130および下部アウターパネル114の車体外側には、これらをまたぐように、外装塗装160がなされている。
【0004】
また、近年では、車体の軽量化を図るためアウターパネルやインナーパネル等の部材に樹脂製の部材を用いたり、ウインドウに透明樹脂製の樹脂ガラスを用いたりされている。特許文献3には、このとき樹脂製の窓ガラスと、樹脂製の成形パネル(アウターパネルに相当)と、窓ガラスおよび成形パネルの内側に配置される窓枠とを、多色成形法により一体化して成形できることが記載されている。なお、特許文献3には、窓ガラスまたは成形パネルと、窓枠と、の接合部に段差構造または溝と突起とによる篏合構造を形成することで、これらの固着面積を大きくして、接合強度を高めることができると記載されている。
【0005】
また、特許文献4には、樹脂ガラスの周縁部にある不透明のブラックアウト部に突起を設け、この突起を車体(アウターパネルに相当)に挿入することで車体に対して位置決めすることができる、樹脂ガラスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005-1404号公報
【特許文献2】特開2010-247676号公報
【特許文献3】特開2012-206721号公報
【特許文献4】特開2010-247676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1および特許文献2に記載のような、従来の構造を有する窓部構造体に対して、ウインドウ、アウターパネルおよびインナーパネルの接着強度をより高めたいという要求がある。
【0008】
これに対し、ウインドウとアウターパネルとの間、およびアウターパネルとインナーパネルとの間に、特許文献3に記載のような段差構造や篏合構造を設ければ、接着面積を広くしてこれらの部材の接着強度を高めることができると考えられる。しかし、このような段差構造や篏合構造を接着剤で接着すると、接着剤の厚みを一定にしにくいため、接着剤の塗布効率が低下したり、接着力の継時安定性が低下したりしやすい。
【0009】
また、特許文献1および特許文献2に記載のような、従来の構造を有する窓部構造体では、ウインドウやアウターパネルに応力が負荷されたときに、ウインドウとアウターパネルの境界部に応力が集中してしまい、境界部において外装塗装160に塗装割れが生じることがあった。このような問題は、特許文献3などに記載の多色成形法により成形した多色成形体にもみられた。
【0010】
本発明は上記の課題に鑑みなされたものであり、ウインドウ、アウターパネルおよびインナーパネルの接合強度をより容易に高めることができ、かつ塗装割れに生じにくくすることができる移動体の窓部構造体、ならびに当該窓部構造体を有するバックドアおよび移動体を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、下記[1]~[12]の窓部構造体に関する。
[1]移動体内部方向への凸部を有するウインドウと、
前記ウインドウの移動体内部側に接して配置されたアウターパネルと、
前記ウインドウの前記凸部に接し、かつ前記凸部への接触部とは異なる位置で前記アウターパネルに接して配置されたインナーパネルと、
を有する移動体の窓部構造体。
[2]前記アウターパネルは、前記ウインドウおよび前記アウターパネルに接するフランジ部を有し、
前記フランジ部は、先端が前記ウインドウの前記凸部に接して配置された、
[1]に記載の窓部構造体。
[3]前記インナーパネルの前記凸部との接触部と、
前記インナーパネルの前記アウターパネルとの接触部とは、
連続して配置された、
[1]または[2]に記載の窓部構造体。
[4]前記凸部の高さは、前記アウターパネルの厚みと同一である、
[1]~[3]のいずれかに記載の窓部構造体。
[5]前記インナーパネルは、前記ウインドウの前記凸部および前記アウターパネルに、接着剤により接着された、
[1]~[4]のいずれかに記載の窓部構造体。
[6]前記アウターパネルは、前記ウインドウに開口する貫通孔を有する、
[1]~[5]のいずれかに記載の窓部構造体。
[7]前記貫通孔は、前記アウターパネルの、前記ウインドウの周縁端部に対応する位置に配置されている、
[6]に記載の窓部構造体。
[8]前記貫通孔は、接着剤が充填されている
[6]または[7]に記載の窓部構造体。
[9]前記インナーパネルは、前記貫通孔への前記接着剤の流入を促進するせき止め部を有する、
[8]に記載の窓部構造体。
[10]前記ウインドウおよび前記アウターパネルは、樹脂製の多色成形品である、
[1]~[9]のいずれかに記載の窓部構造体。
[11]ウインドウと、
インナーパネルと、
前記ウインドウと前記インナーパネルとに挟まれて配置された、貫通孔を有するアウターパネルと、
を有し、
前記ウインドウ、インナーパネルおよびアウターパネルは、前記貫通孔に充填された接着剤により接着されている、
移動体の窓部構造体。
[12]前記貫通孔は、前記アウターパネルの、前記ウインドウの周縁端部に対応する位置に配置されている、
[11]に記載の窓部構造体。
【0012】
上記課題を解決するための本発明の他の態様は、下記[13]~[15]のバックドアおよび移動体に関する。
[13][1]~[12]のいずれかに記載の窓部構造体を有する、バックドア。
[14][1]~[12]のいずれかに記載の窓部構造体を有する、移動体。
[15]自動車である、[14]に記載の移動体。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウインドウ、アウターパネルおよびインナーパネルの接合強度をより容易に高めることができ、かつ塗装割れに生じにくくすることができる移動体の窓部構造体、ならびに当該窓部構造体を有するバックドアおよび移動体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、窓部を有するバックドアの外観を示す模式図である。
図2図2は、窓部がアウターパネル(下部アウターパネル)およびインナーパネルに組み付けられている従来の構成を示す、図1の一点鎖線A-Aにおける模式断面図である。
図3図3は、本実施形態の第1の例示的な実施形態に係る窓部構造体において、ウインドウが下部アウターパネルおよびインナーパネルに組み付けられている構成を示す、図1の一点鎖線A-Aにおける別の模式断面図である。
図4図4は、本実施形態の第2の例示的な実施形態に係る窓部構造体において、ウインドウが下部アウターパネルおよびインナーパネルに組み付けられている構成を示す、図1の一点鎖線A-Aにおける別の模式断面図である。
図5図5は、本実施形態の第3の例示的な実施形態に係る窓部構造体において、ウインドウが下部アウターパネルおよびインナーパネルに組み付けられている構成を示す、図1の一点鎖線A-Aにおける別の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施形態]
本発明の第1の例示的な実施形態は、図1に模式的な外観を示す自動車のバックドアが有する、窓部構造体に関する。図1に示すように、本実施形態に関するバックドア100は、上部アウターパネル112、下部アウターパネル114、インナーパネル120およびウインドウ130を有する。また、図1に示すように、バックドア100はいずれも左右一方のテールライトおよびブレーキライト170、ナンバープレートの取付部180を有してもよい。
【0016】
図3は、本実施形態の窓部構造体300において、ウインドウ130が下部アウターパネル114およびインナーパネル120に組み付けられている構成を示す、図1の一点鎖線A-Aにおける模式断面図である。
【0017】
本実施形態において、ウインドウ130は車体の内部方向に突出した凸部132を有する。凸部132の、車体の内部方向への高さは、下部アウターパネル114の厚みと略同一である。なお、本明細書において「略同一」とは、両者のうち値がより大きいものに対し、値がより小さいものの値が10%以内の範囲に含まれることを意味する。
【0018】
下部アウターパネル114は、ウインドウ130に沿って屈曲した段差構造部位114bを有し、その先端にウインドウ130の内部に入り込んで延在するフランジ部114aを有する。下部アウターパネル114は、フランジ部114aがウインドウ130と接して配置されており、フランジ部114aのウインドウ130側の側面(車体外部側の側面)とウインドウ130のフランジ部114a側の側面(車体内部側の側面)とが、接着剤150aにより接着されている。なお、本明細書において、2つの部材が「接して」配置されているとは、これらの部材が単に分離可能に接している態様のほか、接着剤その他の方法により接着または接合されている態様も含む。
【0019】
フランジ部114aの延在長さは特に限定されないが、ウインドウ130の下部アウターパネル114側の端部(車体下方側の端部)から、凸部132の下部アウターパネル114側の端部(車体下方側の端部)までの長さと略同一であることが好ましい。これにより、接着剤150aによる接着面積を最大限に広げて、ウインドウ130と下部アウターパネル114との接着強度をより高めることができる。また、ウインドウ130と下部アウターパネル114とを接着させる際にフランジ部114aの先端を凸部132に当接させて下部アウターパネル114の位置決めを行うことができ、ウインドウ130と下部アウターパネル114との接着時の位置ずれが生じにくい。
【0020】
インナーパネル120は、ウインドウ130の内部に入り込んで延在するフランジ部120aを有する。インナーパネル120は、フランジ部120aが下部アウターパネル114のフランジ部114aと接して配置され、フランジ部120aのウインドウ130側の側面(車体外部側の側面)とフランジ部114aのインナーパネル120側の側面(車体内部側の側面)とが、接着剤150bにより接着されている。インナーパネル120はこのようにして、下部アウターパネル114およびウインドウ130に挟まれ、これらに接して配置される。
【0021】
フランジ部120aの延在長さは、下部アウターパネル114のフランジ部114aの延在長さよりも長く、かつウインドウ130の周縁端部(車体下方側の端部)から、凸部132の周縁側端部(車体下方側の端部)までの長さよりも長い。言い換えると、フランジ部120aは、ウインドウ130の周縁端部から凸部132と同じ位置、あるいは凸部132を超える位置まで延在している。そして、この延在したフランジ部120aと、凸部132のインナーパネル120側の側面(車体内部側の側面)とが、接着剤150bにより接着されている。
【0022】
本実施形態では、インナーパネル120が、接着剤150bにより下部アウターパネル114と接着し、同時に接着剤150bによりウインドウ130の凸部132との接着している。このようにして、インナーパネル120をウインドウ130とも接着させることで、ウインドウ130、下部アウターパネル114およびインナーパネル120の接着強度をより高めることができる。
【0023】
また、本実施形態では、ウインドウ130が、接着剤150aにより下部アウターパネル114と接着し、それとは別に、凸部132において接着剤150bによりインナーパネル120に接着している。凸部132においてウインドウ130をインナーパネル120に接着させることにより、ウインドウ130に負荷された応力を、凸部132における接着部にも分散させ、ウインドウ130と下部アウターパネル114との境界部130aへの応力の集中を生じにくくすることができる。これにより、上記応力により各部材がわずかにたわむことによる、境界部130aにおける塗装割れを生じにくくすることができる。
【0024】
また、本実施形態では、凸部132の高さを下部アウターパネル114の厚みと略同一とすることで、インナーパネル120と凸部132との接触部152を、インナーパネル120と下部アウターパネル114との接触部154と同じ高さにすることができる(ウインドウからの距離を同じにすることができる)。言い換えると、接触部152と接触部154とを同一の直線または曲線上に連続して配置することができる。これにより、接着剤150bの厚みを、接触部152と接触部154とで同一にして、組み付け時にはこれらの接触部に接着剤150bを均一に塗布することを可能とし、接着剤150bの塗布性が良好であり、かつ塗布ムラによる接着力の継時安定性の低下を生じにくくすることができる。
【0025】
なお、ウインドウ130に設けられた凸部132は、当該形状を有するようにウインドウ130を設計して成形してもよいし、車体の塗装時にウインドウ130の透明部に塗料が付着しないように使用する塗装マスク治具の挿入孔を凸部132として使用してもよい。後者の場合、図3に示すように、凸部132はウインドウ130が車体内部側に嵌入した嵌入部となる。このとき、下部アウターパネル114の厚みにあわせて嵌入部の深さを調整してもよいし、嵌入部の深さにあわせてフランジ部114aの厚みを調整してもよい。
【0026】
本実施形態において、ウインドウ130には、接着剤150cにより内装トリム140が接着されている。なお、内装トリム140の接着位置はこれに限定されず、たとえばインナーパネル120等の、別の部材に接着されていてもよい。
【0027】
また、ウインドウ130のうち、下部アウターパネル114(フランジ部114a)、インナーパネル120(フランジ部120a)および内装トリム140が車体内部側に配置された領域には、これら内部の構造を外部から視認しにくくするための着色部162が、車体内部側に設けられている。
【0028】
そして、ウインドウ130のうち下部アウターパネル114(フランジ部114a)が車体内部側に配置された領域と、下部アウターパネル114の車体外部に露出している部位には、車体の外装塗装164が車体外部側に設けられている。そして、塗装マスク治具の挿入孔を凸部132としたときは、ウインドウ130のうち凸部132およびインナーパネル120(フランジ部120a)の凸部132との接着部位が車体内部側に配置された領域には外装塗装164は設けられない(図3参照)。なお、ウインドウ130のうち外装塗装164が設けられた部位(下部アウターパネル114(フランジ部114a)が車体内部側に配置された領域)には、着色部162を設けなくてもよい。
【0029】
(材料)
下部アウターパネル114、インナーパネル120および内装トリム140には、金属および樹脂などの、移動体に従来使用されているあらゆる材料を使用することができる。
【0030】
上記金属の例には、アルミニウムおよびその合金、ならびにステンレス等の鉄またはその合金が含まれる。
【0031】
上記樹脂の例には、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートなどを含む熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)などを含むスチレン系樹脂、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどを含むポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリウレタン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、およびポリメタクリレートなどが含まれる。
これらのうち、比重が小さく、大面積であるこれらの部材に使用したときに移動体の重量を小さくできること、加工性が良好であること、および表面の光沢性が良好であり意匠性を高めやすいことから、ポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0032】
ウインドウ130には、石英ガラスや樹脂ガラスなどの、移動体に従来使用されている光透過性材料を使用することができる。
【0033】
上記樹脂ガラスの例には、ポリスチレン樹脂、高衝撃ポリスチレン樹脂(HIPS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル-スチレン-アクリルゴム共重合体(ASA樹脂)、アクリロニトリル-エチレンプロピレン系ゴム-スチレン共重合体(AES樹脂)などを含むスチレン系樹脂、ポリアルキルメタクリレート、およびポリメタクリルメタクリレートなどを含むアクリル系樹脂、ポリフェニルエーテル、ポリカーボネート、非晶性ポリアルキレンテレフタレート、ポリエステル、非晶性ポリアミド、ポリ-4-メチルペンテン-1および環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン、非晶性ポリアリレート、ポリエーテルサルフォン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、およびポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどを含む熱可塑性エラストマーなどが含まれる。
これらのうち、耐衝撃性および耐熱性が高いことから、ポリカーボネート、特には芳香族含有ポリカーボネートが好ましい。
【0034】
接着剤150には、ウレタン系接着剤などの公知の接着剤を使用することができる。
【0035】
[第2の実施形態]
図4は、本実施形態の第2の例示的な実施形態に係る窓部構造体400において、ウインドウ130が下部アウターパネル114およびインナーパネル120に組み付けられている構成を示す、図1の一点鎖線A-Aにおける別の模式断面図である。
【0036】
窓部構造体400は、樹脂製のウインドウ130および樹脂製の下部アウターパネル114が多色成形により一体成形された多色成形体である点で、第1の実施形態に関する窓部構造体400と相違し、その他の点では第1の実施形態に関する窓部構造体300と大略一致する。以下、第1の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0037】
本実施形態では、下部アウターパネル114の、ウインドウ130に沿って屈曲した段差構造部位114bと、ウインドウ130の内部に入り込んで延在するフランジ部114aとが、ウインドウ130との一体成形により接合されている。このため、本実施形態では、ウインドウ130のうち、下部アウターパネル114(フランジ部114a)が車体内部側に配置された領域には、着色部162は設けられない。
【0038】
本実施形態によれば、ウインドウ130と下部アウターパネル114とが一体的に成形されてモジュール化されているため、接着剤150aによるこれらの接着が不要である。そのため、組み付けをより容易に行える。
【0039】
一方で、複雑な形状を有することが多いインナーパネル120は、さらに一体成形しようとすると金型が複雑となり、成形が困難になるため、別途成形して組み付けるほうがよい。このとき、本実施形態によれば、第1の実施形態と同様にインナーパネル120を下部アウターパネル114のみならずウインドウ130とも接着させることで、ウインドウ130、下部アウターパネル114およびインナーパネル120の接着強度をより高めることができる。
【0040】
また、本実施形態でも、凸部132の高さを下部アウターパネル114の厚みと略同一とすることで、接着剤150bの厚みを、接触部152と接触部154とで同一にして、組み付け時にはこれらの接触部に接着剤150bを均一に塗布することを可能とし、接着剤150bの塗布性が良好であり、かつ塗布ムラによる接着力の継時安定性の低下を生じにくくすることができる。
【0041】
[第3の実施形態]
図5は、本実施形態の第3の例示的な実施形態に係る窓部構造体500において、ウインドウ130が下部アウターパネル114およびインナーパネル120に組み付けられている構成を示す、図1の一点鎖線A-Aにおける別の模式断面図である。なお、図5は、ウインドウ130が下部アウターパネル114およびインナーパネル120の組み付け部分を図3および図4よりも拡大して示している。
【0042】
窓部構造体500は、下部アウターパネル114が貫通孔114cを有する点で、第2の実施形態に係る窓部構造体400と相違する。以下、第2の実施形態と共通する構成については説明を省略する。
【0043】
貫通孔114cは、下部アウターパネル114のフランジ部114aを、インナーパネル120側の側面(車体内部側の側面)からウインドウ130側の側面(車体内部側の側面)まで貫通し、ウインドウ130に開口している。下部アウターパネル114とインナーパネル120とを組み付ける際に、これらを接着させる接着剤150bの一部が貫通孔114cの内部に流入し、ウインドウ130まで到達して硬化する。この、貫通孔114cの内部に充填されて下部アウターパネル114とインナーパネル120とを接着する接着剤150bにより、さらにウインドウ130もこれらの部材に接着される。そのため、下部アウターパネル114、インナーパネル120およびウインドウ130の接着強度をより高めることができる。
【0044】
貫通孔114cの開口幅は、下部アウターパネル114の厚みよりも大きいことが好ましく、具体的には車体の上下方向および左右方向にそれぞれ3~10mm程度とすることができる。開口部の形状は特に限定されなく、円形、楕円形、長円形、四角形などの多角形、その他不定形としてもよい。
【0045】
本実施形態において、貫通孔114cは、フランジ部114aの段差構造部位114b側の端部であり、ウインドウ130の周縁端部(車体下方側の端部)に対応する位置に設けられている。そして、貫通孔114cの段差構造部位114b側(車体下方側)の壁面は、段差構造部位114bにおける下部アウターパネル114とウインドウ130の周縁端部の側面(車体下方側の側面)と、図5に示す断面において同一直線上に存在する。貫通孔114cによる接着部を、フランジ部114aの段差構造部位114b側の端部により近い位置に配置することで、段差構造部位114bの近辺における下部アウターパネル114とウインドウ130との接合強度を高めて断面剛性を向上させ、ウインドウ130と下部アウターパネル114との境界部130aへの応力による、境界部130aにおける塗装割れを生じにくくすることができる。
【0046】
本実施形態ではさらに、インナーパネル120のうち、貫通孔114cに対応する部位が、貫通孔114c側に突出した突出部120bとなっている。突出部120bは、下部アウターパネル114とインナーパネル120とを組み付ける際の圧力によりこれらの間から外側方向(図5では車体下方側方向)への接着剤150bの流動をせき止めるせき止め部として作用し、上記せき止めにより、貫通孔114cの方向への接着剤150bの流動を促進する。これにより、より効果的に貫通孔114cに接着剤150bを充填させることができる。
【0047】
また、本実施形態において、突出部120bは、組み付けた際の接着剤150bの端部(図5では車体下方側の端部)となる位置に配置されている。このような配置とすることで、突出部120bは、下部アウターパネル114とインナーパネル120とを組み付けるときの接着剤150bの外部への流出を防いで、接着剤150bの貫通孔114cの方向への流動をさらに効率的に促進することができる。
【0048】
[その他の実施形態]
なお、上述した各実施形態は、あくまで本発明の例示的な実施形態であり、本発明は、本明細書に開示された技術思想の範囲内において、様々に変更された実施形態をとり得ることはいうまでもない。
【0049】
たとえば、上述した各実施形態は、上部アウターパネル112および下部アウターパネル114を有する自動車のバックドアのうち、下部アウターパネル114とウインドウ130とを含む窓部構造体について説明した。これに対し、本発明は上部アウターパネル112とウインドウ130とを含む窓部構造体にも適用できるし、上部アウターパネル112および下部アウターパネル114が一体化されたアウターパネルとウインドウ130とを含む窓部構造体にも適用できる。また、上述した構造は、ウインドウ130の車体上下方向の端部における構造に限定されることはなく、車体左右方向への端部に上述した構造を採用してもよい。
【0050】
また、第3の実施形態では、樹脂製のウインドウ130および樹脂製の下部アウターパネル114を多色成形した第2の実施形態において、インナーパネル120が貫通孔114cを有する構成を説明した。しかし、第1の実施形態のように、下部アウターパネル114、インナーパネル120およびウインドウ130をそれぞれ接着させる態様において、インナーパネル120に貫通孔114cを設けてもよい。さらには、第1の実施形態および第2の実施形態とは異なり、凸部132によってウインドウ130とインナーパネル120とを接着させないときにも、インナーパネル120に設けた貫通孔114cに充填した接着剤150aにより下部アウターパネル114、インナーパネル120およびウインドウ130を接着させてもよい。
【0051】
なお、窓部構造体は複数の貫通孔114cを有してもよく、このとき、一部の貫通孔114cには接着剤150bが充填されていなくてもよい。
【0052】
また、上述した各実施形態では、自動車のバックドアにおける窓部構造体について説明をしたが、自動車のサイド、上面、フロント部などに上述した窓部構造体の構造を採用してもよい。
【0053】
また、自動車のみならず、空飛ぶ自動車、バス、トラック、電車、飛行機、ヘリコプター、船舶などのあらゆる移動体に上述した窓部構造体の構造を採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に関する窓部構造体は、接合強度を高め、なおかつ塗装割れを生じにくくすることができる。
【符号の説明】
【0055】
10 バックドア
15a、15b、15c 接着剤
100 バックドア
112 上部アウターパネル
114 下部アウターパネル
114a フランジ部
114b 段差構造部位
114c 貫通孔
120 インナーパネル
120a フランジ部
120b 突出部
130 ウインドウ
130a 境界部
132 凸部
140 内装トリム
150a、150b、150c 接着剤
152、154 接触部
160、164 外装塗装
162 着色部
170 テールライトおよびブレーキライト
180 取付部
300、400、500 窓部構造体

図1
図2
図3
図4
図5