(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109345
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】巻回電極体の製造方法、該巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法、ならびに該巻回電極体の製造装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20240806BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240806BHJP
H01M 10/0587 20100101ALI20240806BHJP
H01M 10/0525 20100101ALI20240806BHJP
H01M 6/10 20060101ALI20240806BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20240806BHJP
H01G 13/02 20060101ALI20240806BHJP
H01M 6/16 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/46
H01M10/0587
H01M10/0525
H01M6/10 Z
H01G4/32 311A
H01G13/02 C
H01G13/02 D
H01M6/16 D
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014087
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】埜渡 夕有子
(72)【発明者】
【氏名】二本松 弘二
【テーマコード(参考)】
5E082
5H021
5H024
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5E082AB04
5E082AB10
5E082LL05
5H021AA06
5H021BB11
5H021BB19
5H021HH10
5H024AA01
5H024BB09
5H024BB14
5H024BB18
5H024BB19
5H024CC07
5H024CC12
5H024DD09
5H028AA05
5H028BB00
5H028BB08
5H028BB15
5H028BB18
5H028BB19
5H028CC07
5H028CC08
5H028CC13
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029BJ02
5H029BJ14
5H029CJ05
5H029CJ07
5H029CJ22
5H029CJ28
5H029CJ30
5H029DJ04
(57)【要約】
【課題】巻回電極体ならびに該巻回電極体を備えた電池の生産性を好適に向上させることができる技術を提供すること。
【解決手段】ここで開示される巻回電極体の製造方法の一態様では、以下の工程:正極シート22、負極シート24、およびセパレータシート26を用意する用意工程(S1),ここで、各々のシートのうちセパレータシート26(ここでは、第2セパレータシート26S
2)における両面に、接着層6が配置されている;上記用意した上記各々のシートを搬送する、搬送工程(S2),ここで、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2において、接着層6が配置されていない領域をローラ3aおよび3bと当接させながら搬送する;および、上記搬送した上記各々のシートを、巻き芯4に巻き取る、巻き取り工程(S3);を包含する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の正極シートおよび帯状の負極シートが、帯状のセパレータシートを介して積層され、巻回された巻回電極体であって、前記セパレータシートと前記正極シート、および/または、前記セパレータシートと前記負極シートとが、接着層により接着された巻回電極体の製造方法であって、以下の工程:
前記正極シート、前記負極シート、および前記セパレータシートを用意する用意工程,ここで、各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に、前記接着層が配置されている;
前記用意した前記各々のシートを搬送する、搬送工程,ここで、前記接着層が配置された前記シートにおいて、該接着層が配置されていない領域をローラと当接させながら搬送する;および
前記搬送した前記各々のシートを、巻き芯に巻き取る、巻き取り工程;
を包含する、巻回電極体の製造方法。
【請求項2】
前記搬送工程において、前記接着層が配置された前記シートにおいて、該接着層が配置されている領域を前記ローラと略当接しないようにする、請求項1に記載の巻回電極体の製造方法。
【請求項3】
前記用意工程において、前記各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に前記接着層を形成する、請求項1または2に記載の巻回電極体の製造方法。
【請求項4】
前記接着層が配置された前記シートは、前記セパレータシートである、請求項1または2に記載の巻回電極体の製造方法。
【請求項5】
前記接着層は、前記セパレータシートの両面に配置されている、請求項4に記載の巻回電極体の製造方法。
【請求項6】
前記巻回電極体は、前記セパレータシートとして第1セパレータシートおよび第2セパレータシートを有しており、
前記巻回工程において、前記第1セパレータシート、前記正極シート、前記第2セパレータシート、および前記負極シートがこの順に重ねられて巻回されるか、前記第1セパレータシート、前記負極シート、前記第2セパレータシート、および前記正極シートがこの順に重ねられて巻回される、請求項1または2に記載の巻回電極体の製造方法。
【請求項7】
前記ローラの回転する表面は、凹部および凸部が交互に存在するくし型に構成されており、
前記搬送工程において、前記凸部を、前記接着層が配置された前記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接させて、該接着層が配置された前記シートを搬送する、請求項1または2に記載の巻回電極体の製造方法。
【請求項8】
前記接着層が配置された前記シートにおいて、該接着層は該シートの短手線上または長手線上に断続的に配置されており、
前記搬送工程において、前記ローラが、前記接着層が断続的に配置された前記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接するように、前記接着層が配置された前記シートを搬送する、請求項1または2に記載の巻回電極体の製造方法。
【請求項9】
請求項1または2に記載の巻回電極体の製造方法によって得られた巻回電極体を用いて蓄電デバイスを構築する、蓄電デバイスの製造方法。
【請求項10】
帯状の正極シートおよび帯状の負極シートが、帯状のセパレータシートを介して積層され、巻回された巻回電極体であって、前記セパレータシートと前記正極シート、および/または、前記セパレータシートと前記負極シートとが、接着層により接着された巻回電極体の製造装置であって、
各々の前記シートを搬送する搬送部と、
前記各々のシートのうち、前記接着層が配置された前記シートにおいて、該接着層が配置されていない領域と当接するように構成された1または複数のローラと、
前記搬送部によって搬送された前記各々のシートを巻き取る、巻き芯と、
を備える、巻回電極体の製造装置。
【請求項11】
前記ローラは、前記接着層が配置された前記シートにおいて、該接着層が配置されている領域と該ローラとが略当接しないように構成されている、請求項10に記載の巻回電極体の製造装置。
【請求項12】
前記各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に前記接着層を配置するための接着層塗布部をさらに備える、請求項10または11に記載の巻回電極体の製造装置。
【請求項13】
前記ローラの回転する表面は、凹部および凸部が交互に存在するくし型に構成されており、
前記凸部は、前記接着層が配置された前記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接するように構成されている、請求項10または11に記載の巻回電極体の製造装置。
【請求項14】
前記接着層が配置された前記シートにおいて、該接着層は該シートの短手線上または長手線上に断続的に配置されており、
前記ローラは、前記接着層が断続的に配置された前記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接するように構成されている、請求項10または11に記載の巻回電極体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、巻回電極体の製造方法、該巻回電極体を備えた蓄電デバイスの製造方法、ならびに該巻回電極体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、帯状の正極シートと帯状の負極シートとそれらの間に帯状のセパレータシートを介在させた状態で渦巻状に巻回してなる巻回電極体の製造方法であって、上記正極シート、上記負極シート、および上記セパレータシートの少なくとも一つが、非接触状態で構成シートに付着した異物を連続的に除去しながら巻回することを特徴とする巻回電極体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、巻回電極体における電極シートおよびセパレータシートのズレ等を防止するために、電極シートおよび/またはセパレータシートに表面に接着層が配置されることがある。そして、本発明者らの検討によると、例えば接着層が配置された電極シートやセパレータシートを用いて巻回電極体を製造する場合、該接着層が配置されたシートを巻き芯まで搬送する搬送経路に配置されたローラ(ガイドローラ)に接着層が付着するおそれがあることがわかった。これによって、シートへの異物の付着や接着層の接着力の低下等が生じるおそれがあるため、生産性の観点から好ましくない。
【0005】
本開示は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、接着層を有する電極シートやセパレータシートを有する巻回電極体において、該巻回電極体ならびに該巻回電極体を備えた蓄電デバイスの生産性を好適に向上させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を実現すべく、本開示は、帯状の正極シートおよび帯状の負極シートが、帯状のセパレータシートを介して積層され、巻回された巻回電極体であって、上記セパレータシートと上記正極シート、および/または、上記セパレータシートと上記負極シートとが、接着層により接着された巻回電極体の製造方法であって、以下の工程:上記正極シート、上記負極シート、および上記セパレータシートを用意する用意工程,ここで、各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に、上記接着層が配置されている;上記用意した上記各々のシートを搬送する、搬送工程,ここで、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層が配置されていない領域をローラと当接させながら搬送する;および、上記搬送した上記各々のシートを、巻き芯に巻き取る、巻き取り工程;を包含する、巻回電極体の製造方法を提供する。詳細については後述するが、かかる構成の巻回電極体の製造方法によると、巻回電極体を生産性高く得ることができる。
【0007】
また、他の側面から、本開示は、ここで開示されるいずれかの巻回電極体の製造方法によって得られた巻回電極体を用いて蓄電デバイスを構築する、蓄電デバイスの製造方法を提供する。かかる構成の蓄電デバイスの製造方法によると、巻回電極体を備えた蓄電デバイスを生産性高く得ることができる。
【0008】
また、他の側面から、帯状の正極シートおよび帯状の負極シートが、帯状のセパレータシートを介して積層され、巻回された巻回電極体であって、上記セパレータシートと上記正極シート、および/または、上記セパレータシートと上記負極シートとが、接着層により接着された巻回電極体の製造装置であって、各々の上記シートを搬送する搬送部と、上記各々のシートのうち、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層が配置されていない領域と当接するように構成された1または複数のローラと、上記搬送部によって搬送された前記各々のシートを巻き取る、巻き芯と、を備える、巻回電極体の製造装置が提供される。詳細については後述するが、かかる構成の巻回電極体の製造装置によると、巻回電極体を生産性高く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る巻回電極体の製造装置を模式的に示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係る第2セパレータシートの表面の平面視における態様と、ローラの構成とを示す模式図である。
【
図3】一実施形態に係る第2セパレータシートの裏面の平面視における態様と、ローラの構成とを示す模式図である。
【
図4A】一実施形態に係るローラの構造を示す模式図である。
【
図4B】一実施形態に係るローラの構造を示す模式図である。
【
図5】一実施形態に係る巻回電極体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図6】一実施形態に係る電池を模式的に示す斜視図である。
【
図7】
図6中のVII-VII線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図8】
図6中のVIII-VIII線に沿う模式的な縦断面図である。
【
図9】
図6中のIX-IX線に沿う模式的な横断面図である。
【
図10】封口板に取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図11】正極第2集電部と負極第2集電部が取り付けられた巻回電極体を模式的に示す斜視図である。
【
図12】一実施形態に係る電池の巻回電極体の構成を示す模式図である。
【
図13】一実施形態に係る正極シートと負極シートとセパレータシートとの界面を模式的に示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、ここで開示される技術のいくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって、ここで開示される技術の実施に必要な事柄(例えば、本発明を特徴付けない電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。ここで開示される技術は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。なお、本明細書において範囲を示す「A~B」の表記は、「A以上B以下」を意味する。また、「Aを超える」および「B未満」の意を包含するものとする。
【0011】
なお、本明細書において「蓄電デバイス」とは、充電と放電とを行うことができるデバイスをいう。蓄電デバイスには、一次電池、二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池、ニッケル水素電池)等の電池と、電気二重層キャパシタ等のキャパシタ(物理電池)とが包含される。また、電解質は、液状電解質(電解液)、ゲル状電解質、固体電解質のいずれであってもよい。なお、以下では、蓄電デバイスの一実施形態であるリチウムイオン二次電池を例に本技術について説明する。
【0012】
なお、以下では、正極シート22、負極シート24、セパレータシート26(ここでは、第1セパレータシート26S1および第2セパレータシート26S2)のうち、第2セパレータシート26S2に接着層6が配置されており、さらに、接着層6が第2セパレータシート26S2の両面に配置されている場合を例にして説明する。また、ここで開示される技術では、予め接着層6が配置されたシート(ここでは、第2セパレータシート26S2)を用いることもできるが、以下では、接着層塗布部5によってシート(ここでは、第2セパレータシート26S2)の表面に接着層6を形成する場合について説明する。当然のことながら、ここで開示される技術を以下の実施形態に限定されることを意図したものではない。
【0013】
<巻回電極体製造装置1>
先ず、本実施形態に係る巻回電極体製造装置1について説明する。ここで、
図1は、本実施形態に係る巻回電極体製造装置1を模式的に示すブロック図である。巻回電極体製造装置1は、帯状の正極シート22および帯状の負極シート24が、帯状のセパレータシート26を介して積層され、巻回された巻回電極体(帯状の正極シート22および帯状の負極シート24と、これらのシートを絶縁するセパレータシート26を含む巻回電極体ということもできる)であって、セパレータシート26と正極シート22、および/または、セパレータシート26と負極シート24とが、接着層6によって接着された巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)の製造装置である。
図1に示すように、本実施形態に係る巻回電極体製造装置1は、各々のシートを搬送する搬送部2と、該各々のシートのうち接着層6が配置されたシート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)において、接着層6が配置されていない領域と当接するように構成された1または複数のローラ(ここでは、ローラ3aおよび3b)と、搬送部2によって搬送された上記各々のシートを巻き取る巻き芯4と、を備えている。またさらに、上記各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面(ここでは、第2セパレータシート26S
2における両面)に接着層6を配置する接着層塗布部5と、を備えている。
【0014】
かかる構成の巻回電極体製造装置1によると、例えば、シート(ここでは、第2セパレータシート26S2)に配置された接着層6がローラ(ここでは、ローラ3aおよび3b)に付着することを好適に抑制することができる。これによって、シート(ここでは、第2セパレータシート26S2)への異物の付着や接着層6の接着力の低下等を好適に抑制することができるため、巻回電極体や該巻回電極体を備えた蓄電デバイス(例えば、電池)の生産性を好適に向上させることができる。
【0015】
巻回電極体製造装置1は、例えばカッターと、押え治具と、制御装置とを備えていることが好ましい。ここで、カッターは、上記各々のシートを所望の長さに切断するカッターである。押え治具は、上記各々のシートを巻き芯4に押し付ける治具である。巻回電極体製造装置1の各構成要素は、それぞれ所要のアクチュエータを適宜に有していることが好ましい。制御装置は、予め設定されたプログラムに沿って所定のタイミングで所要の動作が実行されるように、巻回電極体製造装置1の各構成要素を制御するように構成されている。制御装置は、例えば、マイクロコントローラのようなコンピュータによって具現化され得る。以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0016】
(搬送部2)
図1に示すように、搬送部2は、正極シート22、負極シート24、セパレータシート26(ここでは、第1セパレータシート26S
1および第2セパレータシート26S
2)の各々のシートを搬送する。また、上記各々のシートは、搬送部2によって、巻き芯4まで搬送される。上記各々のシートは、リール等によって巻き取られた状態で用意することができる。
図1に示すように、本実施形態では、正極シート22、負極シート24、第1セパレータシート26S
1、および第2セパレータシート26S
2は、それぞれリール22r、24r、26S
1r、および26S
2rによって巻き取られている。搬送部2は、送り出される正極シート22、負極シート24、第1セパレータシート26S
1、および第2セパレータシート26S
2の緩みを取り除くためのダンサロール機構や、テンションを調整するためのテンションナー等を備えていてもよい。
【0017】
(ローラ3a,3b)
図1に示すように、本実施形態に係る巻回電極体製造装置1は、各々のシートのうち、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2において、接着層6が配置されていない領域と当接するように構成されたローラ3aおよび3bを備えている。ローラ3aは、ここでは第2セパレータシート26S
2の表面を挟み込んでおり、ローラ3bは、第2セパレータシート26S
2の裏面を挟み込んでいる。本実施形態に係る巻回電極体製造装置1は、かかる構成のローラを2つ備えているが、他の実施形態では、かかる構成のローラを1つのみ備えていてもよいし、3つ以上備えていてもよい。また、電極シートに接着層6が配置されている場合は、電極シートについてかかる構成のローラを用いてもよい。また、かかる構成のローラ以外に、さらに上記各々のシートを搬送するためのローラを備えていてもよい。例えば、本実施形態では、ローラ3aおよび3b以外に、第1セパレータシート26S
1や負極シート24をそれぞれ搬送するためのローラ3cを備えている。なお、ローラで搬送されるのは、少なくとも接着層6が形成されたシートのみでよい。
【0018】
ここで開示される巻回電極体製造装置1は、各々のシートのうち、接着層6が配置されたシート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)において、接着層6が配置されていない領域と当接するように構成されたローラ(ここでは、ローラ3aおよび3b)を少なくとも備えていればよい。一方で、接着層6が配置された領域とローラ(ここでは、ローラ3aおよび3b)の関係に関しては、シート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)の片面における接着層6の面積全体を100%としたとき、ローラ3a(ローラ3b)と接着層6とが当接する面積割合が、シート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)への異物の付着や接着層6の接着力の低下等をより好適に抑制するという観点から、例えば40%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましく、20%以下であることが特に好ましい。ただし、これらに限られるものではない。また、接着層6とローラ3a(ローラ3b)とが若干当接する場合、接着層6はローラ3a(ローラ3b)のTD方向における端部3a
3(端部3b
3)と当接していてもよい(
図4Aおよび
図4Bを参照)。
【0019】
一態様では、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層は該シートの短手線上または長手線上に断続的に配置されており、上記ローラは、上記接着層が配置された上記シートのうち該接着層が断続的に配置されていない領域と当接するように構成されている。ここで、
図2は、第2セパレータシート26S
2の表面の平面視における態様と、ローラ3aの構成とを示す模式図である。
図3は、第2セパレータシート26S
2の裏面の平面視における態様と、ローラ3bの構成とを示す模式図である。
図2および
図3に示すように、本実施形態では、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2の両面において、接着層6は第2セパレータシート26S
2の長手線上に断続的に配置されている。そして、ローラ3aおよび3bは、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2のうち、接着層6が配置されていない領域と当接するように構成されている。
【0020】
なお、本実施形態では、第2セパレータシート26S2の平面視における形状を破線状としているが、これに限定されない。第2セパレータシート26S2の平面視における接着層6の形状は、例えば、ドット状、ストライプ状、波状、帯状(筋状)、またはこれらの組み合わせ等の形状であってもよい。例えば、後述する第2~第8実施形態は、シートの平面視における接着層6の形状の他の例である。また、本実施形態では、第2セパレータシート26S2において配置される断続的な線の本数を第2セパレータシート26S2の表面と裏面とで異ならせているが、他の実施形態では、同じであってもよい。即ち、接着層6の配置位置は、シートの表裏で同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2セパレータシート26S2の片面に配置される断続的な線の本数は、1本であってもよいし複数本であってもよい。そして、本実施形態では、第2セパレータシート26S2において、接着層6は第2セパレータシート26S2の長手線上に配置されているが、これに限定されない。接着層6は、第2セパレータシート26S2の短手線上に配置されていてもよい。
【0021】
一態様では、上記ローラの回転する表面は、凹部および凸部が交互に存在するくし型に構成されており、上記凸部は、上記接着層が配置された上記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接するように構成されている。ここで、
図4Aおよび
図4Bは、それぞれローラ3aおよび3bの構造を示す模式図である。
図4Aに示すように、本実施形態では、ローラ3aの回転する表面は、凹部3a
1および凸部3a
2が交互に存在するくし型に構成されている。また、ローラ3bの回転する表面は、凹部3b
1および凸部3b
2が交互に存在するくし型に構成されている。そして、凸部3a
2および凸部3b
2は、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2のうち接着層6が配置されていない領域と当接するように構成されている。なお、ローラの回転する表面の形状は、くし型に限定されず、ここで開示される技術の効果が得られる限りにおいて、その他種々の形状であってもよい。例えば、ローラ3a,3bのエッジ部(縁部)にR(丸み)をつけることもできる。かかる構成によると、該エッジ部と接着層6とが当接することを好適に抑制することができる。なお、例えば、回転する表面がくし型であるローラ3a,3bや、後述するローラ3dについては、それぞれのローラの両端部分によって搬送されるシートを充分な強度で保持する(挟み込む)ことができる。
【0022】
好適な一態様では、上記ローラは、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層が配置されている領域と該ローラとが略当接しないように構成されている。
図2に示すように、本実施形態では、ローラ3aは、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2において、接着層6が配置されている領域とローラ3aとが略当接しないように構成されている。また、
図3に示すように、本実施形態では、ローラ3bは、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2において、接着層6が配置されている領域とローラ3bとが略当接しないように構成されている。かかる構成によると、シート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)への異物の付着や接着層6の接着力の低下等を特に好適に抑制することができるため、巻回電極体や該巻回電極体を備えた蓄電デバイス(例えば、電池)の生産性を好適に向上させることができる。ここで、接着層6が配置されている領域とローラ3a(ローラ3b)とが略当接しないとは、例えばシート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)の片面における接着層6の面積全体を100%としたとき、ローラ3a(ローラ3b)と接着層6とが当接する面積割合が、例えば10%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは1%以下であり、特に好ましくは0%(即ち、シートとローラとが全く当接しない態様)である。
【0023】
(巻き芯4)
図1に示すように、巻き芯4は、搬送部2によって搬送された上記各々のシートを巻き取る。巻き芯4は、側周面に巻き付けられる各々のシートを保持する機能を有する。巻き芯4はここでは略円筒状の部材であるが、扁平な形状に巻回する場合には、扁平な巻芯が用いられてもよい。
【0024】
(接着層塗布部5)
接着層塗布部5は、上記各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に上記接着層を配置する(付与する)ための装置である。接着層塗布部5は、シートの表面に、搬送方向に沿ってバインダー液(接着剤)を付与する装置ということもできる。上述したように、本実施形態では、接着層塗布部5によって、第2セパレータシート26S2における両面に接着層6を配置する。接着層塗布部5は、バインダー液をシートの所望の領域に所望の量だけ塗布することができるように構成されている。バインダー液は、例えば後述するような接着層バインダーと、溶媒とを含む。バインダー液の溶媒としては、環境負荷を軽減するとの観点において、いわゆる水系の溶媒が好適に用いられる。この場合、水または水を主体とする混合溶媒を用いることができる。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒成分としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒が挙げられる。また、バインダー液の溶媒は、いわゆる水系の溶媒に限定されず、いわゆる有機溶剤系であってもよい。有機溶剤系溶媒としては、例えばN-メチルピロリドンなどが挙げられる。例えばバインダー液の好適例としては、水を溶媒とし、バインダーとしてのアクリル樹脂(例えば、ポリメタクリル酸エステル樹脂)を混ぜるとよい。なお、バインダー液は、ここに開示される技術の効果を妨げない限り、正極シート22やセパレータシート26に対する濡れ性を改善する目的などで、公知の増粘剤や界面活性剤などの添加剤を1種または2種以上含むことができる。
【0025】
接着層塗布部5としては、例えばインクジェット印刷、グラビアロールコーター、スプレーコーター等の各種の凹版印刷機、スリットコーター、コンマコーター、キャップコーター(Capillary Coater:CAPコーター)等のダイコーター、リップコーター、カレンダー機等の各種の塗布装置を使用することができる。
【0026】
特に限定されるものではないが、シートの片面における接着層6の配置面積は、該シートの片面の面積を100%としたとき、例えば5%以上であり、巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)における電極シートおよびセパレータシートの接着をより好適なものにするという観点から、10%以上が好ましくは、20%以上、30%以上であってもよい。また、シートの片面における接着層6の上限は、例えば60%以下であり、50%以下や40%以下であってもよい。
【0027】
次に、本実施形態に係る巻回電極体(巻回電極体を備えた電池)の製造方法の好適な一実施形態について、巻回電極体の製造方法を具現化する巻回電極体製造装置1を交えて説明する。ここで、
図5は、本実施形態に係る巻回電極体の製造方法を示すフローチャートである。先ず、本実施形態に係る製造方法は、帯状の正極シート22および帯状の負極シート24が、帯状のセパレータシート26を介して積層され、巻回された巻回電極体(帯状の正極シート22および帯状の負極シート24と、これらのシートを絶縁するセパレータシート26を含む巻回電極体ということもできる)であって、セパレータシート26と正極シート22、および/または、セパレータシート26と負極シート24とが、接着層6によって接着された巻回電極体(ここでは、巻回電極体20a,20b,20c)の製造方法である。かかる巻回電極体の製造方法は、正極シート22、負極シート24、およびセパレータシート26を用意する、用意工程(ステップS1);上記用意した上記各々のシートを搬送する、搬送工程(ステップS2);および、上記搬送した上記各々のシートを、巻き芯4に巻き取る、巻き取り工程(ステップS3)を含む。なお、上記用意工程では、上記各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面(ここでは、第2セパレータシート26S
2における両面)に接着層6が配置されているものを用意する。そして、上記搬送工程では、接着層6が配置されたシート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)において、接着層6が配置されていない領域をローラ(ここでは、ローラ3aおよび3b)と当接させながら搬送することを特徴とする。
【0028】
かかる構成の巻回電極体の製造方法によると、シート(ここでは、第2セパレータシート26S2)に配置された接着層6がローラ(ここでは、ローラ3aおよび3b)に付着することを好適に抑制することができる。これによって、シート(ここでは、第2セパレータシート26S2)への異物の付着や接着層6の接着力の低下等を好適に抑制することができるため、巻回電極体や該巻回電極体を備えた蓄電デバイス(例えば、電池)の生産性を好適に向上させることができる。以下、各工程について詳細に説明する。なお、ここで開示される電池の製造方法は、任意の段階でさらに他の工程を含んでもよいし、その工程が必須なものとして説明されていなければ適宜削除することも可能である。また、ここで開示される技術の効果が発揮される限りにおいて、工程の順序を入れ替えることもできる。
【0029】
<ステップS1:用意工程>
上述したように、本工程では、正極シート22、負極シート24、およびセパレータシート26を用意する。本実施形態では、セパレータシートとして、第1セパレータシート26S
1および第2セパレータシート26S
2を用意する。
図2および
図3に示すように、本実施形態では、接着層6が配置されたシートは、セパレータ26(具体的には、第2セパレータシート26S
2)である。なお、他の実施形態では、接着層6が配置されたシートは正極シート22であってもよいし、負極シート24であってもよい。あるいは、正極シート22、負極シート24、およびセパレータシート26(ここでは、第1セパレータシート26S
1,第2セパレータシート26S
2)のうち2種類以上のシートにおいて接着層6が配置されていてもよい。またさらに、本実施形態では、接着層6は、第2セパレータシート26S
2の両面に配置されている。かかる構成によると、巻回電極体における電極シートおよびセパレータシートにズレが生じることをより好適に防止することができる。あるいは、かかる構成のシートは、ここで開示される技術を適用する対象として好適であるということもできる。なお、他の実施形態では、接着層6は、シート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)の片面にのみ配置されていてもよい。
【0030】
好適な一態様では、上記用意工程において、上記各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に上記接着層を形成する。
図2および
図3に示すように、本実施形態では、上記用意工程において、第2セパレータシート26S
2における両面に接着層6を形成する。かかる構成によると、予め接着層6が配置されたシート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)を用いた場合と比較して、接着層6の劣化を抑制し接着力を好適に担保することができるため、好ましい。
【0031】
<ステップS2:搬送工程>
上述したように、本工程では、上記用意した上記各々のシートを、ローラ3aおよび3bによって挟みこみながら搬送する。また、かかる搬送工程では、接着層6が配置された第2セパレータシート26S2において、接着層6が配置されていない領域をローラ3aおよび3bと当接させることを特徴とする。
【0032】
好適な一態様では、上記搬送工程において、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層が配置されている領域を上記ローラと略当接しないようにする。
図2および
図3に示すように、本実施形態では、上記搬送工程において、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2において、接着層6が配置されている領域をローラ3aおよび3bと略当接しないようにする。かかる構成によると、シート(ここでは、第2セパレータシート26S
2)への異物の付着や接着層6の接着力の低下等を特に好適に抑制することができるため、巻回電極体や該巻回電極体を備えた蓄電デバイス(例えば、電池)の生産性を好適に向上させることができる。
【0033】
一態様では、上記ローラの回転する表面は、凹部および凸部が交互に存在するくし型に構成されており、上記搬送工程において、上記凸部を、上記接着層が配置された上記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接させて、該接着層が配置された上記シートを搬送する。
図2および
図3に示すように、本実施形態では、ローラ3aが回転する表面は、凹部3a
1および凸部3a
2が交互に存在するくし型に構成されている。また、ローラ3bが回転する表面は、凹部3b
1および凸部3b
2が交互に存在するくし型に構成されている。そして、上記搬送工程において、凸部3a
2および凸部3b
2を、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2のうち接着層6が配置されていない領域と当接させて、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2を搬送する。
【0034】
一態様では、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層は該シートの短手線上または長手線上に断続的に配置されており、上記搬送工程において、上記ローラが、上記接着層が断続的に配置された上記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接するように、上記接着層が配置された前記シートを搬送する。
図2および
図3に示すように、本実施形態では、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2において、接着層6は第2セパレータシート26S
2の長手線上に断続的に配置されている。そして、上記搬送工程において、ローラ3aおよび3bが、接着層6が断続的に配置された第2セパレータシート26S
2のうち、接着層6が配置されていない領域と当接するように、接着層6が配置された第2セパレータシート26S
2を搬送する。
【0035】
<ステップS3:巻き取り工程>
上述したように、本工程では、上記搬送した正極シート22、負極シート24、第1セパレータシート26S1、および第2セパレータシート26S2を、巻き芯4に巻き取る。
【0036】
一態様では、上記巻回電極体は、上記セパレータシートとして第1セパレータシートおよび第2セパレータシートを有しており、上記巻回工程において、上記第1セパレータシート、上記正極シート、上記第2セパレータシート、および上記負極シートがこの順に重ねられて巻回されるか、上記第1セパレータシート、上記負極シート、上記第2セパレータシート、および上記正極シートがこの順に重ねられて巻回される。
図1に示すように、本実施形態では、セパレータシート26として第1セパレータシート26S
1および第2セパレータシート26S
2を有している。また、上記巻回工程において、第1セパレータシート26S
1、正極シート22、第2セパレータシート26S
2、および負極シート24がこの順に重ねられて巻回される。このようにして、巻き取り体を得ることができる。
【0037】
また、本実施形態では、上記巻き取り工程の後に、得られた巻き取り体を押圧する、押圧工程をさらに設けてもよい。具体的には、上記のとおり製造した巻き取り体を巻き芯4から抜き取り、プレス機等によってプレスする。これによって、扁平形状の巻回電極体20a,20b,20cを好適に得ることができる。なお、他の実施形態では、かかる押圧工程を設けなくてもよい。
【0038】
そして、上述したような巻回電極体の製造方法によって得られた巻回電極体(ここでは、20a,20b,および20c)を用いて、電池100を構築することができる。具体的には、巻回電極体20a,20b,および20cを用意し、電池ケース10に挿入し、封口することにより、電池100を作製することができる。先ず、
図10に示すように、各々の巻回電極体の正極タブ群23に正極第2集電部52を接合し、負極タブ群25に負極第2集電部62を接合する。そして、
図9に示すように、各々の巻回電極体を、平坦部同士が対向するように配列する。各々の巻回電極体の上方に封口板14を配置し、正極第2集電部52と巻回電極体の一方の側面とが対向するように、各々の巻回電極体の正極タブ群23を折り曲げる。これによって、正極第1集電部51と正極第2集電部52とが接続される。同様に、負極第2集電部62と巻回電極体の他方の側面20hとが対向するように、各々の巻回電極体の負極タブ群25を折り曲げる。これによって、負極第1集電部61と負極第2集電部62とが接続される。この結果、正極集電部50と負極集電部60を介して封口板14に巻回電極体が取り付けられる。次いで、封口板14に取り付けられた各々の巻回電極体を、電極体ホルダ29(
図8参照)で覆った後に外装体12の内部に収容する。この結果、各々の巻回電極体の平坦部が外装体12の長側壁12b(すなわち、電池ケース10の扁平面)と対向する。また、上側の湾曲部20rが封口板14と対向し、下側の湾曲部20rが外装体12の底壁12aと対向する。そして、外装体12の上面の開口部12hを封口板14で塞いだ後に、外装体12と封口板14とを接合(溶接)することによって電池ケース10を構築する。その後、封口板14の注液孔15から電池ケース10の内部に電解質を注入し、注液孔15を封止部材15aで塞ぐ。以上によって、電池100を製造することができる。
【0039】
<電池の構成>
続いて、上述した製造方法によって得られる電池100について説明する。
【0040】
図6は、電池100の斜視図である。
図7は、
図6のVII-VII線に沿う模式的な縦断面図である。
図8は、
図9のVIII-VIII線に沿う模式的な縦断面図である。
図9は、
図6のIX-IX線に沿う模式的な横断面図である。以下の説明において、図面中の符号L、R、F、Rr、U、Dは、左、右、前、後、上、下を表し、図面中の符号X、Y、Zは、電池100の短辺方向、短辺方向と直交する長辺方向、上下方向を、それぞれ表すものとする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、電池100の設置形態を何ら限定するものではない。
【0041】
図7に示すように、電池100は、電池ケース(ケース)10と、巻回電極体群20と、を備えている。また、本実施形態に係る電池100は、電池ケース10と巻回電極体群20の他に、正極端子30と、正極外部導電部材32と、負極端子40と、負極外部導電部材42と、外部絶縁部材92と、正極集電部50と、負極集電部60と、正極内部絶縁部材70と、負極内部絶縁部材80と、を備えている。また、図示は省略するが、本実施形態に係る電池100は、さらに電解液を備えている。電池100は、ここではリチウムイオン二次電池である。
【0042】
電池ケース10は、巻回電極体群20を収容する筐体である。電池ケース10は、ここでは扁平かつ有底の直方体形状(角形)の外形を有する。電池ケース10の材質は、従来から使用されているものと同じでよく、特に制限はない。電池ケース10は、所定の強度を有する金属製であることが好ましい。電池ケース10を構成する金属材料の一例として、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、鉄合金等が挙げられる。
【0043】
そして、電池ケース10は、外装体12と、封口板14と、ガス排出弁17を備えている。外装体12は、一つの面が開口部12hとなった扁平な角型の容器である。具体的には、外装体12は、
図6に示すように、略矩形状の底壁12aと、底壁12aの短辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第1側壁12cと、底壁12aの長辺から上方Uに延びて相互に対向する一対の第2側壁12bと、を備えている。第1側壁12cの面積は、第2側壁12bの面積よりも小さい。そして、開口部12hは、上記一対の第1側壁12cと一対の第2側壁12bに囲まれた外装体12の上面に形成されている。封口板14は、外装体12の開口部12hを塞ぐように外装体12に取り付けられている。封口板14は、平面視において略矩形状の板材である。封口板14は、外装体12の底壁12aと対向している。電池ケース10は、外装体12の開口部12hの周縁に封口板14が接合(例えば、溶接接合)されることによって形成される。封口板14の接合は、例えばレーザ溶接等の溶接によって行うことができる。具体的には、一対の第1側壁12cの各々は、封口板14の短辺と接合され、一対の第2側壁12bの各々は、封口板14の長辺と接合される。
【0044】
図6および
図7に示すように、ガス排出弁17は、封口板14に形成されている。ガス排出弁17は、電池ケース10内の圧力が所定値以上になった際に開口して、電池ケース10内のガスを排出するように構成される。本実施形態におけるガス排出弁17は、封口板14の外面から巻回電極体群20側に向って窪んだ平面略円形の凹部である。かかるガス排出弁17の底面には、封口板14の厚みよりも薄い薄肉部が形成される。このガス排出弁17は、ケース内圧が所定値以上になった際に薄肉部が破断する。これによって、電池ケース10内のガスを外部に排出し、上昇したケース内圧を低減できる。
【0045】
また、封口板14には、上記ガス排出弁17の他に、注液孔15と、2つの端子挿入穴18、19と、が設けられている。注液孔15は、外装体12の内部空間と連通しており、電池100の製造工程において電解液を注液するために設けられた開口である。注液孔15は、封止部材15aにより封止されている。かかる封止部材15aとしては、例えば、ブラインドリベットが好適である。これによって、電池ケース10の内部で封止部材15aを強固に固定できる。また、端子挿入穴18、19は、封口板14の長辺方向Yの両端部にそれぞれ形成されている。端子挿入穴18、19は、封口板14を上下方向Zに貫通している。
図7に示すように、長辺方向Yの一方(左側)の端子挿入穴18には正極端子30が挿入される。また、長辺方向Yの他方(右側)の端子挿入穴19には負極端子40が挿入される。
【0046】
図10は、封口板14に取り付けられた巻回電極体群20を模式的に示す斜視図である。本実施形態では、複数個(ここでは3個)の巻回電極体20a,20b,20cが電池ケース10の内部に収容される。なお、1つの電池ケース10の内部に収容される巻回電極体の数は特に限定されず、1つであってもよいし、2つ以上(複数)であってもよい。なお、
図7に示すように、各々の巻回電極体の長辺方向Yの一方側(
図7の左側)には正極集電部50が配置され、長辺方向Yの他方(
図7の右側)には負極集電部60が配置される。そして、巻回電極体20a,20b,20cの各々は、並列に接続されている。ただし、巻回電極体20a,20b,20cは、直列に接続されていてもよい。巻回電極体群20は、ここでは樹脂製シートからなる電極体ホルダ29(
図8参照)に覆われた状態で電池ケース10の外装体12の内部に収容される。
【0047】
図12は、巻回電極体20aを模式的に示す斜視図である。なお、以下では巻回電極体20aを例として詳しく説明するが、巻回電極体20b、20cについても同様の構成とすることができる。
【0048】
図12に示すように、巻回電極体20aは、正極シート22と負極シート24とセパレータシート26とを有する。巻回電極体20aは、ここでは、帯状の正極シート22と帯状の負極シート24とが2枚の帯状のセパレータシート26を介して積層され、巻回軸WLを中心として巻回された巻回電極体である。
【0049】
巻回電極体20aは、扁平形状を有している。巻回電極体20aは、巻回軸WLが長辺方向Yと略平行になる向きで、外装体12の内部に配置されている。具体的には、
図8に示すように、巻回電極体20aは、外装体12の底壁12aおよび封口板14と対向する一対の湾曲部(R部)20rと、一対の湾曲部20rを連結し、外装体12の第2側壁12bに対向する平坦部20fとを有している。平坦部20fは、第2側壁12bに沿って延びている。
【0050】
正極シート22は、
図12に示すように、正極集電体22cと、当該正極集電体22cの少なくとも一方の表面上に固着された正極活物質層22aおよび正極保護層22pと、を有する。ただし、正極保護層22pは必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。正極集電体22cは、帯状である。正極集電体22cは、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。正極集電体22cは、ここでは金属箔、具体的にはアルミニウム箔である。
【0051】
正極集電体22cの長辺方向Yの一方の端部(
図12の左端部)には、複数の正極タブ22tが設けられている。複数の正極タブ22tは、帯状の正極シート22の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の一方側(
図12の左側)に向かって、セパレータシート26よりも外側に突出している。なお、正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の他方(
図12で示すと右側)に設けられていてもよいし、巻回軸WLの軸方向の両側の各々に設けられていてもよい。正極タブ22tは、正極集電体22cの一部であり、金属箔(アルミニウム箔)からなっている。ただし、正極タブ22tは、正極集電体22cとは別の部材であってもよい。正極タブ22tの少なくとも一部には、正極活物質層22aおよび正極保護層22pが形成されずに、正極集電体22cが露出した領域が形成される。
【0052】
図9に示すように、複数の正極タブ22tは、巻回軸WLの軸方向の一方の端部(
図9の左端部)で積層され、正極タブ群23を構成する。そして、複数の正極タブ22tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して電池100を小型化することができる。
図7に示すように、正極タブ群23は、正極集電部50を介して正極端子30と電気的に接続される。具体的には、正極タブ群23と正極第2集電部52とは接続部Jにおいて接続される(
図9参照)。そして、正極第2集電部52は、正極第1集電部51を介して正極端子30と電気的に接続される。なお、複数の正極タブ22tのサイズ(長辺方向Yに沿った長さおよび長辺方向Yに直交する幅、
図12参照)は、正極集電部50に接続される状態を考慮し、例えばその形成位置等によって、適宜調整することができる。ここでは、湾曲させたときに外方側の端が揃うように、複数の正極タブ22tの各々のサイズが相互に異なっている。
【0053】
図12に示すように、正極活物質層22aは、帯状の正極集電体22cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。正極活物質層22aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な正極活物質(例えば、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物等のリチウム遷移金属複合酸化物)を含んでいる。正極活物質層22aの固形分全体を100質量%としたときに、正極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。正極活物質層22aは、正極活物質以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材としては、例えばアセチレンブラック(AB)等の炭素材料を使用し得る。バインダーとしては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用し得る。
【0054】
正極保護層22pは、
図12に示すように、長辺方向Yにおいて正極集電体22cと正極活物質層22aとの境界部分に設けられている。正極保護層22pは、ここでは正極集電体22cの巻回軸WLの軸方向の一方の端部(
図12の左端部)に設けられている。ただし、正極保護層22pは、軸方向の両端部に設けられていてもよい。正極保護層22pは、正極活物質層22aに沿って、帯状に設けられている。正極保護層22pは、無機フィラー(例えば、アルミナ)を含んでいる。正極保護層22pの固形分全体を100質量%としたときに、無機フィラーは、概ね50質量%以上、典型的には70質量%以上、例えば80質量%以上を占めていてもよい。正極保護層22pは、無機フィラー以外の任意成分、例えば、導電材、バインダー、各種添加成分等を含んでいてもよい。導電材およびバインダーは、正極活物質層22aに含み得るとして例示したものと同じであってもよい。
【0055】
負極シート24は、
図12に示すように、負極集電体24cと、負極集電体24cの少なくとも一方の表面上に固着された負極活物質層24aと、を有する。負極集電体24cは、帯状である。負極集電体24cは、例えば銅、銅合金、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性金属からなっている。負極集電体24cは、ここでは金属箔、具体的には銅箔である。
【0056】
負極集電体24cの巻回軸WLの軸方向の一方の端部(
図12の右端部)には、複数の負極タブ24tが設けられている。複数の負極タブ24tは、帯状の負極シート24の長手方向に沿って間隔を置いて(間欠的に)設けられている。複数の負極タブ24tの各々は、軸方向の一方側(
図12の右側)に向かって、セパレータシート26よりも外側に突出している。ただし、負極タブ24tは、軸方向の他方の端部(
図12の左端部)に設けられていてもよいし、軸方向の両端部の各々に設けられていてもよい。負極タブ24tは、負極集電体24cの一部であり、金属箔(銅箔)からなっている。ただし、負極タブ24tは、負極集電体24cとは別の部材であってもよい。負極タブ24tの少なくとも一部には、負極活物質層24aが形成されずに、負極集電体24cが露出した領域が設けられている。
【0057】
図9に示すように、複数の負極タブ24tは、軸方向の一方の端部(
図9の右端部)で積層されて負極タブ群25を構成する。負極タブ群25は、軸方向において、正極タブ群23と対称的な位置に設けられていることが好ましい。そして、複数の負極タブ24tの各々は、外方側の端が揃うように折り曲げられている。これにより、電池ケース10への収容性を向上して、電池100を小型化することができる。
図7に示すように、負極タブ群25は、負極集電部60を介して負極端子40と電気的に接続されている。具体的には、負極タブ群25と負極第2集電部62とは接続部Jにおいて接続される(
図9参照)。そして、負極第2集電部62は、負極第1集電部61を介して負極端子40と電気的に接続される。複数の正極タブ22tと同様に、ここでは、湾曲させたときの外方側の端が揃うように、複数の負極タブ24tの各々サイズが相互に異なっている。
【0058】
図12に示すように、負極活物質層24aは、帯状の負極集電体24cの長手方向に沿って、帯状に設けられている。負極活物質層24aは、電荷担体を可逆的に吸蔵および放出可能な負極活物質(例えば、黒鉛等の炭素材料)を含んでいる。負極活物質層24aの固形分全体を100質量%としたときに、負極活物質は、概ね80質量%以上、典型的には90質量%以上、例えば95質量%以上を占めていてもよい。負極活物質層24aは、負極活物質以外の任意成分、例えば、バインダー、分散剤、各種添加成分等を含んでいてもよい。バインダーとしては、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム類を使用し得る。分散剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロール類を使用し得る。
【0059】
セパレータシート26は、
図12および
図3に示すように、帯状の部材である。セパレータシート26は、電荷担体が通過し得る微細な貫通孔が複数形成された絶縁シートである。セパレータシート26の幅は、負極活物質層24aの幅よりも大きい。正極シート22と負極シート24との間にセパレータシート26を介在させることによって、正極シート22と負極シート24との接触を防止すると共に、正極シート22と負極シート24との間に電荷担体(例えば、リチウムイオン)を移動させることができる。特に限定されるものではないが、セパレータシート26の厚み(
図13の積層方向MDの長さ。以下同じ)は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、セパレータシート26の厚みは、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、14μm以下がさらに好ましい。
【0060】
セパレータシート26は、ここでは1つの巻回電極体20aに2枚使用されている。セパレータシート26は、本実施形態のように1つの巻回電極体20aに2枚、すなわち、第1セパレータおよび第2セパレータを含むことが好ましい。また、ここでは2枚のセパレータがそれぞれ異なる構成であるが、それぞれ同じであってもよい。ただし、他の実施形態では、セパレータ26は1つの巻回電極体20aに1枚のみ含まれていてもよい。かかる場合、例えば、両面に絶縁層を有する正極シート22と、負極シート24と、セパレータシート26とをこの順に重ねるとよい。
【0061】
ここで、
図13は、本実施形態に係る正極シート22と負極シート24とセパレータシート26との界面を模式的に示す拡大図である。
図13に示すように、本実施形態に係るセパレータシート26は、基材層27と、基材層27一方の表面上に設けられる耐熱層28(Heat Resistance Layer:HRL)と、を有している。また、耐熱層28の表面上には、接着層6が存在している。
【0062】
基材層27としては、従来公知の電池のセパレータに用いられる微多孔膜を特に制限なく使用できる。基材層27は、多孔質のシート状部材であることが好ましい。基材層27は、単層構造であってもよく、2層以上の構造、例えば3層構造であってもよい。基材層27は、ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。基材層27は、全体がポリオレフィン樹脂からなることがより好ましい。基材層27は、例えばポリエチレン製の微多孔膜であることが好ましい。これによって、セパレータシート26の柔軟性を充分に確保し、巻回電極体20aの作製(巻回およびプレス成形)を容易に実施できる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、またはこれらの混合物が好ましく、PEからなることがさらに好ましい。
【0063】
特に限定されるものではないが、基材層27の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。また、基材層27の厚みは、25μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、14μm以下がさらに好ましい。基材層27の透気度は、30sec/100cc~500sec/100ccが好ましく、30sec/100cc~300sec/100ccがより好ましく、50sec/100cc~200sec/100ccがさらに好ましい。
【0064】
耐熱層28は、基材層27の上に設けられている。耐熱層28は、基材層27の上に形成されていることが好ましい。耐熱層28は、基材層27の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して基材層27の上に設けられていてもよい。また、耐熱層28は、基材層27の片面または両面に形成されていることが好ましい。ただし、耐熱層28は必須ではなく、他の実施形態において省略することもできる。耐熱層28は、ここでは基材層27の正極シート22と対向する面全体に設けられている。これにより、セパレータシート26の熱収縮をより的確に抑え、電池100の安全性の向上に貢献できる。耐熱層28の目付は、ここではセパレータシート26の長手方向LDおよび巻回軸方向WDに均質である。特に限定されるものではないが、耐熱層28の厚み(積層方向MDの長さ。以下同じ)は、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。また、耐熱層28の厚みは、6μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましい。耐熱層28は、無機フィラーと耐熱層バインダーとを含むことが好ましい。
【0065】
無機フィラーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。無機フィラーは、絶縁性のセラミック粒子を含むことが好ましい。なかでも、耐熱性、入手容易性等を考慮すると、アルミナ、ジルコニア、シリカ、チタニア等の無機酸化物や、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物、ベーマイト等の粘土鉱物が好ましく、アルミナ、ベーマイトがより好ましい。また、セパレータシート26の熱収縮を抑制する観点からは、特にアルミニウムを含む化合物が好ましい。耐熱層28の総質量に対する無機フィラーの割合は、85質量%以上が好ましく、90質量%以上、さらには95質量%以上がより好ましい。
【0066】
耐熱層バインダーとしては、従来公知この種の用途で使用されているものを特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂(例えば、PVdF)、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂等が挙げられる。なかでもアクリル系樹脂が好ましい。
【0067】
図13に示すように、本実施形態では、接着層6は、正極シート22と対向する面および負極シート24と対向する面に設けられ、正極シート22および負極シート24と当接している。接着層6は、
図13に示すように、少なくともセパレータシート26の正極シート22側の面に形成されていることが好ましい。接着層6は、ここでは耐熱層28の上に設けられている。接着層6は、耐熱層28の上に形成されていることが好ましい。接着層6は、耐熱層28の表面に直接設けられていてもよいし、他の層を介して耐熱層28の上に設けられていてもよい。また、接着層6は、基材層27の表面に直接設けられていてもよいし、耐熱層28以外の層を介して基材層27の上に設けられていてもよい。接着層6は、電解液との親和性が、例えば耐熱層28と比べて相対的に高く、電解液を吸収して膨潤する層であり得る。特に限定されるものではないが、巻回電極体20aにおける接着層6の厚み(
図13の積層方向MDの長さ。)は、0.1μm以上が好ましく、0.2μm以上がより好ましく、0.5μm以上がさらに好ましい。また、接着層6の厚みは、10μm以下が好ましく、5μm以下が好ましく、3μm以下がより好ましい。即ち、巻回電極体20aにおける接着層6の厚みは、例えば、0.1μm~10μmの範囲内であることが好ましい。
【0068】
接着層6は、接着層バインダーを含んでいる。接着層バインダーとしては、正極シート22に対して一定の粘性を有する従来公知の樹脂材料を特に制限なく使用できる。具体例として、アクリル系樹脂、フッ素系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリアリルアミン(PAA)樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系樹脂等が挙げられる。なかでも、高い柔軟性を有し、正極シート22に対する接着性をより好適に発揮できることから、フッ素系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。フッ素系樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等が挙げられる。接着層バインダーの種類は、耐熱層バインダーと同じであってもよく、異なっていてもよい。接着層6の総質量に対する耐熱層バインダーの割合は、20質量%以上が好ましく、50質量%以上、さらには70質量%以上がより好ましい。これにより、正極シート22に対して所定の接着性が的確に発揮されるとともに、プレス成形においてセパレータシート26が変形しやすくなる。
【0069】
接着層6は、接着層バインダーに加えて、他の材料(例えば、耐熱層28の成分として挙げた無機フィラー等)を含んでいてもよい。接着層6が無機フィラーを含む場合、接着層6の総質量に対する無機フィラーの割合は、80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。
【0070】
図12に示すように、本実施形態では、接着層6は、第2セパレータシート26S
2の長手線上に断続的に配置されている。本実施形態では、接着層6は、第2セパレータシート26S
2の長手線上において破線状に配置されている。なお、接着層6の形状はこれに限定されず、例えば、セパレータシート26の平面視において、ドット状、ストライプ状、波状、帯状(筋状)、またはこれらの組み合わせ等の形状であってもよい。
【0071】
電解液は従来と同様でよく、特に制限はない。電解液は、例えば、非水系溶媒と支持塩とを含有する非水電解液である。非水系溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等のカーボネート類を含んでいる。支持塩は、例えば、LiPF6等のフッ素含有リチウム塩である。ただし、電解液は固体状(固体電解質)で、巻回電極体群20と一体化されていてもよい。
【0072】
正極端子30は、
図7に示すように、封口板14の長辺方向Yの一方の端部(
図7の左端部)に形成された端子挿入穴18に挿入されている。正極端子30は、金属製であることが好ましく、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金からなることがより好ましい。一方、負極端子40は、封口板14の長辺方向Yの他方の端部(
図7の右端部)に形成された端子挿入穴19に挿入されている。なお、負極端子40は、金属製であることが好ましく、例えば銅または銅合金からなることがより好ましい。これらの電極端子(正極端子30、負極端子40)は、ここでは、電池ケース10の同じ面(具体的には封口板14)からそれぞれ突出している。ただし、正極端子30および負極端子40は、電池ケース10の異なる面からそれぞれ突出していてもよい。また、端子挿入穴18、19に挿入された電極端子(正極端子30、負極端子40)は、カシメ加工などによって封口板14に固定されていることが好ましい。
【0073】
上述した通り、正極端子30は、
図7に示すように、外装体12の内部で正極集電部50(正極第1集電部51、正極第2集電部52)を介して、各々の巻回電極体20a,20b,20cの正極シート22(
図12参照)と電気的に接続される。正極端子30は、正極内部絶縁部材70およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70は、正極第1集電部51と封口板14との間に介在するベース部70aと、当該ベース部70aから巻回電極体20a側に突出する突出部70bとを備えている。そして、端子挿入穴18を通じて電池ケース10の外部に露出した正極端子30は、封口板14の外部において正極外部導電部材32と接続される。一方、負極端子40は、
図7に示すように、外装体12の内部で負極集電部60(負極第1集電部61、負極第2集電部62)を介して、各々の巻回電極体20aの負極シート24(
図12参照)と電気的に接続される。負極端子40は、負極内部絶縁部材80およびガスケット90によって、封口板14と絶縁される。なお、正極内部絶縁部材70と同様に、負極内部絶縁部材80も、負極第1集電部61と封口板14との間に介在するベース部80aと、当該ベース部80aから巻回電極体20a側に突出する突出部80bとを備えている。そして、端子挿入穴19を通じて電池ケース10の外部に露出した負極端子40は、封口板14の外部において負極外部導電部材42と接続される。そして、上述した外部導電部材(正極外部導電部材32、負極外部導電部材42)と封口板14の外面との間には、外部絶縁部材92が介在している。かかる外部絶縁部材92によって外部導電部材32、42と封口板14とを絶縁できる。
【0074】
また、上述した内部絶縁部材(正極内部絶縁部材70、負極内部絶縁部材80)の突出部70b、80bは、封口板14と巻回電極体20aとの間に配置される。かかる内部絶縁部材の突出部70b、80bによって、上方への巻回電極体20aの移動が規制され、封口板14と巻回電極体20aとの接触を防止できる。
【0075】
<電池の用途>
電池100は各種用途に利用可能であるが、例えば、乗用車、トラック等の車両に搭載されるモータ用の動力源(駆動用電源)として好適に用いることができる。車両の種類は特に限定されないが、例えば、プラグインハイブリッド自動車(PHEV;Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、ハイブリッド自動車(HEV;Hybrid Electric Vehicle)、電気自動車(BEV;Battery Electric Vehicle)等が挙げられる。電池100は、電池反応のバラつきが低減されているため、組電池の構築に好適に用いることができる。
【0076】
以上、本開示の一実施形態について説明したが、上記実施形態(第1実施形態)は一例に過ぎない。本開示は、他にも種々の形態にて実施することができる。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上記に例示した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上記した実施形態の一部を他の変形態様に置き換えることも可能であり、上記した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0077】
例えば、
図14は、第2実施形態に係る
図2対応図である。
図14に示すように、第2実施形態では、シート(ここでは、第2セパレータシート126)の平面視において、接着層106は長手線上に沿って帯状(筋状)となるように配置されている。第2実施形態は、パターンを変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。
【0078】
例えば、
図15は、第3実施形態に係る
図2対応図である。
図15に示すように、第2実施形態では、シート(ここでは、第2セパレータシート226)の平面視において、接着層206は傾斜を有する破線が長手線上に沿って配置されている。第3実施形態は、パターンを変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。
【0079】
例えば、
図16は、第4実施形態に係る
図2対応図である。第2実施形態では、シート(ここでは、第2セパレータシート326)の平面視において、接着層306は長手線上に沿ってドット状となるように配置されている。第4実施形態は、パターンを変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。
【0080】
例えば、
図17は、第5実施形態に係る
図2対応図である。第5実施形態では、シート(ここでは、第2セパレータシート426)の平面視において、接着層406は長手方向に沿って漸次太くなる帯状(筋状)となるように配置されている。第5実施形態は、パターンを変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。
【0081】
例えば、
図18は、第2実施形態に係る
図2対応図である。第6実施形態では、シート(ここでは、第2セパレータシート526)の平面視において、接着層506は長手方向に沿って漸次細くなる帯状(筋状)となるように配置されている。第6実施形態は、パターンを変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。
【0082】
例えば、
図19は、第2実施形態に係る
図2対応図である。第7実施形態では、シート(ここでは、第2セパレータシート626)の平面視において、接着層606は短手線上に断続的に配置されている。第7実施形態は、パターンを変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。
【0083】
例えば、
図20は、第2実施形態に係る
図2対応図である。第8実施形態では、シート(ここでは、第2セパレータシート726)の平面視において、接着層706は短手線上に帯状(筋状)に配置されている。第8実施形態は、パターンを変更すること以外は、上述した第1実施形態と同様であってよい。なお、第8実施形態では、ローラ3dの回転する表面は、接着層706が配置されたシート(ここでは、セパレータシート726)のうち接着層706が配置されていない領域と当接するように構成されている凸部3d
1が存在することが好ましい。またさらに、接着層706が配置されたシート(ここでは、セパレータシート726)において、接着層706が配置されている領域とローラ3dとが略当接しないように構成されている凹部3d
2が存在することが好ましい。
【0084】
以上のとおり、ここで開示される技術の具体的な態様として、以下の各項(item)に記載のものが挙げられる。
項1:帯状の正極シートおよび帯状の負極シートが、帯状のセパレータシートを介して積層され、巻回された巻回電極体であって、上記セパレータシートと上記正極シート、および/または、上記セパレータシートと上記負極シートとが、接着層により接着された巻回電極体の製造方法であって、以下の工程:上記正極シート、上記負極シート、および上記セパレータシートを用意する用意工程,ここで、各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に、上記接着層が配置されている;上記用意した上記各々のシートを搬送する、搬送工程,ここで、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層が配置されていない領域をローラと当接させながら搬送する;および、上記搬送した上記各々のシートを、巻き芯に巻き取る、巻き取り工程;を包含する、巻回電極体の製造方法。
項2:上記搬送工程において、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層が配置されている領域を上記ローラと略当接しないようにする、項1に記載の巻回電極体の製造方法。
項3:上記用意工程において、上記各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に上記接着層を形成する、項1または項2に記載の巻回電極体の製造方法。
項4:上記接着層が配置された上記シートは、上記セパレータシートである、項1~項3のいずれか一つに記載の巻回電極体の製造方法。
項5:上記接着層は、上記セパレータシートの両面に配置されている、項4に記載の巻回電極体の製造方法。
項6:上記巻回電極体は、上記セパレータシートとして第1セパレータシートおよび第2セパレータシートを有しており、上記巻回工程において、上記第1セパレータシート、上記正極シート、上記第2セパレータシート、および上記負極シートがこの順に重ねられて巻回されるか、上記第1セパレータシート、上記負極シート、上記第2セパレータシート、および上記正極シートがこの順に重ねられて巻回される、項1~項5のいずれか一つに記載の巻回電極体の製造方法。
項7:上記ローラの回転する表面は、凹部および凸部が交互に存在するくし型に構成されており、上記搬送工程において、上記凸部を、上記接着層が配置された上記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接させて、該接着層が配置された上記シートを搬送する、項1~項6のいずれか一つに記載の巻回電極体の製造方法。
項8:上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層は該シートの短手線上または長手線上に断続的に配置されており、上記搬送工程において、上記ローラが、上記接着層が断続的に配置された上記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接するように、上記接着層が配置された前記シートを搬送する、項1~項7のいずれか一つに記載の巻回電極体の製造方法。
項9:項1~項8のいずれか一つに記載の巻回電極体の製造方法によって得られた巻回電極体を用いて蓄電デバイスを構築する、蓄電デバイスの製造方法。
項10:帯状の正極シートおよび帯状の負極シートが、帯状のセパレータシートを介して積層され、巻回された巻回電極体であって、上記セパレータシートと上記正極シート、および/または、上記セパレータシートと上記負極シートとが、接着層により接着された巻回電極体の製造装置であって、各々の上記シートを搬送する搬送部と、上記各々のシートのうち、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層が配置されていない領域と当接するように構成された1または複数のローラと、上記搬送部によって搬送された上記各々のシートを巻き取る、巻き芯と、を備える、巻回電極体の製造装置。
項11:上記ローラは、上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層が配置されている領域と該ローラとが略当接しないように構成されている、項10に記載の巻回電極体の製造装置。
項12:上記各々のシートのうち少なくとも1つのシートにおける少なくとも片面に上記接着層を配置するための接着層塗布部をさらに備える、項10または項11に記載の巻回電極体の製造装置。
項13:上記ローラの回転する表面は、凹部および凸部が交互に存在するくし型に構成されており、上記凸部は、上記接着層が配置された上記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接するように構成されている、項10~項12のいずれか一つに記載の巻回電極体の製造装置。
項14:上記接着層が配置された上記シートにおいて、該接着層は該シートの短手線上または長手線上に断続的に配置されており、上記ローラは、上記接着層が断続的に配置された上記シートのうち該接着層が配置されていない領域と当接するように構成されている、項10~項13のいずれか一つに記載の巻回電極体の製造装置。
【符号の説明】
【0085】
1 巻回電極体製造装置
2 搬送部
3a,3b,3c ローラ
4 巻き芯
5 接着層塗布部
6 接着層
10 電池ケース
12 外装体
14 封口板
15 注液孔
15a 封止部材
17 ガス排出弁
18,19 端子挿入穴
20 電極体群
20a~20c 巻回電極体
22 正極シート
23 正極タブ群
24 負極シート
25 負極タブ群
26 セパレータシート
27 基材層
28 耐熱層
30 正極端子
32 正極外部導電部材
40 負極端子
42 負極外部導電部材
50 正極集電部
60 負極集電部
70 正極内部絶縁部材
80 負極内部絶縁部材
90 ガスケット
92 外部絶縁部材
100 電池