(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109350
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A01C15/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014092
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】大森 圭輔
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052BC15
2B052BC16
2B052DA04
2B052DD03
2B052EA03
2B052EA10
2B052EA13
(57)【要約】
【課題】貯留タンクを作業姿勢から格納姿勢に姿勢変化させることにより移植機の幅方向を小型化できる。
【解決手段】機体フレーム5と、機体フレーム5の側方に設けられた延長ステップ17と、延長ステップ17の外側に配置された後側タンク30と、後側タンク30を上下方向および左右方向に移動可能とする昇降リンク機構31と、を備える。昇降リンク機構31は、延長ステップ17の外側かつ上側に後側タンク30を位置させる作業姿勢Aと、作業姿勢Aより機体フレーム5の内側で延長ステップ17の上側に後側タンク30を位置させる格納姿勢Bとに姿勢変更させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、
この走行機体の側方に設けられた支持部材と、
この支持部材の外側に配置された貯留タンクと、
この貯留タンクを上下方向および左右方向に移動可能とする昇降機構と、を備え、
この昇降機構は、前記支持部材の外側かつ上側に前記貯留タンクを位置させる作業姿勢と、この作業姿勢より前記走行機体の内側で前記支持部材の上側に前記貯留タンクを位置させる格納姿勢とに姿勢変更させる、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記走行機体の前部側方に配置された前側タンクを備え、
前記昇降機構は、前記作業姿勢の際に、前記貯留タンクを前記前側タンクと等しい高さに配置させる、
ことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
複数の前記貯留タンクと、
複数の前記前側タンクと、
これら貯留タンクおよび前記前側タンクに接続された複数の配管と、
前記貯留タンクおよび前記前側タンクに貯留した被貯留物が前記配管を介して供給されるポンプと、を備え、
前記複数の配管は下流側で合流されて前記ポンプに接続されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の作業車両。
【請求項4】
前記貯留タンクに接続された前記配管には、この配管を開閉するバルブが設けられている、
ことを特徴とする請求項3記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば肥料などを貯留させる貯留タンクを備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体の前端部にペースト肥料を収納する肥料タンク21と予備苗のせ台3bとを設け、肥料タンク21と予備苗のせ台3bとを、作業位置に設定した状態と、作業位置よりも走行機体前側の補給位置とに亘って前後位置変更自在に構成してある施肥装置付き乗用型田植機において、走行機体の原動部の両横側に配置した肥料タンク21、苗植付装置10に設けた複数本の側条施肥ノズル22を有する側条施肥装置20と、走行機体の運転座席4の横側に配置した肥料タンク31、苗植付装置10に設けた複数本の深層施肥ノズル32を有する深層施肥装置30を備えた構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、車体の前部に操作ボックス4を有する操縦装置6を、車体後部には田植装置7を備えてある田植機であって、浅層施肥装置13の一対の浅層用タンク14,14が車体1の左右において運転席8の後方外側寄りで固定され、深層施肥装置26の一対の深層用液肥タンク27,27が操作ボックス4を挟む左右両側に配設された構成のものも知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4017549号公報
【特許文献2】特開2001-86810号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の施肥装置付き乗用型田植機では、複数の肥料タンク21,31を備えているものの、走行機体の原動部の両横側に配置した肥料タンク21は側条施肥装置20として用いられ、走行機体の運転座席4の横側に配置した肥料タンク31は深層施肥装置30として用いられるものである。このため、肥料タンク31に収納したペースト肥料を側条施肥装置20用として使用できず、実質的なペースト肥料のタンク容量の増加となっていない。また、特許文献2の田植機においても、一対の浅層用タンク14,14、および一対の深層用液肥タンク27,27を備えた構成であるが、それぞれが浅層施肥装置13または深層施肥装置26用のタンクとされた構成となっているため、実質的なタンク容量の増加となっていない。特に、肥料を貯留するためのタンクを走行機体に複数搭載させた場合には、走行機体の外周より側方にタンクを突出させなければならず、田植機自体の幅寸法が大きくなってしまい、比較的小型なトラック等の車両に乗せて移動することが容易ではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として発明されたものであって、請求項1の発明は、走行機体と、この走行機体の側方に設けられた支持部材と、この支持部材の外側に配置された貯留タンクと、この貯留タンクを上下方向および左右方向に移動可能とする昇降機構と、を備え、この昇降機構は、前記支持部材の外側かつ上側に前記貯留タンクを位置させる作業姿勢と、この作業姿勢より前記走行機体の内側で前記支持部材の上側に前記貯留タンクを位置させる格納姿勢とに姿勢変更させる、ことを特徴とする作業車両である。
請求項2の発明は、請求項1記載の作業車両であって、前記走行機体の前部側方に配置された前側タンクを備え、前記昇降機構は、前記作業姿勢の際に、前記貯留タンクを前記前側タンクと等しい高さに配置させる、ことを特徴としている。
請求項3の発明は、請求項1または2記載の作業車両であって、複数の前記貯留タンクと、複数の前記前側タンクと、これら貯留タンクおよび前記前側タンクに接続された複数の配管と、前記貯留タンクおよび前記前側タンクに貯留した被貯留物が前記配管を介して供給されるポンプと、を備え、前記複数の配管は下流側で合流されて前記ポンプに接続されている、ことを特徴としている。
請求項4の発明は、請求項3記載の作業車両であって、 前記貯留タンクに接続された前記配管には、この配管を開閉するバルブが設けられている、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、支持部材の外側かつ上側に貯留タンクを位置させる作業姿勢から格納姿勢に姿勢変化させると、作業姿勢より走行機体の内側で支持部材の上側に貯留タンクを位置させることができる。よって、作業姿勢の場合に比べ格納姿勢では作業車両の幅方向の小型化を図ることができる。
請求項2の発明によれば、前側タンクおよび貯留タンクによって、被貯留物の貯留量を増加できるから、被貯留物の補給作業回数を少なくでき作業性を向上できる。同時に、作業姿勢の際に貯留タンクと前側タンクとが等しい高さに配置されるため、これら前側タンクおよび貯留タンクとの間で生じ得る被貯留物の逆流を防止できる。
請求項3の発明によれば、被貯留物の貯留量が各貯留タンクおよび前側タンク間で一定にできる。よって、走行機体の機体バランスが崩れにくく、作業姿勢での作業性を向上できる。
請求項4の発明によれば、非作業時にバルブを閉じておくことにより、例えば、作業姿勢から格納姿勢へ姿勢変更させる際や、畦などの傾斜地を移動させる際などに生じ得る、予期しない被貯留物の移動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図7】作業車両の一部を省略した作業状態の底面図である。
【
図8】作業車両の一部を拡大した斜視図で、(a)は作業状態、(b)は格納状態である。
【
図9】作業車両の一部を拡大した平面図で、(a)は作業状態、(b)は格納状態である。
【
図10】作業車両の一部を拡大した右側面図で、(a)は作業状態、(b)は格納状態である。
【
図11】作業車両の一部を拡大した正面図で、(a)は作業状態、(b)は格納状態である。
【
図12】第2実施形態のタンク制御システムを示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<全体構成>
以下、本発明の第1実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1ないし
図11において、1は作業車両としての乗用型の移植機である。移植機1は、左右一対の前輪2と後輪3とを有する走行機体としての機体フレーム5を備えている。機体フレーム5の後部には、昇降リンク6を介して6条植え付け用の植付作業機である植付部7が昇降可能に取り付けられている。機体フレーム5の前部には、ボンネット9に覆われたエンジン(図示せず)が搭載されている。ボンネット9の後方には、ステアリングハンドル12および操作パネル13等を有する運転操作部10が設けられている。そして、運転操作部10の後方には運転座席11が設けられ、運転座席11にオペレータが着座して運転操作できる構成となっている。
【0009】
ボンネット9の左右側方には、サイドステップ15が運転操作部10から前論2の車軸の上方を通して延設されている。サイドステップ15の後方には、運転操作部10の床面(底部)を構成するメインステップ16および支持部材としてのスノコ状の延長ステップ(サイドステップ)17が連続して設けられている。そして、これらサイドステップ15、メインステップ16、および延長ステップ17によって、オペレータ等の作業者がその上方を移動するステップ19が構成される。運転座席11は、ステップ19の後方に設けられた機体カバー20に取り付けられている。機体カバー20の運転座席11の左右側方は、ステップ19より一段高い平坦面状の苗供給用のリアステップ21となっている。
【0010】
左右の各サイドステップ15それぞれの側方には、貯留タンクである前側タンク23と予備苗載置台25とが取り付けられている。前側タンク23および予備苗載置台25は、機体フレーム5に対し取付フレーム26を介して着脱可能に取り付けられている。各前側タンク23には、機体フレーム5の底部に設けられた施肥装置41に供給する被貯留物としてのペースト肥料等が収容(貯留)される。これら前側タンク23は、機体フレーム5の前部側方に配置されたペーストタンクであり、底部側をサイドステップ15と略等しい高さにして取り付けられている。また、各前側タンク23の上面23bの前側には、ペースト肥料を供給するための補給口23aが開口されている。補給口23aには、蝶番等のヒンジ部28aを介して口蓋28が取り付けられ、この口蓋28にて補給口23aが開閉可能とされている。
【0011】
左右の各延長ステップ17それぞれの側方(外側)には、貯留タンクである後側タンク30が取り付けられて増設されている。これら後側タンク30は、機体フレーム5に対し、昇降機構としての昇降リンク機構31を介して支持フレーム32に取付けられた可変式ペースト増量タンクであり、昇降リンク機構31の回動動作により上下方向および左右方向に移動可能に取り付けられている。そして、これら後側タンク30もまた、施肥装置41に供給するペースト肥料が収容される。各後側タンク30の上面30bの前側には、ペースト肥料を供給するための補給口30aが開口され、補給口30aには、蝶番等のヒンジ部29aを介して口蓋29が取り付けられている。
【0012】
また、各後側タンク30には、内部に貯留したペースト肥料の貯留量を把握するための貯留状態検出手段としての残量確認機構33が取り付けられている。残量確認機構33は、各後側タンク30の上面30aの後側にそれぞれ取り付けられたフロートセンサ33aと、各後側タンク30の内部に収容されたフロート33bとを有している。フロートセンサ33aは、後側タンク30内に収容されたペースト肥料の液面に沿ってフロート33bが浮き沈みすることによって、各後側タンク30内のペースト肥料の収納量を、例えば操作パネル13等に表示させ、各後側タンク30のペースト肥料の残量を作業者が把握できる構成となっている。
【0013】
<昇降リンク機構>
昇降リンク機構31は、
図4ないし
図7、
図8(a)、
図9(a)および
図10(a)に示すように、延長ステップ17の外側かつ上側であって、前側タンク23と等しい高さに後側タンク30を位置(配置)させる作業姿勢(作業状態)Aと、
図1ないし
図3、
図8(b)、
図9(b)および
図10(b)に示すように、作業姿勢Aに比べ機体フレーム5の左右方向の内側で延長ステップ17の上側に後側タンク30を位置(配置)させる格納姿勢(格納状態)Bとに、各後側タンク30を姿勢変更させる構成となっている。具体的に、昇降リンク機構31は、後側タンク30の前側を支持する前側昇降リンク34と、この後側タンク30の後側を支持する後側昇降リンク35とを備えている。前側(後側)昇降リンク34、35のそれぞれは、後側タンク30を平行に移動させる平行リンクとなっている。
【0014】
前側昇降リンク34は、延長ステップ17の外側部に取り付けられたタンク支持フレーム34aを有し、タンク支持フレーム34aの上端部に略平板状のタンク受け部34bが設けられている。タンク受け部34bには上下方向に貫通したボルト孔34cが設けられ、タンク受け部34bの基端側には、前側昇降リンクとしての細長略平板状の前側リンク片34dの下端部が前後方向の回転軸を有する回動支点a1として左右方向に回動可能に取り付けられている。そして、前側リンク片34dの上端部は、支持フレーム32の前側下端縁に左右方向に回動可能に取り付けられ前後方向の回転軸を有する回動支点a2が構成されている。
【0015】
前側リンク片34dの上端部には、後側タンク30を格納姿勢Bとした状態で、タンク受け部34bに載置し後側タンク30を支持する平板状の載置片部34eが略水平に取り付けられている。載置片部34eには、上下方向に貫通したボルト孔34fが設けられ、このボルト孔34fの上側から固定部としてのノブボルト34gがねじ止めされて取り付けられている。ノブボルト34gは、下端部が載置片部34eの下面より下方に突出する構成とされ、後側タンク30を格納姿勢Bとした状態で、下端部がタンク受け部34bのボルト孔34cにねじ止めされて固定され、後側タンク30の格納姿勢Bを維持する構成となっている。さらに、タンク支持フレーム34aの下端部には、後側タンク30を作業姿勢Aにした状態で、載置片部34eのボルト孔34fに連通するボルト孔34hが設けられている。
【0016】
後側昇降リンク35は、リアステップ21の左右方向の外側部のそれぞれに鉛直方向に突出して取り付けられた略角柱状の支柱35aを有している。各支柱35aの前側面には、後側昇降リンクとしての細長略平板状の後側リンク片35bの一端部が前後方向の回転軸を有する回動支点b1として左右方向に回動可能に取り付けられている。そして、後側リンク片35bの回動支点b1より先端側に前後方向に貫通したボルト孔35cが設けられている。また、支柱35aの前側面の回動支点b1より下側には、前後方向に貫通したボルト孔35dが設けられている。これらボルト孔35c,35dは、後側タンク30を格納姿勢Bとした際に連通し、これら連通したボルト孔35c,35dに固定部としてのノブボルト35eをねじ止めして固定することで、後側タンク30の格納姿勢Bを維持する構成となっている。
【0017】
さらに、支柱35aの後側面には、計2つのノブボルト35eをねじ止めするためのボルト孔35fが設けられている。そして、後側リンク片35bの他端部は、支持フレーム32の後側上端縁に取り付けられた略平板状の取付プレート35gに、左右方向に回動可能に取り付けられ前後方向の回転軸を有する回動支点b2が構成されている。取付プレート35gの先端部には、前後方向に貫通したボルト孔35hが設けられている。また、後側リンク片35bの他端部には、この後側リンク片35bの幅方向に突出した係止片部35iが設けられ、この係止片部35iに前後方向に貫通したボルト孔35jが設けられている。これらボルト孔35h,35jは、後側タンク30を格納姿勢Bとした際に連通し、この連通したボルト孔35h,35jにノブボルト35eをねじ止めして固定することで、後側タンク30の格納姿勢Bを維持する構成となっている。
【0018】
また、機体フレーム5の後側両側部には、後側タンク30を作業姿勢Aとした状態で、この後側タンク30が載置して支持するタンク底受け部36が設けられている。各後側タンク30の下面には、これら後側タンク30に収納させたペースト肥料を排出させるための配管(後側肥料配管)37の一端(上流側)がそれぞれ接続されている。各配管37のうち、一端側の部分が可動可能な蛇腹ホース37aにて構成され開閉バルブ38が取り付けられている。これら開閉バルブ38は、手動バルブであり、作業者による開閉動作にて配管37内の流路を開閉させ、後側タンク30に収納されたペースト肥料の排出を制御する構成となっている。そして、各配管37の他端(下流側)は、
図7に示すように、施肥装置41に接続されている。施肥装置41には、各前側タンク23それぞれの下面に一端(上流側)が接続された配管(前側肥料配管)39の他端(下流側)がそれぞれ接続されている。
【0019】
施肥装置41は、圃場側にペースト肥料を散布するもので、配管合流部としてのサブタンク41aを備えている。サブタンク41aは、機体フレーム5の左右方向および前後方向それぞれにおける略中央部に取り付けられている。このサブタンク41aには、各配管37,39それぞれの他端が接続され、これら配管37,39を介して供給されるペースト肥料がサブタンク41aにて合流して供給される構成となっている。そして、施肥装置41は、サブタンク41aへ供給されたペースト肥料が、機体フレーム5の下面に取り付けられた肥料ポンプ(ペーストポンプ)41bへ供給される。肥料ポンプ41bは、供給されたペースト肥料を所定の施肥機構41cへ吐出し、この所定の施肥機構41cから圃場側にペースト肥料を散布する構成となっている。また、肥料ポンプ41bには、ペースト肥料を直接外部へ排出させるための肥料排出配管41dが取り付けられ、肥料排出配管41dには、手動式の開閉バルブ(図示せず)が取り付けられている。なお、肥料ポンプ41bは、側条用と深層用の計12本が各施肥機構41cに配管41eで接続され、3つにユニット化された構成となっている。
【0020】
<昇降操作>
次に、後側タンクの昇降操作について、
図1ないし
図11を参照して説明する。
【0021】
(格納姿勢)
目的とする圃場等へ移植機1を運搬する場合は、
図1ないし
図3、
図8(b)、
図9(b)および
図10(b)に示す格納姿勢Bにて行う。この格納姿勢Bおいては、各後側タンク30が機体フレーム5の左右方向の内側で延長ステップ17の上側に位置する。このため、移植機1の左右方向の大きさ(幅寸法)を小さくでき、例えば3.5t等の比較的小型なトラックにて移植機1を運搬できる。このとき、移植機1は、前側タンク23および後側タンク30のそれぞれにペースト肥料を供給せず空荷状態としておく。
【0022】
格納姿勢Bにおいては、前側昇降リンク34のタンク受け部34b上に載置片部34eが載置した状態となっている。このとき、載置片部34eのボルト孔34fとタンク受け部34bのボルト孔34cとが連通し、これら連通したボルト孔34f,34bにノブボルト34gがねじ止めされ、前側リンク片34dの回動支点a1,a2を中心とする回動が固定されている。
【0023】
後側昇降リンク35は、支柱35aのボルト孔35dと後側リンク片35bのボルト孔35cとが連通し、この連通したボルト孔35d,35cにノブボルト35eがねじ止めされ、支柱35aと後側リンク片35bとの回動支点b1を中心とする回動が固定されている。また、後側リンク片35bのボルト孔35jと取付フレーム35gのボルト孔35hとが連通し、この連通したボルト孔35j,35hにノブボルト35eがねじ止めされ、後側リンク片35bと取付フレーム35gとの回動支点b2を中心とする回動が固定されている。
【0024】
(作業姿勢)
目的とする圃場等にて移植機1を用いて苗付けを行う際には、まず、前側昇降リンク34のノブボルト34gを手作業で緩め、タンク受け部34bのボルト孔34cへのノブボルト34gのねじ止めを解除させる。次いで、後側昇降リンク35の各ノブボルト35eを取り外し、支柱35aの後側のボルト孔35fにねじ止めする。この状態で、
図4ないし
図7、
図8(a)、
図9(a)および
図10(a)に示すように、各後側タンク30を延長ステップ17の外側かつ上側であって、前側タンク23と等しい高さに移動させて作業姿勢Aとする。このとき、前側昇降リンク34は、回動支点a1,a2のそれぞれを回動中心として前側リンク片34dの上端側が外方向に傾くように回動していく。そして、後側昇降リンク35もまた、回動支点b1,b2のそれぞれを回動中心として後側リンク片35bの上端側が外方向に傾くように回動していく。
【0025】
その結果、各後側タンク30がタンク底受け部36に載置し、各タンク底受け部36にて各後側タンク30が支持された状態となる。このとき、載置片部34eのボルト孔34fがタンク支持フレーム34aの下端側のボルト孔34hに連通する。その後、載置片部34eのボルト孔34fに取り付けられたノブボルトを、手作業でタンク支持フレーム34aのボルト孔34hにねじ止めし、前側リンク片34dの回動支点a1,a2を中心とする回動を固定する。
【0026】
その後、各後側タンク30の配管37に取り付けられた開閉バルブ38のそれぞれを手作業で閉動作させてから、各前側タンク23および後側タンク30のそれぞれの口蓋28,29を開け、これら前側タンク23および後側タンク30のそれぞれの補給口23a,30aから所定のペースト肥料を供給して貯留させる。この状態で、植付部7に所定数の苗をセットするとともに、必要に応じ予備苗載置台25に予備苗をセットする。
【0027】
この状態で、移植機1を圃場で駆動させて苗を順次植え付けながらペースト肥料を散布していく。このとき、前側タンク23に補給されたペースト肥料が徐々に配管39を介してサブタンク41aから肥料ポンプ41bへ供給される。そして、肥料ポンプ41bからペースト肥料が所定の施肥機構41cへ吐出され、この所定の施肥機構41cから圃場側にペースト肥料が散布される。なお、後側タンク30の開閉バルブ38が開いている場合には、前側タンク23および後側タンク30のそれぞれから配管37,39を介してサブタンク41aへペースト肥料が供給される。
【0028】
その後、後側タンク30の開閉バルブ38が閉められている場合には、前側タンク23のペースト肥料のみが配管39からサブタンク41aへ供給される。このため、これら前側タンク23内のペースト肥料が無くなった場合に、各後側タンク30の開閉バルブ38のそれぞれを手作業で開け、これら後側タンク30内のペースト肥料がサブタンク41aに供給される状態とする。この状態で、移植機1を駆動させることにより、苗を植え付けながら施肥装置41にて後側タンク30内のペースト肥料を散布することが可能となる。
【0029】
(格納姿勢)
圃場等から移植機1を運搬する際には、肥料排出配管41dの開閉バルブ38を手作業で開き、各前側タンク23および後側タンク30内に残ったペースト肥料を外部へ排出させて、これら前側タンク23および後側タンク30を空荷状態とする。この状態で、前側昇降リンク34のノブボルト34gを手作業で緩め、タンク支持フレーム34aのボルト孔34hへのノブボルト34gのねじ止めを解除させてから、
図1ないし
図3、
図8(b)、
図9(b)および
図10(b)に示すように、各後側タンク30が機体フレーム5の左右方向の内側で延長ステップ17の上側に位置するように手作業で各後側タンク30を押し上げるように移動させて格納姿勢Bとする。
【0030】
このとき、前側昇降リンク34の前側リンク片34dの上端側が内方向に傾くように回動支点a1,a2を回動中心として回動していくと同時に、後側昇降リンク35の後側リンク片35bの上端側もまた内方向に傾くように回動支点b1,b2を回動中心として回動していく。その後、前側昇降リンク34の載置片部34eがタンク受け部34bに載置して支持され、これら載置片部34eのボルト孔34fとタンク受け部34bのボルト孔34cが連通する。この状態で、載置片部34eのボルト孔34fに取り付けられたノブボルト34gをタンク受け部34bのボルト孔34cにねじ止めし、後側タンク30の回動支点a1,a2を中心とする回動を固定させる。
【0031】
ここで、後側昇降リンク35では、支柱35aのボルト孔35dと後側リンク片35bのボルト孔35cとが連通し、この後側リンク片35bのボルト孔35jと取付フレーム35gのボルト孔35hとが連通した状態となる。この状態で、支柱35aの後側のボルト孔34hからノブボルト34gを手作業で取り外し、これらノブボルト34gを、連通したボルト孔35d,35cおよびボルト孔35j,35hのそれぞれにねじ止めし、後側タンク30の回動支点b1,b2を中心とする回動を固定させ格納姿勢Bを維持させる。
【0032】
<作用効果>
叙述の如く構成された本第1実施形態によれば、各後側タンク30が延長ステップ17の外側かつ上側に位置する作業姿勢Aから、これら後側タンク30を昇降リンク機構31にて格納姿勢Bに姿勢変化させることにより、各後側タンク30が機体フレーム5の左右方向の内側で延長ステップ17の上側に位置する構成としている。この結果、作業姿勢Aの場合に比べ格納姿勢Bでの移植機1の幅方向の大きさを小型化できる。よって、移植機1の輸送時に使用するトラックの大きさを、4tタイプなどの比較的大型なトラックにすることなく、従前の3.5tタイプのトラックで輸送できるため、移植機1の輸送を容易にできる。また同時に、作業姿勢Aにおける後側タンク30と予備苗載置台25との干渉を無くすことができるので、予備苗載置台25へ苗補給を行う際に後側タンク30が邪魔にならず、苗補給の作業スペースを確保でき、この苗補給の作業を容易にできる。
【0033】
また、前側タンク23のみを有する場合に比べ、後側タンク30を増設したことにより、ペースト肥料の総貯留量を大幅に増加できるから、ペースト肥料の補給作業の回数を少なくでき、移植機1の作業性を向上できる。また同時に、作業姿勢Aの際に各後側タンク30と前側タンク23とが等しい高さに位置するように配置されるため、苗やペースト肥料の補給作業の作業性を向上できる。また、これら前側タンク23および後側タンク30との間で生じ得るペースト肥料の逆流(オーバーフロー)を防止でき、作業姿勢Aでの移植機1の重心を低重心にできるから、移植機1の作業性を向上できる。
【0034】
また、各前側タンク23および後側タンク30に接続された各配管37,39のそれぞれをサブタンク41aに接続し、このサブタンク41aに肥料ポンプ41bを取り付けた構成としている。この結果、これら前側タンク23および後側タンク30のそれぞれに貯留させたペースト肥料が各配管37,39を介して同一のサブタンク41aへ供給され、このサブタンク41aから肥料ポンプ41bへ供給される。よって、これら前側タンク23および後側タンク30でのペースト肥料の貯留量(液面)を、これら前側タンク23および後側タンク30間で一定な状態を維持しながら施肥装置41にてペースト肥料を散布できる。したがって、ペースト肥料の散布等に起因する移植機1の機体バランスが崩れにくく、作業姿勢Aでの移植機1の作業性を向上できる。またこの場合には、前側タンク23および後側タンク30のいずれかへペースト肥料を供給することにより、これら各前側タンク23および後側タンク30それぞれへのペースト肥料の貯留が可能となるため、作業者によるペースト肥料の供給作業を容易にできる。
【0035】
また、非作業時に開閉バルブ38を閉じておくことにより、例えば、作業姿勢Aから格納姿勢Bへ姿勢変更させる際や、畦などの傾斜地を移動させる際などに生じ得る、作業者が予期しない後側タンク30のペースト肥料のサブタンク41aへの供給を、安価な構成で確実に防止できる。
【0036】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について、
図12を参照して説明する。ただし、本第2実施形態においては、第1実施形態との相違点についてのみ説明し、第1実施形態と共通する構成は同じ符号を用いることで、その説明を援用する。
【0037】
本第2実施形態に係る移植機1は、例えばCPU、メモリー等で構成された制御ユニットとしての制御部51を有している。制御部51には、右側に位置する後側タンク30の姿勢を検出する後右姿勢検出手段52と、この後側タンク30のペースト肥料の貯留状態を検出する後右貯留状態検出手段53と、右側に位置する前側タンク23の貯留状態を検出する前右貯留状態検出手段54とが接続されている。また、制御部51には、左側に位置する後側タンク30の姿勢を検出する後左姿勢検出手段55と、この後側タンク30のペースト肥料の貯留状態を検出する後左貯留状態検出手段56と、左側に位置する前側タンク23の貯留状態を検出する前左貯留状態検出手段57とが接続されている。
【0038】
さらに、制御部51には、各後側タンク30の配管37に取り付けられた開閉バルブ38を開閉動作させるバルブ開閉モータ58と、操作パネル13と、例えば所定の警告音等を発する報知装置(ブザー)58とが接続されている。ここで、本第2実施形態に係る開閉バルブ38は、バルブ開閉モータ57にて配管37内の流路を開閉可能な、例えば電磁バルブとされている。操作パネル13は、例えば表示部(モニタ)13aを有し、表示部13aが制御部51に接続されている。
【0039】
具体的に、後右(後右)姿勢検出手段52,55は、右側(左側)の後側タンク30の姿勢、要するに、この後側タンク30の姿勢が作業姿勢Aか格納姿勢Bかを検出する構成となっている。後右(後右)貯留状態検出手段53,56は、右側(左側)の後側タンク30のペースト肥料の貯留状態、要するに、これら後側タンク30へ供給したペースト肥料の貯留量を検出する。さらに、前右(前左)貯留状態検出手段54,57は、右側(左側)の前側タンク23のペースト肥料の貯留状態、要するに、これら前側タンク23へ供給したペースト肥料の貯留量を検出する構成となっている。
【0040】
制御部51は、まず後右(後右)姿勢検出手段52,55にて右側(左側)の後側タンク30が作業姿勢Aと検出した場合に施肥装置41を駆動可能とする。そして、制御部51は、各後側タンク30が作業姿勢Aと検出した場合に、後右(後右)貯留状態検出手段53,56にて各後側タンク30のペースト肥料の貯留量を検出するとともに、前右(前左)貯留状態検出手段54,57にて各前側タンク23のペースト肥料の貯留量を検出する。さらに、制御部51h、これら前側タンク23および後側タンク30に所定量のペースト肥料を貯留していることを検出した場合に、バルブ開閉モータ58を駆動させて各開閉バルブ38を閉動作させる。
【0041】
この状態で、作業者が施肥装置41を駆動させることにより、前側タンク23に貯留されたペースト肥料が配管39からサブタンク41aへ供給され肥料ポンプ41bにて所定の施肥機構41cへ供給されてペースト肥料が圃場等に散布される。そして、施肥装置41によるペースト肥料の散布を継続し、前右(前左)貯留状態検出手段54,57にて検出した各前側タンク23のペースト肥料の貯留量が、予め定めた所定量以下となった場合には、制御部51がバルブ開閉モータ58を駆動させて各開閉バルブ38を開動作させる。この結果、各後側タンク30に貯留されたペースト肥料が配管37からサブタンク41aへ供給され肥料ポンプ41bにて所定の施肥機構41cへ供給されて、ペースト肥料の圃場等への散布が継続可能となる。
【0042】
さらに、後右(後右)貯留状態検出手段53,56にて検出した各後側タンク30のペースト肥料の貯留量が、予め定めた所定量以下となった場合には、制御部51が報知装置58から警告音を生じさせるとともに、各後側タンク30の貯留量が残り少ないこと等を表示部13aに表示させて作業者へ認識させる。この結果、前側タンク23および後側タンク30のそれぞれに貯留させたペースト肥料を、前側タンク23から後側タンク30の順に自動的に切り変えて施肥装置41へ供給して散布できるので、例えば手動式の開閉バルブ38を作業者が手動操作する等の手間を無くことができるから、作業者の負担を少なくでき、移植機1の作業性を大幅に向上できる。
【0043】
なお、上記第2実施形態においては、後側タンク30にのみバルブ開閉モータ58を取り付けたが、例えば前側タンク23にも電磁式の開閉バルブ(図示せず)や、これら開閉バルブを開閉動作させるバルブ開閉モータ(図示せず)を取り付け、後右(後右)姿勢検出手段52,55にて後側タンク30が作業姿勢Aと検出した場合に、制御部51による制御にてバルブ開閉モータを介して前側タンク23それぞれの開閉バルブを開動作させる構成とすることもできる。この場合には、後側タンク30が格納姿勢Bの状態での前側タンク23のみを用いた施肥装置40による施肥作業を防止できるから、作業者による誤操作を防止でき、作業性を向上できる。
【0044】
また、後側タンク30のそれぞれにリミットスイッチ(図示せず)を取り付け、これら後側タンク30を姿勢変化させて格納状態Bとした場合に、制御部51にて各リミットスイッチを作動させて各後側タンク30の開閉バルブ38を閉動作させることもできる。この場合には、格納姿勢Bの状態で各後側タンク23に残留するペースト肥料の施肥装置40への供給を確実に停止できるから、例えば手作業で開閉バルブ38を開閉操作する場合に比べ、作業性を向上できる。なお、これら開閉バルブ38の操作を、運転操作部10の操作パネル13にて開閉動作できる構成とすることもできる。
【0045】
さらに、後側タンク30を作業姿勢Aとした際に、これら後側タンク30それぞれの高さが前側タンク23の高さと等しくなるようにしたが、これら前側タンク23および後側タンク30のそれぞれに手動式または電磁式の開閉バルブ38を取り付け、これら前側タンク23および後側タンク30のうちの用いるタンクの開閉バルブ38のみを適宜開動作させる構成することにより、作業姿勢Aとした状態での後側タンク30の高さを、前側タンク23の高さより低くしたり高くしたりすることもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 移植機(作業車両)
17 延長ステップ(支持部材)
23 前側タンク
30 後側タンク(貯留タンク)
31 昇降リンク機構(昇降機構)
37 配管
38 開閉バルブ
39 配管
41b 肥料ポンプ(ポンプ)
A 作業姿勢
B 格納姿勢