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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109353
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】気液接触用の充填物、気液接触装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/18 20060101AFI20240806BHJP
   B01J 19/32 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B01D53/18
B01J19/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014098
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 陽介
(72)【発明者】
【氏名】田中 紗也香
(72)【発明者】
【氏名】佐野 昭文
(72)【発明者】
【氏名】岡村 和政
(72)【発明者】
【氏名】植西 徹
【テーマコード(参考)】
4D020
4G075
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA01
4D020BB03
4D020CB33
4D020CB40
4D020CC13
4D020CD02
4D020DA03
4D020DB20
4G075AA03
4G075BB04
4G075BD03
4G075BD13
4G075DA02
4G075DA18
4G075EB01
4G075ED02
4G075EE12
4G075EE31
4G075FA03
4G075FA14
4G075FB12
(57)【要約】
【課題】複数の板状の多孔体を用いる構成において、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制し、かつ、多孔体に亀裂が生じるのを抑制することである。
【解決手段】気液接触用の充填物は、板状で、特定のガスを吸収する吸収液が内部を流れ、板面が水平方向に対向するように並べられると共に下端部分が鉛直方向に固定されていない複数の多孔体と、多孔体の上端部分をフレームに固定する上端固定部材と、隣り合う多孔体の板面が接触するのを抑制する接触抑制手段とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状で、特定のガスを吸収する吸収液が板面及び内部の少なくとも一方を流れ、板面が水平方向に対向するように並べられると共に下端部分が鉛直方向に固定されていない複数の多孔体と、
前記多孔体の上端部分をフレームに固定する上端固定部材と、
隣り合う前記多孔体の板面が接触するのを抑制する接触抑制手段と、
を備えた気液接触用の充填物。
【請求項2】
前記接触抑制手段は、前記多孔体の一方の板面と接触して一方側への前記多孔体の移動を抑制する一の接触部材と、前記多孔体の他方の板面と接触して他方側への前記多孔体の移動を抑制する他の接触部材と、を備える、
請求項1に記載の気液接触用の充填物。
【請求項3】
前記接触抑制手段は、隣り合う一対の前記多孔体の少なくとも一方の多孔体に取り付けられ、他方の前記多孔体に向けて突出するスペーサである、
請求項1に記載の気液接触用の充填物。
【請求項4】
前記スペーサは、前記スペーサの質量によって前記スペーサが取り付けられている前記多孔体に鉛直方向の張力を付与する、
請求項3に記載の気液接触用の充填物。
【請求項5】
前記接触抑制手段は、前記多孔体に鉛直方向の張力を付与する張力付与部材である、
請求項1に記載の気液接触用の充填物。
【請求項6】
前記接触抑制手段は、前記多孔体の少なくとも一方の板面に取り付けられた前記多孔体と比して曲げ剛性の高い網である、
請求項1に記載の気液接触用の充填物。
【請求項7】
前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分を鉛直方向に縫うと共に張力が付与されている糸である、
請求項1に記載の気液接触用の充填物。
【請求項8】
前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分が間に配置されるように鉛直方向に延びるスリットである、
請求項1に記載の気液接触用の充填物。
【請求項9】
上方から見て前記多孔体が波打つのを抑制する波打ち抑制手段を備える、
請求項1に記載の気液接触用の充填物。
【請求項10】
前記波打ち抑制手段は、前記多孔体に水平方向の張力を付与する他の張力付与部材である、
請求項9に記載の気液接触用の充填物。
【請求項11】
前記上端固定部材は、前記多孔体の上端部分を水平方向に移動可能に前記フレームに固定している、
請求項10に記載の気液接触用の充填物。
【請求項12】
前記波打ち抑制手段は、前記多孔体において水平方向の両端部分の移動を制限する移動制限部材である、
請求項9に記載の気液接触用の充填物。
【請求項13】
前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分に形成され、鉛直方向に延びると共に空隙率が他の部分と比して50%以下とされた圧縮部分である、
請求項1に記載の気液接触用の充填物。
【請求項14】
請求項1~13の何れか1項に記載の気液接触用の充填物と、
前記充填物が内部に配置される筐体と、
前記気液接触用の充填物に備えられた一対の前記多孔体の間に形成された空間に、空気流を発生させる発生部材と、
を備える気液接触装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気液接触用の充填物、及び気液接触装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の気液接触用の充填物は、高分子材料の表面の少なくとも一部に、酸化アクリル繊維の不織布を定着処理する表面加工を施してなる気液接触用の充填物であって、気液接触が、二酸化炭素の吸収除去用の気液接触であり、かつ前記酸化アクリル繊維の不織布の目付け量が、10~25g/m2の範囲内である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-170041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術のように板の表面に不織布を定着させる場合、板の内部は液が流通できない無駄な容積となる。そこで気液接触用の充填物として、特定のガスを吸収する吸収液が板面又は内部を流れる板状の多孔体が複数用いられることが考えられる。この場合に、板状の多孔体の板面が水平方向で対向するように複数の多孔体が並べられる。そして、一対の多孔体の間に形成された隙間に、特定のガスを含んだ気体が流れるようになっている。このような構成では、板状の多孔体の内部に液を流通させられるために気液接触装置の内容積を有効に利用できる。
【0005】
このような構成では、多孔体の上端と下端とをフレームに固定することが考えられる。しかし、このような固定方法では、多孔体の剛性が低い場合や、多孔体が吸収液を含むと膨潤する場合に、隣の多孔体に接触してしまうことが考えられる。また、多孔体が乾燥すると、多孔体が収縮して引張応力が生じて、多孔体に亀裂が生じることが考えられる。
【0006】
本開示の課題は、板状の多孔体の板面が水平方向で対向するように複数の多孔体が並べられる構成において、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制し、かつ、多孔体に亀裂が生じるのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1態様に係る気液接触用の充填物は、板状で、特定のガスを吸収する吸収液が板面及び内部の少なくとも一方を流れ、板面が水平方向に対向するように並べられると共に下端部分が鉛直方向に固定されていない複数の多孔体と、前記多孔体の上端部分をフレームに固定する上端固定部材と、隣り合う前記多孔体の板面が接触するのを抑制する接触抑制手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、多孔体の下端部分が鉛直方向に固定されていない。さらに、接触抑制手段が、隣り合う多孔体の板面が接触するのを抑制している。これにより、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制し、かつ、多孔体に亀裂が生じるのを抑制することができる。
【0009】
本開示の第2態様に係る気液接触用の充填物は、第1態様に記載の気液接触用の充填物において、前記接触抑制手段は、前記多孔体の一方の板面と接触して一方側への前記多孔体の移動を抑制する一の接触部材と、前記多孔体の他方の板面と接触して他方側への前記多孔体の移動を抑制する他の接触部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、一の接触部材が、多孔体の一方の板面と接触して一方側への多孔体の移動を抑制し、他の接触部材が、多孔体の他方の板面と接触して他方側への多孔体の移動を抑制する。これにより、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0011】
本開示の第3態様に係る気液接触用の充填物は、第1態様に記載の気液接触用の充填物において、前記接触抑制手段は、隣り合う一対の前記多孔体の少なくとも一方の多孔体に取り付けられ、他方の前記多孔体に向けて突出するスペーサであることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、一方の多孔体に取り付けられたスペーサが、一方の多孔体の隣に配置された他方の多孔体に接触することで、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0013】
本開示の第4態様に係る気液接触用の充填物は、第3態様に記載の気液接触用の充填物において、前記スペーサは、前記スペーサの質量によって前記スペーサが取り付けられている前記多孔体に鉛直方向の張力を付与することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、一方の多孔体に取り付けられたスペーサは、スペーサの質量によって多孔体に鉛直方向の張力を付与することで、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0015】
本開示の第5態様に係る気液接触用の充填物は、第1態様に記載の気液接触用の充填物において、前記接触抑制手段は、前記多孔体に鉛直方向の張力を付与する張力付与部材であることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、張力付与部材が、多孔体に鉛直方向の張力を付与する。これより、多孔体が多孔体の板厚方向に動くのが抑制されることで、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0017】
本開示の第6態様に係る気液接触用の充填物は、第1態様に記載の気液接触用の充填物において、前記接触抑制手段は、前記多孔体の少なくとも一方の板面に取り付けられた前記多孔体と比して曲げ剛性の高い網であることを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、多孔体の板面に取り付けられた網が多孔体の変形を抑制することで、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0019】
本開示の第7態様に係る気液接触用の充填物は、第1態様に記載の気液接触用の充填物において、前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分を鉛直方向に縫うと共に張力が付与されている糸であることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、多孔体の水平方向の両端部分を鉛直方向に縫うと共に張力が付与されている糸が多孔体の水平方向の両端部分の板厚方向の変形を抑制することで、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0021】
本開示の第8態様に係る気液接触用の充填物は、第1態様に記載の気液接触用の充填物において、前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分が間に配置されるように鉛直方向に延びるスリットであることを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、形成部材によって形成されるスリットが多孔体の水平方向の両端部分の板厚方向の変形を抑制することで、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0023】
本開示の第9態様に係る気液接触用の充填物は、第1態様に記載の気液接触用の充填物において、上方から見て前記多孔体が波打つのを抑制する波打ち抑制手段を備えることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、波打ち抑制手段が、上方から見て多孔体が波打つのを抑制することで、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0025】
本開示の第10態様に係る気液接触用の充填物は、第9態様に記載の気液接触用の充填物において、前記波打ち抑制手段は、前記多孔体に水平方向の張力を付与する他の張力付与部材であることを特徴とする。
【0026】
上記構成によれば、他の張力付与部材が多孔体に水平方向の張力を付与することで、上方から見て多孔体が波打つのを抑制することができる。
【0027】
本開示の第11態様に係る気液接触用の充填物は、第10態様に記載の気液接触用の充填物において、前記上端固定部材は、前記多孔体の上端部分を水平方向に移動可能に前記フレームに固定していることを特徴とする。
【0028】
上記構成によれば、多孔体の上端部分が上端固定部材によって水平方向に移動可能にフレームに固定されていることで、多孔体に水平方向の張力を付与した上で、多孔体の水平方向の変形を抑制することができる。
【0029】
本開示の第12態様に係る気液接触用の充填物は、第9態様に記載の気液接触用の充填物において、前記波打ち抑制手段は、前記多孔体において水平方向の両端部分の移動を制限する移動制限部材であることを特徴とする。
【0030】
上記構成によれば、移動制限部材が多孔体において水平方向の両端部分の移動を制限することで、上方から見て多孔体が波打つのを抑制することができる。
【0031】
本開示の第13態様に係る気液接触用の充填物は、第1態様に記載の気液接触用の充填物において、前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分に形成され、鉛直方向に延びると共に空隙率が他の部分と比して50%以下とされた圧縮部分であることを特徴とする。
【0032】
上記構成によれば、多孔体の水平方向の両端部分に形成された圧縮部分は、空隙率が他の部分と比して50%以下とされることで、他の部分と比して曲げ剛性が高くされている。このように、他の部分と比して曲げ剛性が高くされている圧縮部分が多孔体の水平方向の両端部分で鉛直方向に延びて形成されていることで、多孔体が隣の多孔体に接触するのを抑制することができる。
【0033】
本開示の第14態様に係る気液接触装置は、第1~第13態様の何れか1態様に記載の気液接触用の充填物と、前記充填物が内部に配置される筐体と、前記気液接触用の充填物に備えられた一対の前記多孔体の間に形成された空間に、空気流を発生させる発生部材と、を備えることを特徴とする。
【0034】
上記構成によれば、多孔体が隣の多孔体に接触するのが抑制されることで、隣り合う多孔体の間を気体が流れ、多孔体を流れる吸収液が特定のガスを効果的に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本開示の第1実施形態に係る気液接触用の充填物を備えた気液接触装置を示した斜視図である。
図2】本開示の第1実施形態に係る気液接触用の充填物を備えた気液接触装置を示した断面図である。
図3】本開示の第1実施形態に係る気液接触用の充填物を示した斜視図である。
図4】本開示の第1実施形態に係る気液接触用の充填物を示した断面図である。
図5】(A)(B)第1実施形態及び第2実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図である。
図6】第1実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した斜視図である。
図7】(A)(B)(C)第1比較形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図である。
図8】第1比較形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した斜視図である。
図9】(A)(B)第2比較形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図である。
図10】(A)(B)第3実施形態及び第4実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図である。
図11】第3実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した斜視図である。
図12】(A)(B)本開示の第5実施形態及び第6実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図である。
図13】本開示の第5実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した斜視図である。
図14】本開示の第6実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した斜視図である。
図15】本開示の第7実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図である。
図16】本開示の第7実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した斜視図である。
図17】(A)(B)本開示の第8実施形態及び第9実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図である。
図18】(A)(B)本開示の第10実施形態及び第11実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図である。
図19】(A)(B)本開示の第12実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した側面図及び正面図である。
図20】本開示の第13実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した正面図である。
図21】(A)(B)本開示の第14実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した正面図及び断面図である。
図22】(A)(B)本開示の第15実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した正面図及び断面図である。
図23】本開示の第16実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した正面図である。
図24】本開示の第17実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した正面図である。
図25】本開示の第18実施形態に係る気液接触用の充填物を構成する多孔体の支持構造を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
<第1実施形態>
本開示の第1実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図1図9を用いて説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、図中に示す矢印Hは、気液接触装置の上下方向(鉛直上方向)を示し、矢印Wは、気液接触装置の幅方向(水平方向)を示し、矢印Dは気液接触装置の奥行き方向(水平方向)を示す。
【0037】
(気液接触装置10の構成)
気液接触装置10は、図1に示されるように、装置本体12と、装置本体12に空気を送り込むファン24とを備えている。また、装置本体12は、筐体14と、筐体14の内部に配置される気液接触用の充填物16(以下「充填物16」)とを備えている。なお、本実施形態の気液接触装置10を用いることで、空気から、空気に含まれる二酸化炭素が吸収液に吸収されることで、二酸化炭素が減少又は除去された空気が得られるようになっている。空気は、気体の一例であって、二酸化炭素は、特定のガスの一例である。
【0038】
〔筐体14、ファン24〕
筐体14は、図1に示されるように、装置幅方向に延びる直方体状とされており、装置幅方向の一方側を向いた側壁14aと対向するように、ファン24が配置されている。
【0039】
そして、筐体14において装置幅方向の一方側を向いた側壁14aには、図2に示されるように、異物の通過を防止するフィルタ16aが筐体14の内部と外部とを仕切るように配置されている。また、筐体14において装置幅方向の他方側を向いた側壁14bには、水滴の飛散を防止するエリミネータ16bが筐体14の内部と外部とを仕切るように配置されている。
【0040】
さらに、筐体14の底板14cには、筐体14の内部の液体を外部へ排出する排出管18が設けられている。
【0041】
この構成において、ファン24は、フィルタ16aを通して風速1.4〔m/s〕の空気を筐体14の内部へ送り込むようになっている。
【0042】
〔充填物16〕
板状の多孔体20を備えた充填物16は、図2に示されるように、充填物16に吸収液を供給するためのディストリビュータ40と、充填物16を支持するパッキンサポート50と共に、筐体14内に収容されている。
【0043】
-ディストリビュータ40-
ディストリビュータ40は、図2に示されるように、筐体14の内部において上方部分に配置されており、下方へ向けて吸収液を滴下して充填物16に供給するようになっている。本実施形態では、一例として、カリウムイオン濃度が2.0〔mol/L〕のカリウム系のアルカリ水溶液が、吸収液として用いられている。そして、吸収液は、空気に含まれる二酸化炭素を吸収するようになっている。
【0044】
-充填物16-
充填物16は、図2に示されるように、ディストリビュータ40の下方に配置されている。また、充填物16を構成する多孔体20は、図3に示されるように、複数設けられ、板状(シート状)であって、板面(シート面)が奥行き方向で対向するように配置されている。そして、一対の多孔体20の間の隙間が、図4に示されるように、空気が流れる気体流路22とされている。この気体流路22は、幅方向に直線状に延びている。
【0045】
また、この多孔体20は、吸収液に対して親水性を有する、一部がアセタール化されたポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)を用いて形成されており、多孔体20の気泡は連通している。本実施形態で多孔体20とは、透水性が2.2×10-11〔m〕以上2.2×10-9〔m〕以下の多孔体20である。ここで、親水性を有する材料とは、吸収液との接触角が90〔°〕未満の材料である。
【0046】
本実施形態では、一例として、多孔体20のシート厚さは、0.1〔mm〕以上3〔mm〕以下とされ、高さは、5〔m〕とされ、幅方向の長さが7〔m〕とされている。また、多孔体20の空隙率は、50〔%〕以上99〔%〕以下とされている。
【0047】
さらに、透水性を2.2×10-11〔m〕以上2.2×10-9〔m〕以下の範囲とすることで、ディストリビュータ40から多孔体20に供給された吸収液が、流下速度0.2〔mm/s〕以上20〔mm/s〕以下で多孔体20に浸透して流れるようになっている。換言すれば、流下速度0.2〔mm/s〕以上20〔mm/s〕以下で多孔体20を流れるように、ディストリビュータ40から多孔体20へ吸収液が供給されるようになっている。なお、多孔体20の支持構造については、詳細を後述する。
【0048】
-パッキンサポート50-
パッキンサポート50は、図2に示されるように、筐体14の内部において下方部分に配置されており、充填物16を下方から支持している。そして、充填物16から下方へ排出された吸収液は、排出管18から筐体14の外部へ排出されるようになっている。
【0049】
(作用)
次に、充填物16、及び気液接触装置10の作用について説明する。
【0050】
図2に示すファン24が稼働すると、ファン24は、フィルタ16aを通して風速1.4〔m/s〕の空気を筐体14の内部へ送り込む。これにより、図4に示されるように、隣り合う多孔体20の間に形成された気体流路22を空気が流れる。この空気は、多孔体20の板面に沿って流れる。
【0051】
また、図2に示すディストリビュータ40は、夫々の多孔体20へ吸収液を供給する。多孔体20に供給された吸収液は、多孔体20に浸透し、重力によって、流下速度0.2〔mm/s〕以上20〔mm/s〕以下で、上方から下方に向って流れる。
【0052】
これにより、空気に含まれる二酸化炭素が、多孔体20に浸透して流下する吸収液に接触して吸収液に吸収され、空気から二酸化炭素が除去される。このようにして、気体流路22を流れる空気に含まれた二酸化炭素の量が減少する。そして、二酸化炭素の量が減少した空気が、図2に示すエリミネータ16bを通過することで、水滴の飛散が抑制されて、筐体14の外部へ排出される。
【0053】
(要部構成)
次に、充填物16に備えられた多孔体20の支持構造について詳細に説明する。
【0054】
充填物16に備えられた多孔体20では、図5(A)、図6に示されるように、多孔体20の上端部が、奥行き方向に延びるフレーム52に取り付けられおり、多孔体20の下端部分にはスペーサ30が取り付けられている。
【0055】
具体的には、フレーム52は、多孔体20の上方に配置され、幅方向に離隔して一対設けられている。そして、多孔体20の上端部分には、幅方向に延びる梁部材60が固定部材(符号省略)を用いて取り付けられ、梁部材60の両端部分が、ブラケット62を介してフレーム52に取り付けられている。このように、梁部材60とブラケット62を含んで、多孔体20の上端部分をフレーム52に固定する上端固定部材64を構成している。ここで、フレーム52とは、骨格部材であって、固定とは、上下方向および奥行き方向の移動を制限するように取り付けられていることである。
【0056】
また、多孔体20の下端部分が上下方向に固定されていない。換言すれば、多孔体20の下端部分が上下方向に移動可能とされている。
【0057】
さらに、多孔体20の下端部分には、隣の多孔体20に向けて突出するスペーサ30が、多孔体20において奥行き方向の手前側の板面に固定部材(符号省略)を用いて取り付けられている。このスペーサ30は、幅方向に延びており、幅方向から見て奥行き方向に延びる矩形状とされている。
【0058】
(要部構成の作用)
要部構成の作用について、第1比較形態に係る充填物86に備えられた多孔体20及び第2比較形態に係る充填物96に備えられた多孔体20と比較しつつ説明する。先ず、第1、2比較形態に係る充填物86、96に備えられた多孔体20の支持構造について説明する。なお、第1、2比較形態に係る充填物86、96に備えられた多孔体20の支持構造については、本第1実施形態に係る充填物16に備えられた多孔体20の支持構造と異なる部分を主に説明する。
【0059】
第1比較形態に係る充填物86に備えられた多孔体20では、図7(A)、図8に示されるように、多孔体20の下端部が、奥行き方向に延びるフレーム54に取り付けられている。具体的には、フレーム54が、多孔体20の下方部分に配置され、幅方向に離隔して一対設けられている。そして、多孔体20の下端部分には、幅方向に延びる梁部材70が取り付けられ、梁部材70の両端部分が、ブラケット72を介してフレーム54に取り付けられている。このようにして、充填物86に備えられた多孔体20では、上端部分及び下端部分が、各部材を介してフレーム52、54に取り付けられている。
【0060】
一方、第2比較形態に係る充填物96に備えられた多孔体20では、図9(A)に示されるように、多孔体20の下端部には何も取り付けられておらず、多孔体20の下端部分が、奥行き方向に移動可能となっている。
【0061】
〔多孔体20へ吸収液を供給した場合〕
次に、夫々の多孔体20へ吸収液を供給した場合について説明する。夫々の多孔体20へ吸収液を供給すると、多孔体20が膨張する。このため、上端部及び下端部が取り付けられている充填物86に備えられた多孔体20は、図7(B)に示されるように、隣の多孔体20に接触してしまうことがある。
【0062】
一方、充填物16に備えられた多孔体20の下端部は、図5(A)に示されるように、フレームに取り付けられていない。また、多孔体20の下端部分には、隣の多孔体20へ向けて突出するスペーサ30が設けられている。
【0063】
このため、充填物16に備えられた多孔体20では、多孔体20が膨張しても、多孔体20が隣の多孔体20に接触してしまうのが抑制される。
【0064】
〔多孔体20が乾燥した場合〕
次に、多孔体20が乾燥した場合について説明する。多孔体20が乾燥すると、多孔体20が収縮する。このため、上端部及び下端部が取り付けられている充填物86に備えられた多孔体20には、図7(C)に示されるように、亀裂が生じることがある。
【0065】
一方、充填物16に備えられた多孔体20の下端部は、図5(A)に示されるように、フレームに取り付けられていない。また、多孔体20の下端部分には、隣の多孔体20に向けて突出するスペーサ30が設けられている。
【0066】
このため、充填物16に備えられた多孔体20では、多孔体20が収縮しても、多孔体20に亀裂が生じるのが抑制される。
【0067】
〔気体流路22に空気を流した場合〕
次に、気体流路22(図4参照)に空気を流した場合について説明する。気体流路22に空気を流すと、多孔体20が空気圧によって板厚方向に押されることがある。このため、多孔体20の下端部分が奥行き方向に移動可能となっている充填物96に備えられた多孔体20は、図9(B)に示されるように、多孔体20が揺れて隣の多孔体20に接触してしまうことがある。
【0068】
一方、充填物16に備えられた多孔体20の下端部は、図5(A)に示されるように、フレームに取り付けられていない。また、多孔体20の下端部分には、隣の多孔体20に向けて突出するスペーサ30が設けられている。
【0069】
このため、充填物16に備えられた多孔体20では、多孔体20が空気圧によって板厚方向に押されても、多孔体20が隣の多孔体20に接触してしまうのが抑制される。
【0070】
(まとめ)
以上説明したように、充填物16に備えられた多孔体20においては、充填物86、96に備えられた多孔体20と比して、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制することができる。
【0071】
また、充填物16に備えられた多孔体20においては、充填物86に備えられた多孔体20と比して、多孔体20に亀裂が生じるのを抑制することができる。
【0072】
また、充填物16については、気液界面積の低下を抑制することができ、さらに、流れる気体の圧力損失を低下できる。
【0073】
また、気液接触装置10においては、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのが抑制されることで、隣り合う多孔体20の間を気体が流れ、多孔体20を流れる吸収液が二酸化炭素を効果的に吸収することができる。
【0074】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図5(B)を用いて説明する。なお、第2実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0075】
第2実施形態に係る充填物116に備えられた多孔体20の下端部分には、図5(B)に示されるように、スペーサ30が上下方向に並んで2個取り付けられている。
【0076】
<第3実施形態>
次に、本開示の第3実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図10(A)、図11を用いて説明する。なお、第3実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0077】
充填物136に備えられた多孔体20の下端部分には、スペーサは取り付けられておらず、図10(A)、図11に示されるように、多孔体20の板面と接触する接触部材138、142が設けられている。
【0078】
具体的には、多孔体20の一方の板面と接触して奥行き方向の一方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材138と、多孔体20の他方の板面と接触して奥行き方向の他方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材142とが設けられている。接触部材138は、一の接触部材の一例であって、接触部材142は、他の接触部材の一例である。
【0079】
接触部材138、142は、幅方向に延び、幅方向から見て上下方向に延びる矩形状とされている。そして、接触部材138、142の両端部分が、ブラケット140、144を介して幅方向に離隔して一対設けられたフレーム146に取り付けられている。
【0080】
この構成において、多孔体20の下端部分は、奥行き方向の移動が規制され、かつ、上下方向の移動が可能となっている。これにより、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制し、かつ、多孔体20に亀裂が生じるのを抑制することができる。
【0081】
<第4実施形態>
次に、本開示の第4実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図10(B)を用いて説明する。なお、第4実施形態については、第3実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0082】
第4実施形態に係る充填物156に備えられた多孔体20は、図10(B)に示されるように、多孔体20の下端部分には接触部材138、142が上下方向に並んで夫々2個設けられている。
【0083】
<第5実施形態>
次に、本開示の第5実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図12(A)、図13を用いて説明する。なお、第5実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0084】
第5実施形態に係る充填物176に備えられた多孔体20の下端部分には、スペーサは取り付けられておらず、図12(A)、図13に示されるように、錘178が取り付けられている。具体的には、錘178は、幅方向に延びる円柱状とされている。そして、錘178を支持する布状の支持部材180が錘178を抱えた状態で多孔体20の下端に取り付けられている。錘178は、張力付与部材の一例である。
【0085】
この構成において、多孔体20の下端部分は、上下方向の移動が可能となり、かつ、多孔体20には上下方向(鉛直方向)の張力が付与される。これにより、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制し、かつ、多孔体20に亀裂が生じるのを抑制することができる。
【0086】
<第6実施形態>
次に、本開示の第6実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図12(B)、図14を用いて説明する。なお、第6実施形態については、第5実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0087】
第6実施形態に係る充填物196に備えられた多孔体20の下端部分は、図12(B)、図14に示されるように、隣の多孔体20に向けて突出するスペーサ30が、多孔体20の板面に固定部材(符号省略)を用いて取り付けられている。
【0088】
この構成において、隣り合う多孔体20の間隔が変化するのを抑制することができる。
【0089】
<第7実施形態>
次に、本開示の第7実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図15図16を用いて説明する。なお、第7実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0090】
第7実施形態に係る充填物216に備えられた多孔体20の下端部分には、第1実施形態のスペーサ30は取り付けられておらず、図15図16に示されるように、隣の多孔体20の間隔を確保するためのスペーサ218が、設けられている。
【0091】
具体的には、スペーサ218は、錘を兼ねており、幅方向に延びる直方体状とされている。そして、スペーサ218には、幅方向に延びると共に上下方向に貫通する貫通孔218aが形成されており、この貫通孔218aに多孔体20の下端部分が挟み込まれている。
【0092】
この構成において、スペーサ218が錘を兼ねることで、多孔体20には上下方向の張力が付与され、隣り合う多孔体20の間隔が変化するのを抑制することができる。
【0093】
<第8実施形態>
次に、本開示の第8実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図17(A)を用いて説明する。なお、第8実施形態については、第5実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0094】
奥行方向に延びるフレーム52の下方には、図17(A)に示されるように、奥行き方向に延びると共に幅方向に離隔する一対のフレーム242が設けられている。さらに、奥行方向に延びるフレーム242の下方には、奥行き方向に延びると共に幅方向に離隔する一対のフレーム252が設けられている。
【0095】
そして、第8実施形態に係る充填物236に備えられた多孔体20の一方の板面と接触して奥行き方向の一方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材238と、多孔体20の他方の板面と接触して奥行き方向の他方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材244とが設けられている。接触部材238は、一の接触部材の一例であって、接触部材244は、他の接触部材の一例である。
【0096】
接触部材238、244は、幅方向に延び、幅方向から見て上下方向に延びる矩形状とされている。そして、接触部材238の両端部分が、ブラケット240を介してフレーム252に夫々取り付けられている。また、接触部材244の両端部分が、ブラケット246を介してフレーム242に夫々取り付けられている。
【0097】
この構成において、多孔体20は、接触部材238、244によって奥行き方向の移動が規制され、かつ、上下方向の移動が可能となっている。さらに、錘178によって、多孔体20には上下方向の張力が付与されている。これにより、隣り合う多孔体20の間隔が変化するのを抑制することができる。
【0098】
<第9実施形態>
次に、本開示の第9実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図17(B)を用いて説明する。なお、第9実施形態については、第8実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0099】
第9実施形態に係る充填物256に備えられた多孔体20の一方の板面と接触して奥行き方向の一方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材258と、多孔体20の他方の板面と接触して奥行き方向の他方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材264とが設けられている。接触部材258は、一の接触部材の一例であって、接触部材264は、他の接触部材の一例である。
【0100】
そして、接触部材258の両端部分が、ブラケット260を介してフレーム252に夫々取り付けられている。また、接触部材264の両端部分が、ブラケット266を介してフレーム242に夫々取り付けられている。
【0101】
ここで、接触部材258、264は、幅方向に延びる円柱状とされている。また、接触部材258、264の奥行き方向の位置は、接触部材258、264に接触する部分の多孔体20が、接触部材258、264に押し付けられて湾曲するように決められている。
【0102】
この構成において、多孔体20が、接触部材258、264に押し付けられ、多孔体20の奥行き方向の移動が規制されることで、隣り合う多孔体20の間隔が変化するのを抑制することができる。
【0103】
<第10実施形態>
次に、本開示の第10実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図18(A)を用いて説明する。なお、第10実施形態については、第9実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0104】
奥行方向に延びるフレーム52の下方には、図18(A)に示されるように、奥行き方向に延びると共に幅方向に離隔する一対のフレーム282が設けられている。さらに、奥行方向に延びるフレーム282の下方には、奥行き方向に延びると共に幅方向に離隔する一対のフレーム292が設けられている。フレーム282及びフレーム292は、多孔体20の下方部分を横切るように配置されている。
【0105】
第10実施形態に係る充填物276に備えられた多孔体20の一方の板面と接触して奥行き方向の一方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材278と、多孔体20の他方の板面と接触して奥行き方向の他方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材284とが設けられている。接触部材278は、一の接触部材の一例であって、接触部材284は、他の接触部材の一例である。
【0106】
そして、接触部材278の両端部分が、接触部材278から下方に延びるブラケット280を介してフレーム292に夫々取り付けられている。また、接触部材284の両端部分が、ブラケット286を介してフレーム282に夫々取り付けられている。
【0107】
ここで、接触部材278、284は、幅方向に延びる円柱状とされている。また、上下方向において梁部材60と接触部材284との間の部分の多孔体20が上下方向に延びるように、接触部材284は配置されている。さらに、接触部材278の奥行き方向の位置は、接触部材278に接触する部分の多孔体20が、接触部材278に押し付けられて湾曲するように決められている。
【0108】
この構成において、多孔体20が、接触部材278に押し付けられ、多孔体20の奥行き方向の移動が規制されることで、隣り合う多孔体20の間隔が変化するのを抑制することができる。
【0109】
<第11実施形態>
次に、本開示の第11実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図18(B)を用いて説明する。なお、第11実施形態については、第10実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0110】
奥行方向に延びるフレーム52の下方には、図18(B)に示されるように、奥行き方向に延びると共に幅方向に離隔する一対のフレーム282が設けられている。
【0111】
第11実施形態に係る充填物296に備えられた多孔体20の一方の板面と接触して奥行き方向の一方側への多孔体20の移動を抑制する接触部材298が設けられている。また、接触部材298の両端部分が、ブラケット300を介してフレーム282に夫々取り付けられている。
【0112】
ここで、接触部材298は、幅方向に延びる円柱状とされ、接触部材298の奥行き方向の位置は、接触部材298に接触する部分の多孔体20が、接触部材298に押し付けられて湾曲するように決められている。
【0113】
この構成において、多孔体20が、一方の面に接触する接触部材298に押し付けられ、多孔体20の一方への移動が規制されると同時に、張力によって他方側への移動が規制されることで、隣り合う多孔体20の間隔が変化するのを抑制することができる。
【0114】
<第12実施形態>
次に、本開示の第12実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図19(A)(B)を用いて説明する。なお、第12実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0115】
第12実施形態に係る充填物316に備えられた多孔体20の下端部分には、スペーサは取り付けられておらず、多孔体20の一方の板面には、多孔体20と比して曲げ剛性の高い網318が図示せぬ取付部材で取り付けられ、多孔体20の他方の板面には、網318が図示せぬ取付部材で取り付けられている。
【0116】
この構成において、多孔体20が多孔体20の板厚方向の変形が抑制されることで、隣り合う多孔体20の間隔が変化するのを抑制することができる。
【0117】
<第13実施形態>
次に、本開示の第13実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図20を用いて説明する。なお、第13実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0118】
第13実施形態に係る充填物336に備えられた多孔体20の下端部分には、スペーサは取り付けられておらず、充填物336に備えられた多孔体20の幅方向の両端部分を上下方向に縫っている糸338が夫々設けられている。さらに、夫々の糸338の上端部分は、梁部材60に取り付けられ、糸338の下端部分は、多孔体20の下方へ突出している。そして、球状の錘340が、錘340を支持する布状の支持部材342によって糸338の下端に取り付けられている。ここで、縫うとは、多孔体20の一方の板面と他方の板面とを交互に刺し進めることである。
【0119】
この構成において、張力が付与されている糸338が多孔体20の幅方向の両端部分の板厚方向の変形を抑制することで、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制することができる。
【0120】
<第14実施形態>
次に、本開示の第14実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図21(A)(B)を用いて説明する。なお、第14実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0121】
第14実施形態に係る充填物356に備えられた多孔体20の下端部分には、スペーサは取り付けられておらず、充填物356に備えられた多孔体20の幅方向の両端部分には、多孔体20の上下方向に延びる端部部分が間に配置されるスリット358aを形成する形成部材358が設けられている。
【0122】
この構成において、形成部材358によって形成されたスリット358aが多孔体20の幅方向の両端部分の板厚方向の変形を抑制することで、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制することができる。
【0123】
<第15実施形態>
次に、本開示の第15実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図22(A)(B)を用いて説明する。なお、第15実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0124】
第15実施形態に係る充填物376に備えられた多孔体20の下端部分には、スペーサは取り付けられておらず、多孔体20の幅方向の両端部分には、上下方向に延びると共に空隙率が他の部分と比して50%以下となった圧縮部分378が形成されている。この圧縮部分378は、例えば熱プレス等によって形成される。ここで、幅方向の両端部分とは、多孔体20の幅を100としたら、端から1以上10以下の範囲である。
【0125】
多孔体20の圧縮部分378は、多孔体20の他の部位に比して圧縮されているため、圧縮部分378の曲げ剛性は、他の部分の曲げ剛性と比して高くなっている。
【0126】
この構成において、曲げ剛性が高い圧縮部分378が多孔体20の幅方向の両端部分に上下方向に延びて形成されていることで、多孔体20の幅方向の両端部分の板厚方向の変形が抑制され、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制することができる。
【0127】
<第16実施形態>
次に、本開示の第16実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図23を用いて説明する。なお、第16実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0128】
第16実施形態の充填物396には、多孔体20に幅方向の張力を付与する引張ばね398が設けられている。具体的には、幅方向の一方側の多孔体20の縁に一端が固定される引張ばね398が、上下方向に離隔して2個設けられ、幅方向の他方側の多孔体20の縁に一端が固定される引張ばね398が、上下方向に離隔して2個設けられている。引張ばね398は、他の張力付与部材の一例である。
【0129】
この構成において、多孔体20には、水平方向の張力が付与されることで、上方から見て多孔体20が波打つのを抑制し、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制することができる。
【0130】
<第17実施形態>
次に、本開示の第17実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図24を用いて説明する。なお、第17実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0131】
第17実施形態の充填物416には、多孔体20において幅方向の両端部分の移動を制限するフック420が設けられている。具体的には、幅方向の一方側の多孔体20の縁にリング418が、上下方向に離隔して2個取り付けられ、幅方向の他方側の多孔体20の縁にリング418が、上下方向に離隔して2個取り付けられている。そして、一端が固定されたクランク状のフック420が4個設けられ、夫々のフック420がリング418に夫々通されている。フック420は、移動制限部材の一例である。
【0132】
この構成において、多孔体20においてリング418が取り付けられた部分の移動を制限することで、上方から見て多孔体20が波打つのを抑制し、同時にリング418が取り付けられた部分の上下方向の移動は規制されないために、膨張によるたわみが抑制されるので、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制することができる。
【0133】
<第18実施形態>
次に、本開示の第18実施形態に係る気液接触用の充填物、及び気液接触装置の一例について、図25を用いて説明する。なお、第18実施形態については、第1実施形態と異なる部分を主に説明する。
【0134】
第18実施形態の充填物436には、多孔体20の上端部分をフレーム450に固定するための複数のランナー438が幅方向に並んで設けられている。ランナー438は、上端固定部材の一例である。
【0135】
具体的には、夫々の多孔体20の上方には、幅方向に延びるフレーム450が夫々配置されており、フレーム450には、幅方向に延びるレール部450aが形成されている。そして、多孔体20の上端部分に取り付けられた複数のランナー438が、幅方向に移動可能にこのレール部450aに取り付けられている。これにより、多孔体20が幅方向に移動可能とされている。
【0136】
さらに、多孔体20に幅方向の張力を付与する引張ばね448が設けられている。具体的には、幅方向の一方側の多孔体20の縁に一端が固定される引張ばね498が、上下方向に離隔して3個設けられ、幅方向の他方側の多孔体20の縁に一端が固定される引張ばね498が、上下方向に離隔して3個設けられている。引張ばね448は、他の張力付与部材の一例である。
【0137】
この構成において、多孔体20の上端部分が幅方向に移動可能にフレーム450に固定されていることで、多孔体20に幅方向の張力を付与した上で、多孔体20の水平方向の変形を抑制し、多孔体20が隣の多孔体20に接触するのを抑制することができる。
【0138】
なお、本開示を特定の実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る実施形態に限定されるものではなく、本開示の範囲内にて他の種々の実施形態をとることが可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、各実施形態を本開示の思想に反しない範囲で組み合わせ、本開示の課題を解決してもよい。
【0139】
また、上記実施形態では、空気から二酸化炭素を除去したが、空気及び二酸化炭素に限定されず、他の気体から特定のガスを除去してもよい。
【0140】
また、上記第12実施形態では、網318が、多孔体20の両面に設けられたが、一方の板面だけに設けられてもよい。
【0141】
(((1)))
板状で、特定のガスを吸収する吸収液が板面及び内部の少なくとも一方を流れ、板面が水平方向に対向するように並べられると共に下端部分が鉛直方向に固定されていない複数の多孔体と、
前記多孔体の上端部分をフレームに固定する上端固定部材と、
隣り合う前記多孔体の板面が接触するのを抑制する接触抑制手段と、
を備えた気液接触用の充填物。
【0142】
(((2)))
前記接触抑制手段は、前記多孔体の一方の板面と接触して一方側への前記多孔体の移動を抑制する一の接触部材と、前記多孔体の他方の板面と接触して他方側への前記多孔体の移動を抑制する他の接触部材と、を備える、
(((1)))に記載の気液接触用の充填物。
【0143】
(((3)))
前記接触抑制手段は、隣り合う一対の前記多孔体の少なくとも一方の多孔体に取り付けられ、他方の前記多孔体に向けて突出するスペーサである、
(((1)))又は(((2)))に記載の気液接触用の充填物。
【0144】
(((4)))
前記スペーサは、前記スペーサの質量によって前記スペーサが取り付けられている前記多孔体に鉛直方向の張力を付与する、
(((3)))に記載の気液接触用の充填物。
【0145】
(((5)))
前記接触抑制手段は、前記多孔体に鉛直方向の張力を付与する張力付与部材である、
(((1)))~(((4)))の何れか1に記載の気液接触用の充填物。
【0146】
(((6)))
前記接触抑制手段は、前記多孔体の少なくとも一方の板面に取り付けられた前記多孔体と比して曲げ剛性の高い網である、
(((1)))~(((5)))の何れか1に記載の気液接触用の充填物。
【0147】
(((7)))
前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分を鉛直方向に縫うと共に張力が付与されている糸である、
(((1)))~(((6)))の何れか1に記載の気液接触用の充填物。
【0148】
(((8)))
前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分が間に配置されるように鉛直方向に延びるスリットである、
(((1)))~(((7)))の何れか1に記載の気液接触用の充填物。
【0149】
(((9)))
上方から見て前記多孔体が波打つのを抑制する波打ち抑制手段を備える、
(((1)))~(((8)))の何れか1に記載の気液接触用の充填物。
【0150】
(((10)))
前記波打ち抑制手段は、前記多孔体に水平方向の張力を付与する他の張力付与部材である、
(((9)))に記載の気液接触用の充填物。
【0151】
(((11)))
前記上端固定部材は、前記多孔体の上端部分を水平方向に移動可能に前記フレームに固定している、
(((10)))に記載の気液接触用の充填物。
【0152】
(((12)))
前記波打ち抑制手段は、前記多孔体において水平方向の両端部分の移動を制限する移動制限部材である、
(((9)))に記載の気液接触用の充填物。
【0153】
(((13)))
前記接触抑制手段は、前記多孔体の水平方向の両端部分に形成され、鉛直方向に延びると共に空隙率が他の部分と比して50%以下とされた圧縮部分である、
(((1)))~(((12)))の何れか1に記載の気液接触用の充填物
【0154】
(((14)))
(((1)))~(((13)))の何れか1に記載の気液接触用の充填物と、
前記充填物が内部に配置される筐体と、
前記気液接触用の充填物に備えられた一対の前記多孔体の間に形成された空間に、空気流を発生させる発生部材と、
を備える気液接触装置。
【符号の説明】
【0155】
10 気液接触装置
14 筐体
16 充填物(気液接触用の充填物)
20 多孔体
24 ファン(発生部材の一例)
30 スペーサ
52 フレーム
64 上端固定部材
116 充填物(気液接触用の充填物)
136 充填物(気液接触用の充填物)
138 接触部材(一の接触部材の一例)
142 接触部材(他の接触部材の一例)
156 充填物(気液接触用の充填物)
176 充填物(気液接触用の充填物)
178 錘(張力付与部材の一例)
196 充填物(気液接触用の充填物)
216 充填物(気液接触用の充填物)
218 スペーサ
236 充填物(気液接触用の充填物)
238 接触部材(一の接触部材の一例)
244 接触部材(他の接触部材の一例)
256 充填物(気液接触用の充填物)
258 接触部材(一の接触部材の一例)
264 接触部材(他の接触部材の一例)
276 充填物(気液接触用の充填物)
278 接触部材(一の接触部材の一例)
284 接触部材(他の接触部材の一例)
296 充填物(気液接触用の充填物)
298 接触部材
316 充填物(気液接触用の充填物)
318 網
336 充填物(気液接触用の充填物)
338 糸
356 充填物(気液接触用の充填物)
358 形成部材
358a スリット
376 充填物(気液接触用の充填物)
378 圧縮部分
396 充填物(気液接触用の充填物)
398引張ばね(他の張力付与部材の一例、波打ち抑制部材の一例)
416 充填物(気液接触用の充填物)
420 フック(移動制限部材の一例、波打ち抑制部材の一例)
436 充填物(気液接触用の充填物)
438 ランナー(上端固定部材の一例)
448 引張ばね(他の張力付与部材の一例、波打ち抑制部材の一例)
450 フレーム
図1
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