(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109371
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】走行支援装置及び走行支援方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/10 20060101AFI20240806BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240806BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60W30/10
B60W60/00
G01C21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014122
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 良貴
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129CC16
2F129DD29
2F129DD53
2F129EE02
2F129GG17
2F129GG18
3D241BA39
3D241DA38Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB20Z
3D241DB46Z
3D241DC40Z
3D241DC46Z
3D241DC47Z
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の走行速度を制限することにより生じる交通効率の低下を回避できる走行支援装置を提供する。
【解決手段】走行支援装置は、車両1の状態により決まる出力可能減速度に基づき、走行可能速度を演算し、制限速度が走行可能速度以下となる経路を含むように、車両の走行経路を演算する。走行支援装置は、制限速度が走行可能速度よりも高い経路を、制限速度が走行可能速度以下の代替経路に変更して、走行経路を演算する。走行支援装置は、自律運転制御により出力可能な速度で、走行経路に沿って走行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行を支援するコントローラ備え、
前記コントローラは、
前記車両の状態により決まる前記車両が出力可能な出力可能減速度に基づき、前記車両が走行可能な走行可能速度を演算し、
制限速度が前記走行可能速度以下となる経路を含むように、前記車両の走行経路を演算する走行支援装置。
【請求項2】
請求項1記載の走行支援装置において、
前記コントローラは、
前記制限速度が前記走行可能速度よりも高い経路を、前記制限速度が前記走行可能速度以下の代替経路に変更して、前記走行経路を演算する走行支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の走行支援装置において、
前記コントローラは、前記走行経路に沿って走行する車両を自律運転制御により制御し、
前記走行可能速度は、前記自律運転制御により出力可能な速度である走行支援装置。
【請求項4】
請求項1又は2記載の走行支援装置において、
前記コントローラは、
前記車両に含まれる複数のブレーキユニットの状態を評価し、
前記ブレーキユニットの評価に応じて前記出力可能減速度を演算する走行支援装置。
【請求項5】
請求項1又は2記載の走行支援装置において、
前記コントローラは、タイヤと路面の摩擦状態に基づき前記出力可能減速度を演算する走行支援装置。
【請求項6】
請求項1又は2記載の走行支援装置において、
前記コントローラは、前記車両の実際の重量に基づき前記出力可能減速度を演算する走行支援装置。
【請求項7】
コントローラにより実行され、車両の走行を支援する走行支援方法であって、
前記コントローラは、
前記車両の状態により決まる前記車両が出力可能な出力可能減速度に基づき、前記車両が走行可能な走行可能速度を演算し、
制限速度が前記走行可能速度以下となる経路を含むように、前記車両の走行経路を演算する走行支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置及び走行支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載センサの出力に基づいて、車両の周辺状況を認識し、認識の精度を示す認識精度情報とに基づいて、車両の目標速度を決定し、認識精度情報により示される認識精度が低下している場合、目標速度を設定速度よりも小さい速度にする車両制御方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車両の目標速度を制限することで、車両の走行速度が道路の制限速度より低くなると、周囲の交通流を阻害して交通効率が低下する虞がある。本発明は、車両の走行速度を制限することにより生じる交通効率の低下を回避できる走行支援装置及び走行支援方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両の状態により決まる出力可能減速度に基づき、走行可能速度を演算し、制限速度が走行可能速度以下となる経路を含むように、車両の走行経路を演算することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、交通効率の低下を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本実施形態における走行支援システムのブロック図である。
【
図2】
図2は、走行経路を説明するための概念図である。
【
図3】
図3は、コントローラにより実行される制御フローのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る走行支援装置10を備える走行支援システムのブロック図である。
図1に示すように、走行支援システムは、車両1に設けられ、ブレーキユニット2、センサ3、データベース4、及び走行支援装置10を備えている。走行支援システムに含まれる各構成は、CAN等の車載ネットワークを介して互いに情報の授受を行う。走行支援装置10は、車両1の出力可能減速度に基づき車両1の走行可能速度を演算し、車両1の走行経路を演算する際には、制限速度が走行可能速度以下となる経路を含むように、走行経路を演算する。そして、走行支援装置10は、走行経路に沿って走行するように車両1の走行を支援する。なお、走行支援は、車両1の操舵や加減速を制御する自律走行制御に限らず、走行経路の経路案内でもよい。
【0009】
出力可能減速度は、車両1の状態により決まる値であり、車両1の制動力に相当する。車両1の状態により、出力可能減速度が低くなった場合には、制動距離が長くなるため、制動距離を短くするために、車両の走行可能速度を低くすることがある。走行可能速度が、ある区間における制限速度よりも低くなると、車両1の周囲の車両は法定速度又は法定速度に近い車両で走行するが、車両1の車速は、周囲車両の車速よりも低くなる。そのため、車両1の走行可能速度の低下が、交通の流れを悪くし、交通効率の低下の原因となる。
【0010】
本実施形態における走行支援装置10は、出力可能減速度に応じて走行可能速度を演算し、出力可能減速度の低下により走行可能速度が低くなった場合には、走行可能速度以下の制限速度の走行可能道路を通るように、走行経路を演算する。これにより、出力可能減速度が低下した場合に、車両1の走行経路は、車両1の走行可能速度以下の経路になり、走行可能速度の低下を起因として交通効率が低下することを回避できる。
【0011】
ブレーキユニット2は、車両1のブレーキ機構を制御するユニットである。ブレーキユニット2は、複数のユニットを含んでおり、何らかの理由で一方のユニットが正常に動作しない場合でも、他方のユニットにより制動可能である。例えば、自律運転制御を実行するシステムでは、ブレーキを制御するユニットを複数設けることがある。正常時では、複数のユニットがブレーキ機構を制御できるが、何らかの信号トラブルで、一方のユニットが正常に動作しない時には、他方のユニットがブレーキ機構を制御し、制御主体となるユニットが変更される。
【0012】
ブレーキユニット2は、車両全体を制御する車両制御コントローラからの制御指令を取得し、制御指令で示される要求減速度(要求制動力)が出力されるよう、ブレーキ機構のアクチュエーターに対して指令を出力する。ブレーキ機構は、アクチュエーターの他に、油圧ブレーキやディスクブレーキなどの機構を含んでいる。
【0013】
ここで、車両の状態と、ブレーキ機構の減速度について説明する。ブレーキユニットに含まれる制御ユニットは、正常時では、複数のユニットがブレーキ機構を制御できる。しかしながら、一方のユニットが正常に動作しない時には、他方のユニットがブレーキ機構を制御し、制御主体となるユニットが変更される。そして、制御主体となるユニットの変更により、減速度が変化することがある。また、例えば、何らかの原因で、一部のブレーキ機構の減速度が制御指令に応じた要求減速度よりも低くなると、ブレーキ機構全体の減速度が変化することがある。すなわち、ブレーキユニット2で制御されるブレーキ機構は、要求された減速度とは異なる減速度を出力する可能がある。このように、車両1の減速度は、車両内部の要因で変化することがある。
【0014】
なお減速度は、車両内部の要因に限らず、タイヤと路面と摩擦状態に応じて変化する。また減速度は、車両の実際の重量に応じて変化する。そして減速度が変わると、車両1の出力可能な減速度(以下、出力可能減速度とも称する)も変化する。後述するように、走行支援装置10のコントローラ11は、要求減速度に対して実際の減速度を評価することで、車両の状態により決まる、車両1の出力可能減速度を演算する。
【0015】
センサ3は、LiDAR等の測距装置や車外の環境を撮像するカメラ等、車両の周囲環境を検出するセンサ、車内を撮像するカメラ等である。データベース4は、自律運転用の地図情報として好適な高精度地図データを記憶する。地図データは、高精度地図データに限らず、ナビゲーション用の地図データでもよい。
【0016】
走行支援装置10は、出力可能減速度に基づき、車両が走行可能な走行可能減速度を演算し、走行可能速度に応じた走行経路を演算する。走行支援装置10は、コントローラを有しており、コントローラ11は、ハードウェア及びソフトウェアを有するコンピュータを備えており、このコンピュータはプログラムを格納したROMと、ROMに格納されたプログラムを実行するCPUと、アクセス可能な記憶装置として機能するRAMを含むものである。
【0017】
図1に示すように、コントローラ11は、機能ブロックとして、自律走行制御部12、減速度評価部13、走行可能速度演算部14、及び経路演算部15を含んで構成され、各処理を実行するためのソフトウェアと、ハードウェアとの協働により各機能を実行する。なお、本実施形態では、コントローラ11が有する機能を4つのブロックとして分けた上で、各機能ブロックの機能を説明するが、コントローラ11の機能は必ずしも4つのブロックに分ける必要はない。
【0018】
自律走行制御部12は、センサ3により検出された検出データ及び撮像画像より、車両周囲の障害物等を検知し、検知結果に応じて、自車両が走行経路に沿って走行するように、車両1の操舵及び加減速を制御する。走行経路は経路演算部15で演算される。
【0019】
減速度評価部13は、車両の状態により決まる出力可能減速度を評価する。減速度評価部13は、ブレーキユニット2から、現在の減速度を示す情報を取得し、現在の減速度から車両1の出力可能減速度を演算する。出力可能減速度は、車両が出力可能な減速度の上限値である。減速度評価部13は自律走行制御部12からブレーキユニット2に出力される要求減速度と、実際の減速度とを比較することで、現在の減速度を評価してもよい。減速度評価部13は、制動距離の演算により実際の減速度を求めてもよい。例えば、運転者の操作あるいは自律走行制御部12の制御により制動が実行された場合に減速度評価部13は、制動開始時の車速と車両が停車するまでの制動距離(制動時間)を含む情報を取得し、演算により減速度を求めてもよい。
【0020】
また減速度評価部13は、タイヤと路面の摩擦状態に基づき出力可能減速度を評価してもよい。減速度評価部13は、例えばセンサ3に含まれる車外カメラの撮像画像、路面の状況を特定し、タイヤと路面の摩擦状態を演算する。減速度評価部13は、例えば、凍結した路面の状態、雨量、気温の情報から摩擦状態を演算してもよい。凍結した路面状態等の情報と摩擦状態(摩擦係数)との相関性は、メモリにテーブルとして記憶されてもよい。そして、減速度評価部13は、摩擦係数が小さい程、減速度が小さくなるように、減速度を求める。なお、摩擦状態の情報は、車外カメラに限らず、例えば車両の通信装置より車外から路面凍結情報を取得することで、現在の摩擦状態を特定してもよい。
【0021】
また減速度評価部13は、車両の実際の重量に基づき減速度を評価してもよい。車両の重量は、例えばセンサ3に含まれる車内カメラから、現在の乗員数を特定し、減速度評価部13は乗員数に応じた総体重に車体重量を加えて、車両の重量(総重量)を演算すればよい。なお、減速度評価部13は、現在の積載重量を加えてもよい。そして、減速度評価部13は、車両の重量が大きい程、減速度が小さくなるように、減速度を求める。
【0022】
走行可能速度演算部14は、車両の状態により決まる出力可能減速度に基づき、走行可能速度を演算する。走行可能速度は、走行中の車両が所定の停止距離までに停車するための上限車速であって、減速度と停止距離によって決まる。減速度は、減速度評価部13で評価される出力可能減速度に相当する。停止距離は、例えば自律運転においては、センサ3の検出範囲(検出レンジ)の長さ(検出距離)に相当し、自律運転ではない手動運転では、例えば乗員に不快感や違和感を与えることなく、スムーズに停車させるために予め設定される距離である。
【0023】
走行可能減速度は、下記式により演算できる。
【数1】
vは、所定の目標距離に到達時の目標車速である。v
0は停車開始時の車速である。аは減速度であり、xは停止距離である。
【0024】
そして、減速して停車する時に、停止距離に到達時の目標車速はゼロになるため、式(1)において、v=0を代入することで、下記式(2)が導出される。
【数2】
【0025】
аは、センサの検出範囲の長さや設定距離に応じて予めきまる。xは、減速度評価部13により評価された減速度を用いればよい。v0は、減速度評価部で評価された減速度で減速を行い停止距離xで停止できるまでの上限速度となり、走行可能速度に相当する。すなわち、走行可能速度演算部14は、式(2)を用いて、走行可能速度を演算すればよい。
【0026】
なお、停止距離(x)をセンサ3の検出範囲(検出レンジ)の長さとした場合に、自律走行制御部12は、センサ3の現在の認識性能を評価することで、センサ3の検出範囲の長さを演算してもよい。自律走行制御部12は、センサ3に含まれる複数のカメラを組み合わせて、車両前方の障害物や信号機などの対象物を検出しているとする。このとき、複数のカメラのうち、1つのカメラが検出不能になったとする。検出不能は、カメラのレンズ部分への汚れの付着、車両外部の天候や、カメラの撮像範囲に遮る物体がある等の車両外部の要因に限らず、信号のノイズなど車両内部の要因により発生する。そして、1つのカメラが検出不能になると、検出範囲が変わるため、検出範囲の長さも変更になる。自律走行制御部12は、センサ3に含まれる各種センサの状態を評価することで、センサ3の検出範囲の長さを演算してもよい。
【0027】
そして、走行可能速度演算部14は、自律走行制御部12で演算されたセンサ3の検出範囲(検出レンジ)の長さ、及び、減速度評価部13で評価された出力可能減速度に基づき、上記式(2)を用いて、出力可能減速度を演算する。なお、式(2)の演算式で示される、停止距離(x)、出力可能減速度(а)、及び走行可能速度(v0)の相関性を示す情報は、データベース4にマップとして記憶されてもよい。走行可能速度演算部14は、データベース4に記憶されたマップを参照して、走行可能速度(v0)を演算してもよい。
【0028】
経路演算部15は走行経路を演算する。走行経路は例えば目的地までの経路である。経路演算部15は、走行経路に含まれる経路の制限速度と、走行可能速度に基づき、制限速度が走行可能速度以下となる経路を含むように、走行経路を演算する。制限速度は例えば法定速度である。つまり、経路演算部15は、制限速度が走行可能速度よりも高い経路を、制限速度が走行可能速度以下の代替経路に変更して、走行経路を演算する。
【0029】
経路演算部15は、地図情報に基づき、車両の走行開始前に走行経路を演算する。まず、経路演算部15は、目的地までの最適な走行経路(以下、基準経路とも称する)を演算する。基準経路の演算には、走行可能速度の情報は使用されておらず、経路演算部15は、例えば、目的地までに最短時間で到達できるルート、最短距離で到達できるルート、料金の最も安いルート等、一般的なナビゲーションシステムにおける推奨ルートの演算や条件設定有りのルート演算で使用される演算方法により、基準経路を演算する。経路演算部15は、基準経路を所定区間(例えばリンク毎)ごとに区切って、区切られた経路毎の制限速度を特定する。経路演算部15は、区切られた経路毎の制限速度と、走行可能速度を比較して、制限速度が走行可能速度より高い経路がある判定する。走行可能速度は、例えば前回走行時に、走行可能速度演算部14により演算された速度や、車両1のパワースイッチ(イグニッションスイッチ、メインスイッチ)のオンの時に、走行可能速度演算部14により、車両の状態に基づき演算された走行可能速度でもよい。
【0030】
制限速度が走行可能速度より高い経路がある場合には、経路演算部15は、制限速度が走行可能速度以下の代替経路に変更して、走行経路を演算する。なお、経路演算部15は、基準経路の中で、制限速度が走行可能速度より高い経路を複数含む場合には、制限速度の高い経路の全てに対して、代替経路を演算する必要はなく、少なくとも1つの経路に対して代替経路を演算してもよい。また、経路演算部15は、基準経路を必ずしも演算する必要はなく、例えば目的地までのルート演算の条件として、制限速度が前記走行可能速度以下であることを条件に加えた上で、走行経路を演算してもよい。これにより、経路演算部15は、制限速度が走行可能速度以下となる経路を含むように、車両1の走行経路を演算する。例えば、走行経路上のあるノードに対して複数のリンク(経路)が接続されており、一方のリンクの法定速度が走行可能速度より高く、他方のリンクの法定速度が走行可能速度以下である場合に、経路演算部15は、他方のリンクを含むように走行経路を演算する。
【0031】
経路演算部15は、車両1の走行中に、制限速度が走行可能速度以下となる経路を含むように、車両1の走行経路を演算してよい。出力可能減速度が、走行中の車両の状態変化により変わった場合には、走行可能速度も変わる。経路演算部15は、走行可能速度演算部14の演算結果より、走行可能速度が、例えば走行開始時の走行可能速度から変わった場合には、走行経路を再度演算する。なお、走行経路の演算方法は、車両の走行開始前の上記演算方法と同様である。これにより、車両の走行中、走行可能速度が低下した場合に、経路演算部15は、制限速度が走行可能速度よりも高い経路(走行可能速度が低下する前に演算された経路)を、制限速度が前記走行可能速度以下の代替経路に変更して、走行経路を演算する。
【0032】
以下、具体例を用いて走行経路の演算について説明する。
図2は、代替経路を含む走行経路の一例を示す説明図である。
図2には、走行経路P1の例が示されている。経路P1は、車両1の現在位置P0から制限速度60km/hの道路R1を走行した後に、目的地Pdの直前で制限速度40km/hの道路R2に進路を変えて目的地Pdに至る経路である。車両1はP1に沿って目的地Pdまでの走行を開始する。コントローラ11は、車両の状態に応じて決まる出力可能減速度に基づき、走行可能速度を演算する。車両状態に応じて走行可能速度が低下することがある。例えば、ブレーキユニット2の性能が変わり、ブレーキユニット2の中で、0.6G指令(要求減速度)に対して0.6Gの減速度を出力できるユニットは正常に機能していないが、0.3G指令(要求減速度)に対して要求通りの減速度を出力できるユニットが正常に機能していると仮定する。0.6Gで車両1を減速させることが可能であれば、60km/hで走行している車両1を停車させるには、停止距離は24mあればよい。一方、減速度が0.3Gに低下した場合に、停止距離(24m)で停車させるには、車両1の車速(40km/h)が上限となる。そして、センサ3の検出範囲の長さが24mになっている場合には、60km/hで走行している車両1を、出力可能減速度(0.3)で停車させると、停車距離はセンサ3の検出範囲の長さ(24m)より長くことになる。そのため、走行可能速度は、40km/hに制限される。
【0033】
一方、出力可能減速度が0.3Gに制限されている状態で、車両1が走行経路P1に沿って制限速度60km/hの道路R1を走行し続けると、周囲の他車両の走行が妨げられて道路R1の交通効率が低下する虞がある。
【0034】
そこで、コントローラ11の経路演算部15は、走行可能速度以下の制限速度の道路を含んだ代替経路P2に変更する。これにより、車両1が周囲の他車両の走行を妨げられにくくすることができる。車両1が周囲の交通流を阻害して交通効率が低下するのを抑制できる。
【0035】
次に、
図3を参照し、走行支援装置10のコントローラ11で実行される走行支援方法について説明する。
図3は、本実施形態に係る走行支援方法を実行する制御手順の一例を示すフローチャート図である。また
図3の制御フローは、必ずしも
図3に示す順序で行う必要はなく、必ずしも全てのステップを実行する必要はない。
【0036】
ステップS1にて、コントローラ11の経路演算部15は目的地情報を取得する。目的地情報は、ユーザの操作により入力される目的地に関する情報である。ステップS2にて、経路演算部15は目的地までの走行経路を演算する。ステップS3にて、コントローラ11の自律走行制御部12は、車両1が走行経路に沿って走行するように、自律運転制御を開始する。
【0037】
ステップS4にて、コントローラ11の減速度評価部13は、車両の状態に応じた出力可能減速度を演算する。ステップS5にて、コントローラ11の走行可能速度演算部14は、出力可能減速度に基づき走行可能速度を演算する。ステップS6にて、経路演算部15は、走行経路に含まれる複数の経路の制限速度を特定する。ステップS7にて、経路演算部15は、制限速度と走行可能速度との比較を、経路毎に行う。経路演算部15は、制限速度が走行可能速度より高い経路が有るか否か判定する。制限速度が走行可能速度より高い経路が無い場合には、コントローラ11はステップS10の制御フローを行う。
【0038】
制限速度が走行可能速度より高い経路が有る場合には、ステップS8にて、経路演算部15は、制限速度が走行可能速度以下の代替経路を演算する。ステップS9にて、経路演算部15は、制限速度が走行可能速度より高い経路を代替経路に変更する。自律走行制御部12は、変更後の走行経路に沿って走行するように、自律運転制御を行う。ステップS10にて、経路演算部15は、車両1が目的地に到着したか否か判定する。車両1が目的地に到着していない場合には、コントローラ11はステップS4以降の制御フローを行う。車両1が目的地に到着した場合には、コントローラ11は
図3の制御フローを終了する。
【0039】
上記のように本実施形態に係る走行支援装置及び走行支援方法は、車両1の状態により決まる出力可能減速度に基づき、走行可能速度を演算し、制限速度が走行可能速度以下となる経路を含むように、車両の走行経路を演算する。これにより、車両1の走行可能速度が制限速度より低く、車両1の車速が周囲車両の車速より低くなることで、車両1の走行が周囲の交通流を阻害して交通効率が低下するような事態を回避できる。
【0040】
また本実施形態ではコントローラ11は、制限速度が走行可能速度よりも高い経路を、制限速度が前記走行可能速度以下の代替経路に変更して、走行経路を演算する。これにより、車両1の走行が周囲の交通流を阻害して交通効率が低下するような事態を回避できる。
【0041】
また本実施形態ではコントローラ11は、車両1を自律運転制御により制御し、自律運転制御により出力可能な速度を、走行可能速度として演算する。これにより、自律運転制御で走行中の車両1の車速が周囲車両の車速より低くなることで、車両1の走行が周囲の交通流を阻害して交通効率が低下するような事態を回避できる。
【0042】
また本実施形態ではコントローラ11は、ブレーキユニット2の評価に応じて出力可能減速度を演算する。これにより、車両1の走行が周囲の交通流を阻害して交通効率が低下するような事態を回避できる。
【0043】
また本実施形態ではコントローラ11は、タイヤと路面の摩擦状態に基づき出力可能減速度を演算する。またコントローラ11は、車両の実際の重量に基づき出力可能減速度を演算する。これにより、車両1の走行が周囲の交通流を阻害して交通効率が低下するような事態を回避できる。
【0044】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0045】
1 車両
2 ブレーキユニット
3 センサ
4 データベース
10 走行支援装置
11 コントローラ
12 自律走行制御部
13 減速度評価部
14 走行可能速度演算部
15 経路演算部