(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109372
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H05K3/46 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014123
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥山 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】宇野 良司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 純
(72)【発明者】
【氏名】吉川 恭平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 容子
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA06
5E316AA26
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC02
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC12
5E316CC13
5E316CC14
5E316CC46
5E316DD02
5E316DD32
5E316EE09
5E316EE13
5E316FF13
5E316FF14
5E316FF17
5E316GG14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH31
(57)【要約】
【課題】絶縁層における縁部の適切な除去による配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板の製造方法は、表面に保護膜6を備えた半硬化状態の樹脂絶縁層11を基板3上に積層することと、樹脂絶縁層11の縁部を除去することと、保護膜6を除去することと、樹脂絶縁層11の表面上に配線層を形成することと、を含んでいる。樹脂絶縁層11の縁部を除去することは、樹脂絶縁層11が保護膜6を備えたままの状態で、樹脂絶縁層11のうちの保護膜6の外縁からはみ出ている部分10を、溶解剤Lを用いて除去することを含んでいる。
【選択図】
図3C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に保護膜を備えた半硬化状態の樹脂絶縁層を基板上に積層することと、
前記樹脂絶縁層の縁部を除去することと、
前記保護膜を除去することと、
前記表面上に配線層を形成することと、
を含む配線基板の製造方法であって、
前記縁部を除去することは、前記樹脂絶縁層が前記保護膜を備えたままの状態で、前記樹脂絶縁層のうちの前記保護膜の外縁からはみ出ている部分を、溶解剤を用いて除去することを含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記縁部の除去の後に、前記樹脂絶縁層を本硬化させることを含んでいる。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記保護膜を備えたままの前記樹脂絶縁層と共に前記保護膜を貫くビア用貫通孔を形成することを含んでいる。
【請求項4】
請求項3記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記樹脂絶縁層が前記保護膜を備えたままの状態で、前記貫通孔内の樹脂残渣の除去処理を行うことを含んでいる。
【請求項5】
請求項4記載の配線基板の製造方法であって、前記除去処理が、溶解液を用いないドライプロセスで行われる。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、さらに、前記縁部の除去の後に、前記樹脂絶縁層が前記保護膜を備えたままの状態で、水洗を行うことを含んでいる。
【請求項7】
請求項1記載の配線基板の製造方法であって、前記樹脂絶縁層を形成することは、前記保護膜を構成する支持体を表面に備えていて平面視で前記基板よりも小さい樹脂フィルムを、前記基板上に積層することを含んでいる。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板の製造方法であって、前記縁部を除去することは、前記樹脂絶縁層及び前記基板の中央部を除く縁部のみを、前記溶解剤に浸すことを含んでいる。
【請求項9】
請求項7記載の配線基板の製造方法であって、
前記基板は、前記配線基板を構成する領域の外側の部分であって前記樹脂絶縁層のうちの前記保護膜の外縁からはみ出る部分に覆われる余白部分を有し、
前記配線基板の製造方法は、さらに、前記余白部分を除去することを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に塗布液を塗布して回転塗布によって絶縁膜を形成し、その絶縁膜の外周部の盛り上がっている部分をリンス液を用いて除去する膜形成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の方法では、絶縁膜の盛り上がり部分の除去の際に、外周部において必要な部分を残しながら、除去が望まれる盛り上がり部分だけを除去することが困難なことがある。また、その除去工程において、除去した部分から生じる樹脂屑などの異物が、絶縁膜において清浄な状態で残るべき内周側の領域の表面上に付着することがある。そのため、残すべき領域の一部が除去されたり、除去すべき部分が残ってしまったりすることがある。また、絶縁膜の残存部分に付着した異物が、絶縁膜上への適正な配線などの形成を阻害して歩留まりを低下させることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板の製造方法は、表面に保護膜を備えた半硬化状態の樹脂絶縁層を基板上に積層することと、前記樹脂絶縁層の縁部を除去することと、前記保護膜を除去することと、前記表面上に配線層を形成することと、を含む配線基板の製造方法であって、前記縁部を除去することは、前記樹脂絶縁層が前記保護膜を備えたままの状態で、前記樹脂絶縁層のうちの前記保護膜の外縁からはみ出ている部分を、溶解剤を用いて除去することを含んでいる。
【0006】
本発明の実施形態によれば、配線基板の樹脂絶縁層の縁部の所望の部分だけを、残存させる領域への異物などの付着を抑制しながら除去することができると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態の配線基板の製造方法によって製造される配線基板の一例を示す平面図。
【
図2】実施形態の配線基板の製造方法によって製造される配線基板の一例を示す部分断面図。
【
図3A】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3B】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3C】実施形態の配線基板の製造方法における樹脂絶縁層の縁部の除去工程の一例を示す断面図。
【
図3D】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3E】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3F】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3G】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3H】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3I】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3J】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3K】実施形態の配線基板の製造方法で製造中の配線基板の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の配線基板の製造方法が、図面を参照しながら説明される。
図1及び
図2には、本実施形態の配線基板の製造方法を用いて製造される配線基板の一例である配線基板100の完成直前の状態が示されている。
図1は、完成直前の配線基板100、及びその配線基板100の周囲に備えられている余白部分100b全体の平面図を示し、
図2は、配線基板100の任意の一辺に沿う縁部と、その縁部に隣接する余白部分100bとの断面図を示している。配線基板100は、
図1及び
図2に示される切断線Cで余白部分100bを除去することによって完成する。なお、配線基板100は、さらに切断線C1で切断されて、複数の配線基板に分割されることで完成してもよい。
【0009】
図1及び
図2の配線基板100は、実施形態の配線基板の製造方法で製造される配線基板の一例に過ぎない。すなわち、実施形態の配線基板の製造方法によって、
図2に例示の配線基板100の積層構造と異なる構造を有する、及び/又は、配線基板100の配線層及び樹脂絶縁層の数と異なる数の樹脂絶縁層及び配線層を含む、配線基板が製造され得る。なお、以下の説明で参照される各図面では、開示される実施形態が理解され易いように特定の部分が拡大して描かれていることがあり、大きさや長さに関して、各構成要素が互いの間の正確な比率で描かれていない場合がある。
【0010】
図1に示されるように配線基板100は周囲に余白部分100bを備えた状態で製造され、完成前に余白部分100bが除去される。余白部分100bは、配線基板100を構成する領域である製品領域100aの外側の部分である。余白部分100bを備えることによって配線基板100は、製造ラインに適したワークサイズで製造工程内を流動する。
【0011】
図2に示されるように、配線基板100は、コア基板3とコア基板3の第1面31上に順に積層されている樹脂絶縁層11、配線層21、樹脂絶縁層12、配線層22、及び、ソルダーレジスト41を含んでいる。さらに、配線基板100は、コア基板3の第2面32上に順に形成されている樹脂絶縁層13、配線層23、樹脂絶縁層14、配線層24、及びソルダーレジスト42を含んでいる(「樹脂絶縁層」は、以下では単に「絶縁層」とも称される)。コア基板3は、絶縁層15、及び絶縁層15の両面それぞれの上に形成されている配線層25、26によって構成されている。コア基板3には、絶縁層15を貫いて配線層25と配線層26とを接続するスルーホール導体51が形成されている。筒状の形体のスルーホール導体51の内部は、エポキシ樹脂などで形成される充填体51aで充填されている。
【0012】
配線基板100の説明、及び配線基板100を例に用いて後述する実施形態の配線基板の製造方法の説明では、配線基板100の厚さ方向(積層方向)において絶縁層15から遠い側は、「外側」、「上側」もしくは「上方」、または単に「上」とも称され、絶縁層15に近い側は、「内側」、「下側」もしくは「下方」、または単に「下」とも称される。さらに、配線層や絶縁層のような各構成要素において絶縁層15と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層15側を向く表面は「下面」とも称される。
【0013】
絶縁層11~14それぞれには、これら各絶縁層を貫いて、各絶縁層の両側の配線層同士を接続するビア導体5が形成されている。配線層21~26は、それぞれ、配線パターンや導体パッドなどの任意の導体パターンを含んでいる。
図2の例において配線層25及び配線層26は、それぞれ、余白部分100bにダミーパターン2aを含んでいる。
【0014】
絶縁層11~15は、それぞれ、絶縁性樹脂を用いて形成され得る。絶縁性樹脂としては、エポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)、又はフェノール樹脂のような熱硬化性樹脂、及び、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン(PTFE)樹脂、ポリエステル(PE)樹脂、及び変性ポリイミド(MPI)樹脂のような熱可塑性樹脂が例示される。一方、ソルダーレジスト41、42は、例えば、感光性のエポキシ樹脂又はポリイミド樹脂などを用いて形成され得る。絶縁層11~15は、シリカやアルミナなどの無機フィラー(図示せず)、及び/又は、図示されていないガラス繊維などからなる補強材(芯材)を含み得る。
【0015】
配線層21~26、ビア導体5、及びスルーホール導体51は、例えば銅又はニッケルなどの任意の金属を用いて形成されている。これらは、
図2では簡略化されて1つの層だけを有するように描かれているが、例えば、無電解めっき膜やスパッタ膜と電解めっき膜とを含む2層以上の多層構造を有し得る。
【0016】
絶縁層11~14は、
図2に示される状態では、それぞれ、余白部分100bの外縁まで存在せず、ダミーパターン2aの外縁側の一部の上において欠落している。
図2の例において絶縁層11~14が欠落している部分は、ソルダーレジスト41、42で充填されている。
【0017】
本実施形態の配線基板の製造方法では、製造工程において、
図2の絶縁層11~14について二点鎖線10aで示されるような各絶縁層の縁部が除去される。
図1及び
図2に例示の配線基板100が製造される場合を例に用いて、実施形態の配線基板の製造方法が、
図3A~
図3Kを参照して以下に説明される。
【0018】
図3A及び
図3Bに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、表面11aに保護膜6を備えた半硬化状態の絶縁層11を基板(
図3Aの例ではコア基板3)上に積層することを含んでいる。
図1及び
図2の配線基板100が製造される場合、コア基板3が用意され、コア基板3の第1面31上に絶縁層11が積層され、第2面32上に絶縁層13が積層される。コア基板3は、製造される配線基板を構成する製品領域3aと、製品領域3aの外側の部分である余白部分3bとを有している。そして、絶縁層11を積層することは、
図3Aに示されるように、樹脂フィルム6aを、コア基板3のような用意された基板上に積層することを含み得る。
【0019】
コア基板3のような、絶縁層11の下地となる基板は任意の方法で用意される。例えばコア基板3が用意される場合は、絶縁層15となる絶縁層とその両面に接合された金属箔とを含む両面銅張積層板が用意され、ドリル加工による貫通孔の形成後、無電解めっき及び電解めっきによって貫通孔内にスルーホール導体51が形成される。スルーホール導体51の内部をエポキシ樹脂などで充填することによって充填体51aが形成された後、例えば、無電解めっき及び電解めっきを含むサブトラクティブ法によって、ダミーパターン2aなどの所定の導体パターンを含む配線層25、26が形成される。例えばこのようにして配線層25、26と絶縁層15とを含むコア基板3が用意される。なお、絶縁層11のような絶縁層の下地となるべく容易される基板は、所謂コア基板でなくてもよく、例えば、ビルドアップ法を用いて既に形成されている、絶縁層単体、又は絶縁層と配線層との積層体であってもよい。
【0020】
図3Aに示されるように、樹脂フィルム6aは、
図3Bに示される保護膜6を構成する支持体61を表面に備えている。支持体61を備えた樹脂フィルム6aが、コア基板3の第1面31及び第2面32にそれぞれに積層される。
図3Aの例において樹脂フィルム6a及び支持体61は、平面視でコア基板3よりも小さい。なお「平面視」は、製造される配線基板の厚さ方向に沿う視線で各対象物を見ることを意味している。
【0021】
樹脂フィルム6aは、絶縁層11、13の材料として前述された、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂やフッ素樹脂などの熱可塑性樹脂などのいずれかの樹脂を含む材料で形成されている。樹脂フィルム6aは、これらの樹脂を、半硬化状態又は乾燥状態である所謂Bステージの状態で含み得る。支持体61は、後工程で晒される温度や各種の溶剤に対する適切な耐性を有する任意の材料で形成されている。支持体61の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)が例示される。しかし、支持体61の材料(すなわち保護膜6の材料)は、PETに限定されない。
【0022】
樹脂フィルム6aは、コア基板3に積層された後、支持体61と共に加熱及び加圧される。その結果、コア基板3の両面に積層された樹脂フィルム6aが、それぞれコア基板3に熱圧着され、コア基板3の各面において、絶縁層11又は絶縁層13が形成される。絶縁層11の表面11a及び絶縁層13の表面13aは、それぞれ、支持体61からなる保護膜6で覆われる。樹脂フィルム6aの熱圧着を経ただけの
図3Bに示されるような段階では、完全硬化状態に至らない半硬化状態の樹脂層が、絶縁層11、13として形成される。後述される絶縁層11、13の縁部の除去が容易に行われ得ることがある。
【0023】
樹脂フィルム6a(
図3A参照)の熱圧着において、樹脂フィルム6aを構成する樹脂が加熱により軟化すると共に加圧により押されて、保護膜6とコア基板3との間の領域から保護膜6の外縁よりも外側へと流動する。その結果、
図3Bに示されるように、保護膜6の外縁からはみ出ている、余剰樹脂からなる部分(以下、この部分は「余剰部10」と称される)を有する絶縁層11、13が形成される。コア基板3の余白部分3bは、絶縁層11、13のこの余剰部10に覆われる。
【0024】
また、保護膜6の外側に流動した樹脂は、下地の基板(
図3Bの例ではコア基板3)の縁部に達すると、表面張力によって、下地の基板と反対の方向に向かって盛り上がる。そのため、
図3Bの例において、余剰部10は、絶縁層11の表面11a、及び絶縁層13の表面13aそれぞれよりも盛り上がっており、さらに、保護膜6の上面よりも盛り上がっている。
図3Bの例では、余剰部10の一部が保護膜6の縁部にまで乗り上げている。
【0025】
余剰部10のような部分を絶縁層11、13が有していると、後工程の配線層21、23(
図3H参照)の形成において、例えばめっきレジストの形成に用いられるドライフィルム(図示せず)の積層に支障が生じることがある。例えばドライフィルムの積層においてエアが巻き込まれ、めっきレジストに適正な開口が形成され得ないことがある。その結果、所望の導体パターン備えた配線層21、23が形成されないことがある。
【0026】
このような不具合を抑制すべく、本実施形態の配線基板の製造方法は、
図3C及び
図3Dに示されるように、絶縁層11、13のような絶縁層の縁部を除去することを含んでいる。特に、本実施形態において絶縁層の縁部を除去することは、絶縁層11、13のような絶縁層が保護膜6を備えたままの状態で、保護膜6の外縁からはみ出ている部分(余剰部10)を除去することを含んでいる。余剰部10は、
図3Cに示されるように溶解剤Lを用いて除去される。
図3Cには、絶縁層11、13の余剰部10の除去工程の一例が示されており、
図3Dには、余剰部10の除去後の工程中の配線基板が示されている。
【0027】
余剰部10は、溶解剤Lに晒されることによって溶解されて除去される。本実施形態の配線基板の製造方法では、絶縁層11、13のような絶縁層が保護膜6を備えた状態で余剰部10が除去されるので、絶縁層11、13のうちの余剰部10以外の、保護膜6に覆われた領域が、溶解剤Lに晒されることから守られる。すなわち、絶縁層11、13のうちの、製造される配線基板を構成する領域が、溶解剤Lによって溶解されて除去されることが防がれる。除去が必要な部分だけを確実に除去し、除去すべきでない領域を適切に残存させることができる。
【0028】
また、絶縁層11、13の余剰部10以外の領域は、余剰部10が溶解される間、保護膜6に覆われているため、絶縁層11、13のうちの余剰部10以外の領域への溶融した余剰部10の樹脂屑の付着が防がれる。すなわち、製造される配線基板を構成する領域への、余剰部10の除去による樹脂屑の付着が防止される。
【0029】
従って、本実施形態の配線基板の製造方法によれば、配線基板の絶縁層の縁部において盛り上がりがちな部分(余剰部10)だけを除去することができると考えられる。しかも、製造される配線基板を構成する領域のような残存させる部分への異物などの付着を抑制することができると考えられる。後工程において配線層21、23(
図3H参照)が、適切なめっきレジストの形成などを経て、適切に形成されると考えられる。
【0030】
図3Cの例では、槽T内を満たす溶解剤Lに、コア基板3及び絶縁層11、13の縁部が浸漬されることによって、余剰部10が溶解剤Lに晒されている。特に、コア基板3及び絶縁層11、13の縁部だけが、溶解剤Lに浸漬されている。例えば平面視で矩形の配線基板が製造される場合であって、コア基板3及び絶縁層11、13が平面視で矩形の形状を有している場合、コア基板3及び絶縁層11、13の4つの辺が一つずつ順に溶解剤Lに浸漬される。コア基板3及び絶縁層11、13において、縁部よりも内周側の中央部は、溶解剤Lに浸漬されていない。このように、絶縁層11、13の縁部を除去することは、絶縁層11、13及びコア基板3のような基板の中央部を除く縁部のみを、溶解剤Lに浸すことを含んでいてもよい。すなわちコア基板3では、製品領域3aは溶解剤Lに晒されずに余白部分3bだけが溶解剤Lに浸漬される。絶縁層11、13それぞれにおける製品領域3a上の部分が溶解剤Lに晒されることが、より確実に防がれる。
【0031】
溶解剤Lは、前述した絶縁層11、13を構成する樹脂を溶かすことが可能な任意の溶剤であり得る。例えば、溶解剤Lの主成分は、N,N-ジメチルアセトアミド、シクロペンタノン、メチルイソプロピルケトン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、メチル-tert-ブチルエーテル、ジエチルケトン、アセトニトリル、テトラヒドロピラン、ジメチルスルホキシド、2-ピロリドン、N,N-ジエチルホルムアミド、メチルn-プロピルケトン、ペンタナール(バレルアルデヒド)、プロピオンアミド、エチルベンゼン、o-キシレン、及び、アセト酢酸エチル、などであり得る。余剰部10を効率良く溶解させることができる。しかし、溶解剤Lの主成分は、これら化合物に限定されない。
【0032】
図3Dと
図3Bとを見比べれば明らかなように、絶縁層11、13の縁部の除去では、余剰部10において保護膜6の縁部に乗り上げていた部分も除去されている。このように、絶縁層11、13のような絶縁層の縁部を除去することは、これら各絶縁層における保護膜6の縁部に乗り上げている部分を除去することを含み得る。
【0033】
また、
図3Dに示されるように、余剰部10が除去されると、コア基板3においてダミーパターン2aが露出する。すなわち、余剰部10の除去によって露出するコア基板3の露出部には、ダミーパターン2aが形成されている。従って、絶縁層11、13と同様の樹脂で形成され得る絶縁層15が、余剰部10を溶かす溶解剤に晒されることが防がれる。従って、絶縁層15の縁部が、余剰部10に続いて除去されることが防がれる。
【0034】
余剰部10が除去された後、その除去によって露出する部分の水洗が行われてもよい。例えば、コア基板3及び絶縁層11、13を含む、製造途上の配線基板全体が、純水、市水、又は工業用水などの適切な水で洗浄される。このように水洗が行われる場合、好ましくは、絶縁層11の表面11a及び絶縁層13の表面13aに保護膜6を備えた状態で水洗が行われる。洗浄水への表面11a、13aの無用な曝露が防がれる。このように、実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、絶縁層11、13のような絶縁層の縁部の除去の後に、この絶縁層が保護膜6を備えたままの状態で水洗を行うことを含み得る。
【0035】
本実施形態の配線基板の製造方法では、前述したように先ず半硬化状態の樹脂層が絶縁層11、13として形成される。そのため、本実施形態の配線基板の製造方法は、絶縁層11、13の縁部の除去後に、半硬化状態の絶縁層11、13を本硬化させることを含み得る。本硬化によって、絶縁層11、13を構成する樹脂が硬化の最終段階、所謂Cステージの状態まで硬化する。絶縁層11、13の縁部の除去後のこの時点で絶縁層11、13が本硬化されるので、本硬化前に、絶縁層11、13の縁部が容易に除去され得る。そして後工程で、ビア用貫通孔5a(
図3E参照)を、本硬化後の11、13に適切に形成することができる。絶縁層11、13は、例えば、絶縁層11、13を構成する樹脂の本硬化に適した温度で適切な時間加熱されることによって本硬化される。絶縁層11、13は熱硬化に限らず、紫外線照射などの任意の他の方法で本硬化されてもよい。
【0036】
図2の配線基板100が製造される場合は、絶縁層11、13の縁部の除去後に、
図3Eに示されるように、絶縁層11及び絶縁層13それぞれに、ビア導体5(
図2参照)の形成のためのビア用貫通孔5aが形成される。このように本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、ビア用貫通孔5aを形成することを含み得る(「ビア用貫通孔」は、以下では単に「貫通孔」とも称される)。すなわち、絶縁層11、13それぞれを貫く貫通孔5aが、ビア導体5が形成されるべき位置に形成される。貫通孔5aは、例えば炭酸ガスレーザーやUVレーザーなどによるレーザー光の照射によって形成される。
図3Eに示される例では、貫通孔5aは、保護膜6を備えたままの絶縁層11、13に形成される。すなわち、保護膜6を備えたままの絶縁層11、13それぞれと共に保護膜6を貫く貫通孔5aが形成される。保護膜6が備わったままなので、貫通孔5aの形成において、絶縁層11の表面11a又は絶縁層13の表面13aへの絶縁層11、13から生じた樹脂屑の付着が防がれる。また、レーザー加工の照射面が表面11a、13aではなく、保護膜6の表面なので、照射時の衝撃による絶縁層11又は絶縁層13への過大な貫通孔5aの形成が防がれる。
【0037】
図3Eのように貫通孔5aが形成される場合、貫通孔5a内に、絶縁層11、13を構成する樹脂の滓である樹脂残渣(スミア)Sが残存することがある。従って、実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、貫通孔5a内の樹脂残渣Sの除去処理(所謂デスミア処理)を行うことを含んでいてもよい。樹脂残渣Sの除去処理は、絶縁層11及び絶縁層13が保護膜6を備えたままの状態で行われる。樹脂残渣Sの除去処理によって絶縁層11の表面11a及び絶縁層13の表面13aが何らかの化学的及び/又は機械的ストレスを受けることが、防がれる。例えば表面11a及び表面13aが無用に粗化されることが、防がれる。
【0038】
図3Eに例示の樹脂残渣Sの除去処理を行うことによって、
図3Fに示されるように、樹脂残渣の無い貫通孔5aの底面及び壁面が得られる。例えば配線層25及び絶縁層11、又は配線層26及び絶縁層13と良好に密着する剥離の少ないビア導体5(
図3H参照)が形成される。樹脂残渣の除去処理は、例えば、過マンガン酸塩溶液などの溶解液への浸漬を含むウェットプロセスであり得る。しかし貫通孔5a内の樹脂残渣の除去処理は、溶解液を用いないドライプロセスで行われてもよい。樹脂残渣を除去するドライプロセスは、例えば、アルゴン、四フッ化メタン、四フッ化メタンと酸素との混合気、又は、六フッ化硫黄などのプラズマガスを用いるプラズマ処理であってもよい。プラズマ処理では、ウェットプロセスと比べて、貫通孔5aに露出する絶縁層11又は絶縁層13の内壁面の浸食が抑制されることがある。
【0039】
樹脂残渣の除去処理の後、保護膜6が除去される。すなわち、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、保護膜6を除去することを含んでいる。保護膜6は、任意の方法で除去され得る。例えば、単に保護膜6を絶縁層11、13それぞれと反対方向に引っ張ることによって、保護膜6が絶縁層11、13それぞれから剥離されてもよい。また、保護膜6は、適切な溶剤を用いた溶解によって除去されてもよい。
【0040】
保護膜6の除去によって、
図3Gに示されるように、絶縁層11の表面11a及び絶縁層13の表面13aが露出する。保護膜6で保護されていたために、ここまでの工程において樹脂屑などの付着が無く、ストレスの履歴の少ない、清浄で無粗化の表面11a、13aが露出する。
【0041】
図3Hに示されるように、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、露出した絶縁層11の表面11a上に配線層21を形成することを含んでいる。絶縁層13の表面13a上には、配線層23が形成される。また、
図3Hに示されるように、
図2の配線基板100が製造される場合は、配線層21と一体のビア導体5が、絶縁層11を貫く貫通孔5a内に形成される。このように、実施形態の配線基板の製造方法は、絶縁層11を貫通して配線層21と接続するビア導体5を貫通孔5a内に形成することを含んでいてもよい。なお、
図2の配線基板100が製造される場合は、
図3Hに示されるように、絶縁層13の表面13a上に配線層23が形成されると共に、絶縁層13を貫通するビア導体5が形成される。
【0042】
配線層21、23並びにビア導体5は、任意の配線層及びビア導体の形成方法を用いて形成され得る。例えば、一般的なセミアディティブ法によって各配線層及びビア導体5が形成されてもよい。すなわち、各絶縁層の表面11a、13a上、及び貫通孔5a内に無電解めっきやスパッタリングによって銅などの金属膜からなるシード層(図示せず)が形成される。形成されたシード層上に、適切な開口を有するめっきレジスト(図示せず)が形成され、めっきレジストの開口内に、シード層を給電層として用いて電解めっき膜(図示せず)が形成される。貫通孔5a内にビア導体5が形成される。そして、めっきレジストの剥離及びクイックエッチングなどによるシード層の露出部分の除去によって、所望の導体パターンを有する配線層21、23が形成される。
【0043】
セミアディティブ法による配線層21、23それぞれの形成では、上記の電解めっき膜が、めっきレジストの上面よりも突出するように形成され、その後、電解めっき膜の上面が研磨によって平坦化されてもよい。アスペクト比の高い配線パターンを含む配線層11又は配線層13が形成され得ることがある。
【0044】
図2の配線基板100が製造される場合、
図3Iに示されるように、それぞれが保護膜6を備えた絶縁層12、14が、先に説明された絶縁層11、13の形成方法と同様の方法で形成される。絶縁層11、13の形成時と同様に、保護膜6の外縁からはみ出ている樹脂からなる余剰部10をそれぞれが有する絶縁層12、14が形成される。露出していたコア基板3のダミーパターン2aは、ダミーパターン2a上に流れ込んだ、絶縁層12、14を構成する樹脂で覆われる。すなわちダミーパターン2aは、絶縁層12及び絶縁層14の余剰部10で覆われる。
【0045】
そして、絶縁層12、14それぞれの余剰部10が、
図3Jに示されるように、先に
図3Cを参照して説明された方法と同様の方法で、溶解剤を用いて、保護膜6を備えたままの絶縁層12、14それぞれから除去される。コア基板3のダミーパターン2aが再度露出する。その後、絶縁層12、14それぞれを覆う保護膜6が、任意の方法で除去される。
【0046】
そして
図2の配線基板100が製造される場合は、
図3Kに示されるように、配線層22、24が、例えば先に説明された配線層21、23の形成方法と同様の方法で形成される。絶縁層12、14には、絶縁層12、14それぞれを貫いて配線層22又は配線層24と接続するビア導体5が形成される。
【0047】
さらに、
図2の配線基板100が製造される場合は、ソルダーレジスト41が絶縁層12及び配線層22の上に形成されると共に、ソルダーレジスト42が絶縁層14及び配線層24の上に形成される。露出していたコア基板3のダミーパターン2aは、ダミーパターン2a上に流れ込んだソルダーレジスト41又はソルダーレジスト42で覆われる。ソルダーレジスト41、42は、例えば、感光性のエポキシ樹脂やポリイミド樹脂を、積層又はスプレーイングなどの方法で各絶縁層及び各配線層上に供給することによって形成される。ソルダーレジスト41、42には、
図3Kに示されるように、配線層22又は配線層24の一部を露出させる開口が、フォトリソグラフィ又はレーザー光の照射によって形成される。以上の工程を経ることによって、
図2に示される状態の完成直前の配線基板100が得られる。
【0048】
前述したように、
図1及び
図2の配線基板100は、余白部分100bを備えた完成直前の配線基板100を切断線Cで切断して余白部分100bを除去することによって完成する。従って、
図3Kに示される状態から、この完成直前の配線基板100を切断線Cで切断することによって、余白部分100bが除去される。余白部分100bは、ダミーパターン2aを含むコア基板3の余白部分3b、ダミーパターン2aを覆うソルダーレジスト41、42、並びに、絶縁層11~14の縁部を含んでいる。すなわち、本実施形態の配線基板の製造方法は、さらに、絶縁層11のような絶縁層の下地として用意される基板の余白部分(コア基板3の余白部分3b)を除去することを含み得る。切断による余白部分100bの除去には、例えば、ルーター加工や、ダイシングソーのようなローラー刃を用いた加工など、任意の方法が用いられる。以上の工程を経ることによって、配線基板100が完成する。
【0049】
実施形態の配線基板の製造方法は、各図面を参照して説明された方法に限定されない。前述されたように、実施形態の配線基板の製造方法によって、各図面に示される積層構造と異なる構造を有する配線基板や、各図面に示される配線層の層数と異なる数の配線層を含む配線基板が製造されてもよい。例えば、完成時には除去される支持板上で、コア基板を含まない配線基板が、実施形態の配線基板の製造方法を用いて製造されてもよい。また、縁部の余剰部を除去される絶縁層の下地となる基板は、ダミーパターン2aのような導体パターンを含んでいなくてもよい。さらに、絶縁層にビア導体が形成されなくてもよく、従ってビア導体の形成時の樹脂残渣の除去処理も行われなくてもよい。溶解剤による絶縁層の余剰部の除去は、
図3Cに例示の方法ではなく、任意の方法で実施され得る。実施形態の配線基板の製造方法には、前述された各工程以外に任意の工程が追加されてもよく、前述された工程のうちの一部が省略されてもよい。
【符号の説明】
【0050】
100 配線基板
10 余剰部
11~15 樹脂絶縁層(絶縁層)
11a 樹脂絶縁層11の表面
21~26 配線層
3 コア基板(基板)
3a 製品領域
3b 余白部分
5 ビア導体
5a ビア用貫通孔(貫通孔)
6 保護膜
6a 樹脂フィルム
61 支持体
L 溶解剤
S 樹脂残渣