(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024010939
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04858 20160101AFI20240118BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240118BHJP
H01M 8/04828 20160101ALI20240118BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240118BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20240118BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20240118BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240118BHJP
【FI】
H01M8/04858
H01M8/04537
H01M8/04828
H01M8/04746
H01M8/04303
H01M8/04228
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112556
(22)【出願日】2022-07-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】富本 尚也
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA33
5H127BA39
5H127BA57
5H127BA59
5H127BA60
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127DA11
5H127DB55
5H127DC22
5H127DC24
5H127DC32
5H127DC34
5H127DC43
5H127DC68
(57)【要約】
【課題】燃料電池セルの電圧が低下している状態であっても燃料電池システムを運用すること。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池スタックと、電圧測定部と、制御装置と、を備える。燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルを備える。電圧測定部は、燃料電池セルの電圧を測定する。制御装置は、平均セル電圧が第1閾値以下になった場合、フラッディングを解消するフラッディング解消制御を行う。制御装置は、フラッディング解消制御によって平均セル電圧が第1閾値より大きい値である第2閾値以上にならなかった場合、燃料電池スタックにおける出力電力の目標値の上限値を低下させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池セルを有する燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックから排出されるカソードガスの圧力を調整する調整弁と、
前記燃料電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、
前記燃料電池スタックの出力電力の目標値を設定する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記燃料電池セルの電圧が第1閾値以下になった場合、フラッディングを解消するフラッディング解消制御を行い、
前記フラッディング解消制御によって前記燃料電池セルの電圧が前記第1閾値より大きい値である第2閾値以上にならなかった場合、前記燃料電池スタックの前記目標値の上限値を低下させる、燃料電池システム。
【請求項2】
前記フラッディング解消制御は、
前記調整弁の開度を大きくする開度増大制御と、
前記燃料電池スタックに供給される前記カソードガスの流量を多くする流量増加制御と、
前記燃料電池スタックの出力電力をフィードバック制御によって調整することを禁止する禁止制御と、を含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記開度増大制御を行った後に前記燃料電池セルの電圧が前記第2閾値以上にならなかった場合、前記流量増加制御を行い、
前記流量増加制御を行った後に前記燃料電池セルの電圧が前記第2閾値以上にならなかった場合、前記燃料電池スタックの前記目標値の上限値を低下させる、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記フラッディング解消制御によって前記燃料電池セルの電圧が前記第2閾値以上になった場合、前記フラッディング解消制御を停止させ、通常状態に移行する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記燃料電池システムの動作停止指令を受けると、低下した前記上限値を元に戻す、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の燃料電池システムは、燃料電池スタックと、電動圧縮機と、調整弁と、アノードガス供給部と、制御装置と、を備える。燃料電池スタックは、複数の燃料電池セルを備える。燃料電池スタックは、アノードガスとカソードガスとの化学反応によって発電を行う。アノードガス供給部は、燃料電池スタックにアノードガスを供給する。電動圧縮機は、燃料電池スタックにカソードガスを供給する。調整弁は、燃料電池スタックから排出されるカソードガスの圧力を調整する。制御装置は、燃料電池スタックにフラッディングが発生しているか否かを判定する。燃料電池スタックにフラッディングが発生している場合、燃料電池セルの電圧が低下する。燃料電池スタックにフラッディングが発生している場合、制御装置は、調整弁の開度を大きくする。更に、制御装置は、電動圧縮機を制御することによってカソードガスの供給量を増加させる。これにより、制御装置は、フラッディングの解消を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
調整弁の開度を大きくしたり、電動圧縮機から供給されるカソードガスの量を増加させたりしても、燃料電池セルの電圧低下が解消しない場合がある。この場合であっても、燃料電池システムを運用することが求められる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する燃料電池システムは、複数の燃料電池セルを有する燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックから排出されるカソードガスの圧力を調整する調整弁と、前記燃料電池セルの電圧を測定する電圧測定部と、前記燃料電池スタックの出力電力の目標値を設定する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記燃料電池セルの電圧が第1閾値以下になった場合、フラッディングを解消するフラッディング解消制御を行い、前記フラッディング解消制御によって前記燃料電池セルの電圧が前記第1閾値より大きい値である第2閾値以上にならなかった場合、前記燃料電池スタックの前記目標値の上限値を低下させる。
【0006】
制御装置は、燃料電池セルの電圧が第1閾値以下になった場合、フラッディング解消制御を行う。燃料電池セルの電圧低下の原因がフラッディングの場合、フラッディング解消制御により燃料電池セルの電圧が第2閾値以上になる。燃料電池セルの電圧低下の原因がフラッディングではない場合、フラッディング解消制御を行っても燃料電池セルの電圧が第2閾値以上にならない場合がある。この場合、制御装置は、燃料電池スタックにおける出力電力の目標値の上限値を低下させる。このため、燃料電池セルの電圧が低下している状態であっても燃料電池システムを運用することができる。
【0007】
上記燃料電池システムについて、前記フラッディング解消制御は、前記調整弁の開度を大きくする開度増大制御と、前記燃料電池スタックに供給される前記カソードガスの流量を多くする流量増加制御と、前記燃料電池スタックの出力電力をフィードバック制御によって調整することを禁止する禁止制御と、を含んでいてもよい。
【0008】
上記燃料電池システムについて、前記制御装置は、前記開度増大制御を行った後に前記燃料電池セルの電圧が前記第2閾値以上にならなかった場合、前記流量増加制御を行い、前記流量増加制御を行った後に前記燃料電池セルの電圧が前記第2閾値以上にならなかった場合、前記燃料電池スタックの前記目標値の上限値を低下させてもよい。
【0009】
上記燃料電池システムについて、前記制御装置は、前記フラッディング解消制御によって前記燃料電池セルの電圧が前記第2閾値以上になった場合、前記フラッディング解消制御を停止させ、通常状態に移行してもよい。
【0010】
上記燃料電池システムについて、前記制御装置は、前記燃料電池システムの動作停止指令を受けると、低下した前記上限値を元に戻してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃料電池セルの電圧が低下している状態であっても燃料電池システムを運用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】
図1の燃料電池スタックが備える燃料電池セルの概略構成図である。
【
図3】
図1の燃料電池システムが備える第1DC/DCコンバータの概略構成図である。
【
図4】
図1の燃料電池スタックの発電モードを示す図である。
【
図5】
図1の制御装置がフラッディング解消制御及び発電抑制制御を行う際に遷移する状態の状態遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
燃料電池システムの一実施形態について説明する。
図1に示すように、産業車両10は、車両負荷11と、キースイッチ12と、燃料電池システム20と、を備える。車両負荷11は、電力によって駆動する装置である。車両負荷11は、例えば、電力によって駆動する電動機である。この電動機の駆動によって産業車両10は走行する。産業車両10は、例えば、フォークリフト、又はトーイングトラクタである。
【0014】
キースイッチ12は、産業車両10のユーザによって操作される。ユーザによる操作によってキースイッチ12のオンとオフとが切り替えられる。以下の説明において、キースイッチ12がオンされることをキーオン、キースイッチ12がオフされることをキーオフと称する場合がある。
【0015】
<燃料電池システム>
燃料電池システム20は、燃料電池スタック21と、カソード系40、アノード系60と、希釈器69と、電気系80と、制御装置110と、を備える。
【0016】
燃料電池スタック21は、複数の燃料電池セル22を備える。燃料電池セル22は、高分子膜型燃料電池セルである。燃料電池セル22は、カソードガスとアノードガスとの化学反応によって発電を行う。
【0017】
図2に示すように、燃料電池セル22は、イオン透過性の電解質膜23と、アノード側触媒層24と、アノード側マイクロポーラス層25と、アノード側拡散層26と、カソード側触媒層27と、カソード側マイクロポーラス層28と、カソード側拡散層29と、を備える。アノード側触媒層24とカソード側触媒層27とは、電解質膜23を挟んでいる。アノード側マイクロポーラス層25とカソード側マイクロポーラス層28とは、電解質膜23及び各触媒層24,27を挟んでいる。アノード側拡散層26と、カソード側拡散層29とは、電解質膜23、各触媒層24,27及び各マイクロポーラス層25,28を挟んでいる。
【0018】
各触媒層24,27は、触媒によってアノードガス及びカソードガスの反応を促進する。各触媒層24,27は、触媒、触媒を担持する担体及びこれらを被覆するアイオノマを含む。触媒としては、例えば白金、ルテニウム等を用いることができる。担体としては、例えば、カーボンを用いることができる。アイオノマとしては、イオン伝導性の高分子電解質を使用することができる。アイオノマとしては、例えば、電解質膜23と同様の材料を用いればよい。
【0019】
各マイクロポーラス層25,28は、発電時に化学反応により生成された水を各触媒層24,27に滞留させないように、外部への排出を促す。各マイクロポーラス層25,28としては、例えば、撥水性樹脂とカーボンなどの導電性材料などを含んで構成される。
【0020】
各拡散層26,29は、電子、アノードガス、及びカソードガスの経路となる。各拡散層26,29は、ガス透過性及び電子伝導性を有する材料によって構成されている。各拡散層26,29は、例えば、カーボンによって構成されている。
【0021】
図1に示すように、燃料電池スタック21は、カソード流路30と、アノード流路33と、を備える。カソード流路30には、カソードガスが流れる。アノード流路33には、アノードガスが流れる。カソード流路30は、流入口31と、流出口32と、を備える。カソードガスは、流入口31からカソード流路30に流入し、流出口32から流出する。アノード流路33は、流入口34と、流出口35と、を備える。アノードガスは、流入口34からアノード流路33に流入し、流出口35から流出する。カソードガスは、酸化剤ガスである。酸化剤ガスとしては、例えば、空気中の酸素を挙げることができる。アノードガスは、燃料ガスである。燃料ガスとしては、例えば、水素ガスを挙げることができる。
【0022】
カソード系40は、吸入口41と、電動圧縮機42と、インバータ44と、インタークーラ45と、カソード供給路46と、カソード排出路49と、第1バルブ51と、第2バルブ52と、を備える。
【0023】
吸入口41は、燃料電池システム20にカソードガスを吸入する。吸入口41は大気に開放されていてもよい。吸入口41は、ガスボンベに接続されていてもよい。
電動圧縮機42は、電動モータ43を備える。電動圧縮機42は、電動モータ43によって駆動する。電動圧縮機42は、燃料電池スタック21にカソードガスを供給する。詳細には、電動圧縮機42は、吸入口41から供給されるカソードガスを圧縮して燃料電池スタック21に供給する。電動圧縮機42から燃料電池スタック21に供給されたカソードガスは、カソード流路30を流れる。
【0024】
インバータ44は、電動モータ43に接続されている。インバータ44は、直流電力を交流電力に変換して電動モータ43に供給する。これにより、電動モータ43が駆動する。
【0025】
インタークーラ45には、電動圧縮機42から吐出されたカソードガスが供給される。インタークーラ45は、電動圧縮機42から供給されたカソードガスを冷却する。燃料電池スタック21に供給されるカソードガスは、インタークーラ45によって冷却された後のカソードガスである。
【0026】
カソード供給路46は、電動圧縮機42とカソード流路30とを接続している。詳細にいえば、カソード供給路46は、電動圧縮機42とカソード流路30の流入口31とを接続している。カソード供給路46は、第1供給路47と、第2供給路48と、を含む。第1供給路47は、電動圧縮機42とインタークーラ45とを接続している。第2供給路48は、インタークーラ45とカソード流路30とを接続している。
【0027】
カソード排出路49は、カソード流路30と希釈器69とを接続している。詳細にいえば、カソード排出路49は、カソード流路30の流出口32と希釈器69とを接続している。カソード排出路49は、カソード排ガスが流れる通路である。カソード排ガスは、燃料電池スタック21から排出されるカソードガスであって、生成水を含んだカソードガスである。生成水とは、燃料電池スタック21での発電によって生成される水である。
【0028】
第1バルブ51は、カソード供給路46に設けられている。本実施形態では、第2供給路48、即ち、インタークーラ45とカソード流路30との間に第1バルブ51が設けられている。第1バルブ51は、第1供給路47、即ち、インタークーラ45と電動圧縮機42との間に設けられていてもよい。
【0029】
第2バルブ52は、カソード排出路49に設けられている。第2バルブ52は、開度が調整可能なバルブである。第2バルブ52の開度を調整することによってカソード排ガスの圧力を調整できる。第2バルブ52の開度が小さくなるほど、カソード排ガスの圧力は高くなる。第2バルブ52は、調整弁である。
【0030】
アノード系60は、タンク61と、減圧弁62と、アノードガス供給部63と、供給路64と、循環路65と、気液分離器66と、循環ポンプ67と、排気排水弁68と、を備える。
【0031】
タンク61は、アノードガスを貯留している。
減圧弁62には、タンク61からアノードガスが供給される。減圧弁62は、タンク61から供給されたアノードガスを減圧する。減圧されたアノードガスは、アノードガス供給部63に供給される。
【0032】
アノードガス供給部63は、燃料電池スタック21に供給されるアノードガスの量を調整するための部材である。燃料電池スタック21に供給されるアノードガスの量は、アノードガス供給部63を制御することで調整可能である。アノードガス供給部63としては、例えば、インジェクタなどの電磁弁を用いることができる。
【0033】
供給路64は、アノードガス供給部63と、アノード流路33と、を接続している。詳細にいえば、供給路64は、アノードガス供給部63と、アノード流路33の流入口34と、を接続している。アノードガス供給部63から噴射されたアノードガスは、供給路64を通じて燃料電池スタック21に供給される。
【0034】
循環路65は、アノード流路33の流出口35と、供給路64と、を接続している。循環路65には、アノード排ガスが流れる。アノード排ガスは、未反応のアノードガスと、生成水と、を含む。循環路65は、アノード排ガスに含まれる未反応のアノードガスを供給路64に戻すための通路である。
【0035】
気液分離器66は、循環路65に設けられている。気液分離器66は、アノード排ガスをアノードガスと、生成水と、に分離する。アノード排ガスから分離された生成水は、気液分離器66に貯留される。
【0036】
循環ポンプ67は、循環路65に設けられている。循環ポンプ67は、気液分離器66によってアノード排ガスから分離されたアノードガスを供給路64に供給する。これにより、燃料電池スタック21にアノードガスが循環する。
【0037】
排気排水弁68は、気液分離器66に接続されている。排気排水弁68は、開状態と閉状態に切り替えられる。排気排水弁68が開状態になると、気液分離器66から生成水が排出される。また、循環路65から排気が行われる。排気排水弁68が閉状態になると、気液分離器66から生成水を排出できなくなる。即ち、排気排水弁68が閉状態の場合、気液分離器66に生成水が貯留されていく。排気排水弁68は、所定の開弁間隔毎に閉状態から開状態に切り替えられる。
【0038】
気液分離器66は、希釈器69に接続されている。排気排水弁68が開状態になると、気液分離器66に貯留された生成水、及びアノード排ガスが希釈器69に供給される。希釈器69は、カソード排ガスでアノード排ガスを希釈して大気中に排出する。
【0039】
電気系80は、第1DC/DCコンバータ81と、電圧測定部85と、電流測定部86と、第2DC/DCコンバータ95と、第1蓄電装置96と、充電状態検出部98と、第2蓄電装置99と、を備える。
【0040】
第1DC/DCコンバータ81は、燃料電池スタック21に接続されている。第1DC/DCコンバータ81は、燃料電池スタック21の出力電圧を変圧して出力する。第1DC/DCコンバータ81は、例えば、燃料電池スタック21の出力電圧を48[V]に変圧して出力する。第1DC/DCコンバータ81からの出力電力は、車両負荷11に供給される。
【0041】
図3に示すように、第1DC/DCコンバータ81は、正極配線Lpと、負極配線Lnと、6つのスイッチング素子Q1,Q2,Q3,Q4,Q5,Q6と、6つのダイオードD1,D2,D3,D4,D5,D6と、3つのリアクトル82,83,84と、コンデンサCと、を備える。
【0042】
第1スイッチング素子Q1と第2スイッチング素子Q2とは互いに直列接続されている。第3スイッチング素子Q3と第4スイッチング素子Q4とは互いに直列接続されている。第5スイッチング素子Q5と第6スイッチング素子Q6とは互いに直列接続されている。第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、及び第5スイッチング素子Q5は、正極配線Lpに接続されている。第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、及び第6スイッチング素子Q6は負極配線Lnに接続されている。第1スイッチング素子Q1、第3スイッチング素子Q3、及び第5スイッチング素子Q5は、上アームを構成している。第2スイッチング素子Q2、第4スイッチング素子Q4、及び第6スイッチング素子Q6は下アームを構成している。6つのスイッチング素子Q1~Q6としては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を用いている。6つのスイッチング素子Q1~Q6としては、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)を用いてもよい。
【0043】
ダイオードD1~D6は、各スイッチング素子Q1~Q6に並列接続されている。ダイオードD1~D6は、スイッチング素子Q1~Q6の寄生ダイオードである。上アームを構成するスイッチング素子Q1,Q3,Q5に並列接続されたダイオードD1,D3,D5のカソードは、正極配線Lpに接続されている。上アームを構成するスイッチング素子Q1,Q3,Q5に並列接続されたダイオードD1,D3,D5のアノードは、互いに直列接続された2つのスイッチング素子Q1~Q6の中点に接続されている。下アームを構成するスイッチング素子Q2,Q4,Q6に並列接続されたダイオードD2,D4,D6のカソードは、互いに直列接続された2つのスイッチング素子Q1~Q6の中点に接続されている。下アームを構成するスイッチング素子Q2,Q4,Q6に並列接続されたダイオードD2,D4,D6のアノードは、負極配線Lnに接続されている。
【0044】
上アームを構成するスイッチング素子Q1,Q3,Q5と下アームを構成するスイッチング素子Q2,Q4,Q6との中点には、リアクトル82,83,84が1つずつ接続されている。リアクトル82,83,84は、燃料電池スタック21に接続されている。
【0045】
コンデンサCは、正極配線Lpと負極配線Lnに接続されている。
上記した第1DC/DCコンバータ81では、スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作により昇圧が行われる。
【0046】
図1に示すように、電圧測定部85は、燃料電池スタック21の出力電圧[V]を測定する。電圧測定部85としては、複数の燃料電池セル22の電圧を個別に測定できるものが用いられる。例えば、電圧測定部85として、複数のポートを備え、複数のポートのそれぞれに燃料電池セル22の正極及び負極が接続されるものを用いる。これにより、電圧測定部85は、燃料電池セル22の電圧を個別に測定することができる。
【0047】
電流測定部86は、燃料電池スタック21の出力電流[A]を測定する。
第2DC/DCコンバータ95は、第1DC/DCコンバータ81に接続されている。第2DC/DCコンバータ95は、第1DC/DCコンバータ81の出力電圧を変圧して出力する。第2DC/DCコンバータ95は、例えば、第1DC/DCコンバータ81の出力電圧を12[V]に変圧して出力する。
【0048】
第1蓄電装置96は、第1DC/DCコンバータ81に接続されている。第1蓄電装置96は、第1DC/DCコンバータ81に対して48V系補機97と並列に接続されている。第1DC/DCコンバータ81からの出力電力が車両負荷11及び48V系補機97の消費電力を上回っている場合、第1蓄電装置96は余剰の電力によって充電される。第1DC/DCコンバータ81からの出力電力が車両負荷11及び48V系補機97の消費電力を下回っている場合、第1蓄電装置96は放電を行う。第1蓄電装置96としては、充放電可能であれば、どのようなものを用いてもよい。第1蓄電装置96としては、例えば、二次電池及びキャパシタを挙げることができる。48V系補機97は、電動圧縮機42、及び循環ポンプ67を含む。
【0049】
充電状態検出部98は、第1蓄電装置96の充電状態を検出する。充電状態検出部98は、例えば、バッテリマネジメントシステムである。充電状態検出部98は、センサと、センサの検出結果から第1蓄電装置96の状態を導出する導出部と、を含む。センサは、例えば、電流センサ及び電圧センサである。導出部は、センサの検出結果から第1蓄電装置96の充電率を導出可能である。充電率の導出手法としては、例えば、第1蓄電装置96の開回路電圧を用いる手法、電流積算法、あるいは、これらの組み合わせを挙げることができる。
【0050】
第2蓄電装置99は、第2DC/DCコンバータ95に接続されている。第2蓄電装置99は、第2DC/DCコンバータ95に対して12V系補機100と並列に接続されている。第2DC/DCコンバータ95からの出力電力が12V系補機100の消費電力を上回っている場合、第2蓄電装置99は余剰の電力によって充電される。第2DC/DCコンバータ95からの出力電力が12V系補機100の消費電力を下回っている場合、第2蓄電装置99は放電を行う。第2蓄電装置99としては、充放電可能であれば、どのようなものを用いてもよい。第2蓄電装置99としては、例えば、二次電池及びキャパシタを挙げることができる。12V系補機100は、第1バルブ51、及び第2バルブ52を含む。
【0051】
制御装置110は、プロセッサ111と、記憶部112と、を備える。記憶部112は、RAM(Random Access Memory)、及びROM(Read Only Memory)を含む。記憶部112は、処理をプロセッサ111に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部112、即ち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置110は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置110は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0052】
<制御装置が行う第1DC/DCコンバータの制御>
制御装置110は、第1DC/DCコンバータ81を制御する。制御装置110は、燃料電池スタック21の出力電圧が第1蓄電装置96の電圧よりも低い場合、第1DC/DCコンバータ81によって燃料電池スタック21の出力電圧を昇圧する。燃料電池スタック21の出力電圧が第1蓄電装置96の電圧よりも高い場合、制御装置110は、スイッチング素子Q1~Q6のスイッチング動作を行わない。この場合、上アームを構成するスイッチング素子Q1,Q3,Q5の寄生ダイオードとなるダイオードD1,D3,D5から電流が流れる。ダイオードD1,D3,D5によって燃料電池スタック21の出力電圧を降圧することができる。
【0053】
<制御装置が行う発電に関する制御>
制御装置110は、燃料電池スタック21の出力電力[kW]を制御する。燃料電池スタック21の出力電力は、燃料電池スタック21に供給されるカソードガスの量と、燃料電池スタック21に供給されるアノードガスの量と、によって変化する。燃料電池スタック21の出力電力は、燃料電池スタック21の発電電力である。制御装置110は、アノードガス供給部63を制御することで燃料電池スタック21へのアノードガスの供給量を制御する。制御装置110は、電動圧縮機42を制御することで燃料電池スタック21へのカソードガスの供給量を制御する。
【0054】
図4に示すように、制御装置110は、第1蓄電装置96の充電率に応じて、燃料電池スタック21の発電モードを段階的に切り替える。本実施形態の発電モードは、発電停止モードST1、低発電モードST2、中発電モードST3、及び高発電モードST4を含む。発電停止モードST1、低発電モードST2、中発電モードST3、及び高発電モードST4には、それぞれ、燃料電池スタック21の出力電力の目標値[kW]が対応付けられている。制御装置110は、発電モードを切り替えることで、燃料電池スタック21の出力電力の目標値を設定する。
【0055】
発電停止モードST1は、燃料電池スタック21の発電を行わないモードである。発電停止モードST1での出力電力の目標値は、0[kW]である。
低発電モードST2は、燃料電池スタック21の発電を行うモードである。低発電モードST2での燃料電池スタック21の出力電力の目標値を低出力電力とする。低出力電力は、例えば、3[kW]である。
【0056】
中発電モードST3は、低発電モードST2よりも燃料電池スタック21の出力電力を大きくするモードである。中発電モードST3での燃料電池スタック21の出力電力の目標値を中出力電力とする。中出力電力は、低出力電力よりも大きい値である。中出力電力は、例えば、6[kW]である。
【0057】
高発電モードST4は、産業車両10が最大負荷で動作する際の要求電力を燃料電池スタック21に発電させるモードである。高発電モードST4での燃料電池スタック21の出力電力の目標値を高出力電力とする。高出力電力は、中出力電力よりも大きい値である。高出力電力は、例えば、12[kW]である。
【0058】
燃料電池スタック21が発電停止モードST1の際に、第1蓄電装置96の充電率が発電開始閾値VD以下になった場合、制御装置110は、燃料電池スタック21を低発電モードST2に遷移させる。発電開始閾値VDとしては、例えば、50[%]を挙げることができる。
【0059】
燃料電池スタック21が低発電モードST2の際に、第1蓄電装置96の充電率が中発電切替閾値VM以下になった場合、制御装置110は、燃料電池スタック21を中発電モードST3に遷移させる。中発電切替閾値VMとしては、例えば、45[%]を挙げることができる。
【0060】
燃料電池スタック21が中発電モードST3の際に、第1蓄電装置96の充電率が高発電切替閾値VH以下になった場合、制御装置110は、燃料電池スタック21を高発電モードST4に遷移させる。高発電切替閾値VHとしては、例えば、30[%]を挙げることができる。
【0061】
燃料電池スタック21が高発電モードST4の際に、第1蓄電装置96の充電率が中発電切替閾値VM以上になった場合、制御装置110は、燃料電池スタック21を中発電モードST3に遷移させる。
【0062】
燃料電池スタック21が中発電モードST3の際に、第1蓄電装置96の充電率が低発電切替閾値VL以上になった場合、制御装置110は、燃料電池スタック21を低発電モードST2に遷移させる。低発電切替閾値VLとしては、例えば、60[%]を挙げることができる。
【0063】
燃料電池スタック21が低発電モードST2の際に、第1蓄電装置96の充電率が発電停止閾値VS以上になった場合、制御装置110は、燃料電池スタック21を発電停止モードST1に遷移させる。発電停止閾値VSとしては、例えば、70[%]を挙げることができる。
【0064】
制御装置110は、フィードフォワード制御と、フィードバック制御とを併用して、燃料電池スタック21の出力電力を制御する。フィードバック制御としてPI制御を用いる場合を例に挙げて説明するが、フィードバック制御としてPID制御を用いてもよい。
【0065】
制御装置110は、上記した発電モードによって燃料電池スタック21の出力電力の目標値を設定すると、第1電流指令値[A]を算出する。第1電流指令値は、例えば、燃料電池スタック21の電流-電圧特性、及びフォードフォワードゲインから算出される。
【0066】
制御装置110は、燃料電池スタック21の出力電圧と燃料電池スタック21の出力電流から燃料電池スタック21の出力電力を算出する。制御装置110は、燃料電池スタック21の出力電力と燃料電池スタック21の出力電力の目標値との偏差を算出する。制御装置110は、偏差、比例ゲイン及び積分ゲインから第2電流指令値[A]を算出する。制御装置110は、第1電流指令値と第2電流指令値との和を電流指令値[A]とする。制御装置110は、燃料電池スタック21の出力電流が電流指令値に追従するように燃料電池システム20の制御を行う。これにより、燃料電池スタック21の出力電力が目標値に追従するように燃料電池スタック21の制御が行われる。
【0067】
<フラッディング解消制御及び発電抑制制御>
制御装置110は、フラッディング解消制御及び発電抑制制御を行う。
フラッディング解消制御は、燃料電池スタック21にフラッディングが発生しているおそれがある場合に、フラッディングを解消するために行われる制御である。フラッディングは、カソード側触媒層27、カソード側マイクロポーラス層28、及びカソード側拡散層29が液水で覆われることによってカソード側触媒層27へのカソードガスの供給が阻害される現象である。発電抑制制御は、燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を低下させる制御である。
【0068】
図5に示すように、制御装置110は、通常状態ST10、第1解消状態ST11、第2解消状態ST12、モードダウン状態ST13、及び停止状態ST14のいずれかの状態になる。制御装置110は、燃料電池システム20の動作中には、通常状態ST10、第1解消状態ST11、第2解消状態ST12、及びモードダウン状態ST13のいずれかの状態になる。制御装置110は、状態に応じた制御を行う。第1解消状態ST11、及び第2解消状態ST12で制御装置110が行う制御がフラッディング解消制御である。モードダウン状態ST13で制御装置110が行う制御が、発電抑制制御である。
【0069】
通常状態ST10は、燃料電池スタック21の出力電力の目標値に応じて制御装置110が通常の制御を行う状態である。制御装置110は、燃料電池スタック21の出力電力が目標値に追従するように、フィードバック制御によってアノードガスの供給量、カソードガスの供給量、及びカソードガスの圧力を調整する。
【0070】
第1解消状態ST11は、制御装置110が開度増大制御及び禁止制御を行う状態である。開度増大制御は、第2バルブ52の開度を大きくすることによってフラッディングを解消する制御である。制御装置110は、制御装置110が通常状態ST10の場合に第2バルブ52が取り得る開度の最大値よりも第2バルブ52の開度を大きくする。本実施形態において、制御装置110は、第2バルブ52を全開にする。禁止制御は、燃料電池スタック21の出力電力をフィードバック制御によって調整することを禁止する制御である。この場合、制御装置110は、フィードフォワード制御によって電流指令値を算出する。
【0071】
第2解消状態ST12は、制御装置110が流量増加制御及び禁止制御を行う状態である。流量増加制御は、燃料電池スタック21に供給されるカソードガスの流量を増加させることでフラッディングを解消する制御である。制御装置110は、電動圧縮機42を制御することで通常状態ST10の場合に比べてカソードガスの流量を増加させる。本実施形態において、第2解消状態ST12では、開度増大制御も行われる。
【0072】
モードダウン状態ST13は、燃料電池スタック21が遷移可能な発電モードに上限を設定する状態である。発電モードに上限が設定されていない状態で制御装置110がモードダウン状態ST13に遷移すると、発電モードの上限として中発電モードST3が設定される。発電モードの上限として中発電モードST3が設定されている状態で制御装置110がモードダウン状態ST13に遷移すると、発電モードの上限として低発電モードST2が設定される。これにより、上限として設定された発電モードに対応付けられた出力電力の目標値が、出力電力の目標値の上限値となる。例えば、発電モードの上限が設定されていない状態から発電モードの上限として中発電モードST3が設定されると、燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値は高出力電力から中出力電力になる。このように、発電モードの上限を設定することによって燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を低下させることができる。モードダウン状態ST13では、発電モードの上限として低発電モードST2より低い発電モードは設定されない。発電モードの上限として低発電モードST2が設定されている状態で制御装置110がモードダウン状態ST13に遷移すると、低発電モードST2が維持される。本実施形態において、モードダウン状態ST13では、開度増大制御、流量増加制御、及び禁止制御が行われてもよい。
【0073】
停止状態ST14は、燃料電池システム20を停止させる状態である。停止状態ST14では、燃料電池スタック21の発電が行われない。制御装置110は、停止状態ST14に遷移すると、モードダウン状態ST13に遷移することによって低下した、燃料電池スタック21における出力電力の上限値の目標値を元に戻す。これにより、発電モードに設定された上限が解除されることになる。
【0074】
制御装置110が通常状態ST10の際に、平均セル電圧が第1閾値以下になると、制御装置110は、第1解消状態ST11に遷移する。平均セル電圧は、複数の燃料電池セル22の電圧の平均値である。平均セル電圧は、全ての燃料電池セル22の電圧の平均値であってもよいし、全ての燃料電池セル22のうち代表的な燃料電池セル22の電圧の平均値であってもよい。平均セル電圧は、燃料電池セル22の電圧の一例である。
【0075】
第1閾値は、燃料電池スタック21にフラッディングが生じているおそれがあることを判定するための閾値である。燃料電池スタック21にフラッディングが生じている場合、燃料電池セル22の電圧が低下する。第1閾値は、燃料電池スタック21にフラッディングが生じている際に燃料電池セル22の電圧が取り得る値に基づいて決定されている。第1閾値は、例えば、0.4[V]である。
【0076】
制御装置110が第1解消状態ST11に遷移すると、制御装置110は、第1解消状態ST11を第1所定時間維持する。第1所定時間は、第1解消状態ST11によってフラッディングが解消するか否かを判定するために要する時間である。第1所定時間としては、例えば、4~10[sec]の間で任意に設定することができる。第1所定時間が経過した後に、平均セル電圧が第2閾値以上の場合、制御装置110は、通常状態ST10に遷移する。第2閾値は、第1閾値より大きい値である。第2閾値は、燃料電池スタック21のフラッディングが解消されたか否かを判定するための値である。第2閾値は、例えば、0.6[V]である。制御装置110は、フラッディング解消制御によって平均セル電圧が第2閾値以上になった場合、フラッディング解消制御を停止させ、通常状態ST10に移行することになる。第1所定時間が経過した後に、平均セル電圧が第2閾値未満の場合、制御装置110は、第2解消状態ST12に遷移する。これにより、制御装置110は、開度増大制御を行った後に平均セル電圧が第2閾値以上にならなかった場合、流量増加制御を行う。
【0077】
制御装置110が第2解消状態ST12に遷移すると、制御装置110は、第2解消状態ST12を第2所定時間維持する。第2所定時間は、第2解消状態ST12によってフラッディングが解消するか否かを判定するために要する時間である。第2所定時間としては、例えば、4~10[sec]の間で任意に設定することができる。第2所定時間は、第1所定時間と同一の時間であってもよいし、第1所定時間とは異なる時間であってもよい。第2所定時間が経過した後に、平均セル電圧が第2閾値以上の場合、制御装置110は、通常状態ST10に遷移する。制御装置110は、フラッディング解消制御によって平均セル電圧が第2閾値以上になった場合、フラッディング解消制御を停止させ、通常状態ST10に移行することになる。第2所定時間が経過した後に、平均セル電圧が第2閾値未満の場合、制御装置110は、モードダウン状態ST13に遷移する。これにより、制御装置110は、流量増加制御を行った後に平均セル電圧が第2閾値以上にならなかった場合、燃料電池スタック21における出力電力の目標値を低下させる。
【0078】
制御装置110がモードダウン状態ST13の際に、平均セル電圧が第2閾値未満の場合、制御装置110は、第1解消状態ST11に遷移する。制御装置110がモードダウン状態ST13の際に、平均セル電圧が第2閾値以上の場合、制御装置110は、通常状態ST10に遷移する。
【0079】
制御装置110が通常状態ST10の際に、キーオフが行われると、制御装置110は、停止状態ST14に遷移する。制御装置110は、キーオフを動作停止指令として、動作停止指令を受けると、停止状態ST14に遷移する。
【0080】
[本実施形態の作用]
制御装置110は、平均セル電圧が第1閾値以下の場合、フラッディング解消制御を行う。燃料電池セル22の電圧低下の原因がフラッディングの場合、フラッディング解消制御により平均セル電圧が第2閾値以上になる。本実施形態において、制御装置110は、第1解消状態ST11で開度増大制御及び禁止制御を行う。第1解消状態ST11でも平均セル電圧が第2閾値以上にならない場合、制御装置110は第2解消状態ST12で流量増加制御及び禁止制御を行う。
【0081】
燃料電池セル22の電圧低下の原因がフラッディングではない場合、フラッディング解消制御を行っても平均セル電圧が第2閾値以上にならない場合がある。例えば、電動圧縮機42から燃料電池スタック21にカソードガスとともに有機溶剤が供給されると、カソード側触媒層27に有機溶剤が付着する化学吸着が生じるおそれがある。化学吸着は、燃料電池セル22の電圧が低下する原因になる。化学吸着は、フラッディング解消制御を行っても解消することができない。化学吸着は、燃料電池セル22の電圧を低下させることが繰り返し行われると解消する。従って、燃料電池システム20を運用することによって燃料電池セル22の電圧変動が繰り返されることで、自ずと化学吸着は解消する。
【0082】
フラッディング解消制御を行っても平均セル電圧が第2閾値以上にならない場合、化学吸着を原因として燃料電池セル22の電圧低下が発生している可能性が高い。従って、フラッディング解消制御を行っても平均セル電圧が第2閾値以上にならない場合、制御装置110は、発電モードに上限を設定することによって燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を低下させる。
【0083】
[本実施形態の効果]
(1)制御装置110は、フラッディング解消制御によって平均セル電圧が第2閾値以上にならなかった場合、燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を低下させる。平均セル電圧が第2閾値以上にならないにも関わらず出力電力の目標値を高くすると、燃料電池セル22の劣化の原因となるおそれがある。燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を低下させることで、平均セル電圧が第1閾値以下であっても燃料電池システム20を運用することができる。
【0084】
(2)フラッディング解消制御は、開度増大制御、流量増加制御、及び禁止制御を含む。
開度増大制御を行うと、第2バルブ52の開度が大きくなる。第2バルブ52の開度が小さい場合、液水が第2バルブ52を通過しにくい。電動圧縮機42からのカソードガスの供給量は、燃料電池セル22の数が多いほど多くなる。一方で、燃料電池スタック21に求められるカソードガスの圧力は、燃料電池セル22の数によって変化しない。燃料電池セル22の数が少ない燃料電池スタック21では、カソードガスの供給量が少ない分、第2バルブ52の開度を小さくしてカソードガスの圧力を上昇させる必要がある。このため、燃料電池セル22の数が少ないほど、燃料電池システム20での排水不良が生じやすい。開度増大制御が行われると、第2バルブ52の開度が大きくなることで液水が第2バルブ52を通過しやすくなる。このため、フラッディングを解消することができる。
【0085】
流量増加制御を行うと、電動圧縮機42から燃料電池スタック21に供給されるカソードガスの流量が増加する。これにより、燃料電池スタック21から液水が排出されやすくなる。このため、フラッディングを解消することができる。
【0086】
禁止制御を行うと、フィードバック制御が禁止される。平均セル電圧が低下している状態でフィードバック制御を行うと、出力電力を維持するために電流指令値が過剰に大きくなるおそれがある。禁止制御を行うことによって電流指令値が過剰に大きくなることを抑制できる。
【0087】
また、第1DC/DCコンバータ81は、ダイオードD1,D3,D5によって燃料電池スタック21の出力電圧を降圧している。流量増加制御によってカソードガスの流量が多くなると、燃料電池スタック21の出力電圧が高くなることで第1DC/DCコンバータ81での降圧比が高くなるおそれがある。降圧比が高くなると、電流が大きくなることを原因として燃料電池スタック21で生成される水の量が多くなる。フィードバック制御が禁止されていることで、この際に、更に電流が大きくなることが抑制され、燃料電池スタック21で生成される水の量が多くなることを抑制できる。
【0088】
(3)制御装置110は、開度増大制御を行った後に平均セル電圧が第2閾値以上にならなかった場合、流量増加制御を行う。制御装置110は、流量増加制御を行った後に平均セル電圧が第2閾値以上にならなかった場合、燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を低下させる。開度増大制御によって平均セル電圧が第2閾値以上になった場合、流量増加制御は行われない。流量増加制御を行うと、電動圧縮機42で発生する音が大きくなることで静音性が低下する。流量増加制御よりも先に開度増大制御を行うことによって、開度増大制御でフラッディングが解消した場合には、流量増加制御を行わなくてもよい。このため、静音性の低下を抑制できる。
【0089】
(4)制御装置110は、フラッディング解消制御によって平均セル電圧が第2閾値以上にならなかった場合、燃料電池セル22の電圧を低下させる。例えば、キーオフによって制御装置110が停止状態ST14になると、燃料電池スタック21の発電が行われなくなることによって燃料電池セル22の電圧が低下する。これにより、化学吸着の解消を促進できる。
【0090】
(5)制御装置110は、キーオフによって、燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を元に戻す。化学吸着が解消されていない場合には、キーオンの後に、再度、燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値が低下されることによって、平均セル電圧が第1閾値以下であっても燃料電池システム20を運用することができる。化学吸着が解消された場合には、キーオンの後は、燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値が元に戻された状態で燃料電池システム20を運用できる。
【0091】
(6)フラッディング解消制御を行うことによってフラッディングを解消している。このため、フラッディングを解消するために、電動圧縮機42等の補機が肥大化することを抑制できる。
【0092】
[変更例]
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0093】
○制御装置110が燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を元に戻す契機は、任意に設定することができる。例えば、制御装置110は、一定期間毎に、燃料電池スタック21における出力電力の目標値の上限値を元に戻してもよい。
【0094】
○制御装置110は、フラッディング解消制御によって平均セル電圧が第2閾値以上にならなかった場合、燃料電池スタック21へのアノードガスの供給量やカソードガスの供給量を調整することによって燃料電池セル22の電圧を低下させてもよい。
【0095】
○開度増大制御と流量増加制御とは、同一のタイミングで実行されるようにしてもよい。また、流量増加制御が開度増大制御よりも先に行われてもよい。
○フラッディング解消制御は、流量増加制御及び禁止制御が実行される制御であってもよい。フラッディング解消制御は、開度増大制御及び禁止制御が実行される制御であってもよい。
【0096】
○制御装置110は、燃料電池スタック21における出力電力の目標値を連続的に変化させるようにしてもよい。
○発電モードは、4つ以上のモードを備えていてもよい。発電モードは、3つのモードを備えていてもよい。
【0097】
○制御装置110は、車両負荷11、48V系補機97、及び12V系補機100の要求電力に応じて燃料電池スタック21における出力電力の目標値を設定してもよい。
○第1閾値、及び第2閾値との比較を行う燃料電池セル22の電圧として、最低セル電圧、最高セル電圧、又は中央セル電圧を用いてもよい。最低セル電圧は、複数の燃料電池セル22のうち最も電圧が低い燃料電池セル22の電圧である。最高セル電圧は、複数の燃料電池セル22のうち最も電圧が高い燃料電池セル22の電圧である。中央セル電圧は、複数の燃料電池セル22のうち電圧が中央値となる燃料電池セル22の電圧である。
【0098】
○動作停止指令は、燃料電池システム20に異常が発生した場合に燃料電池システム20を強制的に停止させる指令など、燃料電池システム20を停止させる際に出力される指令であればよい。
【0099】
○燃料電池システム20は、乗用車、船舶、鉄道などに搭載されていてもよい。
○燃料電池システム20は、定置式の発電装置として用いられてもよい。
【符号の説明】
【0100】
20…燃料電池システム、21…燃料電池スタック、22…燃料電池セル、52…調整弁である第2バルブ、85…電圧測定部、110…制御装置。