(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109404
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】光学ガラスおよび光学素子
(51)【国際特許分類】
C03C 3/068 20060101AFI20240806BHJP
G02B 1/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014178
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】庄司 昂浩
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
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(57)【要約】
【課題】 高屈折率・低分散であって、幅広い温度環境に使用できる光学ガラス、ならびに前記光学ガラスからなる光学素子を提供すること。
【解決手段】 カチオン%表示において、B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]が1/3以上であり、Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]が0.62以上であり、Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]が8/9以上であり、Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]が13.00カチオン%以下であり、La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]が36カチオン%以上であり、Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、Bi3+の合計含有量とY3+の含有量とのカチオン比[(Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/Y3+]が2.0以下である、光学ガラス。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン%表示において、
B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]が1/3以上であり、
Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]が0.62以上であり、
Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]が8/9以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]が13.00カチオン%以下であり、
La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]が36カチオン%以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、Bi3+の合計含有量とY3+の含有量とのカチオン比[(Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/Y3+]が2.0以下である、光学ガラス。
【請求項2】
カチオン%表示において、
B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]が1/3以上であり、
Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]が0.62以上であり、
Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]が8/9以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]が13.00カチオン%以下であり、
La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]が36カチオン%以上であり、
La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量と、B3+の含有量、Si4+の含有量の2倍、Al3+の含有量の合計とのカチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/{B3++(2×Si4+)+Al3+}]が0.360以上である、光学ガラス。
【請求項3】
酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量をそれぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とし、
SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、
YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とし、
A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}、
B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}、
C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}、
D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)、
E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}、
F1={C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)}/{C(Y2O3)/M(YO1.5)}とするとき、
A1が1/3以上であり、
B1が0.62以上であり、
C1が8/9以上であり、
D1が13.50以下であり、
E1が1.25以上であり、
F1が2.0以下である、光学ガラス。
【請求項4】
酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量をそれぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とし、
SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とし、
A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}、
B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}、
C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}、
D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)、
E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}、
G1=C(BaO)/M(BaO)+C(La2O3)/M(LaO1.5)+C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Y2O3)/M(YO1.5)とするとき、
A1が1/3以上であり、
B1が0.62以上であり、
C1が8/9以上であり、
D1が13.50以下であり、
E1が1.25以上であり、
G1が0.47以上である、光学ガラス。
【請求項5】
-30~70℃における平均線膨張係数αLが0.80×10-5℃-1以上である、請求項1~4のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスおよび光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズやプリズムといった光学素子は、単独で使われることは少なく、通常、複数の光学素子を組み合わせて用いる。光学機器では、それらの光学素子を他の部材で固定・担持し、あるいは接着・接合して使われる。
【0003】
例えば一眼レフカメラといった人間が操作する光学機器は、室温環境に置かれることが多い。一方で、例えばセキュリティカメラ、車載カメラ、ドローンに搭載されるカメラなどは、より過酷な高温あるいは低温環境のもとでの使用が想定される。
【0004】
これまで、光学ガラスでは、温度範囲100~300℃または20~300℃といった、室温よりも高い温度環境での膨張係数が注目されてきた。しかし、上述した実際の使用環境を考慮すると、より低温域での膨張係数にも注目する必要がある。
【0005】
一般に、光学ガラスの-30~70℃における平均線膨張係数αLは、およそ1×10-5℃-1程度のオーダーである。これは、光学機器に用いられる他の部材よりも小さい値である。そのため、このような光学ガラスを光学素子として光学機器に用いる場合、光学素子と他の部材との平均線膨張係数の差が大きくなって、温度環境によっては光学素子の固定や接合が不十分となるおそれがあった。
【0006】
また、レンズやプリズムといった光学素子単独の特性に注目した場合であっても、ガラスの平均線膨張係数αLの大きさが光学素子の結像性能に影響を及ぼすことがある。
たとえば、光学ガラスと同一温度の空気中における屈折率の温度係数である相対屈折率の温度係数dn/dTrel.(以下、単にdn/dTと表記する。)を決める因子には膨張係数も含まれている。そのため、ガラスの膨張係数の変化によっても、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の数値が変化する。
【0007】
ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)が光学素子の結像性能に与える一例として、温度環境や使用条件によって光学素子自体の温度が変化する光学系、たとえば前述のセキュリティカメラ、車載カメラのほか、レーザを用いた光学系において、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)が大きい場合、温度による屈折率の変化が大きくなり、温度の変化とともに焦点距離が変化することである。
【0008】
さらに、温度ごとにガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)が異なる場合、ガラスの単位温度変化あたりの焦点距離のずれ量が、使用温度によって変化する。したがって、精密な光学設計を行うためには、使用温度別に異なる焦点距離のずれ量を受光素子側で調整する必要があり、装置の機構の複雑化が懸念される。
【0009】
従来、-30~70℃における平均線膨張係数αLが比較的大きなガラスとしては、低屈折率・低分散の弗リン酸ガラスや、低屈折率・高分散のSiO2-TiO2/Nb2O5系のガラスが知られている。そして、これらのガラスからなる光学素子を組み合わせることで、色収差を補正できることも知られている。
【0010】
しかし、例えばドローンや車載カメラのように、光学素子の質量あるいは占有体積をなるべく小さくすることを要求される場合には、光学素子の搭載枚数が著しく制限され、上
記のような平均線膨張係数αLが比較的大きな高分散のガラスを使うことができない。そのため、高屈折率・低分散の光学素子に主な集光特性を担わせ、残存色収差を低屈折・低分散の光学素子で除去するような光学設計が求められている。
【0011】
高屈折率・低分散の光学ガラスは、光学ガラスの中では比較的新しいガラスである。それ以前から存在していた高屈折率・高分散の光学ガラスでは、高屈折率に寄与するガラス成分の含有量を増加させて屈折率を高めていた。一方、高屈折率・低分散の光学ガラスでは、ガラスの単位体積当たりの密度、とりわけ分極率・屈折率の増加に寄与する酸素の密度を増加させることによって、高屈折率かつ低分散化を図っている。
【0012】
このため、一般に高屈折率・低分散の光学ガラスは、ガラスの構造の自由度は低く、また強固な原子構造を持つので、平均線膨張係数αLは0.5×10-5℃~0.7×10-5℃-1程度と小さくなる傾向にある。つまり、光学ガラスでは、高屈折率・低分散にしようとすると平均線膨張係数αLがより小さくなるといったトレードオフの関係が生じ、高屈折率・低分散特性と高い平均線膨張係数αLとが両立しにくいといった問題があった。
【0013】
特許文献1、2には、温度範囲100~300℃における平均線膨張係数の開示はあるが、-30~70℃における平均線膨張係数αLの開示はなく、平均線膨張係数αLについては何ら検討もされていない。
【0014】
特許文献3、4には、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を制御するための技術が提案されているが、ガラスの膨張係数を制御する技術について何ら開示はない。またガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性を制御することについての開示もない。そのため、特許文献3、4によっても、平均線膨張係数αLの高い光学ガラスや、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性が小さな光学ガラスを得ることは困難であった。
【0015】
このような背景から、高屈折率・低分散であって、平均線膨張係数αLが比較的大きく、幅広い温度環境で使用できる光学ガラスが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】中国特許出願公開第110590155号公報
【特許文献2】中国特許出願公開第110963702号公報
【特許文献3】特開第2019-11232号公報
【特許文献4】特開第2018-203605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
そこで、本発明は、高屈折率・低分散であって、幅広い温度環境で使用できる光学ガラス、ならびに前記光学ガラスからなる光学素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
発明者らは、ガラス組成の調整によって高屈折率・低分散であっても平均線膨張係数αLを一定の大きさ以上に制御できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0019】
本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)カチオン%表示において、
B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]が1/3以上であり、
Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]が0.62以上であり、
Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]が8/9以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]が13.00カチオン%以下であり、
La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]が36カチオン%以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびBi3+の合計含有量とY3+の含有量とのカチオン比[(Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/Y3+]が2.0以下である、光学ガラス。
【0020】
(2)カチオン%表示において、
B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]が1/3以上であり、
Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]が0.62以上であり、
Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]が8/9以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]が13.00カチオン%以下であり、
La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]が36カチオン%以上であり、
La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量と、B3+の含有量、Si4+の含有量の2倍、Al3+の含有量の合計とのカチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/{B3++(2×Si4+)+Al3+}]が0.360以上である、光学ガラス。
【0021】
(3)酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量をそれぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とし、
SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とし、
A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}、
B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}、
C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}、
D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)、
E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}、
F1={C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)}/{C(Y2O3)/M(YO1.5)}とするとき、
A1が1/3以上であり、
B1が0.62以上であり、
C1が8/9以上であり、
D1が13.50以下であり、
E1が1.25以上であり、
F1が2.0以下である、光学ガラス。
【0022】
(4)酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量をそれぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とし、
SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とし、
A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}、
B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)
}、
C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}、
D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)、
E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}、
G1=C(BaO)/M(BaO)+C(La2O3)/M(LaO1.5)+C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Y2O3)/M(YO1.5)とするとき、
A1が1/3以上であり、
B1が0.62以上であり、
C1が8/9以上であり、
D1が13.50以下であり、
E1が1.25以上であり、
G1が0.47以上である、光学ガラス。
【0023】
(5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高屈折率・低分散であって、幅広い温度環境に使用できる光学ガラス、ならびに前記光学ガラスからなる光学素子を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。第1実施形態および第2実施形態では、カチオン%表示でのガラス組成に基づいて本発明に係る光学ガラスを説明する。したがって、第1、2実施形態では、ガラス成分の含有量および合計含有量は、特記しない限り、「%」は「カチオン%」を意味する。
【0026】
カチオン%とは、全てのカチオン成分の含有量の合計を100%としたときのモル百分率である。また、合計含有量とは、複数種のカチオン成分の含有量(含有量が0%である場合も含む)の合計量をいう。また、カチオン比とは、カチオン%における、カチオン成分同士の含有量(複数種のカチオン成分の合計含有量も含む)の割合(比)をいう。
【0027】
なお、アニオン%とは、全てのアニオン成分の含有量の合計を100%としたときのモル百分率である。
【0028】
カチオン成分の価数(例えばB3+の価数は+3、Si4+の価数は+4、La3+の価数は+3)は、慣習により定まった値であり、ガラス成分としてのB、Si、Laを酸化物基準で表記する際、B2O3、SiO2、La2O3と表記するのと同様である。したがって、ガラス組成を分析する際、カチオン成分の価数まで分析しなくてもよい。また、アニオン成分の価数(例えばO2-の価数が-2)も慣習により定まった値であり、上記のように酸化物基準におけるガラス成分を、例えばB2O3、SiO2、La2O3と表記するのと同様である。したがって、ガラス組成を分析する際、アニオン成分の価数まで分析しなくてもよい。
【0029】
また、第3実施形態および第4実施形態では、質量%表示でのガラス組成に基づいて本発明に係る光学ガラスを説明する。第3、4実施形態において、光学ガラスのガラス組成は、特記しない限り、酸化物基準のガラス組成で表示する。ここで「酸化物基準のガラス組成」とは、ガラス原料が熔融時にすべて分解されて光学ガラス中で酸化物として存在するものとして換算することにより得られるガラス組成をいい、各ガラス成分の表記は慣習にならい、SiO2、TiO2などと記載する。また、質量比とは、質量%における、酸化物成分同士の含有量(複数種の酸化物成分の合計含有量も含む)の割合(比)をいう。第3、4実施形態では、ガラス成分の含有量および合計含有量は、特記しない限り質量基準であり、「%」は「質量%」を意味する。
【0030】
ガラス成分の含有量は、公知の方法、例えば、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)等の方法で定量することができる。また、本明細書および本発明において、構成成分の含有量が0%とは、この構成成分を実質的に含まないことを意味し、該成分が不可避的不純物レベルで含まれることを許容する。
【0031】
本明細書では、屈折率は、特記しない限り、ヘリウムのd線(波長587.56nm)における屈折率ndをいう。
【0032】
アッベ数νdは、分散に関する性質を表す値として用いられるものであり、以下の式で表される。ここで、nFは青色水素のF線(波長486.13nm)における屈折率、nCは赤色水素のC線(656.27nm)における屈折率である。
νd=(nd-1)/(nF-nC) ・・・(1)
【0033】
以下、第1~4実施形態について順に詳細に説明する。
【0034】
第1実施形態
カチオン%表示において、
B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]が1/3以上であり、
Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]が0.62以上であり、
Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]が8/9以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]が13.00カチオン%以下であり、
La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]が36カチオン%以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびBi3+の合計含有量とY3+の含有量とのカチオン比[(Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/Y3+]が2.0以下である、光学ガラス。
【0035】
第1実施形態において、B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]は1/3以上である。該カチオン比の下限は、好ましくは1.1/3であり、さらには1.2/3、1.3/3、1.4/3、1.5/3、1.6/3、1.7/3、1.8/3、1.9/3の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは3.0/3であり、さらには2.9/3、2.8/3、2.7/3、2.6/3、2.5/3、2.4/3、2.3/3の順により好ましい。
【0036】
カチオン比[B3+/(B3++Si4+)]を上記範囲とすることで、-30~70℃における平均線膨張係数αLの大きい、低分散の光学ガラスを得ることができる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。さらに、La3+を多量に含有させる場合でもガラスの熱的安定性の低下を抑制できる。一方、該カチオン比が小さすぎると、屈折率ndを高め、平均線膨張係数αLの低下を防ぐガラス成分であるLa3+およびY3+を多量に含む場合にガラスが不安定になるおそれがある。また、該カチオン比が大きすぎると、ガラスの安定性、化学的耐久性、および機械的特性が低下するおそれがある。
【0037】
第1実施形態において、Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]は0.62以上である。該カチオン比の下限は、好ましくは0.63であり、さらには0.65、0.67、0.69、0.71、0.73、0.75、0.77、0.79、0.81、0.83、0.85、0.87の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.99、0.98の順により好ましい。該カチオン比は1.00であってもよい。
【0038】
カチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率の光学ガラスが得られる。また、平均線膨張係数αLを大きくしつつ熱的安定性の低下を抑制できる。一方、該カチオン比が小さすぎると、平均線膨張係数αLおよび屈折率ndが低下し、ガラスの安定性が損なわれるおそれがある。
【0039】
第1実施形態において、Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]は8/9以上である。該カチオン比の下限は、好ましくは8.2/9であり、さらには8.4/9、8.6/9、8.8/9、9.0/9、9.2/9、9.4/9、9.5/9の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは27/9であり、さらには25/9、23/9、21/9、19/9、17/9、15/9、13/9、12/9の順により好ましい。
【0040】
カチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。一方、該カチオン比が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、該カチオン比が大きすぎるとガラスの安定性が低下するおそれがある。
【0041】
第1実施形態において、Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]は13.00%以下である。該合計含有量の上限は、好ましくは12.50%であり、さらには12.00%、11.50%、11.00%、10.50%、10.00%、9.50%、9.00%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1.00%、2.00%、3.00%、4.00%、5.00%、6.00%、7.00%、8.00%の順により好ましい。該合計含有量は0%であってもよい。
【0042】
合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、また高分散化を抑制することにより高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。さらに、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を増大させない効果もある。該合計含有量は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、該合計含有量を0より大きくすることもできる。一方、該合計含有量が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0043】
第1実施形態において、La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]は36%以上である。該合計含有量の下限は、好ましくは38%であり、さらには40%、41%、42%、43%、44%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは55%であり、さらには54%、53%、52%、51%、50%、49%、48%、47%の順により好ましい。
【0044】
合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を増大させない効果もある。一方、該合計含有量が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、該合計含有量が大きすぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0045】
第1実施形態において、Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびBi3+の合計含有量とY3+の含有量とのカチオン比[(Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/Y3+]は2.0以下である。該カチオン比の上限は、好ましくは1.8であり、さらには1.6、1.4、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.6の順により好ましい。また、該カチオン比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.1、0.2、0.3、0.4の順により好ましい。該カチオン比は0であってもよい。
【0046】
カチオン比[(Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/Y3+]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい光学ガラスが得られる。また、ガラスの熱的安定性の低下を抑制できる。該カチオン比は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、該カチオン比を0より大きくすることもできる。一方、該カチオン比が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0047】
第1実施形態において、La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量と、B3+の含有量、Si4+の含有量の2倍、Al3+の含有量の合計とのカチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/{B3++(2×Si4+)+Al3+}]の下限は、好ましくは0.300であり、さらには0.333、0.340、または0.350とすることもでき、高屈折率低分散性を高めるには0.360、0.365、0.370、0.375、0.380、0.390、0.400、0.410、0.420、または0.425とすることもできる。特に、平均線膨張係数αLの増大と高屈折低分散を両立するためには、上記値の下限は0.440、0.450、0.460、0.470、または0.480であることが好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは0.550であり、さらには0.540、0.530、0.520、0.510、0.500、0.490の順により好ましい。
【0048】
ガラスの安定性を確保しながら屈折率の低下を最小限に抑え、高屈折率低分散の光学ガラスを得る観点から、カチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/{B3++(2×Si4+)+Al3+}は上記範囲とすることが好ましい。一方、該カチオン比が大きすぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0049】
第1実施形態に係る光学ガラスにおける上記以外のガラス成分の含有量および比率について、以下に非制限的な例を示す。
【0050】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、B3+およびSi4+の合計含有量の下限は、好ましくは30%であり、さらには35%、37%、39%、41%、43%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは65%であり、さらには63%、61%、59%、57%、55%、53%の順により好ましい。
【0051】
平均線膨張係数αLが大きく、低分散の光学ガラスを得る観点から、B3+およびSi4+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0052】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ba2+およびSr2+の合計含有量の下限は、好ましくは10%であり、さらには11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには28%、26%、24%、23%、22%、21%、20%の順により好ましい。
【0053】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率の光学ガラスを得る観点から、Ba2+およびSr2+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0054】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量の合計含有量の下限は、好ましくは10%であり、さらには11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには28%、26%、24%、23%、22%、21%、20%の順により好ましい。
【0055】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率の光学ガラスを得る観点から、Ba2+およびSr2+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0056】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ba2+およびLi+の合計含有量の下限は、好ましくは10%であり、さらには11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには28%、26%、24%、23%、22%、21%、20%の順により好ましい。
【0057】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、Ba2+およびLi+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0058】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%、19%の順により好ましい。
【0059】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0060】
第1実施形態において、Ba2+の含有量と、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[Ba2+/(Si4++Ti4++Nb5++W6+)]の下限は、好ましくは0.50であり、さらには0.55、0.60、0.65、0,70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは2.00であり、さらには1.95、1.90、1.85、1.80、1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35の順により好ましい。
【0061】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点、および相対屈折率の温度係数(dn/dT)を小さくする観点から、カチオン比[Ba2+/(Si4++Ti4++Nb5++W6+)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0062】
第1実施形態において、Ba2+の含有量と、Si4+、B3+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[Ba2+/(Si4++B3++Ti4++Nb5++W6+)]の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.22、0.24、0.26、0.28、0.30、0.32、0.34、0.36の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.55、0.50、0.48、0.46、0.44、0.42、0.40、0.38の順により好ましい。
【0063】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点、および相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性を小さくする観点から、カチオン比[Ba2+/(Si4++B3++Ti4++Nb5++W6+)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0064】
第1実施形態において、Ba2+、Sr2+およびLi+の合計含有量と、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2++Li+)/(Si4++Ti4++Nb5++W6+)]の下限は、好ましくは0.70であり、さらには0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、0.97、0.98、1.00、1.02,1.04、1.06の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは3.00であり、さらには2.50、2.00、1.70、1.50、1、30の順により好ましい。
【0065】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、カチオン比[(Ba2++Sr2++Li+)/(Si4++Ti4++Nb5++W6+)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0066】
第1実施形態において、Li+、Na+、K+、Cs+、Ca2+、Ba2+、およびSr2+の合計含有量と、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Li++Na++K++Cs++Ca2++Ba2++Sr2+)/(Si4++Ti4++Nb5++W6+)]の下限は、好ましくは0.70であり、さらには0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、0.97、0.98、1.00、1.02、1.04、1.06の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは3.00であり、さらには2.50、2.00、1.70、1.50、1、30の順により好ましい。
【0067】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、カチオン比[(Li++Na++K++Cs++Ca2++Ba2++Sr2+)/(Si4++Ti4++Nb5++W6+)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0068】
第1実施形態において、Zn2+、Gd3+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量[Zn2++Gd3++Ti4++Nb5++W6+]の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、12%、10%、9%、8%、7%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1%、2%、3%、4%、5%、6%の順により好ましい。該合計含有量は0であってもよい。
【0069】
平均線膨張係数αLが大きく、分散の小さい光学ガラスを得る観点から、合計含有量[Zn2++Gd3++Ti4++Nb5++W6+]を上記範囲とすることが好ましい。
【0070】
第1実施形態において、Si4+、Zn2+、Gd3+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量[Si4++Zn2++Gd3++Ti4++Nb5++W6+]の上限は、好ましくは30%であり、さらには28%、26%、24%、22%、20%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには8%、10%、12%、14%、15%の順により好ましい。
【0071】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[Si4++Zn2++Gd3++Ti4++Nb5++W6+]を上記範囲とすることが好ましい。
【0072】
第1実施形態において、Si4+、Zn2+、Gd3+、Zr4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量[Si4++Zn2++Gd3++Zr4++Ti4++Nb5++W6+]の上限は、好ましくは30%であり、さらには28%、26%、24%、22%、20%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには8%、10%、12%、14%、15%の順により好ましい。
【0073】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[Si4++Zn2++Gd3++Zr4++Ti4++Nb5++W6+]を上記範囲とすることが好ましい。
【0074】
第1実施形態において、Al3+、Si4+、Zn2+、Gd3+、Zr4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量[Al3++Si4++Zn2++Gd3++Zr4++Ti4++Nb5++W6+]の上限は、好ましくは30%であり、さらには28%、26%、24%、22%、20%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには8%、10%、12%、14%、15%の順により好ましい。
【0075】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[Al3++Si4++Zn2++Gd3++Zr4++Ti4++Nb5++W6+]を上記範囲とすることが好ましい。
【0076】
第1実施形態において、La3+、Y3+、およびBa2+の合計含有量[La3++Y3++Ba2+]の下限は、好ましくは30%であり、さらには32%、34%、36%、38%、40%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは60%であり、さらには58%、56%、54%、52%、50%、48%の順により好ましい。
【0077】
平均線膨張係数αLの低下が抑制され、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[La3++Y3++Ba2+]を上記範囲とすることが好ましい。
【0078】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびBi3+の合計含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1%、2%、3%、4%、5%、6%の順により好ましい。該合計含有量は0%であってもよい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、12%、10%、9%、8%、7%の順により好ましい。
【0079】
平均線膨張係数αLが大きく、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、Bi3+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0080】
第1実施形態において、La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量の下限は、好ましくは15%であり、さらには16%、17%、18%、19%、20%、21%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには38%、36%、34%、32%、30%、28%の順により好ましい。
【0081】
高屈折率低分散の光学ガラスを得る観点から、La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0082】
第1実施形態において、B3+の含有量、Si4+の含有量の2倍、Al3+の含有量の合計[B3++(2×Si4+)+Al3+]の下限は、好ましくは0.20%であり、さらには0.25%、0.30%、0.35%、0.37%、0.38%の順により好ましい。また、該合計の上限は、好ましくは0.65%であり、さらには0.60%、0.55%、0.53%の順により好ましい。
【0083】
Si4+は特に屈折率を低下させる成分であるため、屈折率をなるべく低下させずに、高屈折率低分散の光学ガラスを得る観点から、合計[B3++(2×Si4+)+Al3+]は上記範囲とすることが好ましい。
【0084】
第1実施形態において、La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量と、B3+、Si4+、およびAl3+の合計含有量とのカチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/(B3++Si4++Al3+)]の下限は、好ましくは0.40であり、さらには0.44、0.46、0.47の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは0.80であり、さらには0.76、0.74、0.70、0.68、0.66の順により好ましい。
【0085】
高屈折率低分散の光学ガラスを得る観点から、カチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/(B3++Si4++Al3+)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0086】
第1実施形態において、B3+、Si4+、およびAl3+の合計含有量の下限は、好ましくは30%であり、さらには35%、38%、40%、41%、42%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは65%であり、さらには60%、58%、56%の順により好ましい。
【0087】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散の光学ガラスを得る観点から、B3+、Si4+、およびAl3+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0088】
第1実施形態において、La3+およびY3+の合計含有量と、B3+およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(La3++Y3+)/(B3++Ba2+)]の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.25、0.30、0.35の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは0.80であり、さらには0.75、0.70、0.65の順により好ましい。
【0089】
高屈折率・低分散であって、平均線膨張係数αLが大きい光学ガラスを得る観点から、カチオン比[(La3++Y3+)/(B3++Ba2+)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0090】
第1実施形態において、Y3+の含有量と、La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量とのカチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3+)]の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.25、0.30、0.35の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは0.70であり、さらには0.67、0.65、0.60の順により好ましい。
【0091】
ガラスの熱的安定性を保持する観点から、カチオン比[Y3+/(La3++Gd3++Y3+)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0092】
第1実施形態において、Y3+の含有量と、Ti4+、La3+、およびY3+の合計含有量とのカチオン比[Y3+/(Ti4++La3++Y3+)]の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.22、0.24、0.26、0.28の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは0.70であり、さらには0.65、0.60、0.55、0.50の順により好ましい。
【0093】
ガラスの高屈折低分散性の向上、熱的安定性の保持、および所望の光学恒数を得る観点から、カチオン比[Y3+/(Ti4++La3++Y3+)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0094】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Si4+の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには5%、7%、9%、10%の順により好ましい。また、Si4+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、18%、16%、15%、14%、13%の順により好ましい。
【0095】
Si4+は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性を改善し、熔融ガラスの粘度を高め、熔融ガラスを成形しやすくする働きを有する。一方、Si4+の含有量が多いと、平均線膨張係数αLが低下するほか、屈折率ndが低下するおそれがある。そのため、Si4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0096】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、B3+の含有量の下限は、好ましくは20%であり、さらには25%、28%、29%、30%、31%、32%の順により好ましい。また、B3+の含有量の上限は、好ましくは50%であり、さらには45%、43%、41%、40%、39%、38%、37%、36%の順により好ましい。
【0097】
B3+は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。また、ネットワーク形成成分の中では、平均線膨張係数αLを低下させない成分である。一方、B3+の含有量が多いと、屈折率ndが低下するおそれがある。そのためB3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0098】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Al3+の含有量の上限は、好ましくは5%であり、さらには4%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Al3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Al3+の含有量は0%でもよい。
【0099】
Al3+は、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有するガラス成分であり、ネットワーク形成成分として考えることができる。一方、Al3+の含有量が多くなると、屈折率ndが低下し、ガラスの熱的安定性および熔融性が低下するおそれがある。そのため、Al3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0100】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、P5+の含有量の上限は、好ましくは4%であり、さらには3%、2%、1%、0.8%の順により好ましい。また、P5+の含有量の下限は、好ましくは0%である。P5+の含有量は0%でもよい。
【0101】
P5+は、屈折率ndを低下させる成分であり、加えてガラスの熱的安定性を低下させる成分でもある。そのため、P5+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0102】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li+の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには18%、16%、14%、12%、10%、8%、6%、4%、2%、1%の順により好ましい。また、Li+の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.1%、0.5%、0.8%の順により好ましい。Li+の含有量は0%でもよい。
【0103】
Li+は、ガラスの低比重化に寄与する成分であり、ガラスの熔融性を改善し、また平均線膨張係数αLを大きくする働きを有する。さらにガラス転移温度Tgの低下に寄与する成分であり、精密プレス成型の際には成形性の向上に寄与する。一方、Li+の含有量が多くなると、耐失透性や耐酸性が低下する。したがって、Li+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0104】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Na+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、10%、7%、5%、3%、1%の順により好ましい。また、Na+の含有量の下限は、好ましくは0%である。の含有量は0%でもよい。
【0105】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、K+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、10%、7%、5%、3%、1%の順により好ましい。また、K+の含有量の下限は、好ましくは0%である。K+の含有量は0%でもよい。
【0106】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Na+およびK+の合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、10%、7%、5%、3%、1%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%である。該合計含有量は0%でもよい。
【0107】
Na+、K+は、いずれもガラスの熔融性を改善する働きを有する。また平均線膨張係数を大きくする働きを有する。一方、これらの含有量が多くなると、熱的安定性、耐失透性、化学的耐久性、耐候性が低下しガラス成分の揮発性が上昇する。したがって、Na+およびK+の各含有量およびその合計含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0108】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Cs+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、10%、7%、5%、3%、1%の順により好ましい。また、Cs+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Cs+の含有量は0%でもよい。
【0109】
Cs+は、ガラスの熔融性を改善する働きを有するが、含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性、屈折率ndが低下し、また熔解中にガラス成分の揮発が増加して、所望のガラスが得られなくなるおそれがある。そのため、Cs+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0110】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li+、Na+、K+およびCs+の合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、13%、12%、11%、10%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%である。該合計含有量は0%でもよい。ガラスの液相温度が上昇するのを抑制する観点から、Li+、Na+、K+およびCs+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0111】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Mg2+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。また、Mg2+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Mg2+の含有量は0%でもよい。
【0112】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ca2+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%の順により好ましい。また、Ca2+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ca2+の含有量は0%でもよい。
【0113】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Sr2+の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、10%、8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.3%の順により好ましい。また、Sr2+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Sr2+の含有量は0%でもよい。
【0114】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Mg2+、Ca2+、およびSr2+の合計含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、10%、8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.3%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%である。該合計含有量は0%でもよい。
【0115】
Mg2+、Ca2+、Sr2+は、いずれもガラスの熔融性を改善する働きを有するガラス成分であり、Sr2+、Ca2+、Mg2+の順に平均線膨張係数を大きくする働きがより大きい。しかし、これらガラス成分の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。そのため、これらガラス成分の各含有量および合計含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0116】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ba2+の含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには7%、9%、10%、11%、12%、13%、14%の順により好ましい。また、Ba2+の含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには35%、30%、28%、26%、25%、24%、23%の順により好ましい。
【0117】
Ba2+は、高屈折率・低分散特性を損なうことなく、平均線膨張係数αLを増加させる働きを有するガラス成分である。Ba2+の含有量を上記範囲とすることで、高屈折率・低分散であって、平均線膨張係数αLが改善された光学ガラスが得られる。一方で、Ba2+の含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透するおそれがある。
【0118】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Si4+およびB3+の合計含有量の上限は、好ましくは60%であり、さらには58%、56%、55%、54%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは30%であり、さらには32%、34%、36%、38%、40%、42%、44%の順により好ましい。
【0119】
ガラスの安定性を保持しつつ、屈折率の低下を抑制する観点から、Si4+およびB3+の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0120】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ba2+の含有量と、Si4+およびB3+の合計含有量とのカチオン比[Ba2+/(Si4++B3+)]の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.55、0.50、0.45の順により好ましい。また、該カチオン比の下限は、好ましくは0.25であり、さらには0.27、0.29、0.31、0.33、0.35、0.36の順により好ましい。
【0121】
ガラスの安定性が保持されかつ平均線膨張係数αLが大きいガラスを得る観点から、該カチオン比は上記範囲とすることが好ましい。
【0122】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Zn2+の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、10%、5%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Zn2+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Zn2+の含有量は0%でもよい。
【0123】
Zn2+は、ガラスの熔融性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、Zn2+の含有量が多すぎると、ガラスの比重が増大し、平均線膨張係数αLが低下するおそれがある。また、ガラスの低分散性を損なうおそれもある。さらに、ガラス転移温度Tgが低下するおそれもある。そのため、Zn2+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0124】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、La3+の含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには6%、7%、8%、9%、10%、11%の順により好ましい。また、La3+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、22%、20%、18%、17%の順により好ましい。
【0125】
La3+は、アッベ数νdの減少を抑えつつ屈折率を高める働きを有するガラス成分である。したがって、La3+の含有量を上記範囲とすることで、高屈折率・低分散であって、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の増大を抑制した光学ガラスが得られる。
【0126】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Gd3+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、10%、5%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Gd3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Gd3+の含有量は0%でもよい。
【0127】
Gd3+は高屈折・低分散であって平均線膨張係数αLの低下を抑制できる成分であるが、Gd3+の含有量が多くなり過ぎるとガラスの比重が増大し、好ましくない。また原料コスト削減の観点においても不利である。したがって、Gd3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0128】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Y3+の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには2%、4%、6%、7%、8%、9%、10%の順により好ましい。また、Y3+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、18%、17%、16%の順により好ましい。
【0129】
Y3+は、アッベ数νdの減少を抑えつつ屈折率を高める働きを有する成分である。また、アルカリ成分やアルカリ土類成分の中でBa2+またはSr2+を比較的多く導入する本実施形態のガラスにおいて、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、高屈折低分散特性を付与するために有効な成分である。また、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善し、ガラス転移温度を高める働きも有する。一方で、Y3+の含有量が多くなり過ぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがある。そのため、Y3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0130】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Zr4+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2.5%、2%、1.8%、の順により好ましい。また、Zr4+の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%の順により好ましい。Zr4+の含有量は0%でもよい。
【0131】
Zr4+は、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。しかし、Zr4+は平均線膨張係数αLを比較的小さくする成分であるほか、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性を増大させる成分でもある。また、含有量があまりにも多すぎると、著しく熱的安定性が低下するおそれがある。そのため、Zr4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0132】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ti4+の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには12%、10%、8%、7%の順により好ましい。また、Ti4+の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1%、2%、3%、4%、5%、6%の順により好ましい。Ti4+の含有量は0%でもよい。
【0133】
Ti4+は、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。一方、Ti4+の含有量が多すぎると、平均線膨張係数αLが低下するおそれがあるほか、アッベ数νdが低下するおそれがあり、またガラスの着色が強まり、さらに熔融性が悪化するおそれがある。そのため、Ti4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0134】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Nb5+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、10%、8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.07%、0.05%、0.03%、0.01%、の順により好ましい。また、Nb5+の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.001%、0.005%、0.008%の順により好ましい。Nb5+の含有量は0%でもよい。
【0135】
Nb5+は、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。一方、Nb5+の含有量が多すぎると、平均線膨張係数αLが低下するおそれがあるほか、ガラスの着色が強まるおそれがある。そのため、Nb5+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0136】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、W6+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには5%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%の順により好ましい。また、W6+の含有量の下限は、好ましくは0%である。W6+の含有量の0%でもよい。
【0137】
W6+は他の高分散成分に対してガラス転移温度Tgを下げる働きを持つため、ガラスを軟化成形するとき、とりわけ精密プレスを実施するとき、成形型やその保護膜、成形機を保護するために成形温度を低下させる目的で導入することが出来る。一方でガラスの透
過率を高める観点、およびガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)の上昇を抑える観点から、W6+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0138】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Bi3+の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%の順により好ましい。また、Bi3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Bi3+の含有量の0%でもよい。
【0139】
Bi3+は、屈折率ndを高める一方で、アッベ数νdを低下させる成分である。また、ガラスの着色を増大させやすい成分でもある。したがって、Bi3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0140】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ta5+の含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには25%、20%、15%、10%、7%、5%、3%、1%の順により好ましい。また、Ta5+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ta5+の含有量は0%でもよい。
【0141】
Ta5+は、ガラスの熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。一方、Ta5+は、屈折率を上昇させ、ガラスを高分散化させる。また、Ta5+の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスを熔融するときに、ガラス原料の熔け残りが生じやすくなる。また、Ta5+は平均線膨張係数αLを比較的低下させる成分である。そのため、Ta5+の含有量は上記範囲であることが好ましい。さらに、Ta5+は、他のガラス成分と比較し、極めて高価な成分であり、Ta5+の含有量が多くなるとガラスの生産コストが増大する。さらに、Ta5+は他のガラス成分と比べて分子量が大きいため、ガラスの比重を増大させ、結果的に光学素子の重量を増大させる。
【0142】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Sc3+の含有量の上限は、好ましくは3.0%であり、さらには2.0%、1.0%の順により好ましい。また、Sc3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Sc3+の含有量は0%でもよい。
【0143】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Hf4+の含有量の上限は、好ましくは3.0%であり、さらには2.0%、1.0%の順により好ましい。また、Hf4+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Hf4+の含有量は0%でもよい。
【0144】
Sc3+、Hf4+は、いずれも屈折率ndを高める働きを有し、また高価な成分である。そのため、Sc3+、Hf4+の各含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0145】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Lu3+の含有量の上限は、好ましくは3.0%であり、さらには2.0%、1.0%の順により好ましい。また、Lu3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。なお、Lu3+の含有量は0%でもよい。
【0146】
Lu3+は、屈折率ndを高める働きを有する。また、分子量が大きいことから、ガラスの比重を増加させるガラス成分でもある。そのため、Lu3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0147】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ge4+の含有量の上限は、好ましくは3.0%であり、さらには2.0%、1.0%の順により好ましい。また、Ge4+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ge4+の含有量は0%でもよい。
【0148】
Ge4+は、屈折率ndを高める働きを有し、また、一般的に使用されるガラス成分の中で、突出して高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、Ge4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0149】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、Yb3+の含有量の上限は、好ましくは3.0%であり、さらには2.0%、1.0%の順により好ましい。また、Yb3+の含有量の下限は、好ましくは0%である。Yb3+の含有量は0%でもよい。
【0150】
Yb3+の含有量が多すぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがある。また、一般的に使用されるガラス成分の中でも、高価な成分である。ガラスの熱的安定性の低下を防ぎ、比重の増大を抑制する観点、またガラスの製造コストを抑える観点から、Yb3+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0151】
第1実施形態に係る光学ガラスのカチオン成分は、主として上述の成分、すなわち、Si4+、B3+、Al3+、P5+、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Zn2+、La3+、Gd3+、Y3+、Zr4+、Ti4+、Nb5+、W6+、Bi3+、Ta5+、Sc3+、Hf4+、Lu3+、Ge4+、およびYb3+で構成されていることが好ましく、上述の成分の合計含有量は、好ましくは95.0%以上であり、さらには98.0%以上、99.0%以上、99.5%以上の順により好ましい。
【0152】
本実施形態に係る光学ガラスにおいて、Te4+の含有量の上限は、好ましくは2%であり、より好ましくは1%である。また、Te4+の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0153】
Te4+の酸化物は毒性を有することから、Te4+の含有量を低減させることが好ましい。そのため、Te4+の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0154】
第1実施形態に係る光学ガラスは、アニオン成分としてO2-を含むことができる。O2-の含有量の下限は、好ましくは90アニオン%であり、さらには95アニオン%、97アニオン%、98アニオン%の順により好ましい。また、O2-の含有量の上限は、好ましくは100アニオン%であり、さらには99.5アニオン%、99アニオン%の順により好ましい。O2-の含有量は100アニオン%であってもよい。
【0155】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいては、F-の含有量の下限は、好ましくは0アニオン%であり、さらには0.1アニオン%、0.2アニオン%、0.3アニオン%の順により好ましい。F-の含有量は0アニオン%であってもよい。また、F-の含有量の上限は、好ましくは5.0アニオン%であり、さらには3.0アニオン%、1.0アニオン%、0.5アニオン%の順により好ましい。
【0156】
第1実施形態に係る光学ガラスは、アニオン成分として、F-およびO2-以外の成分を含んでいてもよい。F-およびO2-以外のアニオン成分として、Cl-、Br-、I-を例示できる。しかし、Cl-、Br-、I-は、いずれもガラスの熔融中に揮発しやすい。これらの成分の揮発によって、ガラスの特性が変動する、ガラスの均質性が低下する、熔融設備の消耗が著しくなる等の問題が生じる。したがって、Cl-の含有量は、好ましくは5.0アニオン%未満であり、さらには3.0アニオン%未満、1.0アニオン%未満、0.5アニオン%未満、0.3アニオン%未満の順により好ましい。また、Br-およびI-の合計含有量は、好ましくは5.0アニオン%未満であり、さらには3.0アニオン%未満、1.0アニオン%未満、0.5アニオン%未満、0.1アニオン%未満、0アニオン%の順により好ましい。
【0157】
第1実施形態の光学ガラスは、基本的に上記成分により構成されることが好ましいが、本発明の作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有させることも可能である。また、本発明において、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0158】
<その他の成分組成>
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0159】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0160】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tmは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0161】
Sb(Sb2O3)、Ce(CeO2)は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb2O3)は、清澄効果の大きな清澄剤である。清澄剤の含有量について、以下に酸化物換算した値を示す。
【0162】
Sb2O3の含有量は、外割り表示とする。すなわち、Sb2O3およびCeO2以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSb2O3の含有量は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。さらに、は0.05質量%未満、0.03質量%未満、0.02質量%未満、0.01%未満の順に好ましい。Sb2O3の含有量は0質量%であってもよい。
【0163】
CeO2の含有量も、外割り表示とする。すなわち、CeO2、Sb2O3以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのCeO2の含有量は、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満の範囲である。CeO2の含有量は0質量%であってもよい。CeO2の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0164】
(ガラス特性)
次に、第1実施形態に係る光学ガラスの特性について説明する。
【0165】
<屈折率nd>
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率ndは、好ましくは1.70~1.88であり、より好ましくは1.73~1.85である。屈折率ndの下限は1.74、1.75、1.76、1.77、1.78または1.79でもよく、屈折率ndの上限は1.84、1.83、または1.82でもよい。
【0166】
屈折率ndは各ガラス成分の含有量を適宜調整することにより所望の値にすることができる。相対的に屈折率ndを高める働きを有する成分(高屈折率化成分)は、Nb5+、Ti4+、W6+、Bi3+、Ta5+、Zr4+、La3+等(すなわち酸化物表示では、Nb2O5、TiO2、WO3、Bi2O3、Ta2O5、ZrO2、La2O3等)である。一方、相対的に屈折率ndを低くする働きを有する成分(低屈折率化成分)は、P5+、Si4+、B3+、Li+、Na+、K+等(すなわち酸化物表示では、P2O5、SiO2、B2O3、Li2O、Na2O、K2O等)である。
【0167】
<アッベ数νd>
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、アッベ数νdは、好ましくは35~55である。アッベ数νdの下限は36、37、38、39、または40でもよく、アッベ数νdの上限は53、51、49、47、45、43、または42でもよい。
【0168】
アッベ数νdは、各ガラス成分の含有量を適宜調整することにより所望の値にすることができる。相対的にアッベ数νdを低くする成分、すなわち高分散化成分は、Nb5+、Ti4+、W6+、Bi3+、Ta5+、Zr4+等(すなわち酸化物表示では、Nb2O5、TiO2、WO3、Bi2O3、Ta2O5、ZrO2等)である。一方、相対的にアッベ数νdを高くする成分、すなわち低分散化成分は、P5+、Si4+、B3+、Li+、Na+、K+、La3+、Ba2+、Ca2+、Sr2+等(すなわち酸化物表示では、P2O5、SiO2、B2O3、Li2O、Na2O、K2O、La2O3、BaO、CaO、SrO等)である。
【0169】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、屈折率ndとアッベ数νdとは、好ましくは下記式(1)を満たし、より好ましくは下記式(2)を満たし、さらに好ましくは下記式(3)を満たし、特に好ましくは下記式(4)を満たす。屈折率ndとアッベ数νdとが下記式を満たすことで、高屈折率・低分散特性を有する光学ガラスが得られる。
nd-(-0.0183×アッベ数νd+2.502)≧0 …(1)
nd-(-0.0183×アッベ数νd+2.512)≧0 …(2)
nd-(-0.0183×アッベ数νd+2.522)≧0 …(3)
nd-(-0.0183×アッベ数νd+2.532)≧0 …(4)
【0170】
<平均線膨張係数αL>
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、-30~70℃における平均線膨張係数αLの下限は、好ましくは0.80×10-5℃-1であり、さらには0.81×10-5℃-1、0.82×10-5℃-1、0.83×10-5℃-1、0.84×10-5℃-1、0.85×10-5℃-1、0.86×10-5℃-1、0.87×10-5℃-1、0.88×10-5℃-1の順により好ましい。また、平均線膨張係数αLの上限は、ガラスの安定性を保持し所望の光学特性を得る観点から、1.20×10-5℃-1を例示でき、好ましくは1.10×10-5℃-1以下であり、さらには1.00×10-5℃-1、0.98×10-5℃-1、0.96×10-5℃-1、0.95×10-5℃-1、0.94×10-5℃-1、0.93×10-5℃-1の順により好ましい。
【0171】
-30~70℃における平均線膨張係数αLを上記範囲とすることで、幅広い温度環境に使用できる光学ガラスを得ることができる。
【0172】
平均線膨張係数αLは、日本光学硝子工業会規格JOGIS16の規定に基づいて測定する。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とする。試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように加熱し、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定する。平均線膨張係数αLは-30~70℃における線膨張係数の平均値である。
なお、本明細書では、平均線膨張係数αを[℃-1]の単位で表しているが、単位として[K-1]を用いた場合でも平均線膨張係数αの数値は同じである。
【0173】
<平均線膨張係数α100-300>
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、100~300℃における平均線膨張係数α100-300の下限は、好ましくは0.90×10-5℃-1であり、さらには0.92×10-5℃-1、0.94×10-5℃-1、0.95×10-5℃-1の順により好ましい。また、平均線膨張係数α100-300の上限は、ガラスの安定性を保持し所望の光学特性を得る観点から、1.30×10-5℃-1を例示でき、好ましくは1.15×10-5℃-1であり、さらには1.10×10-5℃-1、1.06×10-5℃-1、1.04×10-5℃-1の順により好ましい。
【0174】
平均線膨張係数α100-300は、日本光学硝子工業会規格JOGIS08の規定に基づいて測定する。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とする。試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように加熱し、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定する。平均線膨張係数α100-300は100~300℃における線膨張係数の平均値である。
【0175】
<相対屈折率の温度係数dn/dT>
ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)は、日本産業規格JISB7072-2(光学ガラスにおける屈折率の温度係数の測定方法-第2部:干渉法)により、波長632.8nmの光についての、-40℃から110℃に温度を変化させた際における相対屈折率の温度係数の値を測定する。
なお、本明細書では、相対屈折率の温度係数(dn/dT)を[10-6・℃-1]の単位で表しているが、単位として[10-6・K-1]を用いた場合でも相対屈折率の温度係数dn/dTの数値は同じである。
【0176】
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、相対屈折率の温度係数dn/dTの上限は、He-Neレーザの波長(633nm乃至632.8nm)、温度20~40℃の範囲で、好ましくは2.0×10-6℃-1であり、さらには1.5×10-6℃-1、1.0×10-6℃-1、0.5×10-6℃-1、0.0×10-6℃-1、-0.5×10-6℃-1、-1.0×10-6℃-1の順により好ましい。また、該相対屈折率の温度係数dn/dTの下限に明確な制限はないが、He-Neレーザの波長(633nm乃至632.8nm)、かつ温度20~40℃の範囲で、好ましくは-13.0×10-6℃-1であり、さらには-10.0×10-6℃-1、-9.0×10-6℃-1、-8.0×10-6℃-1、-7.0×10-6℃-1、-6.5×10-6℃-1の順により好ましい。
【0177】
dn/dTを上記範囲とし、dn/dTが正の値である光学素子、あるいはdn/dTが負の値でレンズの焦点距離の符号が異なる光学素子などと組み合わせることで、光学素子の温度が大きく変動するような環境下でも屈折率の変動が小さくなるため、より幅広い温度範囲において、所望の光学特性を高精度に発揮できる。
【0178】
他方で、エネルギーの大きな光、たとえばレーザ光のような光や、ガラスの吸収波長に相当する光などがガラスに入射する際は、光の強度や照射時間によってガラスの温度上昇の幅が変化する。この場合、本実施形態のガラス単独で、屈折率の温度変化を小さくすることが要求されることもある。
【0179】
このような場合の相対屈折率の温度係数dn/dTの上限は、He-Neレーザの波長(633nm乃至632.8nm)、温度20~40℃の範囲を例にとると、好ましくは2.0×10-6℃-1であり、さらには1.5×10-6℃-1、1.0×10-6℃-1、0.5×10-6℃-1、0.3×10-6℃-1、0.1×10-6℃-1の順にいっそう好ましい。また、該相対屈折率の温度係数dn/dTの下限は、好ましくは-2.0×10-6℃-1であり、さらには-1.5×10-6℃-1、-1.0×10-6℃-1、-0.5×10-6℃-1、-0.3×10-6℃-1、-0.1×10-6℃-1の順にいっそう好ましい。相対屈折率の温度係数dn/dTを0.0×10-6℃-1にすることもできる。なお、本実施形態に係る光学ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)の値は、本明細書の記載を参酌し、使用するレーザ波長によって上記の好ましい範囲の中で適宜選択してもよい。
【0180】
<相対屈折率の温度係数dn/dTの温度依存性の測定方法>
本実施形態のガラスは、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性が小さい。その測定法は以下のとおりである。
【0181】
相対屈折率の温度係数(dn/dT)は、日本産業規格JISB7072-2(光学ガラスにおける屈折率の温度係数の測定方法-第2部:干渉法)により測定する。-40℃から80℃に温度を変化させ、温度-30℃、-10℃、+10℃、+30℃、+50℃、+70℃において波長632.8nmのdn/dT(以下、dn/dT@632.8と表記する。)を測定し、温度に対するdn/dT@632.8の値の近似直線を最小二乗法によって求め、その直線の傾きをa、温度0℃における切片をbとする。
【0182】
上記の傾きaが0に近いほど、温度によるdn/dTの変化量が小さいため、異なる温度域においても温度変化あたりのdn/dTの値の変化が小さくなることを意味する。つまり、光学素子の単位温度変化に対する焦点距離のずれ方が温度によらず一定になることから、受光素子側の位置調整機構を簡素化でき、高精度な結像を求められる光学素子に有効である。
【0183】
したがって、本実施形態に係る光学ガラスにおいて、上記傾きaの値の範囲は、好ましくは10.0×10-9~-10.0×10-9であり、さらには8.0×10-9~-8.0×10-9、6.0×10-9~-6.0×10-9、4.0×10-9~-4.0×10-9、3.0×10-9~-3.0×10-9の順により好ましい。
【0184】
また上記の切片bが0.0×10-6に近いほど、近似直線における0℃でのdn/dT@632.8の値が小さいため、dn/dTの値の絶対値が小さいことを意味する。したがって、単独の光学素子の単位温度変化に対する焦点距離のずれ量自体が小さくなることから、高精度な結像を求められる光学素子に有効である。
【0185】
したがって、本実施形態に係る光学ガラスにおいて、上記切片bの値の範囲は、好ましくは3.0×10-6~-3.0×10-6であり、さらには2.0×10-6~-2.0×10-6、1.0×10-6~-1.0×10-6、0.5×10-6~-0.5×10-6の順により好ましい。なお上記傾きaの値を一定の値以下、好ましくは0付近に制御すれば、かならずしも上記切片bが0でなくてもよい。上記切片bを0付近にすることもできる。
【0186】
<ガラス転移温度Tg>
第1実施形態に係る光学ガラスのガラス転移温度Tgの上限は、好ましくは730℃であり、さらには720℃、710℃、700℃の順により好ましい。また、ガラス転移温度Tgの下限は、好ましくは500℃であり、さらには550℃、560℃、570℃、580℃の順により好ましい。
【0187】
ガラス転移温度Tgの上限が上記範囲を満たすことにより、ガラスの成型温度およびアニール温度の上昇を抑制することができ、プレス成形用設備およびアニール設備への熱的ダメージを軽減できる。また、ガラス転移温度Tgの下限が上記範囲を満たすことにより、所望のアッベ数、屈折率を維持しつつ、ガラスの熱的安定性を良好に維持しやすくなる。また、精密プレス素材として用いる際に良好な成形性を得ることができる。
【0188】
他方で、ガラス転移温度Tgが高いほど、単位温度変化あたりの膨張量が小さくなる傾向にあるので、単位温度変化あたりの熱膨張による形状変化の度合いを軽減できる傾向がある。また、加熱によってガラスの温度がTg付近あるいは歪点以上まで上昇してしまうと、その後にガラスが冷却されても光学性能が元の状態に戻らなくなるおそれもある。し
たがってTgの下限は上記範囲を満たすことが好ましい。
【0189】
<ガラスの比重>
第1実施形態に係る光学ガラスにおいて、比重は、好ましくは5.50以下であり、さらには、5.00以下、4.80以下の順により好ましい。ガラスの比重を低減することができれば、レンズの重量を減少できる。その結果、レンズを搭載するカメラレンズのオートフォーカス駆動の消費電力を低減できる。
【0190】
<ガラスの光線透過性>
第1実施形態に係る光学ガラスの光線透過性は、着色度λ5、λ70、およびλ80により評価できる。
厚さ10.0mm±0.1mmのガラス試料について波長200~700nmの範囲で分光透過率を測定し、外部透過率が5%となる波長をλ5とし、外部透過率が70%となる波長をλ70とし、外部透過率が80%となる波長をλ80とする。
【0191】
第1実施形態に係る光学ガラスのλ5は、好ましくは400nm以下であり、より好ましくは380nm以下であり、さらに好ましくは360nm以下であり、特に好ましくは350nm以下である。
【0192】
第1実施形態に係る光学ガラスのλ70は、好ましくは440nm以下であり、より好ましくは430nm以下であり、さらに好ましくは420nm以下である。
【0193】
第1実施形態に係る光学ガラスのλ80は、好ましくは510nm以下であり、より好ましくは500nm以下であり、さらに好ましくは490nm以下である。
【0194】
λ5、λ70、およびλ80が上記のように短波長化された光学ガラスを用いることで、好適な色再現を可能とする光学素子を提供できる。
【0195】
(光学ガラスの製造)
本発明の実施形態に係る光学ガラスは、上記所定の組成となるようにガラス原料を調合し、調合したガラス原料により公知のガラス製造方法に従って作製すればよい。例えば、複数種の化合物を調合し、十分混合してバッチ原料とし、バッチ原料を石英坩堝や白金坩堝中に入れて粗熔解(ラフメルト)する。粗熔解によって得られた熔融物を急冷、粉砕してカレットを作製する。さらにカレットを白金坩堝中に入れて加熱、再熔融(リメルト)して熔融ガラスとし、さらに清澄、均質化した後に熔融ガラスを成形し、徐冷して光学ガラスを得る。熔融ガラスの成形、徐冷には、公知の方法を適用すればよい。
【0196】
なお、ガラス中に所望のガラス成分を所望の含有量となるように導入することができれば、バッチ原料を調合するときに使用する化合物は特に限定されないが、このような化合物として、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、フッ化物等が挙げられる。
【0197】
(光学素子等の製造)
本発明の実施形態に係る光学ガラスを使用して光学素子を作製するには、公知の方法を適用すればよい。例えば、ガラス原料を熔融して熔融ガラスとし、この熔融ガラスを鋳型に流し込んで板状に成形し、本発明に係る光学ガラスからなるガラス素材を作製する。得られたガラス素材を適宜、切断、研削、研磨し、プレス成形に適した大きさ、形状のカットピースを作製する。カットピースを加熱、軟化して、公知の方法でプレス成形(リヒートプレス)し、光学素子の形状に近似する光学素子ブランクを作製する。光学素子ブランクをアニールし、公知の方法で研削、研磨して光学素子を作製する。
【0198】
作製した光学素子の光学機能面には使用目的に応じて、反射防止膜、全反射膜などをコーティングしてもよい。
【0199】
光学素子としては、球面レンズなどの各種レンズ、プリズム、回折格子などが例示できる。
【0200】
以下、第2実施形態について詳細に説明する。
【0201】
第2実施形態
第2実施形態に係る光学ガラスは、
カチオン%表示において、
B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]が1/3以上であり、
Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]が0.62以上であり、
Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]が8/9以上であり、
Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]が13.00カチオン%以下であり、
La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]が36カチオン%以上であり、
La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量と、B3+の含有量、Si4+の含有量の2倍、Al3+の含有量の合計とのカチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/{B3++(2×Si4+)+Al3+}]が0.360以上である。
【0202】
第2実施形態において、B3+の含有量とB3+およびSi4+の合計含有量とのカチオン比[B3+/(B3++Si4+)]は1/3以上である。該カチオン比の下限は、好ましくは1.1/3であり、さらには1.2/3、1.3/3、1.4/3、1.5/3、1.6/3、1.7/3、1.8/3、1.9/3の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは3.0/3であり、さらには2.9/3、2.8/3、2.7/3、2.6/3、2.5/3、2.4/3、2.3/3の順により好ましい。
【0203】
カチオン比[B3+/(B3++Si4+)]を上記範囲とすることで、-30~70℃における平均線膨張係数αLの大きい、低分散の光学ガラスを得ることができる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。さらに、La3+を多量に含有させる場合でもガラスの熱的安定性の低下を抑制できる。一方、該カチオン比が小さすぎると、屈折率ndを高め、平均線膨張係数αLの低下を防ぐガラス成分であるLa3+およびY3+を多量に含む場合にガラスが不安定になるおそれがある。また該カチオン比が大きすぎると、ガラスの安定性、化学的耐久性、および機械的特性が低下するおそれがある。
【0204】
第2実施形態において、Ba2+およびSr2+の合計含有量と、Li+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、およびBa2+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]は0.62以上である。該カチオン比の下限は、好ましくは0.63であり、さらには0.65、0.67、0.69、0.71、0.73、0.75、0.77、0.79、0.81、0.83、0.85、0.87の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.99、0.98の順により好ましい。該カチオン比は1.00であってもよい。
【0205】
カチオン比[(Ba2++Sr2+)/(Li++Na++K++Cs++Mg2++Ca2++Sr2++Ba2+)]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率の光学ガラスが得られる。また、平均線膨張係数αLを大きくしつつ熱的安定性の低下を抑制できる。一方、該カチオン比が小さすぎると、平均線膨張係数αLおよび屈折率ndが低下し、ガラスの安定性が損なわれるおそれがある。
【0206】
第2実施形態において、Ba2+およびLi+の合計含有量と、Na+、K+、Si4+、Ti4+、Nb5+、およびW6+の合計含有量とのカチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]は8/9以上である。該カチオン比の下限は、好ましくは8.2/9であり、さらには8.4/9、8.6/9、8.8/9、9.0/9、9.2/9、9.4/9、9.5/9の順により好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは27/9であり、さらには25/9、23/9、21/9、19/9、17/9、15/9、13/9、12/9の順により好ましい。
【0207】
カチオン比[(Ba2++Li+)/(Na++K++Si4++Ti4++Nb5++W6+)]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。一方、該カチオン比が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、該カチオン比が大きすぎるとガラスの安定性が低下するおそれがある。
【0208】
第2実施形態において、Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、およびZr4+の合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]は13.00%以下である。該合計含有量の上限は、好ましくは12.50%であり、さらには12.00%、11.50%、11.00%、10.50%、10.00%、9.50%、9.00%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1.00%、2.00%、3.00%、4.00%、5.00%、6.00%、7.00%、8.00%の順により好ましい。該合計含有量は0であってもよい。
【0209】
合計含有量[Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Zr4+]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、また高分散化を抑制することにより高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。さらに、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を増大させない効果もある。該合計含有量は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、該合計含有量を0より大きくすることもできる。一方、該合計含有量が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0210】
第2実施形態において、La3+、Y3+、Ba2+、Li+の合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]は36%以上である。該合計含有量の下限は、好ましくは38%であり、さらには40%、41%、42%、43%、44%の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは55%であり、さらには54%、53%、52%、51%、50%、49%、48%、47%の順により好ましい。
【0211】
合計含有量[La3++Y3++Ba2++Li+]を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を増大させない効果もある。一方、該合計含有量が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、該合計含有量が大きすぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0212】
第2実施形態において、La3+、Gd3+、およびY3+の合計含有量と、B3+の含有量、Si4+の含有量の2倍、Al3+の含有量の合計とのカチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/{B3++(2×Si4+)+Al3+}]は0.360以上である。該カチオン比の下限は、好ましくは0.370であり、さらには0.380、0.390、0.400、0.410、0.420、0.425の順により好ましい。特に、平均線膨張係数αLの増大と高屈折低分散を両立するためには、上記値の下限は0.440、0.450、0.460、0.470、0.480であることが好ましい。また、該カチオン比の上限は、好ましくは0.550であり、さらには0.540、0.530、0.520、0.510、0.500、0.490の順により好ましい。
【0213】
カチオン比[(La3++Gd3++Y3+)/{B3++(2×Si4+)+Al3+}を上記範囲とすることで、ガラスの安定性を確保しながら屈折率の低下を最小限に抑えることのできる、高屈折率低分散の光学ガラスが得られる。一方、該カチオン比が大きすぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0214】
第2実施形態において、Gd3+、Zn2+、Ti4+、Nb5+、W6+、Bi3+の合計含有量とY3+の含有量とのカチオン比[(Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/Y3+]の上限は、好ましくは2.0であり、さらには1.8、1.6、1.4、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.6の順により好ましい。また、該カチオン比の下限は、好ましくは0であり、さらには0.1、0.2、0.3、0.4の順により好ましい。該カチオン比は0であってもよい。
【0215】
平均線膨張係数αLを高め、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、カチオン比[(Gd3++Zn2++Ti4++Nb5++W6++Bi3+)/Y3+]は上記範囲とすることが好ましい。該カチオン比は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、該カチオン比を0より大きくすることもできる。一方、該カチオン比が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0216】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、上記以外のガラス成分の含有量および比率は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0217】
第2実施形態に係る光学ガラスにおいて、ガラス特性も、第1実施形態と同様とすることができる。
【0218】
第2実施形態に係る光学ガラスの製造および光学素子等の製造は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0219】
以下、第3実施形態について詳細に説明する。
【0220】
第3実施形態
第3実施形態に係る光学ガラスは、
酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量をそれぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とし、
SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とし、
A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}、
B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}、
C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}、
D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)、
E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}、
F1={C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)}/{C(Y2O3)/M(YO1.5)}とするとき、
A1が1/3以上であり、
B1が0.62以上であり、
C1が8/9以上であり、
D1が13.50以下であり、
E1が1.25以上であり、
F1が2.0以下である。
【0221】
第3実施形態では、酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量を、それぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とする。
【0222】
上記以外のガラス成分Ta2O5、Sc2O3、HfO2、Lu2O3、GeO2、およびYb2O3の質量%表示による含有量は、それぞれC(Ta2O5)、C(Sc2O3)、C(HfO2)、C(Lu2O3)、C(GeO2)、およびC(Yb2O3)とする。
【0223】
第3実施形態では、SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とする。
【0224】
上記以外のガラス成分TaO2.5、ScO1.5、HfO2、LuO1.5、GeO2、およびYbO1.5の各化学式量は、それぞれM(TaO2.5)、M(ScO1.5)、M(HfO2)、M(LuO1.5)、M(GeO2)、およびM(YbO1.5)とする。
【0225】
すなわち、第3実施形態では、例えば酸化物XyOzについて、質量%表示による含有量をC(XyOz)とできる。また、酸化物XyOzにおけるカチオン(カチオン“X”)1モル当たりの化学式量、すなわち、XOz/yにおける化学式量をM(XOz/y)とできる。そして、{C(XyOz)/M(XOz/y)}の式で表されるのは、モル%表示でのカチオン“X”の含有量、すなわち、カチオン%表示での“X”の含有量である。
【0226】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}とするとき、A1は1/3以上である。A1の下限は、好ましくは1.1/3であり、さらには1.2/3、1.3/3、1.4/3、1.5/3、1.6/3、1.7/3、1.8/3、1.9/3の順により好ましい。また、A1の上限は、好ましくは3.0/3であり、さらには2.9/3、2.8/3、2.7/3、2.6/3、2.5/3、2.4/3、2.3/3の順により好ましい。
【0227】
A1を上記範囲とすることで、-30~70℃における平均線膨張係数αLの大きい、低分散の光学ガラスを得ることができる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。さらに、La2O3を多量に含有させる場合でもガラスの熱的安定性の低下を抑制できる。一方、A1が小さすぎると、屈折率ndを高め、平均線膨張係数αLの低下を防ぐガラス成分であるLa2O3およびY2O3を多量に含む場合にガラスが不安定になるおそれがある。またA1が大きすぎると、ガラスの安定性、化学的耐久性、および機械的特性が低下するおそれがある。
【0228】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}とするとき、B1は0.62以上である。B1の下限は、好ましくは0.63であり、さらには0.65、0.67、0.69、0.71、0.73、0.75、0.77、0.79、0.81、0.83、0.85、0.87の順により好ましい。また、B1の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.99、0.98の順により好ましい。B1は1.00であってもよい。
【0229】
B1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率の光学ガラスが得られる。また、平均線膨張係数αLを大きくしつつ熱的安定性の低下を抑制できる。一方、B1が小さすぎると、平均線膨張係数αLおよび屈折率ndが低下し、ガラスの安定性が損なわれるおそれがある。
【0230】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}とするとき、C1は8/9以上である。C1の下限は、好ましくは8.2/9であり、さらには8.4/9、8.6/9、8.8/9、9.0/9、9.2/9、9.4/9、9.5/9の順により好ましい。また、C1の上限は、好ましくは27/9であり、さらには25/9、23/9、21/9、19/9、17/9、15/9、13/9、12/9の順により好ましい。
【0231】
C1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。一方、C1が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、C1が大きすぎるとガラスの安定性が低下するおそれがある。
【0232】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)とするとき、D1は13.50以下である。D1の上限は、好ましくは12.00であり、さらには11.00、10.50、10.00、9.50、9.00、8.50の順により好ましい。また、D1の下限は、好ましくは0であり、さらには1、2、3、4、5、6、7、8の順により好ましい。D1は、0であってもよい。
【0233】
D1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの低下を抑制できる。また高分散化を抑えて、高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。さらに、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を増大させない効果もある。D1は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、D1を0より大きくすることもできる。一方、D1が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0234】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}とするとき、E1は1.25以上である。E1の下限は、好ましくは1.30であり、さらには1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70の順により好ましい。また、E1の上限は、好ましくは3.00であり、さらには2.80、2.60、2.40、2.20、2.10の順により好ましい。
【0235】
E1を上記範囲とすることで、高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。一方、E1が小さすぎると、ガラスの高屈折高分散性が失われ、平均線膨張係数αLが低下するおそれがある。またE1が大きすぎるとガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0236】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、F1={C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)}/{C(Y2O3)/M(YO1.5)}とするとき、F1は2.0以下である。F1の上限は、好ましくは1.8であり、さらには1.6、1.4、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.6の順により好ましい。また、F1の下限は、好ましくは0であり、さらには0.1、0.2、0.3、0.4の順により好ましい。F1は0であってもよい。
【0237】
F1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい光学ガラスが得られる。また、ガラスの熱的安定性の低下を抑制できる。F1は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、F1を0より大きくすることもできる。一方、F1が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0238】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、G1=C(BaO)/M(BaO)+C(La2O3)/M(LaO1.5)+C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Y2O3)/M(YO1.5)とするとき、G1の下限は、好ましくは0.47であり、さらには0.475、0.48、0.485の順により好ましい。また、G1の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.59、0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53の順により好ましい。
【0239】
平均線膨張係数αLの低下が抑制され、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、G1を上記範囲とすることが好ましい。一方、G1が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、G1が大きすぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0240】
第3実施形態に係る光学ガラスにおける上記以外のガラス成分の含有量および比率について、以下に非制限的な例を示す。
【0241】
第3実施形態において、{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}の下限は、好ましくは0.35であり、さらには0.37、0.39、0.41、0.43、0.45、0.47の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.75であり、さらには0.73、0.71、0.69、0.67、0.65、0.63、0.61、0.59の順により好ましい。
【0242】
平均線膨張係数αLが大きく、低分散の光学ガラスを得る観点から、{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0243】
第3実施形態において、{C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}の下限は、好ましくは0.15であり、さらには0.16、0.17、0.18、0.19、0.20の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.30であり、さらには0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23の順により好ましい。
【0244】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率の光学ガラスを得る観点から、{C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0245】
第3実施形態において、{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}の下限は、好ましくは0.15であり、さらには0.16、0.17、0.18、0.19、0.20の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.35であり、さらには0.34、0.33、0.32、0.31、0.30、0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23の順により好ましい。
【0246】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率の光学ガラスを得る観点から、{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0247】
第3実施形態において、{C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}の下限は、好ましくは0.15であり、さらには0.16、0.17、0.18、0.19、0.20の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.35であり、さらには0.34、0.33、0.32、0.31、0.30、0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23の順により好ましい。
【0248】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、{C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0249】
第3実施形態において、{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}の下限は、好ましくは0.05であり、さらには0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16の順により好ましい。また、その上限は、好ましくは0.30であり、さらには0.29、0.28、0.27、0.26、0.25、0.24、0.23、0.22、0.21の順により好ましい。
【0250】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}は上記範囲とすることが好ましい。
【0251】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、質量比[C(BaO)/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]の下限は、好ましくは1.0であり、さらには1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは5.5であり、さらには5.3、5.1、4.9、4.7、4.5、4.3、4.1、3.9、3.7、3.5の順により好ましい。
【0252】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点、および相対屈折率の温度係数(dn/dT)を小さくする観点から、質量比[C(BaO)/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0253】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、質量比[C(BaO)/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]の下限は、好ましくは0.80であり、さらには0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.70であり、さらには1.65、1.60、1.55、1.50、1.45、1.40、1.35の順により好ましい。
【0254】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点、および相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性を小さくする観点から、質量比[C(BaO)/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0255】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、質量比[{C(BaO)+C(Li2O)+C(SrO)}/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]の下限は、好ましくは0.5であり、さらには1.0、1.5、2.0、2.2、2.4の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは7.0であり、さらには6.5、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0、3.5の順により好ましい。
【0256】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、質量比[{C(BaO)+C(Li2O)+C(SrO)}/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0257】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、質量比[{C(Li2O)+C(Na2O)+C(K2O)+C(Cs2O)+C(CaO)+C(SrO)+C(BaO)}/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]の下限は、好ましくは0.5であり、さらには1.0、1.5、2.0、2.2、2.4の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは7.0であり、さらには6.5、6.0、5.5、5.0、4.5、4.0、3.5の順により好ましい。
【0258】
平均線膨張係数αLが大きく、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、質量比[{C(Li2O)+C(Na2O)+C(K2O)+C(Cs2O)+C(CaO)+C(SrO)+C(BaO)}/{C(SiO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0259】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、合計含有量[C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]の下限は、好ましくは0であり、さらには1、2、3、4、5の順により好ましい。該合計含有量は0であってもよい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは15であり、さらには14、13、12、11、10、9、8、7、6の順により好ましい。
【0260】
平均線膨張係数αLが大きく、分散の小さい光学ガラスを得る観点から、合計含有量[C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0261】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、合計含有量[C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]の下限は、好ましくは5であり、さらには6、7、8、9の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは25であり、さらには24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14の順により好ましい。
【0262】
平均線膨張係数αLが大きく、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0263】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、合計含有量[C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(ZrO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]の下限は、好ましくは5であり、さらには6、7、8、9の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは25であり、さらには24、23、22、21、20、19、18、17、16の順により好ましい。
【0264】
平均線膨張係数αLが大きく、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(ZrO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0265】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、合計含有量[C(Al2O3)+C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(ZrO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]の下限は、好ましくは5であり、さらには6、7、8、9の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは25であり、さらには24、23、22、21、20、19、18、17、16の順により好ましい。
【0266】
平均線膨張係数αLが大きく、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[C(Al2O3)+C(SiO2)+C(ZnO)+C(Gd2O3)+C(ZrO2)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0267】
第3実施形態において、合計含有量[C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)]の下限は、好ましくは25であり、さらには26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは50であり、さらには49、48、47、46、45、44、43の順により好ましい。
【0268】
高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0269】
第3実施形態において、合計含有量[C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)]の下限は、好ましくは15であり、さらには16、17、18、19の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは30であり、さらには29、28、27、26、25の順により好ましい。
【0270】
屈折率をなるべく低下させずに、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0271】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、質量比[{C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{2×C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}]の下限は、好ましくは1.00であり、さらには1.05、1.10、1.15、1.16、1.17、1.18、1.19、1.20、1.21の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.80であり、さらには1.75、1.70、1.65、1.60、1.55、1.54、1.53、1.52、1.51、1.50の順により好ましい。
【0272】
高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、質量比[{C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{2×C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}]は上記範囲とすることが好ましい。
【0273】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、合計含有量[2×C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)]の下限は、好ましくは20であり、さらには21、22、23、24、25、26の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは45であり、さらには44、43、42、41、40、39、38、37、36、35の順により好ましい。
【0274】
平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[2×C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0275】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、質量比[{C(La2O3)+C(Y2O3)}/{C(B2O3)+C(BaO)}]の下限は、好ましくは0.50であり、さらには0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは1.30であり、さらには1.25、1.20、1.15、1.10、1.05、1.00、0.95、0.92の順により好ましい。
【0276】
高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、質量比[{C(La2O3)+C(Y2O3)}/{C(B2O3)+C(BaO)}]は上記範囲とすることが好ましい。
【0277】
第3実施形態において、[C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)]の下限は、好ましくは0であり、さらには0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06の順により好ましい。該値は0であってもよい。また、その上限は、好ましくは0.30であり、さらには0.25、0.20、0.18、0.16、0.14、0.12、0.10、0.08の順により好ましい。
【0278】
平均線膨張係数αLが大きく、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、[C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)]は上記範囲とすることが好ましい。
【0279】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、質量比[C(Y2O3)/{C(La2O3)+C(Y2O3)+C(Gd2O3)}]の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32、0.33、0.34の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.59、0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53、0.52、0.51、0.50、0.49、0.48、0.47、0.46の順により好ましい。
【0280】
平均線膨張係数αLが大きく、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、質量比[C(Y2O3)/{C(La2O3)+C(Y2O3)+C(Gd2O3)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0281】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、質量比[C(Y2O3)/{C(La2O3)+C(Y2O3)+C(TiO2)}]の下限は、好ましくは0.20であり、さらには0.21、0.22、0.23、0.24、0.25、0.26、0.27、0.28、0.29、0.30、0.31、0.32の順により好ましい。また、該質量比の上限は、好ましくは0.50であり、さらには0.49、0.48、0.47、0.46、0.45の順により好ましい。
【0282】
平均線膨張係数αLが大きく、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、質量比
[C(Y2O3)/{C(La2O3)+C(Y2O3)+C(TiO2)}]を上記範囲とすることが好ましい。
【0283】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、合計含有量[C(BaO)+C(La2O3)+C(Y2O3)]の下限は、好ましくは50であり、さらには52、54、56、58、60、62、64、66、68、70の順により好ましい。また、該合計含有量の上限は、好ましくは85であり、さらには83、81、79、77、76の順により好ましい。
【0284】
平均線膨張係数αLの低下が抑制され、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスを得る観点から、合計含有量[C(BaO)+C(La2O3)+C(Y2O3)]を上記範囲とすることが好ましい。
【0285】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2の含有量の下限は、好ましくは3.0%であり、さらには3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%の順により好ましい。また、SiO2の含有量の上限は、好ましくは15.0%であり、さらには14.5%、14.0%、13.5%、13.0%、12.5%、12.0%、11.5%、11.0%、10.5%、10.0%の順により好ましい。
【0286】
SiO2は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性、化学的耐久性、耐候性を改善し、熔融ガラスの粘度を高め、熔融ガラスを成形しやすくする働きを有する。一方、SiO2の含有量が多いと、平均線膨張係数αLが比較的低下しやすいほか、屈折率ndが低下するおそれがある。そのため、SiO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0287】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、B2O3の含有量の下限は、好ましくは8.0%であり、さらには8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、10.5%、11.0%、11.5%、12.0%の順により好ましい。また、B2O3の含有量の上限は、好ましくは20.0%であり、さらには19.5%、19.0%、18.5%、18.0%、17.5%、17.0%、16.5%、16.0%、15.5%、15.0%の順により好ましい。
【0288】
B2O3は、ガラスのネットワーク形成成分であり、ガラスの熱的安定性を改善する働きを有する。また、ネットワーク形成成分の中では比較的、平均線膨張係数αLを低下させない成分である。一方、B2O3の含有量が多いと、屈折率ndが低下するおそれがある。そのためB2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0289】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Al2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、Al2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Al2O3の含有量は0%でもよい。
【0290】
Al2O3は、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善する働きを有するガラス成分であり、ネットワーク形成成分として考えることができる。一方、Al2O3の含有量が多くなると、屈折率ndが低下し、ガラスの熱的安定性および熔融性が低下するおそれがある。そのため、Al2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0291】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、P2O5の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、P2O5の含有量の下限は、好ましくは0%である。P2O5の含有量は0%でもよい。
【0292】
P2O5は、屈折率ndを低下させる成分であり、加えてガラスの熱的安定性を低下させる成分でもある。そのため、P2O5の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0293】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、Li2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。Li2Oの含有量は0%でもよい。
【0294】
Li2Oは、ガラスの低比重化に寄与する成分であり、ガラスの熔融性を改善し、また平均線膨張係数αLを大きくする働きを有する。さらにガラス転移温度Tgの低下に寄与する成分であり、精密プレス成型の際には成形性の向上に寄与する。一方、Li2Oの含有量が多くなると、耐失透性や耐酸性が低下する。したがって、Li2Oの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0295】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Na2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、Na2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。Na2Oの含有量は0%でもよい。
【0296】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、K2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、K2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。K2Oの含有量は0%でもよい。
【0297】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Na2OおよびK2Oの合計含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.001%、0.01%、0.05%の順により好ましい。
【0298】
Na2O、K2Oは、いずれもガラスの熔融性を改善する働きを有する。また平均線膨張係数を大きくする働きを有する。一方、これらの含有量が多くなると、熱的安定性、耐失透性、化学的耐久性、耐候性が低下する。したがって、Na2O、およびK2Oの各含有量およびその合計含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0299】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Cs2Oの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、Cs2Oの含有量の下限は、好ましくは0%である。Cs2Oの含有量は0%でもよい。
【0300】
Cs2Oは、ガラスの熔融性を改善する働きを有するが、含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性、屈折率ndが低下し、また熔解中にガラス成分の揮発が増加して、所望のガラスが得られなくなるおそれがある。そのため、Cs2Oの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0301】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%である。該合計含有量は0%でもよい。ガラスの液相温度が上昇するのを抑制する観点から、Li2O、Na2O、K2OおよびCs2Oの合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0302】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、MgOの含有量の下限は、好ましくは0%である。MgOの含有量は0%でもよい。
【0303】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、CaOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.2%、0.1%の順により好ましい。また、CaOの含有量の下限は、好ましくは0%である。CaOの含有量は0%でもよい。
【0304】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、SrOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%の順により好ましい。また、SrOの含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.05%、0.10%、0.15%、0.20%の順により好ましい。
【0305】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、MgO、CaO、およびSrOの合計含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.05%、0.10%、0.15%、0.20%の順により好ましい。該合計含有量は0%でもよい。
【0306】
MgO、CaO、SrOは、いずれもガラスの熔融性を改善する働きを有するガラス成分であり、平均線膨張係数を比較的大きくする働きも有する。しかし、これらガラス成分の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性および耐失透性が低下する。そのため、これらガラス成分の各含有量および合計含有量は、上記範囲であることが好ましい。
【0307】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、BaOの含有量の下限は、好ましくは20%であり、さらには21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%の順により好ましい。また、BaOの含有量の上限は、好ましくは45%であり、さらには44%、43%、42%、41%、40%、39%、38%、37%、36%、35%、34%の順により好ましい。
【0308】
BaOは、高屈折率・低分散特性を損なうことなく、平均線膨張係数αLを増加させる働きを有するガラス成分である。BaOの含有量を上記範囲とすることで、高屈折率・低分散であって、平均線膨張係数αLが改善された光学ガラスが得られる。一方で、BaOの含有量が多すぎると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスが失透するおそれがある。
【0309】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、SiO2およびB2O3の合計含有量の上限は、好ましくは30%であり、さらには29%、28%、27%、26%、25%、24%、23%、22%、21%、20%の順により好ましい。また、該合計含有量の下限は、好ましくは13%であり、さらには14%、15%、16%、17%、18%の順により好ましい。
【0310】
ガラスの安定性を保持しつつ、屈折率の低下を抑制する観点から、SiO2およびB2O3の合計含有量は上記範囲とすることが好ましい。
【0311】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、BaOの含有量と、SiO2およびB2O3の合計含有量との質量比[BaO/(SiO2+B2O3)]の上限は、好ましくは3.00であり、さらには2.80、2.60、2.40、2.20、2.00、1.80、1.70の順により好ましい。また、該質量比の下限は、好ましくは0.60であり、さらには0.80、0.90、1.00、1.10、1.20、1.30の順により好ましい。
【0312】
ガラスの安定性が保持されかつ平均線膨張係数αLが大きいガラスを得る観点から、該質量比は上記範囲とすることが好ましい。
【0313】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZnOの含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.05%、0.03%、0.02%、0.01%の順により好ましい。また、ZnOの含有量の下限は、好ましくは0%である。ZnOの含有量は0%でもよい。
【0314】
ZnOは、ガラスの熔融性を改善する働きを有するガラス成分である。しかし、ZnOの含有量が多すぎると、ガラスの比重が増大し、平均線膨張係数αLが低下するおそれがある。また、ガラスの低分散性を損なうおそれもある。さらに、ガラス転移温度Tgが低下するおそれもある。そのため、ZnOの含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0315】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、La2O3の含有量の下限は、好ましくは15%であり、さらには16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%の順により好ましい。また、La2O3の含有量の上限は、好ましくは40%であり、さらには39%、38%、37%、36%、35%、34%、33%、32%、31%、30%、29%、28%の順により好ましい。
【0316】
La2O3は、アッベ数νdの減少を抑えつつ屈折率を高める働きを有するガラス成分である。したがって、La2O3の含有量を上記範囲とすることで、高屈折率・低分散であって、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の増大を抑制した光学ガラスが得られる。
【0317】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Gd2O3の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、10%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%の順により好ましい。また、Gd2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Gd2O3の含有量は0%でもよい。
【0318】
Gd2O3は高屈折・低分散であって平均線膨張係数αLの低下を抑制できる成分であるが、BaOを多く導入する本実施形態のガラスにおいてはGd2O3の含有量が多くなり過ぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下し、製造中にガラスが失透しやすくなる。また、Gd2O3の含有量が多くなり過ぎるとガラスの比重が増大し、好ましくない。また原料コスト削減の観点においても不利である。したがって、Gd2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0319】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Y2O3の含有量の下限は、好ましくは5%であり、さらには6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%の順により好ましい。また、Y2O3の含有量の上限は、好ましくは25%であり、さらには24%、23%、22%、21%、20%、19%の順により好ましい。
【0320】
Y2O3は、アッベ数νdの減少を抑えつつ屈折率を高める働きを有する成分である。
また、アルカリ成分やアルカリ土類成分の中でBaOまたはSrOを比較的多く導入する本実施形態のガラスにおいて、平均線膨張係数αLの低下を抑制し、高屈折低分散特性を付与するために有効な成分である。また、ガラスの化学的耐久性、耐候性を改善し、ガラス転移温度を高める働きも有する。一方で、Y2O3の含有量が多くなり過ぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがある。そのため、Y2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0321】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、ZrO2の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2.5%の順により好ましい。また、ZrO2の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.005%、0.01%、0.05%、0.1%、0.5%、1.0%、1.5%、2.0%の順により好ましい。ZrO2の含有量は0%でもよい。
【0322】
ZrO2は、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。しかし、ZrO2は平均線膨張係数αLを比較的小さくする成分であるほか、相対屈折率の温度係数(dn/dT)の温度依存性を増大させる成分でもある。また、含有量があまりにも多すぎると、著しく熱的安定性が低下するおそれがある。そのため、ZrO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0323】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、TiO2の含有量の上限は、好ましくは15%であり、さらには14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%の順により好ましい。また、TiO2の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには1%、2%、3%、4%、5%の順により好ましい。TiO2の含有量は0%でもよい。
【0324】
TiO2は、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。一方、TiO2の含有量が多すぎると、平均線膨張係数αLが低下するおそれがあるほか、アッベ数νdが低下するおそれがあり、またガラスの着色が強まり、さらに熔融性が悪化するおそれがある。そのため、TiO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0325】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Nb2O5の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、5%、3%、2%、1%の順により好ましい。また、Nb2O5の含有量の下限は、好ましくは0%であり、さらには0.001%、0.003%、0.005%、0.010%、0.050%、0.080%、0.100%の順により好ましい。Nb2O5の含有量は0%でもよい。
【0326】
Nb2O5は、屈折率を高める働きのある成分であり、適量を含有させることにより、ガラスの熱的安定性を改善する働きも有する。一方、Nb2O5の含有量が多すぎると、平均線膨張係数αLが低下するおそれがあるほか、ガラスの着色が強まるおそれがある。そのため、Nb2O5の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0327】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、WO3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.1%の順により好ましい。また、WO3の含有量の下限は、好ましくは0%である。WO3の含有量は0%でもよい。
【0328】
WO3は他の高分散成分に対してガラス転移温度Tgを下げる働きを持つため、ガラスを軟化成形するとき、とりわけ精密プレスを実施するとき、成形型やその保護膜、成形機
を保護するために成形温度を低下させる目的で導入することが出来る。一方でガラスの透過率を高める観点、およびガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)の上昇を抑える観点から、WO3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0329】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Bi2O3の含有量の上限は、好ましくは10%であり、さらには8%、6%、4%、2%、1%、0.5%、0.1%の順により好ましい。また、Bi2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。Bi2O3の含有量は0%でもよい。
【0330】
Bi2O3は、屈折率ndを高める一方で、アッベ数νdを低下させる成分である。また、ガラスの着色を増大させやすい成分でもある。したがって、Bi2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0331】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Ta2O5の含有量の上限は、好ましくは20%であり、さらには15%、13%、10%、5%、3%、1%の順により好ましい。また、Ta2O5の含有量の下限は、好ましくは0%である。Ta2O5の含有量は0%でもよい。
【0332】
Ta2O5は、ガラスの熱的安定性および耐失透性を改善する働きを有するガラス成分である。一方、Ta2O5は、屈折率を上昇させ、ガラスを高分散化させる。また、Ta2O5の含有量が多くなると、ガラスの熱的安定性が低下し、ガラスを熔融するときに、ガラス原料の熔け残りが生じやすくなる。また、平均線膨張係数αLを比較的低下させる成分である。そのため、Ta2O5の含有量は上記範囲であることが好ましい。さらに、Ta2O5は、他のガラス成分と比較し、極めて高価な成分であり、Ta2O5の含有量が多くなるとガラスの生産コストが増大する。さらに、Ta2O5は他のガラス成分と比べて分子量が大きいため、ガラスの比重を増大させ、結果的に光学素子の重量を増大させる。
【0333】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Sc2O3の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Sc2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0334】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、HfO2の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、HfO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0335】
Sc2O3、HfO2は、いずれも屈折率ndを高める働きを有し、また高価な成分である。そのため、Sc2O3、HfO2の各含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0336】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Lu2O3の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Lu2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0337】
Lu2O3は、屈折率ndを高める働きを有する。また、分子量が大きいことから、ガラスの比重を増加させるガラス成分でもある。そのため、Lu2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0338】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、GeO2の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、GeO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0339】
GeO2は、屈折率ndを高める働きを有し、また、一般的に使用されるガラス成分の中で、突出して高価な成分である。したがって、ガラスの製造コストを低減する観点から、GeO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0340】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、La2O3の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、La2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。La2O3の含有量は0%であってもよい。
【0341】
La2O3の含有量が多くなるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下し、製造中にガラスが失透しやすくなる。したがって、熱的安定性および耐失透性の低下を抑制する観点から、La2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0342】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、Yb2O3の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、Yb2O3の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0343】
Yb2O3の含有量が多すぎるとガラスの熱的安定性および耐失透性が低下するおそれがある。また、一般的に使用されるガラス成分の中でも、高価な成分である。ガラスの熱的安定性の低下を防ぎ、比重の増大を抑制する観点、またガラスの製造コストを抑える観点から、Yb2O3の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0344】
第3実施形態に係る光学ガラスは、主として上述のガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、P2O5、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、Bi2O3、Ta2O5、Sc2O3、HfO2、Lu2O3、GeO2、およびYb2O3で構成されていることが好ましく、上述のガラス成分の合計含有量は、95%以上が好ましく、98%以上より好ましく、99%以上がさらに好ましく、99.5%以上が一層好ましい。
【0345】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、TeO2の含有量の上限は、好ましくは2%である。また、TeO2の含有量の下限は、好ましくは0%である。
【0346】
TeO2は毒性を有することから、TeO2の含有量を低減させることが好ましい。そのため、TeO2の含有量は上記範囲であることが好ましい。
【0347】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、フッ素Fの含有量は3%以下であることが好ましく、その上限は1%、0.5%、0.3%の順により好ましい。Fの含有量は少ない方が好ましく、その下限は好ましくは0%である。Fの含有量は0%でもよい。また、好ましくは、フッ素Fを実質的に含まない。
【0348】
Fの含有量を上記範囲とすることで、ガラスを熔解中の揮発を抑えることができ、屈折率の変動、脈理を抑えることができる。
【0349】
なお、第3実施形態に係る光学ガラスは、基本的に上記ガラス成分により構成されることが好ましいが、本発明の作用効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することも可能である。また、本発明において、不可避的不純物の含有を排除するものではない。
【0350】
<その他の成分組成>
Pb、As、Cd、Tl、Be、Seは、いずれも毒性を有する。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0351】
U、Th、Raはいずれも放射性元素である。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0352】
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tmは、ガラスの着色を増大させ、蛍光の発生源となり得る。そのため、本実施形態に係る光学ガラスがこれら元素をガラス成分として含有しないことが好ましい。
【0353】
Sb(Sb2O3)、Ce(CeO2)は清澄剤として機能する任意に添加可能な元素である。このうち、Sb(Sb2O3)は、清澄効果の大きな清澄剤である。
【0354】
Sb2O3の含有量は、外割り表示とする。すなわち、Sb2O3およびCeO2以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのSb2O3の含有量は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.1質量%未満である。さらに、は0.05質量%未満、0.03質量%未満、0.02質量%未満、0.01%未満の順に好ましい。Sb2O3の含有量は0質量%であってもよい。
【0355】
CeO2の含有量も、外割り表示とする。すなわち、CeO2、Sb2O3以外の全ガラス成分の合計含有量を100質量%としたときのCeO2の含有量は、好ましくは2質量%未満、より好ましくは1質量%未満、さらに好ましくは0.5質量%未満、一層好ましくは0.1質量%未満の範囲である。CeO2の含有量は0質量%であってもよい。CeO2の含有量を上記範囲とすることによりガラスの清澄性を改善できる。
【0356】
第3実施形態に係る光学ガラスにおいて、ガラス特性は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0357】
第3実施形態に係る光学ガラスの製造および光学素子等の製造は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0358】
以下、第4実施形態について詳細に説明する。
【0359】
第4実施形態
第4実施形態に係る光学ガラスは、
酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量をそれぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とし、
SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とし、
A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}、
B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2
O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}、
C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}、
D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)、
E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}、
G1=C(BaO)/M(BaO)+C(La2O3)/M(LaO1.5)+C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Y2O3)/M(YO1.5)とするとき、
A1が1/3以上であり、
B1が0.62以上であり、
C1が8/9以上であり、
D1が13.50以下であり、
E1が1.25以上であり、
G1が0.47以上である。
【0360】
第4実施形態では、酸化物基準において、ガラス成分SiO2、B2O3、Al2O3、Li2O、Na2O、K2O、Cs2O、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、La2O3、Gd2O3、Y2O3、ZrO2、TiO2、Nb2O5、WO3、およびBi2O3の質量%表示による含有量を、それぞれC(SiO2)、C(B2O3)、C(Al2O3)、C(Li2O)、C(Na2O)、C(K2O)、C(Cs2O)、C(MgO)、C(CaO)、C(SrO)、C(BaO)、C(ZnO)、C(La2O3)、C(Gd2O3)、C(Y2O3)、C(ZrO2)、C(TiO2)、C(Nb2O5)、C(WO3)、およびC(Bi2O3)とする。
【0361】
上記以外のガラス成分Ta2O5、Sc2O3、HfO2、Lu2O3、GeO2、およびYb2O3の質量%表示による含有量は、それぞれC(Ta2O5)、C(Sc2O3)、C(HfO2)、C(Lu2O3)、C(GeO2)、およびC(Yb2O3)とする。
【0362】
第4実施形態では、SiO2、BO1.5、AlO1.5、LiO0.5、NaO0.5、KO0.5、CsO0.5、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LaO1.5、GdO1.5、YO1.5、ZrO2、TiO2、NbO2.5、WO3、およびBiO1.5の各化学式量をそれぞれM(SiO2)、M(BO1.5)、M(AlO1.5)、M(LiO0.5)、M(NaO0.5)、M(KO0.5)、M(CsO0.5)、M(MgO)、M(CaO)、M(SrO)、M(BaO)、M(ZnO)、M(LaO1.5)、M(GdO1.5)、M(YO1.5)、M(ZrO2)、M(TiO2)、M(NbO2.5)、M(WO3)、およびM(BiO1.5)とする。
【0363】
上記以外のガラス成分TaO2.5、ScO1.5、HfO2、LuO1.5、GeO2、およびYbO1.5の各化学式量は、それぞれM(TaO2.5)、M(ScO1.5)、M(HfO2)、M(LuO1.5)、M(GeO2)、およびM(YbO1.5)とする。
【0364】
すなわち、第4実施形態では、例えば酸化物XyOzについて、質量%表示による含有
量をC(XyOz)とできる。また、酸化物XyOzにおけるカチオン(カチオン“X”)1モル当たりの化学式量、すなわち、XOz/yにおける化学式量をM(XOz/y)とできる。そして、{C(XyOz)/M(XOz/y)}の式で表されるのは、モル%表示でのカチオン“X”の含有量、すなわち、カチオン%表示での“X”の含有量である。
【0365】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、A1={C(B2O3)/M(BO1.5)}/{C(B2O3)/M(BO1.5)+C(SiO2)/M(SiO2)}とするとき、A1は1/3以上である。A1の下限は、好ましくは1.1/3であり、さらには1.2/3、1.3/3、1.4/3、1.5/3、1.6/3、1.7/3、1.8/3、1.9/3の順により好ましい。また、A1の上限は、好ましくは3.0/3であり、さらには2.9/3、2.8/3、2.7/3、2.6/3、2.5/3、2.4/3、2.3/3の順により好ましい。
【0366】
A1を上記範囲とすることで、-30~70℃における平均線膨張係数αLの大きい、低分散の光学ガラスを得ることができる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。さらに、La2O3を多量に含有させる場合でもガラスの熱的安定性の低下を抑制できる。一方、A1が小さすぎると、屈折率ndを高め、平均線膨張係数αLの低下を防ぐガラス成分であるLa2O3およびY2O3を多量に含む場合にガラスが不安定になるおそれがある。またA1が大きすぎると、ガラスの安定性、化学的耐久性、および機械的特性が低下するおそれがある。
【0367】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、B1={C(BaO)/M(BaO)+C(SrO)/M(SrO)}/{C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(Cs2O)/M(CsO0.5)+C(MgO)/M(MgO)+C(CaO)/M(CaO)+C(SrO)/M(SrO)+C(BaO)/M(BaO)}とするとき、B1は0.62以上である。B1の下限は、好ましくは0.63であり、さらには0.65、0.67、0.69、0.71、0.73、0.75、0.77、0.79、0.81、0.83、0.85、0.87の順により好ましい。また、B1の上限は、好ましくは1.00であり、さらには0.99、0.98の順により好ましい。B1は1.00であってもよい。
【0368】
B1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率の光学ガラスが得られる。また、平均線膨張係数αLを大きくしつつ熱的安定性の低下を抑制できる。一方、B1が小さすぎると、平均線膨張係数αLおよび屈折率ndが低下し、ガラスの安定性が損なわれるおそれがある。
【0369】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、C1={C(BaO)/M(BaO)+C(Li2O)/M(LiO0.5)}/{C(Na2O)/M(NaO0.5)+C(K2O)/M(KO0.5)+C(SiO2)/M(SiO2)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)}とするとき、C1は8/9以上である。C1の下限は、好ましくは8.2/9であり、さらには8.4/9、8.6/9、8.8/9、9.0/9、9.2/9、9.4/9、9.5/9の順により好ましい。また、C1の上限は、好ましくは27/9であり、さらには25/9、23/9、21/9、19/9、17/9、15/9、13/9、12/9の順により好ましい。
【0370】
C1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの大きい、高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。また、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を低減できる。一方、C1が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、C1が大きすぎるとガラスの安定性が低下するおそれがある
。
【0371】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、D1=C(Gd2O3)+C(ZnO)+C(TiO2)+C(Nb2O5)+C(WO3)+C(ZrO2)とするとき、D1は13.50以下である。D1の上限は、好ましくは12.00であり、さらには11.00、10.50、10.00、9.50、9.00、8.50の順により好ましい。また、D1の下限は、好ましくは0であり、さらには1、2、3、4、5、6、7、8の順により好ましい。D1は、0であってもよい。
【0372】
D1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの低下を抑制できる。また高分散化を抑えて、高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。さらに、ガラスの相対屈折率の温度係数(dn/dT)を増大させない効果もある。D1は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、D1を0より大きくすることもできる。一方、D1が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0373】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、E1={C(La2O3)+C(Gd2O3)+C(Y2O3)}/{C(SiO2)+C(B2O3)+C(Al2O3)}とするとき、E1は1.25以上である。E1の下限は、好ましくは1.30であり、さらには1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70の順により好ましい。また、E1の上限は、好ましくは3.00であり、さらには2.80、2.60、2.40、2.20、2.10の順により好ましい。
【0374】
E1を上記範囲とすることで、高屈折率低分散性の光学ガラスが得られる。一方、E1が小さすぎると、ガラスの高屈折高分散性が失われ、平均線膨張係数αLが低下するおそれがある。またE1が大きすぎるとガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0375】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、G1=C(BaO)/M(BaO)+C(La2O3)/M(LaO1.5)+C(Li2O)/M(LiO0.5)+C(Y2O3)/M(YO1.5)とするとき、G1は0.47以上である。G1の下限は、好ましくは0.475であり、さらには0.48、0.485の順により好ましい。また、G1の上限は、好ましくは0.60であり、さらには0.59、0.58、0.57、0.56、0.55、0.54、0.53の順により好ましい。
【0376】
G1を上記範囲とすることで、平均線膨張係数αLの低下を抑制でき、かつ高屈折率低分散性の光学ガラスを得ることができる。一方、G1が小さすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、ガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。また、G1が大きすぎると、ガラスの熱的安定性が低下するおそれがある。
【0377】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、F1={C(Gd2O3)/M(GdO1.5)+C(ZnO)/M(ZnO)+C(TiO2)/M(TiO2)+C(Nb2O5)/M(NbO2.5)+C(WO3)/M(WO3)+C(Bi2O3)/M(BiO1.5)}/{C(Y2O3)/M(YO1.5)}とするとき、F1の上限は、好ましくは2.0であり、さらには1.8、1.6、1.4、1.2、1.1、1.0、0.9、0.8、0.6の順により好ましい。また、F1の下限は、好ましくは0であり、さらには0.1、0.2、0.3、0.4の順により好ましい。F1は0であってもよい。
【0378】
平均線膨張係数αLを高め、ガラスの熱的安定性の低下を抑制する観点から、F1は上記範囲とすることが好ましい。F1は0であってもよいが、アッベ数νd等の光学恒数を調整するために、F1を0より大きくすることもできる。一方、F1が大きすぎると、平均線膨張係数αLが低下し、またガラスの高屈折低分散性が失われるおそれがある。
【0379】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、上記以外のガラス成分の含有量および比率は、第3実施形態と同様とすることができる。
【0380】
第4実施形態に係る光学ガラスにおいて、ガラス特性は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0381】
第4実施形態に係る光学ガラスの製造および光学素子等の製造は、第1実施形態と同様とすることができる。
【0382】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0383】
(実施例1)
実施例1において、表1(2-1)~(2-3)、(3-1)~(3-3)、および(4-1)~(4-3)に示す数値は、表1(1-1)~(1-3)で示すガラス組成から算出したものである。同様に、表2(2-1)~(2-3)、(3-1)~(3-3)、および(4-1)~(4-3)に示す数値は、表2(1-1)~(1-3)で示すガラス組成から算出したものである。
【0384】
実施例1において、表1(1-1)~(1-3)ではカチオン%表示にて、表2(1-1)~(1-3)では質量%表示にて、試料No.1~120および比較例Aのガラス組成を示している。すなわち、表1(1-1)~(1-3)と表2(1-1)~(1-3)とでは、ガラス組成の表示方法は異なるが、同じ試料No.の光学ガラスは、同じ組成を有する同じ光学ガラスを意味している。したがって、表1(1-1)~(1-3)および表2(1-1)~(1-3)は、実質的に同じ光学ガラスとその結果を示している。
【0385】
なお、表1(1-1)~(1-3)については、カチオン%表示にてガラス組成を表示しているが、いずれもアニオン成分の全量がO2-である。すなわち、表1(1-1)~(1-3)に記載されている組成は、いずれもO2-の含有量が100アニオン%である。
【0386】
また、表2(1-1)~(1-3)における質量%表示の組成は、表1(1-1)~(1-3)におけるカチオン%表示の組成を変換したものである。
【0387】
[ガラスサンプルの作製]
表1(1-1)~(1-3)、表2(1-1)~(1-3)に示す試料No.1~120、および比較例Aの組成を有するガラスとなるように、各成分に対応する化合物原料、すなわち、リン酸塩、炭酸塩、酸化物等の原料を秤量し、十分混合して調合原料とした。該調合原料は150gのガラスが得られるよう調合した。該調合原料を白金製坩堝に投入し、大気雰囲気下で1200~1400℃に加熱して熔融し、攪拌により均質化、清澄して熔融ガラスを得た。該熔融ガラスを成形型に鋳込んで成形し、徐冷して、ブロック形状のガラスサンプルを得た。
なお、調合原料を石英ガラス製坩堝に投入し、熔融した後、白金製坩堝へ移してさらに加熱して熔融し、攪拌により均質化、清澄して得た熔融ガラスを成形型に鋳込んで成形、徐冷してもよい。
【0388】
[ガラスサンプルの評価]
得られたガラスサンプルについて、再度加熱して、アニール温度I(℃)で0.5hr保持した後、降温速度-30℃/hrでアニール温度Iより120℃低い温度まで徐冷した。アニール温度Iは、ガラス転移温度Tgより8℃高い温度(Tg+8℃)以上であり、Tgより27℃高い温度(Tg+27℃)以下となるように設定した。
【0389】
上記のとおり、再度加熱してアニールしたガラスサンプルについて、以下に示す方法にて、ガラス組成、屈折率nd、アッベ数νd、ガラス転移温度Tg、比重、λ80、λ70、λ5、平均線膨張係数αL、平均線膨張係数α100-300を測定した。結果を表3に示す。
【0390】
〔1〕ガラス組成
得られたガラスサンプルについて、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)で各ガラス成分の含有量を測定した。なお、表1に示す試料No.1~120および比較例Aの全てのガラスサンプルにおいて、Fの含有量は0%であった。
【0391】
〔2〕比重
日本光学硝子工業会規格JOGIS05に基づいて測定した。
【0392】
〔3〕屈折率ndおよびアッベ数νd
日本産業規格JISB-7071-1に基づいて測定した。
【0393】
〔4〕λ80、λ70、λ5
ガラスサンプルを、厚さ10mmで、互いに平行かつ光学研磨された平面を有するように加工し、波長280nmから700nmまでの波長域における分光透過率を測定した。光学研磨された一方の平面に垂直に入射する光線の強度を強度Aとし、他方の平面から出射する光線の強度を強度Bとして、分光透過率B/Aを算出した。分光透過率が80%になる波長をλ80とし、分光透過率が70%になる波長をλ70とし、分光透過率が5%になる波長をλ5とした。なお、分光透過率には試料表面における光線の反射損失も含まれる。
【0394】
〔5〕ガラス転移温度Tg
ガラス転移温度Tgは、熱機械分析装置(TMA)(マック・サイエンス製、TMA-
4000S)を使用し、昇温速度4℃/分にて測定した。
【0395】
〔6〕平均線膨張係数αL
得られたガラスサンプルについて、JOGIS16の規定を参照して平均線膨張係数を測定した。平均線膨張係数はNETZSCH JAPAN社製の熱機械分析装置(TMA4000SE)を使用し測定した。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とした。まず、液体窒素を用いて試料温度が-80℃以下になるまで冷却し、20分間保持した後、測定を開始した。測定中は試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように320℃まで昇温させながら、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定した。-30~70℃における線膨張係数の平均値を平均線膨張係数αLとした。
【0396】
〔7〕平均線膨張係数α100-300
得られたガラスサンプルについて、JOGIS08の規定を参照して平均線膨張係数を測定した。平均線膨張係数はNETZSCH JAPAN社製の熱機械分析装置(TMA4000SE)を使用し測定した。試料は長さ20mm±0.5mm、直径5mm±0.5mmの丸棒とした。測定中は試料に98mNの荷重を印加した状態で、4℃毎分の一定速度で上昇するように昇温させながら、温度と試料の伸びを1秒刻みで測定した。100~300℃における線膨張係数の平均値を平均線膨張係数α100-300とした。
【0397】
【0398】
【0399】
【0400】
【0401】
【0402】
【0403】
【0404】
【0405】
【0406】
【0407】
【0408】
【0409】
【0410】
【0411】
【0412】
【0413】
【0414】
【0415】
【0416】
【0417】
【0418】
【0419】
【0420】
【0421】
【0422】
【0423】
【0424】
(実施例2)
実施例1で得られたガラスサンプルのうち、No.20および比較例Aの組成を有するサンプルについて、以下に示す方法にて、相対屈折率の温度係数(dn/dT)を測定した。結果を表4に示す。
【0425】
〔8〕相対屈折率の温度係数dn/dT
得られたガラスサンプルについて、再度加熱して、アニール温度II(℃)にて12hr保持したのち、降温速度-10℃/hrでアニール温度IIより200℃低い温度まで徐冷した。アニール温度IIは、以下のように設定した。
・ガラス転移温度Tg(℃)の一の位が0~2の場合:Tgの一の位を0とした値から10を差し引いた温度を、アニール温度IIとする。
・ガラス転移温度Tg(℃)の一の位が3~9の場合:Tgの一の位を0とした値をアニール温度IIとする。
【0426】
上記のとおり、再度加熱してアニールしたガラスサンプルについて、日本産業規格JISB7072-2(光学ガラスにおける屈折率の温度係数の測定方法-第2部:干渉法)により、波長632.8nmの光についての、-40℃から110℃に温度を変化させた際における相対屈折率の温度係数の値を測定した。このうち実施例には代表として、20℃から40℃に温度を変化させた際における相対屈折率の温度係数:dn/dT(rel.@632.8、20-40℃)の値を表示した。また、相対屈折率の温度係数の温度依存性の指標として、-40℃から80℃に温度を変化させた際の温度に対するdn/dT@632.8の変化を線形近似式(y=ax+b)に当てはめたときの、傾きaを求めた。また、切片b、つまり上記近似式における0℃でのdn/dT@632.8の値を求めた。具体的には-30℃から70℃までの範囲において20℃おきの6点の値を線形近似式に当てはめ、各傾きaおよび切片bを求めた。
【0427】
【0428】
(実施例3)
実施例1で得られたガラスサンプルを、切断、研削してカットピースを作製した。カットピースをリヒートプレスによりプレス成形して、光学素子ブランクを作製した。光学素子ブランクを精密アニールし、所要の屈折率になるよう屈折率を精密に調整した後、公知の方法で研削、研磨することで、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズ、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ等の各種レンズが得られた。
【0429】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0430】
例えば、上記に例示されたガラス組成に対し、明細書に記載の組成調整を行うことにより、本発明の一態様にかかる光学ガラスを作製できる。
また、明細書に例示または好ましい範囲として記載した事項の2つ以上を任意に組み合わせることは、もちろん可能である。