IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 黒崎播磨株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-連続鋳造用のストッパー 図1
  • 特開-連続鋳造用のストッパー 図2A
  • 特開-連続鋳造用のストッパー 図2B
  • 特開-連続鋳造用のストッパー 図3A
  • 特開-連続鋳造用のストッパー 図3B
  • 特開-連続鋳造用のストッパー 図4
  • 特開-連続鋳造用のストッパー 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109405
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】連続鋳造用のストッパー
(51)【国際特許分類】
   B22D 41/18 20060101AFI20240806BHJP
   B22D 11/10 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B22D41/18
B22D11/10 310P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014179
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福永 新一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 昭成
(72)【発明者】
【氏名】平田 秀明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智文
(72)【発明者】
【氏名】山本 泉華
【テーマコード(参考)】
4E014
【Fターム(参考)】
4E014GA00
(57)【要約】
【課題】先端部に亀裂が発生することを抑制することのできる連続鋳造用のストッパーを提供する。
【解決手段】芯金2と、芯金2の周囲に設けられた耐火物製の本体部3と、本体部3の下方に設けられた耐火物製の先端部4とを備える連続鋳造用のストッパー1である。芯金2は、本体部3の下端部を支持するための鍔部23と、鍔部23の下方に設けられ先端部4を固定するための固定部24とを含む。先端部4は固定部24が係合する係合部41を含む。先端部4の上端から下端までの上下方向の長さをA、先端部4の上端から係合部41の下端までの上下方向の長さをBとしたとき、B/Aが0.05以上0.3以下である。本体部3と先端部4との境界にはモルタル5が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、前記芯金の周囲に設けられた耐火物製の本体部と、前記本体部の下方に設けられた耐火物製の先端部とを備える連続鋳造用のストッパーであって、
前記芯金は、前記本体部の下端部を支持するための鍔部と、前記鍔部の下方に設けられ前記先端部を固定するための固定部とを含み、
前記先端部は前記固定部が係合する係合部を含み、
前記先端部の上端から下端までの上下方向の長さをA、前記先端部の上端から前記係合部の下端までの上下方向の長さをBとしたとき、B/Aが0.05以上0.3以下であり、
前記本体部と前記先端部との境界にはモルタルが設けられている、連続鋳造用のストッパー。
【請求項2】
前記固定部は凸状部を含み、前記係合部は前記凸状部が係合する凹状部よりなる、請求項1に記載の連続鋳造用のストッパー。
【請求項3】
前記固定部は雄ネジ部を含み、前記係合部は前記雄ネジ部が係合する雌ネジ部よりなる、請求項1に記載の連続鋳造用のストッパー。
【請求項4】
前記先端部は前記鍔部と対向する凸状のダボ部を含み、前記係合部は前記ダボ部内に設けられている、請求項1から3のいずれか一項に記載の連続鋳造用のストッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼の連続鋳造において主としてタンディッシュから鋳型に溶鋼を排出する際に、そのタンディッシュの底部に設置されているノズルに上方から嵌合することにより溶鋼の流量制御を行う連続鋳造用のストッパーに関する。なお、本明細書では「連続鋳造用のストッパー」を単に「ストッパー」ともいう。
【背景技術】
【0002】
ストッパーの基本構造として、芯金と、この芯金の周囲に設けられた耐火物製の本体部と、この本体部の下方に設けられた耐火物製の先端部とを備え、芯金の下端部に設けられた雄ネジ部に、先端部の上端部に設けられた雌ネジ部を係合(螺合)させることにより芯金の下端部に先端部を固定した構造が知られている(例えば特許文献1、2)。
しかし、このような基本構造のストッパーにおいては、特許文献3の背景技術でも指摘されているように、先端部の外表面と雌ネジ部との間に亀裂が発生しやすいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第2599411号公報
【特許文献2】特許第30108030号公報
【特許文献3】特開2006-224124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、先端部に亀裂が発生することを抑制することのできる連続鋳造用のストッパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記特許文献3では、亀裂発生の要因として熱衝撃及び機械的衝撃が挙げられている。この点、本発明者らが亀裂発生の要因について詳細に解析したところ、溶鋼の連続鋳造中すなわちストッパーの使用中においては、芯金の雄ネジ部と先端部の雌ネジ部との螺合部すなわち係合部に大きな応力が発生し、この応力が亀裂発生の大きな要因であることが判明した。具体的に説明すると、ストッパーの使用中、先端部は溶鋼中に浸漬されることから、特に先端部の外表面側は高温となる。一方、芯金は空気等により冷却されていることから、この芯金の雄ネジ部と係合する先端部の雌ネジ部も冷却されることになり比較的低温となる。この温度差により、先端部の雌ネジ部に特に大きな応力(熱応力)が発生する。
【0006】
本発明者らは上述の要因分析を踏まえ、先端部における亀裂発生を抑制するためには芯金と係合する先端部の係合部の長さを低減することが有効であるとの発想の下、ストッパーの全体構造について検討及び見直しを行った。その結果、ストッパーにおいて芯金の周囲に設けられる本体部の下端部を鍔部で支持する構成とすることにより、係合部の長さを低減することが可能であることを知見した。すなわち、上述の構成とすることにより、係合部の長さは先端部を固定するに足りる程度とすればよいことを知見した。そして、上述の熱応力の低減を図ることも含めて更に検討を重ねた結果、係合部の長さを先端部の長さに対して特定の比率の範囲とすることで、芯金の下端部に係合して先端部を固定するという係合部本来の機能を果たしつつ、上述の熱応力の低減を図り先端部における亀裂発生を抑制することができることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明の一観点によれば、次の連続鋳造用のストッパーが提供される。
芯金と、前記芯金の周囲に設けられた耐火物製の本体部と、前記本体部の下方に設けられた耐火物製の先端部とを備える連続鋳造用のストッパーであって、
前記芯金は、前記本体部の下端部を支持するための鍔部と、前記鍔部の下方に設けられ前記先端部を固定するための固定部とを含み、
前記先端部は前記固定部が係合する係合部を含み、
前記先端部の上端から下端までの上下方向の長さをA、前記先端部の上端から前記係合部の下端までの上下方向の長さをBとしたとき、B/Aが0.05以上0.3以下であり、
前記本体部と前記先端部との境界にはモルタルが設けられている、連続鋳造用のストッパー。
【発明の効果】
【0008】
本発明の連続鋳造用のストッパーによれば、先端部に亀裂が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態であるストッパーの要部の概略縦断面図。
図2A図1のストッパーを構成する芯金の縦断面図。
図2B図1のストッパーを構成する先端部の縦断面図。
図3A】本発明の他の実施形態であるストッパーを構成する芯金の縦断面図。
図3B】本発明の他の実施形態であるストッパーを構成する先端部の平面図及び縦断面図。
図4】熱応力の解析結果を示す図。
図5】B/Aと応力発生指数との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に、本発明の一実施形態であるストッパー1の要部を縦断面で概略的に示している。また、図2A及び図2Bには図1のストッパー1を構成する芯金2及び先端部4をそれぞれ縦断面で示している。図1のストッパー1は、芯金2と、芯金2の周囲に設けられた耐火物製の本体部3と、本体部3の下方に設けられた耐火物製の先端部4とを備えている。
【0011】
芯金2は所定の長さを有し、内部に中空部21を含む。中空部21の上端は開放しており、この中空部21には空気輸送管22が隙間を有して配置されている。空気輸送管22には上端から空気が導入され、下端から中空部21に送られる。これにより芯金2が冷却(空冷)される。なお、図2Aにおいて空気輸送管22は省略している。
【0012】
また芯金2は、その下端部分に、鍔部23と、この鍔部23の下方に設けられた固定部24とを含む。鍔部23は、芯金2の周囲に設けられた本体部3の下端部を支持するためのものである。本実施形態において本体部3は、定形耐火物、具体的には上下方向に積層された複数段のスリーブれんがよりなる。図1には最下段のスリーブれんが31のみが表れており、このスリーブれんが31の下端部が鍔部23で支持されている。なお、本体部3は定形耐火物ではなく、不定形耐火物で形成することもできる。いずれにしても鍔部23で本体部3の下端部を支持する構成とする。
【0013】
固定部24は先端部4を固定するためのものである。本実施形態において固定部24は雄ネジ部241を含んでなる。一方、先端部4はその上端部分に、固定部24が係合する係合部41を含む。本実施形態において係合部41は雄ネジ部241が係合する雌ネジ部411よりなる。すなわち、先端部4の雌ネジ部411を芯金2の雄ネジ部241に係合(螺合)させることにより、先端部4が芯金2の下端部に固定される。
【0014】
図1に表れているように、本体部3と先端部4との境界にはモルタル5が設けられている。また、本実施形態おいて先端部4は、鍔部23と対向する凸状のダボ部42を含む。そして係合部41すなわち雌ネジ部411はダボ部42内に設けられている。また、本体部3の下端部分を構成するスリーブれんが31は凹部311を含み、この凹部311がダボ部42及び鍔部23と嵌り合う関係となっている。
【0015】
以上のような構成において本発明では、先端部4の上端から下端までの上下方向の長さAに対する、先端部4の上端から係合部41の下端までの上下方向の長さBの比、すなわちB/Aを0.05以上0.3以下の範囲とする。B/Aが0.3を超えると、上述した温度差により係合部41に大きな応力が発生し、先端部4に亀裂が発生しやすくなる。一方、B/Aが0.05未満では、芯金2の固定部24に係合して先端部4を固定するという係合部41本来の機能が低下して先端部4が落下するなどのトラブルが発生しやすくなる。
なお、上述の長さBは技術的には、係合部41の上下方向の長さと実質的に同義である。すなわち、本発明は上述の通り、先端部4における亀裂発生を抑制するためには係合部41の長さを低減することが有効であるとの発想に基づきなされたもので、具体的にはB/Aを0.3以下として係合部41の長さを低減することを技術的特徴の一つとする。そして、この技術的特徴は上述の通り、芯金2の周囲に設けられる本体部3の下端部を鍔部23で支持する構成を前提とするものである。すなわち、このような構成を前提とすることで、本体部3の荷重は鍔部23で受けることができる。そのため、係合部41の長さは先端部4を固定するに足りる程度まで短くすることができる。
また、本発明では本体部3と先端部4との境界にモルタル5が設けられている。このモルタル5により、本体部3に対して先端部4を固定することができると共に、本体部3と先端部4との境界から溶鋼が侵入することを抑制することができる。
【0016】
次に、芯金2の固定部24及び先端部4の係合部41の他の構成例について図3A及び図3Bを参照して説明する。なお、図3A及び図3Bにおいて図2A及び図2Bに示した構成と同じ構成には、同じ符号を付して説明を省略する。図3A及び図3Bの構成例において、固定部24は凸状部242を含み、係合部41は凸状部242が係合する凹状部412よりなる。具体的にこの構成例では、芯金2の凸状部242を先端部4の凹状部412へ挿入し、その後、芯金2をその長手方向中心軸周りに回転させることで、凸状部242が凹状部412に係合する。このように固定部24と係合部41との係合を、凸状部242と凹状部412との係合(凹凸係合)とすることにより、図2A及び図2Bのように雄ネジ部241と雌ネジ部411との係合(ネジ係合)とする場合に比べ、係合部41の形状が単純となる。そのため、係合部41に応力が集中しにくくなり、先端部4における亀裂発生を抑制する点からは有効である。
なお、この構成例においても、B/Aは0.05以上0.3以下の範囲とする。
【0017】
以上のように本発明では、芯金2の周囲に設けられる本体部3の下端部を鍔部23で支持する構成を前提としたうえで、係合部41の長さに関し、B/Aを0.05以上0.3以下の範囲とする。これにより、芯金2の下端部に係合して先端部4を固定するという係合部41本来の機能を果たしつつ、上述の熱応力の低減を図り先端部4における亀裂発生を抑制することができる。
また本発明では、本体部3と先端部4との境界にモルタル5が設けられているから、このモルタル5により本体部3に対して先端部4を固定することができると共に、本体部3と先端部4との境界から溶鋼が侵入することを抑制することができる。また図2A及び図2B並びに図3A及び図3Bの例では、先端部4がダボ部42を含むから、本体部3と先端部4との境界が段差状となり、その境界から溶鋼が侵入することを更に抑制することができる。加えて図2A及び図2B並びに図3A及び図3Bの例では、係合部41がダボ部42内に設けられているから、上述の熱応力が更に低減し先端部4における亀裂発生を更に抑制することができる。
【実施例0018】
図1に示した基本構造においてB/Aを変化させて、先端部4に発生する熱応力を解析した。具体的にはストッパー1を1560℃の溶鋼中に浸漬させた条件で、B/Aを変化させた場合の温度差による熱応力を解析した。その際、先端部4の冷却条件は、芯金2の中空部21(直径φ16mm)内に配置した空気輸送管22(内径φ9mm)より、空気を1000L/minの流量で流して芯金2全体を冷却する条件とした。なお、先端部4の上端から下端までの上下方向の長さAは140mmとした。また、空気輸送管22の下端と芯金2の下端との距離は20mmとした。
【0019】
図4に、熱応力の解析結果を示している。また図5には、B/Aと応力発生指数との関係を示している。ここで、応力発生指数とはB/A=0.57の例(図4(a))における最大発生応力を1とする指数である。
図4より、先端部の係合部(雌ネジ部)において最大の熱応力が発生することがわかり、図5も併せて参照すると、B/Aが0.3を超えるとその熱応力が顕著に大きくなることがわかる。すなわち、B/Aを0.3以下とすることで先端部に発生する熱応力を低減でき、先端部に亀裂が発生することを抑制することができるといえる。
【符号の説明】
【0020】
1 ストッパー
2 芯金
21 中空部
22 空気輸送管
23 鍔部
24 固定部
241 雄ネジ部
242 凸状部
3 本体部
31 最下段のスリーブれんが
311 凹部
4 先端部
41 係合部
411 雌ネジ部
412 凹状部
42 ダボ部
5 モルタル
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5