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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109407
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】超薄型パレット
(51)【国際特許分類】
   B65D 19/24 20060101AFI20240806BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B65D19/24 A
B29C49/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014184
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】504249824
【氏名又は名称】ENEOSテクノマテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591215063
【氏名又は名称】三光総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】細井 康行
(72)【発明者】
【氏名】畠山 芳和
【テーマコード(参考)】
3E063
4F208
【Fターム(参考)】
3E063AA03
3E063BA05
3E063CA01
3E063EE01
3E063EE11
3E063GG10
4F208AA06
4F208AA11
4F208AG07
4F208AG26
4F208AG28
4F208AH56
4F208LA01
4F208LA09
4F208LG04
4F208LG22
(57)【要約】
【課題】 強度を維持しつつ、成型時における成形不良の発生を抑制し、生産性を向上することができる超薄型パレットを提供する。
【解決手段】 中空構造を有する超薄型パレット1は、(A)0.02~0.07g/10分のメルトインデックスを有する超高分子量ポリエチレン80~95質量部と、(B)0.2~0.6g/10分のメルトインデックスを有するホモポリプロピレン5~20質量部とを含み、超高分子量ポリエチレンとホモポリプロピレンの合計含有量が100質量部である樹脂組成物で構成される。超薄型パレット1は、第一の板状部11と第二の板状部12の外周縁同士を繋ぐ外周壁部13は、外側に突出する凸部21と内側に後退する凹部22とを有するアウターリブ20を有し、凸部21と凹部22は外周縁に沿って交互に配置される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有する超薄型パレットであって、
0.02~0.07g/10分のメルトインデックスを有する超高分子量ポリエチレン80~95質量部と、
0.2~0.6g/10分のメルトインデックスを有するホモポリプロピレン5~20質量部と
を含み、前記超高分子量ポリエチレンと前記ホモポリプロピレンの合計含有量が100質量部である樹脂組成物で構成される超薄型パレット。
【請求項2】
ブロー成形体である請求項1に記載の超薄型パレット。
【請求項3】
略矩形に形成された第一の板状部と、
略矩形に形成され、内部空間を介して前記第一の板状部と略平行に設けられた第二の板状部と、
前記第一の板状部及び前記第二の板状部の外周縁同士を繋ぐ外周壁部と
を備え、前記外周壁部は、外側に突出する凸部と内側に後退する凹部とを有するアウターリブを有し、前記凸部と前記凹部とが前記外周縁に沿って交互に配置される請求項1又は2に記載の超薄型パレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超薄型パレットに関し、より詳しくは、所定の樹脂組成物からなる中空構造を有する超薄型パレットに関する。
【背景技術】
【0002】
物流分野では、荷物を載せて搬送したり保管したりする際、木製や樹脂製のパレットが使用されている。パレットに荷物を載せれば、フォークリフトで荷物をパレットごと簡単に運ぶことができ、また、パレットに載せた荷物を上下にいくつも重ねて積み上げることで、限られたスペースに多くの荷物を保管することができる。
【0003】
荷物を載せたパレットを積み上げて保管する際、保管スペースの高さに制限がある場合、パレットの高さが薄い方がより沢山の荷物を保管できることから、本願出願人は、超薄型パレットとして、ブロー成形された合成樹脂製の中空構造を有し、略矩形に形成された第一の板状部と、略矩形に形成され、第一の板状部と略平行に設けられた第二の板状部と、第一の板状部及び第二の板状部の外周縁同士を繋ぐ外周壁部とを有し、外周壁部が、外側に突出する凸部と内側に後退する凹部とを有し、凸部と凹部とが外周縁に沿って交互に配置される超薄型パレットを提案している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-6967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この超薄型パレットは、従来のものに比べて薄くしても、単体で載荷に耐える十分な強度を有するものであるものの、従来の合成樹脂を用いて成型すると、パレットの板状部の中央領域が厚く、外周方向に向かって薄くなるという成形不良が生じやすいことがわかった。
【0006】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、強度を維持しつつ、成型時における成形不良の発生を抑制し、生産性を向上することができる超薄型パレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る超薄型パレットは、中空構造を有し、(A)0.02~0.07g/10分のメルトインデックスを有する超高分子量ポリエチレン80~95質量部と、(B)0.2~0.6g/10分のメルトインデックスを有するホモポリプロピレン5~20質量部とを含み、前記超高分子量ポリエチレンと前記ホモポリプロピレンの合計含有量が100質量部である樹脂組成物で構成される。
【0008】
本発明の超薄型パレットは、ブロー成形体であることが好ましい。
【0009】
本発明の超薄型パレットは、略矩形に形成された第一の板状部と、略矩形に形成され、内部空間を介して前記第一の板状部と略平行に設けられた第二の板状部と、前記第一の板状部及び前記第二の板状部の外周縁同士を繋ぐ外周壁部とを備え、前記外周壁部は、外側に突出する凸部と内側に後退する凹部とを有するアウターリブを有し、前記凸部と前記凹部とは前記外周縁に沿って交互に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、所定の樹脂組成物を用いて超薄型パレットを成型することで、単に従来の樹脂でブロー成型するよりも、強度を維持または向上できるとともに、成型時における成形不良の発生を抑制し、生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る超薄型パレットの一実施の形態を示す斜視図である。
図2】(a)は図1に示された超薄型パレットのA-A線に沿った断面図、(b)はB-B線に沿った断面図、(c)はC-C線に沿った断面図である。
図3】本発明に係る超薄型パレットをブロー成形で製造する際の工程を説明する模式図である。
図4】実施例1の超薄型パレットの圧縮試験の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る超薄型パレットの一実施の形態について説明するが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではない。
【0013】
本実施の形態の超薄型パレット(以下、単に「パレット」と呼ぶ)は、荷物を載せて搬送したり保管したりする荷役台であって、袋状の荷物やカートンボックスを載せた状態で、複数段に積み上げることができるものである。
【0014】
パレットは、樹脂組成物をブロー成形して一体形成されたワンピース構造を有し、また詳しくは後述するが中空構造を有している。樹脂組成物は、(A)0.02~0.07g/10分のメルトインデックス(以下、「MI」と呼ぶ)を有する超高分子量ポリエチレン80~95質量部と、(B)0.2~0.6g/10分のMIを有するホモポリプロピレン5~20質量部とを含む組成を有し、(A)超高分子量ポリエチレンと(B)ホモポリプロピレンの合計含有量は100質量部である。
【0015】
(A)超高分子量ポリエチレン
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)は、通常のポリエチレンの分子量が2~30万であるのに対し、100~700万まで高めたエンジニアリングプラスチックである。本実施の形態で用いる超高分子量ポリエチレンは、特に限定されないが、例えば、特定の極限粘度[η]を有する、エチレンの単独重合体、またはエチレンとプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、4-メチル-1-ペンテンもしくは3-メチル-1-ペンテンなどのα-オレフィンとの共重合体を用いることができる。エチレンとα-オレフィンとの共重合体はエチレンを主成分とするものであり、エチレンが50質量%以上、好ましくは70~100質量%、さらに好ましくは90~100質量%である。
【0016】
超高分子量ポリエチレンは、一般的には、懸濁重合によって、反応時間を長めにすることによって分子量を上げるものであるが、気相重合等のその他の方法で重合されたものであってもよい。このように超高分子量ポリエチレンを用いることで、パレットが荷物やリフトのフォークによって摩擦を受ける際に、好適な耐性を示す。
【0017】
本実施の形態で用いる超高分子量ポリエチレンは0.02~0.07g/10分のMIを有するものである。超高分子量ポリエチレンのMIをこの範囲にすることで、パレットの成型時において従来の低密度ポリエチレン等の樹脂を用いた場合よりも溶融樹脂が垂れにくく、且つ成型後のパレットにある程度の硬さを付与することができる。好ましくは0.025~0.035g/10分のMIを有するものがよい。
【0018】
(B)ホモポリプロピレン
本実施の形態で用いるポリプロピレンは、プロピレンのみから重合されるホモポリプロピレンであり、結晶性に富むポリマーである。なお、超高分子量ポリエチレンとの混合を容易にするために、ホモポリプロピレンに少量のエチレンを重合させてもよい。本実施の形態で用いるホモポリプロピレンは0.2~0.6g/10分のMIを有するものである。この範囲のMIを有するホモポリプロピレンを用いることで、超高分子量ポリエチレンのみで成型した場合よりもパレットの剛性を向上させることができ、フォークリフトでの使用に耐える強度および耐久性を付与することができる。好ましくは0.3~0.5g/10分のMIを有するものである。また、成形上の観点から融点が158℃以上、好ましくは161℃以上のものが良い。
【0019】
本実施の形態で用いるポリプロピレンは結晶度が40~70%であることが好ましい。本実施の形態で用いるポリプロピレンはGPCによる分子量分布(Mn/Mw)が2~8であることが好ましい。本実施の形態で用いるポリプロピレンは、いわゆるチグラーナッタ系の触媒やメタロセン系の触媒を用いてプロピレンを多段階に重合させることによって製造したものが好ましいが、この重合方法に限定されるものではなく、バルク重合、溶液重合、気相重合等の公知の重合様式を採用することができる。各重合段階の重合様式は同じでも異なっていてもよい。
【0020】
本実施の形態で用いる樹脂組成物は、(A)超高分子量ポリエチレン80~95質量部と、(B)ホモポリプロピレン5~20質量部とを含み、(A)超高分子量ポリエチレンと(B)ホモポリプロピレンの合計含有量は100質量部である。ホモポリプロピレンが20質量部よりも多いと、パレットの耐衝撃性、特に低温での耐衝撃性が低下するため好ましくない。一方、ホモポリプロピレンが5質量部よりも少ないと、樹脂組成物に十分な硬さを付与できず良好な成形性が得られないともに、詳しくは後述するがパレットのアウターリブ部分の強度が特に弱くなるため好ましくない。
【0021】
(A)超高分子量ポリエチレンと(B)ホモポリプロピレンは、上記の配合割合で溶融混錬して樹脂組成物を得る。より詳しく工程を説明すると、例えば、(A)超高分子量ポリエチレンのペレットと(B)ホモポリプロピレンのペレットを、タンブラーやヘンシェルミキサー等により均一に分散させた後、200~260℃に熱せられた一軸または2軸の押し出し機で、必要に応じてベントオイルを配合し、溶融混錬して樹脂組成物を得る。そして、この樹脂組成物を用いてブロー成形によりパレットを製造する。なお、得られた樹脂組成物をいったんペレット化してもよいし、そのままブロー成形を行ってもよい。
【0022】
なお、樹脂組成物には、本発明の趣旨を逸脱しない限り、従来公知の軟化剤、無機充填剤、補強材、耐熱安定剤、老化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、着色剤、及び滑剤等の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で配合してもよい。
【0023】
上記の樹脂組成物を用いて成型されるパレットの構造について、図1及び図2を参照して説明する。図1に示すように、パレット1は、荷物を支持する上板部(第一の板状部)11と、床面等に密着する下板部(第二の板状部)12と、上板部11及び下板部12の外周縁どうしを繋ぐ外周壁部13とを有する。外周壁部13は、正面壁部、左右側面壁部、背面壁部から構成される。上板部11及び下板部12は同じ形状を有する矩形の平板状であり、パレット1の内部空間Sを挟んで平行に対向配置される。すなわち、パレット1は内部空間Sを有する箱状体である。
【0024】
パレット1の縦方向(正面から背面への方向)の一辺の長さは、例えば、1000~1500mm、それに垂直する横方向の一辺の長さは、例えば、1000~1500mmであることが好ましい。縦方向および横方向の一片の長さは同じであってもよいし、異なってもよい。パレット1の高さは、例えば、40~100mmであることが好ましく、60~90mmであることが好ましい。なお、パレット1の高さとは、上板部11と下板部12とが離間する方向、すなわちパレット1の厚み方向の寸法をいう。このような高さのパレットは、通常のパレットよりも薄いものであり、パレットの強度を維持することが難しいが、上述した樹脂組成物を用いることで、強度を維持しつつ、高い生産性で製造することができる。なお、パレット1の薄さを、パレット1の高さに対するパレット1の縦方向または横方向の一辺のいずれか長い方の長さの比で規定すると、11以上であることが好ましい。
【0025】
上板部11及び下板部12の厚みは、例えば、それぞれ1~5mmであることが好ましく、1~3mmであることがさらに好ましい。外周壁部13の肉厚は、例えば、1~5mmであることが好ましく、約3mmとしてもよい。
【0026】
パレット1は、正面の外周壁部13に一対のフォーク挿入孔15を有する。フォーク挿入孔15は、内部空間Sに連通する開口であり、内部空間Sに向けてフォークリフトの爪等を挿入するために設けられる。
【0027】
外周壁部13には、パレット1の変形強度を維持するために、フォーク挿入孔15の部分を除く全周にわたって外周壁部13から外側への突出するアウターリブ20が設けられ、更にパレット1の強度を向上させるために、アウターリブ20は、外側に突出する第一凸部21と内側に後退する凹部22とを有し、第一凸部21と凹部22とが周方向に沿って交互に配置される。アウターリブ20がこのような第一凸部21と凹部22の構造を有することで、パレット1の運搬時にフォークリフトのフォークが接触した際に強度を保つことができるものである。また、このような第一凸部21と凹部22の構造は、上述した樹脂組成物を用いることで、より優れた強度を発揮できる。第一凸部21は、左右側面壁部、背面壁部においてそれぞれ、例えば、5~10個配置することが好ましい。アウターリブ20の高さ方向の中央部には、ブロー成形時に形成されるパーティングラインが位置する。
【0028】
第一凸部21は、樹脂材料が中実に詰まった状態に形成されている。図2(a)及び図2(b)に示すように、第一凸部21及び凹部22は、それぞれ中央のパーティングライン部24を挟んで上下対称の形状を有している。第一凸部21の高さは、パレット1よりも高さが小さい。このため、第一凸部21は、上板部11及び下板部12との間に段差が形成されている。また、第一凸部21は、アウターリブ20のパーティングライン部24の外側頂部と略同一位置に配置される。凹部22は、外周壁部13の表面と同一位置に配置される。
【0029】
外周壁部13には、パレット1同士を重ね合わせたときに、縦横方向の位置ずれを防止するために、スタッキングストッパ26が設けられる。図2(c)に示すように、外周壁部13には、外側に向かって突出する第二凸部25を有し、この第二凸部25の上面は、上板部11よりも上側に突出する。この突出した部位がスタッキングストッパ26となる。なお、図示しないが、第二凸部25の下面は、下板部12よりも下側に突出し、この突出した部位がスタッキングストッパ26となる。第二凸部25は、第一凸部21と同様に凹部22に挟まれて配置される。第二凸部25は、左右側面および背面の各外周壁部13にそれぞれ、例えば4つ設けられる。
【0030】
第二凸部25は、第一凸部21とは異なって、アウターリブ20のパーティングライン部24を基準にして上下のいずれか一方に配置される。上側の第二凸部25と下側の第二凸部25は、周方向において隣接して配置される。このため、二枚のパレット1同士を重ね合わせると、下側のパレット1のスタッキングストッパ26が、上側のパレット1の第二凸部25の下面に接するように嵌まり込み、同時に、上側のパレット1のスタッキングストッパ26が、下側のパレット1の第二凸部25の上面に接するように嵌まり込む。よって、重ね合わせたパレット1同士は、上下方向以外の移動が規制されて安定する。
【0031】
また、パレット1は、図1に示すように、強度を保つために、上板部11と下板部12との間(内部空間S)に、複数のインナーリブ16を備えている。インナーリブ16は、上板部11及び下板部12に対して垂直に立設し、上板部11と下板部12とを連結するものである。インナーリブ16は、縦方向に沿って、互いに平行に延在する。よって、フォーク挿入孔15と平行しており、インナーリブ16によってフォークの挿入が妨げられることはない。なお、必要に応じて、フォークに接しない範囲でフォーク挿入孔15に対して垂直の方向に更にインナーリブを設けてもよい。
【0032】
次に、上述した樹脂組成物を用いて、上述したパレットを成型する方法について説明する。本実施の形態では、パレットの成型はブロー成形で行う。図3(a)に示すように、先ず、上述した樹脂組成物からなる円筒状のパリソンPが、円形のダイ(図示省略)の口から、二部品に分けられた金型40の内部に導入される。二部品に分けられた金型40はパレット1を成型するものであり、パレット1の上板部11側と下板部12側の2つに分けられ、2つが合わさる箇所(パーティングライン)は、外周壁部の中央となる。
【0033】
ブロー成形の際、例えば、パリソンPの温度は180~250℃とし、パリソンPの円の大きさは、成型されるパレットの横幅の0.6~0.8倍程度、パリソンPの樹脂の厚さは0.5~1.0cmとすることが好ましい。必要に応じて、押し出されるパリソンPの形状を、ダイの口金部を調整することによって金型に合わせて楕円形としてもよい。使用される金型には空気を抜く穴を設けていてもよい。
【0034】
そして、金型40にパリソンを入れた後、図3(b)に示すように、適宜な範囲で、金型40のキャビティ41同士の距離を詰めて、ダイの円形の中央部に位置する加圧空気挿入口(図示省略)から空気を入れ、パリソンPを膨張させて金型40のキャビティ41に密着させる。この際、必要により、パリソンPの下側から空気を挿入させてもよい。挿入される空気は、室温から80℃程度に加熱させてもよい。
【0035】
そして、パリソンPが一定に膨張した後、図3(c)に示すように、二部品に分けられた金型40を接合し、パレット1を成型する。この際、パリソンPの樹脂を急激に冷却するのは好ましくないため、40~60℃程度に金型40の温度を維持しておくことが好ましい。パレット1の外周壁部13のアウターリブ20は、パリソンPの所定の部分を金型40で挟むことで形成する。すなわち、金型40のキャビティ41の形状により、アウターリブ20の第一凸部21および凹部22を形成する。
【0036】
パレット1のインナーリブ16は、図3(b)および(c)に示すように、金型40に穴をあけておき、成型時に穴にブレード42を挿入し、その後に引き抜くことで、空気の圧力によって樹脂材料が圧縮され、ブレードBlの占めていた空隙が押しつぶされてインナーリブ16が形成される。パレット1のフォーク挿入孔15は、成型後に開けてもよいが、金型40の形状によりブロー成形時に形成することが好ましい。
【実施例0037】
以下、本発明の実施例、比較例および参考例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1~5、比較例1~3]
表1に示す実施例および比較例の樹脂組成物を用いて、ブロー成形によって図1及び図2に示す超薄型パレットを作製した。そして、ブロー成形時の成形性、並びに成形したパレットの耐摩擦性および耐久性について評価した。
【0039】
表1に示す樹脂組成物の調製に用いた樹脂材料は以下の通りである。なお、用いた材料はいずれも市販品である。
(A)超高分子量ポリエチレン
(1)MI0.05、比重0.94(以下、「樹脂A1」と呼ぶ)
(2)MI0.03、比重0.94(以下、「樹脂A2」と呼ぶ)
(B)ホモポリプロピレン
(1)MI0.3、比重0.91、結晶度51、融点162℃(以下、「樹脂B1」と呼ぶ))
(2)MI0.4、比重0.91、結晶度65、融点160℃(以下、「樹脂B2」と呼ぶ)
(C)その他のポリマー(比較例用)
(1)ランダムポリプロピレン、MI0.3、比重0.90、融点135℃(以下、「樹脂CP」と呼ぶ)
(2)低密度線状ポリエチレン、MI0.2、比重0.92(以下、「樹脂CE」と呼ぶ)
【0040】
【表1】
【0041】
表1に示す配合の樹脂材料と、リン系およびフェノール系酸化防止剤とをヘンシェルミキサーに加えて1000rpm×1minで混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX-28V)を用いて、230℃の押出温度で溶融混練した後、ブロー成形でパレットを作製した。ブロー成形の条件は、パリソンダイの直径は750mm、金型温度50℃、室内温度25℃とした。また、パレットの寸法は、縦横1100mmの正方形、厚さ75mmとした。
【0042】
成形性は、ブロー成形時を10回行い、観察するとともに、成形したパレットに成形不良があるか観察した。そして、成形不良が生じた場合を「不良」と評価し、成形不良がなかったものの、成形時に問題点があった場合を「可」と評価し、一回乃至二回成型時に問題があったものを良好、1回も成形不良も問題点もなかった場合を「極めて良好」と評価した。その結果を表2に示す。
【0043】
耐摩擦性は、成形したパレットにすり試験を行い、試験後のパレット表面を観察した。すり試験は、0.5~1.3kg/cmの高圧エアーにより、粒度#24~60の珪砂を用いてサンドブラスト処理を短時間にわたりパレット表面に施した。そして、処理表面に摩耗により変形や大きな傷が生じた場合を「不良」と評価し、目立つ傷が生じても使用に問題にならない程度である場合を「やや不良」と評価し、傷が少ないかほぼ目立たない場合を「良好」と評価した。その結果を表2に示す。
【0044】
耐久性は、成形したパレットを実際にフォークリフトで使用して観察を行った。また、フォークの衝突にみたて、パレットのフォーク挿入口の周辺部を振り子式のハンマーにより衝撃荷重を与えることを10回繰り返した。そして、フォークリフトでの使用時にパレットに曲がり等が生じ、使用に耐えるものでなかった場合を「不良」と評価し、使用には耐えるものの、小さな破損など衝撃に対する耐久性に問題点があった場合を「やや不良」と評価し、耐久性が問題なかったものの傷が目立った場合を「良好」、傷等が少なく耐久性の優れたものを「極めて良好」と評価した。その結果を表2に示す。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示すように、実施例1~5のいずれのパレットも、成形性、耐摩擦性、耐久性が全て良好であった。これに対し、超高分子量ポリエチレンを100質量部とした比較例1のパレットは、成形不良はなかったものの、パレットに剛性が不足しておりハンドリングに難点があった。また、すり試験では、処理表面に大きな傷が生じていた。更に、フォークリフトでの使用に耐えたものの、剛性が不足しており、ハンマーの衝撃には耐えられなかった。
【0047】
超高分子量ポリエチレンにランダムポリプロピレンを配合した比較例2のパレットは、成形不良はなかったものの、パレットが柔らかく剛性に乏しかったとともに、若干のべたべた感があった。また、すり試験では、処理表面に大きな傷と変形が生じていた。更に、フォークリフトでの使用には、剛性が乏しいため曲がってしまい、使用に耐えるものではなかった。
【0048】
低密度線状ポリエチレンにホモポリプロピレンを配合した比較例3のパレットは、ブロー成形時にパリソンがうまく垂れず、成形不良が多数発生した。特に、金型を閉めて空気を入れた際にパリソンの伸びにばらつきが出て、パレットの板状部は中央領域が厚く、外周縁に向けて薄くなってしまった。成形不良のものは、フォークリフトでの使用に耐えられなかった。
【0049】
[実施例5、参考例1]
パレットのアウターリブを凸部がないものにした(すなわち、外周全てが図2(a)に示す構成とした)点を除いて実施例5と同じ樹脂組成および条件でパレットを作製した(参考例1)。そして、この参考例1のパレットを実際にフォークリフトで使用し、上述した耐久性の試験よりも乱雑に扱った。その結果、乱雑に扱った後のパレットは、フォーク挿入口のパリソン接合がとれかけていた。これに対し、実施例5のパレットについて、参考例1と同様にフォークリフトで乱雑に扱ったところ、フォーク挿入口のパリソン接合を観察した結果、特に問題は生じていなかった。
【0050】
[実施例6]
パレットの厚さを60mmとした点を除いて実施例5と同じ樹脂組成および条件でパレットを作製した(実施例6)。そして、このパレットについて圧縮試験を行った。圧縮試験は、パレットの厚さ方向に荷重をかけていき、その時のパレットの厚さ方向の変位を測定した。その結果を図4に示す。図4に示すように、荷重50000N(5トン)をかけてもパレットは破損しなかったことから、優れた強度および耐久性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0051】
1 超薄型パレット
11 上板部
12 下板部
13 外周壁部
15 フォーク挿入孔
16 インナーリブ
20 アウターリブ
21 第一凸部
22 凹部
24 パーティングライン部
25 第二凸部
26 スタッキングストッパ
P パリソン
S 内部空間
図1
図2
図3
図4