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特開2024-109413風車点検制御装置、風車点検システム、風車点検制御方法および風車点検制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109413
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】風車点検制御装置、風車点検システム、風車点検制御方法および風車点検制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F03D 17/00 20160101AFI20240806BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20240806BHJP
   G01N 22/02 20060101ALI20240806BHJP
   B63B 35/00 20200101ALI20240806BHJP
【FI】
F03D17/00
G01N21/88 Z
G01N21/84 B
G01N22/02 C
B63B35/00 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014191
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和真
【テーマコード(参考)】
2G051
3H178
【Fターム(参考)】
2G051AA88
2G051AB02
2G051AC15
2G051CA04
2G051EA21
3H178AA03
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB56
3H178BB73
3H178BB79
3H178CC02
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】風車ブレードの点検時間を短縮することができる風車点検制御装置を提供する。
【解決手段】実施の形態による風車点検制御装置は、風車ブレードの点検理由情報を取得する取得部と、取得部により取得された点検理由情報に基づいて、複数の検査デバイスのうちの少なくとも1つの検査デバイスに検査実行を指示するデバイス制御部と、を備えている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力発電設備の風車ブレードを、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイスを用いて点検を行うための風車点検制御装置であって、
前記風車ブレードの点検理由情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記点検理由情報に基づいて、複数の前記検査デバイスのうちの少なくとも1つの前記検査デバイスに検査実行を指示するデバイス制御部と、
を備えた、風車点検制御装置。
【請求項2】
前記検査デバイスの検査結果に基づいて前記風車ブレードの異常有無の判断を行う異常判断部を更に備え、
前記デバイス制御部は、第1検査デバイスに検査実行を指示した後、前記異常判断部が前記第1検査デバイスの前記検査結果に基づいて前記風車ブレードに異常有りと判断した場合、複数の前記検査デバイスのうちの第2検査デバイスに検査実行を指示する、
請求項1に記載の風車点検制御装置。
【請求項3】
点検結果判断部を更に備え、
前記点検結果判断部は、前記異常判断部が前記第2検査デバイスの前記検査結果に基づいて前記風車ブレードに異常無しと判断した場合、前記風力発電設備の運転を再開可能と判断するとともに、前記異常判断部が前記第2検査デバイスの前記検査結果に基づいて前記風車ブレードに異常有りと判断した場合、前記風力発電設備の運転停止を継続すると判断する、
請求項2に記載の風車点検制御装置。
【請求項4】
前記デバイス制御部は、前記異常判断部が前記第1検査デバイスの前記検査結果に基づいて前記風車ブレードに異常無しと判断した場合、複数の前記検査デバイスのうちの第3検査デバイスに検査実行を指示する、
請求項3に記載の風車点検制御装置。
【請求項5】
前記点検結果判断部は、前記異常判断部が前記第3検査デバイスの前記検査結果に基づいて前記風車ブレードに異常無しと判断した場合、前記風力発電設備の運転を再開可能と判断する、
請求項4に記載の風車点検制御装置。
【請求項6】
前記デバイス制御部は、前記異常判断部が前記第3検査デバイスの前記検査結果に基づいて前記風車ブレードに異常有りと判断した場合、前記第2検査デバイスに検査実行を指示する、
請求項4または5に記載の風車点検制御装置。
【請求項7】
前記第1検査デバイスは、前記風車ブレードの外観を撮像し、前記検査結果として外観画像を作成する、
請求項2または3に記載の風車点検制御装置。
【請求項8】
前記第2検査デバイスは、前記風車ブレードの非破壊検査を行い、前記検査結果として内部断面画像を作成する、
請求項2または3に記載の風車点検制御装置。
【請求項9】
前記第3検査デバイスは、前記風車ブレードの風切り音を計測し、前記検査結果として風切り音データを作成する、
請求項4または5に記載の風車点検制御装置。
【請求項10】
複数の前記検査デバイスのうちの少なくとも1つは飛行デバイスに搭載されており、
前記風車点検制御装置は、現在の風速に基づいて前記飛行デバイスの飛行の可否を判断する風速判断部を更に備え、
前記デバイス制御部は、前記風速判断部が前記飛行デバイスを飛行可能と判断した場合、前記飛行デバイスを飛行させる、
請求項2または3に記載の風車点検制御装置。
【請求項11】
前記風速判断部は、前記飛行デバイスの飛行の可否を判断した後、風速予測に基づいて点検開始の可否を判断する、
請求項10に記載の風車点検制御装置。
【請求項12】
前記デバイス制御部は、前記取得部により取得された前記点検理由情報に基づいて、複数の前記検査デバイスのうちの2つの前記検査デバイスに検査実行を指示する
請求項1に記載の風車点検制御装置。
【請求項13】
複数の検査デバイスと、
請求項1または2に記載の風車点検制御装置と、を備えた、風車点検システム。
【請求項14】
風力発電設備の風車ブレードを、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイスを用いて点検を行うための風車点検制御方法であって、
前記風車ブレードの点検理由情報を取得するステップと、
前記点検理由情報に基づいて、複数の前記検査デバイスのうちの少なくとも1つの前記検査デバイスで前記風車ブレードの検査を行うステップと、
を備えた、風車点検制御方法。
【請求項15】
風力発電設備の風車ブレードを、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイスを用いて点検を行うための風車点検制御方法をコンピュータに実行させる風車点検制御プログラムであって、
前記風車点検制御方法は、
前記風車ブレードの点検理由情報を取得するステップと、
前記点検理由情報に基づいて、複数の前記検査デバイスのうちの少なくとも1つの前記検査デバイスで前記風車ブレードの検査を行うステップと、
を備えた、風車点検制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、風車点検制御装置、風車点検システム、風車点検制御方法および風車点検制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力発電設備は、複数の風車ブレードを含む風車を風力エネルギで回転させることにより発電を行うことができる。近年では、風力発電設備の普及が進んでおり、例えば、数基から数十基にわたる風力発電設備で構成されるウィンドファームが設置される場合もある。
【0003】
風力発電設備の風車ブレードの点検には、複数の検査項目が存在する。点検作業者は、風車ブレードの状況に応じて適切な検査項目を選択し、この検査項目による風車ブレードの検査を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-073999号公報
【特許文献2】特開2018-181235号公報
【特許文献3】特開2018-021491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実施の形態は、このような点を考慮してなされたものであり、風車ブレードの点検時間を短縮することができる風車点検制御装置、風車点検システム、風車点検制御方法および風車点検制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施の形態による風車点検制御装置は、風力発電設備の風車ブレードを、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイスを用いて点検を行うための装置である。風車点検制御装置は、風車ブレードの点検理由情報を取得する取得部と、取得部により取得された点検理由情報に基づいて、複数の検査デバイスのうちの少なくとも1つの検査デバイスに検査実行を指示するデバイス制御部と、を備えている。
【0007】
実施の形態による風車点検システムは、複数の検査デバイスと、上述の風車点検制御装置と、を備えている。
【0008】
実施の形態による風車点検制御方法は、風力発電設備の風車ブレードを、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイスを用いて点検を行うための方法である。風車点検制御方法は、風車ブレードの点検理由情報を取得するステップと、点検理由情報に基づいて、複数の検査デバイスのうちの少なくとも1つの検査デバイスで風車ブレードの検査を行うステップと、 を備えている。
【0009】
実施の形態による風車点検制御プログラムは、風力発電設備の風車ブレードを、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイスを用いて点検を行うための風車点検制御方法をコンピュータに実行させるプログラムである。風車点検制御方法は、風車ブレードの点検理由情報を取得するステップと、点検理由情報に基づいて、複数の検査デバイスのうちの少なくとも1つの検査デバイスで風車ブレードの検査を行うステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
実施の形態によれば、風車ブレードの点検時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1の実施の形態による風力発電設備を示す模式図である。
図2図2は、図1の風車ブレードの模式正面図である。
図3図3は、第1の実施の形態による風力発電設備点検システムを示す構成図である。
図4図4は、第1の実施の形態による風力発電設備点検方法を示すフローチャートである。
図5図5は、第2の実施の形態による風力発電設備点検方法を示すフローチャートである。
図6図6は、第3の実施の形態による風力発電設備点検方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本実施の形態による風車点検制御装置、風車点検システム、風車点検制御方法および風車点検制御プログラムについて説明する。
【0013】
(第1の実施の形態)
図1図4を用いて、本実施の形態による風車点検制御装置、風車点検システム、風車点検制御方法および風車点検制御プログラムについて説明する。ここではまず、風力発電設備について図1および図2を用いて説明する。風力発電設備は、地上に設置されていてもよく、洋上に設置されていてもよい。風力発電設備は、洋上浮力式の設備であってもよい。
【0014】
図1に示すように、風力発電設備1は、鉛直方向に細長に延びるタワー2と、タワー2に支持されたナセル3と、ナセル3に回転可能に設けられた風車4と、を含んでいる。ナセル3内に、風車4の回転によって発電を行う発電機(図示せず)が内蔵されている。ナセル3は、タワー2の長手軸に対して垂直な面内で回転可能に構成されている。
【0015】
風車4は、発電機のロータ(図示せず)に連結されたハブ5と、ハブ5に連結された3つの風車ブレード6と、を含んでいる。ハブ5と各風車ブレード6は、ロータとともに一体に回転するように構成されている。なお、風車ブレード6の個数は3つに限られることはなく、任意である。
【0016】
ナセル3の上部に、風向風速計7が設けられている。風向風速計7は、風速と風向を含む風況を計測する。風向風速計7が計測する風向は、風向風速計7が位置する水平面において風速が最大となる方向を示す。その方向に沿う風速が風向風速計7により計測される。
【0017】
図1および図2に示すように、各風車ブレード6には、落雷検知器8が設けられている。各落雷検知器8に、対応する風車ブレード6の内部に配置された導線10を介して受雷部9が接続されている。導線10は、電気的に接地されている。受雷部9は、各風車ブレード6の先端部に設けられており、風車ブレード6の表面に露出されている。受雷部9は、導電性を有する金属材料を用いて形成されている。風車ブレード6のいずれかの位置に着雷すると、落雷電流が受雷部9から導線10に流れる。このことにより、着雷した風車ブレード6の落雷検知器8が落雷を検知し、落雷検知情報が後述する風力発電制御装置11に送信される。
【0018】
図1に示すように、ナセル3内に、風力発電制御装置11が内蔵されている。風力発電制御装置11は、風力発電設備1の運転を制御する。風力発電制御装置11は、後述する風車点検制御装置30とは別体の装置として構成されていてもよく、風車点検制御装置30と一体の装置として構成されていてもよい。風力発電制御装置11には、上述した風向風速計7が接続されており、風向風速計7により計測された風速データが送信される。また、風力発電制御装置11には、各落雷検知器8が接続されており、各落雷検知器8から落雷検知情報が送信される。落雷検知情報には、風車ブレード6のいずれかで落雷が生じたかについての情報、すなわち落雷が生じた風車ブレード6の情報が含まれている。風力発電制御装置11は、風速データおよび落雷検知情報に基づいて、風力発電設備1の運転を制御する。例えば、落雷が検知されると、風力発電制御装置11は、風力発電設備1の運転を停止する。そして、風力発電制御装置11は、点検終了後には、停止している風力発電設備1の運転を再開させる。
【0019】
次に、本実施の形態による風車点検システム20について図1および図3を用いて説明する。風車点検システム20は、風力発電設備1の風車ブレード6を、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイス21を用いて点検を行うためのシステムである。
【0020】
図3に示すように、風車点検システム20は、複数の検査デバイス21と、ドローン22と、ドローン通信部23と、風車点検制御装置30と、を備えている。
【0021】
検査デバイス21は、風車ブレード6の検査を行うためのデバイスである。本実施の形態においては、風車点検システム20は、3つの検査デバイス21を備えている。3つの検査デバイス21は、互いに異なる種類の検査を行う。3つの検査デバイス21は、カメラ24と、ミリ波レーダ25と、騒音計26と、を含んでいる。
【0022】
カメラ24は、第1検査デバイスの一例である。カメラ24は、風車ブレード6の外観を撮像し、検査結果として外観画像を作成する。検査結果に、1つの風車ブレード6について複数の外観画像が含まれていてもよい。この場合、1つの風車ブレード6の異なる位置で外観画像が作成される。各外観画像を撮像する位置は、後述する異常判断部43で用いられる基準外観画像と対応する位置であってもよい。各外観画像のデータには、風車ブレード6とその撮像位置とが関連づけられる。撮像された外観画像は、後述する異常判断部43に送信されるとともに、後述する記憶部32に記憶される。
【0023】
ミリ波レーダ25は、第2検査デバイスの一例である。ミリ波レーダ25は、風車ブレード6の非破壊検査を行い、検査結果として内部断面画像を撮像する。検査結果に、各風車ブレード6について複数の内部断面画像が含まれていてもよい。この場合、1つの風車ブレード6の異なる位置で内部断面画像が作成される。各内部断面画像を作成する位置は、後述する異常判断部43で用いられる基準内部断面画像と対応する位置であってもよい。各内部断面画像のデータには、風車ブレード6とその作成位置とが関連づけられる。作成された内部断面画像は、後述する異常判断部43に送信されるとともに、後述する記憶部32に記憶される。
【0024】
騒音計26は、第3検査デバイスの一例である。騒音計26は、風車ブレード6の風切り音を計測し、検査結果として風切り音データを作成する。風切り音データは、風車ブレード6毎に作成され、各風車ブレード6と関連づけられる。作成された風切り音データは、風力発電制御装置11を介して後述する異常判断部43に送信されてもよく、風力発電制御装置11を介さずに異常判断部43に送信されてもよい。風切り音データは、後述する記憶部32に記憶される。騒音計26は、風力発電設備1の通常運転中に風車ブレード6の風切り音を計測し、風力発電制御装置11に風切り音データを送信するようにもなっている。
【0025】
ドローン22は、飛行デバイスの一例である。ドローン22に、複数の検査デバイス21のうちの少なくとも1つが搭載されていてもよい。本実施の形態においては、図1に示すように、ドローン22に、上述したカメラ24およびミリ波レーダ25が搭載されている。ドローン22は、各風車ブレード6に対する任意の位置にアクセス可能になっている。
【0026】
ドローン22は、飛行駆動部22aを含んでいる。飛行駆動部22aが駆動されると、ドローン22が飛行する。飛行駆動部22aは、後述する風車点検制御装置30のデバイス制御部42により制御されてもよい。
【0027】
ドローン通信部23は、ドローン22に搭載されている。ドローン通信部23は、ナセル3に搭載された後述のナセル通信部31と通信可能に構成されている。ドローン通信部23とナセル通信部31は、無線通信可能になっていてもよい。ドローン通信部23は、アンテナ23a(図1参照)を含んでいてもよい。
【0028】
次に、本実施の形態による風車点検制御装置30について説明する。風車点検制御装置30は、上述した風車ブレード6を、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイス21を用いて点検を行うための装置である。
【0029】
図3に示すように、風車点検制御装置30は、ナセル通信部31と、記憶部32と、点検制御部40と、を含んでいる。
【0030】
ナセル通信部31は、ナセル3に搭載されている。ナセル通信部31は、上述したドローン通信部23と通信可能に構成されている。ナセル通信部31は、アンテナ31a(図1参照)を含んでいてもよい。
【0031】
記憶部32は、情報を記憶するように構成されている。記憶部32には、上述したカメラ24が作成した外観画像と、上述したミリ波レーダ25が作成した内部断面画像と、上述した騒音計26が作成した風切り音データとが記憶される。これ以外の情報が、記憶部32に記憶されてもよい。
【0032】
点検制御部40は、取得部41、デバイス制御部42、異常判断部43、風速判断部44、点検結果判断部45および報告部46などの機能ブロックを含んでいてもよい。これらの機能ブロックは、例えば、上述した記憶部32内に格納されたコンピュータプログラムを点検制御部40により実行することで実現されてもよい。このプログラムは、風車点検制御プログラムの例であり、記録媒体から風車点検制御装置30にインストールされてもよい。
【0033】
取得部41は、風車ブレード6の点検理由情報を取得する。上述した風力発電制御装置11には、落雷検知器8から落雷検知情報が送信される。この場合、風力発電設備1の運転が停止し、風車ブレード6の点検が行われる。取得部41は、点検理由情報としての落雷検知情報を風力発電制御装置11から取得する。また、取得部41は、他の点検理由情報としての定期点検情報および風切り音異常検知情報を、風力発電制御装置11から取得可能になっていてもよい。
【0034】
デバイス制御部42は、上述したドローン22の飛行を制御してもよい。より具体的には、デバイス制御部42は、ドローン22の飛行駆動部22aを制御し、ドローン22を飛行させる。ドローン22の飛行中、デバイス制御部42は、ドローン22の位置およびドローン22の向きを制御する。このことにより、ドローン22を所望の位置に位置づけることができるとともに、ドローン22の向きを所望の向きに向けることができる。また、デバイス制御部42は、ドローン22を退避位置に退避させて飛行を停止させることもできる。図示しないが、退避位置は、ナセル3に設置されていてもよく、風力発電設備1の近傍の地面や他の設備に設置されていてもよい。
【0035】
デバイス制御部42は、後述する風速判断部44がドローン22を飛行可能と判断した場合に、退避位置に退避していたドローン22を飛行させるようにしてもよい。風速判断部44がドローン22を飛行不能と判断した場合、ドローン22を飛行させずに、退避位置への退避を継続させてもよい。
【0036】
デバイス制御部42は、取得部41により取得された点検理由情報に基づいて、複数の検査デバイス21のうちの少なくとも1つの検査デバイス21に検査実行を指示する。本実施の形態においては、点検理由情報に基づいて、カメラ24、ミリ波レーダ25および騒音計26のうちの少なくとも1つに検査実行を指示する。例えば、デバイス制御部42は、取得部41が点検理由情報としての落雷検知情報を取得した場合、カメラ24に検査実行を指示する。
【0037】
デバイス制御部42は、後述する異常判断部43による判断に基づいて、ミリ波レーダ25または騒音計26に検査実行を指示してもよい。例えば、デバイス制御部42は、異常判断部43がカメラ24の検査結果に基づいて風車ブレード6に異常有りと判断した場合、複数の検査デバイス21のうちの他の1つの検査デバイス21(例えば、ミリ波レーダ25)に検査実行を指示する。例えば、デバイス制御部42は、異常判断部43がカメラ24の検査結果に基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、複数の検査デバイス21のうちの他の1つの検査デバイス21(例えば、騒音計26)に検査実行を指示する。例えば、デバイス制御部42は、異常判断部43が騒音計26の検査結果に基づいて風車ブレード6に異常有りと判断した場合、ミリ波レーダ25に検査実行を指示する。
【0038】
異常判断部43は、検査デバイス21の検査結果に基づいて風車ブレード6の異常有無の判断を行う。
【0039】
例えば、異常判断部43は、カメラ24の検査結果としての外観画像に基づいて風車ブレード6の異常有無の判断を行う。より具体的には、異常判断部43は、検査結果としてカメラ24から送信された外観画像を、記憶部32に記憶されている基準外観画像と画像処理によって比較してもよい。外観画像と基準外観画像とが相違している場合には、風車ブレード6の外観に異常が有ると判断されてもよい。
【0040】
例えば、異常判断部43は、ミリ波レーダ25の検査結果としての内部断面画像に基づいて風車ブレード6の異常有無の判断を行う。より具体的には、異常判断部43は、検査結果としてミリ波レーダ25から送信された内部断面画像を、記憶部32に記憶されている基準内部断面画像と画像処理によって比較してもよい。内部断面画像と基準内部断面画像とが相違している場合には、風車ブレード6の内部に異常が有ると判断される。
【0041】
例えば、異常判断部43は、騒音計26の検査結果としての風切り音データに基づいて風車ブレード6の異常有無の判断を行う。より具体的には、異常判断部43は、検査結果として騒音計26から送信された風切り音データを、記憶部32に記憶されている基準風切り音データと比較してもよい。風切り音データと基準風切り音データとが音の周波数で相違している場合には、風車ブレード6に異常が有ると判断される。風切り音の異常有無の判断には、人工知能(AI)を用いて行ってもよい。基準風切り音データは、前回の点検時の計測により得られたデータであってもよく、新品時の計測により得られたデータであってもよい。
【0042】
風速判断部44は、現在の風速に基づいてドローン22の飛行の可否を判断する。風速判断部44は、上述した風向風速計7により計測された風速データを用いて、ドローン22の飛行の可否を判断する。風速判断部44は、風向風速計7から風力発電制御装置11に送信された風速データを取得する。
【0043】
点検結果判断部45は、異常判断部43によるミリ波レーダ25の内部断面画像に基づく判断結果に応じて、風力発電設備1の運転可否を判断する。例えば、異常判断部43がミリ波レーダ25の内部断面画像に基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、点検結果判断部45は、風力発電設備1の運転を再開可能と判断する。例えば、異常判断部43がミリ波レーダ25の内部断面画像に基づいて風車ブレード6に異常有りと判断した場合、点検結果判断部45は、風力発電設備1の運転停止を継続すると判断する。例えば、異常判断部43が騒音計26の風切り音データに基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、点検結果判断部45は、風力発電設備1の運転を再開可能と判断する。
【0044】
報告部46は、風車ブレード6の点検結果を報告する。報告部46は、異常判断部43がミリ波レーダ25の検査結果に基づいて風車ブレード6の異常有無の判断を行った後に、点検結果を報告してもよい。例えば、異常判断部43がミリ波レーダ25の内部断面画像に基づいて風車ブレード6に異常が有ると判断した場合、報告部46は、風車ブレード6に異常が有る旨の報告を行う。例えば、異常判断部43がミリ波レーダ25の内部断面画像に基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、報告部46は、風車ブレード6に異常が無い旨の報告を行う。例えば、異常判断部43が騒音計26の風切り音データに基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、報告部46は、風車ブレード6に異常が無い旨の報告を行う。報告部46は、点検作業者が閲覧可能なディスプレイ(図示せず)に、点検結果を表示させてもよい。
【0045】
次に、本実施の形態による風車点検制御方法について図4を用いて説明する。風車点検制御方法は、上述した風車ブレード6を、互いに異なる種類の検査を行う複数の検査デバイス21を用いて点検を行うための方法である。本実施の形態においては、運転中に、風車ブレード6に落雷が検知された場合に行われる風車ブレード6の点検について説明する。
【0046】
図4に示すように、風車ブレード6に落雷が検知されると(ステップS11)、風力発電制御装置11は、風力発電設備1の運転を停止する(ステップS12)。落雷検知情報は、落雷が生じた風車ブレード6の落雷検知器8から風力発電制御装置11に送信され、この落雷検知情報に基づいて風力発電設備1の運転が停止する。運転停止情報が、風力発電制御装置11から風車点検制御装置30に送信されてもよい。
【0047】
次に、風車点検制御装置30の取得部41は、風車ブレード6の点検理由情報としての落雷検知情報を風力発電制御装置11から取得する(ステップS13)。風力発電制御装置11は、落雷検知器8から落雷検知情報を受信すると、この落雷検知情報を取得部41に送信してもよい。これに伴い、風車ブレード6の点検が開始される。
【0048】
次に、現在の風速に基づいてドローン22の飛行の可否が判断される(ステップS14)。より具体的には、風車点検制御装置30の風速判断部44が、現在の風速に基づいてドローン22の飛行の可否を判断する。風速判断部44は、風向風速計7から風力発電制御装置11に送信された風速データを取得する。この風速データに、現在の風速が含まれている。例えば、風速判断部44は、現在の風速が、第1基準風速よりも小さいか否かを基準として判断してもよい。現在の風速が第1基準風速よりも小さい場合に、風速判断部44は、ドローン22の飛行可能と判断してもよい。現在の風速が第1基準風速以上であるために風速判断部44がドローン22の飛行不能と判断した場合、風速が第1基準風速よりも低下するまで、ステップS14が繰り返される。
【0049】
ステップS14において風速判断部44がドローン22の飛行を可能と判断した場合、デバイス制御部42はドローン22の飛行を開始する(ステップS15)。デバイス制御部42は、ドローン22の飛行駆動部22aを制御し、退避位置に着陸していたドローン22を飛行させる。
【0050】
次に、風車ブレード6の点検理由情報に基づいて風車ブレード6の検査が行われる。本実施の形態においては、カメラ24による風車ブレード6の外観検査が行われる(ステップS16)。この場合、デバイス制御部42は、取得部41により取得された点検理由情報が落雷検知情報であるため、カメラ24に検査実行を指示する。着雷は、風車ブレード6の任意の位置に発生し得るため、最初の検査項目としてカメラ24による外観検査が選択されてもよい。このことにより、風車ブレード6の全体の外観検査を容易に行うことができ、落雷による損傷箇所を効率良く特定することができる。カメラ24は、ドローン22を移動させながら、落雷が検知された風車ブレード6に対して種々の位置で外観画像を撮像してもよい。各外観画像データは異常判断部43に送信される。カメラ24は、落雷が検知された風車ブレード6だけでなく、全ての風車ブレード6の外観画像を撮像してもよい。
【0051】
次に、カメラ24の検査結果に基づいて風車ブレード6の異常有無が判断される(ステップS17)。この場合、カメラ24から送信された各外観画像を、対応する基準外観画像と画像処理によって比較する。予め記憶部32に記憶されている基準外観画像と同じ位置および同じ向きの外観画像とを比較することにより、有意な異常有無判断を行うことができる。
【0052】
異常判断部43がカメラ24の外観画像に基づいて風車ブレード6に異常有りと判断した場合、デバイス制御部42はミリ波レーダ25に検査実行を指示し、ミリ波レーダ25による風車ブレード6の非破壊検査が行われる(ステップS18)。ミリ波レーダ25は、落雷が検知された風車ブレード6に対して種々の位置で内部断面画像を撮像してもよい。ミリ波レーダ25は、カメラ24の外観画像に基づいた異常判断時に発見された損傷位置およびその近傍で、ドローン22を移動させながら複数の内部断面画像を撮像してもよい。検査箇所を絞ることにより、非破壊検査に要する時間を短縮することができる。内部断面画像データは異常判断部43に送信される。ミリ波レーダ25は、落雷が検知された風車ブレード6だけでなく、全ての風車ブレード6の内部断面画像を撮像してもよい。
【0053】
非破壊検査の後、ドローン22の飛行を終了させる(ステップS19)。この場合、デバイス制御部42が、ドローン22の飛行駆動部22aを制御し、ドローン22を退避位置に着陸させて飛行を停止させてもよい。
【0054】
次に、ミリ波レーダ25の検査結果に基づいて風車ブレード6の異常有無が判断される(ステップS20)。この場合、ミリ波レーダ25から送信された各内部断面画像を、対応する基準内部断面画像と画像処理によって比較する。予め記憶部32に記憶されている基準内部断面画像と同じ位置および同じ向きでの内部断面画像とを比較することにより、有意な異常判断を行うことができる。
【0055】
異常判断部43がミリ波レーダ25の内部断面画像に基づいて風車ブレード6に異常有りと判断した場合、点検結果判断部45は、風力発電設備1の運転停止を継続すると判断する(ステップS21)。一方、異常判断部43がミリ波レーダ25の内部断面画像に基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、点検結果判断部45は、風力発電設備1の運転を再開可能と判断する(ステップS22)。
【0056】
その後、風車ブレード6の点検結果が報告部46により報告される(ステップS23)。報告部46は、風車ブレード6に異常有りと判断された場合、風車ブレード6に異常が有る旨を報告してもよい。この報告には、風力発電設備1の運転停止を継続する旨が含まれていてもよく、風車ブレード6の損傷箇所を示す情報または上述した外観画像および内部断面画像が含まれていてもよい。一方、報告部46は、風車ブレード6に異常無しと判断された場合、風車ブレード6に異常が無い旨を報告してもよい。この報告には、風力発電設備1の運転を再開可能である旨が含まれていてもよい。点検結果の報告後、風車ブレード6の点検が終了する。
【0057】
上述したステップS17において異常判断部43がカメラ24の外観画像に基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、デバイス制御部42は騒音計26に検査実行を指示し、騒音計26による風車ブレード6の風切り音が計測される(ステップS24)。騒音計26は、落雷が検知された風車ブレード6に対して風切り音を計測してもよく、または落雷が検知された風車ブレード6だけでなく、全ての風車ブレード6の風切り音を計測してもよい。風切り音データは、異常判断部43に送信される。騒音計26による風車ブレード6の風切り音が計測されている間、ドローン22は退避位置に退避させてもよい。風切り音を計測する際、デバイス制御部42は、風力発電制御装置11に無負荷運転を行うように指示してもよい。このことにより、騒音計26によって、風車ブレード6の風切り音を計測することができる。
【0058】
次に、騒音計26の検査結果に基づいて、風車ブレード6の異常有無が判断される(ステップS25)。この場合、騒音計26から送信された風切り音データを、基準風切り音データと比較することにより、有意な異常有無判断を行うことができる。
【0059】
異常判断部43が騒音計26の風切り音データに基づいて風車ブレード6に異常有りと判断した場合、デバイス制御部42はミリ波レーダ25に検査実行を指示し、上述したステップS18による風車ブレード6の非破壊検査が行われる。一方、異常判断部43が騒音計26の風切り音データに基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、点検結果判断部45は、上述したステップS22による風力発電設備1の運転を再開可能と判断する。
【0060】
このように本実施の形態によれば、取得部41が風車ブレード6の点検理由情報としての落雷検知情報を取得し、この落雷検知情報に基づいて、デバイス制御部42がカメラ24に検査実行を指示する。このことにより、風車ブレード6の状況に応じて適切な検査項目を自動的に選択することができ、検査項目の選定に点検作業者が関与することを不要にすることができる。このため、風車ブレード6の点検を迅速に行うことができ、風車ブレード6の点検時間を短縮することができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、デバイス制御部42は、検査実行の指示対象、すなわち検査項目を、異常判断部43による判断に基づいて適切に自動的に選択することができる。このことにより、検査項目の選定に点検作業者が関与することを不要にすることができる。また、デバイス制御部42は、風速判断部44による判断に基づいて、ドローン22の飛行の可否を適切に自動的に決定することができる。このことにより、ドローン22の飛行可否の決定に点検作業者が関与することを不要にすることができる。
【0062】
また、本実施の形態によれば、点検結果判断部45は、異常判断部43による判断に基づいて適切に自動的に決定することができる。このことにより、点検結果の決定に点検作業者が関与することを不要にすることができる。
【0063】
なお、上述した本実施の形態においては、カメラ24およびミリ波レーダ25がドローン22に搭載されている例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、カメラ24およびミリ波レーダ25は、図示しないロボットなどの移動体に搭載されていてもよい。移動体は、風車ブレード6の表面で移動可能に構成されていてもよい。あるいは、カメラ24およびミリ波レーダ25は、風力発電設備1の近傍に設置されて、固定されていてもよい。
【0064】
また、上述した本実施の形態においては、ドローン22の飛行が、風車点検制御装置30のデバイス制御部42により制御される例について説明した。しかしながら、本実施の形態は、このことに限られることはない。例えば、飛行駆動部22aが、検査項目に応じたドローン22の飛行経路などを含む飛行プログラムが、デバイス制御部42によらずに実行されるように構成されていてもよい。例えば、上述したステップS14においてドローン22の飛行可能と判断した場合、ステップS15が省略されてステップS16が行われてもよい。ステップS16において、デバイス制御部42が、カメラ24に検査実行を指示した場合、この指示に基づいて、カメラ24による外観検査に応じた飛行プログラムが自動的に実行されてもよい。このことにより、カメラ24による外観検査に適した飛行をドローン22が自動的に行うことができる。
【0065】
(第2の実施の形態)
次に、図5を用いて、第2の実施の形態における風車点検制御装置、風車点検システム、風車点検制御方法および風車点検制御プログラムについて説明する。
【0066】
図5に示す第2の実施の形態においては、定期点検時に風車ブレードの点検が行われる点が主に異なり、他の構成は、図1図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図5において、図1図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0067】
本実施の形態においては、定期点検時の風車ブレード6の点検について説明する。本実施の形態による検査デバイス21には、騒音計26が含まれていなくてもよい。
【0068】
図5に示すように、風車点検制御装置30の取得部41は、風車ブレード6の点検理由情報としての定期点検情報を風力発電制御装置11から取得する(ステップS31)。定期点検情報は、風力発電制御装置11が事前に取得しており、この定期点検情報に含まれる定期点検の実施時期に応じて、風力発電制御装置11から取得部41に定期点検情報が送信されてもよい。これに伴い、風車ブレード6の点検が開始される。
【0069】
次に、上述したステップS14と同様にして、風速判断部44は、現在の風速に基づいたドローン22の飛行の可否を判断する。風速判断部44がドローン22の飛行不能と判断した場合、風速が改善されるまで、ステップS14が繰り返される。この間、風力発電設備1の運転は継続される。
【0070】
ステップS14において風速判断部44がドローン22の飛行可能と判断した場合、風速判断部44は、風速予測に基づいて点検開始の可否を判断する(ステップS32)。点検を開始するか否かは、これから行う定期点検中の予測風速が、第2基準風速よりも小さいか否かを基準として判断してもよい。第2基準風速は、上述したステップS31においてドローン22の飛行可否を判断するための基準風速(第1基準風速)よりも小さい風速であってもよい。予測風速が第2基準風速よりも小さい場合に、風速判断部44は、点検開始可能と判断してもよい。
【0071】
定期点検中は風力発電設備1を運転しないため、発電に適切な風速が予測される場合であっても発電が停止し、風力発電設備1の稼働率を低下させ得る。通常、定期点検は緊急性を要することがないため、定期点検中に発電に適切な風速が予測される場合には、定期点検よりも運転を優先し、風力発電設備1の運転を継続してもよい。ステップS32において、予測風速が第2基準風速以上であるために風速判断部44が点検を開始すべきでないと判断した場合、予測風速が第2基準風速よりも低下するまで、ステップS14およびステップS32が繰り返される。
【0072】
しかしながら、定期点検情報に定期点検の終了時期が規定されている場合、この終了時期には定期点検が終了するように定期点検を開始してもよい。すなわち、発電に適切な風速が予測される場合であっても運転よりも定期点検を優先して、定期点検を開始してもよい。この場合、ステップS32の処理は行われなくてもよい。
【0073】
風速予測に用いるデータは特に限られることはない。例えば、風速予測に用いるデータは、気象庁予測データ、気象予報GPV(Grid Point Value)データ、天気予報SCWサイト(Super C Weather)データ、ERA-5などの気象再解析データ、および数値気象モデルなどのWRF(Weather Research and Forecasting)解析結果のデータの少なくとも1つが用いられてもよい。気象庁予測データは、気象庁が予測したデータである。気象予報GPVデータは、地図上に予め設定された格子点におけるスーパーコンピュータで計算した過去、未来の気象予測データである。ERA-5データは、ヨーロッパ中期予報センタが気象予測に用いるデータである。WRFは、風速および風向といった風況を予測するための予測モデルである。
【0074】
ステップS32において風速判断部44が点検開始可能と判断した場合、風力発電制御装置11は、風力発電設備1の運転を停止する(ステップS33)。この場合、風力発電制御装置11が、点検開始可能であるという判断情報を取得し、風力発電設備1の運転を停止する。
【0075】
次に、デバイス制御部42は、上述したステップS15と同様にしてドローン22の飛行を開始する。その後、図4に示すフローチャートと同様の処理が行われる。なお、ステップS16においては、デバイス制御部42は、取得部41により取得された点検理由情報が定期点検情報であるため、カメラ24に検査実行を指示する。風車ブレード6の外観検査を効率良く行うことができるため、定期点検の最初の検査項目としてカメラ24による外観検査が選択されてもよい。このことにより、風車ブレード6の全体の外観検査を容易に行うことができる。カメラ24は、ドローン22を移動させながら、全ての風車ブレード6の外観画像を撮像してもよく、各風車ブレード6に対して種々の位置で外観画像を撮像してもよい。ステップS18において、風車ブレード6の非破壊検査を行う場合、ミリ波レーダ25は、カメラ24の外観画像に基づいた異常判断時に発見された損傷位置およびその近傍で、ドローン22を移動させながら複数の内部断面画像を撮像してもよい。しかしながら、ミリ波レーダ25は、全ての風車ブレード6の内部断面画像を撮像してもよく、各風車ブレード6に対して種々の位置で外観画像を撮像してもよい。
【0076】
本実施の形態においては、ステップS17において異常判断部43がカメラ24の外観画像に基づいて風車ブレード6に異常無しと判断した場合、上述したステップS22として、点検結果判断部45は、風力発電設備1の運転を再開可能と判断する。本実施の形態による風車ブレード6の点検理由は定期点検である。このことにより、落雷が検知された場合とは異なり、カメラ24による外観検査で異常が発見されない場合には、これ以上の検査を不要にすることができる。このような決定にも、点検作業者が関与することを不要にすることができ、風車ブレード6の点検時間を短縮することができる。
【0077】
なお、風力発電設備1の運転年数が長い場合には、上述したステップS17を省略して、デバイス制御部42は、上述したステップS18と同様にしてミリ波レーダ25に全ての風車ブレード6の検査実行を指示してもよい。このことにより、各風車ブレード6の異常発生を未然に防止することができる。
【0078】
このように本実施の形態によれば、取得部41が風車ブレード6の点検理由情報としての定期点検情報を取得し、この定期点検情報に基づいて、デバイス制御部42がカメラ24に検査実行を指示する。このことにより、風車ブレード6の状況に応じて適切な検査項目を自動的に選択することができ、検査項目の選定に点検作業者が関与することを不要にできる。このため、風車ブレード6の点検を迅速に行うことができ、風車ブレード6の点検時間を短縮することができる。
【0079】
(第3の実施の形態)
次に、図6を用いて、第3の実施の形態における風車点検制御装置、風車点検システム、風車点検制御方法および風車点検制御プログラムについて説明する。
【0080】
図6に示す第3の実施の形態においては、風車ブレードの風切り音に異常が検知された場合に風車ブレードの点検が行われる点が主に異なり、他の構成は、図1図4に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図6において、図1図4に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0081】
本実施の形態においては、風車ブレード6の風切り音に異常が検知された場合の風車ブレード6の点検について説明する。
【0082】
図6に示すように、風車ブレード6の風切り音に異常が検知される(ステップS41)。風力発電設備1の運転中、風車ブレード6の風切り音は、上述した騒音計26により計測される。運転中に得られた風切り音データは風力発電制御装置11に送信され、風切り音に異常が検知されるか否かが風力発電制御装置11において判断される。ステップS41においては、風力発電制御装置11が、風切り音に異常が検知されたと判断している。
【0083】
次に、風車点検制御装置30の取得部41は、風車ブレード6の点検理由情報としての風切り音異常検知情報を風力発電制御装置11から取得する(ステップS42)。風力発電制御装置11は、騒音計26から風切り音異常検知情報を受信すると、この風切り音異常検知情報を取得部41に送信してもよい。これに伴い、風車ブレード6の点検が開始される。
【0084】
その後、上述したステップS14と同様にして、ドローン22の飛行の可否が判断され、ステップS14において風速判断部44がドローン22の飛行可能と判断した場合、風力発電設備1の運転を停止する(ステップS43)。この場合、風車点検制御装置30から風力発電制御装置11に、ドローン22の飛行可能という判断情報が送信され、風力発電制御装置11は、風力発電設備1の運転を停止する。
【0085】
次に、上述したステップS15およびステップS16が行われる。なお、ステップS16においては、デバイス制御部42は、取得部41により取得された点検理由情報が風切り音異常検知情報であるため、カメラ24およびミリ波レーダ25に検査実行を指示する。より具体的には、デバイス制御部42は、先にカメラ24に検査を実行するように指示し、その後にミリ波レーダ25に検査を実行するように指示する。風車ブレード6の外観検査を効率良く行うことができるため、風切り音に異常が検知された場合の最初の検査項目としてカメラ24による外観検査が選択されてもよい。カメラ24は、風切り音異常検知情報に含まれる風車ブレード6の特定情報に基づいて、風切り音の異常が検知された風車ブレード6に対して外観画像を撮像し、他の風車ブレード6の外観画像は撮像しなくてもよい。
【0086】
本実施の形態においては、上述したステップS17は省略してもよい。すなわち、本実施の形態によるデバイス制御部42は、カメラ24に検査実行を指示した後、カメラ24の検査結果によらずにミリ波レーダ25に検査実行を指示する。このため、上述したステップS16の後に、上述したステップS18と同様な非破壊検査が行われてもよい。風車ブレード6の非破壊検査を行う場合、風切り音の異常が検知された風車ブレード6に対して種々の位置で内部断面画像を撮像してもよい。しかしながら、ミリ波レーダ25は、カメラ24の外観画像に基づいた異常判断時に発見された損傷位置およびその近傍で、複数の内部断面画像を撮像してもよい。
【0087】
その後、図4に示すフローチャートと同様の処理が行われる。
【0088】
このように本実施の形態によれば、取得部41が風車ブレード6の点検理由情報としての風切り音異常検知情報を取得し、この風切り音異常検知情報に基づいて、デバイス制御部42がカメラ24およびミリ波レーダ25に検査実行を指示する。このことにより、風車ブレード6の状況に応じて適切な検査項目を自動的に選択することができ、検査項目の選定に点検作業者が関与することを不要にできる。このため、風車ブレード6の点検を迅速に行うことができ、風車ブレード6の点検時間を短縮することができる。
【0089】
以上述べた実施の形態によれば、風車ブレード6の点検時間を短縮することができる。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内で、これらの実施の形態を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0091】
1:風力発電設備、6:風車ブレード、20:風車点検システム、21:検査デバイス、22:ドローン、24:カメラ、25:ミリ波レーダ、26:騒音計、30:風車点検制御装置、41:取得部、42:デバイス制御部、43:異常判断部、44:風速判断部、45:点検結果判断部
図1
図2
図3
図4
図5
図6