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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109417
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】資材の積雪引下力測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01L 5/00 20060101AFI20240806BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20240806BHJP
   G01W 1/10 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01L5/00 Z
G01W1/00 Z
G01W1/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014197
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000213792
【氏名又は名称】朝日スチール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】山中 大地
【テーマコード(参考)】
2F051
【Fターム(参考)】
2F051AA06
2F051AB09
2F051DB05
(57)【要約】
【課題】積雪に晒される資材に作用する引下力を測定し、その測定データを当該資材の強度設計に十分に活かすことができる、資材の積雪引下力測定装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
地上に立設される主柱1と横材2とから成る枠体の横材2に吊金具3を介して吊架される資材5に作用する積雪引下力を測定するための装置であって、吊金具3に挿通される横材2の吊金具3内に位置する部分の上面にロードセル6を配置して資材5の荷重を継続的に測定し、ロードセル6からの測定データをロードセル6に付設されるデータ蓄積手段7に経時的に記憶させるようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に立設される主柱と横材とから成る枠体の横材に吊金具を介して吊架される資材に作用する積雪引下力を測定するための装置であって、
前記吊金具に挿通される前記横材の前記吊金具内に位置する部分の上面にロードセルを配置して前記資材の荷重を継続的に測定し、前記ロードセルからの測定データを前記ロードセルに付設されるデータ蓄積手段に経時的に記憶可能にしたことを特徴とする資材の積雪引下力測定装置。
【請求項2】
前記データ蓄積手段は複数の前記ロードセルからのデータを収集するデータロガーである、請求項1に記載の資材の積雪引下力測定装置。
【請求項3】
前記データロガーによって収集されたデータは、逐次パソコンに無線送信可能である、請求項2に記載の資材の積雪引下力測定装置。
【請求項4】
前記データ蓄積手段は、前記主柱のうちの端部に位置する主柱の上部に設置される、請求項1に記載の資材の積雪引下力測定装置。
【請求項5】
前記主柱に設置される積雪深計とその積雪深データを経時的に記憶するデータ蓄積手段を更に含む、請求項1に記載の資材の積雪引下力測定装置。
【請求項6】
前記資材の上部及び下部に前記資材の振れ止め手段が設置される、請求項1に記載の資材の積雪引下力測定装置。
【請求項7】
前記上部の振れ止め手段は、水平部が前記資材の上辺に設置されるアングル材の上面に固定され、垂直部が前記横材を上下に貫通するL型ボルトである、請求項6に記載の資材の積雪引下力測定装置。
【請求項8】
前記下部の振れ止め手段は、両端に主柱を抱持する留め金具を備えていて、前記資材の下縁に沿って取り付けられる振れ止めバーである、請求項6又は7に記載の資材の積雪引下力測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェンスや建物の外壁材その他の積雪に晒される可能性のある資材の強度設計に際して行う、資材に作用する積雪引下力を測定するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積雪地に設置される上記フェンスや外壁材等の資材は、雪による破損を防止するために、強度を増す必要がある(図9参照)。例えば、フェンスの強度設計に必要な、フェンスに作用する積雪荷重は大きく2つに大別される。その1つは、フェンスの上部に積もった積雪重量による荷重であり、他の1つは、フェンスの網側面に絡み付いた雪が圧密沈下する際に、同時に網を引き下げる引下力である。
【0003】
雪には軽くて細かな乾き雪や、水分を多く含んで重たく大粒の湿り雪があり、地域や時期によって降る雪の種類が異なる。雪質によって積雪重量は異なるので、積雪量のみから上記圧密沈下に伴う引下力を知ることはできない。
【0004】
フェンスの強度設計に際して積雪深や積雪重量を測定することは一般に行われており、積雪深や積雪重量を測定する方法も種々提案されているが、上記フェンスの網に作用する引下力に着目してフェンスの強度設計を行うことは、一般には行われていない。他の資材についても同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-93951号公報
【特許文献2】実開平5-58768号公報
【特許文献3】特開2020-20666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来フェンス等の強度設計に際して積雪深や積雪重量を測定することは一般に行われ、積雪重量を用いて設計されているが、雪解けした春には変形したフェンスを見かけることも多く、その都度取替えや補修を行えばユーザーの負担が大きくなる。
【0007】
そこで本発明は、積雪に晒されるフェンスや建物の外壁材等の資材に作用する引下力を測定し、その測定データを当該資材の強度設計に十分に活かすことができ、以て、取替えや補修に伴うユーザーの負担を軽減することができる、資材の積雪引下力測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、地上に立設される主柱と横材とから成る枠体の横材に吊金具を介して吊架される資材に作用する積雪引下力を測定するための装置であって、
前記吊金具に挿通される前記横材の前記吊金具内に位置する部分の上面にロードセルを配置して前記資材の荷重を継続的に測定し、前記ロードセルからの測定データを前記ロードセルに付設されるデータ蓄積手段に経時的に記憶可能にしたことを特徴とする資材の積雪引下力測定装置である。
【0009】
一実施形態においては、前記データ蓄積手段は複数の前記ロードセルからのデータを収集するデータロガーである。また、前記データロガーによって収集されたデータは、逐次パソコンに無線送信可能である。
【0010】
一実施形態においては、前記データ蓄積手段は、前記主柱のうちの端部に位置する主柱の上部に設置される。また、一実施形態においては、前記主柱に設置される積雪深計とその積雪深データを経時的に記憶するデータ蓄積手段を更に含む。
【0011】
一実施形態においては、前記資材の上部及び下部に前記資材の振れ止め手段が設置される。
【0012】
一実施形態においては、前記上部の振れ止め手段は、水平部が前記資材の上辺に設置されるアングル材の上面に固定され、垂直部が前記横材を上下に貫通するL型ボルトであり、また、前記下部の振れ止め手段は、両端に主柱を抱持する留め金具を備えていて、前記資材の下縁に沿って取り付けられる振れ止めバーである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上記のとおりであって、フェンスや建物の外壁材等の資材に作用する積雪引下力の測定データを経時的に高精度に取得することができ、その測定データを資材の強度設計に有効活用でき、また、同時間における積雪深データを加味することにより、各地域において最適な資材の強度設計が可能となる効果があり、更に、資材の度重なる取替えや補修に伴うユーザーの負担を軽減し得る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る資材の積雪引下力測定装置の設置状況を示す正面図である。
図2】本発明に係る資材の積雪引下力測定装置の設置状況を示す平面図である。
図3】本発明に係る資材の積雪引下力測定装置の設置状況を示す側面図である。
図4】本発明に係る資材の積雪引下力測定装置における吊金具の設置状況を示す正面図である。
図5】本発明に係る資材の積雪引下力測定装置における吊金具の構成を示す側面図である。
図6】本発明に係る資材の積雪引下力測定装置におけるフェンス上部の振れ止め手段を示す図である。
図7】本発明に係る資材の積雪引下力測定装置におけるフェンス下部の振れ止め手段を示す図である。
図8】本発明に係る資材の積雪引下力測定装置における配線経路図である。
図9】フェンスが雪に埋もれる状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明は、フェンスや建物の外壁材その他の積雪に晒される可能性のある資材を対象とするものである。以下、資材がフェンスである場合について説明するが、他の資材の場合もフェンスの場合に準ずるので説明を省略する。
【0016】
本発明に係る資材の積雪引下力測定装置は、地上に立設される主柱1と、主柱1間に渡される横材2とから成る枠体の横材2に、吊金具3を介して吊架されるフェンス5の積雪による引下力を測定するためのもので、吊金具3に挿通される、横材2の吊金具3内に位置する部分の上面に配置されるロードセル6と、これに付設されてロードセル6からのデータを蓄積するデータ蓄積手段とを含んで構成される。
【0017】
図示した例では、菱形金網と2種類のワイヤメッシュのフェンス5が3連に吊架されているが、その連設数は特に問わない。また、異なった種類のフェンス5を用いるだけでなく、同じ種類のフェンス5を用いることとしてもよい。いずれの場合においても、各フェンス5は、一対の主柱1,1間に渡される横材2に、吊金具3を介して吊架される。
【0018】
吊金具3は、下部を内向きに折曲し、下部の合着面9aにボルト孔を設けた一対の挟持板9,9を、天板10に対称的に設置して成る(図5参照)。一対の挟持板9,9は、ボルト締めする前は下方が開き、その開いた状態で横材2を跨ぐように配置される。吊金具3には、カバー4が被せられる。
【0019】
フェンス5の上辺には長尺のアングル材11が固定され、その長さ方向中間部の上面に垂直片12が突設される。フェンス5は、この垂直片12を、上記のように横材2に配置した挟持板9,9の合着面9a間に挟入し、ボルト13で緊締することにより吊架される。
【0020】
フェンス5はこのようにして設置されるが、その上部及び下部は確固と固定されていないため、そのままでは雪風を受けて揺動し、垂直状態を維持できない。その状態では、積雪による引下力を正確に測定できないため、フェンス5が真直ぐ垂直に引き下げられように、上部及び下部に振れ止め手段が配備される。
【0021】
上部の振れ止め手段はL型ボルト15であり、その水平部がアングル材11の上面に溶接固定され、その垂直部が、フェンス5の吊架に際し、横材2に上下に貫通するように形成される孔に挿通される(図6参照)。L型ボルト15は、吊金具3を挟んで一対配置される(図1参照)。下部の振れ止め手段は、フェンス5の下縁に沿って取り付けられる振れ止めバー16である。振れ止めバー16は、フェンス5を挟む一対の長尺金属板で形成され、両端が屈曲されて、主柱1を抱持する留め金具17が形成される(図7参照)。振れ止めバー16の両端の留め金具17は、フェンス5の吊架後に主柱1に嵌め付けられる。かくして、フェンス5の上部及び下部の振れが抑止されることで、フェンス5は真直ぐ垂直に引き下げられるようになる。
【0022】
ロードセル6は、横材2の吊金具3内に位置する部分の上面に配置され、これに吊金具3の天板10が当接することで、ロードセル6にフェンス5の荷重がかかる。ロードセル6により得られたデータは、付設されているデータ蓄積手段に送られて記憶される。データ記憶手段としては、データロガー7が最適である。データロガー7は、端部の主柱1に設置されるキャビネットボックス20内に収納される。ロードセル6から出る電源・出力ケーブルは、中空の横材2下部を通して、データロガー7に接続することができる。
【0023】
好ましい実施形態においては更に、積雪深計21と、その積雪深データを蓄積するデータ蓄積手段を更に含む。積雪深計21としては、一般に用いられている、レーザ光を走査して積雪面までの距離を計測する積雪深計を用いることができる。また、この場合のデータ蓄積手段も、上記と同様のデータロガー22が好適である。データロガー22も、端部の主柱1に設置されるキャビネットボックス23内に収納される。
【0024】
データロガー7,22としては、軽量、コンパクトでバッテリー駆動、無線LAN通信が可能なスタンドアロン型が好適である。その場合、データロガー7,22によって収集されたデータを、逐次屋内のパソコンに無線送信して解析に供することが可能となる。
【0025】
上記のようにして本発明に係る資材の積雪引下力測定装置を降雪地域に設置し、降雪時期に装置を作動させると、積雪が増すにつれてフェンス5の網に雪が絡み付く。圧密沈下が始まると、それにつれてフェンス5に引下力が作用し、次第に吊金具3が下方に引っ張られ、ロードセル6に圧縮力が作用する。そして、ロードセル6においてその圧縮力が連続的に測定され、その測定結果が時間軸と共にデータロガー7に送られて記憶される。この測定は、すべてのロードセル6において同時に行われ、各測定結果がそれぞれデータロガー7に送られて記憶される(図8参照)。データロガー7に記憶された測定データは、後日各フェンス5の強度設計に生かされるが、測定結果をデータロガー7から観測室のパソコンに取り込んで、リアルタイムに観察したりすることもできる。
【0026】
このロードセル6による引下力測定と同時進行で、積雪深計21による積雪深の測定が行われ、その測定データが時間軸と共にデータロガー22に送られて記憶される。この場合の測定データも、上記引下力の測定データと併せ考慮されて、各フェンス5の強度設計に生かされる。
【0027】
このように本発明に係る装置は、フェンスの網や建物の外壁材にかかる積雪の圧密沈下に伴う引下力に着目し、この引下力を経時変化と共に数値を以て高精度に測定することを可能にするものである。そして、その測定データは、雪質、積雪量、降雪条件等が異なる各地域ごとに解析し、フェンス等の資材の強度設計に生かすことができる。また、その測定データを基に、フェンス等の資材の破損の危険性を事前に検出し、警報を発するようにすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は上記のとおりであって、本発明に係る装置によれば、フェンスや建物の外壁材等の資材に作用する積雪引下力の測定データを経時的に高精度に取得することができ、その測定データを資材の強度設計に有効活用でき、また、同時間における積雪深データを加味することにより、各地域において最適な資材の強度設計が可能となる効果があり、更に、資材の度重なる取替えや補修に伴うユーザーの負担を軽減し得る効果があるので、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0029】
1 主柱
2 横材
3 吊金具
4 カバー
5 フェンス
6 ロードセル
7 データロガー
9 挟持板
10 天板
11 アングル材
12 垂直片
13 ボルト
15 L型ボルト
16 振れ止めバー
17 留め金具
20 キャビネットボックス
21 積雪深計
22 データロガー
23 キャビネットボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9