(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109420
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】操作受付装置、及び操作受付方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0346 20130101AFI20240806BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20240806BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G06F3/0346 421
G01V3/12 A
G06F3/01 570
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014203
(22)【出願日】2023-02-01
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、支出負担行為担当官、総務省大臣官房会計課企画官、研究テーマ「電波利活用強靭化に向けた周波数創造技術に関する研究開発及び人材育成プログラム」に関する委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】393031586
【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100121223
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 悟道
(72)【発明者】
【氏名】栗原 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】坂野 寿和
【テーマコード(参考)】
2G105
5B087
5E555
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB14
2G105BB15
2G105CC01
2G105DD02
2G105EE06
2G105HH02
2G105HH04
2G105KK06
5B087BC06
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5B087CC14
5E555AA11
5E555BA01
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5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザの入力した操作を非接触で特定することができる操作受付装置を提供する。
【解決手段】操作受付装置1は、ユーザが操作の入力に用いる操作体が操作入力時に存在する領域に向けて並べて配置された複数のアンテナ11と、複数のアンテナ11のそれぞれから電波を送信し、送信した電波の反射波を複数のアンテナ11のうち、少なくとも一部のアンテナ11で受信することによって、各アンテナで受信された反射波に関する情報である反射情報の集合を取得する反射情報取得部12と、反射情報の集合に基づいて、ユーザの操作を識別する操作識別子を特定する操作特定部13と、操作特定部13によって特定された操作識別子に関する出力を行う出力部14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが操作の入力に用いる操作体が操作入力時に存在する領域に向けて並べて配置された複数のアンテナと、
前記複数のアンテナのそれぞれから電波を送信し、当該送信した電波の反射波を前記複数のアンテナのうち、少なくとも一部のアンテナで受信することによって、各アンテナで受信された反射波に関する情報である反射情報の集合を取得する反射情報取得部と、
前記反射情報の集合に基づいて、ユーザの操作を識別する操作識別子を特定する操作特定部と、
前記操作特定部によって特定された操作識別子に関する出力を行う出力部と、を備えた操作受付装置。
【請求項2】
前記反射情報は、複素反射係数、反射信号の受信電力、及び反射係数のうち、少なくとも1以上である、請求項1記載の操作受付装置。
【請求項3】
前記操作特定部は、あらかじめ決められたルールに基づいて操作識別子を特定する、請求項1記載の操作受付装置。
【請求項4】
前記操作特定部は、パターンマッチングによって操作識別子を特定する、請求項1記載の操作受付装置。
【請求項5】
前記操作特定部は、反射情報の集合である訓練用入力情報と、前記反射情報の集合に対応するユーザの操作を識別する操作識別子である訓練用出力情報との組を複数用いて学習された学習器に、前記反射情報取得部によって取得された反射情報の集合を適用することによって操作識別子を特定する、請求項1記載の操作受付装置。
【請求項6】
前記反射情報取得部は、前記複数のアンテナから複数の周波数の電波を送信し、当該複数の周波数の電波に対応する反射情報の集合を取得する、請求項1から請求項5のいずれか記載の操作受付装置。
【請求項7】
前記複数のアンテナは、操作対象が表示される面の前面に配置される、請求項1から請求項5のいずれか記載の操作受付装置。
【請求項8】
前記複数のアンテナは、透明なアンテナである、請求項7記載の操作受付装置。
【請求項9】
前記複数のアンテナは、操作対象が表示されるシートであって、電波を透過するシートの背面に配置される、請求項1から請求項5のいずれか記載の操作受付装置。
【請求項10】
前記複数のアンテナは、操作対象が表示される面に対向するように配置される、請求項1から請求項5のいずれか記載の操作受付装置。
【請求項11】
前記操作対象が表示される面の前面には透明な電波反射フィルムが配置されている、請求項10記載の操作受付装置。
【請求項12】
反射情報取得部と、操作特定部と、出力部とによって処理される操作受付方法であって、
前記反射情報取得部が、ユーザが操作の入力に用いる操作体が操作入力時に存在する領域に向けて並べて配置された複数のアンテナのそれぞれから電波を送信し、当該送信した電波の反射波を前記複数のアンテナのうち、少なくとも一部のアンテナで受信することによって、各アンテナで受信された反射波に関する情報である反射情報の集合を取得するステップと、
前記操作特定部が、前記反射情報の集合に基づいて、ユーザの操作を識別する操作識別子を特定するステップと、
前記出力部が、特定された操作識別子に関する出力を行うステップと、を備えた操作受付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの操作を特定する操作受付装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非接触で物体を検知する様々な技術が開発されている(例えば、特許文献1~3参照)。例えば、非接触で物体を検知する方法として、赤外線方式や、静電容量の変化を用いる方式、レーダを用いる方式、誘導方式などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-146024号公報
【特許文献2】特開2019-132586号公報
【特許文献3】特開2018-190580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非接触で物体を検知するだけでなく、ユーザの入力した操作を非接触で特定できるようにしたいという要望もある。そのような非接触での操作の特定を行うことによって、ユーザは、操作の入力時に必ずしも操作対象であるボタンやタッチパネル等に接触しなくてよいことになり、例えば、ウイルスや細菌などへの感染を予防することができる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ユーザの入力した操作を非接触で特定することができる操作受付装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様による操作受付装置は、ユーザが操作の入力に用いる操作体が操作入力時に存在する領域に向けて並べて配置された複数のアンテナと、複数のアンテナのそれぞれから電波を送信し、送信した電波の反射波を複数のアンテナのうち、少なくとも一部のアンテナで受信することによって、各アンテナで受信された反射波に関する情報である反射情報の集合を取得する反射情報取得部と、反射情報の集合に基づいて、ユーザの操作を識別する操作識別子を特定する操作特定部と、操作特定部によって特定された操作識別子に関する出力を行う出力部と、を備えたものである。
このような構成により、ユーザの操作、例えば、ボタンの選択やジェスチャ操作などを非接触で特定することができるようになる。
【0007】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、反射情報は、複素反射係数、反射信号の受信電力、及び反射係数のうち、少なくとも1以上であってもよい。
【0008】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、操作特定部は、あらかじめ決められたルールに基づいて操作識別子を特定してもよく、パターンマッチングによって操作識別子を特定してもよい。
このような構成により、例えば、ルールやパターンマッチングを用いることによって、ユーザの操作を特定することができるようになる。
【0009】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、操作特定部は、反射情報の集合である訓練用入力情報と、反射情報の集合に対応するユーザの操作を識別する操作識別子である訓練用出力情報との組を複数用いて学習された学習器に、反射情報取得部によって取得された反射情報の集合を適用することによって操作識別子を特定してもよい。
このような構成により、学習器を用いてユーザの操作を特定することができるため、ルールなどを手作業で作成しなくてもよいことになる。
【0010】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、反射情報取得部は、複数のアンテナから複数の周波数の電波を送信し、複数の周波数の電波に対応する反射情報の集合を取得してもよい。
このような構成により、より多くの情報を用いてユーザの操作を特定することができ、特定の精度を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、複数のアンテナは、操作対象が表示される面の前面に配置されてもよい。
このような構成により、例えば、物理ボタンの配置面やディスプレイ、タッチパネルの前面に複数のアンテナを配置することによって、非接触での入力を受け付けることができるようになる。また、ユーザによる操作の入力時に、複数のアンテナの近傍に操作体が存在することになるため、ユーザの操作をより高い精度で特定することができるようになる。
【0012】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、複数のアンテナは、透明なアンテナであってもよい。
このような構成により、アンテナの背面側の表示内容をユーザが見ることができるようになる。
【0013】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、複数のアンテナは、操作対象が表示されるシートであって、電波を透過するシートの背面に配置されてもよい。
このような構成により、そのシート上に表示された操作対象への入力を非接触で受け付けることができるようになる。
【0014】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、複数のアンテナは、操作対象が表示される面に対向するように配置されてもよい。
このような構成により、例えば、複数のアンテナをディスプレイやタッチパネルなどから離して配置することができ、ディスプレイ等から放射される電波の影響を低減することができる。また、複数のアンテナを透明にする必要がないため、コストを低減することもできる。
【0015】
また、本発明の一態様による操作受付装置では、操作対象が表示される面の前面には透明な電波反射フィルムが配置されていてもよい。
このような構成により、電波反射フィルムで反射された電波を用いて、より高精度な操作の特定を行うことができるようになる。
【0016】
また、本発明の一態様による操作受付方法は、反射情報取得部と、操作特定部と、出力部とによって処理される操作受付方法であって、反射情報取得部が、ユーザが操作の入力に用いる操作体が操作入力時に存在する領域に向けて並べて配置された複数のアンテナのそれぞれから電波を送信し、送信した電波の反射波を複数のアンテナのうち、少なくとも一部のアンテナで受信することによって、各アンテナで受信された反射波に関する情報である反射情報の集合を取得するステップと、操作特定部が、反射情報の集合に基づいて、ユーザの操作を識別する操作識別子を特定するステップと、出力部が、特定された操作識別子に関する出力を行うステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様による操作受付装置等によれば、ユーザの入力した操作を非接触で特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態による操作受付装置の構成を示すブロック図
【
図2】同実施の形態による操作受付装置の動作を示すフローチャート
【
図3】同実施の形態における複数のアンテナの配置の一例を示す図
【
図4】同実施の形態における複数のアンテナの配置の一例を示す図
【
図5A】同実施の形態における複数のアンテナの配置の一例を示す図
【
図5B】同実施の形態における複数のアンテナの配置の一例を示す図
【
図5C】同実施の形態における複数のアンテナの配置の一例を示す図
【
図5D】同実施の形態における複数のアンテナの配置の一例を示す図
【
図5E】同実施の形態における複数のアンテナの配置の一例を示す図
【
図6】同実施の形態における複数のアンテナの配置の一例を示す図
【
図7】同実施の形態における操作特定部の構成の一例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明による操作受付装置、及び操作受付方法について、実施の形態を用いて説明する。なお、以下の実施の形態において、同じ符号を付した構成要素及びステップは同一または相当するものであり、再度の説明を省略することがある。本実施の形態による操作受付装置は、複数のアンテナのそれぞれから送信した電波の反射波を各アンテナで受信し、その受信した反射波に関する情報である反射情報の集合を用いて、ユーザの操作を特定するものである。
【0020】
図1は、本実施の形態による操作受付装置1の構成を示すブロック図である。本実施の形態による操作受付装置1は、アンテナ取付板10と、そのアンテナ取付板10に取り付けられた複数のアンテナ11-1~11-12と、反射情報取得部12と、操作特定部13と、出力部14とを備える。なお、アンテナ11-1~11-12を特に区別しない場合には、アンテナ11と呼ぶこともある。また、本実施の形態では、複数のアンテナ11がアンテナ取付板10に取り付けられている場合について主に説明するが、そうでなくてもよい。例えば、複数のアンテナ11は、個別に配置されてもよい。
【0021】
ユーザからの操作は、ユーザが操作の入力に用いる操作体によって入力されるものとする。ユーザが操作の入力に用いる操作体は、例えば、ユーザの指であってもよく、ユーザの手であってもよく、棒状部材などの指示部材であってもよい。また、その操作体は、操作入力時に所定の領域に存在するものとする。その所定の領域は、例えば、操作対象である物理ボタンの配置されている面、または、操作対象のボタンなどの表示されるディスプレイやタッチパネルの表示面の前面側の領域であってもよい。なお、ユーザがある面を正面から見ている場合に、その面からユーザに向かう方向を前面側、逆の方向を背面側とする。ジェスチャ操作などのように、操作対象が存在しなくてもよい場合には、その所定の領域は、あらかじめ決められた領域であってもよい。所定の領域は、通常、実空間における3次元の領域である。ユーザが入力する操作は、例えば、操作対象であるボタンなどを選択する操作であってもよく、ジェスチャ操作であってもよい。ボタンなどを選択する操作は、例えば、選択対象のボタンの前面側に操作体である人差し指を一定時間(例えば、1~2秒程度)、止めておく操作であってもよい。ジェスチャ操作は、例えば、操作体である手の形状に応じた操作であってもよく、操作体の時系列に沿った動きに応じた操作であってもよい。操作体である手の形状に応じた操作は、例えば、グー、チョキ、パーなどの手の形状に応じた操作であってもよい。また、操作体の時系列に沿った動きに応じた操作は、例えば、操作体である手を左側に振る操作、手を右側に振る操作、手を上側に振る操作、手を下側に振る操作、手を左右に振る操作などであってもよい。
【0022】
複数のアンテナ11は、ユーザが操作の入力に用いる操作体が操作入力時に存在する領域に向けて並べて配置される。アンテナ11が、操作体が操作入力時に存在する領域に向けて配置されるとは、例えば、アンテナ11の指向性の強い方向がその領域に向くように配置されることであってもよい。複数のアンテナ11は、例えば、直線状や曲線状などのように線状に並べて配置されてもよく、平面状や曲面状などのように面状に並べて配置されてもよい。
図1では、複数のアンテナ11が、平面であるアンテナ取付板10に平面状に並べて配置されている場合について示している。複数のアンテナ11は、
図1で示されるように、例えば、アレー状に配置されてもよい。なお、そのアレー状の配置は、
図1とは異なる配置であってもよいことは言うまでもない。より細かい操作を特定したい場合には、より多くのアンテナ11が配置されることが好適である。また、複数のアンテナ11の種類は問わない。
図1では、アンテナ11が平面アンテナである場合について示しているが、アンテナ11は、平面アンテナ以外の種類のアンテナであってもよいことは言うまでもない。平面アンテナは、例えば、マイクロストリップアンテナであってもよい。マイクロストリップアンテナは、例えば、
図1で示される方形マイクロストリップアンテナであってもよく、円形マイクロストリップアンテナであってもよい。
図1では、配線を省略しているが、アンテナ11-1~11-12のそれぞれが、反射情報取得部12に接続されていることが好適である。複数のアンテナ11は、通常、同じアンテナであるが、そうでなくてもよい。後者の場合としては、例えば、偏波の異なるアンテナ11が隣接するように配置されてもよい。この場合でも、複数のアンテナ11は、偏波以外は同じアンテナであることが好適である。
【0023】
反射情報取得部12は、複数のアンテナ11のそれぞれから電波を送信し、その送信した電波の反射波を複数のアンテナ11のうち、少なくとも一部のアンテナ11で受信することによって、各アンテナ11で受信された反射波に関する情報である反射情報の集合を取得する。なお、反射情報取得部12は、複数のアンテナ11から複数の周波数の電波を送信し、その複数の周波数の電波に対応する反射情報の集合を取得してもよい。
【0024】
反射情報は、例えば、アンテナ11で受信された反射波の反射信号に関する複素反射係数であってもよく、その反射信号の受信電力であってもよく、その反射信号の反射係数であってもよく、または、それらの2以上の組み合わせであってもよい。すなわち、反射情報は、例えば、複素反射係数、受信電力、及び反射係数のうち、少なくとも1以上であってもよい。
【0025】
ここで、N個のアンテナ11-1~11-Nを用いて反射情報を取得する場合について説明する。なお、Nは2以上の整数であり、
図1では、N=12の場合について示している。反射情報取得部12は、例えば、アンテナ11-1から電波を送信し、その反射波をN-1個のアンテナ11-2~11-Nで受信してもよく、または、電波を送信したアンテナ11-1を含むN個のアンテナ11-1~11-Nで受信してもよい。このようにして、N-1個またはN個の反射情報を取得することができる。このような反射情報の取得を、電波を送信するアンテナ11を順番に変えながら行うことによって、N×(N-1)個、またはN×N個の反射情報を取得することができる。また、M個の周波数の電波を送信する場合には、上記した電波の送信や受信が、M個の周波数について繰り返されることになるため、N×(N-1)×M個、またはN×N×M個の反射情報を取得することができる。すなわち、操作の特定に用いられる反射情報の集合は、例えば、N×(N-1)×M個の反射情報の集合、またはN×N×M個の反射情報の集合であってもよい。Mは1以上の整数である。なお、N個のアンテナ11、または電波を送信したアンテナ11以外のN-1個のアンテナ11で受信した反射波に応じて反射情報を取得する際に、後述するように、スイッチでアンテナ11を切り替える場合には、その切り替えのための時間がかかることになる。したがって、Nが大きい値である場合には、1つの反射情報の集合を取得するまでに操作体の位置や形状が変化する可能性もある。そのようなことを避けるために、反射情報取得部12は、N個のアンテナ11のうち、一部のアンテナ11で受信された反射波に応じた反射情報を取得してもよい。一部のアンテナ11の個数は特に限定されないが、一例として、N個の半分程度の個数であってもよい。一部のアンテナ11を反射情報の取得に用いる場合に、その反射情報の取得に用いるアンテナ11として、例えば、電波を送信したアンテナ11の近くに配置されているアンテナ11を選択してもよい。
【0026】
反射情報取得部12は、例えば、定期的に繰り返して反射情報の集合を取得してもよい。また、取得された反射情報の集合は、図示しない記録媒体で記憶されてもよい。この記憶は、例えば、一時的な記憶であってもよい。その記録媒体は、例えば、半導体メモリや磁気ディスクなどであってもよい。
【0027】
操作特定部13は、反射情報の集合に基づいて、ユーザの操作を識別する操作識別子を特定する。操作特定部13は、例えば、あらかじめ決められたルールに基づいて操作識別子を特定してもよく、パターンマッチングによって操作識別子を特定してもよく、学習器を用いて操作識別子を特定してもよい。
【0028】
あらかじめ決められたルールは、特に限定されないが、例えば、反射情報の集合に、あらかじめ決められた閾値を超える値であり、かつ、最大値である反射情報が存在する場合には、その反射情報に対応するアンテナ11の位置に対応する操作対象(例えば、ボタンなど)が選択された旨を示す操作識別子を特定する、というルールであってもよい。この場合には、例えば、最も大きい反射波を受信したアンテナ11の位置に対応する操作対象が選択された旨が特定されることになる。
【0029】
また、パターンマッチングによって操作識別子を特定する場合には、反射情報の集合のパターンと、そのパターンに対応する操作識別子とを対応付ける複数の対応情報が図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。そして、操作特定部13は、取得された反射情報の集合と複数のパターンとを比較して、取得された反射情報の集合に一致するパターンに対応付けられた操作識別子を、ユーザの操作を識別する操作識別子として特定してもよい。なお、取得された反射情報の集合に一致するパターンとは、例えば、取得された反射情報の集合に厳密に一致するパターンであってもよく、または、取得された反射情報の集合との類似度が、あらかじめ決められた閾値を超えており、かつ、取得された反射情報の集合と最も類似しているパターンであってもよい。
【0030】
また、操作識別子の特定に用いられる学習器は、反射情報の集合である訓練用入力情報と、その反射情報の集合に対応するユーザの操作を識別する操作識別子である訓練用出力情報との組を複数用いて学習された学習器であってもよい。そして、操作特定部13は、反射情報取得部12によって取得された反射情報の集合を学習器に適用することによって操作識別子を特定してもよい。すなわち、学習器に反射情報の集合を入力した際に、その学習器から出力された操作識別子が、ユーザの操作を識別する操作識別子として特定されてもよい。
【0031】
この学習器は、例えば、ニューラルネットワークの学習結果であってもよく、それ以外の教師あり機械学習の学習結果であってもよい。ニューラルネットワークは、例えば、全結合層から構成されるニューラルネットワークであってもよく、畳み込みニューラルネットワークであってもよい。例えば、
図1で示されるように、複数のアンテナ11がA列×B行の2次元のマトリックス状に配置されている場合には、畳み込みニューラルネットワークが用いられてもよい。A,Bは2以上の整数であり、A×B=Nである。Nは、上記のように、アンテナ11の個数である。
図1では、A=4であり、B=3である場合について示している。この場合には、1回の電波の送信に応じて、A×Bのマトリックス状の反射情報を取得することができ、A×B回、すなわちN回の電波の送信が行われることによって、N個のマトリックス状の反射情報を取得することができる。なお、一部のアンテナ11で反射情報の受信を行わない場合には、マトリックス状の反射情報において、そのアンテナ11に対応する反射情報が存在しないが、その反射情報としては、例えば、0を追加してもよく、または、周りの反射情報を用いて補間した情報を追加してもよい。このようにすることで、反射情報の集合は、例えば、N個のA×Bのマトリックス状の反射情報となる。この反射情報の集合を学習器に入力する際には、一例として、N個のチャネルのA×Bのマトリックス状の情報として入力してもよい。この場合には、ニューラルネットワークは、畳み込みニューラルネットワークであってもよい。畳み込みニューラルネットワークは、一例として、プーリング層を含んでいてもよい。ニューラルネットワークの層数、各層におけるノード数、各層の種類(例えば、全結合層、畳み込み層、プーリング層)、畳み込みニューラルネットワークにおける畳み込み層のフィルタのサイズや、プーリングのサイズ、ストライドの値等については、適宜、選択したものを用いてもよい。なお、このたびの学習器は、操作の分類を行う学習器であるため、出力層の前段にソフトマックス層が存在してもよく、そのソフトマックス層の前段に全結合層が存在してもよい。また、入力層のノード数は、例えば、反射情報の集合に含まれる反射情報の個数であってもよい。また、出力層のノード数は、例えば、操作識別子によって識別される操作の個数であってもよい。この学習器は、図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。
【0032】
ここで、学習器の生成について説明する。学習器の生成に用いられる訓練情報、すなわち訓練用入力情報と訓練用出力情報との組は、次のようにして用意されてもよい。まず、ユーザは、操作受付装置1において、操作体を用いてある操作識別子で識別される操作を行い、その操作時の反射情報の集合を反射情報取得部12によって取得する。この反射情報の集合である訓練用入力情報と、その操作識別子である訓練用出力情報との組が1個の訓練情報となる。なお、訓練用出力情報は、例えば、その操作識別子に対応するノードの値が1であり、それ以外のノードの値が0である情報であってもよい。ユーザは、このような操作を繰り返すことによって、1個の操作識別子について、複数の訓練情報を用意する。また、このような作業を繰り返すことによって、すべての操作識別子について、複数の訓練情報を用意する。その後、その複数の訓練情報が学習されることによって、学習器が生成される。
【0033】
出力層のノードが、操作識別子によって識別される操作の個数だけある場合には、反射情報取得部12によって取得された反射情報の集合を学習器に適用した際に、例えば、各ノードから0から1の数値がそれぞれ出力されることになる。そして、設定された閾値より大きい数値であり、かつ、最大値である数値が出力されたノードに対応する操作識別子が、ユーザの操作を識別する操作識別子として操作特定部13によって特定されてもよい。なお、そのような数値のノードが存在しない場合には、操作特定部13は、操作識別子を特定しなくてもよい。この場合には、ユーザからの操作が入力されていないと判断されたことになる。
【0034】
なお、特定対象のユーザの操作が、手を左右に振るなどのように、時系列に沿ったものである場合には、操作特定部13は、反射情報取得部12によって定期的に測定された時系列に沿った複数の反射情報の集合を用いて、操作識別子の特定を行ってもよい。
【0035】
例えば、ルールに基づいて操作識別子を特定する場合には、操作特定部13は、第1のルールを満たす反射情報の集合と、第2のルールを満たす反射情報の集合と、第3のルールを満たす反射情報の集合とが時系列に沿って取得され、かつ、第1のルールを満たす反射情報の集合に対応する時刻から、第3のルールを満たす反射情報の集合に対応する時刻までの間隔が所定の時間以内であるときに、第1から第3のルールに対応する操作を識別する操作識別子を特定してもよい。このように、時系列に沿った反射情報の複数の集合がそれぞれルールを満たすかどうかを判断することによって、ルールに基づいた操作識別子の特定が行われてもよい。
【0036】
また、例えば、パターンマッチングによって操作識別子を特定する場合には、操作特定部13は、第1のパターンに一致する反射情報の集合と、第2のパターンに一致する反射情報の集合と、第3のパターンに一致する反射情報の集合とが時系列に沿って取得され、かつ、第1のパターンに一致する反射情報の集合に対応する時刻から、第3のパターンに一致する反射情報の集合に対応する時刻までの間隔が所定の時間以内であるときに、第1から第3のパターンに対応する操作を識別する操作識別子を特定してもよい。このように、時系列に沿った反射情報の複数の集合がそれぞれパターンと一致するかどうかを判断することによって、パターンマッチングによる操作識別子の特定が行われてもよい。
【0037】
また、例えば、学習器を用いて操作識別子を特定する場合には、操作特定部13は、時系列に沿った複数の反射情報の集合を学習器に適用することによって、操作識別子を特定してもよい。この場合には、学習器は、例えば、時系列に沿った情報を入力情報とする学習器であってもよい。そのような時間方向を含む情報を分類するためのニューラルネットワークとしては、例えば、3D-CNNや、(2+1)D-CNNなどが知られている。したがって、学習器として、そのようなニューラルネットワークの学習結果を用いてもよい。
【0038】
出力部14は、操作特定部13によって特定された操作識別子に関する出力を行う。操作識別子に関する出力とは、例えば、操作識別子そのものの出力であってもよく、操作識別子に応じた情報等の出力であってもよい。後者の場合には、例えば、操作識別子で識別される操作が受け付けられたことに応じて行われる処理の結果等が出力されてもよい。ここで、この出力は、例えば、表示デバイス(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなど)への表示でもよく、所定の機器への通信回線を介した送信でもよく、プリンタによる印刷でもよく、スピーカによる音声出力でもよく、記録媒体への蓄積でもよく、他の構成要素への引き渡しでもよい。なお、出力部14は、出力を行うデバイス(例えば、表示デバイスやプリンタなど)を含んでもよく、または含まなくてもよい。また、出力部14は、ハードウェアによって実現されてもよく、または、それらのデバイスを駆動するドライバ等のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0039】
次に、操作受付装置1の動作について
図2のフローチャートを用いて説明する。
(ステップS101)反射情報取得部12は、反射情報の集合を取得するかどうか判断する。そして、反射情報の集合を取得する場合には、ステップS102に進み、そうでない場合には、反射情報の集合を取得すると判断するまでステップS101の処理を繰り返す。なお、反射情報取得部12は、例えば、反射情報を取得すると定期的に判断してもよい。
【0040】
(ステップS102)反射情報取得部12は、各アンテナ11から順番に電波を送信し、その電波の反射波を少なくとも一部のアンテナ11で受信することによって、反射情報の集合を取得する。この反射情報の集合は、図示しない記録媒体で記憶されていてもよい。
【0041】
(ステップS103)操作特定部13は、取得された反射情報の集合を用いて、ユーザの操作を識別する操作識別子を特定する。なお、ユーザによる操作の入力が行われていない場合には、操作識別子は特定されないことになる。
【0042】
(ステップS104)出力部14は、特定された操作識別子に関する出力を行う。なお、ステップS103で操作識別子が特定されなかった場合、すなわちユーザから操作が入力されていない場合には、出力部14は、この出力を行わなくてもよい。そして、ステップS101に戻る。
なお、
図2のフローチャートにおいて、電源オフや処理終了の割り込みにより処理は終了する。
【0043】
次に、複数のアンテナ11の配置について説明する。
図3は、複数のアンテナ11の配置の一例を示す図である。
図3で示されるように、複数のアンテナ11は、操作対象が表示される面の前面に配置されてもよい。この場合には、例えば、ユーザの指である操作体5によって非接触で選択されたボタンなどを、操作受付装置1によって特定することができる。例えば、
図3で示される場合には、操作特定部13は、取得された反射情報の集合に基づいて、アンテナ11-7の相当する位置に表示されたボタンが選択された旨を示す操作識別子を取得してもよい。
図3では、一例として、操作対象が表示される面がディスプレイ20の表示面である場合について示しているが、操作対象が表示される面は、ディスプレイ以外であってもよい。ディスプレイ以外の操作対象が表示される面は、例えば、食券などのチケットを販売する機械やエレベータなどにおいて複数の物理ボタンが配置されている面であってもよく、タッチパネルなどであってもよい。この場合には、一例として、アンテナ取付板10、及び複数のアンテナ11は、両方とも透明であってもよい。操作対象が表示される面がディスプレイ20やタッチパネルである場合には、アンテナ取付板10は、例えば、透明なフィルム状のものであってもよい。一方、操作対象が表示される面が複数の物理ボタンが配置されている面である場合には、アンテナ取付板10は、例えば、強度を有する透明な板状部材であってもよい。透明なアンテナ11は、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)や、銀ナノワイヤなどの透明な導電性材料によって構成されてもよい。また、複数のアンテナ11の配線も同様に、透明な導電性材料によって構成されることが好適である。また、一例として、アンテナ11が数ミリメートル程度の小型のアンテナである場合には、アンテナ11は透明でなくてもよい。この場合でも、アンテナ取付板10及び配線は透明であることが好適である。また、操作対象が表示される面の前面に複数のアンテナ11が配置される場合に、操作対象が表示される面と、アンテナ取付板10との間に隙間があってもよく、またはそうでなくてもよい。
【0044】
また、操作対象が表示される面の前面に複数のアンテナ11が配置される場合に、その複数のアンテナ11は、ディスプレイ20などと一体的に構成されていてもよく、または、ディスプレイ20などに後付けで装着されてもよい。券売機などの物理ボタンの前面に複数のアンテナ11が配置される場合には、通常、後付けで複数のアンテナ11が装着されることになる。複数のアンテナ11が、操作対象が表示される面の前面に配置される場合には、例えば、ディスプレイ20やタッチパネルなどから発せられる電波と、複数のアンテナ11から出射される電波とが干渉しないように設計することが好適である。
【0045】
図4は、複数のアンテナ11の他の配置の一例を示す図である。
図4で示されるように、複数のアンテナ11は、操作対象が表示されるシート30の背面に配置されてもよい。すなわち、複数のアンテナ11の取り付けられたアンテナ取付板10の前面にシート30が配置されてもよい。
図4では、説明の便宜上、アンテナ取付板10とシート30とが離れている場合について示しているが、例えば、両者は接していてもよい。シート30は、電波を透過するものとする。また、シート30には、操作対象のボタン31などが表示されていてもよい。電波を透過するシート30は、例えば、紙やガラス、樹脂などによって構成されるシートであってもよい。なお、シート30がガラスや樹脂で構成される場合に、そのシート30には、カーボンなどの導電性材料が含まれないことが好適である。導電性材料が含まれるガラスや樹脂は、電波を減衰させるからである。この場合には、例えば、プリンタなどで印刷したシート30を用いることもでき、即席で入力インターフェースを構成することができる。例えば、
図4で示されるシート30には、0から9までの数字と、クリアと、小数点とに対応した各ボタン31が表示されているため、
図4のシート30と複数のアンテナ11とによって、即席の数字の入力インターフェースを構成することができる。この場合には、例えば、出力部14が、数字や小数点などを操作識別子として出力するように操作受付装置1に設定を行ってもよい。また、シート30は、例えば、ポスターなどであってもよい。この場合には、例えば、ポスターの一部に表示されたボタンをユーザが操作体を用いて非接触で選択することによって、その選択に応じた出力が行われてもよい。その出力は、例えば、あらかじめ決められた解説の音声出力などであってもよい。この場合には、複数のアンテナ11は、シート30で隠れることになるため、透明でなくてもよい。
【0046】
図5Aは、複数のアンテナ11の他の配置の一例を示す図である。
図5Aは、ディスプレイ20やアンテナ11を側面から見た図である。
図5Aで示されるように、複数のアンテナ11は、操作対象が表示される面に対向するように配置されてもよい。この場合には、複数のアンテナ11と、操作対象が表示される面とが、操作入力時の操作体5を挟んで対向するように、複数のアンテナ11が配置されることが好適である。
図5Aでは、操作対象が表示される面がディスプレイ20の表示面である場合について示しているが、操作対象が表示される面は、上記したように、タッチパネルなどの表示面であってもよく、券売機などにおける複数の物理ボタンが配置された面であってもよい。後述する
図5B~
図5Eについても同様である。この場合にも、複数のアンテナ11は、透明でなくてもよい。また、ディスプレイなどの電子機器から離れた位置に複数のアンテナ11を配置することができるため、操作受付装置1が、操作を特定する際に電子機器から放射される電波によって受ける影響を低減することができる。
【0047】
図5Bは、複数のアンテナ11の他の配置の一例を示す図である。
図5Bで示されるように、複数のアンテナ11は、操作対象が表示される面に対向するように配置されたアンテナ取付板10a,10bの両方にそれぞれ取り付けられてもよい。また、
図5Cで示されるように、複数のアンテナ11は、操作対象が表示される面に対向するように配置されたアンテナ取付板10aと、操作対象が表示される面の前面に配置されたアンテナ取付板10cとの両方にそれぞれ取り付けられてもよい。なお、アンテナ取付板10cに配置されたアンテナ11、及びアンテナ取付板10cは、例えば、透明であってもよい。このように、複数のアンテナ取付板10a,10b、または、複数のアンテナ取付板10a,10cを配置することによって、ユーザの操作を特定してもよい。この場合には、複数の方向からセンシングすることができるため、操作の特定の精度を向上させることができる。また、3個以上のアンテナ取付板10を配置することによって、ユーザの操作を特定してもよい。なお、
図4で示される複数のアンテナ11を有する操作受付装置1についても、
図5Cと同様に、シート30の表示面に対向するように配置された複数のアンテナ11をさらに備えてもよい。また、
図5Cで示されるように、一部のアンテナ11が、操作対象が表示される面の前面に配置されると共に、他の一部のアンテナ11が、操作対象が表示される面に対向するように配置される場合には、例えば、操作対象が表示される面の前面に配置された複数のアンテナ11によって受信された反射波に応じて、操作体5の位置に応じた操作、例えば、表示されているボタンの選択の操作を特定し、操作対象が表示される面に対向するように配置された複数のアンテナ11によって受信された反射波に応じて、操作体5のジェスチャ操作を特定してもよい。
【0048】
また、
図5Dで示されるように、操作対象が表示される面の前面に、透明な電波反射フィルム40が配置されていてもよい。この場合には、アンテナ11から送信された電波であって、電波反射フィルム40で反射した反射波をも用いて、操作を特定することができるようになり、操作の特定の精度を向上させることができる。この場合には、操作受付装置1と、電波反射フィルム40とを備えた操作受付システムによって、より高い精度の操作の特定を実現できることになる。
【0049】
なお、
図5Eで示されるように、複数のアンテナ11が、操作対象が表示される面の前面に配置される場合にも、操作対象が表示される面の前面に、透明な電波反射フィルム40が配置されていてもよい。この場合には、例えば、ディスプレイ20などの電子機器から放射される電波を電波反射フィルム40によって低減することができる。そのため、電子機器から放射される電波が、複数のアンテナ11による反射波の受信に与える影響を低減することができる。この場合には、操作受付装置1が、複数のアンテナ11と、操作対象が表示される面との間に配置された透明な電波反射フィルム40をさらに有することによって、より高い精度で操作の特定を実現できることになる。また、複数のアンテナ11による好適な反射波の受信を実現するために、電波反射材や、電波吸収材などを、適宜、アンテナ11の周囲などに配置してもよい。
【0050】
図6は、複数のアンテナ11の他の配置の一例を示す図である。
図6で示されるように、複数のアンテナ11は、曲面のアンテナ取付板10に取り付けられてもよい。このように、複数のアンテナ11は、平面に配置されてもよく、曲面に配置されてもよい。なお、複数のアンテナ11が平面に配置される場合には、各アンテナ11は、例えば、平面状のアンテナであってもよい。また、複数のアンテナ11が曲面に配置される場合には、各アンテナ11は、例えば、平面状のアンテナであってもよく、曲面状のアンテナであってもよい。
図6で示される場合には、例えば、アンテナ取付板10の曲面に沿った、複数の曲面状のアンテナ11が配置されてもよい。
【0051】
次に、反射情報取得部12による反射情報の集合の取得について説明する。ここでは、反射情報が反射信号の複素反射係数である場合について説明する。また、N個のアンテナ11を用いてM個の周波数の電波を送信するものとする。k番目のアンテナ11から送信されるm番目の周波数の高周波信号の電圧vi
k,m(t)は、次式のようになる。次式において、kは1からNまでの整数であり、mは1からMまでの整数であり、fmはm番目の周波数であり、tは時間であり、vi
k,mは複素数の係数である。
vi
k,m(t)=vi
k,m×exp(j2πfmt)
【0052】
また、k番目のアンテナ11から送信されたm番目の周波数の電波に関するh番目のアンテナ11で受信された反射波に応じた反射信号の電圧vr
k,h,m(t)は、次式のようになる。ここで、hは1からNまでの整数であり、vr
k,h,mは複素数の係数である。
vr
k,h,m(t)=vr
k,h,m×exp(j2πfmt)
【0053】
上記した2式を用いることによって、k番目のアンテナ11から送信されたm番目の周波数の電波に関するh番目のアンテナ11で受信された反射波の反射信号に関する複素反射係数Γk,h,mは、次式のようになる。したがって、k,h,mの各値について反射情報であるΓk,h,mを取得することによって、反射情報の集合を取得することができる。
Γk,h,m=vr
k,h,m(t)/vi
k,m(t)=vr
k,h,m/vi
k,m
【0054】
図7は、複素反射係数を取得するための反射情報取得部12の構成の一例を示すブロック図である。
図7で示されるように、反射情報取得部12は、一例として、発振器51と、分配器52と、方向性結合器53と、スイッチ54,55と、復調器56と、第1及び第2の低域通過フィルタ57a,57bと、第1及び第2のAD変換器58a,58bと、測定部59とを備えてもよい。
【0055】
発振器51は、高周波信号を発生する。発振器51は、一定の周波数の高周波信号を発生するものである。なお、発振器51は、例えば、単一の周波数の高周波信号を発生するものであってもよく、複数の周波数の高周波信号を発生するものであってもよい。複数の周波数の高周波信号を発生する発振器51は、一例として、分周器を含む位相同期回路を有しており、その分周器の分周比を変えることによって、異なる周波数の高周波信号を発生してもよい。また、発振器51が、他の方法によって異なる周波数の高周波信号を発生してもよいことは言うまでもない。高周波信号の周波数は、アンテナ11からどれぐらい離れた位置の操作体を用いた操作を検出したいのかに応じて決定されてもよい。周波数が大きいほど(すなわち、波長が短いほど)、アンテナ11により近い範囲における操作体による操作を検出可能になる。高周波信号の周波数は特に限定されないが、例えば、100MHz以上であってもよく、1GHz以上であってもよい。また、高周波信号の周波数は、例えば、50GHz以下であってもよく、30GHz以下であってもよく、10GHz以下であってもよい。
【0056】
分配器52は、発振器51からアンテナ11に向けて流れる高周波信号を第1の高周波信号、及び第2の高周波信号に分配する。第1の高周波信号は、方向性結合器53に出力され、第2の高周波信号は復調器56に出力される。方向性結合器53は、分配器52から入力された第1の高周波信号を、スイッチ54を介してアンテナ11に出力し、アンテナ11からの反射信号を、スイッチ55を介して復調器56に出力する。
【0057】
スイッチ54は、方向性結合器53と接続されるアンテナ11、及びスイッチ55と接続されるアンテナ11を切り替えるためのスイッチであり、方向性結合器53をN個のアンテナ11のいずれか1つと接続させ、N個のアンテナ11のいずれか1つをスイッチ55と接続させる。なお、方向性結合器53とスイッチ55とは、同じアンテナ11に接続されることはないものとする。このスイッチ54は、例えば、方向性結合器53とN個のアンテナ11との接続を切り替えるスイッチと、スイッチ55とN個のアンテナ11との接続を切り替えるスイッチとを有していてもよい。スイッチ55は、復調器56に入力される信号を切り替えるスイッチであり、方向性結合器53からの反射信号と、スイッチ54からの反射信号との一方を復調器56に出力する。
【0058】
復調器56は、発振器51の高周波信号、すなわち分配器52からの第2の高周波信号を用いて、アンテナ11からの反射信号をIチャネル信号及びQチャネル信号に復調する。スイッチ55によって方向性結合器53と復調器56とが接続されている場合には、高周波信号を送信したアンテナ11によって受信された反射波の反射信号が復調されることになる。一方、スイッチ55によってスイッチ54と復調器56とが接続されている場合には、高周波信号を送信したアンテナ11とは異なるアンテナ11によって受信された反射波の反射信号が復調されることになる。なお、この復調の処理はすでに公知であり、その詳細な説明を省略する。
【0059】
第1及び第2の低域通過フィルタ57a,57bは、復調器56からのIチャネル信号及びQチャネル信号の低周波成分をそれぞれ抽出する低域通過フィルタである。第1及び第2の低域通過フィルタ57a,57bからの出力信号はそれぞれ、第1及び第2のAD変換器58a,58bによってAD変換されて測定部59に渡される。この場合には、Iチャネル及びQチャネルのベースバンド信号をAD変換することになるため、高周波信号よりも低い周波数の信号をAD変換することにとなり、サンプリング周波数をより低くすることができる。第1及び第2のAD変換器58a,58bの出力信号がそれぞれ、複素反射係数の実部及び虚部となる。なお、測定部59は、発振器51が発振する周波数を制御すると共に、スイッチ54,55も制御するものとする。したがって、測定部59は、k,h,mの各値について反射情報である複素反射係数Γk,h,mを取得することによって、反射情報の集合を取得することができる。具体的には、測定部59は、発振器51に1番目の周波数の高周波信号を発振させると共に、スイッチ54を制御して、方向性結合器53と、1番目のアンテナ11-1とが接続されるようにしてもよい。また、測定部59は、方向性結合器53と復調器56とが接続されるようにスイッチ55を制御してもよい。このようにして、複素反射係数Γ1,1,1が測定される。より詳細には、第1及び第2のAD変換器58a,58bの出力信号がそれぞれ、複素反射係数Γ1,1,1の実部及び虚部となる。そして、測定部59は、反射情報である複素反射係数Γ1,1,1を取得することができる。
【0060】
次に、測定部59は、例えば、スイッチ54を制御して、2番目のアンテナ11-2とスイッチ55とが接続されるようにしてもよい。また、測定部59は、例えば、スイッチ55を制御して、スイッチ54と復調器56とが接続されるようにしてもよい。このようにして、複素反射係数Γ1,2,1が取得される。このように、順次、スイッチ54,55を切り替えることによって、1番目の周波数の高周波信号に関するN×N個の複素反射係数を取得することができる。また、2番目からM番目までの各周波数についても同様にして複素反射係数を取得することによって、N×N×M個の複素反射係数を取得することができる。このN×N×M個の複素反射係数が、反射情報の集合となる。なお、電波を送信したアンテナ11による反射波の受信を行わない場合には、反射情報取得部12は、例えば、方向性結合器53、及びスイッチ55を備えていなくてもよい。そして、スイッチ54は、アンテナ11からの反射信号をスイッチ55に代えて復調器56に出力してもよい。
【0061】
また、反射信号の受信電力である反射情報の集合を取得する場合には、反射情報取得部12は、アンテナ11によって受信された反射波の反射信号を検波器に入力し、その検波器から出力される、反射信号の電力に応じた検波電圧を測定部によって測定することによって反射信号の受信電力を測定してもよい。この場合にも、
図7で示される反射情報取得部12と同様に、方向性結合器53や、スイッチ54,55を用いて、電波を送信するアンテナ11や、反射波を受信するアンテナ11を適宜、切り替えながら反射信号の受信電力を測定してもよく、また、発振器51によって発生される高周波信号の周波数を適宜、切り替えながら反射信号の受信電力を測定してもよい。
【0062】
また、反射係数である反射情報の集合を取得する場合には、反射情報取得部12は、送信電力と反射電力とを用いて、両者の比である反射係数を取得してもよい。この場合には、反射係数は、複素反射係数とは異なり、スカラー値となる。送信電力とは、アンテナ11から送信される高周波信号の電力であり、反射電力とは、アンテナ11で受信された反射波の反射信号の受信電力である。この場合には、例えば、反射情報取得部12は、上記説明と同様に、検波器を用いて受信電力を測定すると共に、発振器51によって発生された高周波信号を分岐するための方向性結合器をさらに備え、その方向性結合器によって分岐された高周波信号の電力、すなわち送信電力を測定してもよい。そして、反射電力を送信電力で除算することによって、反射係数である反射情報が取得されてもよい。この場合には、検波器の前段に、反射信号と、送信される高周波信号とを切り替えるスイッチが存在してもよい。この反射係数の測定も、電波を送信するアンテナ11や、反射波を受信するアンテナ11、発振器51によって発生される高周波信号の周波数を適宜、切り替えながら行われてもよい。なお、発振器51が一定の電力の高周波信号を発生している場合には、送信電力を測定せず、送信電力として設定値を用いてもよいが、アンテナ11の近傍に物体が存在するかどうかに応じて送信電力が変化することもある。したがって、通常は、送信電力も測定することが好適である。
【0063】
また、本実施の形態では、反射情報を取得するためのアンテナ11を順次、切り替えながら反射情報を取得する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。例えば、反射情報取得部12が、反射情報を取得するための構成を複数個有している場合には、その個数に応じたアンテナ11で受信された反射信号について一括して反射情報の取得が行われてもよい。反射情報を取得するための構成の個数は特に限定されないが、例えば、N個や、N-1個などであってもよい。
【0064】
以上のように、本実施の形態による操作受付装置1によれば、例えば、ボタンの選択やジェスチャ操作などのユーザの操作を非接触で特定することができる。また、複数のアンテナ11を後付けすることもでき、例えば、タッチパネルや物理ボタンの押下などの接触による操作の受け付けを、非接触による操作の受け付けに変更することもできる。また、操作対象が表示される面の前面に配置される複数のアンテナ11を透明なアンテナにすることによって、アンテナ11を介して操作対象を見ることができるようになる。また、操作対象が表示されるシート30の背面に複数のアンテナ11を配置することによって、ユーザが入力インターフェースを印刷などによって容易に作成することもできるようになる。また、操作対象が表示される面の前面に電波反射フィルム40を配置することによって、その電波反射フィルム40で反射された電波をも用いて、ユーザの操作をより精度高く特定することができるようになる。また、反射情報を取得する際に、電波を送信するアンテナ11、及び反射波を受信するアンテナ11、すなわち発振器51に接続されるアンテナ11、及び復調器56に接続されるアンテナ11をスイッチ54,55によって切り替えることによって、複数のアンテナ11のそれぞれからの電波の送信に応じて複数のアンテナ11で受信された反射波に応じた反射情報を1つの回路で取得することができるようになる。
【0065】
なお、本実施の形態では、発振器51が複数の周波数の高周波信号を発生する場合について主に説明したが、そうでなくてもよい。発振器51は、1個の周波数の高周波信号のみを発生するものであってもよい。
【0066】
また、上記実施の形態において、各処理または各機能は、単一の装置または単一のシステムによって集中処理されることによって実現されてもよく、または、複数の装置または複数のシステムによって分散処理されることによって実現されてもよい。
【0067】
また、上記実施の形態において、各構成要素は専用のハードウェアにより構成されてもよく、または、ソフトウェアにより実現可能な構成要素については、プログラムを実行することによって実現されてもよい。例えば、ハードディスクや半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェア・プログラムをCPU等のプログラム実行部が読み出して実行することによって、各構成要素が実現され得る。その実行時に、プログラム実行部は、記憶部や記録媒体にアクセスしながらプログラムを実行してもよい。
【0068】
また、以上の実施の形態は、本発明を具体的に実施するための例示であって、本発明の技術的範囲を制限するものではない。本発明の技術的範囲は、実施の形態の説明ではなく、特許請求の範囲によって示されるものであり、特許請求の範囲の文言上の範囲及び均等の意味の範囲内での変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0069】
1 操作受付装置
5 操作体
11 アンテナ
12 反射情報取得部
13 操作特定部
14 出力部
30 シート
40 電波反射フィルム