(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109423
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】空気紡績機、紡績方法、及び紡績プログラム
(51)【国際特許分類】
D01H 5/00 20060101AFI20240806BHJP
D01H 5/64 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
D01H5/00
D01H5/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014209
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】重山 昌澄
(72)【発明者】
【氏名】曽根 悠太
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056BC01
4L056BE05
4L056BG15
(57)【要約】
【課題】フロントローラ対のうちの従動ローラへの負荷を軽減することができる空気紡績機を提供する。
【解決手段】紡績機1は、フロントボトムローラ17aを有し、繊維束Sをドラフトするドラフト動作を実行するドラフト装置6と、ドラフト装置6よりも下流側に配置されて、繊維束Sを紡績することにより糸Yを生成するエアジェット紡績装置7と、エアジェット紡績装置7よりも下流側に配置されて、糸Yを巻き取ってパッケージPを形成する巻取装置13と、糸Yの分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、通常の紡績時の速度である第1速度よりも遅い第2速度でフロントボトムローラ17aを少なくとも一時的に回転させ、糸継要求に応じて、第1速度又は第1速度よりも遅い第3速度でフロントボトムローラ17aの回転を開始するユニットコントローラ10と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントローラを有し、繊維束をドラフトするドラフト動作を実行するドラフト装置と、
前記ドラフト装置よりも下流側に配置されて、前記ドラフト装置によりドラフトされた前記繊維束を紡績することにより糸を生成する紡績装置と、
前記紡績装置よりも下流側に配置されて、前記紡績装置により生成された前記糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
前記糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、通常の紡績時の速度である第1速度よりも遅い第2速度で前記フロントローラを少なくとも一時的に回転させ、糸継要求に応じて、前記第1速度又は前記第1速度よりも遅い第3速度で前記フロントローラの回転を開始する制御部と、を備える、空気紡績機。
【請求項2】
前記制御部は、前記糸継要求に応じて、前記第2速度よりも速い前記第3速度での前記フロントローラの回転を開始する、請求項1に記載の空気紡績機。
【請求項3】
前記糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、前記紡績装置の清掃を行う清掃装置を備え、
前記清掃装置により清掃が行われている間、前記第2速度で前記フロントローラを少なくとも一時的に回転させ、
前記清掃の終了後、前記第1速度又は前記第3速度で前記フロントローラを回転させる、請求項1又は2に記載の空気紡績機。
【請求項4】
前記パッケージの巻取り中、前記紡績装置と前記巻取装置の間で前記糸を貯留する糸貯留ローラをさらに備え、
前記糸の分断が発生したときに前記糸貯留ローラに貯留されていた前記糸を除去する除去動作を行う期間中、前記第2速度で前記フロントローラを少なくとも一時的に回転させる、請求項1~3の何れか一項に記載の空気紡績機。
【請求項5】
前記ドラフト装置と、前記紡績装置と、前記巻取装置と、をそれぞれが備える複数の紡績ユニットと、
前記複数の紡績ユニットに対して移動可能に設けられており、前記複数の紡績ユニットのうち前記糸継要求を発生させた紡績ユニットにおいて前記糸継ぎを実行する糸継台車と、を備え、
前記制御部は、前記糸継要求に応じた前記糸継台車の到来状態に基づいて、前記第1速度又は前記第3速度での前記フロントローラの回転を開始する、請求項1~4の何れか一項に記載の空気紡績機。
【請求項6】
前記制御部は、前記糸継要求を発生させた前記紡績ユニットに前記糸継台車が到着したときに、前記第1速度又は前記第3速度での前記フロントローラの回転を開始する、請求項5に記載の空気紡績機。
【請求項7】
前記糸継要求に相当する操作を行うための操作ボタンを備え、
前記制御部は、前記操作ボタンが操作されたときに、前記第1速度又は前記第3速度で前記フロントローラの回転を開始する、請求項1又は2に記載の空気紡績機。
【請求項8】
前記ドラフト装置、及び、前記ドラフト装置に隣り合う別の紡績ユニットに属する別のドラフト装置に共通して設けられた1つのドラフトクレードルと、
前記ドラフト装置のミドルローラ及び前記別のドラフト装置のミドルローラにそれぞれ設けられたエプロンベルトを前記エプロンベルトの幅方向に往復移動させるトラバース装置と、を備え、
前記制御部は、前記糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、前記ミドルローラを回転させる、請求項1~7の何れか一項に記載の空気紡績機。
【請求項9】
前記制御部は、前記糸の分断の発生後に前記ドラフト動作が停止している間、前記ドラフト装置のバックローラの回転を停止させる、請求項1~8の何れか一項に記載の空気紡績機。
【請求項10】
前記紡績装置からの前記糸を捕捉して案内する捕捉案内部材と、
前記捕捉案内部材により案内された前記糸と、前記巻取装置によって形成された前記パッケージ側の糸と、を継ぐ糸継装置と、を備える、請求項1~9の何れか一項に記載の空気紡績機。
【請求項11】
前記糸の分断が発生した後、前記巻取装置における前記パッケージの回転を停止させ、前記パッケージ側の糸を前記紡績装置に通して、当該糸の糸端が前記紡績装置の内部に位置する状態にしてからドラフト動作を再開することにより糸継ぎを実行する場合、
前記制御部は、前記糸継要求が発生すると、前記紡績装置への前記パッケージ側の糸の逆送を開始する、請求項1~10の何れか一項に記載の空気紡績機。
【請求項12】
フロントローラを有し、繊維束をドラフトするドラフト装置と、前記ドラフト装置よりも下流側に配置されて、前記ドラフト装置によりドラフトされた前記繊維束を紡績することにより糸を生成する紡績装置と、前記紡績装置よりも下流側に配置されて前記糸を巻き取る巻取装置と、を備える空気紡績機における紡績方法であって、
前記糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、通常の紡績時の速度である第1速度よりも遅い第2速度で前記フロントローラを少なくとも一時的に回転させ、糸継要求に応じて、前記第1速度又は前記第1速度よりも遅い第3速度で前記フロントローラの回転を開始する、紡績方法。
【請求項13】
フロントローラを有し、繊維束をドラフトするドラフト装置と、前記ドラフト装置よりも下流側に配置されて、前記ドラフト装置によりドラフトされた前記繊維束を紡績することにより糸を生成する紡績装置と、前記紡績装置よりも下流側に配置されて前記糸を巻き取る巻取装置と、を備える空気紡績機において、
前記糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、通常の紡績時の速度である第1速度よりも遅い第2速度で前記フロントローラを少なくとも一時的に回転させるステップと、糸継要求に応じて、前記第1速度又は前記第1速度よりも遅い第3速度で前記フロントローラの回転を開始するステップと、をコンピュータに実行させる、紡績プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気紡績機、紡績方法、及び紡績プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
空気紡績機において、ドラフト装置は、繊維束の走行方向に向かって順に配置されたバックローラ、サードローラ、ミドルローラ、及びフロントローラを備えている。特許文献1に記載された紡績機では、ドラフト装置が、フロントローラを駆動する第1駆動部と、バックローラ、サードローラ、及びミドルローラを駆動する第2駆動部とを備える。空気紡績装置に繊維屑が詰まっている場合に、第1駆動部はフロントローラを紡績時の方向とは逆方向に回転させる。
【0003】
特許文献2に記載された紡績機では、複数の紡績ユニットにわたって設けられた共通の第1ラインシャフトによって、各紡績ユニットのフロントボトムローラが一斉に回転駆動される。複数の紡績ユニットにわたって設けられた共通の第2ラインシャフトによって、各紡績ユニットのミドルボトムローラが一斉に回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-017253号公報
【特許文献2】特開2018-178294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
空気紡績機においては、糸監視装置の監視結果に基づく糸の切断、又は糸切れ等により、糸の分断が発生する場合がある。糸の分断が発生すると、糸継要求に応じて糸継ぎが実行される。ここで、ドラフト装置のフロントローラ対は、モータ等の駆動部によって回転駆動されるボトムローラ(駆動ローラ)と、ボトムローラに圧接するトップローラ(従動ローラ)とを有する。ボトムローラは例えば金属製であり、トップローラは例えばゴム製(樹脂製)である。フロントローラは紡績時には高速で回転しており、トップローラには負荷がかかっている。また糸の分断が発生してドラフト動作が停止している間、フロントローラを停止させてしまうと、トップローラが変形するおそれがある。従来の紡績機では、ドラフト動作が停止している間におけるフロントローラの回転制御に関して特に検討はなされていない。ラインシャフトによる一斉駆動が適用された紡績機では、ある紡績ユニットにおけるフロントローラの回転のみを個別に制御することはできない。
【0006】
本発明は、フロントローラ対のうちの従動ローラへの負荷を軽減することができる空気紡績機、紡績方法、及び紡績プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る空気紡績機は、フロントローラを有し、繊維束をドラフトするドラフト動作を実行するドラフト装置と、ドラフト装置よりも下流側に配置されて、ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を紡績することにより糸を生成する紡績装置と、紡績装置よりも下流側に配置されて、紡績装置により生成された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、通常の紡績時の速度である第1速度よりも遅い第2速度でフロントローラを少なくとも一時的に回転させ、糸継要求に応じて、第1速度又は第1速度よりも遅い第3速度でフロントローラの回転を開始する制御部と、を備える。
【0008】
この空気紡績機によれば、糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、フロントローラが、第1速度よりも遅い第2速度で少なくとも一時的に回転させられる。これにより、上記の期間全体に渡ってフロントローラが第1速度のまま回転させられる場合、又は、フロントローラが停止を継続する場合と比べて、従動ローラにかかる負荷を軽減することができる。また糸継要求に応じて、第1速度又は第3速度でフロントローラの回転を開始するので、ドラフト動作を速やかに再開できる。
【0009】
制御部は、糸継要求に応じて、第2速度よりも速い第3速度でのフロントローラの回転を開始してもよい。この場合、第1速度よりは低速の回転を維持して従動ローラにかかる負荷を軽減しつつ、第2速度よりも高速で回転を開始することで、ドラフト動作を速やかに再開できる。
【0010】
空気紡績機は、糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、紡績装置の清掃を行う清掃装置を備え、清掃装置により清掃が行われている間、第2速度でフロントローラを少なくとも一時的に回転させ、清掃の終了後、第1速度又は第3速度でフロントローラを回転させてもよい。この場合、清掃が行われる期間中において、従動ローラにかかる負荷を軽減することができる。
【0011】
空気紡績機は、パッケージの巻取り中、紡績装置と巻取装置の間で糸を貯留する糸貯留ローラをさらに備え、糸の分断が発生したときに糸貯留ローラに貯留されていた糸を除去する除去動作を行う期間中、第2速度でフロントローラを少なくとも一時的に回転させてもよい。この場合、糸の除去動作が行われる期間中において、従動ローラにかかる負荷を軽減することができる。
【0012】
空気紡績機は、ドラフト装置と、紡績装置と、巻取装置と、をそれぞれが備える複数の紡績ユニットと、複数の紡績ユニットに対して移動可能に設けられており、複数の紡績ユニットのうち糸継要求を発生させた紡績ユニットにおいて糸継ぎを実行する糸継台車と、を備え、制御部は、糸継要求に応じた糸継台車の到来状態に基づいて、第1速度又は第3速度でのフロントローラの回転を開始してもよい。この場合、糸継ぎ前までに、ドラフト動作に向けた準備を確実に完了できる。
【0013】
制御部は、糸継要求を発生させた紡績ユニットに糸継台車が到着したときに、第1速度又は第3速度でのフロントローラの回転を開始してもよい。この場合、糸継台車の到着を契機として第1速度又は第3速度でのフロントローラの回転が開始されるため、単純な制御により、確実かつスムーズにドラフト動作に移行できる。
【0014】
空気紡績機は、糸継要求に相当する操作を行うための操作ボタンを備え、制御部は、操作ボタンが操作されたときに、第1速度又は第3速度でフロントローラの回転を開始してもよい。この場合、糸継ぎ前までに、ドラフト動作に向けた準備を確実に完了できる。
【0015】
空気紡績機は、ドラフト装置、及び、ドラフト装置に隣り合う別の紡績ユニットに属する別のドラフト装置に共通して設けられた1つのドラフトクレードルと、ドラフト装置のミドルローラ及び別のドラフト装置のミドルローラにそれぞれ設けられたエプロンベルトをエプロンベルトの幅方向に往復移動させるトラバース装置と、を備え、制御部は、糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、ミドルローラを回転させてもよい。この場合、ミドルローラの回転が維持されているので、トラバース装置によってエプロンベルトを往復移動させることができ、エプロンベルトの摩耗を軽減できる。
【0016】
制御部は、糸の分断の発生後にドラフト動作が停止している間、ドラフト装置のバックローラの回転を停止させてもよい。この場合、ドラフト動作の停止時に、繊維束が新たに供給されることを回避できる。
【0017】
空気紡績機は、紡績装置からの糸を捕捉して案内する捕捉案内部材と、捕捉案内部材により案内された糸と、巻取装置によって形成されたパッケージ側の糸と、を継ぐ糸継装置と、を備えてもよい。この構成によれば、スプライサ式の糸継ぎが行われる場合に、従動ローラにかかる負荷を軽減することができる。
【0018】
空気紡績機において、糸の分断が発生した後、巻取装置におけるパッケージの回転を停止させ、パッケージ側の糸を紡績装置に通して、当該糸の糸端が紡績装置の内部に位置する状態にしてからドラフト動作を再開することにより糸継ぎを実行する場合、制御部は、糸継要求が発生すると、紡績装置へのパッケージ側の糸の逆送を開始してもよい。この構成によれば、ピーシング式の糸継ぎが行われる場合に、従動ローラにかかる負荷を軽減することができる。
【0019】
本発明の別の態様に係る紡績方法は、フロントローラを有し、繊維束をドラフトするドラフト装置と、ドラフト装置よりも下流側に配置されて、ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を紡績することにより糸を生成する紡績装置と、紡績装置よりも下流側に配置されて糸を巻き取る巻取装置と、を備える空気紡績機における紡績方法であって、糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、通常の紡績時の速度である第1速度よりも遅い第2速度でフロントローラを少なくとも一時的に回転させ、糸継要求に応じて、第1速度又は第1速度よりも遅い第3速度でフロントローラの回転を開始する。
【0020】
本発明の更に別の態様に係る紡績プログラムは、フロントローラを有し、繊維束をドラフトするドラフト装置と、ドラフト装置よりも下流側に配置されて、ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を紡績することにより糸を生成する紡績装置と、紡績装置よりも下流側に配置されて糸を巻き取る巻取装置と、を備える空気紡績機において、糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、通常の紡績時の速度である第1速度よりも遅い第2速度でフロントローラを少なくとも一時的に回転させるステップと、糸継要求に応じて、第1速度又は第1速度よりも遅い第3速度でフロントローラの回転を開始するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0021】
この紡績方法及び紡績プログラムによれば、糸の分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、フロントローラが、第1速度よりも遅い第2速度で少なくとも一時的に回転させられる。これにより、上記の期間全体に渡ってフロントローラが第1速度のまま回転させられる場合、又は、フロントローラが停止を継続する場合と比べて、従動ローラにかかる負荷を軽減することができる。また糸継要求に応じて、第1速度又は第3速度でフロントローラの回転を開始するので、ドラフト動作を速やかに再開できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、従動ローラにかかる負荷を軽減することができる。また、ドラフト動作を速やかに再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気紡績機の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す空気紡績機の紡績ユニットの側面図である。
【
図3】
図3は、
図2中のドラフト装置の各駆動部を示す図である。
【
図4】
図4は、隣り合う2つのドラフト装置の各駆動部と、制御部の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、制御部における制御例を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係る紡績プログラムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0025】
図1に示されるように、紡績機(空気紡績機)1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由により糸Yが切れたりした場合、糸継台車3は、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2においてパッケージPが満巻きになった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。第1エンドフレーム4には、複数の紡績ユニット2において発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。
【0026】
第2エンドフレーム5には、紡績機1の各部に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して、空気を各部へと供給する空気供給部等が収容されている。第2エンドフレーム5には、機台制御装置100と、タッチパネル画面102と、入力キー104と、が設けられている。機台制御装置100は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。タッチパネル画面102は、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示することができる。オペレータがタッチパネル画面102に表示されるボタン又は入力キー104等を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、エアジェット紡績装置(紡績装置)7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラ(制御部)10は、所定数(一又は複数)の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0028】
ドラフト装置6は、繊維束(スライバ)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、繊維束Sの走行方向において上流側から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有している。
【0029】
バックローラ対14は、駆動側のバックボトムローラ14a及び従動側のバックトップローラ14bを含む。バックボトムローラ14a及びバックトップローラ14bは、繊維束Sを走行させる走行経路を挟んで互いに対向する。サードローラ対15は、駆動側のサードボトムローラ15a及び従動側のサードトップローラ15bを含む。サードボトムローラ15a及びサードトップローラ15bは、繊維束Sを走行させる走行経路を挟んで互いに対向する。ミドルローラ対16は、駆動側のミドルボトムローラ16a及び従動側のミドルトップローラ16bを含む。ミドルボトムローラ(ミドルローラ)16a及びミドルトップローラ16bは、繊維束Sを走行させる走行経路を挟んで互いに対向する。フロントローラ対17は、駆動側のフロントボトムローラ(フロントローラ)17a及び従動側のフロントトップローラ17bを含む。フロントボトムローラ17a及びフロントトップローラ17bは、繊維束Sを走行させる走行経路を挟んで互いに対向する。
【0030】
本明細書において、ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aは、それぞれ、駆動ローラとも呼ばれ、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bは、従動ローラとも呼ばれる。
【0031】
バックボトムローラ14a、サードボトムローラ15a、ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aは、紡績ユニット2に設けられた駆動モータ(詳しくは後述)により、下流側のローラほど速くなるように互いに異なる回転速度で回転させられる。ミドルボトムローラ16aに対しては、エプロンベルト18aが設けられている。ミドルトップローラ16bに対しては、エプロンベルト18bが設けられている。
【0032】
バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bは、ドラフトクレードル40に回転可能に支持されている。バックトップローラ14b、サードトップローラ15b、ミドルトップローラ16b及びフロントトップローラ17bのそれぞれは、バックボトムローラ14a、サードボトムローラ15a、ミドルボトムローラ16a及びフロントボトムローラ17aのそれぞれに所定圧力で接触させられて従動回転させられる。エプロンベルト18bは、エプロンベルト18aに所定圧力で接触させられて従動回転させられる。
【0033】
各ボトムローラは、例えば、鉄等の金属からなるローラである。各トップローラは、例えば、ゴム等の樹脂からなるローラである。従動回転する各トップローラ及びエンプロンベルトの回転速度は、駆動モータによって駆動される各ボトムローラ及びエンプロンベルトの回転速度に等しい、あるいは略等しい。
【0034】
エアジェット紡績装置7は、ドラフト装置6によりドラフトされた繊維束Sに旋回空気流によって撚りを与えることにより糸Yを生成する。エアジェット紡績装置7は、一定の速度で連続的に糸Yを紡出する。エアジェット紡績装置7は、詳細な説明及び図示は省略するが、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Sを、エアジェット紡績装置7の内部に形成される紡績室に案内する。旋回空気流発生ノズルは、繊維束Sが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Sを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、紡績された糸Yを紡績室からエアジェット紡績装置7の外部に案内する。
【0035】
糸監視装置8は、エアジェット紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置8は、糸切れ等も検出する。糸監視装置8は、糸切れを検出した場合、糸切れ検出信号をユニットコントローラ10に送信する。
【0036】
テンションセンサ9は、エアジェット紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、エアジェット紡績装置7への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッタにより糸Yが切断されるようにしてもよい。このとき、ユニットコントローラ10は、ドラフト装置6によるドラフト動作と、巻取装置13によるパッケージPの巻取動作も停止する。
【0037】
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0038】
糸貯留装置11は、エアジェット紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yを貯留する。糸貯留装置11は、外周面に糸Yが巻かれることにより糸Yを貯留する糸貯留ローラを有している。糸貯留装置11は、エアジェット紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等にエアジェット紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流側の糸Yのテンションの変動がエアジェット紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。
【0039】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。巻取ドラム22は、ドラム駆動部(図示省略)によって回転駆動される。巻取ドラム22は、クレードルアーム21に取り付けられたボビンBの表面又はパッケージPの表面に接触してボビンB又はパッケージPを回転させる。
【0040】
各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、各紡績ユニット2にそれぞれ設けられたトラバース駆動部(図示省略)によって巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動する。これにより、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。トラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2に対して共通で設けられたロッドに取り付けられていてもよい。この場合、トラバース駆動部は第2エンドフレーム5内に設けられ、トラバースガイド23は複数の紡績ユニットにおいて一斉に往復駆動される。
【0041】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由により糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を実行する。糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ(捕捉案内部材)27と、サクションマウス28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸27aによって回動可能に支持されており、エアジェット紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、支軸28aによって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。糸継装置26は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。
【0042】
糸継台車3が糸継動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。このときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するようにクレードルアーム21がエアーシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ(図示省略)によってパッケージPが逆回転させられる。各紡績ユニット2が巻取ドラム22を駆動する駆動モータ(図示省略)を有する場合、当該駆動モータによりパッケージPを逆回転させてもよい。この場合、糸継動作のためにパッケージPを巻取ドラム22から離間させる必要はない。
【0043】
上記したように、本実施形態の紡績ユニット2は、フロントボトムローラ17aを有するドラフト装置6と、ドラフト装置6よりも下流側に配置されて糸Yを生成するエアジェット紡績装置7と、エアジェット紡績装置7よりも下流側に配置されて糸Yを巻き取る巻取装置13と、を備える。以下、ドラフト装置6におけるフロントローラ対17及びミドルローラ対16の回転制御について、より詳細に説明する。
【0044】
ドラフト装置6において、複数のローラ対14,15,16及び17は、ケンス(図示省略)から供給された繊維束Sをドラフトしつつ上流側から下流側に走行させ、繊維束Sをエアジェット紡績装置7に供給する。以下、繊維束Sの走行経路に沿った方向を「ドラフト方向」という。ドラフト方向における上流側を単に「上流側」といい、ドラフト方向における下流側を単に「下流側」という。
【0045】
各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aは、ベース45に回転可能に支持されている。1つのベース45によって全てのボトムローラ14a,15a,16a及び17aが支持されてもよいが、ベース45が複数の部分から構成されていて、各部分が各ボトムローラを支持するように構成されていてもよい。各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aは、下流側ほど速くなるように互いに異なる回転速度で駆動回転させられる。
【0046】
図1及び
図3に示されるように、ドラフトクレードル40は、隣り合う一対の紡績ユニット2に共通して設けられている。ドラフトクレードル40は、一対のドラフト装置6の各トップローラ14b,15b,16b及び17bを回転可能に支持する。ドラフトクレードル40の上流側端部には、回動軸43が設けられている。回動軸43は、各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aに各トップローラ14b,15b,16b及び17bが接触する接触位置と、各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aから各トップローラ14b,15b,16b及び17bが離間する離間位置との間で、ドラフトクレードル40を回動可能に支持している。ドラフトクレードル40の下流側端部には、オペレータがドラフトクレードル40の回動操作を行う際に用いられるハンドル44が設けられている。ドラフトクレードル40が接触位置に回動させられると、ハンドル44の下端部に設けられたフック(図示省略)が、ベース45の下流側端部に設けられた固定ローラ(図示省略)に係合し、各トップローラ14b,15b,16b及び17bが各ボトムローラ14a,15a,16a及び17aに所定圧力で接触する状態が保持される。
【0047】
図3に示されるように、各バックボトムローラ14aは、各第4モータ54によって回転駆動力を与えられ、所定の回転数(単位時間当たりの回転数)で回転する。各サードボトムローラ15aは、各第3モータ53によって回転駆動力を与えられ、所定の回転数(単位時間当たりの回転数)で回転する。各ミドルボトムローラ16aは、各第2モータ52によって回転駆動力を与えられ、所定の回転数(単位時間当たりの回転数)で回転する。各フロントボトムローラ17aは、各第1モータ51によって回転駆動力を与えられ、所定の回転数(単位時間当たりの回転数)で回転する。本明細書において、単位時間当たりの回転数は、「回転速度」又は単に「速度」と言い表される。
【0048】
第1モータ51、第2モータ52、第3モータ53、及び第4モータ54は、各ドラフト装置6の各ボトムローラに対して設けられた専属の駆動モータであり、それぞれ、ユニットコントローラ10によって制御される。第3モータ53と第4モータ54のうちの何れかを省略し、1つのモータによりサードボトムローラ15aとバックボトムローラ14aの両方を駆動してもよい。ユニットコントローラ10は、CPU等のプロセッサ、ROM及びRAM等のメモリ、ストレージ及び通信デバイス等を有する公知のコンピュータとして構成され、ROM等に予め記憶されたプログラムを実行する。
【0049】
各ドラフト装置6では、ミドルボトムローラ16aの回転速度に対するフロントボトムローラ17aの回転速度の比である第1比率、サードボトムローラ15aの回転速度に対するミドルボトムローラ16aの回転速度の比である第2比率、及び、バックボトムローラ14aの回転速度に対するサードボトムローラ15aの回転速度の比である第3比率が、適宜に設定されている。ユニットコントローラ10は、各ドラフト装置6における各ボトムローラの回転速度、第1比率、第2比率、及び第3比率を記憶している。
【0050】
図3に示されるように、一対の紡績ユニット2は、一対のドラフト装置6の各ミドルボトムローラ16aに設けられた各エプロンベルト18aを、エプロンベルト18aの幅方向に往復移動させるトラバース装置60を備える。エプロンベルト18aの幅方向は、ミドルボトムローラ16aの回転軸に平行な方向であり、
図3の紙面に垂直な方向である。トラバース装置60は、図示は省略されるが、例えば一対のエプロンベルト18aを案内する一対の案内部と、一対の案内部を支持する支持部材と、支持部材の中央部に設けられて支持部材を上記幅方向に往復移動させる駆動部であるトラバースモータ61(
図4参照)とを有する。トラバース装置60としては公知の構成が採用されてよいが、一例として、特開2020-66820号公報に記載された装置が採用されてもよい。
【0051】
ユニットコントローラ10は、各紡績ユニット2において、糸Yの分断が発生した際のドラフト装置6の各ボトムローラの回転速度を制御する。糸Yの分断とは、糸Yの切断及び糸切れの総称である。ユニットコントローラ10は、糸Yの分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、通常の紡績時の速度である第1速度よりも遅い第2速度でフロントボトムローラ17aを少なくとも一時的に回転させる。「一時的に」とは、上記の期間において、フロントボトムローラ17aが少なくとも1回は回転させられればよく、フロントボトムローラ17aが停止することがあってもよい。上記の期間において、フロントボトムローラ17aは、第2速度で回転し、その後、停止し、改めて第2速度で回転させられてもよい。さらに、ユニットコントローラ10は、糸継要求に応じて、第1速度よりも遅く第2速度よりも速い第3速度で、フロントボトムローラ17aの回転を開始する。第2速度は、フロントボトムローラ17aを保護するための保護速度である。第3速度は、ドラフト動作を開始するためのフロントボトムローラ17aの開始速度である。
【0052】
言い換えれば、ユニットコントローラ10は、フロントボトムローラ17aの第1速度、第2速度、及び第3速度を記憶している。ユニットコントローラ10は、通常の紡績時において、フロントボトムローラ17aを第1速度で回転させる第1速度制御を実行する。ユニットコントローラ10は、糸Yの分断が発生すると、フロントボトムローラ17aを第2速度で回転させる第2速度制御を実行する。この場合、フロントボトムローラ17aは、回転を継続しながら、第1速度から第2速度へ移行してもよい。あるいは、フロントボトムローラ17aは、糸Yの分断に伴い、一旦停止し、その後、第2速度での回転を開始してもよい。
【0053】
ユニットコントローラ10は、糸継要求に応じて、フロントボトムローラ17aを第3速度で回転させる第3速度制御を実行する。なお、ユニットコントローラ10は、第2速度制御に続き糸継要求に応じて第3速度制御を実行するとき、フロントボトムローラ17aを第1速度で回転させてもよい。この場合には、フロントボトムローラ17aの開始速度が、通常の紡績時の速度に等しくなる。
【0054】
またユニットコントローラ10は、糸Yの分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、ミドルボトムローラ16aを停止させることなく回転させる。このとき、ユニットコントローラ10は、通常の紡績時の速度よりも遅い速度でミドルボトムローラ16aを回転させてもよい。あるいは、ミドルボトムローラ16aは、通常の紡績時の速度で回転させられてもよい。
【0055】
ユニットコントローラ10は、信号受信部10aと、糸継要求部10bと、ドラフト制御部10cと、を備える。信号受信部10aは、例えば、糸監視装置8から糸欠陥検出信号又は糸切れ検出信号を受信し、テンションセンサ9からテンション測定信号を受信する。糸継要求部10bは、信号受信部10aが受信した信号に応じて糸継要求信号を生成し、機台制御装置100を介して糸継台車3に、又は糸継台車3に対して直接、糸継要求信号を送信する。ドラフト制御部10cは、ドラフト装置6のドラフト動作を制御する。
【0056】
続いて、
図5を参照して、ユニットコントローラ10における制御例(紡績方法の一例)について説明する。
図5では、複数の紡績ユニット2のうちの1つの紡績ユニット2において、糸Yの切断又は糸切れ(糸Yの分断)が発生した場合の制御例が示されている。
【0057】
まず、紡績ユニット2が通常の紡績を行っている間、ユニットコントローラ10のドラフト制御部10cは、フロントボトムローラ17aを第1速度で回転させ(第1速度制御)、且つ、他の各ボトムローラも、通常の紡績時の速度で回転させる(通常速度制御)(ステップS01)。通常の紡績では、上記した第1比率、第2比率、及び第3比率が成立するよう、各ドラフトローラの速度が制御されている。その紡績ユニット2において糸切れが発生すると、ユニットコントローラ10の信号受信部10aは、糸監視装置8又はテンションセンサ9から、糸切れ検出信号を受信する。糸切れ検出信号を信号受信部10aが受信すると、ドラフト制御部10cは、当該紡績ユニット2におけるドラフト動作を停止する(ステップS02)。ドラフト動作の停止は、バックボトムローラ14aとサードボトムローラ15aの回転を停止することにより、実現されてもよい。ドラフト装置6がバックボトムローラ14aよりも上流側にボトムローラを更に備える場合は、当該ボトムローラの回転も停止させる。言い換えると、ドラフト動作が停止したときに、フロントボトムローラ17aとミドルボトムローラ16aは回転を継続していてもよい。当該紡績ユニット2では、ドラフト動作の停止に加えて、エアジェット紡績装置7による紡績動作と、巻取装置13による巻取動作も停止される。
【0058】
ドラフト動作が停止すると、糸監視装置8は、糸Yの不在を検出したことに基づく糸不在検出信号(糸切れ信号を含む)を送信する。ユニットコントローラ10の信号受信部10aは、糸監視装置8から糸不在検出信号を受信する。ユニットコントローラ10のドラフト制御部10cは、糸不在検出信号の受信に応じて、フロントボトムローラ17aを第2速度で回転させる(第2速度制御)(ステップS03)。第2速度は低速であるため、フロントローラ対17の暖機運転と、フロントボトムローラ17aの摩耗低減を図ることができる。ドラフト制御部10cは、他の各ボトムローラについても、ドラフト動作停止中における速度制御を行う(停止中速度制御)(ステップS04)。他の各ボトムローラについて実施される「停止中速度制御」とは、本実施形態では、バックボトムローラ14aとサードボトムローラ15aの回転を停止させた状態で、ミドルボトムローラ16aを通常の紡績時よりは低速で回転させる制御である。このステップS03及びS04は同時に実行されてもよいが、望ましくは、ドラフト制御部10cは、まずバックボトムローラ14aの回転を停止させた後に、フロントボトムローラ17a及びミドルボトムローラ16aを減速させる。ドラフト制御部10cは、ミドルボトムローラ16aを停止させることなく回転を継続させ、トラバースモータ61の駆動も継続する。ドラフト制御部10cは、通常の紡績時の速度(ステップS01の通常速度制御)よりも遅い速度でミドルボトムローラ16aを回転させてもよい。
【0059】
フロントローラ対17が第2速度で回転している間に、例えば、エアジェット紡績装置7の清掃を行ってもよい。紡績機1(紡績ユニット2)は、糸Yの分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間においてエアジェット紡績装置7の清掃を行う清掃装置(図示省略)を備える。具体的には、ユニットコントローラ10は、エアジェット紡績装置7を開いて、あるいはエアジェット紡績装置7を開閉しながら、旋回空気流発生ノズルから空気を噴射する。清掃装置は、エアジェット紡績装置7の開閉に関わる機構、及び、旋回空気流発生ノズルからの空気の噴射に関わる機構を有する。ユニットコントローラ10のドラフト制御部10cは、清掃装置により清掃が行われている間、第2速度でフロントローラ対17を回転させてもよい。ドラフト制御部10cは、清掃の終了後、第1速度又は第3速度でフロントローラ対17を回転させてもよい。
【0060】
糸貯留装置11の糸貯留ローラは、パッケージPの巻取り中、エアジェット紡績装置7と巻取装置13の間で糸Yを貯留する。糸Yの分断が発生したときに、糸貯留ローラに貯留されていた糸Yがあると、当該糸Yを除去する除去動作を行う。除去動作を行う期間中、第2速度でフロントローラ対17を少なくとも一時的に回転させてもよい。清掃と除去動作は同時に行われてもよいし、何れかが先に行われてもよい。
【0061】
続いて、清掃と除去動作の完了後又は完了直前に、ユニットコントローラ10の糸継要求部10bは、糸継要求信号を生成し、機台制御装置100を介して糸継台車3に、又は糸継台車3に対して直接に、糸継要求信号を送信する(ステップS05)。糸継要求信号には、糸継ぎを必要とする紡績ユニット2(要求ユニット)を特定するための情報が含まれる。本実施形態における糸継要求信号は、特許請求の範囲に記載された糸継要求に相当する。糸継台車3は、糸継要求信号を受信すると、その紡績ユニット2に向けて移動を開始する。
【0062】
続いて、糸継要求に応じて糸継台車3が到来すると(ステップS06)、ユニットコントローラ10のドラフト制御部10cは、糸継台車3の到来状態に基づいて、第3速度(開始速度)でフロントボトムローラ17aの回転を開始する(第3速度制御)(ステップS07)。糸継台車3の到来状態とは、糸継台車3が糸継ぎを必要とする紡績ユニット2(要求ユニット)に対する作業位置に到着したこと、糸継ぎを必要とする紡績ユニット2に近接したこと、又は、糸継台車3が移動を開始してから所定時間が経過したことを含んでもよい。所定時間は、糸継台車3の移動速度等を加味した、予測に基づく時間であってもよいし、糸継要求に応じた糸継台車3の到着時間を加味した、実績に基づく時間であってもよい。ドラフト制御部10cは、例えば、糸継要求に応じて糸継台車3が目標位置(要求ユニット、又は要求ユニットの所定数(例えば2又は3)手前の紡績ユニット2)に到来したときに(ステップS06)、第3速度でフロントボトムローラ17aの回転を開始してもよい(ステップS07)。
【0063】
ステップS06では、例えば、糸継台車3が、対向する紡績ユニット2に信号を送信し、その紡績ユニット2からユニットコントローラ10又は機台制御装置100に信号が送信されることにより、糸継台車3の位置情報が認識されてもよい。糸継台車3が、ドックセンサ(図示省略)の検知数をカウントすることにより、現在の自己位置を認識してもよい。又は、糸継台車3が、自己の移動範囲の端部を認識するための範囲端検出センサを利用して、現在の自己位置を認識してもよい。
【0064】
ステップS04においてミドルボトムローラ16aを減速させていた場合には、ステップS07においてドラフト制御部10cは、通常の紡績時の速度でのミドルボトムローラ16aの回転を開始してもよい。
【0065】
ステップS07において、糸継ぎ前までにフロントボトムローラ17a及びミドルボトムローラ16aの速度を増大させて、通常の紡績時の速度又はその速度に近づけて(立ち上げて)おくことにより、ドラフト装置6は、スムーズにドラフト動作に移行できる。なお、ドラフト制御部10cは、ステップS07において第3速度制御を実行するとき、フロントボトムローラ17aを第1速度で回転させてもよい。
【0066】
糸継台車3が紡績ユニット2に対する作業位置に到着すると、バックローラ対14とサードローラ対15が回転を開始し、エアジェット紡績装置7に繊維束Sが供給され始める。このとき、エアジェット紡績装置7は糸出し紡績を実施し、エアジェット紡績装置7から糸Yが新たに紡出される。当該糸Yはサクションパイプ27により捕捉されて、糸継装置26へ案内される。エアジェット紡績装置7からの糸Yは糸貯留装置11に再び貯留され始め、エアジェット紡績装置7は糸出し紡績から通常紡績に移行する。パッケージPからの糸もサクションマウス28により糸継装置26へ案内される。
【0067】
そして、糸継台車3によって糸継ぎが実行される。このとき紡績ユニット2においては、通常の紡績が行われている(ステップS08)。通常の紡績では、ドラフト制御部10cは、フロントボトムローラ17aを第1速度で回転させ、且つ、他の各ボトムローラも、通常の紡績時の速度で回転させる。また、巻取装置13によるパッケージPの巻取動作も再開される。
【0068】
上記ステップS03,S04,及びS05の順番は、必ずしも上記の順に確定している訳ではない。ステップS03,S04,及びS05のうちの何れが先に実行されてもよく、何れか2つ又は全てが同時に実行されてもよい。
【0069】
次に、紡績機1が行う紡績方法を実行する紡績プログラム90について説明する。
図6に示されるように、ユニットコントローラ10の記憶部80内には、紡績プログラム90が記憶されている。記憶部80は、紡績プログラム90を格納した非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。ユニットコントローラ10は、紡績プログラム90をプロセッサ上に読み込ませて実行することによって上述した紡績方法を実現する。紡績プログラム90は、信号受信モジュール90aと、糸継要求モジュール90bと、ドラフト制御モジュール90cとを含む。ドラフト制御モジュール90cは、第1速度制御モジュール91と、第2速度制御モジュール92と、第3速度制御モジュール93と、通常速度制御モジュール94と、停止中速度制御モジュール95とを含む。
【0070】
信号受信モジュール90a、糸継要求モジュール90b、及びドラフト制御モジュール90cを実行させることにより実現される処理は、ユニットコントローラ10の信号受信部10a、糸継要求部10b、及びドラフト制御部10cによって実行される処理とそれぞれ同様である。第1速度制御モジュール91、第2速度制御モジュール92、第3速度制御モジュール93、通常速度制御モジュール94、及び停止中速度制御モジュール95を実行させることにより実現される処理は、上述した第1速度制御、第2速度制御、第3速度制御、通常速度制御、及び停止中速度制御における処理とそれぞれ同様である。
【0071】
紡績プログラム90は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。或いは、紡績プログラム90は、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0072】
本実施形態の紡績機1、紡績方法及び紡績プログラム90によれば、糸Yの分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、フロントボトムローラ17aが、第1速度よりも遅い第2速度で少なくとも一時的に回転させられる。これにより、上記の期間全体に渡ってフロントボトムローラ17aが第1速度のまま回転させられる場合、又は、フロントボトムローラ17aが停止を継続する場合と比べて、従動ローラであるフロントトップローラ17bにかかる負荷を軽減することができる。また糸継要求に応じて、第1速度又は第3速度でフロントボトムローラ17aの回転を開始するので、ドラフト動作を速やかに再開できる。
【0073】
ユニットコントローラ10は、清掃装置により清掃が行われている間、第2速度でフロントボトムローラ17aを少なくとも一時的に回転させ、清掃の終了後、第1速度又は第3速度でフロントボトムローラ17aを回転させる。これにより、清掃が行われる期間において、フロントトップローラ17bにかかる負荷を軽減することができる。
【0074】
紡績機1は、パッケージPの巻取り中、エアジェット紡績装置7と巻取装置13の間で糸Yを貯留する糸貯留ローラをさらに備え、糸Yの分断が発生したときに糸貯留ローラに貯留されていた糸Yを除去する除去動作を行う期間中、第2速度でフロントボトムローラ17aを少なくとも一時的に回転させてもよい。この場合、糸Yの除去動作が行われる期間中において、フロントトップローラ17bにかかる負荷を軽減することができる。
【0075】
ユニットコントローラ10は、糸継要求に応じて、第2速度よりも速い第3速度でのフロントボトムローラ17aの回転を開始する。これにより、第1速度よりは低速の回転を維持してフロントトップローラ17bにかかる負荷を軽減しつつ、第2速度よりも高速で回転を開始することで、ドラフト動作を速やかに再開できる。
【0076】
ユニットコントローラ10は、糸継要求に応じた糸継台車3の到来状態(到着状態又は近接位置)に基づいて、第1速度又は第3速度でのフロントボトムローラ17aの回転を開始する。これにより、糸継ぎ前までに、ドラフト動作に向けた準備を確実に完了できる。
【0077】
ユニットコントローラ10は、糸継要求を発生させた紡績ユニット2に糸継台車3が到着したときに、第1速度又は第3速度でのフロントボトムローラ17aの回転を開始する。これにより、糸継台車3の到着を契機として第1速度又は第3速度でのフロントボトムローラ17aの回転が開始されるため、単純な制御により、確実かつスムーズにドラフト動作に移行できる。
【0078】
紡績機1が、隣り合う2つの紡績ユニット2に対して1つ設けられたドラフトクレードル40を備える場合に、一方の紡績ユニット2においてドラフト動作が停止中も、2つの紡績ユニット2のそれぞれのミドルボトムローラ16aの回転が維持されている。これにより、一方の紡績ユニット2においてドラフト動作が停止中も、トラバース装置60によってエプロンベルト18aを往復移動させることができ、エプロンベルト18aの摩耗を軽減できる。
【0079】
ユニットコントローラ10は、糸Yの分断の発生後にドラフト動作が停止している間、ドラフト装置6のバックボトムローラ14aの回転を停止させる。これにより、ドラフト動作の停止時に、繊維束Sが新たに供給されることを回避できる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。
【0081】
エアジェット紡績装置7は、上記の構成に代えて、互いに反対方向に繊維束に撚りを与える一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。
【0082】
紡績ユニット2では、糸貯留装置11がエアジェット紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラとによりエアジェット紡績装置7から糸Yが引き出されてもよい。デリベリローラとニップローラとによりエアジェット紡績装置7から糸Yを引き出す場合、糸貯留装置11の代わりに、吸引空気流を用いたスラックチューブ及び/又は機械的なコンペンセータ等を設けてもよい。
【0083】
ドラフトクレードル40には、トップローラを清掃する清掃装置等が取り付けられていてもよい。
【0084】
上記実施形態では、機台高さ方向において、上側から供給された糸Yが下側において巻き取られるように各装置が配置されていた。しかし、下側から供給された糸が上側において巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
【0085】
上記実施形態では、ドラフト装置6が、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を備える形態を一例に説明した。しかし、バックローラ対14よりも上流側にローラ対が1つ以上設けられていてもよい。その場合には、ドラフトクレードル40が、例えば、上流側のローラ対を含む全てのローラ対のトップローラを支持してもよい。あるいは、ドラフト装置6は、バックローラ対14を備えていなくてもよい。
【0086】
上記実施形態では、紡績機1は糸継台車3を備えている形態を一例に説明した。しかし、各紡績ユニット2が糸継ぎに関連する装置を備えていてもよい。この場合でも、紡績ユニット2は、糸Yの分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、第2速度でフロントボトムローラ17を少なくとも一時的に回転させてもよい。
【0087】
紡績機1は、サクションマウス28に加えて、あるいはサクションマウス28の代わりに、パッケージP側の糸Yを吸引捕捉可能な捕捉装置が各紡績ユニット2に固定的に設けられた構成を有していてもよい。
【0088】
上記実施形態では、エアジェット紡績装置7が糸Yを連続的に一定速度で紡出する形態を一例に説明した。しかし、エアジェット紡績装置7が糸Yを連続的に紡出する速度は一定でなくてもよい。
【0089】
上記実施形態では、糸継装置26により2つの糸端を接続する形態を一例に説明した。しかし、糸継装置26によって糸端を接続する構成に代えて、パッケージPからの糸Yをエアジェット紡績装置7に挿入し、ドラフト装置6のドラフト動作とエアジェット紡績装置7の紡績動作を開始することにより、エアジェット紡績装置7からの糸YとパッケージPの糸Yとを接続(ピーシング)してもよい。何れの場合においても、糸継台車3を省略し、各紡績ユニット2が糸継ぎに必要な装置を備えていてもよい。
【0090】
上記実施形態では、糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8よりも下流側に配置されている形態を一例に説明した。しかし、テンションセンサ9が糸監視装置8よりも上流側に配置されてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12、テンションセンサ9及び糸監視装置8の少なくとも何れかは、省略されてもよい。糸Yにワックスを付与しない場合には、ワキシング装置12を省略せずに、ワキシング装置12からワックスのみを取り外してもよい。
【0091】
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージの場合、糸Yのトラバースにより糸Yの弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置11により吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【0092】
ユニットコントローラ10が糸継要求に応じて実行する第3速度制御において、第3速度(開始速度)は、第2速度と等しいか又第2速度よりも遅い速度に設定されてもよい。ユニットコントローラ10は、糸Yの分断が発生した後であって糸継ぎが実行されるまでの期間において、フロントボトムローラ17a及び/又はミドルボトムローラ16aを一時的に停止させてもよい。
【0093】
紡績機1は、糸継要求に相当する操作を行うための操作ボタン32(
図4参照)を備え、ユニットコントローラ10は、操作ボタン32が操作されたときに、第1速度又は第3速度でフロントボトムローラ17aの回転を開始してもよい。各紡績ユニット2は、表示部31と、操作ボタン32と、を備える。例えば、一の紡績ユニット2において作業者の介入が必要な不具合が発生した場合、当該紡績ユニット2は、運転を停止し、表示部31を用いて警告を発する。表示部31による警告を見た作業者は、不具合を解消するために当該紡績ユニット2に対して作業を行う。作業者は、作業が完了して、当該紡績ユニット2に紡績を再開させたい場合、操作ボタン32を操作(押下)する。操作ボタン32が操作されると、紡績ユニット2は
図5のステップS03以降の動作を実行する。すなわち、ドラフト制御部10cは、フロントボトムローラ17aを第2速度で回転させ始める。これにより、糸継ぎ前までに、ドラフト動作に向けた準備を確実に完了できる。
【0094】
紡績機1は、エアジェット紡績装置7からの糸Yを捕捉して案内するサクションパイプ27と、サクションパイプ27により案内された糸Yと、巻取装置13によって形成されたパッケージP側の糸Yと、を継ぐ糸継装置26と、を備えてもよい。この構成によれば、紡績機1においてスプライサ式の糸継ぎが行われる場合に、フロントトップローラ17bにかかる負荷を軽減することができる。
【0095】
紡績機1において、糸Yの分断が発生した後、巻取装置13におけるパッケージPの回転を停止させ、パッケージP側の糸Yをエアジェット紡績装置7に通して、当該糸Yの糸端がエアジェット紡績装置7の内部に位置する状態にしてからドラフト動作を再開することにより糸継ぎを実行する場合、ユニットコントローラ10は、糸継要求が発生すると、エアジェット紡績装置7へのパッケージP側の糸Yの逆送を開始してもよい。この構成によれば、ピーシング式の糸継ぎが行われる場合に、ミドルボトムローラ16aにかかる負荷を軽減することができる。
【0096】
ユニットコントローラ10は、第3速度制御(ステップS07)において、上記した第2比率と第3比率に関しては通常の紡績時と同じ比率を維持するようにミドルボトムローラ16a、サードボトムローラ15a、及びバックボトムローラ14aの回転を制御し、第1比率についてのみ、通常の紡績時よりも比率が小さくなるようにフロントボトムローラ17aの回転を制御してもよい。この制御によれば、糸出し紡績用の低速度が第3速度制御に適用される。エアジェット紡績装置7が糸出し紡績から通常紡績に移行するときに、フロントボトムローラ17a(フロントローラ対17)の回転が第1速度に移行すれば、紡績ユニット2は、すぐに次のステップである糸継ぎに移行できるため、ハードウエスト(屑糸)の量を削減できる。
【0097】
ドラフト装置6にトラバース装置60が設けられる場合には、ドラフト動作が停止している間のミドルボトムローラ16aの回転速度は0よりも大きい(すなわちユニットコントローラ10はミドルボトムローラ16aを回転させる)ことが望ましい。しかし、トラバース装置60が設けられない場合には、ドラフト動作の停止中、ユニットコントローラ10はミドルボトムローラ16aの回転を少なくとも一時的に停止してもよい。
【0098】
ユニットコントローラ10による上記回転制御が、他の制御装置(機台制御装置100又は他のコントローラ)によって実行されてもよい。
【符号の説明】
【0099】
1…紡績機(空気紡績機)、2…紡績ユニット、3…糸継台車、6…ドラフト装置、7…エアジェット紡績装置(紡績装置)、8…糸監視装置、10…ユニットコントローラ(制御部)、13…巻取装置、16a…ミドルボトムローラ(ミドルローラ)、16b…ミドルトップローラ、17…フロントローラ対、17a…フロントボトムローラ(フロントローラ)、17b…フロントトップローラ、18a…エプロンベルト、27…サクションパイプ(捕捉案内部材)、40…ドラフトクレードル、60…トラバース装置、90…紡績プログラム、S…繊維束。