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特開2024-109427インクジェットプリンタ用インク吸収部材およびインクジェットプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109427
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタ用インク吸収部材およびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 211
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014217
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】新井 章文
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA17
2C056EC22
2C056JA04
2C056JA06
2C056JA27
2C056JB04
2C056JC10
(57)【要約】
【課題】インクジェットプリンタの構成を複雑化させることなく、キャップのリップ部およびインクヘッドの側面に付着したインクを除去する。
【解決手段】インクジェットプリンタ用インク吸収部材80は、インクを吸収可能なインク吸収体81を備える。インクジェットプリンタのインクヘッド30は、ノズル面31とノズル面31に接続された側面32とが露出している。キャップ移動装置62は、リップ部61cがノズル面31に当接または離反するようにキャップ61を移動させる。インク吸収体81は、インクヘッド30とリップ部61cとが離間した状態においてインクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入可能であり、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態においてリップ部61cに当接するリップ当接部81aとインクヘッド30の側面32に当接する側面当接部81bとを備えている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタ用のインク吸収部材であって、インクを吸収可能なインク吸収体を備え、
前記インクジェットプリンタは、
キャリッジと、
ノズル面と前記ノズル面に接続された側面とが露出するように前記キャリッジに保持され、インクが吐出されるノズルが前記ノズル面に形成されたインクヘッドと、
底部と、前記底部から起立した環状の壁部と、前記壁部の先端部に設けられた環状のリップ部と、を備えたキャップと、
前記リップ部が前記ノズル面に当接し、または、前記ノズル面から離反するように前記キャップを移動させるキャップ移動装置と、を備えており、
前記インク吸収体は、
前記キャップ移動装置が前記インクヘッドと前記リップ部とを離間させた状態において前記インクヘッドと前記リップ部との間に挿入可能に構成され、
前記インクヘッドと前記リップ部とに挟まれた状態において前記リップ部に当接するリップ当接部と、
前記インクヘッドと前記リップ部とに挟まれた状態において前記インクヘッドの前記側面の外側に配置され、前記側面に当接する側面当接部と、を備えている、
インクジェットプリンタ用インク吸収部材。
【請求項2】
前記インク吸収体は、前記インクヘッドと前記リップ部とに挟まれた状態において、前記ノズル面のうち前記ノズルが形成された領域の外側領域に当接する段部を備えている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ用インク吸収部材。
【請求項3】
前記インク吸収体は、前記インクヘッドと前記リップ部とに挟まれた状態において前記ノズルが形成された領域と向かい合うように設けられ、前記ノズルが形成された領域とは離間する吸収体底部を備えている、
請求項2に記載のインクジェットプリンタ用インク吸収部材。
【請求項4】
前記インク吸収体を保持する非可撓性の保持部材をさらに備えている、
請求項1に記載のインクジェットプリンタ用インク吸収部材。
【請求項5】
前記インク吸収体は、前記保持部材に着脱自在に構成されている、
請求項4に記載のインクジェットプリンタ用インク吸収部材。
【請求項6】
前記保持部材は、前記インク吸収体の前記側面当接部が挿通される貫通孔が形成された平板状の形状を有しており、前記インク吸収体とともに前記インクヘッドと前記リップ部との間に挿入され、
前記インク吸収体は、前記リップ当接部が前記保持部材よりも前記キャップの側に位置し、かつ、前記側面当接部が前記貫通孔を通って前記保持部材よりも前記インクヘッドの側に位置するように、前記保持部材に装着される、
請求項5に記載のインクジェットプリンタ用インク吸収部材。
【請求項7】
前記貫通孔の1つの端部は、前記保持部材の外形線まで切り抜けている、
請求項6に記載のインクジェットプリンタ用インク吸収部材。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一つに記載のインクジェットプリンタ用インク吸収部材と、
前記インクジェットプリンタ用インク吸収部材を保持して前記インクヘッドと前記リップ部との間に挿入する挿入装置と、を備えている、
インクジェットプリンタ。
【請求項9】
請求項1に記載のインクジェットプリンタ用インク吸収部材と、
前記インクヘッドの前記側面に沿うように延び、前記キャップとともに前記キャップ移動装置により移動されるガイド部材と、を備え、
前記インク吸収体は、平板状に構成され、
前記ガイド部材は、前記キャップとともに前記インクヘッドに接近する際に前記インクヘッドと前記リップ部との間に挿入された前記インク吸収体に当接し、前記側面当接部を形成するように前記インク吸収体を曲げる、
インクジェットプリンタ。
【請求項10】
前記ガイド部材は、前記キャップを覆うカバーの一部である、
請求項9に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ用インク吸収部材、および、インクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式によって記録媒体に画像を印刷するインクジェットプリンタが従来から知られている。インクジェットプリンタの中には、インクが吐出される複数のノズルを備えたインクヘッドと、インクヘッドに装着されるキャップと、を備えたものが存在する。
【0003】
例えば特許文献1には、インクが吐出される記録ヘッドと、記録ヘッドのノズル形成面に当接する有底箱形状のキャップ部材と、ノズル形成面を払拭するワイパー部材と、を備えたプリンタが開示されている。特許文献1に記載のプリンタは、キャップ部材のリップ部に当接しリップ部に付着したインクを吸収する吸収ユニットと、吸収ユニットを移動させリップ部に当接させる装置と、をさらに備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-184418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたインクジェット式プリンタによれば、吸収ユニットによりキャップ部材のリップ部のインクを除去することができる。しかし、ワイパー部材が触れることにより記録ヘッドの側面に付着するインク(撓ませながらノズル形成面に摺接させるため、ワイパー部材はノズル形成面よりも上方に配置されており、記録ヘッドの側面に触れる)は、特許文献1に記載のインクジェット式プリンタでは除去されていない。特許文献1に記載のインクジェット式プリンタに記録ヘッドの側面に付着するインクを除去する機構を追加するとすれば、インクジェット式プリンタの構成が非常に複雑なものとなる。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インクジェットプリンタの構成を複雑化させることなく、キャップのリップ部およびインクヘッドの側面に付着したインクを除去可能なインクジェットプリンタ用インク吸収部材を提供することである。また、そのようなインク吸収部材を備えたインクジェットプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示するインクジェットプリンタ用インク吸収部材は、インクを吸収可能なインク吸収体を備えている。インクジェットプリンタは、キャリッジと、インクヘッドと、キャップと、キャップ移動装置と、を備えている。前記インクヘッドは、ノズル面と前記ノズル面に接続された側面とが露出するように前記キャリッジに保持され、インクが吐出されるノズルが前記ノズル面に形成されている。前記キャップは、底部と、前記底部から起立した環状の壁部と、前記壁部の先端部に設けられた環状のリップ部と、を備えている。前記キャップ移動装置は、前記リップ部が前記ノズル面に当接し、または、前記ノズル面から離反するように前記キャップを移動させる。前記インク吸収体は、前記キャップ移動装置が前記インクヘッドと前記リップ部とを離間させた状態において前記インクヘッドと前記リップ部との間に挿入可能に構成されている。前記インク吸収体は、前記インクヘッドと前記リップ部とに挟まれた状態において前記リップ部に当接するリップ当接部と、前記インクヘッドと前記リップ部とに挟まれた状態において前記インクヘッドの前記側面の外側に配置され、前記側面に当接する側面当接部と、を備えている。
【0008】
上記インクジェットプリンタ用インク吸収部材によれば、インク吸収体のリップ当接部および側面当接部により、それぞれキャップのリップ部およびインクヘッドの側面に付着したインクを除去できる。また、インク吸収体は、インクヘッドとリップ部とが離間した状態においてインクヘッドとリップ部との間に挿入可能に構成され、キャップ移動装置によってインクヘッドに接近させたリップ部とインクヘッドとに挟まれて使用される。よって、上記インクジェットプリンタ用インク吸収部材によれば、インクジェットプリンタの構成を複雑化させることなく、キャップのリップ部およびインクヘッドの側面に付着したインクを除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るプリンタの正面図である。
図2】キャリッジ下面の構成を示す平面図である。
図3】インクヘッドおよびキャッピング装置の正面図である。
図4】インクヘッドおよびワイピング装置の正面図である。
図5】インク吸収部材が間に挟まれた状態のインクヘッドおよびキャップの正面図である。
図6】インク吸収部材を分解した状態を示す斜視図である。
図7】インクヘッドのクリーニングのフローチャートである。
図8】ワイピング後のインク残りを示すインクヘッドおよびキャップの正面図である。
図9】変形例に係るインク吸収部材の正面図である。
図10】第2実施形態に係るキャッピング装置の一部破断正面図である。
図11】第2実施形態に係るインク吸収部材が間に挿入された状態のインクヘッドおよびキャッピング装置の一部破断正面図である。
図12】カバーを上昇させた状態のインクヘッドおよびキャッピング装置の一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタ(以下単に「プリンタ」と称する)について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0011】
[第1実施形態]
図1は、一実施形態に係るプリンタ10の正面図である。以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいる作業者から見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、作業者がプリンタ10の正面を向いているときにプリンタ10の後部から作業者に向かう方向を前方、作業者からプリンタ10の後部に向かう方向を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。
【0012】
プリンタ10は、副走査方向X(図2参照)に記録媒体5を移動させながら記録媒体5に印刷を行う。副走査方向Xは、ここでは、前後方向である。また、プリンタ10は、インクヘッド30を副走査方向Xと直交する主走査方向Yに移動させながら、インクヘッド30にインクを吐出させる。主走査方向Yは、ここでは、左右方向である。上下方向は、符号Zで表す。ここでは、主走査方向Y、副走査方向X、および上下方向Zは、互いに直交している。ただし、上記方向は説明の便宜のためのものに過ぎず、プリンタ10の設置態様等を何ら限定するものではない。
【0013】
記録媒体5は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体5は、記録紙に限定されない。記録媒体5には、普通紙やインクジェット用印刷紙等の紙類以外に、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリエステル等の樹脂材料から形成されたものや、アルミや鉄等から形成された金属板、ガラス板、木材板および段ボール等から形成されたものが含まれる。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、プラテン15と、キャリッジ20と、キャリッジ20に搭載された複数のインクヘッド30と、キャリッジ移動装置40と、記録媒体5の搬送装置50と、キャッピング装置60と、ワイピング装置70と、インク吸収部材80と、インク吸収部材80を移動させる挿入装置90と、制御装置100と、を備えている。
【0015】
プラテン15は、記録媒体5を支持する支持台である。プラテン15は、主走査方向Yおよび副走査方向Xに延びている。キャリッジ20は、プラテン15の上方に設けられている。複数のインクヘッド30は、キャリッジ20に設けられている。図2は、キャリッジ20の下面の構成を示す平面図である。図2に示すように、複数のインクヘッド30は、それぞれ副走査方向Xに延びている。複数のインクヘッド30は、主走査方向Yに並ぶように配置されている。本実施形態では、複数のインクヘッド30は、副走査方向Xの位置が揃うように配置されている。ただし、複数のインクヘッド30は、その一部の副走査方向Xの位置が他とずれるように、いわゆるスタガ配置されていてもよい。インクヘッド30の数および配置は特に限定されない。
【0016】
図3は、インクヘッド30およびキャッピング装置60の正面図である。図3に示すように、各インクヘッド30は、ノズル面31とノズル面31に接続された側面32とが露出するようにキャリッジ20に保持されている。各インクヘッド30は、キャリッジ20の下面20aよりも下方に突出している。ノズル面31は、ここでは、インクヘッド30の下面である。図2に示すように、ノズル面31には、インクが吐出される複数のノズル33が形成されている。側面32は、ノズル面31から上方に向かって延びている。本実施形態では、ノズル面31は平面視において矩形であり、そのため、側面32は、前側面32Fと、後側面32Rrと、左側面32Lと、右側面32Rと、を含んでいる。前側面32Fは、ノズル面31の前端から上方に延びている。後側面32Rrは、ノズル面31の後端から上方に延びている。左側面32Lは、ノズル面31の左端から上方に延びている。右側面32Rは、ノズル面31の右端から上方に延びている。
【0017】
ノズル面31は、ノズル33が形成されたノズル形成領域31aと、ノズル33が形成されていないその外側領域31bと、を含んでいる。ノズル形成領域31aと外側領域31bとの間には、両者を区切るものがあってもよく、なくてもよい。後述するが、外側領域31bはキャッピング装置60のキャップ61が当接する部分であり、キャップ61がノズル33を避けて当接するノズル面31の一部である。ノズル形成領域31aと外側領域31bとの区別は、キャップ61が当接する部分を特定するための便宜的な区別である。なお、外側領域31bには、例えば、ノズル面31に物体が衝突するのを防止するノズルガードが形成されていてもよい。側面32は、外側領域31bに接続されている。
【0018】
各インクヘッド30は、ここでは、図示しない複数の圧電素子を備えている。各インクヘッド30は、制御装置100から送信される駆動信号を受けて圧電素子が振動することによりインクを吐出する。圧電素子は、例えば、圧電材料と導電層とを交互に積層した積層体である。圧電素子は、制御装置100からの駆動信号を受けると膨張または収縮する。圧電素子が膨張または収縮することにより、ノズル33に連通しインクが貯留された圧力室(図示せず)の体積が減少または増加する。これにより、ノズル33からインクが吐出される。駆動信号は、圧電素子を膨張させる電位と収縮させる電位とが交互に現れる駆動波形信号である。ただし、インクヘッド30が備えるアクチュエータは、圧電素子には限定されない。インクヘッド30は、例えば、二値偏向方式または連続偏向方式などの各種の連続方式、サーマル方式などのオンデマンド方式によるインクジェットヘッドであってもよい。
【0019】
インクヘッド30から吐出されるインクは、特に限定されない。インクヘッド30から吐出されるインクは、例えば、ソルベント系(溶剤系)顔料インク、水性インク、光硬化性インク(例えば紫外線を受けて硬化する紫外線硬化型顔料インク、いわゆるUVインク)等であってもよい。
【0020】
キャリッジ移動装置40は、キャリッジ20を主走査方向Yに移動させる。図1に示すように、キャリッジ移動装置40は、ガイドレール41と、左右のプーリ42と、無端状のベルト43と、スキャンモータ44と、を有している。ガイドレール41は、プラテン15の上方に配置されている。ガイドレール41は、主走査方向Yに延びている。キャリッジ20は、ガイドレール41に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。キャリッジ20には、ベルト43が固定されている。ベルト43は、左右のプーリ42に巻き掛けられている。スキャンモータ44は、一方のプーリ42に接続されている。スキャンモータ44が駆動して、一方のプーリ42が回転することで、ベルト43が走行する。これにより、キャリッジ20が主走査方向Yに移動する。複数のインクヘッド30は、キャリッジ20とともに主走査方向Yに移動する。
【0021】
搬送装置50は、記録媒体5を副走査方向Xに移動させる。図1に示すように、搬送装置50は、グリットローラ51と、ピンチローラ52と、フィードモータ53と、を有している。グリットローラ51は、プラテン15に埋設されている。各グリットローラ51の一部は、プラテン15に露出している。フィードモータ53は、グリットローラ51を副走査方向Xに回転させる。ピンチローラ52は、記録媒体5を上から押さえつけるものである。ピンチローラ52は、グリットローラ51の上方に配置されている。ピンチローラ52は、グリットローラ51と対向する位置に設けられている。ピンチローラ52は、上下方向Zに移動可能に構成されている。グリットローラ51とピンチローラ52との間に記録媒体5が挟まれた状態で、フィードモータ53が駆動してグリットローラ51が回転すると、記録媒体5は副走査方向Xに搬送される。
【0022】
キャッピング装置60は、各インクヘッド30のノズル形成領域31aをキャップ61で覆うとともに、キャップ61の内部を減圧してインクを吸引する装置である。キャッピング装置60は、キャリッジ20の可動範囲の一端であるホームポジションの下方に配置されている。図3に示すように、キャッピング装置60は、キャップ61と、キャップ移動装置62と、吸引ポンプ63と、キャップ61と吸引ポンプ63とを接続するチューブ63aと、を備えている。
【0023】
本実施形態では、1つのキャップ61は、1つのインクヘッド30に装着されるように構成されている。図3に示すように、キャップ61は、主走査方向Yおよび副走査方向X(図2参照)に延びる底部61aと、底部61aから起立した環状の壁部61bと、を備えている。底部61aは、平面視においてノズル形成領域31aよりも大きく、ノズル面31よりも小さい矩形状に構成されている。壁部61bは、底部61aの前端から上方に延びる前壁部61Fと、底部61aの左端から上方に延びる左壁部61Lと、底部61aの右端から上方に延びる右壁部61Rと、底部61aの後端から上方に延びる後壁部(図示省略)と、を含んでいる。壁部61bの先端部(ここでは上端部)は、平面視において環状のリップ部61cとなっている。リップ部61cは、壁部61bの先端部に設けられ、ここでは、先端に近づくほど幅が狭くなるようなテーパ状に形成されている。底部61aには、チューブ63aが接続された吸引口61dが設けられている。吸引口61dは、底部61aを上下方向に貫通している。キャップ61は、例えば、弾性を有するゴムによって形成されている。
【0024】
リップ部61cは、ノズル面31の外側領域31bに当接するように構成されている。これにより、リップ部61cがノズル形成領域31aに触れ、ノズル33内のインクのメニスカスを壊すことが防止されている。また、これにより、ノズル形成領域31aの全部がキャップ61に覆われる。
【0025】
キャップ移動装置62は、キャップ61をインクヘッド30に装着し、またはインクヘッド30から離反させる装置である。詳しくは、キャップ移動装置62は、リップ部61cがノズル面31に当接し、または、ノズル面31から離反するように、キャップ61を移動させる。キャップ移動装置62は、例えば、ガイドレールとモータとボールねじとを備え、キャップ61を上下方向に移動させる。ただし、キャップ移動装置62の構成は特に限定されない。
【0026】
吸引ポンプ63は、インクヘッド30に装着された状態のキャップ61の内部を減圧する。吸引ポンプ63は、これにより、ノズル33内のインクを吸引する。吸引ポンプ63は、例えば、チューブポンプである。ただし、吸引ポンプ63の種類は特に限定されない。
【0027】
ワイピング装置70は、インクヘッド30のノズル面31を払拭する。図4は、インクヘッド30およびワイピング装置70の正面図である。図3に示すように、ワイピング装置70は、インクヘッド30のノズル面31を払拭可能なワイパー71と、ワイパー71を支持して上下方向Zに移動させるワイパー支持装置72と、を備えている。ワイパー71は、副走査方向Xおよび上下方向Zに伸びる板状の部材である。ワイパー71は、ここでは、鉛直方向に延びている。ただし、ワイパー71は、例えば、斜め上下方向に延びていてもよい。ワイパー71は、可撓性を有する材料、例えば、ゴムにより形成されている。ワイパー71の材料は、可撓性を有する限りにおいて特に限定されない。ワイパー71は、ノズル面31およびノズル33を払拭することにより、ノズル面31およびノズル33に付着したインクを除去するものである。これにより、ノズル面31およびノズル33でインクが固着することが抑制され、インクヘッド30の状態が維持されている。
【0028】
ワイパー支持装置72は、ノズル面31と副走査方向Xの位置が揃うように、ワイパー71を支持している。ただし、ワイパー支持装置72は、ワイパー71を副走査方向Xに移動可能に支持していてもよい。その場合、ワイパー71は、ノズル面31を払拭しないときには、インクヘッド30よりも前方または後方に退避されていてもよい。
【0029】
ワイパー支持装置72は、ノズル面31を払拭可能な払拭位置(図4に図示した位置)と、ノズル面31よりも下方の待機位置とにワイパー71を移動させる。図4に示すように、ワイパー71の上端は、払拭位置において、ノズル面31よりも僅かに上方に位置する。これにより、ワイパー71は、撓みながらノズル面31を払拭することが可能となっている。ワイパー71の上端は、待機位置において、ノズル面31よりも下方に位置する。ワイパー71は、ここでは、主走査方向Yには不動である。ここでは、キャリッジ20が主走査方向Yに移動することにより、ワイパー71がインクヘッド30を主走査方向Yに払拭する。ただし、ワイピング装置70は、ワイパー71を主走査方向Yに移動させるように構成されていてもよい。また、ワイピング装置70は、ワイパー71を副走査方向Xに移動させながらノズル面31を払拭するように構成されていてもよい。ワイピング装置70の構成は特に限定されない。
【0030】
インク吸収部材80は、キャップ61およびインクヘッド30に付着したインクを吸収して除去するものである。図5は、インク吸収部材80が間に挟まれた状態のインクヘッド30およびキャップ61の正面図である。図6は、インク吸収部材80を分解した状態を示す斜視図である。インク吸収部材80は、図5に示すように、インクヘッド30とキャップ61とに挟まれた状態で使用される。図6に示すように、インク吸収部材80は、インクを吸収可能なインク吸収体81と、保持部材82と、を備えている。
【0031】
インク吸収体81は、キャップ移動装置62がインクヘッド30とキャップ61のリップ部61cとを離間させた状態においてインクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入可能に構成されている。インク吸収体81は、ここでは、インクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入可能な厚さの平板状に構成されている。インク吸収体81は、例えば、多孔質の樹脂スポンジからなっている。ただし、インク吸収体81の形状および材質は、特に限定されない。
【0032】
図5に示すように、インク吸収体81は、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態においてリップ部61cに当接するリップ当接部81aと、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態においてインクヘッド30の側面32の外側に配置され、側面32に当接する側面当接部81bと、を備えている。本実施形態では、インク吸収体81は、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態においてノズル面31の外側領域31bに当接する段部81cと、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態においてノズル形成領域31aと向かい合うように設けられノズル形成領域31aとは離間する吸収体底部81dと、をさらに備えている。
【0033】
図6に示すように、吸収体底部81dは、インク吸収体81の底部を構成している。吸収体底部81dの左端部および右端部からは、一対の側面当接部81bが上方に延びている。側面当接部81bの上面は、吸収体底部81dの上面よりも上方に位置している。側面当接部81bの副走査方向Xの長さは、ここでは、吸収体底部81dと等しい。一対の段部81cは、側面当接部81bよりも主走査方向Yの内側に、側面当接部81bと隣接して形成されている。段部81cも、吸収体底部81dから上方に延びている。段部81cの上面は、吸収体底部81dの上面よりも上方かつ側面当接部81bの上面よりも下方に位置している。段部81cの高さは、側面当接部81bよりも低い。
【0034】
図5に示すように、インク吸収体81がインクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態において、段部81cがノズル面31の外側領域31bに突き当たることにより、吸収体底部81dは、ノズル形成領域31aから離間する。これにより、吸収体底部81dがノズル形成領域31aに接触することによってノズル33内のインクのメニスカスを壊すことが防止されている。なお、吸収体底部81dの中央部には、吸収体底部81dがノズル形成領域31aに接触することを防止するように、ノズル形成領域31aよりも大きい貫通孔が形成されていてもよい。その場合、段部81cは設けられなくてもよい。さらには、インク吸収体81は、左の側面当接部81bを有する左のインク吸収体81と、右の側面当接部81bを有する右のインク吸収体81とに分離されていてもよい。
【0035】
リップ当接部81aは、吸収体底部81dの下面のうち、リップ部61cが当接する部分である。リップ当接部81aは、リップ部61cの上方にあって、副走査方向Xに延びている。
【0036】
一対の側面当接部81bは、平面視において、その内法がインクヘッド30の主走査方向Yの長さよりも僅かに小さく構成されている。側面当接部81bは、キャップ移動装置62によってキャップ61を介して押されることによって弾性変形し、インクヘッド30の側面32L、32Rに接するようにインクヘッド30の外側に嵌め込まれる。なお、側面当接部81bは、ここでは、側面32のうち、左側面32Lおよび右側面32Rに当接し、前側面32Fおよび後側面32Rrには当接しない。
【0037】
保持部材82は、非可撓性の部材であり、インク吸収体81を保持する。インク吸収体81を形成することが可能な材料の多くは弾性体であり、可撓性を有する。保持部材82は、自ら形状を保持しにくい可撓性のインク吸収体81を保持する。図6に示すように、保持部材82は平板状の形状を有しており、図3に示すように、インク吸収体81とともにインクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入される。
【0038】
インク吸収体81は、保持部材82に着脱自在に構成されている。保持部材82には、インク吸収体81の一対の側面当接部81bおよび一対の段部81cが挿通される一対の貫通孔82aが形成されている。ここでは、貫通孔82aの1つの端部(ここでは、前端)は、保持部材82の外形線(ここでは、前縁)まで切り抜けている。インク吸収体81は、リップ当接部81aが保持部材82よりもキャップ61の側(ここでは下方)に位置し、かつ、側面当接部81bおよび段部81cが貫通孔82aを通って保持部材82よりもインクヘッド30の側(ここでは上方)に位置するように、保持部材82に装着される。側面当接部81bおよび段部81cは、貫通孔82aの切り抜けた前端部から貫通孔82aに差し込まれる。その後、インク吸収体81を後方にスライドさせると、側面当接部81bおよび段部81cの全体が貫通孔82aに挿入される。同時に、リップ当接部81aを含む吸収体底部81dが保持部材82の下方に移動される。
【0039】
ただし、一対の貫通孔82aは、保持部材82の外形線まで切り抜けていなくてもよい。その場合、側面当接部81bおよび段部81cは、下方から貫通孔82aに差し込まれてもよい。
【0040】
挿入装置90は、インク吸収部材80を保持してインクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入する。挿入装置90は、例えば、ホームポジションよりも主走査方向Yの外側位置とホームポジションの下方位置との間でインク吸収部材80を移動させる。ただし、挿入装置90は、他の方向、例えば、ホームポジションよりも後方にインク吸収部材80を退避させてもよい。挿入装置90は、例えば、伸縮するロッドを備えたエアシリンダを備えている。ただし、挿入装置90の構成は特に限定されない。挿入装置90は、キャップ61によって上方に押されると上方に動き得るようにインク吸収部材80を支持している。挿入装置90は、例えば、インク吸収部材80が直接または間接的に摺動自在に係合し、上下方向Zに延びるガイドレールを備えている。
【0041】
プリンタ10の制御装置100は、複数のインクヘッド30と、キャリッジ移動装置40のスキャンモータ44と、搬送装置50のフィードモータ53と、キャッピング装置60のキャップ移動装置62および吸引ポンプ63と、ワイピング装置70のワイパー支持装置72と、挿入装置90と、にそれぞれ電気的に接続され、それらの動作を制御している。制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。なお、制御装置100は必ずしもプリンタ10の内部に設けられている必要はなく、例えば、プリンタ10の外部に設置され、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されたコンピュータ等であってもよい。
【0042】
[ワイピングのプロセス]
以下では、本実施形態に係るインクヘッド30のクリーニングプロセスについて説明する。図7は、インクヘッド30のクリーニングのフローチャートである。図7に示すように、インクヘッド30のクリーニングのステップS01では、キャップ61がインクヘッド30に装着される。これにより、リップ部61cがノズル面31に密着し、キャップ61とノズル面31との間のシールを確保する。このとき、リップ部61cにインクが付着していると、ノズル面31にインクが転写されるため、後述のステップS06においてリップ部61cにインク吸収体81が当接される。ステップS02では、吸引ポンプ63が駆動され、ノズル33内のインクが吸引される。
【0043】
ステップS03では、キャップ61がインクヘッド30から離間され、キャップ61内のインクが吸引ポンプ63により吸引される。ステップS03においてキャップ61がインクヘッド30から離間される際に、リップ部61cにインクが付着する可能性がある。
【0044】
ステップS04では、ワイパー71が払拭位置に移動されるとともにキャリッジ20が主走査方向Yに移動されて、ワイピングが行われる。キャリッジ20が移動すると、ワイパー71は、まずインクヘッド30の手前側の側面(図4の例では、左側面32L)に接触する。このとき、ワイパー71に付着していたインクがインクヘッド30の左側面32Lに転写される可能性がある。また、キャリッジ20がワイパー71を通過し、撓んでいたワイパー71がノズル面31を抜けて元の鉛直姿勢に戻ろうとする際に、インクヘッド30の右側面32Rにインクが移動し付着する可能性がある。なお、キャリッジ20がホームポジションに戻るときにもワイピングが行われる場合には、インクヘッド30の左右の側面32Lおよび32Rにインクが付着する可能性がある。図8は、ワイピング後のインク残りを示すインクヘッド30およびキャップ61の正面図である。図8に示すように、ワイピング後には、リップ部61cおよびインクヘッド30の左右の側面32Lおよび32RにインクIが付着している可能性がある。
【0045】
リップ部61cにインクが付着していると、インクが固着し、キャップ61とノズル面31との間のシールが確保できなくなるおそれがある。また、固着しかかった、または固着したインクがリップ部61cからノズル面31に移動し、それがワイピングによりノズル33に運ばれるおそれがある。インクヘッド30の側面32にインクが付着していると、固着したインクがノズル面31に移動し、やはり、キャップ61とノズル面31との間のシール不良や、ノズル33への固着インクの侵入を引き起こすおそれがある。
【0046】
図7に示すように、本実施形態では、続くステップS05において、インク吸収部材80がインクヘッド30とキャップ61との間に挿入される。ステップS06では、キャップ61が上昇され、インクヘッド30とともにインク吸収部材80を挟む。これにより、インク吸収体81のリップ当接部81aがリップ部61cに当接し、側面当接部81bがインクヘッド30の側面32に当接する。その結果、リップ部61cおよびインクヘッド30の側面32のインクがインク吸収体81に吸収され、除去される。これにより、キャップ61とノズル面31との間のシール不良や、ノズル33への固着インクの侵入のおそれが低減される。
【0047】
ステップS07では、キャップ61が下降される。ステップS08では、インク吸収部材80がホームポジションの下方から退避される。ステップS09では、キャップ61がインクヘッド30に装着される。印刷等で次にインクヘッド30が使用されるまで、キャップ61は基本的にインクヘッド30に装着され、インクヘッド30を保護する。
【0048】
[実施形態の作用効果]
以下では、本実施形態に係るインク吸収部材80およびプリンタ10が奏することのできる作用効果について説明する。
【0049】
本実施形態に係るインク吸収部材80は、インクを吸収可能なインク吸収体81を備えている。インク吸収体81は、キャップ移動装置62がインクヘッド30とリップ部61cとを離間させた状態においてインクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入可能に構成されている。インク吸収体81は、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態においてリップ部61cに当接するリップ当接部81aを備えている。また、インク吸収体81は、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態においてインクヘッド30の側面32の外側に配置され、側面32に当接する側面当接部81bを備えている。かかるインク吸収部材80によれば、インク吸収体81のリップ当接部81aおよび側面当接部81bにより、それぞれ、リップ部61cおよびインクヘッド30の側面32に付着したインクを除去できる。また、インク吸収体81は、インクヘッド30とリップ部61cとが離間した状態においてインクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入可能に構成されており、キャップ移動装置62によってインクヘッド30に接近させたリップ部61cとインクヘッド30とに挟まれて使用される。よって、本実施形態に係るインク吸収部材80によれば、プリンタ10の構成を複雑化させることなく、リップ部61cおよびインクヘッド30の側面32に付着したインクを除去できる。
【0050】
本実施形態では、インク吸収体81は、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態において、ノズル面31の外側領域31bに当接する段部81cを備えている。かかる構成によれば、インク吸収体81のうち段部81cの内方部分(ここでは、吸収体底部81d)がノズル形成領域31aに触れることを防止できる。
【0051】
本実施形態では、インク吸収体81は、インクヘッド30とリップ部61cとに挟まれた状態においてノズル形成領域31aと向かい合うように設けられ、ノズル形成領域31aとは離間する吸収体底部81dを備えている。かかる構成によれば、吸収体底部81dが有するインク吸収可能量だけ、インク吸収体81のインク吸収可能量が増加する。そのため、インク吸収体81の交換頻度を少なくすることができる。
【0052】
本実施形態に係るインク吸収部材80は、インク吸収体81を保持する非可撓性の保持部材82をさらに備えている。インク吸収体81として可能な材料の多くは可撓性であり、自ら形状を保つことが難しいが、かかる構成によれば、保持部材82の保持によってインク吸収体81の形状を保持することができる。
【0053】
本実施形態では、インク吸収体81は、保持部材82に着脱自在に構成されている。かかる構成によれば、インク吸収体81がインクをそれ以上吸収できなくなったときにはインク吸収体81だけを交換すればよく、保持部材82を交換する必要がない。
【0054】
本実施形態では、保持部材82は、インク吸収体81の側面当接部81bが挿通される貫通孔82aが形成された平板状の形状を有しており、インク吸収体81とともにインクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入される。インク吸収体81は、リップ当接部81aが保持部材82よりもキャップ61の側に位置し、かつ、側面当接部81bが貫通孔82aを通って保持部材82よりもインクヘッド30の側に位置するように、保持部材82に装着される。かかる構成によれば、側面当接部81bを貫通孔82aに通すだけで、インク吸収体81を容易に保持部材82に装着することができる。
【0055】
本実施形態では、貫通孔82aの1つの端部は、保持部材82の外形線まで切り抜けている。かかる構成によれば、保持部材82に対してインク吸収体81をスライドさせることにより、側面当接部81bを貫通孔82aに通すことができる。よって、インク吸収体81をより容易に保持部材82に装着することができる。
【0056】
[変形例]
上記した実施形態は、いくつかの変形例で実施することができる。図9は、一変形例に係るインク吸収部材80の正面図である。図9に示すように、インク吸収部材80は、保持部材82で曲げられた平板状のインク吸収体81を備えていてもよい。保持部材82は、第1実施形態と同様に平板状に構成され、左右一対の貫通孔82aを有している。インク吸収体81は、一対の貫通孔82aに挿通され、インクヘッド30の側に開いたU字状に変形されている。インク吸収体81の端部は、主走査方向Yの外方に向かうほど上方に延びるように斜め上方向きに立ち上がっている。本変形例では、図9に示すように、この立ち上がった端部の内側面が側面当接部81bを構成している。インク吸収体81のうち保持部材82よりもキャップ61の側の部分の一部はリップ部61cに当接し、リップ当接部81aを構成している。
【0057】
このように、インク吸収体81のリップ当接部81aおよび側面当接部81bは、インク吸収体81を予め成形して作られた部位でなくてもよい。リップ当接部81aおよび側面当接部81bの構成は、それぞれ、リップ部61cおよびインクヘッド30の側面32に当接する限りにおいて特に限定されない。
【0058】
その他、インク吸収体81が単独で形状を維持可能であれば、インク吸収部材80は、保持部材82を備えなくてもよい。インクヘッド30の側面32のうち、ワイピングによってインクが付着する可能性が高いのはワイパー71による払拭方向(ここでは主走査方向Y、ただし、例えば副走査方向Xでもよい)の側面32(ここでは、左側面32Lおよび右側面32R)であるため、第1実施形態では、ワイパー71による払拭方向の側面32L、32Rに当接するような側面当接部81bを設けていた。しかし、側面当接部81bは、例えば、インクヘッド30の全ての側面32に当接するように、環状に構成されていてもよい。
【0059】
[第2実施形態]
第2実施形態では、プリンタ10は挿入装置90を備えず、ユーザーがインク吸収部材80をインクヘッド30とキャップ61との間に挿入する。インク吸収部材80によるインク吸収は、ユーザーによる適時のクリーニングの1つとして行われる。ユーザーは、洗浄液とクリーニングキット(例えば、ブラシ)とを使用したインクヘッド30およびキャップ61のマニュアルクリーニングを実施してもよいが、インク吸収部材80によるインク吸収を適時に行うことにより、マニュアルクリーニングの頻度を少なくすることができる。
【0060】
図10は、第2実施形態に係るキャッピング装置60の一部破断正面図である。図11は、第2実施形態に係るインク吸収部材80が間に挿入された状態のインクヘッド30およびキャッピング装置60の一部破断正面図である。図10示すように、本実施形態に係るキャッピング装置60は、キャップ61を覆うカバー64と、キャップホルダ65と、キャップ61をインクヘッド30に押し当てるスプリング66と、を備えている。
【0061】
カバー64は、有底の箱状に構成され、上方が開放されている。カバー64内には、キャップ61、キャップホルダ65、およびスプリング66が収容されている。キャップ移動装置62は、カバー64を上下方向Zに移動させる。キャップホルダ65は、キャップ61を下方から支持している。スプリング66は、カバー64の底面とキャップホルダ65の下面との間に配置されている。キャップ61のリップ部61cがインクヘッド30に突き当たってからさらにカバー64を上昇させると、スプリング66が収縮する。スプリング66の復元力により、キャップ61をインクヘッド30に押し当てる力が発生する。なお、第1実施形態に係るキャッピング装置60も、同様に構成されていてもよい。
【0062】
図10に示すように、カバー64の左右の側面64aの内側には、一対のガイド部材64bが設けられている。詳しくは、ガイド部材64bは、側面64aの上端部に設けられている。ガイド部材64bは、キャップ61を覆うカバー64の一部である。ガイド部材64bは、平板状に構成され、上下方向Zおよび副走査方向Xに延びている。なお、ガイド部材64bは、カバー64の前後の側面にも設けられていてもよい。ガイド部材64bは、インクヘッド30の左右の側面32L、32Rに略平行に延び、キャップ61とともにキャップ移動装置62により移動される。
【0063】
図11に示すように、インク吸収部材80は、ここでは、平板状のインク吸収体81からなっている。本実施形態では、インク吸収部材80は、保持部材82を備えない。
【0064】
図11に示すように、インク吸収部材80を使用する際、ユーザーはインク吸収体81をインクヘッド30とキャップ61のリップ部61cとの間に挿入する。その後、ユーザーは、キャップ移動装置62を駆動し、キャップ61、ガイド部材64b等を搭載したカバー64を上昇させる。
【0065】
図12は、カバー64を上昇させた状態のインクヘッド30およびキャッピング装置60の一部破断正面図である。図12に示すように、キャップ移動装置62は、ガイド部材64bがインクヘッド30の側面32の側方に位置するまでカバー64を上昇させることが可能に構成されている。図12に示す状態において、スプリング66は、図11に示す状態よりも縮んでいる。図12に示すように、ガイド部材64bは、キャップ61とともにインクヘッド30に接近する際に、インクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入されたインク吸収体81に当接し、側面当接部81bを形成するようにインク吸収体81を曲げる。インク吸収体81の左右の端部は、ガイド部材64bにより内側に畳まれるように起立され、側面当接部81bを形成する。本実施形態では、側面当接部81bは、平板状のインク吸収体81をキャップ移動装置62の駆動によって動くガイド部材64bによって曲げることにより形成される。
【0066】
このように、本実施形態に係るプリンタ10は、インクヘッド30の側面32に沿うように延び、キャップ61とともにキャップ移動装置62により移動されるガイド部材64bを備えている。ガイド部材64bは、キャップ61とともにインクヘッド30に接近する際にインクヘッド30とリップ部61cとの間に挿入されたインク吸収体81に当接し、側面当接部81bを形成するようにインク吸収体81を曲げる。かかる構成によれば、キャップ61をインクヘッド30に接近させる動作によって、平板状の形状のインク吸収体81から、側面当接部81bを形成することができる。そのため、インク吸収体81に予め側面当接部81bを成形しておく必要がない。
【0067】
本実施形態では、ガイド部材64bは、キャップ61を覆うカバー64の一部である。カバー64は、可動部であるキャップ61をユーザーから遮蔽するものであり、設けることが好ましい。ガイド部材64bをかかるカバー64の一部とすることにより、部材を節減できる。なお、ガイド部材64bは、カバー64の側面64aそのものであってもよく、カバー64とは別の部材であってもよい。
【0068】
[他の実施形態]
以上、本発明のいくつかの好適な実施形態について説明した。しかし、上記した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0069】
例えば上記した実施形態では、プリンタ10は記録媒体5がプラテン15上で搬送されるタイプのプリンタであったが、プリンタのタイプは限定されない。プリンタは、記録媒体5を載置して移動するフラットベッドを備えた、いわゆるフラットベッドタイプのプリンタであってもよい。
【0070】
上記した実施形態では、1つのキャップ61は1つのキャップ移動装置62によって移動されていた。しかし、1つのキャップ移動装置62は、複数のキャップ61を同時に移動させるように構成されていてもよい。インク吸収体81は、複数のキャップ61および複数のインクヘッド30のインクをそれぞれ吸収する複数のリップ当接部81aおよび複数の側面当接部81bを備えていてもよい。
【0071】
上記した実施形態の各要素は互いに阻害しない関係であれば、相互に組み合わせ得る。その他、特に限定されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。
【符号の説明】
【0072】
10 インクジェットプリンタ
20 キャリッジ
30 インクヘッド
31 ノズル面
31a ノズル形成領域
31b 外側領域
32 側面
33 ノズル
60 キャッピング装置
61 キャップ
61a 底部
61b 壁部
61c リップ部
62 キャップ移動装置
64 カバー
64b ガイド部材
70 ワイピング装置
80 インク吸収部材
81 インク吸収体
81a リップ当接部
81b 側面当接部
81c 段部
81d 吸収体底部
82 保持部材
82a 貫通孔
90 挿入装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12