IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 凸版印刷株式会社の特許一覧

特開2024-109431スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法
<>
  • 特開-スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法 図1
  • 特開-スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法 図2
  • 特開-スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法 図3
  • 特開-スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法 図4
  • 特開-スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法 図5
  • 特開-スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法 図6
  • 特開-スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法 図7
  • 特開-スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109431
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 75/58 20060101AFI20240806BHJP
   B65D 33/38 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B65D75/58
B65D33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014224
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々 志歩
(72)【発明者】
【氏名】大塚 浩之
(72)【発明者】
【氏名】合田 陽香
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E064AA01
3E064BA26
3E064BA28
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA40
3E064BA55
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA07
3E064FA04
3E064FA05
3E064GA04
3E064HM01
3E064HN65
3E064HS04
3E067AA03
3E067AA04
3E067AB83
3E067BA12A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA06
3E067CA24
3E067EA32
3E067EB17
3E067EB27
3E067FA01
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができるスパウト付き包装袋を提供する。
【解決手段】スパウト付き包装袋1は、同一材料により構成される基材17及びシーラント層18を有する積層フィルム16から構成される収容部10と、注出筒21及び注出筒21の一端側に設けられる台座22を有し、収容部10の上端部11に取り付けられるスパウト20とを備えている。収容部10の上端部11では、シーラント層18がスパウト20の台座22に対して溶着されると共に台座22の横においてシーラント層18同士が互いに溶着されている。スパウト付き包装袋1では、シーラント層18が台座22に溶着されている第1溶着領域R1の幅D1が、シーラント層18同士が互いに溶着されている第2溶着領域R2の幅D2よりも短く、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間には段差Sが形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一材料により構成される基材及びシーラント層を有する積層フィルムから構成される収容部と、
第1方向に延在する注出筒及び前記注出筒の一端側に設けられる台座を有し、前記収容部の縁部に取り付けられるスパウトと、を備え、
前記収容部の前記縁部では、前記シーラント層が前記スパウトの前記台座に対して溶着されると共に前記台座の横において前記シーラント層同士が互いに溶着されており、
前記シーラント層が前記台座に溶着されている第1溶着領域の前記第1方向に沿った幅が、前記シーラント層同士が互いに溶着されている第2溶着領域の前記第1方向に沿った幅よりも短く、前記第1溶着領域と前記第2溶着領域との間には段差が形成されている、
スパウト付き包装袋。
【請求項2】
前記段差の前記第1方向に沿った大きさが1.5mm以上である、
請求項1に記載のスパウト付き包装袋。
【請求項3】
前記段差の前記第1方向に沿った大きさが5mm以下である、
請求項2に記載のスパウト付き包装袋。
【請求項4】
前記段差の前記第1方向に沿った大きさは、前記台座の前記第1方向に沿った長さに対して0.15~0.6である、
請求項1に記載のスパウト付き包装袋。
【請求項5】
前記段差の前記第1方向に沿った大きさは、前記台座の前記第1方向に交差する第2方向に沿った横幅に対して0.1~0.5である、
請求項1に記載のスパウト付き包装袋。
【請求項6】
前記基材及び前記シーラント層を構成する同一材料は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂である、
請求項1に記載のスパウト付き包装袋。
【請求項7】
前記基材及び前記シーラント層を構成する同一材料がポリエチレン樹脂であり、
前記積層フィルムの全体に占めるポリエチレン樹脂の含有量が90質量%以上である、
請求項1に記載のスパウト付き包装袋。
【請求項8】
前記収容部は、前記第1溶着領域と前記第2溶着領域との間の前記段差において、対向する前記シーラント層同士が内側に凹むように形成されている、
請求項1~7の何れか一項に記載のスパウト付き包装袋。
【請求項9】
同一材料により構成される基材及びシーラント層を有する積層フィルムを準備する工程と、
注出筒及び前記注出筒の一端側に設けられる台座を有するスパウトを準備する工程と、
前記積層フィルムの前記シーラント層を前記スパウトの前記台座に溶着させると共に、前記台座の横において前記シーラント層同士を溶着させる工程と、を備え、
前記溶着させる工程では、前記シーラント層が前記台座に溶着される第1溶着領域の幅が、前記シーラント層同士が互いに溶着される第2溶着領域の幅よりも短く、且つ、前記第1溶着領域と前記第2溶着領域との間に段差が形成されるように、溶着を行う、
スパウト付き包装袋の製造方法。
【請求項10】
前記段差の幅が1.5mm~5mmである、
請求項9に記載のスパウト付き包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の内容物(例えば液体洗剤やシャンプー)を収容し、収容した内容物を必要に応じて注出することができるスパウト付き包装袋が知られている。この包装袋を構成する包装材には、ポリオレフィン等からなるシーラント層と該シーラント層よりも高融点の材料(ポリエステル等)からなる基材とを備えたマルチマテリアル構成の積層フィルムが用いられている。環境配慮の観点から、近年では、包装材をモノマテリアル化する取り組みが進められており、マルチマテリアル構成の積層フィルムに代えて、ポリプロピレン等を主構成材料とする積層フィルムを包装材として用いることが検討されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-157517号公報
【特許文献2】特開2017-065747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
モノマテリアル構成の積層フィルムでスパウト付き包装袋を作製する場合、シーラント層を構成する材料の融点と基材を構成する材料の融点とが同等であることから、マルチマテリアル構成の積層フィルムでスパウト付き包装袋を作製する場合に比べ、シーラント層をスパウトに対して溶着する際の温度を低温にする必要がある。しかしながら、溶着温度を低くすると、その分、シーラント層やスパウトの溶着が不十分となり、シーラント層をスパウトに対して溶着した部分のシール強度が低下することがある。このため、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いてスパウト付き包装袋を作製した場合、包装袋内に内容物を充填した際の耐圧強度が低下してしまう虞がある。
【0005】
本発明は、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができるスパウト付き包装袋及び該スパウト付き包装袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明は、一側面として、スパウト付き包装袋に関する。このスパウト付き包装袋は、同一材料により構成される基材及びシーラント層を有する積層フィルムから構成される収容部と、第1方向に延在する注出筒及び注出筒の一端側に設けられる台座を有し、収容部の縁部に取り付けられるスパウトと、を備える。収容部の縁部では、シーラント層がスパウトの台座に対して溶着されると共に台座の横においてシーラント層同士が互いに溶着されている。このスパウト付き包装袋では、シーラント層が台座に溶着されている第1溶着領域の第1方向に沿った幅が、シーラント層同士が互いに溶着されている第2溶着領域の第1方向に沿った幅よりも短く、第1溶着領域と第2溶着領域との間には段差が形成されている。
【0007】
このスパウト付き包装袋では、シーラント層がスパウトの台座に溶着されている第1溶着領域とシーラント層同士を溶着する第2溶着領域との間に段差を設けている。このような段差を設けることにより、スパウトの下部分(段差)に位置するモノマテリアル構成の積層フィルムの部分に熱がかかると(製造時)、当該フィルム部分が軟化し、内側にすぼむように変形する(図5を参照)。本発明者らの検討によれば、積層フィルムがこのように凹む(すぼむ)構成となるため、包装袋に内容物を収容した際、シーラント層がスパウトに溶着されている部分(スパウトの端部)にかかるはずの内容物の圧力がかかりづらくなり、当該部分以外にその応力が分散されて、その圧力がスパウト横に位置するシーラント層同士を溶着した領域に向かうように誘導される(図7の(b)を参照)。このシーラント層同士の第2溶着領域は、シーラント層がスパウト(台座)に溶着される第1溶着領域よりもシール強度が高い。よって、このスパウト付き包装袋によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができる。
【0008】
[2]上記[1]のスパウト付き包装袋では、段差の第1方向に沿った大きさが1.5mm以上であることが好ましい。この場合、スパウトの下部分(段差)に位置する積層フィルムの部分をより確実に内側にすぼむように変形させて、圧力分散を図ることが可能となる。よって、このスパウト付き包装袋によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度をより確実に改善することができる。
【0009】
[3]上記[1]又は[2]のスパウト付き包装袋では、段差の第1方向に沿った大きさが5mm以下であることが好ましい。シーラント層がスパウトの台座に溶着される第1溶着領域とシーラント層同士が溶着される第2溶着領域の間の段差部分は、収容部に収容された内容物をスパウトの注出筒から外に注出する際の流路を構成している。上述したように、段差に対応する積層フィルムの部分では内側にすぼむ構成になっており、流路が狭められている。このため、このスパウト付き包装袋では、段差の長さを5mm以下としている。よって、このスパウト付き包装袋によれば、包装袋に収容された内容物を容易に注出することが可能となる。
【0010】
[4]上記[1]~[3]のいずれかのスパウト付き包装袋では、段差の第1方向に沿った大きさは、台座の第1方向に沿った長さに対して0.15~0.6であってもよい。この場合、段差の大きさが台座の長さに対して0.15以上であることにより、上記同様に、スパウトの下部分(段差)に位置する積層フィルムの部分を内側にすぼむように変形させて圧力分散を図り、これにより、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度をより確実に改善することができる。また、段差の大きさが台座の長さに対して0.6以下であることにより、上記同様に、流路を長くし過ぎないようにして、包装袋に収容された内容物を容易に注出することが可能となる。
【0011】
[5]上記[1]~[4]のいずれかのスパウト付き包装袋では、段差の第1方向に沿った大きさは、台座の第1方向に交差する第2方向に沿った横幅に対して0.1~0.5の大きさであってもよい。この場合、段差の大きさが台座の横幅に対して0.1以上であることにより、上記同様に、スパウトの下部分(段差)に位置する積層フィルムの部分を内側にすぼむように変形させて圧力分散を図り、これにより、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度をより確実に改善することができる。また、段差の大きさが台座の横幅に対して0.5以下であることにより、上記同様に、流路を長くし過ぎないようにして、包装袋に収容された内容物を容易に注出することが可能となる。
【0012】
[6]上記[1]~[5]のいずれかのスパウト付き包装袋では、基材及びシーラント層を構成する同一材料は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であることが好ましい。このような材料を用いることにより、溶着する際の軟化を促しやすくなり、スパウトの下部分(段差)に位置する積層フィルムの部分に熱をかけた際に当該フィルムの部分をより確実に内側にすぼむように変形させることができる。これにより、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができる。
【0013】
[7]上記[1]~[6]のいずれかのスパウト付き包装袋では、基材及びシーラント層を構成する同一材料がポリエチレン樹脂であり、積層フィルムの全体に占めるポリエチレン樹脂の含有量が90質量%以上であってもよい。この場合、溶着する際の軟化を更に促しやすくなり、スパウトの下部分(段差)に位置する積層フィルムの部分に熱をかけた際に当該フィルムの部分をより確実に内側にすぼむように変形させることができる。これにより、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができる。また、この場合、リサイクル性を高めることもできる。
【0014】
[8]上記[1]~[7]のいずれかのスパウト付き包装袋では、収容部は、第1溶着領域と第2溶着領域との間の段差において、対向するシーラント層同士が内側に凹むように形成されていることが好ましい。この場合、包装袋に内容物を収容して圧力をかけた場合であっても、シーラント層がスパウトに溶着されている第1領域(スパウトの端部)に圧力がかかりづらくなり、シーラント層同士が溶着されている部分に圧力がかかるように分散される。よって、このスパウト付き包装袋によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができる。
【0015】
[9]本発明は、別の側面として、スパウト付き包装袋の製造方法に関する。このスパウト付き包装袋の製造方法は、同一材料により構成される基材及びシーラント層を有する積層フィルムを準備する工程と、注出筒及び注出筒の一端側に設けられる台座を有するスパウトを準備する工程と、積層フィルムのシーラント層をスパウトの台座に溶着させると共に、台座の横においてシーラント層同士を溶着させる工程と、を備えている。溶着させる工程では、シーラント層が台座に溶着される第1溶着領域の幅が、シーラント層同士が互いに溶着される第2溶着領域の幅よりも短く、且つ、第1溶着領域と第2溶着領域との間に段差が形成されるように、溶着を行う。
【0016】
このスパウト付き包装袋の製造方法では、溶着させる工程において、シーラント層が台座に溶着される第1溶着領域の幅が、シーラント層同士が互いに溶着される第2溶着領域の幅よりも短く、且つ、第1溶着領域と第2溶着領域との間に段差が形成されるように、溶着を行っている。このように段差を設けることにより、スパウトの下部分(段差)に位置するモノマテリアル構成の積層フィルムの部分に熱がかかると、当該フィルムの部分が軟化し、内側にすぼむように変形する。このようにフィルムが凹む(すぼむ)構成となるため、包装袋に内容物を収容して圧力をかけた場合であっても、シーラント層がスパウトに溶着されている第1溶着領域(スパウトの端部)に圧力がかかりづらくなり、シーラント層同士が溶着されている第2溶着領域に圧力が向かうようにしている。よって、このスパウト付き包装袋の製造方法によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善した包装袋を得ることができる。また、モノマテリアル構成の積層フィルムで従来構成のように段差を設けないスパウト付きの包装袋を製造しようとすると、シール強度や耐圧強度を所定値以上とするための製造条件(シール温度の条件範囲)が極めて狭いものとなることが本発明者らの検討により分かってきている(後述する比較例を参照)。このため、従来の構成での製造方法では、生産性が低下してしまう。しかしながら、この製造方法によれば、シール強度や耐圧強度を所定値以上とするための製造条件の範囲を広く取ることができるため、生産性を向上して、良品率を上げることも可能となる。
【0017】
[10]上記[9]のスパウト付き包装袋の製造方法において、段差の幅が1.5mm~5mmであることが好ましい。段差の幅が1.5mm以上であることにより、スパウトの下部分(段差)に位置する積層フィルムの部分をより確実に内側にすぼむように変形させることができる。これにより、このスパウト付き包装袋によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度をより確実に改善することができる。一方、段差の幅が5mm以下であることにより、上述したように、狭い流路の長さを制限して、包装袋に収容された内容物を容易に注出することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度が改善されたスパウト付き包装袋、及び、スパウト付き包装袋の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、一実施形態に係るスパウト付き包装袋を示す正面図である。
図2図2は、図1に示すスパウト付き包装袋を構成する積層フィルムの断面を示す断面図である。
図3図3の(a)は、図1に示すスパウト付き包装袋に用いられるスパウトを示す正面図であり、図3の(b)はスパウトを下方(台座側)から見た断面図である。
図4図4は、図1に示すスパウト付き包装袋におけるスパウトの溶着部付近を拡大して示す正面図である。
図5図5は、図4に示すスパウトの溶着部付近の断面を示す断面図である。
図6図6の(a)は、比較例に係るスパウト付き包装袋におけるスパウトの溶着部付近を拡大して示す正面図であり、図6の(b)は、図6の(a)の断面図である。
図7図7の(a)は、比較例に係るスパウト付き包装袋に内容物(液体)を充填した場合にかかる圧力を説明するための図であり、図7の(b)は、本実施形態に係るスパウト付き包装袋に内容物(液体)を充填した場合にかかる圧力を説明するための図である。
図8図8は、シール強度試験に用いる試験片の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係るスパウト付き包装袋について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、一実施形態に係るスパウト付き包装袋を示す平面図である。図1に示すように、スパウト付き包装袋1は、モノマテリアル構成の積層フィルムから構成される収容部10と、収容部10の上端部11(縁部)に取り付けられるスパウト20とを備えている。収容部10は、スパウト付き包装袋1の袋部分を構成しており、積層フィルム16のシーラント層18(図2を参照)同士が溶着(シール)されることで形成される上端部11、下端部12、側部13,14によって内容物の収容領域15が囲まれるように構成されている。収容部10の収容領域15内には、例えば、液体洗剤やシャンプー等が収容される。収容部10に収容された内容物は、スパウト20から外に注出可能となっている。なお、このようなスパウト付き包装袋は、いわゆるスタンディングパウチであってもよい。
【0022】
図2は、スパウト付き包装袋1の収容部10を構成する積層フィルムの断面を示す図である。図2に示すように、収容部10を構成する積層フィルム16は、モノマテリアル構成の積層フィルムであり、同一材料により構成される基材17及びシーラント層18を有している。基材17及びシーラント層18を構成する同一材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂を用いることができる。また、積層フィルム16から収容部10を形成するには、このような積層フィルム16を複数枚準備して、それぞれのシーラント層18が内側になるようにして上端部11、下端部12、側部13,14の溶着を行い、図1に示すような袋形状とする。なお、ここでいう「同一材料」とは、完全に同一の材料だけを意味するものではなく、主構成材料が同じものも含む。
【0023】
[基材]
基材17は、例えば、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂から構成されており、未延伸のポリエチレン樹脂フィルムから構成されていることが好ましい。基材17が未延伸であることで、樹脂の配向性がほとんどなく、引っ張りやせん断のような外部応力に対して伸びやすく破断しにくい。基材17は、延伸のポリエチレン樹脂フィルムであってもよい。基材17の厚さは、例えば、5~800μmであり、5~500μm又は10~50μmであってよい。基材17は、シーラント層18よりも20℃以上高い融点を有し、好ましくは25℃以上高い融点を有してもよい。両者の融点に差があることで、ヒートシール工程において、基材17の溶融を抑制できる。基材17とシーラント層18のシール立ち上がり温度の差は、好ましくは25℃以上であり、より好ましくは30℃以上である。シール立ち上がり温度は、シール強度が発現する温度を意味する。ポリエチレン樹脂の融点は示差走査熱量計(DSC)を使用して測定することができる。
【0024】
基材17の融点は、例えば100~170℃の範囲内であり、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは125℃以上である。基材17を構成するポリエチレンとして、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点から、HDPE及びMDPEで密度が0.925g/cm以上のものを使用することが好ましい。特に、密度が0.93~0.98g/cmの範囲の高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0025】
基材17を構成するポリエチレン樹脂は、石油由来のものに限定されず、その一部又は全部が生物由来の樹脂材料(例えば、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレン)であってもよい。バイオマス由来のポリエチレンの製造方法は、例えば、特表2010-511634号公報に開示されている。基材17は、市販のバイオマスポリエチレン(ブラスケム社製グリーンPE等)を含んでもよいし、使用済みのポリエチレン製品やポリエチレン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリエチレンを含んでもよい。
【0026】
基材17は、ポリエチレン樹脂以外の成分を含んでいてもよい。かかる成分としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、生分解性の樹脂材料(例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉等)などが挙げられる。基材17は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の添加剤を含んでもよい。基材17におけるポリエチレン樹脂以外の成分の量は、基材17の全量を基準として、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0027】
[シーラント層]
シーラント層18は、基材17と同様に、ポリエチレン樹脂フィルムで構成されている。即ち、シーラント層18は、基材17と同一材料により構成されている。なお、ここでいう同一材料は、主となる樹脂(例えばポリエチレン樹脂)が同じものであれば足り、主となる樹脂以外に含まれる成分が異なる場合も含む趣旨である。シーラント層18の厚さは、例えば、40~150μmであり、20~250μmであってもよい。シーラント層18を構成するポリエチレン樹脂フィルムは、機械方向(MD方向:Machine Direction)に易引き裂き性を付与されたフィルムである。
【0028】
このような易引き裂き性を有するシーラント層18を構成するポリエチレン樹脂は、例えば、C4-LLDPEであることが好ましい。C4-LLDPEは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなるLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)の1種であり、エチレン由来のLLDPEの主鎖に、1-ブテン由来の炭素数が4個の側鎖を有する分子構造である。C4-LLDPEは、C6-LLDPEやC8-LLDPEよりも、側鎖が短く、メルトフローレート(MFR)が低いことから、相対的に低い引張衝撃強さや引張強度や引張弾性率を有している。このため、シーラント層18を構成するポリエチレン樹脂がC4-LLDPEであることにより、シーラント層18の機械方向に易引き裂き性を容易に付与することができる。
【0029】
シーラント層18のメルトフローレート(MFR)は5g/10分未満であり、好ましくは0.5g/10分以上5g/10分未満であり、より好ましくは2g/10分以上5g/10分未満である。メルトフローレートが5g/10分未満であることで溶融張力が高くなりインフレーション法などによる加工時のシワを抑制しやすいという効果が奏される。すなわち、シーラント層18を溶融するために加熱されたときにやや流動しにくいことで、平滑で透明性の良いフィルムとすることができる。
【0030】
シーラント層18の融点は、例えば100~170℃の範囲内であり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは95~110℃である。シーラント層18は、密度0.925g/cm未満(より好ましくは0.900~0.920g/cm)のポリエチレン樹脂で構成されていることが好ましい。一例としては、上述した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができ、シーラント層18の機械方向に易引き裂き性を付与できるのであれば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)を用いてもよく、LLDPEとVLDPEをブレンドしたものを用いてもよい。
【0031】
シーラント層18を構成するポリエチレンの一部又は全部として、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレンを用いてもよい。このようなシーラントフィルムは、例えば、特開2013-177531号公報に開示されている。シーラント層18は、使用済みのポリエチレン製品やポリエチレン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリエチレンを含んでもよい。
【0032】
(その他の層)
積層フィルム16は、基材17とシーラント層18との間に接着層(不図示)を備えていてもよい。接着層を形成する接着剤は、接着方法に合わせて選定することができるが、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤などを用いることができる。このような接着層を設けることで、基材17とシーラント層18の層間密着性を高くしてデラミネーションしにくくなり、パウチとしての耐圧性や耐衝撃性を保持することができる。
【0033】
接着層は、塩素を含まないことが好ましい。接着層が塩素を含まないことで、接着剤やリサイクル後の再生樹脂が着色したり、加熱処理によって臭いが発生したりすることを防ぐことができる。接着層は、バイオマス材料を使用すると環境配慮の観点から好ましい。また、ポリエチレンにはバイオマスポリエチレンを使用することができる。環境配慮の観点から、接着剤には溶剤を含まないものが好ましい。
【0034】
積層フィルム16は、例えば、水蒸気や酸素に対するガスバリア性向上の観点から、ガスバリア層を更に含んでもよい。ガスバリア層は、基材17とシーラント層18との間に設けられてもよく、基材17のシーラント層18とは反対側の面に設けられてもよい。積層体の水蒸気透過量は、例えば、5g/m・dayであり、1g/m・day以下又は0.5g/m・day以下であってもよい。積層フィルム16の酸素透過量は、例えば、1cc/m・atm・dayであり、0.5g/m・atm・day以下又は0.2g/m・atm・day以下であってもよい。積層フィルム16がガスバリア層を含むことで、内容物を水蒸気や酸素による劣化から保護し、長期的に品質を保持しやすくなる。
【0035】
ガスバリア層の一例として、無機酸化物の蒸着層が挙げられる。無機酸化物の蒸着層を用いることにより、積層体のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。無機酸化物の蒸着層の厚さは、例えば5nm以上100nm以下とすることができ、10nm以上50nm以下であってよい。厚さが5nm以上であることでバリア性が良好に発揮されやすく、厚さが100nm以下であることで、積層体の可撓性が維持されやすい。蒸着層は、例えば物理気相成長法、化学気相成長法等によって形成することができる。
【0036】
積層フィルム16は、無機酸化物の蒸着層に代えて、あるいは加えて、金属層(金属箔)を含んでもよい。金属層としては、アルミニウム、ステンレス鋼等からなる各種金属箔を使用することができ、これらのうち、防湿性、延展性等の加工性、コスト等の面から、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。金属層を設ける場合、その厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性等の点から、7~50μmであってよく、9~15μmであってよい。
【0037】
積層フィルム16は、基材17とシーラント層18との間にアンカーコート層を備えていてもよい。アンカーコート層は、積層フィルム16のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層でよく、アンカーコート剤を用いて形成することができる。アンカーコート剤としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0038】
積層フィルム16は、例えば、印刷層を更に含んでもよい。印刷層は、基材17とシーラント層18との間に設けられてもよく、基材17のシーラント層18とは反対側の面に設けられてもよい。印刷層を設ける場合、印刷インキには塩素を含まないものを用いることが、印刷層が再溶融時に着色したり、臭いが発生したりすることを防ぐ観点から好ましい。また、印刷インキに含まれる化合物にはバイオマス材料を使用することが、環境配慮の観点から好ましい。
【0039】
次に、図1及び図3を参照して、積層フィルム16から構成される収容部10に上端部11に取り付けられるスパウト20について説明する。図3の(a)は、スパウト付き包装袋1に用いられるスパウト20を示す正面図であり、図3の(b)はスパウト20を下方(台座側)から見た図である。図1及び図3に示すように、スパウト20は、一方向(第1方向、図1及び図3の(a)の上下方向)に延在する注出筒21と、注出筒21の一端(下端)側に設けられる台座22と、注出筒21と台座22との間に設けられるフランジ23と、注出筒21の外側に設けられた雄ネジに螺合して注出筒21の他端(上端)を閉じるキャップ24とを有している。注出筒21の上端から台座22の下端までの内側には、その中央を貫通する注出路25が設けられている。これにより、スパウト付き包装袋1に充填された内容物を袋の外側に注出することができる。なお、スパウト20は、上述した積層フィルム16と同様に、例えば、ポリエチレン樹脂で形成することができる。
【0040】
台座22は、図3の(b)に示すように、例えば、三角形状の部分23aと円弧形状の部分23bとを有しており、その内側に上述した注出路25が形成されている。台座22は、スパウト20を収容部10に取り付ける際、積層フィルム16のシーラント層18が溶着される部分となっており、台座22の両横では、シーラント層18同士が溶着される。なお、台座22においてシーラント層18が溶着される表面側には、シーラント層18の溶着をサポートする複数のリブが設けられていてもよい。このようなリブは、例えば、横方向に延在するものであってもよい。
【0041】
ここで、図4及び図5を参照して、スパウト20を積層フィルム16に溶着した領域の構成について詳細に説明する。図4は、スパウト付き包装袋1におけるスパウト20の溶着部付近を拡大して示す正面図である。図4に示すように、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、収容部10の上端部11において、積層フィルム16のシーラント層18がスパウト20の台座22に対して溶着されると共に台座22の横(両縁)においてシーラント層18同士が互いに溶着されている。即ち、スパウト20の溶着では、スパウト20の表面側と裏面側とのそれぞれにおいてシーラント層18が溶着され、スパウト20の両横では、これら対向するシーラント層18同士が直接溶着される。
【0042】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、シーラント層18が台座22に溶着されている第1溶着領域R1の上下方向に沿った幅D1が、シーラント層18同士が互いに溶着されている第2溶着領域R2の上下方向に沿った幅D2よりも短くなっており、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間に段差Sが形成されている。この段差Sは、例えば、上下方向に沿った大きさが1.5mm以上5mm以下の小さい段差となっている。また、段差Sの上下方向に沿った大きさは、台座の大きさに対する比としても規定することができ、台座22の上下方向に沿った長さ(D1に相当)に対して0.15~0.6であってもよく、台座22の上下方向に直交(交差)する横方向(第2方向)に沿った横幅に対して0.1~0.5であってもよい。台座22の上下方向に沿った長さは、例えば7~12mmであり、台座22の横方向に沿った横幅は、例えば15~45mmである。このように段差Sは、台座22等の大きさや長さに対して微小な段差となっている。なお、図4では、第1溶着領域R1の上端がスパウト20のフランジ23の下端に沿っているが、第1溶着領域R1の上端がフランジ23の下端から若干離れるように積層フィルム16がスパウト20に溶着されていてもよい。
【0043】
次に、図5を参照して、このような微小な大きさの段差S付近における包装袋の断面形状について説明する。図5は、図4に示すスパウトの溶着部付近の断面を示す断面図である。図5に示すように、積層フィルム16は、スパウト20(台座22)の下部に位置する段差Sにおいて、対向する積層フィルム16(シーラント層18)同士が内側に凹んで凹み領域R3を形成するようになっている。これは、スパウト20に積層フィルム16を溶着する際、スパウト20の両端における積層フィルム16には引っ張りのテンションが付与された状態で加熱されてフィルムが軟化し、加熱の終了後に、そのテンションによって上下側面共にフィルムが内側に入り込む(シュリンクする)ことによって引き起こされるものである。このような凹み領域R3により、スパウト20(台座22)と積層フィルム16のシーラント層18とが溶着された領域が保護されることになる。なお、段差Sにおける積層フィルム16は互いに溶着はされていない。
【0044】
ここで、図5図7を参照して、本実施形態のように第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間に段差Sを設けた場合と、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間に段差を設けなかった場合(比較例)とでの断面形状の違いとその形状の違いに伴う作用効果について説明する。図6の(a)は、従来例に係るスパウト付き包装袋におけるスパウトの溶着部付近を拡大して示す正面図であり、図6の(b)は、図6の(a)の断面図である。図7の(a)は、従来例に係るスパウト付き包装袋に内容物(液体)を充填した場合にかかる圧力を説明するための図であり、図7の(b)は、本実施形態に係るスパウト付き包装袋に内容物(液体)を充填した場合にかかる圧力を説明するための図である。
【0045】
図6に示すように、従来例に係るスパウト付き包装袋101では、積層フィルム16のシーラント層18がスパウト20(台座)に溶着される第1溶着領域R11と、積層フィルム16のシーラント層18同士が溶着される第2溶着領域R12との間に段差が設けられないように、溶着が行われている。即ち、スパウト20の第1溶着領域R11の溶着幅と、シーラント層同士が溶着される第2溶着領域R2の溶着幅とが略同じである。この場合、対向する積層フィルム16(シーラント層18)同士は引っ張られることがないため、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1のように内側に凹む(すぼむ)ような形状とはならない。このような従来例に係るスパウト付き包装袋101では、図7の(a)に示すように、スパウト付き包装袋101に内容物を収容して圧力をかけた場合、第1溶着領域R11及び第2溶着領域R12のいずれにも均等に内容物からの圧力がかかるようになる。このような従来例に係るスパウト付き包装袋101では、モノマテリアル構成の積層フィルム16を用いていることから、溶着がしづらいスパウト付近のシール強度を高めることが難しく(製造条件が厳しい)、シール強度が低下しがちであり、結果として、耐圧強度が低下することがある。
【0046】
一方、図5に示すように、本実施形態では、スパウト20の溶着領域の付近において、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間に段差Dを設けているため、スパウト20の下部分(段差D)に位置する積層フィルム16の部分に熱がかかると、モノマテリアル構成の積層フィルム16の部分が軟化し、内側にすぼむように変形する。このように積層フィルム16が凹む(すぼむ)構成となるため、包装袋に内容物を収容して圧力をかけた場合であっても、図7の(b)に示すように、シーラント層18がスパウト20の溶着されている部分(スパウトの端部、第1溶着領域R1)に圧力がかかりづらくなり、シーラント層18同士が溶着されている部分(第2溶着領域R2)に圧力がかかるようになる。つまり、積層フィルム16が内側に凹む構成となることにより、内容物(液体)の圧力が第2溶着領域R2の方に誘導されることになる。よって、このスパウト付き包装袋1によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、耐圧強度を改善することができる。
【0047】
次に、このようなスパウト付き包装袋1の製造方法について説明する。この製造方法では、まず、同一材料により構成される基材17及びシーラント層18を有する積層フィルム16を複数枚準備する。各積層フィルム16は、スパウト付き包装袋1の収容部10の外形形状に対応する形状(例えば矩形形状)の部分を含んでいる。また、注出筒21及び注出筒21の一端側に設けられる台座22を有するスパウト20を準備する。そして、一方の積層フィルム16の上端部11に対応するシーラント層18の上にスパウト20の台座22を配置すると共に、他方の積層フィルム16の上端部11に対応するシーラント層18をスパウト20の台座22の上方から配置する。これにより、スパウト20が積層フィルム16に挟み込まれた配置となる。その後、上端部11に対応する部分をヒートシールすることによって、積層フィルム16のシーラント層18をスパウト20の台座22に溶着させると共に、台座22の横においてシーラント層18同士を溶着させる。この際、下端部12や側部13,14と同時に溶着してもよいし、別々のタイミングで溶着してもよい。なお、スパウト付き包装袋1がスタンディングパウチである場合、一対の積層フィルム16に加えて、2つ折りにした底部フィルム(層構成は積層フィルム16と同様)を下端側に配置して、溶着を行ってもよい。ヒートシールの温度は、シーラント層18の融点以上の温度であり、例えば、120~170℃の範囲である。また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1の製造方法では、溶着させる際に、シーラント層18が台座22に溶着される第1溶着領域R1の幅D1が、シーラント層18同士が互いに溶着される第2溶着領域R2の幅D2よりも短く、且つ、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間に段差Sが形成されるように、溶着を行う。
【0048】
以上、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、シーラント層18がスパウト20の台座22に溶着されている第1溶着領域R1とシーラント層18同士を溶着する第2溶着領域R2との間に段差Sを設けている。このような段差Sを設けることにより、スパウト20の下部分(段差S)に位置する積層フィルム16の部分に熱がかかると(製造時)、当該フィルム部分が軟化し、内側にすぼむように変形する(図5を参照)。そして、積層フィルム16がこのように凹む構成となるため、包装袋に内容物を収容した際、シーラント層18がスパウト20に溶着されている部分(スパウトの端部)にかかるはずの内容物の圧力がかかりづらくなり、当該部分以外にその応力が分散されて、その圧力がスパウト横に位置するシーラント層18同士を溶着した領域に向かうように誘導される(図7の(b)を参照)。このシーラント層18同士の第2溶着領域R2は、シーラント層18がスパウト20(台座22)に溶着される第1溶着領域R1よりもシール強度が高い。よって、このスパウト付き包装袋1によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができる。
【0049】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、段差Sの上下方向に沿った大きさが1.5mm以上であってもよい。この場合、スパウト20の下部分(段差S)に位置する積層フィルム16の部分をより確実に内側にすぼむように変形させて、圧力分散を図ることが可能となる。よって、このスパウト付き包装袋1によれば、モノマテリアル構成の積層フィルム16を用いた場合であっても耐圧強度をより確実に改善することができる。
【0050】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、段差Sの上下方向に沿った大きさが5mm以下であってもよい。シーラント層18がスパウト20の台座22に溶着される第1溶着領域R1とシーラント層18同士が溶着される第2溶着領域R2の間の段差Sの部分は、収容部10に収容された内容物をスパウト20の注出筒21から外に注出する際の流路を構成している。上述したように、段差Sに対応する積層フィルム16の部分では内側にすぼむ構成になっており、流路が狭められている。このため、このスパウト付き包装袋1では、段差Sの長さを5mm以下としている。よって、このスパウト付き包装袋1によれば、包装袋に収容された内容物を容易に注出することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、段差Sの上下方向に沿った大きさは、台座22の上下方向に沿った長さに対して0.15~0.6であってもよい。この場合、段差Sの大きさが台座22の長さに対して0.15以上であることにより、上記同様に、スパウト20の下部分(段差S)に位置する積層フィルム16の部分を内側にすぼむように変形させて圧力分散を図り、これにより、モノマテリアル構成の積層フィルム16を用いた場合であっても耐圧強度をより確実に改善することができる。また、段差Sの大きさが台座22の長さに対して0.6以下であることにより、上記同様に、流路を長くし過ぎないようにして、包装袋に収容された内容物を容易に注出することが可能となる。
【0052】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、段差Sの上下方向に沿った大きさは、台座22の上下方向に直交する横方向に沿った横幅に対して0.1~0.5の大きさであってもよい。この場合、段差Sの大きさが台座22の横幅に対して0.1以上であることにより、上記同様に、スパウト20の下部分(段差S)に位置する積層フィルム16の部分を内側にすぼむように変形させて圧力分散を図り、これにより、モノマテリアル構成の積層フィルム16を用いた場合であっても耐圧強度をより確実に改善することができる。また、段差Sの大きさが台座22の横幅に対して0.5以下であることにより、上記同様に、流路を長くし過ぎないようにして、包装袋に収容された内容物を容易に注出することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、基材17及びシーラント層18を構成する同一材料は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であることが好ましい。このような材料を用いることにより、溶着する際の軟化を促しやすくなり、スパウト20の下部分(段差S)に位置する積層フィルム16の部分に熱をかけた際に当該フィルムの部分をより確実に内側にすぼむように変形させることができる。これにより、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができる。
【0054】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、基材17及びシーラント層18を構成する同一材料がポリエチレン樹脂であり、積層フィルム16の全体に占めるポリエチレン樹脂の含有量が90質量%以上であってもよい。この場合、溶着する際の軟化を更に促しやすくなり、スパウト20の下部分(段差S)に位置する積層フィルム16の部分に熱をかけた際に当該フィルムの部分をより確実に内側にすぼむように変形させることができる。これにより、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1では、収容部10は、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間の段差Sにおいて、対向するシーラント層18同士が内側に凹むように形成されている。この場合、包装袋に内容物を収容して圧力をかけた場合であっても、シーラント層18がスパウト20に溶着されている第1溶着領域R1(スパウト20の端部)に圧力がかかりづらくなり、シーラント層18同士が溶着されている部分に圧力がかかるように分散される。よって、このスパウト付き包装袋1によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善することができる。
【0056】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1の製造方法では、溶着させる工程において、シーラント層18が台座22に溶着される第1溶着領域R1の幅D1が、シーラント層18同士が互いに溶着される第2溶着領域R2の幅D2よりも短く、且つ、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間に段差Sが形成されるように、溶着を行っている。このように段差Sを設けることにより、スパウト20の下部分(段差S)に位置する積層フィルム16の部分に熱がかかると、当該フィルムの部分が軟化し、内側にすぼむように変形する。このようにフィルムが凹む構成となるため、包装袋に内容物を収容して圧力をかけた場合であっても、シーラント層18がスパウト20に溶着されている第1溶着領域R1(スパウト20の端部)に圧力がかかりづらくなり、シーラント層18同士が溶着されている第2溶着領域R2に圧力がかかるようになる。よって、このスパウト付き包装袋の製造方法によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても耐圧強度を改善した包装袋を得ることができる。
【0057】
また、モノマテリアル構成の積層フィルムで従来構成のように段差を設けないスパウト付きの包装袋を製造しようとすると、シール強度や耐圧強度を所定値以上とするための製造条件(シール温度の条件範囲)が極めて狭い(後述する比較例も参照)。このため、従来の構成での製造方法では、生産性が低下してしまう。しかしながら、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1の製造方法によれば、耐圧強度を向上しやすい袋構成であることから、シール強度や耐圧強度を所定値以上とするための製造条件の範囲を広く取ることができるため、生産性を向上して、良品率を上げることも可能となる。
【0058】
また、本実施形態に係るスパウト付き包装袋の製造方法において、段差Sの幅が1.5mm~5mmであることが好ましい。段差Sの幅が1.5mm以上であることにより、スパウト20の下部分(段差S)に位置する積層フィルム16の部分をより確実に内側にすぼむように変形させることができる。これにより、このスパウト付き包装袋1によれば、モノマテリアル構成の積層フィルム16を用いた場合であっても耐圧強度をより確実に改善することができる。一方、段差Sの幅が5mm以下であることにより、上述したように、狭い流路の長さを制限して、包装袋に収容された内容物を容易に注出することが可能となる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、スパウト20を収容部10の上端部11の中央に設ける構成であったが、このような構成に限定されない。例えば、スパウト20を収容部10の上端部11と側部13との角部に設けてもよい。このような構成であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【実施例0060】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
実施例1として、図1に示す構成のスパウト付き包装袋1と、スパウト付き包装袋1の溶着部付近に対応する試験片(図8を参照、測定片)とを作製した。このスパウト付き包装袋1及び試験片では、段差Sの大きさは3mmであった。また、上端部11の第1溶着領域R1の溶着幅は8mmであり、第2溶着領域R2の溶着幅は12mmであった。第1溶着領域R1は、スパウト20のフランジ23から若干離れるように形成されていた。なお、スパウト20の台座22の横幅は18mmであり、試験片における溶着された部分の横幅は15mmであった。このような構成の包装袋及び試験片を、基準となるシール温度と基準となるシール温度から上下にずらした温度(±10℃、±20℃、±30℃)とで積層フィルム16を溶着して作製した。作製した試験片を用いてシール強度を評価した。また、作製した包装袋を用いて耐圧強度を評価した。シール強度と耐圧強度とは、以下の方法により評価した。
【0062】
[シール強度]
サンプル幅として15mmほどの溶着領域を設けた試験片(図8を参照)を準備し、引っ張り速度300mm/分でT型剥離を行った。このT型剥離試験は、JIS K7127に準拠した方法で行った。この試験では、強度が10N/15mm以上且つ剥離界面がフィルム切れの場合にOK品として、評価Aとした。一方、強度が10N/15mm未満、又は、剥離界面がフィルムとスパウトの面剥離の場合にNG品として、評価Bとした。
【0063】
[耐圧試験]
耐圧試験では、準備したスパウト付き包装袋1内に50℃の熱水を注入し、80kgfの内圧を3分間付与した。この試験では、漏れが生じなかった場合にOK品として、評価Aとした。一方、漏れが生じた場合にNG品として、評価Bとした。
【0064】
以下の表1に、基準となるシール温度(以下の0(基準温度))と、基準となるシール温度から上下にずらした温度とでヒートシールした場合のシール強度と耐圧強度との試験結果(実施例1)を示す。
【表1】
【0065】
<実施例2>
実施例2では、段差Sの大きさを2mmとした以外は、実施例1と同様にして、スパウト付き包装袋1及び対応する試験片(図8参照)を作製して、シール強度と耐圧強度を評価した。なお、実施例2では、第1溶着領域R1の溶着幅は8mmであった。
【0066】
以下の表2に、基準となるシール温度(以下の0(基準温度))と、基準となるシール温度から上下にずらした温度とでヒートシールした場合のシール強度と耐圧強度との試験結果(実施例2)を示す。
【表2】
【0067】
<比較例>
比較例では、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間に段差Sを設けずにスパウト付き包装袋101(図6を参照)及びスパウト付き包装袋101に対応する試験片を作製した。このスパウト付き包装袋101及び試験片では、段差Sはなく、上端部11の第1溶着領域R11の溶着幅は8mmであり、第2溶着領域R12の溶着幅は8mmであった。なお、スパウト20の台座22の横幅は18mmであり、試験片における溶着された部分の横幅は15mmであった。この比較例では、作製した包装袋及び試験片について、実施例1及び2と同様にして、シール強度と耐圧強度を評価した。
【0068】
以下の表3に、基準となるシール温度(以下の0(基準温度))と、基準となるシール温度から上下にずらした温度とでヒートシールした場合のシール強度と耐圧強度との試験結果(比較例)を示す。
【表3】
【0069】
実施例1、実施例2及び比較例からわかるように、第1溶着領域R1と第2溶着領域R2との間に段差Sを設けることにより、スパウト付き包装袋1のシール強度や耐圧強度を高めやすいことが確認できた。また、比較例のように段差を設けずにスパウトを溶着した場合、シール強度や耐圧強度を所定値以上にするには、シール温度の条件が厳しく、モノマテリアル構成の積層フィルムでスパウト付き包装袋を作製した場合、良品率が低下してしまい、製造効率が悪化することが確認された。これに対し、本実施形態に係るスパウト付き包装袋1のように段差Sを設ける構成を採用することにより、包装袋を作製する場合に許容されるシール温度の条件の幅が広くなることがわかった。このため、この構成によれば、良品率を向上させて、製造効率を上げることができることが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
1…スパウト付き包装袋、10…収容部、11…上端部(縁部)、16…積層フィルム、17…基材、18…シーラント層、20…スパウト、21…注出筒、22…台座、D1,D2…幅、R1…第1溶着領域、R2…第2溶着領域、R3…凹み領域、S…段差。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8