(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109432
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】注出口付き包装袋の製造方法、及び、注出口付き包装袋
(51)【国際特許分類】
B31B 70/81 20170101AFI20240806BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20240806BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20240806BHJP
B31B 150/20 20170101ALN20240806BHJP
B31B 160/20 20170101ALN20240806BHJP
【FI】
B31B70/81
B65D33/00 C
B65D33/38
B31B150:20
B31B160:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014226
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】大久保 陽祐
【テーマコード(参考)】
3E064
3E075
【Fターム(参考)】
3E064AB23
3E064BA17
3E064BA26
3E064BA30
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA30
3E064FA04
3E064GA04
3E064HM01
3E064HN05
3E064HP01
3E064HP02
3E064HS05
3E075AA07
3E075BA47
3E075BB14
3E075CA02
3E075DD12
3E075DD42
3E075DD43
3E075DE14
3E075DE23
3E075GA05
(57)【要約】
【課題】モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても注出口の開封を確実に行える包装袋を効率的に作製できる製造方法を提供する。
【解決手段】注出口付き包装袋の製造方法は、同一材料により構成される基材及びシーラント層をそれぞれが有する第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20を準備する工程と、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20において注出口31を含む袋形状に対応する周縁部2~5をヒートシールする工程と、注出口31を横断するようにハーフカット線33を第1レーザにより形成する工程と、注出口31の開封起点となるノッチ34を第2レーザにより形成する工程と、を備える。ハーフカット線33を形成する際のレーザ加工の基準とノッチ34を形成する際のレーザ加工の基準とが共通し、ハーフカット線33及び前記ノッチ34は、ハーフカット線33とノッチ34とが一致するように形成される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一材料により構成される基材及びシーラント層をそれぞれが有する第1積層フィルム及び第2積層フィルムを準備する工程と、
前記第1積層フィルムの前記シーラント層と前記第2積層フィルムの前記シーラント層とが対向するように前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムを重ねると共に、前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムにおいて注出口を含む袋形状に対応する周縁部をヒートシールする工程と、
前記周縁部がヒートシールされた前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムの少なくとも一方の積層フィルムに、前記注出口を横断するようにハーフカット線を第1レーザにより形成する工程と、
前記注出口の周りのヒートシールされた部分に、前記注出口の開封起点となるノッチを第2レーザにより形成する工程と、を備え、
前記ハーフカット線を形成する際のレーザ加工の基準と前記ノッチを形成する際のレーザ加工の基準とが共通しており、前記ハーフカット線及び前記ノッチは、前記ハーフカット線と前記ノッチとが一致するように形成される、注出口付き包装袋の製造方法。
【請求項2】
前記第2レーザのスキャン速度は、前記第1レーザのスキャン速度よりも遅い、
請求項1に記載の注出口付き包装袋の製造方法。
【請求項3】
前記第2レーザの出力は、前記第1レーザの出力よりも高い、
請求項1に記載の注出口付き包装袋の製造方法。
【請求項4】
前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムの少なくとも一方において、前記注出口に対応する領域にエンボスを形成する工程を更に備え、
前記ハーフカット線を形成する工程では、前記エンボスと交差するように前記ハーフカット線を形成する、
請求項1に記載の注出口付き包装袋の製造方法。
【請求項5】
前記エンボスを形成する工程では、前記エンボスによって前記第1積層フィルムと前記第2積層フィルムとが離れている最大距離が1.5mm以上となるように、前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムの少なくとも一方に前記エンボスを形成する、
請求項4に記載の注出口付き包装袋の製造方法。
【請求項6】
前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムそれぞれの前記基材及び前記シーラント層を構成する同一材料は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂である、
請求項1~5の何れか一項に記載の注出口付き包装袋の製造方法。
【請求項7】
同一材料により構成される基材及びシーラント層を有する第1積層フィルムと、
同一材料により構成される基材及びシーラント層を有する第2積層フィルムと、を備え、
前記第1積層フィルムの前記シーラント層と前記第2積層フィルムの前記シーラント層とが内側を向くように配置されると共に、注出口を含む袋形状となるように周縁部がヒートシールされており、
前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムの少なくとも一方には、前記注出口を横断するハーフカット線が設けられ、前記注出口の周りのヒートシールされた部分には、前記ハーフカット線に一致するノッチが設けられている、注出口付き包装袋。
【請求項8】
前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムの少なくとも一方には、前記注出口に対応する領域に形成されたエンボスが更に設けられており、
前記ハーフカット線は、前記エンボスと交差する、
請求項7に記載の注出口付き包装袋。
【請求項9】
前記ハーフカット線は、前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムのいずれにも一本のみ設けられており、両方の前記ハーフカット線が前記ノッチと一致する、
請求項7に記載の注出口付き包装袋。
【請求項10】
前記第1積層フィルム及び前記第2積層フィルムそれぞれの前記基材及び前記シーラント層を構成する同一材料は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂である、
請求項7~9の何れか一項に記載の注出口付き包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出口付き包装袋の製造方法、及び、注出口付き包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
詰替パウチとして、注出口をコーナ部等に設けた包装袋が知られている(例えば特許文献1を参照)。このような包装袋には、使用時に注出口を開封しやすいようにノッチ(切欠き)や多数のハーフカット線(切り取り線)が設けられている。多数のハーフカット線を設けることで、従来の包装袋では、ハーフカット線が設計位置から多少ずれて形成される場合であっても、いずれかのハーフカット線がノッチに一致するようになっていた。
【0003】
このような包装袋を構成する包装材には、ポリオレフィン等からなるシーラント層とレーザ吸収が高い材料であるPETやナイロン等からなる基材とを備えたマルチマテリアル構成の積層フィルムが用いられている。環境配慮の観点から、近年では、包装材をモノマテリアル化する取り組みが進められており、マルチマテリアル構成の積層フィルムに代えて、ポリエチレン等を主構成材料とする積層フィルムを包装材として用いることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
注出口付き包装袋にハーフカット線を設ける場合、炭酸ガスレーザ等のレーザ加工により注出口を横切るようにハーフカット線を形成する。しかしながら、モノマテリアル構成の積層フィルムで注出口付き包装袋を作製する場合、モノマテリアル構成の材料が従来のPET等に比べてレーザ吸収が少ないため、レーザのスキャン速度を遅くして吸収量を上げる必要がある。このため、従来のように多数のハーフカット線を形成しようとすると、形成時間が大幅に増加し、製造効率が悪化してしまう。一方、形成時間を短縮させるため、形成するハーフカット線の本数を減らすと、ハーフカット線とノッチとがずれた場合に開封が適切に行えないこともある。そこで、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、注出口の開封を確実に行うことができる注出口付き包装袋を効率的に作製することができる製造方法が望まれている。
【0006】
本発明は、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても注出口の開封を確実に行うことができる注出口付き包装袋を効率的に作製することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの検討によれば、従来のノッチは、ハーフカット線のレーザ加工とは別のタイミング(後の工程)で、例えば打抜き加工等により形成されることが判った。このため、レーザ加工によって形成されるハーフカット線と後の工程で形成されるノッチとの位置が微妙にずれることがあり、このような不備を解消するために多数のハーフカット線を設けるようにしていた。そこで、本発明者らは更に検討を進め、ノッチの形成においてもレーザ加工を用い、ハーフカット線のレーザ加工の基準と共通する基準をノッチの形成にも用いることで、多数のハーフカット線の形成を行わなくても注出口の開封を確実に行うことができる注出口付き包装袋の製造方法を導き出して、本発明を完成するに到った。
【0008】
[1]本発明は、一側面として、注出口付き包装袋の製造方法に関する。この製造方法は、同一材料により構成される基材及びシーラント層をそれぞれが有する第1積層フィルム及び第2積層フィルムを準備する工程と、第1積層フィルムのシーラント層と第2積層フィルムのシーラント層とが対向するように第1積層フィルム及び第2積層フィルムを重ねると共に、第1積層フィルム及び第2積層フィルムにおいて注出口を含む袋形状に対応する周縁部をヒートシールする工程と、周縁部がヒートシールされた第1積層フィルム及び第2積層フィルムの少なくとも一方の積層フィルムに、注出口を横断するようにハーフカット線を第1レーザにより形成する工程と、注出口の周りのヒートシールされた部分に、注出口の開封起点となるノッチを第2レーザにより形成する工程と、を備えている。この製造方法では、ハーフカット線を形成する際のレーザ加工の基準とノッチを形成する際のレーザ加工の基準とが共通しており、ハーフカット線及びノッチは、ハーフカット線とノッチとが一致するように形成される。
【0009】
この注出口付き包装袋の製造方法では、注出口を横断するハーフカット線及びノッチをレーザにより形成しており、ハーフカット線を形成する際のレーザ加工の基準とノッチを形成する際のレーザ加工の基準とが共通しており、ハーフカット線とノッチとが一致するように形成されている。このように、ハーフカット線を形成するレーザ加工の基準とノッチを形成するレーザ加工の基準とを共通させることにより、形成されるハーフカット線とノッチとの位置出しをより正確に行い、注出口の開封を確実に行うことが可能な包装袋とすることができる。その結果、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても注出口の開封を確実に行うことができる注出口付き包装袋を効率的に作製することが可能となる。なお、ここでいう「レーザ加工の基準が共通している」とは、それぞれの加工のタイミングが同じであり(加工対象を次の工程に送っていない)、同一の加工点を基準としている場合を意味する。また、本製造方法で用いられる第1レーザと第2レーザとは、同じレーザであってもよいし、別々のレーザであってもよい。
【0010】
[2]上記[1]の注出口付き包装袋の製造方法において、第2レーザのスキャン速度は、第1レーザのスキャン速度よりも遅くてもよい。この場合、ノッチの形成に用いるレーザの照射エネルギーを増やすことができ、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、ノッチをより確実に切り出すことが可能となる。
【0011】
[3]上記[1]又は[2]の注出口付き包装袋の製造方法において、第2レーザの出力は、第1レーザの出力よりも高くてもよい。この場合、ノッチの形成に用いるレーザの照射エネルギーを増やすことができ、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、ノッチをより確実に切り出すことが可能となる。
【0012】
[4]上記[1]から[3]のいずれかの注出口付き包装袋の製造方法は、第1積層フィルム及び第2積層フィルムの少なくとも一方において、注出口に対応する領域にエンボスを形成する工程を更に備え、ハーフカット線を形成する工程では、エンボスと交差するようにハーフカット線を形成することが好ましい。モノマテリアル構成の積層フィルムを用いる場合、ハーフカット線をレーザにて加工する際、従来よりもレーザのスキャン速度が遅くなる(又は出力を高める)ことから、より多くの熱が伝わり、注出口においてシーラント層同士に内面融着が生じてしまう虞がある。しかしながら、注出口に対応する領域に予めエンボスを形成しておくことにより、このような内面融着を防止することができる。よって、この製造方法によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、適切な注出性能を確保した注出口を有する包装袋を効率的に作製することが可能となる。
【0013】
[5]上記[4]の注出口付き包装袋の製造方法において、エンボスを形成する工程では、エンボスによって第1積層フィルムと第2積層フィルムとが離れている最大距離が1.5mm以上となるように、第1積層フィルム及び第2積層フィルムの少なくとも一方にエンボスを形成することが好ましい。この場合、注出口における内面融着をより確実に防止することができる。よって、この製造方法によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、適切な注出性能を確保した注出口を有する包装袋を効率的に提供することが可能となる。
【0014】
[6]上記[1]~[5]のいずれかの注出口付き包装袋の製造方法において、第1積層フィルム及び第2積層フィルムそれぞれの基材及びシーラント層を構成する同一材料は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であることが好ましい。これにより、リサイクル性能を向上させることができる。
【0015】
[7]本発明は、別の側面として、注出口付き包装袋に関する。この注出口付き包装袋は、同一材料により構成される基材及びシーラント層を有する第1積層フィルムと、同一材料により構成される基材及びシーラント層を有する第2積層フィルムと、を備えている。この包装袋では、第1積層フィルムのシーラント層と第2積層フィルムのシーラント層とが内側を向くように配置されると共に、注出口を含む袋形状となるように周縁部がヒートシールされている。第1積層フィルム及び第2積層フィルムの少なくとも一方には、注出口を横断するハーフカット線が設けられ、前記注出口の周りのヒートシールされた部分には、ハーフカット線に一致するノッチが設けられている。
【0016】
この注出口付き包装袋では、第1積層フィルム及び第2積層フィルムの少なくとも一方に、注出口を横断するハーフカット線が設けられ、注出口の周りのヒートシールされた部分には、ハーフカット線に一致するノッチが設けられている。この場合、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、多数のハーフカット線を設けることなく、注出口の開封を確実に行うことができる。また、ハーフカット線の本数を少なくすることができるため、製造コストが低減された包装袋とすることができる。
【0017】
[8]上記[7]の注出口付き包装袋において、第1積層フィルム及び第2積層フィルムの少なくとも一方には、注出口に対応する領域に形成されたエンボスが更に設けられていることが好ましい。この場合、注出口における内面融着をより確実に防止することができる。よって、この包装袋によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、適切な注出性能を確保した注出口を有する包装袋とすることができる。
【0018】
[9]上記[7]又は[8]の注出口付き包装袋において、ハーフカット線は、第1積層フィルム及び第2積層フィルムのいずれにも一本のみ設けられており、両方のハーフカット線がノッチと一致することが好ましい。この場合、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、注出口の開封を確実に行うことが可能となる。
【0019】
[10]上記[7]~[9]のいずれかの注出口付き包装袋において、第1積層フィルム及び第2積層フィルムそれぞれの基材及びシーラント層を構成する同一材料は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂であることが好ましい。これにより、リサイクル性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても注出口の開封を確実に行うことができる注出口付き包装袋を効率的に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る注出口付き包装袋を示す正面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す注出口付き包装袋を構成する積層フィルムの断面を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す注出口付き包装袋の注出口付近を拡大して示す正面図である。
【
図4】
図4は、注出口におけるエンボス部分の断面を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す注出口付き包装袋を製造する工程を示す図である。
【
図6】
図6は、別の実施形態に係る注出口付き包装袋を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る注出口付き包装袋及びその製造方法について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、一実施形態に係る注出口付き包装袋を示す平面図である。
図1に示すように、注出口付き包装袋1(以下「包装袋1」とも記す)は、例えば詰替用パウチであり、モノマテリアル構成の第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20から構成される。このような包装袋1は、略矩形形状の第1積層フィルム10のシーラント層と略矩形形状の第2積層フィルム20のシーラント層とが内側を向くように配置され、注出部30を含む袋形状となるように周縁部2~5がヒートシールされることで形成される。周縁部2~5がヒートシールされることで、内側に収容部6が形成される。なお、
図1に示す包装袋1では、上端5aが開口しているが、収容部6内に所定の内容物(例えば、液体洗剤やシャンプー)を充填した後、周縁部2~5と同様に上端5aをヒートシールすることで密封される。
【0024】
図2は、
図1に示す注出口付き包装袋を構成する積層フィルムの断面を示す断面図である。
図2に示すように、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20のそれぞれは、基材11,21及びシーラント層12,22を有する。第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20は、同じモノマテリアル構成の積層フィルムから形成することができ、例えば、基材11,21及びシーラント層12,22のそれぞれがポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂から形成される。なお、ここでいう「同じモノマテリアル構成」とは、完全に同一の材料だけから形成されるものを意味するものではなく、主構成材料が同じ材料から形成されるものも含む。
【0025】
[基材]
基材11,21は、例えば、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂から構成されており、未延伸のポリエチレン樹脂フィルムから構成されていることが好ましい。基材11,21が未延伸であることで、樹脂の配向性がほとんどなく、引っ張りやせん断のような外部応力に対して伸びやすく破断しにくい。基材11,21は、延伸のポリエチレン樹脂フィルムであってもよい。基材11,21の厚さは、例えば、5~800μmであり、5~500μm又は10~50μmであってよい。基材11,21は、シーラント層12,22よりも20℃以上高い融点を有し、好ましくは25℃以上高い融点を有してもよい。両者の融点に差があることで、ヒートシール工程において、基材11,21の溶融を抑制できる。基材11,21とシーラント層12,22のシール立ち上がり温度の差は、好ましくは25℃以上であり、より好ましくは30℃以上である。シール立ち上がり温度は、シール強度が発現する温度を意味する。ポリエチレン樹脂の融点は示差走査熱量計(DSC)を使用して測定することができる。
【0026】
基材11,21の融点は、例えば100~170℃の範囲内であり、好ましくは120℃以上であり、より好ましくは125℃以上である。基材11,21を構成するポリエチレンとして、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)等が挙げられる。これらのうち、耐熱性の観点から、HDPE及びMDPEで密度が0.925g/cm3以上のものを使用することが好ましい。特に、密度が0.93~0.98g/cm3の範囲の高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0027】
基材11,21を構成するポリエチレン樹脂は、石油由来のものに限定されず、その一部又は全部が生物由来の樹脂材料(例えば、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレン)であってもよい。バイオマス由来のポリエチレンの製造方法は、例えば、特表2010-511634号公報に開示されている。基材17は、市販のバイオマスポリエチレン(ブラスケム社製グリーンPE等)を含んでもよいし、使用済みのポリエチレン製品やポリエチレン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリエチレンを含んでもよい。
【0028】
基材11,21は、ポリエチレン樹脂以外の成分を含んでいてもよい。かかる成分としては、例えば、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、生分解性の樹脂材料(例えば、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉等)などが挙げられる。基材11,21は、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤等の添加剤を含んでもよい。基材11,21におけるポリエチレン樹脂以外の成分の量は、基材11,21の全量を基準として、好ましくは15質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
【0029】
[シーラント層]
シーラント層12,22は、基材11,21と同様に、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂で構成されている。即ち、シーラント層12,22は、基材11,21と同一材料により構成されている。なお、ここでいう同一材料は、主となる樹脂(例えばポリエチレン樹脂)が同じものであれば足り、主となる樹脂以外に含まれる成分が異なる場合も含む趣旨である。シーラント層12,22の厚さは、例えば、40~150μmであり、20~250μmであってもよい。シーラント層12,22を構成するポリエチレン樹脂フィルムは、機械方向(MD方向:Machine Direction)に易引き裂き性を付与されたフィルムである。
【0030】
このような易引き裂き性を有するシーラント層12,22を構成するポリエチレン樹脂は、例えば、C4-LLDPEであることが好ましい。C4-LLDPEは、エチレンと1-ブテンとの共重合体からなるLLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)の1種であり、エチレン由来のLLDPEの主鎖に、1-ブテン由来の炭素数が4個の側鎖を有する分子構造である。C4-LLDPEは、C6-LLDPEやC8-LLDPEよりも、側鎖が短く、メルトフローレート(MFR)が低いことから、相対的に低い引張衝撃強さや引張強度や引張弾性率を有している。このため、シーラント層12,22を構成するポリエチレン樹脂がC4-LLDPEであることにより、シーラント層12,22の機械方向に易引き裂き性を容易に付与することができる。
【0031】
シーラント層12,22のメルトフローレート(MFR)は5g/10分未満であり、好ましくは0.5g/10分以上5g/10分未満であり、より好ましくは2g/10分以上~5g/10分未満である。メルトフローレートが5g/10分未満であることで溶融張力が高くなりインフレーション法などによる加工時のシワを抑制しやすいという効果が奏される。すなわち、シーラント層12,22を溶融するために加熱されたときにやや流動しにくいことで、平滑で透明性の良いフィルムとすることができる。
【0032】
シーラント層12,22の融点は、例えば100~170℃の範囲内であり、好ましくは120℃以下であり、より好ましくは95~110℃である。シーラント層12,22は、密度0.925g/cm3未満(より好ましくは0.900~0.920g/cm3)のポリエチレン樹脂で構成されていることが好ましい。一例としては、上述した直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることができ、シーラント層12,22の機械方向に易引き裂き性を付与できるのであれば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)を用いてもよく、LLDPEとVLDPEをブレンドしたものを用いてもよい。
【0033】
シーラント層12,22を構成するポリエチレンの一部又は全部として、バイオマス由来のエチレンを原材料に用いたバイオマスポリエチレンを用いてもよい。このようなシーラントフィルムは、例えば、特開2013-177531号公報に開示されている。シーラント層18は、使用済みのポリエチレン製品やポリエチレン製品の製造過程で発生した樹脂(いわゆるバリ)を原料とするメカニカルリサイクルポリエチレンを含んでもよい。
【0034】
(その他の層)
第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20は、基材11,21とシーラント層12,22との間に接着層(不図示)を備えていてもよい。接着層を形成する接着剤は、接着方法に合わせて選定することができるが、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤などを用いることができる。このような接着層を設けることで、基材11,21とシーラント層12,22の層間密着性を高くしてデラミネーションしにくくなり、パウチとしての耐圧性や耐衝撃性を保持することができる。
【0035】
接着層は、塩素を含まないことが好ましい。接着層が塩素を含まないことで、接着剤やリサイクル後の再生樹脂が着色したり、加熱処理によって臭いが発生したりすることを防ぐことができる。接着層は、バイオマス材料を使用すると環境配慮の観点から好ましい。また、ポリエチレンにはバイオマスポリエチレンを使用することができる。環境配慮の観点から、接着剤には溶剤を含まないものが好ましい。
【0036】
第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20は、例えば、水蒸気や酸素に対するガスバリア性向上の観点から、ガスバリア層を更に含んでもよい。ガスバリア層は、基材11,21とシーラント層12,22との間に設けられてもよく、基材11,21のシーラント層12,22とは反対側の面に設けられてもよい。積層体の水蒸気透過量は、例えば、5g/m2・dayであり、1g/m2・day以下又は0.5g/m2・day以下であってもよい。第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20の酸素透過量は、例えば、1cc/m2・atm・dayであり、0.5g/m2・atm・day以下又は0.2g/m2・atm・day以下であってもよい。第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20がガスバリア層を含むことで、内容物を水蒸気や酸素による劣化から保護し、長期的に品質を保持しやすくなる。
【0037】
ガスバリア層の一例として、無機酸化物の蒸着層が挙げられる。無機酸化物の蒸着層を用いることにより、積層体のリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層で、高いバリア性を得ることができる。無機酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化錫等が挙げられる。透明性及びバリア性の観点から、無機酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、及び酸化マグネシウムからなる群より選択されてよい。無機酸化物の蒸着層の厚さは、例えば5nm以上100nm以下とすることができ、10nm以上50nm以下であってよい。厚さが5nm以上であることでバリア性が良好に発揮されやすく、厚さが100nm以下であることで、積層体の可撓性が維持されやすい。蒸着層は、例えば物理気相成長法、化学気相成長法等によって形成することができる。
【0038】
第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20は、無機酸化物の蒸着層に代えて、あるいは加えて、金属層(金属箔)を含んでもよい。金属層としては、アルミニウム、ステンレス鋼等からなる各種金属箔を使用することができ、これらのうち、防湿性、延展性等の加工性、コスト等の面から、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。金属層を設ける場合、その厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性等の点から、7~50μmであってよく、9~15μmであってよい。
【0039】
第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20は、基材11,21とシーラント層12,22との間にアンカーコート層を備えていてもよい。アンカーコート層は、積層フィルムのリサイクル性に影響を与えない範囲のごく薄い層でよく、アンカーコート剤を用いて形成することができる。アンカーコート剤としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。アンカーコート剤としては、耐熱性及び層間接着強度の観点から、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系ポリウレタン樹脂が好ましい。
【0040】
第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20は、例えば、印刷層を更に含んでもよい。印刷層は、基材11,21とシーラント層12,22との間に設けられてもよく、基材11,21のシーラント層12,22とは反対側の面に設けられてもよい。印刷層を設ける場合、印刷インキには塩素を含まないものを用いることが、印刷層が再溶融時に着色したり、臭いが発生したりすることを防ぐ観点から好ましい。また、印刷インキに含まれる化合物にはバイオマス材料を使用することが、環境配慮の観点から好ましい。
【0041】
次に、
図1及び
図3を参照して、包装袋1の注出部30の構成について説明する。
図3は、
図1に示す注出口付き包装袋の注出口付近を拡大して示す正面図である。注出部30は、注出口31、切取り片32、ハーフカット線33、ノッチ34、及び、エンボス40を有している。注出口31は、互いに溶着されていないシーラント層12,22によって囲まれる領域であり、包装袋1内に所定の内容物を収納した後に、詰替え等の際に切取り片32を切り取って、内容物を外に注出するための構造部分である。
【0042】
ハーフカット線33は、切取り片32の一端32aから他端32bに向かってエンボス40を交差するように設けられる線状の切欠きである。ハーフカット線33は、後述するように、レーザによって、第1積層フィルム10や第2積層フィルム20の厚み方向(積層方向)の途中まで切り込みを入れた部分である。このようなハーフカット線33により、使用者が包装袋1の切取り片32を把持して切り取ろうとした際に、その切断が補助される。ハーフカット線33は、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20の少なくとも一方に設けられていてもよく、また、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20の両方に一本ずつ設けられてもよい。なお、マルチマテリアル構成の積層フィルムを用いて包装袋1を作製する場合、ハーフカット線33をレーザで形成するための時間がかかることから、ハーフカット線33の本数は少ない方が好ましいが、一本に限られるものではない。
【0043】
ノッチ34は、切取り片32の一端32a又は他端32b若しくは両端32a,32bに設けられる切欠きである。ノッチ34は、使用者が包装袋1の切取り片32を把持して切り取ろうとした際に、その切断の開始を補助する構造(開封起点)である。ノッチ34から開始される切断がハーフカット線33に繋がるように、ノッチ34は、ハーフカット線33に一致している。ノッチ34は、後述するように、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20が積層されてヒートシールされた部分(周縁部5)を表面から裏面まで厚み方向に貫通するように、レーザによって加工されている。
【0044】
エンボス40は、
図3及び
図4の(a)に示すように、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20において注出口31に対応する領域に設けられる凸形状の部分である。
図4は、注出口におけるエンボスの断面を示す断面図である。エンボス40は、
図3においては、注出口31に沿って斜め方向に延在している。このようなエンボス40を設けることにより、注出部30にハーフカット線33を形成した際のレーザ加工によってシーラント層12,22同士が部分的に内面融着した場合であっても、注出口31が閉じてしまうことを防止することができ、注出口31の開封機能を確保することができる。エンボス40の高さHは、例えば、1.5mm以上であってもよく、2.0mm以上であってもよく、第1積層フィルム10と第2積層フィルム20とが離れている最大距離(H×2)が3.0mm以上となるようにすることが好ましい。なお、エンボス40は、
図4の(b)に示すように、第1積層フィルム10又は第2積層フィルム20の一方にのみ設ける構成であってもよい。
【0045】
次に、
図5を参照して、包装袋1を製造する方法について説明する。
図5は、
図1に示す注出口付き包装袋を製造する工程を示す図である。本実施形態に係る包装袋1の製造方法では、まず、同一材料(モノマテリアル)により構成される基材11及びシーラント層12を有する第1積層フィルム10と、同一材料(モノマテリアル)により構成される基材21及びシーラント層22を有する第2積層フィルム20とを準備する(
図5のステップS1)。第1積層フィルム10の基材11及びシーラント層12と、第2積層フィルム20の基材21及びシーラント層22は、上述したように、例えば、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂から形成される。
図5では、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20をまとめて巻き取ったロール100が開示されている。
【0046】
続いて、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20の準備(ロール100の所定箇所への設置)が終了すると、
図5のステップS2に示すように、ロール100から第1積層フィルム10と第2積層フィルム20とをそれぞれ引き出して、ヒータ101により加熱(予熱)する。そして、加熱された第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20のそれぞれに対して、エンボス成形装置102をプレスして、エンボス40を形成する。
図5に示す例では、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20の両方にエンボス40を形成している。なお、エンボス40は、各エンボスの高さH(
図4を参照)が1.5mm以上となるように形成されることが好ましい。
【0047】
続いて、エンボス40が形成されると、
図5のステップS3に示すように、第1積層フィルム10のシーラント層12と第2積層フィルム20のシーラント層22とが対向するように第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20を重ねる(積層させる)。その後、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20において包装袋1の周縁部2,3に対応する側面部をヒートシーラ103によりヒートシールする。その後、ヒートシールした積層体を冷却機構104で冷却する。
【0048】
続いて、
図5のステップS4に示すように、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20において包装袋1の周縁部4,5に対応する上下端部をヒートシーラ105でヒートシールする。周縁部5には、注出部30の切取り片32に対応する部分も含まれる。その後、ヒートシールした積層体を冷却機構106で冷却する。なお、ステップS3とステップS4のヒートシールは、同時に行われてもよいし、ステップS4の後にステップS3が行なわれてもよい。
【0049】
続いて、
図5のステップS5に示すように、周縁部2~5がヒートシールされた第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20の少なくとも一方の積層フィルムに、注出口31を横断するようにハーフカット線33をレーザ107(第1レーザ)により形成する。この際、ハーフカット線33は、エンボス40に対して交差するようになる。ハーフカット線33は、上述したように、各積層フィルムの厚み方向の途中まで切断する線状の切欠きであり、例えば、積層フィルムの基材とシーラント層との間の接着剤層まで外表面から切断されている。このようなハーフカット線33の形成に用いられるレーザ107は、例えば炭酸ガスレーザである。ハーフカット線33を形成する際のレーザ107のスキャン速度は、例えば、200mm/秒~1200mm/秒であってもよく、マルチマルテリアル構成の積層体でハーフカット線を形成する際のレーザのスキャン速度である3000mm/秒~4000mm/秒よりも遅くなっている。なお、ハーフカット線33を形成する際のレーザ107のスキャン速度は、例えば、200mm/秒~500mm/秒であってもよい。
【0050】
また、
図5のステップS5に示すように、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20をハーフカット線33の形成と同じ状態に保ったままで、注出口31の周りのヒートシールされた部分(周縁部5)に、注出口31の開封起点となるノッチ34をレーザ108(第2レーザ)により形成する。即ち、この製造方法では、ハーフカット線33を形成する際のレーザ加工の基準(積層体を配置する際の位置基準)とノッチ34を形成する際のレーザ加工の基準(積層体を配置する際の位置基準)とが共通(同一)している。このため、この製造方法では、ハーフカット線33及びノッチ34は、ハーフカット線33とノッチ34とが一致するように容易に形成することができる。
【0051】
ノッチ34は、上述したように、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20がヒートシールされた部分(周縁部5)の厚み方向の表面から裏面まで貫通するように切断された切欠きである。このようなノッチ34の形成に用いられるレーザ108は、ハーフカット線33を形成するレーザ107と同様に、例えば炭酸ガスレーザである。ノッチ34を形成する際のレーザ108のスキャン速度は、例えば、20mm/秒~100mm/秒であってもよく、ハーフカット線33を形成する際のレーザ107のスキャン速度よりも遅くなっている。なお、ノッチ34を形成する際のレーザ108のスキャン速度は、例えば、30mm/秒~80mm/秒であってもよい。また、ノッチ34は、積層体の表面から裏面まで貫通する切欠きであることから、ノッチ34を形成するレーザ108の出力は、ハーフカット線33を形成するレーザの出力よりも高くてもよい。なお、レーザ107とレーザ108とは、同じレーザ装置であってもよいし、別々のレーザ装置であってもよい。
【0052】
続いて、
図5のステップS6に示すように、互いにヒートシールされた第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20に対して、
図1に示す外形形状を有するように打抜き装置109により、打ち抜き処理を行う。打ち抜き処理は、従来の方法であり当業者には明らかであるため、詳細な説明は省略する。以上により、
図1に示す包装袋1が形成される。
【0053】
以上、本実施形態に係る包装袋の製造方法では、注出口31を横断するハーフカット線33及びノッチ34をレーザにより形成しており、ハーフカット線33を形成する際のレーザ加工の基準とノッチ34を形成する際のレーザ加工の基準とが共通しており、ハーフカット線33とノッチ34とが一致するように形成されている。このように、ハーフカット線33を形成するレーザ加工の基準とノッチ34を形成するレーザ加工の基準とを共通させることにより、形成されるハーフカット線33とノッチ34との位置出しをより正確に行い、注出口31の開封を確実に行うことが可能な包装袋1とすることができる。その結果、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても注出口31の開封を確実に行うことができる注出口付き包装袋を効率的に作製することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態に係る包装袋の製造方法では、ノッチ34を形成するためのレーザのスキャン速度は、ハーフカット線33を形成するためのレーザのスキャン速度よりも遅くてもよい。この場合、ノッチ34の形成に用いるレーザの照射エネルギーを増やすことができ、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、ノッチ34をより確実に切り出すことが可能となる。
【0055】
また、本実施形態に係る包装袋の製造方法では、ノッチ34を形成するためのレーザの出力は、ハーフカット線33を形成するためのレーザの出力よりも高くてもよい。この場合、ノッチ34の形成に用いるレーザの照射エネルギーを増やすことができ、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、ノッチ34をより確実に切り出すことが可能となる。
【0056】
また、本実施形態に係る包装袋の製造方法は、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20の少なくとも一方において、注出口31に対応する領域にエンボス40を形成する工程を更に備え、ハーフカット線33を形成する工程では、エンボス40と交差するようにハーフカット線33を形成する。モノマテリアル構成の積層フィルムを用いる場合、ハーフカット線33をレーザにて加工する際、従来よりもレーザのスキャン速度が遅くなる(又は出力を高める)ことから、より多くの熱が伝わり、注出口31においてシーラント層12,22同士に内面融着が生じてしまう虞がある。しかしながら、注出口31に対応する領域に予めエンボス40を形成しておくことにより、このような内面融着を防止することができる。よって、この製造方法によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、適切な注出性能を確保した注出口を有する包装袋を効率的に作製することが可能となる。
【0057】
また、本実施形態に係る包装袋の製造方法では、エンボス40を形成する工程では、エンボス40によって第1積層フィルム10と第2積層フィルム20とが離れている最大距離が3.0mm以上となるように、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20の少なくとも一方にエンボス40を形成することが好ましい。この場合、注出口31における内面融着をより確実に防止することができる。よって、この製造方法によれば、モノマテリアル構成の積層フィルムを用いた場合であっても、適切な注出性能を確保した注出口を有する包装袋を効率的に提供することが可能となる。
【0058】
また、本実施形態に係る包装袋の製造方法では、第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20それぞれの基材11,21及びシーラント層12,22を構成する同一材料は、ポリエチレン樹脂またはポリプロピレン樹脂である。これにより、リサイクル性能を向上させることができる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、注出口31を包装袋1のコーナ部に設けた場合を例にして説明したが、これに限定されない。注出口31は、包装袋1の上端の中央等の他の部分に設けられてもよい。また、本実施形態に係る注出口付き包装袋は、エンボスを備えない構成であってもよい。
図6に、このようなエンボスを備えない、モノマテリアル構成の包装袋の例を示す。上記のような構成であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【実施例0060】
以下、本発明の内容を実施例及び比較例を用いてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0061】
<実施例1>
実施例1として、
図1に示す構成の注出口付き包装袋1を作製した。包装袋1を作製するのに用いた積層フィルム(第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20に対応)は、基材11,21としてHDPE(厚み30μm)、ポリエチレン層にバリア層が形成されたバリアフィルム(厚み32μm)、シーラント層12,22としてLLDPE(厚み100μm)が順に積層された積層フィルムであった。このような積層フィルムを用いて、
図5に示す製造方法により、包装袋1を作製した。
【0062】
包装袋1の作製にあたり、ハーフカット線33を形成する際のレーザのスキャン速度を300mm/秒~800mm/秒の間で変更させた。使用したレーザは、炭酸ガスレーザ(ML-Z9510(30W機)、株式会社キーエンス製)であり、出力はいずれのスキャン速度においても80%(当該装置における出力30W×80%である24Wに対応)であった。形成したハーフカット線33は、各積層フィルムにおいて、それぞれ一本とした。なお、ノッチ34の作製にも同じ種類の炭酸ガスレーザを用い、スキャン速度は50mm/秒で、出力は80%であった。そして、作製されたポリエチレンのモノマテルアル構成からなる包装袋1での、1)ハーフカット線33とノッチ34との一致の度合い、2)ハーフカット線33の手切れ性の良否、及び、3)内面融着の有無について評価した。以下の表1に評価結果を示す。
【0063】
【表1】
ハーフカット線とノッチとの一致についての評価Aは、両者が一致していることを意味している。手切れ性の良否の評価Aは、ハーフカット線33に沿って切取り片32を問題なく切り取れたものを意味し、手切れ性の良否の評価Bは、ハーフカット線33に沿って切取り片32を切り取るのがやや難しかったものを意味する。内面融着の有無の評価Aは、ハーフカット線33をレーザ加工したもののそれによるシーラント層12,22の内面融着がなかったものを意味し、内面融着の有無の評価Bは、シーラント層12,22の内面融着が発生したものを意味する。
【0064】
表1から明らかなように、実施例1に係る製造方法によれば、ハーフカット線33が各一本であってもハーフカット線33とノッチ34とのずれが生じないことが確認できた。また、レーザのスキャン速度を調整することで、切取り片32を問題なく切り取れるハーフカット線33を形成できることも確認できた。更に、エンボス40を設けることで、ハーフカット線33をレーザで加工したもののそれによるシーラント層12,22の内面融着を防止できることが確認できた。
【0065】
<実施例2>
実施例2として、
図6に示す構成の注出口付き包装袋1A(以下「包装袋1A」とも記す)を作製した。包装袋1Aでは、エンボスを設けていない。また、注出部30Aの形状が包装袋1とは若干異なっており、ノッチ34が切取り片32の逆側の端部に設けられており、また、ハーフカット線33が積層体のMD方向に沿って形成されていた。包装袋1Aの上記以外の形状は、包装袋1と同様であった。包装袋1Aを作製するのに用いた積層フィルム(第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20に対応)は、基材11,21としてHDPE(厚み35μm)、ポリエチレン層にバリア層が形成されたバリアフィルム(厚み32μm)、シーラント層12,22としてLLDPE(厚み100μm)が順に積層されたフィルムであった。このような積層フィルムを用いて、
図5に示す製造方法により、包装袋1Aを作製した。
【0066】
包装袋1Aの作製にあたり、ハーフカット線33を形成する際のレーザのスキャン速度を300mm/秒~1100mm/秒の間で変更させた。使用したレーザは、炭酸ガスレーザ(ML-Z9510(30W機)、株式会社キーエンス製)であり、出力は60~80%(当該装置における出力30W×60%~80%である18W~24Wに対応)の間で変更させた。なお、ノッチ34の作製にも同じ種類の炭酸ガスレーザを用い、スキャン速度は50mm/秒で、出力は80%であった。そして、作製されたポリエチレンのモノマテルアル構成からなる包装袋1Aでの、1)ハーフカット線33とノッチ34との一致の度合い、2)ハーフカット線33の手切れ性の良否、及び、3)内面融着の有無について、実施例1と同様に評価した(評価方法は実施例1と同様)。以下の表2、表3、表4に評価結果を示す。表2は、レーザ出力が60%の場合での評価を示し、表3は、レーザ出力が70%の場合での評価を示し、表4は、レーザ出力が80%の場合での評価を示す。
【0067】
【0068】
表2~表4から明らかなように、実施例2に係る製造方法によれば、ハーフカット線33とノッチ34とのずれが生じないことが確認できた。また、レーザのスキャン速度を調整することで、切取り片32を問題なく切り取れるハーフカット線を形成できることも確認できた。更に、エンボス40を設けなくても、ハーフカット線33をレーザで加工したもののそれによるシーラント層12,22の内面融着を防止できる場合があることも確認できた。但し、実施例1のようにエンボスを設けた場合、内面融着をより確実に防止することができることが確認できた。
【0069】
<実施例3>
実施例3として、実施例2と同様に、
図6に示す構成の注出口付き包装袋1Aを作製した。包装袋1Aでは、エンボスを設けていない。また、注出部30Aの形状が包装袋1とは若干異なっている。包装袋1Aを作製するのに用いた積層フィルム(第1積層フィルム10及び第2積層フィルム20に対応)は、実施例2と異なり、基材11,21としてOPP(厚み20μm)、ポリプロピレン層にバリア層が形成されたバリアフィルム(厚み20μm)、シーラント層12,22としてCPP(厚み60μm)が順に積層されたフィルムであった。このような積層フィルムを用いて、
図5に示す製造方法により、包装袋1Aを作製した。
【0070】
包装袋1Aの作製にあたり、ハーフカット線33を形成する際のレーザのスキャン速度を300mm/秒~1300mm/秒の間で変更させた。使用したレーザは、炭酸ガスレーザ(ML-Z9510(30W機)、株式会社キーエンス製)であり、出力は60~80%の間で変更させた。なお、ノッチ34の作製にも同じ種類の炭酸ガスレーザを用い、スキャン速度は50mm/秒で、出力は80%であった。そして、作製されたポリプロピレン(PP)のモノマテルアル構成からなる包装袋1Aでの、1)ハーフカット線33とノッチ34との一致の度合い、2)ハーフカット線33の手切れ性の良否、及び、3)内面融着の有無について、実施例1及び実施例2と同様に評価した(評価方法は実施例1と同様)。以下の表5、表6、表7に評価結果を示す。表5は、レーザ出力が60%の場合での評価を示し、表6は、レーザ出力が70%の場合での評価を示し、表7は、レーザ出力が80%の場合での評価を示す。
【0071】
【0072】
表5~表7から明らかなように、本実施形態に係る製造方法によれば、ハーフカット線33とノッチ34とのずれが生じないことが確認できた。また、レーザのスキャン速度を調整することで、切取り片32を問題なく切り取れるハーフカット線を形成できることも確認できた。
1,1A…注出口付き包装袋、2~5…周縁部、10…第1積層フィルム、11…基材、12…シーラント層、20…第2積層フィルム、21…基材、22…シーラント層、30,30A…注出部、31…注出口、33…ハーフカット線、34…ノッチ、40…エンボス。