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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109433
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】モリブデンメッシュおよび焼成方法
(51)【国際特許分類】
   C22C 27/04 20060101AFI20240806BHJP
   C22F 1/18 20060101ALI20240806BHJP
   C22F 1/00 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
C22C27/04 102
C22F1/18 C
C22F1/00 624
C22F1/00 621
C22F1/00 628
C22F1/00 630K
C22F1/00 650A
C22F1/00 682
C22F1/00 691B
C22F1/00 691C
C22F1/00 691Z
C22F1/00 630B
C22F1/00 692A
C22F1/00 692B
C22F1/00 685Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014227
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋山 大樹
(57)【要約】
【課題】寿命の長いモリブデンメッシュを提供する。
【解決手段】モリブデンメッシュ1は再結晶後でも室温で折り曲げ可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再結晶後でも室温で折り曲げ可能なモリブデンメッシュ。
【請求項2】
ランタンを0.05質量%以上2.00質量%以下と不可避不純分を含み残分がモリブデンで構成される、請求項1に記載のモリブデンメッシュ。
【請求項3】
前記モリブデンメッシュの端に、前記モリブデンメッシュの厚みの100~300%の幅の折り返しを設けた、請求項1または2に記載のモリブデンメッシュ。
【請求項4】
900℃でクリープ試験を行った時の変形量が5mm以下である、請求項1または2に記載のモリブデンメッシュ。
【請求項5】
再結晶熱処理を施すことで900℃でクリープ試験を行った時の変形量が1mm以下である、請求項1または2に記載のモリブデンメッシュ。
【請求項6】
請求項1または2に記載の、焼成用のモリブデンメッシュ。
【請求項7】
請求項6に記載の焼成用モリブデンメッシュを用いた、焼成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モリブデンメッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モリブデンメッシュは、たとえば特開平4-210834号公報(特許文献1)、特開昭63-243249号公報(特許文献2)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-210834号公報
【特許文献2】特開昭63-243249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のモリブデンメッシュでは、折損しやすいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示のモリブデンメッシュは、再結晶後でも室温で折り曲げ可能なモリブデンメッシュである。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施の形態1に従ったモリブデンメッシュ1を構成するメッシュ構造体10の平面図である。
図2図2は、図1中のIIで囲んだ部分を拡大して示す平面図である。
図3図3は、図2中のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、実施の形態2に従った折り返しが設けられたモリブデンメッシュ1を構成するメッシュ構造体10の平面図である。
図5図5は、実施の形態2に従ったモリブデンメッシュ1の製造方法を説明するための図である。
図6図6は、実施の形態2に従ったモリブデンメッシュ1の製造方法を説明するための図である。
図7図7は、実施の形態3に従った切断面が設けられていない端部13を有するモリブデンメッシュ1を示す図である。
図8図8は、純モリブデン線材およびランタンがドープされたモリブデン線材の熱処理前と熱処理後の断面組織を示す写真である。
図9図9は、モリブデンメッシュ1の室温での折り曲げ特性を測定するための方法を示す図である。
図10図10は、モリブデンメッシュ1の室温での衝撃試験を実施するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0008】
従来、モリブデンメッシュを用いて焼成すると、使用中高温に暴露されたモリブデンメッシュは、著しく脆化し、室温での取り扱いで、折損し易い問題があった。
【0009】
再結晶したモリブデンメッシュはその結晶形態によっては高温下では粒界滑りにより変形し易く、室温では、粒界強度が低下するため、曲げ荷重が加わった際、再結晶脆化により破断し易い特徴がある。
【0010】
使用中再結晶が起きうる高温に暴露されたモリブデンメッシュは、著しく脆化し、室温での取り扱いで、折損し易い問題があった。
【0011】
また、使用中にメッシュが変形し、形状が焼成物に転写する問題があった。メッシュの寿命が短く、生産効率が悪いことが技術的な問題となっている。
【0012】
本開示におけるモリブデンメッシュは、再結晶後でも室温で折り曲げ可能なモリブデンメッシュである。
【0013】
900℃でクリープ試験を行った時の変形量が5mm以下である。このように構成されたモリブデンメッシュにおいては、クリープ試験後の変形量(そり)を5mm以下とすることができるので、使用時におけるモリブデンメッシュの変形を抑制できる。
【0014】
好ましくは、前記モリブデンメッシュの端に、前記モリブデンメッシュの厚みの100~300%の幅の折り返しを設ける。このように構成されたモリブデンメッシュにおいては、端において厚みが増すため強度を大きくすることが可能になる。
【0015】
好ましくは、再結晶熱処理を施すことで再結晶時の変形が1mm以下である。
好ましくは、モリブデンメッシュは、ランタンを0.05質量%以上2.00質量%以下と不可避不純分を含み残分がモリブデンで構成される。このように構成されたモリブデンメッシュにおいては、ランタンの作用により結晶粒を長大化させて所望の特性を発揮させやすい。
【0016】
好ましくは、焼成用のモリブデンメッシュは、上記のいずれかのモリブデンメッシュを含む。
【0017】
好ましくは、焼成方法は、上記の焼成用モリブデンメッシュを用いる。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に従ったモリブデンメッシュ1を構成するメッシュ構造体10の平面図である。図1で示すように、敷板としてのモリブデンメッシュ1はモリブデンを含むメッシュ構造体10を備える。
【0018】
メッシュ構造体10は、モリブデンまたはモリブデン合金の線材により構成されている。
【0019】
線材11,12を織る、または編むことでメッシュ構造体10が形成されている。線材11,12の端面が切断面11e,12eである。切断面11e,12eは、線材11,12を切断することで構成されている。
【0020】
図2は、図1中のIIで囲んだ部分を拡大して示す平面図である。図2で示すように、線材11,12が交差することでメッシュ構造体10を構成している。縦方向に延びる線材11と横方向に延びる線材12とが交差することで、複数の目19を構成している。
【0021】
この実施の形態においては、線材11,12は互いに直交するように延びている。しかしながら、線材11,12が互いに鋭角をなすように延びていてもよい。
【0022】
図3は、図2中のIII-III線に沿った断面図である。図3で示すように、線材11の断面は丸形状である。線材11の断面は角形状であってもよい。線材12においても、同様に断面が丸形状または角形状のいずれであってもよい。
【0023】
モリブデンメッシュ1に用いる線材11,12の線径は0.1mm以上、1.0mm以下が好ましい。この範囲とすることにより、高温で変形しにくく、加工し易いモリブデンメッシュ1となる。0.1mm未満では、焼成用途では、線材11,12の強度が不足するおそれがある。1.0mmを超えても問題はないが、線材11,12に柔軟性が無く、編み込むことが困難となる。
【0024】
モリブデンメッシュ1は、シャーリングもしくはスリッターで所望のサイズに切断する。せん断加工により、切断面は鋭利な状態となり、脆化したモリブデンが折損、脱落しやすくなるが、一部、もしくは全てを折り曲げ加工することで強度の低下や取扱での引っ掛かりによる破損を防止できる。
【0025】
折り曲げ部は、プレスして段差を無くし、焼結材の積載面積を増やすことができる。もしくは、網厚の3倍以内に厚みを持たせることで、積み重ねした際にスペーサーとしての機能を持たせることが出来る。
【0026】
線材11,12は、La酸化物を2.00質量%以下で含有してもよい。再結晶により脆化した純モリブデンは、室温にて取り扱う際に、延性が乏しく、取扱時の応力で折損する場合がある。
【0027】
La酸化物を添加することで、粒界強度を高め、折損を防止することができる。尚、成分の分析には、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法により行う。
【0028】
1500~2600℃の温度域では変形が大きくなるため、再結晶処理を行うことが好ましい。再結晶処理は、モリブデンメッシュ1加工後に行うことが望ましい。織網の加工歪を除去することで、耐変形性を向上することができる。
【0029】
モリブデンメッシュ1が変形すると、焼結材に形状が転写されるおそれがある。本開示により、焼結材の品質、歩留向上も期待できる。
【0030】
メッシュ構造体10の材質は、純モリブデンまたはモリブデン合金である。メッシュ構造体10に使用される純モリブデン材料は一般的な純度である98.5質量%以上のモリブデン材料が望ましい。モリブデン合金は、金属添加剤を0を超えて1.0質量%以下含んでいてもよい。添加剤としては、La酸化物が好ましい。添加材成分の測定は、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法により行う。ICP発光分析法では、ICPS-8100型(島津製作所)を用いる。
【0031】
メッシュ構造体10は不可避不純物(例えばAl、Ca、Fe、Mg、Si)を含む。不可避不純物は(JIS H 1404 2001)の7.4項(誘導結合プラズマ(ICP)発光分光法:Feの測定)、不揮発分定量方法(JIS H 1404 2001)等に従う。ICP法では、ICPS-8100型(島津製作所)を用いる。
【0032】
メッシュ構造体10の形状は四角形以外でも構わない。モリブデンメッシュ1の製織方法はどの製織方法であっても構わない。
【0033】
(実施の形態2)
図4は、実施の形態2に従った折り返しが設けられたモリブデンメッシュ1を構成するメッシュ構造体10の平面図である。実施の形態2に従ったメッシュ構造体10の端部13,14,15,16に折り返し部21,22が設けられている。
【0034】
線材11,12の端面が切断面11e,12eである。切断面11e,12eは、線材11,12を切断することで構成されている。図1で示すメッシュ構造体10は、四角形の角が落とされた8角形のモリブデン合金線のモリブデンメッシュ1の各辺を折り曲げることにより形成される。そのため、角部において折り曲げられた部分が重ならない。なお、必ずしもこの構造を採用する必要は無く、四角形のモリブデン合金線のメッシュの各辺を折り曲げてメッシュ構造体10を構成してもよい。この場合にはメッシュ構造体10の角部においてメッシュが4層重なった構造となる。
【0035】
図5は、実施の形態2に従ったモリブデンメッシュ1の製造方法を説明するための図である。図6は、実施の形態2に従ったモリブデンメッシュ1の製造方法を説明するための図である。
【0036】
図5で示すように、モリブデンメッシュ1を製造するためには、まず、メッシュ構造体10の端部13を矢印101で示すように曲げる。この実施の形態では端部13を上方向に曲げているが、端部13を下方向に曲げてもよい。
【0037】
図6で示すように、矢印102で示す方向に端部13付近をプレスすることで、折り返し部21を形成する。プレスにより、折り返し部21の厚みが薄くなる。
【0038】
図7は、実施の形態3に従った切断面が設けられていない端部13を有するモリブデンメッシュ1を示す図である。図7で示すように、切断面が設けられていない端部13を有するモリブデンメッシュ1も存在する。この場合、端部13において線材12が編み込まれており、線材12を切断することなくモリブデンメッシュ1を形成することができる。切断面を有さない端部13は、強度が十分であれば折り返す必要がない。
【0039】
メッシュ構造体10の厚さは測定部のアンビル並びにスピンドルの測定面が平らなスピンドルの直径D6mmのデジタルマイクロメータにて測定する。また、この厚みはノギスで測定する事も出来る。
【0040】
折り返し部のある辺の数が1以上の場合には折り返し部のある辺の厚さの平均値を折り返しのある辺の厚さとする。メッシュ構造体10の中央で厚さを測定し、それをモリブデンメッシュ1の厚さとする。折り返し部の厚みはモリブデンメッシュ1の厚みの100%以上300%以下であることが好ましい。
【0041】
(実施例)
以下、本開示を実施例に基づいて説明する。
【0042】
(1)モリブデンメッシュの製造
(1-1)モリブデン線の製造
組成がモリブデンとランタンの組成を様々に変化させた表1および表2の材質の金属粉末を準備した。金属粉末中のFe:0.01質量%以下、不揮発分:0.02質量%以下である。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1の試料番号1から14は、表2の試料番号1aから14aと同じ組成を有する。違いは、後の工程の再結晶熱処理の有無である。
【0046】
これをモリブデン線材の加工法によってプレス、焼結してインゴットを作成した。得られたインゴットを、溝ロール圧延又はスエージ加工を行った後、線引き加工を施し、表1および表2の「線径」の欄で示す直径を有する試料番号1から14および1aから14aのモリブデン線を得た。モリブデン線は電解研磨、焼鈍し、最終仕上げを行った。
【0047】
(1-2)織網、切断工程
試料番号1から14および1aから14aのモリブデン線を用いて織機に1100mmの幅で縦糸を張った。縦糸に対して横糸を直角に公差させ、筬で打ち込むことで織網をし、長さ35mのロールを製作した。ロールはシャーリングまたはスリッターで切断をし、幅220mm、長さ180mmに切断をした。
【0048】
(1-3)曲げ工程
試料番号4、11から14、4a、11aから14aについては、プレスブレーキを用いて2または4辺の端部を5mm~20mm折り曲げをした。
【0049】
折り曲げ後は、網厚の3倍以内でプレスした。これにより、図1または図4で示すモリブデンメッシュ1を得た。
【0050】
(1-4)再結晶熱処理
焼成炉を用いて、真空雰囲気中で表2で示す「再結晶熱処理」の温度で加熱処理して、再結晶処理をした。具体的には昇温速度10℃/minで、表2の再結晶熱処理の温度まで昇温した。表2の再結晶熱処理の時間を保持し、降温速度20℃/minで室温まで降温した。
【0051】
表1の試料にはこの再結晶熱処理は行わない。処理量を増やすため治具を使用する場合もあるが、モリブデンメッシュ1と治具との接触部の反応を避けるため、モリブデンメッシュ1と同材質の治具を用いることが好ましい。
【0052】
すなわち、上記モリブデンメッシュ1を再結晶が始まる1200℃以上で加熱し、結晶粒子を線材の長さ方向へ伸長させた。再結晶熱処理温度は1500℃以上、2000℃以下がより好ましい。再結晶する温度以下での処理では、十分な効果が得られないおそれがある。2000℃を超えても問題無いがコストの増加や接触部の反応が起きるおそれがある。再結晶熱処理の時間は、モリブデンメッシュ1を構成するモリブデンが充分に再結晶するのに必要な時間とされる。ただし、必要以上の再結晶熱処理の時間は、経済性を悪化させる。
【0053】
また、焼成炉は真空雰囲気中の他に、水素など還元性ガス雰囲気、または不活性ガス雰囲気中でも良い。表1および2における「熱処理」の欄の「温度(℃)」とは熱処理中の最高温度、「時間(H)」とは最高温度を保持した時間をいう。
【0054】
再結晶熱処理後のモリブデンメッシュ1のメッシュを解き、樹脂に埋め込んだ後解いた線の概ね1/2の位置まで研磨を行い鏡面状態にした後、村上試薬等の適切なエッチング液を用いて結晶観察を行った。
【0055】
結晶観察ではキーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-1000を用い、線径等の条件により50~400倍程度の倍率で熱処理により組織が塑性加工後の繊維組織から再結晶した組織に変わっている事を確認した。表1および表2における「繊維状」とは、塑性加工(伸線加工)後の組織を示す。「粗大」または「長大」とは、再結晶後の組織であることを示す。「粗大」とは等方的に結晶成長していること、「長大」とは異方的に結晶成長していること、(図8)をいう。
【0056】
図8は、純モリブデン線材およびランタンがドープされたモリブデン線材の熱処理前と熱処理後の断面組織を示す写真である。図8において熱処理前および熱処理後の組織を示す。図8から、組織が粗大化または長大化していることが分かる。
【0057】
純モリブデンは再結晶熱処理を行う事によって塑性加工後にみられる繊維状組織は粗大化する。
【0058】
再結晶後、モリブデンメッシュ1の組成を確認したところ、原材料の組成を保っていることが確認された。さらにモリブデンメッシュ1の各線径を確認したところ、表2の「線径」が保たれていることが確認された。
【0059】
表1および2における「折り返し(辺)」とはモリブデンメッシュ1における折り返された辺の数、「折り返し(回数)」とは折り返された辺における折り返しの回数をいう。
【0060】
(2)モリブデンメッシュの評価
モリブデンメッシュを折り曲げ試験、衝撃試験およびクリープ試験により評価した。表3と表4はそれぞれ表1と表2で作製されたモリブデンメッシュ1に対して再結晶熱処理を行ったもの(表4)と行っていない状態のもの(表3)の評価結果を表す。
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】
【0063】
(2-1)評価1:折り曲げ試験
図9は、モリブデンメッシュ1の室温での折り曲げ特性を測定するための方法を示す図である。モリブデンメッシュ1の折り曲げ試験を実施した。モリブデンメッシュ1(試料番号12a)と、比較として純モリブデンのモリブデンメッシュ1(試料番号4a)を試験した。
【0064】
評価には線径0.35mm、#24メッシュを用い、端部は4辺を5mm折り曲げした。♯24メッシュとは1インチ(25.4mm)の幅に24本の線が存在することをいう。モリブデンメッシュ1の網目(メッシュ)は#4~50メッシュが望ましい。
【0065】
折り返し部21,22は、折り曲げの無い部分の厚みの115%にプレスした。モリブデンメッシュ1のサイズは幅Lが50mm、長さBが50mmの正方形とした。モリブデンメッシュ1の両端10mmを台115,116により支持し、中央にφ5の丸棒112を橋渡しにした。台115,116間の距離は30mmである。
【0066】
丸棒112はワイヤ113でテンションゲージ110と接続される。室温にて、テンションゲージ110を矢印111で示す下方へ引くことで、モリブデンメッシュ1に集中荷重を加えた。荷重を徐々に増加させ、メッシュが破断又は塑性変形した時の最大荷重をテンションゲージで測定し、破断の有無を確認した。
【0067】
測定は縦糸方向と横糸方向それぞれで行い、平均値で評価した。純モリブデンでは、荷重を2.2kgf(2.2×9.8N)まで増加させると容易に破断した。一方、La酸化物を含有した本メッシュは、6kgfの荷重を加えても破断せず、90°に塑性変形した。
【0068】
その他の試料番号について同じ試験をしたところ試料番号5aから14aのモリブデンメッシュにおいて6kgfの荷重を加えても破断せず、90°に塑性変形した。
【0069】
その他の試料番号についても同様の試験を実施した。その結果を表3および表4における「曲げ試験」の欄において示す。
【0070】
「曲げ試験」の欄における評価「A」は6kgfの荷重を加えてもモリブデンメッシュ1のいずれの場所においても破断しなかったことを示す。「B」は6kgf未満の荷重をくわえるとモリブデンメッシュ1のいずれかの場所が破断したことを示す。
【0071】
この試験により、試料番号5から14(5aから14a)は、再結晶後でも室温で折り曲げ可能なモリブデンメッシュ1であるといえる。なお、表1にある再結晶熱処理をしていない試料番号1から14(表3)はいずれも破断しなかった。
【0072】
(2-2)評価2:衝撃試験
モリブデンメッシュ1の破壊試験(耐衝撃試験)を実施した。モリブデンメッシュ1(試料番号5a)と、比較として純モリブデンのモリブデンメッシュ1(試料番号1a)を試験した。
【0073】
図10は、モリブデンメッシュ1の室温での衝撃試験を実施するための方法を示す図である。評価には線径0.35mm、#24メッシュを用い、モリブデンメッシュ1のサイズは幅Lが100mm、長さBが100mmの正方形とした。幅50mm、長さ50mmの枠の上にモリブデンメッシュ1を置いた。これにより、図10における点線で示される穴130を構成した。穴130は枠が存在しない領域である。穴130の上にモリブデンメッシュ1が存在して穴130を覆っている。穴130の寸法は幅50mm、長さ50mmである。穴130内は枠によって支持されていない。そのため、穴130に上から力が加わると穴130を構成するモリブデンメッシュ1が変形する。これに対して穴130外は枠に直接接触しているため穴外に上から力が加わってもモリブデンメッシュ1は変形しない。
【0074】
室温にて、モリブデンメッシュ1の中央に位置する穴130に重さ130グラムの円柱型の錘131を高さ100mmから自由落下させた。
【0075】
試験は5回繰り返し実施した。純モリブデンでは、衝撃荷重によりモリブデンメッシュ1に破れが生じ、折損が見られた。La酸化物を含有したモリブデンメッシュ1は、変形するのみで、破れが生じることはなかった。
【0076】
その他の試料番号についても同様の試験を実施した。その結果を表3および表4における「衝撃試験」の欄において示す。
【0077】
表3にある再結晶熱処理を行っていない試料は変形するのみで、破れが生じる事はなかった。
【0078】
「A」は5回試験を繰り返してもモリブデンメッシュ1に破れが生じなかったことを示す。「B」は5回の試験でモリブデンメッシュ1に一度以上破れが生じたことを示す。この試験より、試料番号5aから14aは再結晶後に室温の衝撃試験で破損しないモリブデンメッシュ1であるといえる。
【0079】
(2-3)評価3:クリープ試験
モリブデンメッシュ1のクリープ試験を実施した。モリブデンメッシュ1(試料番号5)と、比較として純モリブデンのモリブデンメッシュ1(試料番号1)を製作した。評価には線径0.35mm、#24メッシュを用い、モリブデンメッシュ1のサイズは幅50mm、長さ100mmの長方形とした。モリブデンメッシュ1の両端10mmを支持し、中央に131グラムの円柱型の錘を置いた。焼成炉を用いて、水素雰囲気中で900℃に加熱して、処理を3回繰り返した。錘を乗せた状態でスパンの中央の高さをデジタルノギスで測定し、熱処理前後の差を変形量とした。純モリブデンのモリブデンメッシュ1では、6.8mmの変形が見られたが、La酸化物を含有したモリブデンメッシュ1は、3.8mmの変形に抑えることができた。
【0080】
その他の試料番号についても同様の試験を実施した。その結果を表1および表2における「クリープ変形量」の欄において示す。
【0081】
ランタンを含まない試料番号1aから4aではクリープ変形量が大きくなった。ただし、試料番号4aにおいては折り返しの作用によりクリープ変形は小さかった。
【0082】
再結晶熱処理を行わなかった試料番号1-14においては再結晶熱処理を行った試料番号1a-14aに比べてクリープ変形量が大きくなったものがあった。ただし、試料番号5-14、5a-14aは添加物の効果でクリープ変形は小さかった。試料番号4、11-14、4a、11a-14aにおいては折り返しの作用によりクリープ変形は小さかった。再結晶熱処理温度が1800℃である。クリープ変形量が小さいことで、長期の使用に耐えうるモリブデンメッシュ1を提供することができる。
(付記1)
再結晶後でも室温で折り曲げ可能なモリブデンメッシュ。
(付記2)
ランタンを0.05質量%以上2.00質量%以下と不可避不純分を含み残分がモリブデンで構成される、付記1に記載のモリブデンメッシュ。
(付記3)
前記モリブデンメッシュの端に、前記モリブデンメッシュの厚みの100~300%の幅の折り返しを設けた、付記1または2に記載のモリブデンメッシュ。
(付記4)
900℃でクリープ試験を行った時の変形量が5mm以下である、付記1から3のいずれか1項に記載のモリブデンメッシュ。
(付記5)
再結晶熱処理を施すことで900℃でクリープ試験を行った時の変形量が1mm以下である、付記1から4のいずれか1項に記載のモリブデンメッシュ。
(付記6)
付記1から5のいずれか1項に記載の、焼成用のモリブデンメッシュ。
(付記7)
付記6に記載の焼成用モリブデンメッシュを用いた、焼成方法。
【0083】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0084】
1 モリブデンメッシュ、10 メッシュ構造体、11,12 線材、11e,12e 切断面、13,14,15,16 端部、19 目、21,22 折り返し部、101,102,111 矢印、110 テンションゲージ、112 先端、115,116 台、130 穴、131 錘。
図1
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図10