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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109436
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】エアフィルタ
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/52 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B01D46/52 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014233
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
(74)【代理人】
【識別番号】100160314
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 公芳
(74)【代理人】
【識別番号】100118094
【弁理士】
【氏名又は名称】殿元 基城
(74)【代理人】
【識別番号】100134038
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 薫央
(74)【代理人】
【識別番号】100150968
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 悠有子
(72)【発明者】
【氏名】関 和也
(72)【発明者】
【氏名】林 嗣郎
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA14
4D058KA01
4D058KA06
4D058KA23
4D058KA27
(57)【要約】
【課題】吹出空気の清浄度を向上できるエアフィルタを提供する。
【解決手段】ジグザグ状に折り畳まれたろ材を有し、気流の通風面10aに直交する二組の一対の周面10bを有する直方体状のフィルタパック10と、周面を囲んでフィルタパック10を収容するフィルタ枠と、少なくとも一の一対の周面10bとフィルタ枠との間に配置されるガラス繊維製のシール材40と、を備える。少なくとも一の一対の周面10bを囲むフィルタ枠は、周面10bと面する基部21aと、基部21aの気流の方向における上流側の端縁から通風面10aに平行に立ち上がる上流側起立部21bと、基部21aの気流の方向における下流側の端縁から通風面10aに平行に立ち上がり、上流側起立部21bよりも立ち上がり量が大きい下流側起立部21cと、を有する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグザグ状に折り畳まれたろ材を有し、気流の通風面に直交する二組の一対の周面を有する直方体状のフィルタパックと、
前記周面を囲んで前記フィルタパックを収容するフィルタ枠と、
少なくとも一の前記一対の周面と前記フィルタ枠との間に配置されるガラス繊維製のシール材と、を備え、
前記少なくとも一の一対の周面を囲む前記フィルタ枠は、
前記周面と面する基部と、
前記基部の前記気流の方向における上流側の端縁から前記通風面に平行に立ち上がる上流側起立部と、
前記基部の前記気流の方向における下流側の端縁から前記通風面に平行に立ち上がり、前記上流側起立部よりも立ち上がり量が大きい下流側起立部と、を有する、エアフィルタ。
【請求項2】
前記下流側起立部と前記フィルタパックの下流側の前記通風面との間に、前記通風面と平行なストッパをさらに備える、請求項1に記載のエアフィルタ。
【請求項3】
前記シール材と前記周面との間に配置され前記フィルタパックと前記シール材とを固定する固定部材と、
前記シール材と前記基部との間に配置され、前記周面側に突出し前記固定部材を押圧することにより前記フィルタパックの前記気流の方向の移動を抑制する凸部をさらに備える、請求項2に記載のエアフィルタ。
【請求項4】
前記凸部および前記ストッパを有し、前記周面と前記基部との間に配置される板材をさらに備える、請求項3に記載のエアフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高温域で使用されるエアフィルタにおいては、耐熱性の観点からガラス繊維からなるシール材が用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-238215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エアフィルタの使用時においては、偏流、乱流により、フィルタ最終圧以上の負荷がかかる場合に、フィルタパックとガラス繊維からなるシール材とが擦れ、ガラス繊維が折れて切片が生じるおそれがある。この切片がフィルタの上流側で生じる場合にはフィルタパックにより捕集されるが、下流側で生じる場合には清浄空間を汚染してしまうおそれがある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、吹出空気の清浄度を向上できるエアフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るエアフィルタは、上述した課題を解決するために、ジグザグ状に折り畳まれたろ材を有し、気流の通風面に直交する二組の一対の周面を有する直方体状のフィルタパックと、周面を囲んでフィルタパックを収容するフィルタ枠と、少なくとも一の一対の周面とフィルタ枠との間に配置されるガラス繊維製のシール材と、を備え、少なくとも一の一対の周面を囲むフィルタ枠は、周面と面する基部と、基部の気流の方向における上流側の端縁から通風面に平行に立ち上がる上流側起立部と、基部の気流の方向における下流側の端縁から通風面に平行に立ち上がり、上流側起立部よりも立ち上がり量が大きい下流側起立部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るエアフィルタにおいては、吹出空気の清浄度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態におけるエアフィルタの正面図。
図2図1のII-II線に沿う断面図。
図3】枠板および板材を特に説明する拡大断面図。
図4】板材およびシール材の断面図。
図5】板材の板材基部に面する方向からみた平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のエアフィルタについて、図面を参照して説明する。本発明に係るエアフィルタは、例えば乾燥機などの循環空気清浄用、焼却炉の排ガス処理用として使用され、高温域でも使用することが可能な耐熱性を有するエアフィルタに適用できる。また、本発明に係るエアフィルタは、室温または比較的低温域の半導体、食品、病院などの空気清浄器用としても使用され得る。
【0010】
図1は、本実施形態におけるエアフィルタ1の正面図である。
図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、枠板21および板材30を特に説明する拡大断面図である。
図4は、板材30およびシール材40の断面図である。
図5は、板材30の板材基部31に面する方向からみた平面図である。
【0011】
エアフィルタ1は、フィルタパック10と、フィルタ枠20と、板材30と、シール材40と、セラミック層50と、を主に有する。フィルタパック10は、直方体形状(例えば580mm×580mm×125mm)を有する。フィルタパック10は、一対の気流の通風面10aと、通風面10aに直交する二組の一対の周面10b、10cと、を有する。フィルタパック10は、ろ材11と、セパレータ13と、を有する。
【0012】
ろ材11は、例えば有機系バインダにより無機質繊維同士を結合した無機質繊維製のろ紙からなる。ろ材11には、例えば、極細ガラス繊維を有機バインダで結合した抄造法により製造されたガラス繊維紙などの、HEPAやULPA用などのろ材を使用することができる。ろ材11は、ジグザグ状に折り畳まれている。
【0013】
セパレータ13は、ろ材11間の折り畳み空間に配置され、この折り畳み空間の間隔を保持する。セパレータ13は、波形状の、例えばアルミニウム合金、ステンレス金属箔などからなる。セパレータ13は、例えばセパレータ13の波形状の稜線が気流方向と平行となるようにして、折り畳み空間に配置される。
【0014】
フィルタ枠20は、フィルタパック10の四つの周面10b、10cを囲んでフィルタパック10を収容する。フィルタ枠20は、二組の一対の枠板21、22を組み合わせることにより形成される。枠板21、22は、所定の厚み(例えば1mm)を有し、断面形状がコ字状に形成される、例えばアルミニウム合金、SUS430などのステンレス、鋼板などの金属からなる。
【0015】
図3に示すように、フィルタパック10のジグザグ形状が現われる側の周面10b側に配置される一対の枠板21(少なくとも一の一対の周面10bを囲むフィルタ枠20)は、枠板基部21aと、上流側起立部21bと、下流側起立部21cと、を有する。
【0016】
枠板基部21a(基部)は、周面10bと面する(板材30、シール材40を介して面する)部分である。上流側起立部21bおよび下流側起立部21cは、通風面10aにほぼ平行に面する部分である。上流側起立部21bは、枠板基部21aの気流方向における上流側の端縁から直角に立ち上がる。下流側起立部21cは、枠板基部21aの気流方向における下流側の端縁から直角に立ち上がる。下流側起立部21cは、上流側起立部21bの立ち上がり量(例えば14mm)より立ち上がり量が大きい。すなわち、図3に示すように、下流側起立部21cは、上流側起立部21bに対して距離h(例えば10mm)分大きく立ち上がっている。上流側起立部21bおよび下流側起立部21cは、フィルタパック10の、気流方向に関してフィルタ枠20外への移動を規制する。また、上流側起立部21bおよび下流側起立部21cは、先端部分(断面コ字状の開放端)に通風面10a側に向かって所定量(例えば4mm)折り返された折返部21dを有する。
【0017】
他の一対の枠板22は、枠板21と同様の構成を有するため詳細な説明は省略する。なお、枠板22においては、枠板21のように上流側起立部21bと下流側起立部21cに対応する部分の立ち上がり量が異なっていてもよいし、同一でもよい。
【0018】
板材30は、枠板基部21aとフィルタパック10の周面10bとの間に配置される。板材30は、例えばアルミニウム合金またはステンレスからなる板状部材である。板材30は、板材基部31と、ストッパ32と、凸部34と、接触片36と、を有する。
【0019】
板材基部31は、周面10bよりも大きい寸法を有する板状部材である。ストッパ32は、この板材基部31の気流方向の下流側の端部から所定量(例えば7mm)立ち上がることにより形成され、フィルタパック10を支持して下流側への移動を防ぐ。ストッパ32は、下流側起立部21cとフィルタパック10の下流側の通風面10aとの間に、通風面10aと平行になるように形成される。ストッパ32は、フィルタパック10の移動を防ぐことができれば、その形状について特に限定されない。ストッパ32は、例えば板材基部31に溶接、接着または板材基部31を折り曲げるなどして形成される。
【0020】
ストッパ32は、ストッパ32と平行な枠板21の下流側起立部21cと接触していても、図3に示すように所定の間隙を有して配置されていてもよい。間隙を有して配置されることにより、フィルタパック10のわずかな移動に対する遊びとなり、フィルタパック10がストッパ32に接触する際の衝撃を和らげることができる。
【0021】
ストッパ32は、下流側起立部21cの高さよりも低い。これにより、ストッパ32(およびシール材40)が下流方向から視認される場合に、下流側起立部21cから突出することに伴う外観性の低下を抑制できる。
【0022】
凸部34は、板材基部31上に所要数設けられ、周面10b側に所定量(例えば1mm)突出した部分である。凸部34は、例えば板材基部31に形成されるパンチング孔35を周面10bに面する面と反対の面側から形成する際に隆起して形成されるバリ部分により形成され得る。
【0023】
接触片36は、板材基部31の気流方向の下流側の端部に配置され、ストッパ32と板材基部31との境界に対して、板材基部31から下流側に突出した部分である。例えば、板材基部31の下流側の一部を立ち上げることによりストッパ32として機能させ、その残りを立ち上げずに板材基部31と面一に残すことにより、接触片36は形成される。接触片36は、ストッパ32と下流側起立部21cとの間の所要の間隙の寸法に対応する長さを有することにより、ストッパ32と下流側起立部21cとの間隙を形成する。接触片36は、フィルタパック10からストッパ32にかかる荷重を下流側起立部21cとともに支える。
【0024】
シール材40は、周面10b(少なくとも一の一対の周面10b)とフィルタ枠20(枠板21)との間に配置される。シール材40は、例えば、図4に示すように、板材30をシール材40で包むように配置されるシート状のシール材40である。シール材40は、2枚のシール材40を重ねて板材30を包む。この場合、それぞれのシール材40の端部同士が折り重ねられることにより、板材30の表面が突出しないように、シール材40が板材30に巻き付けられるのが好ましい。このようなシール材40は、板材30と枠板21との間および板材基部31と周面10bとの間をシールできる。
【0025】
シール材40は、例えば超極細のガラス繊維製のシート状部材である。シール材40には、厚さ0.5~2mm、目付20~30g/m、密度20~120kg/mの無機質繊維からなり、例えば平均繊維径1μm以下の超極細ガラス繊維をバインダを用いることなく、紡糸・集綿したシート状のものを使用され得る。このシール材40は、複数枚積層して80~120g/mの目付として使用され得る。シール材40の密度が120kg/mを超えると、フィルタ枠20やセパレータ13などに使用される金属の伸びの吸収性が悪くなるおそれがある。また、フィルタパック10の単位面積当たりの荷重が大きくなり、フィルタパック10を変形させるおそれがある。密度が20kg/m未満であると、フィルタパック10を押さえる力が小さいためにリークを生じるおそれがある。また、平均繊維径が1μmを超えると、周面10bを形成するろ材11のジグザグ状の端部になじまず、シール性が不十分となるおそれがある。
【0026】
セラミック層50(固定部材)は、シール材40と周面10bとの間に配置され、フィルタパック10とシール材40とを固定する粘土状の部材である。また、セラミック層50は、シール材40とフィルタパック10との間のシール性を補完する。具体的には、セラミック層50は、空気が通風面10aを流れずにシール材40を通り、そのまま下流側に流れ出ることを防止すべく、このような空気の流れを阻止する。シール材40と板材基部31との間に配置されたシール材40を隆起するように突出した凸部34により、セラミック層50は、シール材40を介して押圧される。これにより、セラミック層50は、セラミック層50と固定されたフィルタパック10と板材30とを間接的に固定することから、フィルタパック10と板材30との間の気流方向の移動(ずれ)を抑制する。
【0027】
このような本実施形態におけるエアフィルタ1は、エアフィルタ1の使用時において、通風面10aから気流が通過すると、気流の方向に力を受ける。これにより、フィルタパック10は、下流側にずれるおそれがある。このとき、シール材40としてガラス繊維が用いられているため、フィルタパック10のずれにより、シール材40が擦れて削られ、シール材40から綿状の切片が意図せず発生するおそれがある。この切片が、清浄空気を供給する下流側にフィルタパック10を経ずに流れ出てしまうことは避けなければならない。
【0028】
そこで、本実施形態におけるエアフィルタ1は、枠板21の下流側起立部21cの立ち上がり量を、通常の立ち上がり量(上流側起立部21bの立ち上がり量)に比べて距離h分大きくした。これにより、仮に綿状の切片が発生した場合であっても、この下流側起立部21cが壁となり、綿状の切片が下流側に流出することを阻止することができる。これにより、本実施形態におけるエアフィルタ1は、吹出空気の清浄度を向上できる。また、エアフィルタ1が通風面10aの上流側が上方、下流側が下方に向いて配置される場合においては、シール材40から発生する綿状の切片が重力で落下した場合に、下流側起立部21cが綿状の切片を下方で堰き止めることができるため、吹出空気の清浄度を向上できる。
【0029】
また、エアフィルタ1は、セラミック層50を有することにより、シール材40とフィルタパック10とを気密性を向上させながら固定することができる。これにより、エアフィルタ1は、エアフィルタ1の使用時や運搬時におけるフィルタパック10とシール材40とのずれによる擦れを低減することができ、綿状の切片の発生を低減できる。
【0030】
さらに、エアフィルタ1は、凸部34を有するため、凸部34のセラミック層50への密着を利用して凸部34とセラミック層50との間に配置されるシール材40を挟み込んで固定する。これにより、フィルタパック10に対するシール材40のずれを低減でき、より一層綿状の切片の発生を低減できる。
【0031】
さらにまた、エアフィルタ1は、ストッパ32を有する。これにより、フィルタパック10の下流側への移動を抑制することにより、フィルタパック10とシール材40とのずれを防止し、綿状の切片の発生を低減できる。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、特許請求の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0033】
例えば、凸部34およびストッパ32が板材30に配置される例を用いて説明したが、枠板21の枠板基部21aに直接配置してもよい。
【0034】
シール材40は、板材30を包むように配置される例を用いて説明したが、枠板21とフィルタパック10の周面10bとの間に配置されていれば、どのようなものであってもよい。
【0035】
シール材と周面との間に配置され、フィルタパックとシール材とを固定する固定部材がセラミック層50である例を用いて説明したが、セラミック層50以外にも、ガラス繊維層、シリコーン層などであってもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 エアフィルタ
10 フィルタパック
10a 通風面
10b、10c 周面
11 ろ材
13 セパレータ
20 フィルタ枠
21、22 枠板
21a 枠板基部
21b 上流側起立部
21c 下流側起立部
21d 折返部
30 板材
31 板材基部
32 ストッパ
34 凸部
35 パンチング孔
36 接触片
40 シール材
50 セラミック層
図1
図2
図3
図4
図5