(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109438
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240806BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240806BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/18 Z
B32B27/32 Z
B32B27/32 E
B32B27/32 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014235
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】出店 純香
(72)【発明者】
【氏名】佐川 浩一
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK04C
4F100AK07A
4F100AK07C
4F100AK07D
4F100AK51B
4F100AL07C
4F100AL09C
4F100AT00E
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CA02B
4F100CA05A
4F100CA05C
4F100CA05D
4F100CA06A
4F100CA07D
4F100CA13A
4F100CA17A
4F100EJ55
4F100EJ65B
4F100HB01
4F100HB31
4F100JA06
4F100JA07C
4F100JK06
4F100JK12
4F100JL09
4F100JN01C
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】 耐候性と耐熱剥離強度との両立を可能とする化粧シート及びそれを用いた化粧材を提供すること。
【解決手段】 化粧シートは、基材シートと、該基材シート上に設けられたアンカーコート層と、該アンカーコート層に積層された、ポリプロピレン樹脂を含む透明樹脂層と、を備え、前記透明樹脂層が、ポリプロピレン樹脂と、ヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤とを含有し、前記アンカーコート層と接する樹脂層Aを少なくとも含み、前記ラジカル捕捉剤が、CH
3(CH
2)
n-(式中、nは10以上の整数を示す)で表されるアルキル基を有し、且つ、分子量が1000以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートと、該基材シート上に設けられたアンカーコート層と、該アンカーコート層に積層された、ポリプロピレン樹脂を含む透明樹脂層と、を備え、
前記透明樹脂層が、ポリプロピレン樹脂と、ヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤とを含有し、前記アンカーコート層と接する樹脂層Aを少なくとも含み、
前記ラジカル捕捉剤が、CH3(CH2)n-(式中、nは10以上の整数を示す)で表されるアルキル基を有し、且つ、分子量が1000以上である、化粧シート。
【請求項2】
前記ラジカル捕捉剤が、下記一般式(1)で表される構造を有する、請求項1に記載の化粧シート。
【化1】
[式(1)中、nは10以上の整数を示し、mは整数を示す。]
【請求項3】
前記樹脂層Aが、エチレン系エラストマーを更に含有する、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記透明樹脂層が、2層以上の積層構造を有しており、
前記透明樹脂層は、ポリプロピレン樹脂を含み、エチレン系エラストマーを含まない樹脂層Bを含む、請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記樹脂層Aの層厚が5~30μmである、請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
前記エチレン系エラストマーが、メタロセン触媒を用いた重合体である、請求項3に記載の化粧シート。
【請求項7】
前記樹脂層Aが、酸変性ポリプロプレン樹脂を更に含有する、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項8】
前記酸変性ポリプロプレン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂である、請求項7に記載の化粧シート。
【請求項9】
基材と、該基材に貼り合わされた、請求項1~8のいずれか一項に記載の化粧シートと、を備える、化粧材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧シート及び化粧材に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シートを構成する部材として、印刷模様が施された基材シートが用いられているが、その基材シート上に、意匠性の向上の為に透明な樹脂材料で形成される透明樹脂層を更に積層することが一般に行われている。近年では、環境保護の観点から、透明樹脂層がポリプロピレン樹脂などの樹脂材料で形成されている化粧シートも提案されている(例えば、下記特許文献1を参照)。
【0003】
化粧シートは屋外暴露の状態で使用されることもあり、透明樹脂層には耐候性を付与するための耐候剤として紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等が添加される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基材シートと透明樹脂層とは、通常、基材シート上に設けられたアンカーコート層を介して接着されているが、この積層界面の接着強度が十分でないと、例えば表面に養生テープやポスター掲示用の貼付けテープなどを貼り合わせ、使用後にテープを剥離する場合に透明樹脂層の剥離が発生することがある。また、化粧シートを各種基材に貼り合わせる場合には、ホットメルト系のラッピング用接着剤などを使用することがあるが、このような熱履歴による負荷を受けた化粧シートは上記の剥離の不具合がより発生しやすくなる傾向にある。
【0006】
これまでにも、熱履歴後の剥離強度の低下を抑制する目的で、ポリプロピレン樹脂が含まれる透明樹脂層について樹脂材料の検討がなされてきたが、本開示の発明者は、加熱された化粧シートにおいて光安定剤に起因する剥離強度の低下があることを見出した。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐候性と耐熱剥離強度との両立を可能とする化粧シート及びそれを用いた化粧材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示は、以下の化粧シート及び化粧材を提供する。
【0009】
[1] 基材シートと、該基材シート上に設けられたアンカーコート層と、該アンカーコート層に積層された、ポリプロピレン樹脂を含む透明樹脂層と、を備え、前記透明樹脂層が、ポリプロピレン樹脂と、ヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤とを含有し、前記アンカーコート層と接する樹脂層Aを少なくとも含み、前記ラジカル捕捉剤が、CH
3(CH
2)
n-(式中、nは10以上の整数を示す)で表されるアルキル基を有し、且つ、分子量が1000以上である、化粧シート。
[2] 前記ラジカル捕捉剤が、下記一般式(1)で表される構造を有する、上記[1]に記載の化粧シート。
【化1】
[式(1)中、nは10以上の整数を示し、mは整数を示す。]
[3] 前記樹脂層Aが、エチレン系エラストマーを更に含有する、上記[1]又は[2]に記載の化粧シート。
[4] 前記透明樹脂層が、2層以上の積層構造を有しており、前記透明樹脂層は、ポリプロピレン樹脂を含み、エチレン系エラストマーを含まない樹脂層Bを含む、上記[3]に記載の化粧シート。
[5] 前記樹脂層Aの層厚が5~30μmである、上記[4]に記載の化粧シート。
[6] 前記エチレン系エラストマーが、メタロセン触媒を用いた重合体である、上記[3]~[5]のいずれかに記載の化粧シート。
[7] 前記樹脂層Aが、酸変性ポリプロプレン樹脂を更に含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の化粧シート。
[8] 前記酸変性ポリプロプレン樹脂が、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂である、上記[7]に記載の化粧シート。
[9] 基材と、該基材に貼り合わされた、上記[1]~[8]のいずれかに記載の化粧シートと、を備える、化粧材。
【0010】
本開示の化粧シートは、透明樹脂層が十分な耐候性を有するとともに、熱履歴を受けた後であっても、透明樹脂層とアンカーコート層との積層界面近傍における剥離強度を十分に維持することができる。このような効果が得られる理由について本開示の発明者は以下のとおり推察する。上記[1]に記載の化粧シートは、アンカーコート層と接する樹脂層Aに含まれるラジカル捕捉剤が、上記特定のアルキル基を有することによってポリプロピレン樹脂との相溶性が向上し、なおかつ高い分子量を有していることで、加熱された場合であっても樹脂層からブリードアウトしにくくなり、耐候性と耐熱剥離強度とを両立することができたと考えられる。
【0011】
上記[2]に係る化粧シートによれば、上述した効果が得られやすくなる。上記[3]に係る化粧シートによれば、ポリプロピレン樹脂とエチレン系エラストマーとが海島構造を形成することで剥離応力をより効果的に吸収することができ、層間強度が得られやすくなる。上記[4]に係る化粧シートによれば、樹脂透明層に耐傷性などの機能を更に付与することができる。上記[5]に係る化粧シートによれば、樹脂層Bにも耐候性を付与することができ、耐候性、耐候剥離強度及び耐熱剥離強度をバランスよく向上させることが容易となる。上記[6]に記載の化粧シートによれば、エチレン系エラストマーが経時によって低分子量化しにくいことから、経時による樹脂層Aの密着力の低下が抑制されやすくなる。上記[7]~[8]に係る化粧シートによれば、剥離強度及び耐熱剥離強度を更に向上させることができる。上記[9]に係る化粧材は、上記[1]~[8]のいずれかに記載の化粧シートが貼り合わされていることにより、屋外暴露によっても化粧シートの意匠性が悪化しにくく、なおかつ透明樹脂層とアンカーコート層との積層界面近傍における耐熱剥離強度を十分に維持するものになり得る。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、耐候性と耐熱剥離強度との両立を可能とする化粧シート及びそれを用いた化粧材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の化粧シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。
【0015】
<化粧シート>
本実施形態の化粧料シートは、基材シートと、該基材シート上に設けられたアンカーコート層と、該アンカーコート層に積層された、ポリプロピレン樹脂を含む透明樹脂層と、を備える。
【0016】
図1は、本開示の化粧シートの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示す化粧シート100は、模様付基材シート1と、模様付基材シート1の表面に設けられたアンカーコート層2と、アンカーコート層2に積層された、ポリプロピレン樹脂を含む透明樹脂層3とを備える。模様付基材シート1は、基材シート11と、基材シート11の透明樹脂層3側の表面に設けられた模様層12とを有している。透明樹脂層3は、2層の積層構造を有しており、アンカーコート層2と接する樹脂層A31と、アンカーコート層3と接しない樹脂層B32とを含んでいる。透明樹脂層3は、3層以上の積層構造を有していてもよく、樹脂層A31からなる単層であってもよい。
【0017】
透明樹脂層3は、主に化粧シートの模様層12の保護と意匠性の向上、並びに、耐傷性、耐摩耗性、及び耐薬品性などが発現するように設けられており、ポリプロピレン樹脂を主体とする構成材料からなっている。ポリプロピレン樹脂は、プロピレンを単独で重合してできるホモポリプロピレン、プロピレンを主原料とし、エチレン及び炭素原子数4~20のα-オレフィンのうちの一種以上を共重合させてなるプロピレン共重合体が挙げられる。上記の炭素原子数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテンなどが挙げられる。
【0018】
ホモポリプロピレンの融点は、120~170℃であってもよく、140~170℃であってもよく、150~170℃であってもよい。ホモポリプロピレンは、融点や軟化点を高くする観点から、チグラーナッタ触媒により重合された重合物であってもよい。ホモポリプロプレンは、アタクチックポリプロピレン成分、シンジオタクチックポリプロピレン成分、アイソタクティックポリプロピレン成分、又はこれらのうちの2以上の成分を含んでいてもよい。
【0019】
プロプレン共重合体は、例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体等のブロック共重合体であってもよく、プロピレン・αオレフィンランダム共重合体等のランダム共重合体であってもよい。
【0020】
プロプレン共重合体は、共重合成分全量100質量部に対して、プロピレン成分を80質量部以上含んでいてもよく、90質量部以上含んでいてもよい。
【0021】
透明樹脂層3は、印刷模様が視認できるのであれば、着色や白濁などがあってもよい。
【0022】
透明樹脂層3は、アンカーコート層2と接している樹脂層A31を少なくとも含む。樹脂層Aは、ポリプロピレン樹脂(以下、(A)成分ともいう。)と、ヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤とを含有する。
【0023】
(A)成分は、上述したものを用いることができ、1を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
樹脂層Aは、ロールリリース性の観点から、ホモポリプロピレン(以下、(A1)成分ともいう。)を含有していてもよい。
【0025】
(A1)成分は、上述したものを用いることができ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
(A1)成分は、E2000GV(株式会社プライムポリマー製、商品名)、F113G(株式会社プライムポリマー製、商品名)、FL03H(日本ポリプロ株式会社製、商品名)などの市販品を用いることができる。
【0027】
樹脂層Aにおける(A1)成分の含有量は、樹脂層Aに含まれる(A)成分の全量100質量部に対して、5~30質量部であってもよく、5~15質量部であってもよい。
【0028】
樹脂層Aは、折り曲げ時の白化抑制の観点から、プロピレン共重合体(以下、(A2)成分ともいう。)を含有していてもよい。(A2)成分は、上述したものを用いることができ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
樹脂層Aは、(A2)成分として、ランダムポリプロピレン(以下、(A2-1)成分ともいう。)を含有していてもよい。
【0030】
(A2-1)成分は、上述したプロピレン・αオレフィンランダム共重合体を用いることができ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
(A2-1)成分は、MFR(230)が、製膜安定性の観点から、3~30であってもよく、5~20であってもよい。
【0032】
(A2-1)成分は、40℃で3日間養生した後の沸騰ヘプタン溶解残分が50%以上であってもよく、60%以上であってもよく、70%以上であってもよい。
【0033】
本明細書において、沸騰ヘプタン溶解残分は以下の試験によって測定される。
(1)試料であるポリマー2gをp-キシレン200mlに加え、オイルバス中で撹拌しながら120℃まで昇温した後、さらに30分撹拌を続け、ポリマーを完全に溶解させて均一な溶液を調製する。
(2)次いで、p-キシレン溶液を、電源を切ったオイルバス内で24時間放置し、室温(23℃)まで徐冷して、ポリマーを析出する。ポリマーの析出物を含むp-キシレン溶液を2000mlのメタノールに投入し、4時間攪拌の後、ポリマーの析出物を濾別し、減圧下70℃で24時間乾燥する。
(3)乾燥したポリマー粉末1gを円筒濾紙に詰め、ソックスレー抽出器を用いてn-ヘプタンで7時間抽出を行う。その後、抽出残分を円筒濾紙ごと減圧下70℃で24時間乾燥する。
(4)抽出前後の乾燥重量を測定し、下記式にしたがって沸騰ヘプタン溶解残分を算出する。
沸騰ヘプタン溶解残分(%)=(抽出後の乾燥重量)×100/(抽出前の乾燥重量)
【0034】
上記の試験に供されるサンプルは、200℃で射出成型した試料(サイズ:2mm×2mm×2mm)を、恒温オーブンを用いて、暗室下、大気中、40℃で3日間養生することにより作成される。
【0035】
(A2-1)成分の密度は、890~910kg/m3であってもよく、895~910kg/m3であってもよい。
【0036】
(A2-1)成分は、プライムポリプロ S235WC(株式会社プライムポリマー製、商品名)、Y-2045GP(株式会社プライムポリマー製、商品名)などの市販品を用いることができる。
【0037】
樹脂層Aにおける(A2-1)成分の含有量は、樹脂層Aに含まれる(A)成分の全量100質量部に対して、10~70質量部であってもよく、40~50質量部であってもよい。
【0038】
樹脂層Aは、(A2)成分として、プロピレン系エラストマー(以下、(A2-2)成分ともいう。)を含有していてもよい。
【0039】
(A2-2)成分は、プロピレンを主原料とし、エチレン及び炭素原子数4~20のα-オレフィンのうちの一種以上を共重合させてなるプロピレン共重合体であってもよい。α-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
(A2-2)成分として用いられるプロプレン共重合体は、共重合成分全量100質量部に対して、プロピレン成分を60質量部以上含んでいてもよく、70質量部以上含んでいてもよい。
【0041】
(A2-2)成分は、製膜安定性の観点から、MFR(230)が、20~40であってもよく、25~35であってもよい。
【0042】
(A2-2)成分は、40℃で3日間養生した後の沸騰ヘプタン溶解残分が30%以下であってもよく、20%以下であってもよく、10%以下であってもよい。
【0043】
(A2-2)成分は、メタロセン触媒を用いた重合体であってもよい。このような(A2-2)成分を含む樹脂層Aは、(A2-2)が経時によって低分子量化しにくいことから、耐候性能を向上させることができる。
【0044】
メタロセン触媒を用いた重合体としては、例えば、プロピレンと、エチレン、ブテン、ヘキセン又はオクテンとの共重合体等が挙げられる。
【0045】
(A2-2)の密度は、865~910kg/m3であってもよく、868~910kg/m3であってもよい。
【0046】
(A2-2)成分は、Catalloy(サンアロマー株式会社製、商品名)、タフマー PN-20300(三井化学株式会社製、商品名)、タフセレン(住友化学株式会社、商品名)などの市販品を用いることができる。
【0047】
樹脂層Aにおける(A2-2)成分の含有量は、樹脂層Aに含まれる(A)成分の全量100質量部に対して、5~25質量部であってもよく、10~20質量部であってもよい。
【0048】
ヒンダードアミン系のラジカル捕捉剤は、CH3(CH2)n-(式中、nは10以上の整数を示す)で表されるアルキル基を有し、且つ、分子量が1000以上である(以下、「高分子アルキルHALS」という場合もある)。nは、ポリプロピレン樹脂との相溶性の観点から、10~20であってもよく、10~15であってもよい。分子量は、ブリードアウト抑制の観点から、3000~4000であってもよく、3500~4000であってもよい。
【0049】
高分子アルキルHALSとしては、例えば、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物を用いることができる。
【0050】
【化2】
式(1)中、nは10以上の整数を示し、mは整数を示す。また、式(1)中のn及びmは、上述した条件を満たすように設定されていてもよい。
【0051】
上記一般式(1)で表される構造を有する化合物は、Uvinul 5050H(BASFジャパン株式会社製、商品名)などの市販品を用いることができる。
【0052】
高分子アルキルHALSは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
樹脂層Aにおける高分子アルキルHALSの含有量は、樹脂層Aの全質量を基準として、0.1~0.5質量%であってもよく、0.2~0.3質量%であってもよく、0.2~0.25質量%であってもよい。
【0054】
樹脂層Aは、層間強度を向上させる観点から、エチレン系エラストマー(以下、(B)成分ともいう。)を更に含有していてもよい。
【0055】
(B)成分としては、エチレンを主原料とし、炭素原子数3~20のα-オレフィンのうちの一種以上を共重合させてなるエチレン共重合体であってもよい。α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、4-メチル-1-ペンテンが挙げられる。(B)成分は、エチレンと、炭素原子数4~6のα-オレフィンのうちの一種以上を共重合させてなるエチレン共重合体であってもよい。
【0056】
(B)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
(B)成分として用いられるエチレン共重合体は、共重合成分全量100質量部に対して、エチレン成分を60質量部以上含んでいてもよく、70質量部以上含んでいてもよい。
【0058】
(B)成分は、製膜時の剥離強度の観点から、MFR(190)が1以下であってもよく、0.4~0.8であってもよく、0.4~0.6であってもよい。
【0059】
(B)成分の密度は、剥離応力を緩和する観点から、870kg/m3以下であってもよく、860~865kg/m3であってもよい。
【0060】
(B)成分は、メタロセン触媒を用いた重合体であってもよい。このような(B)成分を含む樹脂層Aは、(B)成分に含まれる低分子量体が少ないことから、経時による樹脂層Aの密着力の低下が抑制されやすくなる。
【0061】
(B)成分は、タフマー DF605(三井化学株式会社製、商品名、MFR:0.5(190℃))、エクセレン VL100(住友化学株式会社製、商品名、MFR:0.8(190℃))、エクセレン VL102(住友化学株式会社、商品名、MFR:0.9(190℃))などの市販品を用いることができる。
【0062】
樹脂層Aにおける(A)成分及び(B)成分の含有量は、(A)成分及び(B)成分の合計含有量を100質量部としたときに、それぞれ、35~97質量部及び3~65質量部であってもよく、70~80質量部、及び20~30質量部であってもよい。
【0063】
樹脂層Aが(A2-1)成分と(B)成分とを含む場合、(A2-1)成分及び(B)成分の含有量は、(A2-1)成分及び(B)成分の合計含有量を100質量部としたときに、それぞれ、15~99質量部及び1~85質量部であってもよく、25~35質量部、及び65~75質量部であってもよい。
【0064】
樹脂層Aは、上記の(A)成分及び(B)成分以外の樹脂成分(以下、(C)成分ともいう。)を更に含有することができる。
【0065】
(C)成分としては、改質剤を用いることができ、耐熱剥離強度を更に向上させる観点から、例えば、酸変性ポリプロピレン樹脂等のような、官能基が導入されたポリプロピレン樹脂を用いることができる。官能基はグラフト重合によって導入されていてもよく、例えば、ポリプロピレンに無水マレイン酸を付加させた無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂を用いてもよい。
【0066】
(C)成分は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
樹脂層Aにおける(C)成分の含有量は、樹脂層Aに含まれるポリプロピレン樹脂の全量を100質量部としたときに、1~10質量部であってもよく、1~5質量部であってもよい。
【0068】
樹脂層Aは、必要に応じて、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、上述した高分子アルキルHALS以外の光安定剤、造核剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤などを適宜含んでいてもよい。
【0069】
樹脂層Aの層厚は、剥離強度の観点から、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、耐傷性の観点から、30μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
【0070】
透明樹脂層が、2層以上の積層構造を有しており、アンカーコート層と樹脂層Aとが接している場合、透明樹脂層の耐候性、耐候剥離強度及び耐熱剥離強度をバランスよく向上させる観点から、樹脂層Aの層厚は、5~30μmであってもよく、10~20μmであってもよい。
【0071】
透明樹脂層3は、アンカーコート層2と接しない樹脂層B32を更に含んでいてもよい。この場合、樹脂層Aによって剥離強度及び耐熱剥離強度を確保しながら、樹脂透明層に耐傷性などの機能を更に付与することができる。
【0072】
樹脂層Bは、耐溶剤性及び耐熱性の観点から、ポリプロピレン樹脂を含み、エチレン系エラストマーを含まないものであってもよい。この場合、ポリプロピレン樹脂としては、ホモポリプロピレン、ランダムポリプロピレンを用いることができ、耐傷性の観点から、ホモポリプロピレンを用いることができる。ホモポリプロピレンは、例えば、E2000GV(株式会社プライムポリマー製、商品名)、プライムポリプロ Y-2000GP(株式会社プライムポリマー製、商品名)、F113G(株式会社プライムポリマー製、商品名)などの市販品を用いることができる。
【0073】
樹脂層Bに含まれないエチレン系エラストマーとしては、分子量1000以下の成分を30%以上含むものが挙げられる。
【0074】
樹脂層Bにおけるポリプロピレン樹脂の含有量は、樹脂層Bの全質量を基準として、88質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。
【0075】
樹脂層Bは、必要に応じて、熱安定剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、造核剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤などを適宜含んでいてもよい。
【0076】
樹脂層Bの層厚は、耐傷性の観点から、50μm以上であってもよく、60μm以上であってもよく、Vカット加工やラッピング加工などの後加工性の観点から80μm以下であってもよく、75μm以下であってもよい。
【0077】
上述した樹脂層Aと樹脂層Bとの積層方法、及びそれらの積層物の基材シートの上部への積層方法としては、ドライラミネート法やサンドラミネート法をはじめとする公知の手法を用いてもよいが、Tダイによる加熱溶融共押出しラミネート法を用いることで、様々な利点を得ることができる。例えば、アンカーコート層と接する樹脂層Aと樹脂層Bとの間には接着剤層を設けなくてもよくなり、またアンカーコート層と接する樹脂層Aと樹脂層Bとの積層物と基材シートとのラミネートが同時に行なえ、効率的な製造が可能になる。さらには、共押出ラミネートを行なう際、冷却ロールに、化粧シートに付与したい意匠形状とは凹凸を反転させた柄を予め付与しておくことで、化粧シート表面への凹陥模様の付与も同時に行なうことができるようにもなる。
【0078】
アンカーコート層2の構成材料としては、非塩化ビニル樹脂の材料を用いることができる。例えば、ポリオールとイソシアネートとの反応でウレタン結合を形成する2液硬化型ウレタン系樹脂、水酸基変性ポリオレフィンを用いることができる。ポリオール成分としては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオールが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。イソシアネート成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
アンカーコート層2の層厚は、接着性の観点から、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、剥離強度の観点から、10μm以下であってもよく、5μm以下であってもよい。アンカーコート層の層厚は、塗工重量(単位グラム/平方メートル)をインキの比重で割ることによって求められる。
【0080】
アンカーコート層2の形成方法としては、グラビア法(グラビア印刷法、グラビア塗布法)などが挙げられる。本実施形態においては、模様付基材シート1の模様層12が設けられている側に、グラビアコーティング法などによりアンカーコート層2を形成することができる。
【0081】
基材シート11としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、エチレンビニルアルコール共重合樹脂、ポリスチレン、ABS、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアミド、ナイロン6、ナイロン66などの非塩化ビニル系の樹脂材料を含んでなるシートを用いることができる。
【0082】
基材シート11は、リサイクル性の観点から、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン材料からなる基材シートであってもよい。また、化粧シートにおけるポリプロピレン系材料の含有割合を高める観点から、基材シート11が、ポリプロピレン樹脂からなる基材シートであってもよい。
【0083】
基材シート11を構成する上記樹脂中には、無機顔料、酸化防止剤、光安定剤、ブロッキング防止剤などの添加剤の1種又は2種以上が適量で配合されていてもよい。
【0084】
基材シート11は、隠蔽性が付与されていてもよい。隠蔽を施す理由は、貼り合わせる木質系ボード、無機系ボード、金属板などの下地材が、化粧シートの表面から見えないようにするためである。但し、下地材の素材感を活かしたい場合には、その限りではない。
【0085】
基材シート11に対する隠蔽性(隠蔽性層)や模様層12の付与は、基材シート11の表面或いは裏面、又はその両方に、グラビア印刷、凹版印刷、フレキソ印刷、シルク印刷、静電印刷、インクジェット印刷などの公知の印刷方法によって行われていてもよい。この場合に用いられるインキは、公知のインキであってもよく、例えば、ビヒクルに、染料或いは顔料などの着色剤、体質顔料などを添加し、さらに可塑剤、安定剤、ワックス、グリース、乾燥剤、硬化剤、増粘剤、分散剤、充填剤などを任意に添加して溶剤、希釈剤などで充分混練してなるインキであってもよい。
【0086】
また、基材シート11とは別の任意の転写用基材シートに、上記形成方法などによって隠蔽性層或いは模様層、又はその両方を形成しておき、熱ラミネート法、ドライラミネート法、ウエットラミネート法、又は押出ラミネート法などにより、基材シート11と貼り合わせた後に、転写用基材シートを剥離することにより、隠蔽性層或いは模様層、又はその両方を基材シート11上に転写する方法を用いることもできる。
【0087】
また、基材シート11の製造方法としてTダイ押出法を用いる場合には、それを製膜するための合成樹脂材料を染料や顔料などの隠蔽性のある着色剤により直接着色して加熱溶融状態でTダイから押出して、得られる基材シート11を着色して隠蔽性を付与するようにしてもよい。この場合のTダイ押出法における基材シート11の着色方法としては、ドライカラー法やマスターバッチ法などがあるが、特に限定されるものではない。ドライカラー法とは、顔料を分散助剤や界面活性剤で処理した微粉末状の着色剤を、基材シート11を製膜するための着色されていない通常の合成樹脂材料中に直接混入して着色を行う方法である。一方、マスターバッチ法とは、基材シート11を製膜するための着色されていない通常の合成樹脂材料と高濃度の顔料を、溶融混練して予備分散したマスターバッチペレットを予め作製しておき、押出ホッパ内でこのマスターバッチペレットと基材シート11を製膜するための着色されていない通常の合成樹脂材料とをドライブレンドする方法である。
【0088】
また、基材シートに模様層を施す方法としては、基材シートの表面に施す方法と、基材シート自体(基材シートの層内)に施す方法とがある。表面に施す方法としては上記のような印刷方法や転写方法を用いることができる。基材シート自体に施す方法としては、高濃度の顔料を基材シートを構成する樹脂とは流動特性の異なる樹脂に溶融混練して予備分散したマスターバッチペレット、木粉、ガラス粉末などを、基材シートを製膜するための隠蔽性を付与した上記合成樹脂材料に添加して加熱溶融し、押出し、製膜する方法が挙げられる。これにより、隠蔽性のある基材シート自体にマスターバッチペレット、木粉、ガラス粉末などによる模様を付与することが可能となる。基材シート自体に着色隠蔽性や模様を付与するこれらの方法と、前述した印刷方法、転写方法などを併用することもできる。
【0089】
また、隠蔽性のある基材シートの製造方法としてカレンダー法を用いる場合において、同様の手法、即ち基材シートをカレンダー法にて製造しながら、同時に基材シート自体に着色隠蔽性や模様を付与する方法、またはこれらの方法と前述した印刷方法、転写方法などを併用した手法で、基材シートに対して隠蔽性および模様を付与することができる。
【0090】
化粧シート100は、基材シート11上に模様層12が設けられている模様付基材シート1を備えているが、基材シート11の表面或いは裏面、又はその両方に、隠蔽性層及び模様層のうちの少なくとも一つが設けられているものを備えていてもよく、基材シート自体に隠蔽性や模様が施された基材シートを備えていてもよい。
【0091】
本実施形態の化粧シートにおいては、化粧シートの表面の手触り感や、より一層の意匠感を得るため、透明樹脂層3(例えば、樹脂層Bなどの最表層)に凹陥模様を施し、さらに必要に応じてその凹陥部内に充填インキを埋め込むようにしてもよい。また、化粧シートは、意匠感や諸物性などを更に高める観点から、最表層として表面保護層が積層されていてもよい。
【0092】
表面保護層の積層方法は、公知の技術を用いればよく、例えばグラビアコーティング法を用いて、厚み3~20μmで積層してもよい。材料系としては、アクリル系、エステル系、ウレタン系などを用いることができ、その硬化形態としては、イソシアネート硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型などを単独或いはハイブリッドで用いる方法が挙げられる。
【0093】
本実施形態の化粧シートにおいては、木質系、無機系、及び金属系の被着基材との密着力を高めるか点から、化粧シート裏面に、プライマーコート層が積層されていてもよい。
【0094】
プライマーコート層の積層方法は、公知の技術を用いればよく、例えばグラビアコーティング法を用いて、厚み1~5μmで積層してもよい。材料系としては、イソシアネート硬化型のポリエステル系材料を用いることができる。また、化粧シートをロール状にした際のブロッキング(重ね合わせた化粧シート同士が密着しすぎてしまい、剥離しづらくなる現象)を防止する為に、プライマーコート層には平均粒径1~10μmのシリカなどの無機系粒状材料が添加されていてもよい。
【0095】
<化粧材>
本実施形態の化粧材は、基材と、該基材に貼り合わされた本実施形態の化粧シートと、を備える。
【0096】
化粧シートの被着材である基材は、化粧材の用途、種類等に応じて適宜選択でき、例えば、無機系(非金属系)、金属系、木質系、プラスチック系等の材質の基材が挙げられる。
【0097】
無機系の基材としては、タイル、石膏ボードなどが挙げられる。金属系の基材としては、鋼板、アルミ板などが挙げられる。木質系の基材としては、MDF(中密度繊維板)、合板などが挙げられる。プラスチック系等の基材としては、ポリプロピレン系、塩ビ系、ポリエステル系、アクリル系、スチレン系のボードなどが挙げられる。
【0098】
化粧シートと基材との貼り合わせには、接着剤が用いられていてもよい。接着剤としては、ホットメルト系接着剤、有機溶剤系接着剤、水系接着剤が挙げられる。接着剤の材質は、ウレタン系、エステル系、アクリル系、酢酸ビニル系などであってもよい。
【0099】
本実施形態の化粧材は、本実施形態の化粧シートが耐熱剥離強度に優れていることから、上述した接着剤を介して基材と化粧シートとが高温で貼り合わされたものであってもよい。加熱温度は、時短化、接着強度の観点から、150℃以上であってもよく、化粧シートの意匠変化の抑制(例えばエンボス凹凸模様の保持)の観点から、180~250℃であってもよい。
【実施例0100】
以下、実施例を挙げて本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0101】
<化粧シートの作製>
(実施例1~8)
基材シートとして、ランダムポリプロピレン樹脂を93.3質量部、無機顔料を6質量部、フェノール系酸化防止剤を0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を0.3質量部、及びブロッキング防止剤を0.2質量部含有する樹脂組成物を、溶融押出して得られたシートを用意した。このシートの表面にコロナ処理を施した後、グラビア印刷法により絵柄用インキ(東洋インキ株式会社製;V351)を使用して木目模様を施し、模様層を形成した。
【0102】
次に、木目模様の模様層上に、2液硬化型のウレタン系アンカーコート剤(タケラックA3210(主剤、三井化学株式会社製、商品名)とタケネートA80(硬化剤、三井化学株式会社製、商品名)とを質量比8:1で混合)をグラビア印刷法により厚み約1μmで塗工して、アンカーコート層を形成した。
【0103】
次に、アンカーコート層の上面に、表1に示す材料を同表に示す配合割合(質量部)でブレンドしたものを、同表に示す押出厚みで、樹脂層Aとアンカーコート層とが接するように、押出温度230℃でTダイ押出ラミネート法により単層構成の透明樹脂層を積層した。次いで、その表層をコロナ処理した後に、トップコート剤(主剤:W480EグロスUVH、硬化剤:W325N 配合比100/10、いずれもDICグラフィックス社製)を6g/m2(溶剤分揮発後)となるように塗工して、化粧シートをそれぞれ作製した。
【0104】
(実施例9~15及び比較例1~3)
基材シートとして、ランダムポリプロピレン樹脂を93.3質量部、無機顔料を6質量部、フェノール系酸化防止剤を0.2質量部、ヒンダードアミン系光安定剤を0.3質量部、及びブロッキング防止剤を0.2質量部含有する樹脂組成物を、溶融押出して得られたシートを用意した。このシートの表面にコロナ処理を施した後、グラビア印刷法により絵柄用インキ(東洋インキ株式会社製;V351)を使用して木目模様を施し、模様層を形成した。
【0105】
次に、木目模様の模様層上に、2液硬化型のウレタン系アンカーコート剤(タケラックA3210(主剤、三井化学株式会社製、商品名)とタケネートA80(硬化剤、三井化学株式会社製、商品名)とを質量比8:1で混合)をグラビア印刷法により厚み約1μmで塗工して、アンカーコート層を形成した。
【0106】
次に、アンカーコート層の上面に、表2又は表3に示す材料を同表に示す配合割合(質量部)でブレンドしたものを、同表に示す押出厚みで、樹脂層Aとアンカーコート層とが接するように、押出温度230℃でTダイ共押出ラミネート法により樹脂層A及び樹脂層Bの2層構成の透明樹脂層を積層した。次いで、その表層をコロナ処理した後に、トップコート剤(主剤:W480EグロスUVH、硬化剤:W325N 配合比100/10、いずれもDICグラフィックス社製)を6g/m2(溶剤分揮発後)となるように塗工して、化粧シートをそれぞれ作製した。
【0107】
(実施例16)
2液硬化型のウレタン系アンカーコート剤に代えて、水酸基変性ポリオレフィンであるユニストールP-801(三井化学株式会社製、商品名)を用いてアンカーコート層を形成したこと以外は上記と同様にして、化粧シートを作製した。
【0108】
<材料の評価方法>
沸騰ヘプタン溶解残分は以下の方法によって測定した。
(1)試料であるポリマー2gをp-キシレン200mlに加え、オイルバス中で撹拌しながら120℃まで昇温した後、さらに30分撹拌を続け、ポリマーを完全に溶解させて均一な溶液を調製する。
(2)次いで、p-キシレン溶液を、電源を切ったオイルバス内で24時間放置し、室温(23℃)まで徐冷して、ポリマーを析出する。ポリマーの析出物を含むp-キシレン溶液を2000mlのメタノールに投入し、4時間攪拌の後、ポリマーの析出物を濾別し、減圧下70℃で24時間乾燥する。
(3)乾燥したポリマー粉末1gを円筒濾紙に詰め、ソックスレー抽出器を用いてn-ヘプタンで7時間抽出を行う。その後、抽出残分を円筒濾紙ごと減圧下70℃で24時間乾燥する。
(4)抽出前後の乾燥重量を測定し、下記式にしたがって沸騰ヘプタン溶解残分を算出する。
沸騰ヘプタン溶解残分(%)=(抽出後の乾燥重量)×100/(抽出前の乾燥重量)
【0109】
上記の試験に供される試料は、200℃で射出成型したポリマー(サイズ:2mm×2mm×2mm)を、恒温オーブンを用いて、暗室下、大気中、40℃で3日間養生することにより作成した。
【0110】
実施例及び比較例で作製した化粧シートについて、下記の評価を実施した。
【0111】
[25℃環境下での剥離強度(N/in)]
化粧シートから1インチ幅で切り出した短冊状の評価用サンプルを用意し、その一端のラミネート界面(樹脂層Aとアンカーコート層との界面)近傍を有機溶剤などを用いて予め一部剥離し、23℃環境下において、剥離速度50mm/分で剥離試験を行った。なお、剥離は、一部剥離した部分の上下をそれぞれ治具でチャックし、未剥離部(これから剥離する部分)をチャックの移動方向に対して垂直に保持してT型にして実施した。
【0112】
[80℃で72時間加熱した後の剥離強度(N/in)]
評価用サンプルを80℃のオーブンで72時間加熱したこと以外は、25℃環境下での剥離強度の測定方法と同様にして、剥離試験を行った。
【0113】
[100℃で72時間加熱した後の剥離強度(N/in)]
評価用サンプルを100℃のオーブンで72時間加熱したこと以外は、25℃環境下での剥離強度の測定方法と同様にして、剥離試験を行った。
【0114】
[促進耐候性試験後の剥離強度(N/in)]
化粧シートをサンシャインウェザー耐候試験機(ブラックパネル63℃、120分中18分の水噴霧)に投入し、所定の時間経過(2000時間)後に取り出した。試験後の化粧シートについて、25℃環境下での剥離強度の測定方法と同様にして、剥離試験を行った。
【0115】
[表面の鉛筆硬度]
先端が研磨紙で平らにされた鉛筆(Hi-uni、三菱鉛筆株式会社製)を、化粧シート表面に対して、速度0.8mm/sで距離7mm押す試験を行った。化粧シートの表面に傷跡を生じなかった最も固い鉛筆の硬度(鉛筆硬度)を測定した。
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
なお、表1~3中に示される材料の詳細は以下のとおりである。
【0120】
(樹脂層A)
ランダムポリプロピレン:プライムポリプロ S235WC(株式会社プライムポリマー製、商品名)、MFR:11(230℃)、沸騰ヘプタン溶解残分:75%
ホモポリプロピレン:E2000GV(株式会社プライムポリマー製、商品名)
プロピレン系エラストマー a:Catalloy(サンアロマー株式会社製、商品名)、MFR:9.5(230℃)、沸騰ヘプタン溶解残分:46%
プロピレン系エラストマー b:タフマー PN-20300(三井化学株式会社製、商品名)、MFR:30(230℃)、沸騰ヘプタン溶解残分:13%
エチレン系エラストマー:タフマー DF605(三井化学株式会社製、商品名)、MFR:0.5(190℃)、密度:861kg/m3
高分子アルキルHALS:Uvinul 5050H(BASFジャパン株式会社製、商品名)、分子量3000~4000
低分子HALS:Tinuvun 765(BASFジャパン株式会社製、商品名)、分子量509
高分子HALS:Chimassorb 944(BASFジャパン株式会社製、商品名)、分子量2000~3100
改質剤:ユーメックス1001(三洋化成工業株式会社製、商品名)
【0121】
(樹脂層B)
ホモポリプロピレン:E2000GV(株式会社プライムポリマー製、商品名)
コンパウンド:E2000GV(株式会社プライムポリマー製、商品名)を90質量部と、Chimassorb 944(BASFジャパン株式会社製、商品名、ヒンダードアミン系光安定剤)を5質量部と、チヌビン326(BASFジャパン株式会社製、商品名、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)を5質量部との混合物を、2軸押し出し機で溶融混合し、ペレット化したもの。
【0122】
(アンカーコート層)
C1:タケラックA3210(三井化学株式会社製、商品名)(イソシアネート硬化型ポリエステル系(タケネートA80と8/1で混合))
C2:ユニストールP-801(三井化学株式会社製、商品名)(水酸基変性ポリオレフィン)