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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109446
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】植物栽培設備
(51)【国際特許分類】
   A01G 31/00 20180101AFI20240806BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A01G31/00 612
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014248
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 次郎
(72)【発明者】
【氏名】手塚 達也
(72)【発明者】
【氏名】多田 誠人
【テーマコード(参考)】
2B314
【Fターム(参考)】
2B314MA39
2B314PD43
2B314PD45
2B314PD52
(57)【要約】
【課題】蒸散量が過剰となっても萎れを防止させる植物の光合成の状態に応じて適切なハウス内の各種装置の制御を行える植物栽培設備を提供することを課題とする。
【解決手段】太陽光を通過させる透明性部材で覆われたハウスH内で養液にて作物を栽培する植物栽培設備において、生育植物の温度を測定できる植物体温測定手段24bを備え、植物体温が予め設定した温度以上に上昇すると養液を培地1に供給するよう構成した。
【選択図】 図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を通過させる透明性部材で覆われたハウス(H)内で養液にて作物を栽培する植物栽培設備において、生育植物の温度を測定できる植物体温測定手段(24b)を備え、植物体温が予め設定した温度以上に上昇すると養液を培地(1)に供給するよう構成したことを特徴とする植物栽培設備。
【請求項2】
植物生育診断装置(24)にカラーカメラ(31)及び白色光源(32)を設け、白色光源(32)を点灯してカラーカメラ(31)により催色期の果実数又は割合に基づいて果実の収穫適期を予測する構成とした請求項1に記載の植物栽培設備。
【請求項3】
積算気温データを入力し、収穫予測日数を演算する構成とした請求項2に記載の植物栽培設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、養液で植物を栽培するハウス型の植物栽培設備に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、太陽光を浴びるビニルハウス内において、養液で植物を栽培する植物栽培設備が記載されている。この植物栽培設備においては、植物体温を計測し、日射の光強度を測定する間隔を変更し、遮光カーテンの制御を行う構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-184721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構成によると、時間制御及び調光制御の制御手段を備えているので、夏季、冬季、春秋季の一年中に亘って有効であるが、蒸散量が過剰のときには植物の水分が減少し萎れる恐れがある。
【0005】
本発明は、蒸散量が過剰となっても萎れを防止させる植物栽培設備を提供することを課題とする。
【0006】
また、果実の収穫時期を適正に予測できる植物栽培設備を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、太陽光を通過させる透明性部材で覆われたハウスH内で養液にて作物を栽培する植物栽培設備において、生育植物の温度を測定できる植物体温測定手段24bを備え、植物体温が予め設定した温度以上に上昇すると養液を培地1に供給するよう構成した。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の発明において、植物生育診断装置24にカラーカメラ31及び白色光源32を設け、白色光源32を点灯してカラーカメラ31により催色期の果実数又は割合に基づいて果実の収穫適期を予測する構成とした。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2に記載の発明において、積算気温データを入力し、収穫予測日数を演算する構成とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によると、植物体温が上昇するとこれを検知して養液を培地1に供給するものであるから、植物の萎れを防止できる。
【0011】
請求項2記載の発明によると、請求項1に記載の効果に加え、カラーカメラ31で催色期の果実数又は割合によって収穫適期を精度よく予測できる。
【0012】
請求項3に記載の発明によると、請求項2に記載の効果に加え、積算温度データを加味した収穫適期となり一層精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態にかかる植物栽培設備のシステム図
図2】同植物栽培設備の内部説明図
図3】同植物栽培設備の内部説明図
図4】光合成機能の測定を示すグラフ
図5】同設備の制御ブロック図
図6】同実施形態における植物温度測定手段による給液制御のシステム説明図
図7】(A)カラーカメラ搭載の植物生育診断装置の斜視図、(B)その背面図
図8】別例の植物栽培設備の内部説明図
図9】植物栽培状態を示す側面図
図10】フローチャート
図11】樹勢パターン図
図12】葉菜の垂直栽培システムを示す背面図
図13】(A)葉菜の垂直栽培システムを示す側面図、(B)その背面図
図14】給液制御システム説明図
図15】防除走行装置の斜視図
図16】走行部周辺構成の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態の植物栽培設備について、以下説明する。
【0015】
ハウスHは太陽光を透過するビニルハウスである。ハウスH内には横長に延びる栽培用の培地1を多数並設する。培地1に移植した苗の茎kは誘引紐2に沿って伸長する。誘引紐2の上端には誘引フック3を設け、誘引フック3は培地1と交差する姿勢の誘引ワイヤ4に引っ掛ける構成である。
【0016】
培地1に養液を供給するシステムについて説明する。
【0017】
肥料を収容する肥料タンク5と、PH調整剤を収容するPH調整タンク6と、希釈用の原水を収容する原水タンク7、原水及び肥料を混合して養液にする混合タンク8を備える。
【0018】
混合タンク8から培地1へ養液を供給する供給管9と、培地1から養液を排出する排液管10を設ける。供給管9には養液を培地1に供給する供給ポンプ11を設け、排液管10は排出された養液を収容する排液タンク13に接続する。排液タンク13の養液を混合タンク8に供給する排液ポンプ12及び戻し管14を設け、養液を再利用する構成である。養液はその濃度を養液濃度管理センサ15で測定し、濃度(いわゆるEC値)が設定値になるように原水・肥料・PH調整剤を適宜ポンプ16、17、18で供給する。
【0019】
ハウスHの天井部20には換気用の開閉窓21を設ける。また、ハウスHの上部にはノズルで細霧を噴射する加湿器22を設ける。ハウスH内には、ハウスHを透過する太陽光を遮光する遮光カーテン23を設ける。また、培地1間を走行しながら植物の光合成の状態を測定する光合成測定装置24aや、後述植物体温を測定する熱画像カメラ24bを搭載した植物生育診断装置24を設ける。開閉窓21、加湿器22、遮光カーテン23、植物生育診断装置24は制御部25(植物栽培設備の中央制御盤)で制御する構成である。また、ハウスHを照射する日射量を計測する日射計26を設ける。
【0020】
植物生育診断装置の光合成測定装置24aは培地1間のスペースを無人で走行しながら、植物に光を照射して植物の光合成の状態を測定することができる。また、熱画像カメラ24bは、撮像された静止画によって植物の水分含有状況を解析できる。
【0021】
光合成測定装置24aの測定結果に基づく植物栽培設備の各装置の制御について、以下、説明する。
【0022】
遮光カーテン23は、日射計26が設定する日射量(例えば、日射量600W/m2以上)を計測すると、遮光カーテン23を閉制御する。光合成測定装置24aが光合成の状態、すなわち光合成機能が低下していると設定されている点P(図4参照、例えば1.5P/S)を下回ることを測定すると、設定する日射量を低く設定するよう補正する(例えば、日射量300W/m2以上)。これは、光合成機能が低下している時に、強い太陽光の照射を受けると植物にストレスがかかり萎れる場合があるためである。本実施の形態では日射量を設定基準値としているが、日射積算量を設定基準値としても良い。
【0023】
開閉窓21の開閉制御について説明する。開閉窓21は室温計27で測定するハウスH内の室温が設定値以上(例えば、22℃以上)を測定すると、開閉窓21が開いて、ハウスH内を換気して室温を下げる制御を設定している。光合成測定装置24aによる光合成の状態が点P(例えば1.5P/S)を下回ることを測定すると、光合成機能が低下していると判定され室温を低く補正する(例えば、18℃)。これは、光合成機能が低下している時に、室温が高いと、植物からの蒸散量が増加し、植物が萎れる恐れがあるためである。また、日射計26は高価なので、廉価な室温計27で代替することも可能である。また、室温が高い時には加湿器22で加湿して室温を下げることも可能である。
【0024】
次いで加湿器22の加湿制御について説明する。
【0025】
ハウスH内は、湿度計28で測定した室内の湿度が設定湿度以下(例えば湿度60%以下)になると、加湿器22が作動して加湿する制御を設定としている。光合成測定装置24aによって光合成機能が低下していると判定されている点P(例えば1.5P/S)を下回り、かつ、室温が設定以上高いか、又は、日射量が設定値以上になると、設定する湿度を高く補正する(例えば、湿度75%)。これは、光合成機能が低下している状態で強い太陽光を受けるか、又は室温が高いと、植物の蒸散量が増加し、植物が萎れる場合があるためである。そのため、室内の湿度を高くする制御を行うことで、植物の蒸散を抑制することができる。
【0026】
次いで養液濃度(EC値)の管理について、養液濃度は、養液濃度管理センサ15により設定する養液濃度(例えば、8.0ds/m)になるように制御されている。光合成測定装置24aが光合成の状態、すなわち光合成機能が低下していると設定されている点P(例えば1.5P/S)を下回ることを測定すると、養液濃度の設定値を下げる補正を行う(例えば7.5ds/m)。これによって、光合成機能が低下している時は、養液濃度を下げることで、植物による水の吸水を行い易くして植物を萎れにくくすることができる。
【0027】
前述の遮光カーテン23の閉制御・開閉窓21の開制御・加湿器22の加湿制御を行うタイミングは、光合成機能の測定値が設定以下を検出した日の翌日が望ましい。図4のグラフで説明すると、測定した3日目に、光合成機能を示す数値が設定値Pを下回った場合(ハ)に、4日目に前述の設備の各装置の制御を行うようにする。これは、本実施の形態の光合成測定装置24aを搭載する植物生育診断装置24は、設備内で管理作業を行うオペレータが居る昼間には走行せず、オペレータが設備内に居ない夜間に培地間を走行して植物の光合成を測定するため、日射量や室温の高くなる翌日の昼間に各種制御を行うのが適切なためである。図4に示すように光合成機能が1日目から3日目まで連続して低下しているのは、天候が曇りや雨等で日射量が低下している場合が多い。そして、4日目に光合成機能を示す数値が設定値Pを超えたのは晴天になった場合が多い。また、図4の4日目の光合成機能を示す数値(ニ)が設定値Pを超えると、翌日の前述の補正した設定基準値を初期に設定した設定基準値に戻す。
【0028】
次いで、図1及び図6に基づき。植物生育診断装置24に搭載され生育植物の温度を測定できる植物体温測定手段としての熱画像カメラ24bによる給液制御について説明する。この熱画像カメラ24bによる昼間の撮像静止画を解析し、植物の含有水分状況を判定する。水分不足と判定されると、供給ポンプ11を駆動して養液を培地1に供給する。図例では、供給ポンプ11を一基とし、供給管9の各培地1毎、またはグループ(図例では5列培地)毎に供給切替弁30,30…を設けて、熱画像カメラ24bにて解析された培地1に対応する供給切替弁30を開作動し対応する培地1に対して養液供給する構成としている。なお、水分不足の場合には蒸散できなくなり気化熱による植物体温低下が抑制されもって植物体温が上昇する関係にある。したがって上例では植物体温を把握できる手段として熱画像カメラ24bを用いている。植物体温測定手段としてこの熱画像カメラ24bに代替する手段を用いてもよい。
【0029】
次いで、対象がトマト果実tの場合において、前記植物生育診断装置24に、カラーカメラ31(センサ)及び白色光源32を搭載することで、収穫適期予測を行う(図7)。すなわち、クロロフィル蛍光画像によってトマト果実部分を抽出し、カラー画像によってトマト果実の色相を解析する。果実色相より果実の発達ステージである催色期の果実数又は割合を算出し予め設定した設定値との比較によって収穫適期であるか否かを判定できる。
【0030】
なお、トマト果実の成熟発達過程と色相の関係は、過程毎に色相を括弧で示せば、未熟期(緑)、緑熟期(緑)、催色期(うす緑)、桃熟期(ピンク)、赤熟期(赤)となる。催色期のトマト果実は、肥大も停止し、色づいていく時期の転換期であって、この果実を観察することで収穫適期の予測に有効であるとの見地に基づく。
【0031】
また、クロロフィル蛍光画像によると、果実領域は葉領域よりも輝度が高く画像で判別区分し得るものである。
【0032】
さらに、果実の発達は気温にも影響されるので、上記の催色期の果実を何日後に収穫するかを積算気温から判定するものである。なお、積算気温と収穫予測日数の相関については、過去から蓄積の積算データに基づくものとする。また積算気温データについては気象予報サイト等から取得できる。
【0033】
次いで、図8に基づき培地1重量と湿度に基づく最適蒸散湿度制御について説明する。培地1の下方に重量計35を備え、培地1重量の時間変化を測定することで植物の内部水分値(%)を推定する。この内部水分値とハウスH内湿度計28の測定湿度によって、蒸散に最適な外気湿度を演算する。そして、この演算される最適湿度になるよう前記の換気用の開閉窓21を開けたり、細霧を噴射する加湿器22を作動させることによって最適蒸散湿度制御を行うことができる。
【0034】
次いで図9に基づき、果実重量に基づく給液制御について説明する。前記誘引ワイヤ4と誘引フック3の間に重量計36を設け、植物果実樹の重量を測定する。これによって培地1への給液制御を行うものであるから、的確な給液制御を実行できる。
【0035】
なお給液制御については、上記重量による管理に加え、積算日射量により給液の有無や給液量を設定することにより、更に的確に給液制御できる。さらに予め最低日射量を設定しておき、この最低日射量以下の場合には積算日射量をカウントしないこととして、給液過多を防止できる。
【0036】
図10に基づき積算日射量による給液制御について説明する。図Dのフローチャートに示すように、日射量αを定期的に測定し(S101)、所定に設定された最低日射量(図例では200W)を超えるか否か判定され(S102)、超える場合は積算用データとして用いられ積算日射量σが算出される(S103)。積算日射量σと予め設定した設定積算日射量β(例えば100J)に達したか否か判定し(S104)、この設定積算日射量βに達すると、給液停止経過時間Tsが最低待ち時間Tmin(例えば30分)を超えていることを条件に、給液指令出力される(S105,S106)。そして、予め設定した給液時間Tmの間給液を継続すると給液停止する(S107,S108)。
【0037】
上記S104で設定積算日射量βに達しないときは、かつ給液停止経過時間Tsが最大待ち時間Tmax(例えば2時間)を超えてないことを条件に(S109)、次のタイミングで日射量測定(S101)に戻る構成である。S109で給液停止経過時間Tsが最大待ち時間Tmaxを越えると判断したときは、水分減退を予測して給液指令出力される。
【0038】
また、S102で日射量αが高日射量状態、例えば900W/m2を超える場合は、前記最低待ち時間Tmin経過で給液を実行する構成としている。急激な蒸散による作物の水分ストレスを低減できる。
【0039】
次いで、図11に基づき、植物樹勢強弱判断による二酸化炭素濃度制御について説明する。図11は、横軸を生殖生長~栄養生長とし、縦軸を植物樹勢の強弱とし、茎kの径(以下、茎径)と生長点からトップ花房fまでの距離の2要素をもって、4つのパターン表示(図11(a)~(d))したものである。このパターン表示を定期的に実施し、二酸化炭素供給制御を実行するものである。例えば、この図11のパターン(c)およびパターン(d)はいずれも茎径が細く樹勢が弱いため、二酸化炭素濃度を高くして樹勢をプッシュする。パターン(b)の場合は、成長が過大にて二酸化炭素濃度を抑制する、等である。各パターンにある状態から図11中央の良好なバランスに向けた管理を実行するものである。
【0040】
なお、生殖生長と栄養生長について、植物に実をつけさせるためにはある程度植物にストレスをかける必要がある。そして、植物へのストレスが大きくなると、光合成機能が低下し、植物は果実を付ける方向(生殖生長)に傾くが萎れるリスクを伴う。逆に、光合成機能が高くなると、植物の茎は太くなり長くなろうとする方向(栄養成長)に傾く。しかし、その分、果実をつけようとしなくなるので生産者としてはマイナスである。
【0041】
また、二酸化炭素の供給は、二酸化炭素を収容するタンクと開閉弁制御によってハウスH内に二酸化炭素を供給し又は停止する構成とし、制御部25からの指令信号に基づいて作動制御する構成である。
【0042】
次いで、図12図13により、高軒ハウスHで葉菜類を栽培する栽培装置について説明する。架台40に載置状の下フレーム41と天井部からチェン42で吊下げ状の上フレーム43との間に、上下フレーム41,43を連結すべく複数の培地ユニット44,44…を設ける。各培地ユニット44には、上下に複数の定植穴44a,44a…を備えており、この定植穴44aに葉野菜rを定植できる構成である。上フレーム43に沿い給液ホース45を設け、適宜に培地ユニット44に供給できるよう構成する。なお、下フレーム41に沿い排水樋46を設け、培地ユニット44を伝って下方に辿り着く養液を受けて回収又は循環できる構成としている。
【0043】
図14は、給液ホース45による給液回路の改良構成を示す。夏季の給液ホース45内は高温となり、培地供給すると却って悪影響する。そこで、潅水ユニット47を備えた給液ライン48に複数の給液ホース45,45…を接続し、給液ホース45,45の終端側は排水ライン49に集合する構成とし、排水ライン49に排水用電磁弁50を介在して排液地下タンク51に排出できるよう構成している。夏季の日射により給液ホース45,45…が高温になると排水用電磁弁50を設定時間開作動し、給液ホース45,45…を通過する給液は排液地下タンク51に回収される。設定時間経過後に排水用電磁弁50を閉じ作動すると、給液ホース45,45…に設ける所定ピッチ毎に設ける給液ドリッパ52から培地ユニット44,44に供給できる。また、排液地下タンク51の排液は、再利用されるものである。このように構成すると、高温の養液を排水することで、できるだけ低温の養液を作物に与えることとなり、高温期における作物の根の伸長。生育の適正化が図れる。
【0044】
次いで、図15に基づき、施設内防除装置の改良構成について説明する。防除走行装置55は、前記植物生育診断装置24と同様であって、走行車体56に培地1間軌道Lを走行する車輪57を備える。走行車体56に防除タンク58及び薬液噴射ノズル59aを縦方向に複数備えた防除アーム59を左右一対立設し、さらにその近傍に、エア噴射ノズル60aを縦方向に複数備えたエア噴射アーム60を左右一対に備えている。
【0045】
植物の周りには常時蒸散等に起因する湿気に包まれており、茎や葉を覆う膜状を呈している。この雰囲気中で薬剤散布を行っても上記膜状の存在によって所定の防除効果が得られない恐れがある。そこで前記のように、防除アーム59の近傍にエア噴射アーム60を備えて防除に先立ってエア噴出することにより茎や葉周辺の湿気を吹き飛ばすことにより薬剤噴射ノズル59aからの薬剤付着を効果的に行え、ひいては薬剤散布量の節減につながる。
【0046】
なお図16は、走行車体56の内部構成を示し、走行用モータ61、走行ペダル62を備え、走行ペダル62の踏み込み操作でモータ61駆動し走行車輪57を駆動する構成である。走行車体56の下方に車輪57が軌道Lを走行するときにはこれを検知して変位するレール検知スイッチ63を備える。レール検知スイッチ63は車輪57が軌道から外れると走行制御部に軌道脱出の旨信号出力し、走行モータ61を停止出力する。したがって、走行ペダル62踏込みであっても走行車体56を停止して安全である。つまり、走行車体56の車輪57が軌道Lから外れて平坦部に至ると負荷が軽くなる傾向となって走行速度増加の一因となっていて作業者に危険を伴っていたが、上記のようにレール検知スイッチ63の設置と走行モータ61停止制御によって安全を確保できる。なお、平坦部で走行を再開する場合には再度走行ペダル62を踏み込むことで走行モータ61が起動するよう構成するとよい。
【符号の説明】
【0047】
1 培地
24 植物生育診断装置
24b 熱画像カメラ(植物体温測定手段)
31 カラーカメラ
32 白色光源
H ハウス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16