(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109449
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】複合管の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 11/11 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
F16L11/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014258
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金平 豊
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】湯川 雅己
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CA12
3H111CB14
3H111CB29
3H111EA02
(57)【要約】
【課題】波形管に管径方向内側へ突出する保持突起が設けられた複合管において、波形管の成形時に、冷却固化前の波形管の特に保持突起と内管との熱的接触が起きるのを抑制又は防止する
【解決手段】内管10の外周面にシリコーンオイル及びアクリル含有液の少なくとも一方からなる融着阻害液13を塗布する。該内管10を波形管成形部32に導入し、波形管成形部32によって、前記塗布後の内管10の周りに管径方向内側へ突出する保持突起23を含む波形管20を成形する。波形管20の管軸から保持突起23の突出端23eまでの距離D
23が、内管10の外半径R
10と実質的に等しくなるようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管軸方向に交互に並んだ大径部及び小径部、並びに管径方向内側へ突出された保持突起を有する可撓性の波形管と、前記波形管によって被覆された可撓性の内管とを含み、前記波形管の管軸から前記保持突起の突出端までの距離が前記内管の外半径と実質的に等しい複合管を製造する方法であって、
前記内管の外周面にシリコーンオイル及びアクリル含有液の少なくとも一方からなる融着阻害液を塗布する工程と、
前記内管を波形管成形部に導入する工程と、
前記波形管成形部によって、前記塗布後の内管の周りに前記波形管を成形する工程と、
を備えたことを特徴とする複合管の製造方法。
【請求項2】
前記成形工程において、前記波形管となる発泡樹脂を発泡倍率1.05倍~4倍に発泡させる請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管を波形管からなる被覆層で被覆してなる複合管の製造方法に関し、特に波形管の保持突起によって内管が波形管と同軸に保持された複合管の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、給水給湯用の可撓管は表面が柔らかいため、被覆層を付けて複合管とした製品が広く普及している。被覆層を発泡樹脂層としたタイプは、低価格で納まりが良く、かつ角部での引き摺り傷等に比較的強いことで市場の支持を集めている。さらに滑りやすく角に引掛かかりにくくしたり、保温性をより高めたり、生曲げ部分の内まわり側に発生するたるみやシワが目立たないようにしたり、継手接続時の内管露出性をさらに良くしたいとの要請もある。被覆層として、大径部と小径部が管軸方向に交互に形成された波形管(コルゲート管)を用いることにすれば、このような要請に応えることができる。
【0003】
特許文献1には、内管を波形管で覆った複合管の製造方法が記載されている。樹脂材料を管状に成形することにより内管を形成して硬化させる。硬化された内管の外周側で、複数の樹脂材料をそれぞれ管状にして共押し出しすることにより、内管を覆う複数の被覆層を形成する。続いて、波付け型によって、複数の被覆層を波形管に成形する。
【0004】
このようにして製造された複合管においては、波形管の大径部と内管との間はもちろんのこと、波形管の小径部と内管との間にも径差による空隙が形成されている。当該空隙は、押出成型機の内管送出口と被覆層となる樹脂材料の押出し口とを仕切る環状壁(内筒)の厚さや、波付け成形時のバキューム等による拡径に起因して形成されたものであり、製造工程上、不可避的なものと言える。このような空隙があると、内管の内部を通る流体の圧力(内圧)、流量、温度などが急変したとき、内管がばたつくなどして、ウォーターハンマー(水撃)音や熱伸縮音が発生しやすい。かつ波形管が固いと、音が大きくなりやすい。特許文献1の方法においては、波形管を構成する複数の被覆層のうち内側被覆層を発泡樹脂によって形成することで、ウォーターハンマー等による発生音を抑制しているが、それだけでは十分でない。
【0005】
このような発生音については特許文献1が発表される20年以上前から、住都公団が主導したさや管ヘッダー工法によって一般に認知されている問題である。さや管ヘッダー工法での有力な消音方法は内管と波形管の間に、発泡樹脂製で消音テープと呼ばれるシートを挟み込むことである。
【0006】
特許文献2に記載の複合管においては、単層の発泡樹脂からなる波形管に管径方向内側へ突出する保持突起を設け、保持突起によって内管が波形管と同軸になるよう保持している。これによって、コストアップを避けながら発生音の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-226144号公報
【特許文献2】特開2021-041539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この種の複合管をインライン成形する際は、冷却固化前の波形管(被覆管)と内管との熱的接着(融着)に注意する必要がある。熱的接着が起きると、例えば内管の端部にコネクタを接続するために、波形管の端部を管軸方向につづめて内管の端部を露出させるなどの作業を行なうことが困難になる。
特許文献1の複合管においては、内管の硬化後に波形管(被覆層)を成形することによって、内管と波形管とが固着するのを抑制している。この点は特許文献2も同様であるが、特許文献2の複合管においては保持突起が内管と接触しているために熱的接着がより起きやすいとも言える。
本発明はかかる事情に鑑み、波形管に管径方向内側へ突出する保持突起が設けられた複合管において、波形管の成形時に、冷却固化前の波形管の特に保持突起と内管との熱的接触(融着)が起きるのを抑制又は防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明方法は、管軸方向に交互に並んだ大径部及び小径部、並びに管径方向内側へ突出された保持突起を有する可撓性の波形管と、前記波形管によって被覆された可撓性の内管とを含み、前記波形管の管軸から前記保持突起の突出端までの距離が前記内管の外半径と実質的に等しい複合管を製造する方法であって、
前記内管の外周面にシリコーンオイル及びアクリル含有液の少なくとも一方からなる融着阻害液を塗布する工程と、
前記内管を波形管成形部に導入する工程と、
前記波形管成形部によって、前記塗布後の内管の周りに前記波形管を成形する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記内管は、予め作成又は用意されたうえで前記塗布工程及び導入工程に供される。
前記塗布工程は、内管を波形管成形部に導入する前に限らず、内管を波形管成形部に導入中ないしは導入後かつ波形管の成形前に行ってもよい。
融着阻害液をノズルから霧状に塗布してもよく、ローラで塗布してもよい。
融着阻害液は、シリコーンオイル及びアクリル含有液のうち一方だけを含んでいてもよく、シリコーンオイルとアクリル含有液との混合液であってもよい。
アクリル含有液は、アクリル(PMMA)樹脂とアセトン等の溶媒液(分散液)との混合液であってもよい。
前記成形工程によって、大径部及び小径部、並びに保持突起を有する波形管が成形される。波形管の管軸から保持突起の突出端までの距離が内管の外半径と実質的に等しいから、保持突起の突出端の内接円が内管の外周面とほぼ一致し、保持突起の突出端が内管の外周面と近接又は接触する。
「実質的」とは、ウォーターハンマー音を抑制又は防止できる程度に保持突起によって内管を保持し得るのであれば、前記距離と前記外半径とが完全に一致していなくてもよく、公差や製造誤差等による僅かな(例えば1mm以下の)差異があってもよいとの趣旨である。
当該製造方法によれば、内管の外周面にシリコーンオイル及びアクリル含有液の少なくとも一方からなる融着阻害膜が形成される。該融着阻害膜が、成形中又は成形直後(冷却固化前)の高温の保持突起の突出端と内管の外周面との間に介在される。したがって、保持突起が熱的接着可能な温度帯であっても、保持突起と内管との熱的接着(融着)が起きるのを抑制又は防止できる。
このようにして製造された複合管においては、保持突起と内管との融着を抑制又は防止できるから、例えば内管の端部にコネクタを接続するために、波形管の端部を管軸方向につづめて内管の端部を露出させるなどの作業を容易に行なうことができる。また、保持突起の突出端が内管の外周面と近接又は接触することによって、内管が波形管と同軸になるよう保持される。これによって、ウォーターハンマー等による発生音を抑制できる。
【0011】
好ましくは、前記成形工程において、前記波形管となる発泡樹脂を発泡倍率1.05倍~4倍に発泡させる。これによって、波形管が柔らかくなり、衝撃音が低く、かつ響きにくくなる。したがって、ウォーターハンマー等による発生音を一層抑制できる。また、発泡により波形管が厚肉化され、保持突起が内管と確実に接するようにできるため、ウォーターハンマー音等を効果的に抑制できる。一方で、保持突起が熱的接着可能な温度帯で内管に確実に接触するため、熱的接着が起きるリスクが相対的に高まる。このため、シリコーンオイルやアクリルを含む融着阻害成分を内管に塗布しておくことは、発泡樹脂からなる波形管と内管との熱的接着の抑制を図るうえで有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、波形管に管径方向内側へ突出する保持突起が設けられた複合管において、波形管の成形時に、冷却固化前の波形管の特に保持突起と内管との熱的接触が起きるのを抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る製造方法によって製造された複合管を、一部を管軸方向に沿う断面にして示す正面図である。
図1(b)は、同図(a)の円部Ibの拡大断面図である。
【
図2】
図2は、前記製造方法を実施する製造装置の概略構成図である。
【
図3】
図3は、前記製造装置の一部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る複合管1を示したものである。複合管1は、例えば給水給湯用の配管として用いられる。複合管1は、内管10と、波形管20(被覆管)を備えている。
【0015】
内管10は、全長にわたって一定の円形断面の可撓性を有する管によって構成されている。内管10の内部が、水、湯などの流体が通る流体通路となる。内管10の管本体部11の材質としては、架橋ポリエチレン(PE-X)、ポリエチレン(PE)、高耐熱ポリエチレン(PE-RT)、ポリブテン、ポリプロピレン(PP)その他の合成樹脂が挙げられる。さらに、内管10の管本体部11は、ポリエチレン層を表皮に有した架橋ポリエチレン管(JISK6769のE種)であってもよく、金属強化多層構造などの金属を含む複合樹脂管であってもよい。上記材質は例示であり、可撓性、流体流通性などの所要の性能を確保し得るものであれば、内管10の管本体部11の材質として特に制限はない。
【0016】
図1(b)に示すように、内管10の管本体部11の外周面には、融着阻害層12が被膜されている。融着阻害層12は、シリコーンオイル又はアクリル含有液の少なくとも一方からなる融着阻害液13によって構成されている。シリコーンオイルの詳細組成、種類及びグレードは特に限定が無い。アクリル含有液としては、溶媒(分散液)にアクリル(PMMA)樹脂が溶解してなる液である。溶媒としては、例えばアセトンが用いられている。融着阻害層12が、シリコーンオイルとアクリル含有液との混合液であってもよい。融着阻害層12の厚みt
12は、好ましくはt
12=2μm~10μm程度である。
なお、融着阻害層12は、少なくとも複合管1の製造時の内管10に被膜されていればよく、製造後は、揮発、剥離等によって消失してもよい。
【0017】
図1(a)に示すように、内管10は、波形管20(コルゲート管)によって被覆されている。波形管20の内部に内管10が挿通されている。好ましくは、内管10と波形管20とはほぼ同軸上に配置されている。
【0018】
波形管20は、可撓性を有する樹脂によって構成されている。好ましくは、波形管20は、可撓性の発泡樹脂によって構成されている。波形管20の樹脂材料としては、架橋ポリエチレン(PE-X)、ポリエチレン(PE)、高耐熱ポリエチレン(PE-RT)、ポリブテン、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、プラストマーその他の合成樹脂が挙げられ、単一材質に限らず複数の材質を含む複合樹脂でもよい。上記は波形管20の材質の例示であり、波形管0の可撓性及び内管10に対する保護性などの所要の性能を確保し得るものであれば、波形管20の材質として特に制限はない。
【0019】
より好ましくは、波形管20は、非発泡樹脂層を有さず、発泡樹脂の単層によって構成されている。波形管20の発泡剤としては、例えば無機系の化学発泡剤や発泡性マイクロカプセルが用いられているが、これに限らず、フロンなどに代表される物理発泡剤や超臨界流体などを用いてよい。発泡剤の配合割合によって発泡倍率が調整される。波形管20を構成する発泡樹脂の発泡倍率は、好ましくは1.05倍~4倍である。
【0020】
図1(a)に示すように、波形管20は、大径部21及び小径部22を有し、波形断面になっている。大径部21と小径部22とが、波形管20の管軸方向に交互に並んでいる。大径部21は、波形管20の外部から見て環状の凸部(山部)となり、内部から見ると環状の凹部となっている。小径部22は、波形管20の外部から見て環状の凹部(谷部)となり、内部から見ると環状の凸部となっている。
【0021】
図1(a)に示すように、波形管20は、保持突起23を更に有している。保持突起23は、波形管20の管径方向内側へ突出されるとともに管軸方向及び周方向に分布している。波形管20の管軸L
20から保持突起23の管径方向内側への突出端23eまでの距離D
23は、内管10の外半径R
10と実質的に等しい。
【0022】
図1(b)に示すように、保持突起23の突出端23eが、内管10の外周面の融着阻害層12と近接し、好ましくは当接している。言い換えると、保持突起23の突出端23eと内管10の管本体部との間に融着阻害層12が介在されている。保持突起23によって、内管10が、波形管20と同軸をなすように保持され、波形管20に対して管径方向に変位不能に拘束されている。
【0023】
具体的には、波形管20の小径部22のうちの一部の小径部22Aが、他の小径部22Bより管径方向内側へ突出されることによって、保持突起23を構成している。小径部22が1個~複数個飛ばしで保持突起23となっている。例えば、14個飛ばしで保持突起23となっており、波形管20の管軸方向に隣接する保持突起23の間に例えば14個の小径部22Bが設けられている。もちろん、13個以下飛ばしでもよく、15個以上飛ばしでもよい。各小径部22が保持突起23を構成していてもよい。
【0024】
保持突起23は、波形管20の全周にわたる閉環状になっている。閉環状の保持突起23が、管軸方向に間隔を置いて配置されている。
なお、保持突起23は、閉環状に限らず、周方向の一部が途切れた開環状でもよく、波形管20の周方向の一部分に配置された小突起状でもよい。小突起状の保持突起の形状は円形状でもよく、四角形その他の多角形状でもよい。また、保持突起が、波形管20の管軸方向に延びる縦スジ状でもよく、複数の縦スジ状のもよく保持突起が波形管20の周方向に間隔を置いて配置されていてもよい。さらに、保持突起が螺旋状であってもよい。保持突起の配置パターンは、規則的でもよく、ランダムであってもよい。開環状又は小突起状の保持突起の場合、管軸方向に隣接する保持突起どうしが、波形管20の周方向に互いにずれて配置されていてもよい。波形管20が、閉環状、開環状、小突起状、縦スジ状、螺旋状等のうち2種類以上の保持突起を有していてもよい。
【0025】
図2は、複合管1の製造装置3を示したものである。複合管製造装置3は、発泡樹脂供給部30と、押出ノズル31と、波形管成形部32とを備えている。詳細な図示は省略するが、発泡樹脂供給部30は、波形管20の原料となる樹脂29を受け入れるホッパー、樹脂29を加熱溶融するヒータ、発泡剤の添加部、樹脂29と発泡剤を混錬して押し出すシリンダー及びスクリューを含む。ホッパー投入前の原料樹脂29に発泡剤が含まれていてもよい。
【0026】
図3及び
図4に示すように、押出ノズル31は、外筒31aと内筒31bを有する二重筒形状になっている。内筒31bの中心穴は、内管送出口31cを構成している。内管送出口31cに内管10が挿通される。好ましくは、内管送出口31cの口径は、内管本体11の外直径よりも挿通クリアランス及び融着阻害層12の厚み分だけ僅かに大きい。
【0027】
外筒31aと内筒31bとの間の環状空間は、樹脂29の押出し口31dを構成している。押出し口31dは、環状をなして内管送出口31cを囲んでいる。
【0028】
図2及び
図3に示すように、押出ノズル31の押出し方向の上流側(
図2において左側)には、融着阻害液塗布ノズル40が設けられている。融着阻害液塗布ノズル40の先端が、押出ノズル31へ導入前の内管10の外周面と対向している。融着阻害液13の供給源41が、融着阻害液塗布ノズル40に接続されている。
塗布ノズル40に代えて、塗布ローラによって融着阻害13を内管10に塗布するようにしてもよい。
【0029】
融着阻害液13が、シリコーンオイルとアクリル含有液との混合液である場合は、シリコーンオイル用の塗布ノズルと、アクリル含有液用の塗布ノズルとが別々に設けられていてもよい。あるいは、シリコーンオイルとアクリル含有液との混合液が1つの塗布ノズル40から塗布されるようになっていてもよい。
【0030】
図2及び
図3に示すように、押出ノズル31の押出し方向の下流側(
図2において右側)に波形管成形部32(コルゲーター)が配置されている。波形管成形部32は、2つの長円形の環状軌道32a,32bと、多数個の半割筒状の波付け金型33a,33bを備えている。2つの環状軌道32a,32bが、押出ノズル31の軸線(押出し方向)を延長した軸線L
33上で接するように平行に並べられている。
【0031】
第1の環状軌道32a上に第1の波付け金型33aが環状に並べられている。第2の環状軌道32b上に第2の波付け金型33bが環状に並べられている。これら波付け金型33a,33bが、対応する環状軌道32a,32bに沿って循環するように互いに同期して移動される。2つの環状軌道32a,32bの対をなす波付け金型33a,33bどうしが、軸線L33に添って平行移動する期間中、互いに合わさって閉じた筒状の波付け金型対33となる。複数の波付け金型対33が軸線L33上に一列に並べられている。
【0032】
図3に示すように、各波付け金型33a,33bひいては波付け金型対33の内周面(型面)には、大径部21を形成するための大径型面部34、及び小径部22を形成するための小径型面部35が形成されている。更に、所定の波付け金型対33の内周面(型面)には、保持突起23を形成するための保持型面部37(保持突起形成部)が形成されている。
【0033】
複合管1は、次のようにして製造される。
予め、内管10の管本体部11を成形して硬化させたり入手したりするなどして、用意しておく。
図2及び
図3に示すように、該管本体部11に塗布ノズル40から融着阻害液13を塗布することで、内管10の外周面に融着阻害層12を形成する。
そのうえで、内管10を押出ノズル31に導入し、内管送出口31cから波形管成形部32へ送り出す。内管10は、波付け金型対33の内部に導入されて送り方向の下流側(
図2において右側)へ送られる。
【0034】
併行して、発泡樹脂供給部30において、樹脂29を加熱溶融し、かつ所定の配合比の発泡剤を添加することによって所定の発泡倍率(好ましくは1.05倍~4倍)で発泡するようにしたうえで、該樹脂29を押出ノズル31へ供給する。押出ノズル31内においては高圧のため樹脂29は未だ発泡を開始していない。該樹脂29を、押出ノズル31の押出し口31dから波形管成形部32へ向けて押し出す。押出によって樹脂29に加わる圧力が低下するために、押出直後から発泡が開始される。
【0035】
押出し時の樹脂29Aは、押出し口31dと実質的に同じ内直径及び外直径の管状になっている。該管状の樹脂29Aが、波形管成形部32の軸線L33上の一列をなす波付け金型対33内に導入される。続いて、波形管成形部32の吸引穴(図示省略)からバキュームする。バキュームに代えて、管状樹脂29Aと内管10の間をブロー加圧してもよい。これによって、管状の樹脂29Aが発泡しながら拡径されて波付け金型対33の型面部34,35,37に密着され、波形断面の波形管20に成形される。該波形管20によって内管10が被覆される。
【0036】
波形管20の成形と同時に、保持突起23が形成される。内管10の外周面には融着阻害層12が被膜されているから、保持突起23の突出端23eは、融着阻害層12を介して内管10の外周面と接する。したがって、成形時又は成形直後(冷却固化前)の保持突起23が熱的接着可能な温度帯であっても、保持突起23と内管10との熱的接着(融着)が起きるのを抑制又は防止できる。
【0037】
このようにして、複合管1が作製される。複合管1においては、内管10が、保持突起23によって保持され、波形管20に対して管径方向へ拘束される。したがって、内管10の管径方向への変位を抑制できる。しかも、複合管1においては、融着阻害層12によって保持突起23と内管10との融着が回避されているから、例えば内管10の端部にコネクタを接続するために波形管20の端部を管軸方向につづめて内管10の端部を露出させるなどの作業を容易に行なうことができる
【0038】
複合管1は、例えば給湯給水用の配管として用いられる。内管10の内部を水や湯などの流体が通る。該流体の圧力、流量、温度などは使用状況によって急変し得る。一方、内管10が保持突起23によって拘束されているために、前記急変が起きても内管10のバタツキを抑制でき、ウォーターハンマー(水撃)音や熱伸縮音が発生するのを防止できる。さらに、波形管20を構成する発泡樹脂が衝撃を吸収することで、ウォーターハンマー音や熱伸縮音の発生を一層確実に防止できる。
波形管20が発泡成形されることで保持突起23が内管10と確実に接触されるようにできる一方、保持突起23と内管10との熱的接着が起きやすくなるが、内管10に融着阻害層12を形成しておくことによって、発泡樹脂からなる波形管20の熱的接着を効果的に防止することができる。
また、内管10の被覆層として波形断面の波形管20を用いることによって、配管施工時に複合管1が角張った障害物に引っ掛かったとしても、滑りやすく、引っ掛かり状態を解除しやすい。
波形管20の少なくとも大径部21の内周面と内管10の外周面との間には空気断熱層が形成されるため保温性が高まる。複合管1を生曲げしたときは、内まわり側に発生するたるみやシワが目立たなくなる。
【0039】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、複合管は、給水給湯配管に限らず、電線などの挿通用配管などとして用いられてもよい。
【実施例0040】
実施例を説明する。本発明は以下の実施例には限定されない。
内管10として外直径17mmの架橋ポリエチレン管を用意し、その外周面に、融着阻害液として信越化学株式会社製シリコーンオイルKF-96を塗布した。融着阻害膜12の膜厚は、t
12=2.5μm程度であった。
塗布後の内管10を複合管製造装置3の押出ノズル31から波形管成形部32に送り込み、その外周に保持突起23を含む波形管20を成形した。これによって、
図1に示す複合管1と実質的に同様の構造の複合管サンプルを得た。
得られた複合管サンプルの波形管20の保持突起23と内管10との熱的接着は確認されなかった。複合管サンプルの波形管20の端部を内管10に対して管軸方向へ容易につづめることができた。