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特開2024-109467鋳造スラブの切断長さ制御方法及び切断長さ制御システム
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  • 特開-鋳造スラブの切断長さ制御方法及び切断長さ制御システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024109467
(43)【公開日】2024-08-14
(54)【発明の名称】鋳造スラブの切断長さ制御方法及び切断長さ制御システム
(51)【国際特許分類】
   B22D 11/16 20060101AFI20240806BHJP
   B22D 11/126 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B22D11/16 D
B22D11/126 J
B22D11/16 104Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023014276
(22)【出願日】2023-02-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米井 佑
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
【テーマコード(参考)】
4E004
【Fターム(参考)】
4E004MC09
(57)【要約】
【課題】鋳造スラブの実測重量と目標重量との差を減少させて鋳造スラブの製造歩留を向上可能な鋳造スラブの切断長さ制御方法及び切断長さ制御システムを提供すること。
【解決手段】本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、連続鋳造機において鋳造された鋳造ストランドを切断することによって得られる鋳造スラブの重量を目標重量に合わせるように切断対象の鋳造スラブの切断長さを制御する鋳造スラブの切断長さ制御方法であって、直近に切断された鋳造スラブの重量を実測重量として秤量する秤量ステップと、秤量ステップにおいて秤量された実測重量と直近に切断された鋳造スラブの目標重量との差に基づいて、切断対象の鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造機において鋳造された鋳造ストランドを切断することによって得られる鋳造スラブの重量を目標重量に合わせるように切断対象の鋳造スラブの切断長さを制御する鋳造スラブの切断長さ制御方法であって、
直近に切断された鋳造スラブの重量を実測重量として秤量する秤量ステップと、
前記秤量ステップにおいて秤量された実測重量と前記直近に切断された鋳造スラブの目標重量との差に基づいて、前記切断対象の鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、
を含む、鋳造スラブの切断長さ制御方法。
【請求項2】
前記決定ステップは、下記数式(1)により算出される推定秤量補正係数を切断対象の鋳造スラブの目標重量に乗算した値を用いて切断対象の鋳造スラブの切断長さを決定するステップを含む、請求項1に記載の鋳造スラブの切断長さ制御方法。
【数1】
ここで、計算重量は直近に切断された鋳造スラブの寸法から計算される直近に切断された鋳造スラブの重量、実測重量は前記秤量ステップにおいて秤量された実測重量、目標付加率は直近に切断された鋳造スラブの目標重量に対して設定された直近に切断された鋳造スラブの予長、使用秤量補正係数は直近に切断された鋳造スラブの切断長さを決定する際に用いた目標重量の補正係数を示す。
【請求項3】
連続鋳造機において鋳造された鋳造ストランドを切断することによって得られる鋳造スラブの重量を目標重量に合わせるように切断対象の鋳造スラブの切断長さを制御する鋳造スラブの切断長さ制御システムであって、
直近に切断された鋳造スラブの重量を実測重量として秤量する秤量手段と、
前記秤量手段によって秤量された実測重量と前記直近に切断された鋳造スラブの目標重量との差に基づいて前記切断対象の鋳造スラブの切断長さを決定する決定手段と、
を備える、鋳造スラブの切断長さ制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造スラブの切断長さ制御方法及び切断長さ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、連続鋳造機の出側に配置されている切断機による鋳造スラブの切断長さは、鋳造スラブの目標重量に重量のばらつき分を付加した重量に基づいて決定されている。鋳造スラブの重量が目標重量より少ない場合、製品の長さが目標長さより短くなり、目的の製品が得られなくなるために、工程の無駄が生じ、製造歩留が低下する。一方、鋳造スラブの重量が目標重量より多い場合には、切断の手間、過剰な工程の追加、鉄源の無駄等が生じる。従って、鋳造スラブの重量のばらつきを抑えて目標重量を下回らないぎりぎりの範囲で鋳造スラブの切断長さを決定できれば、鋳造スラブの製造歩留を向上させることができる。このような背景から、鋳造スラブの重量のばらつきと鋳造スラブの断面温度との間に相関関係があることを考慮して、連続鋳造機内での鋳造スラブの冷却状況等に基づいて鋳造スラブの切断長さを補正する方法が提案されている。
【0003】
具体的には、特許文献1には、連続鋳造機内における冷却水量の実績値と鋳造スラブの単位長さ辺りの重量との関係を実験的に定式化しておき、この関係から算出された鋳造スラブの単位長さ辺りの重量を用いて鋳造スラブの切断長さを補正する方法が記載されている。また、特許文献2には、鋳造スラブの最終凝固位置と鋳造スラブの断面温度との間に相関関係があることを利用して鋳造スラブの切断長さを補正する方法が記載されている。詳しくは、特許文献2に記載の方法は、最終凝固位置を直接センシングした値と鋳造スラブの単位長さ辺りの重量との関係を実験的に定式化し、最終凝固位置の測定値に基づいて鋳造スラブの単位長さ辺りの重量を算出して鋳造スラブの切断長さを補正する。さらに、特許文献3には、鋳造スラブの機内滞留時間から鋳造スラブの切断長さを補正する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-202505号公報
【特許文献2】特開2011-131268号公報
【特許文献3】特開2014-108449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に記載の方法はいずれも、事前に求められた鋳造スラブの情報に基づいて鋳造スラブの切断長さを補正する、いわゆるフィードフォワード的な切断長さの制御方法である。このため、操業条件が変化した場合、鋳造スラブの重量にばらつきが発生する可能性がある。また、特許文献1~3に記載の方法はいずれも、重回帰分析等の手法を用いてばらつきのある大量の操業実績データから決定した定式に基づいて鋳造スラブの切断長さを補正するものである。このため、鋳造スラブの重量のばらつきは依然として残ったままになる。さらには、実際に切断された鋳造スラブの重量のフィードバックがないことから、系統的な重量の誤差が残ったままになる。以上のことから、鋳造スラブの実測重量と目標重量との差を減少させて鋳造スラブの製造歩留を向上可能な技術の提供が期待されていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的は、鋳造スラブの実測重量と目標重量との差を減少させて鋳造スラブの製造歩留を向上可能な鋳造スラブの切断長さ制御方法及び切断長さ制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法は、連続鋳造機において鋳造された鋳造ストランドを切断することによって得られる鋳造スラブの重量を目標重量に合わせるように切断対象の鋳造スラブの切断長さを制御する鋳造スラブの切断長さ制御方法であって、直近に切断された鋳造スラブの重量を実測重量として秤量する秤量ステップと、前記秤量ステップにおいて秤量された実測重量と前記直近に切断された鋳造スラブの目標重量との差に基づいて、前記切断対象の鋳造スラブの切断長さを決定する決定ステップと、を含む。
【0008】
前記決定ステップは、下記数式(1)により算出される推定秤量補正係数を切断対象の鋳造スラブの目標重量に乗算した値を用いて切断対象の鋳造スラブの切断長さを決定するステップを含むとよい。
【0009】
【数1】
【0010】
ここで、計算重量は直近に切断された鋳造スラブの寸法から計算される直近に切断された鋳造スラブの重量、実測重量は前記秤量ステップにおいて秤量された実測重量、目標付加率は直近に切断された鋳造スラブの目標重量に対して設定された直近に切断された鋳造スラブの予長、使用秤量補正係数は直近に切断された鋳造スラブの切断長さを決定する際に用いた目標重量の補正係数を示す。
【0011】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御システムは、連続鋳造機において鋳造された鋳造ストランドを切断することによって得られる鋳造スラブの重量を目標重量に合わせるように切断対象の鋳造スラブの切断長さを制御する鋳造スラブの切断長さ制御システムであって、直近に切断された鋳造スラブの重量を実測重量として秤量する秤量手段と、前記秤量手段によって秤量された実測重量と前記直近に切断された鋳造スラブの目標重量との差に基づいて前記切断対象の鋳造スラブの切断長さを決定する決定手段と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る鋳造スラブの切断長さ制御方法及び切断長さ制御システムによれば、鋳造スラブの実測重量と目標重量との差を減少させて鋳造スラブの製造歩留を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態である鋳造スラブの切断長さ制御システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である鋳造スラブの切断長さ制御システムの構成及びその動作について説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態である鋳造スラブの切断長さ制御システムの構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の一実施形態である鋳造スラブの切断長さ制御システム1は、連続鋳造機2において鋳造された鋳造ストランドSTを切断することによって得られる鋳造スラブSの重量を目標重量に合わせるように切断対象の鋳造スラブSの切断長さLを制御するシステムである。本実施形態では、鋳造スラブの切断長さ制御システム1は、秤量テーブル11、ビジネスコンピュータ12、プロセスコンピュータ13、及びスラブ切断機14を主な構成要素として備えている。
【0016】
秤量テーブル11は、鋳造ストランドST及び鋳造スラブSを搬送する切断テーブル3の下流側に隣接して設けられた搬送テーブルであり、搬送ロールと図示しない秤量機を備えている。搬送ロールは、切断された鋳造スラブSを図示矢印方向に搬送する。図示しない秤量機は、秤量テーブル11上に搬送された鋳造スラブSの重量を秤量値(実測重量)として測定し、測定された秤量値を示す電気信号をプロセスコンピュータ13に入力する。
【0017】
ビジネスコンピュータ12は、ワークステーション等の情報処理装置によって構成され、切断対象の鋳造スラブSに関する情報及び直近に切断された鋳造スラブSに関する情報を格納している。切断対象の鋳造スラブSに関する情報には、切断対象の鋳造スラブSの厚み、幅、目標重量、目標付加率、比重(例えば7.85g/cm3等の固定値)等の情報が含まれる。目標付加率とは、切断対象の鋳造スラブSの目標重量に対して設定される鋳造スラブSの予長(範囲:0~0.05)を意味する。
【0018】
直近に切断された鋳造スラブSに関する情報には、鋳造スラブSの秤量値(実測重量)、計算重量、目標付加率、及び後述する使用秤量補正係数等の情報が含まれる。鋳造スラブSの計算重量は、鋳造スラブSの厚み、幅、切断長さLの実績値、及び比重から計算することができる。ビジネスコンピュータ12は、連続鋳造機2の稼働開始時等の所定のタイミングで、切断対象の鋳造スラブSに関する情報及び直近に切断された鋳造スラブSに関する情報を生産命令情報としてプロセスコンピュータ13に入力する。
【0019】
プロセスコンピュータ13は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置によって構成され、秤量テーブル11、ビジネスコンピュータ12、及びスラブ切断機14と電気的に接続されている。プロセスコンピュータ13は、ビジネスコンピュータ12から入力された生産命令情報を用いて切断対象の鋳造スラブSの切断長さLを決定し、決定した切断長さLで切断対象の鋳造スラブSを切断するようにスラブ切断機14を制御する。具体的には、まず、プロセスコンピュータ13は、以下に示す数式(1)を用いて直近に切断された鋳造スラブSの実測重量と目標重量との差に基づいて切断対象の鋳造スラブSの目標重量の補正係数を推定秤量補正係数として算出する。
【0020】
【数2】
【0021】
ここで、数式(1)において、計算重量は直近に切断された鋳造スラブSの計算重量、実測重量は直近に切断された鋳造スラブSの実測重量を示す。また、目標付加率は直近に切断された鋳造スラブSの目標付加率、使用秤量補正係数は直近に切断された鋳造スラブSの切断長さLを決定する際に用いた鋳造スラブSの目標重量の補正係数を示す。なお、本実施形態では、プロセスコンピュータ13が推定秤量補正係数を算出したが、ビジネスコンピュータ12が推定秤量補正係数を算出してプロセスコンピュータ13に入力してもよい。
【0022】
次に、プロセスコンピュータ13は、切断対象の鋳造スラブSの目標重量に対して(1+切断対象の鋳造スラブSの目標付加率)及び推定秤量補正係数を乗算した値を補正重量として算出する。次に、プロセスコンピュータ13は、算出された補正重量を比重で除算し、除算値を切断対象の鋳造スラブの厚み及び幅で除算した値を切断対象の鋳造スラブSの切断長さLとして算出する。そして、プロセスコンピュータ13は、算出された切断長さLを示す情報を切断長さ情報としてスラブ切断機14に入力し、スラブ切断機14は、入力された切断長さ情報に従って鋳造スラブSを切断する。
【0023】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である鋳造スラブの切断長さ制御システム1では、プロセスコンピュータ13が、直近に切断された鋳造スラブSの実測重量と目標重量との差に基づいて切断対象の鋳造スラブSの切断長さLを決定する。すなわち、プロセスコンピュータ13は、直近に切断された鋳造スラブSの重量の誤差をフィードバックさせて切断対象の鋳造スラブSの切断長さLを決定する。そして、このような構成によれば、直近に切断された鋳造スラブSの重量のばらつきを考慮して切断対象の鋳造スラブSの切断長さLを制御できるので、鋳造スラブSの実測重量と目標重量との差を減少させて鋳造スラブSの製造歩留を向上させることができる。
【0024】
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述及び図面により本発明が限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例、及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0025】
1 鋳造スラブの切断長さ制御システム
2 連続鋳造機
3 切断テーブル
11 秤量テーブル
12 ビジネスコンピュータ
13 プロセスコンピュータ
14 スラブ切断機
S,S 鋳造スラブ
ST 鋳造ストランド
図1